説明

コリメータを一体として有するシンチレータ及びその製造方法

【課題】CT検出器(20)向けの一体型シンチレータ/コリメータ・アレイ(144)を提供する。
【解決手段】一体型のシンチレータ/コリメータ(144)は、シンチレータ材料からなるアレイ(96)を加工用土台(94)上に位置決めし、さらにコリメータ型枠をその内部に有するコリメータ型枠ハウジング(102)をシンチレータ材料のブロック(96)上に位置決めしているような製造処理法(120)または技法によって製作している。次いで、このブロックと型枠ハウジングを整列させ(104)、コリメータ混合物を型枠(102)内に配置(116)できるようにする。次いで、一体型のシンチレータ/コリメータ(144)を形成させるように、このコリメータ混合物を硬化させている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全般的には診断用イメージングに関し、さらに詳細には、一体型のシンチレータ及びコリメータ、並びにその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コンピュータ断層(CT)イメージング・システムでは、典型的には、X線源は患者や荷物などの検査対象や被検物に向けて扇形状のビームを放出する。以下において、「検査対象(subject)」及び「被検物(object)」という語は撮像を受けることができる何かを含むものとする。このビームは、検査対象によって減衰を受けた後、放射線検出器のアレイ上に入射する。検出器アレイの位置で受け取った減衰ビームの放射線強度は、典型的には検査対象によるX線ビームの減衰に依存する。検出器アレイの各検出器素子は、各検出器素子で受け取った減衰ビームを表す電気信号を別々に発生させる。これらの電気信号は、解析のためにデータ処理システムに伝送され、このデータ処理システムにより最終的に画像が作成される。
【0003】
一般に、X線源と検出器アレイは、撮像面内においてガントリの周りを検査対象を取り囲むように回転する。X線源は、典型的には、焦点の位置でX線ビームを放出するX線管を含む。X線検出器は、典型的には、検出器の位置で受け取るX線ビームをコリメートするためのコリメータと、このコリメータと隣接しているX線を光エネルギーに変換するためのシンチレータと、この光エネルギーを隣接するシンチレータから受け取り、これから電気信号を発生させるためのフォトダイオードと、を含む。
【0004】
上述したように、典型的なX線検出器は、散乱されたX線の収集を最小限にするようにX線ビームをコリメートするためのコリメータを含んでいる。したがって、このコリメータは、角度外に散乱されたX線がシンチレータ・セルによって検出されないように減衰させる動作をしている。この散乱線を減少させることによって、信号内のノイズが低下し、また最終の再構成画像が改善される。したがって、シンチレータ・アレイとコリメータ(典型的には、シンチレータ・アレイの上で1つの次元方向に延びるプレート)とは均等に整列させることが必要である。すなわち、コリメータ・プレートとシンチレータ・アレイ内の造り込み反射体ラインとの間で正確な機械的整列が必要である。
【0005】
周知の製造処理法では、検出器アレイ全体の幅及び長さと寸法的に一致するような大きさの連続したコリメータを製作することによってこの正確な整列を試みている。すなわち、コリメータ・プレートは、検出器長さの全体に及ぶと共に、検出器レール構造に対して配置し取り付けている連続で一貫したパターン、すなわちピッチの形で配列、すなわちアレイ状としている。したがって、個々のシンチレータ・アレイまたはパックは次いで、シンチレータ・セルとコリメータ・セルのすべてを確実に正確に整列させるために、この連続したコリメータに対して正確に整列させなければならなず、さもないと、そのコリメータは廃棄するか修復しなければならず、あるいはそのシンチレータ・パックを廃棄しなければならない。この処理法では、極端に厳しい許容度設定が必要であり、またこの組み上げのためにはオペレータの優れた技能や忍耐力が必要となる。したがって、これら周知の処理法では、部品類、材料及び労働力のむだを生じやすい。
【0006】
さらに、CT検出器をz方向に成長させると、整列要件が厳しくなり、また整列を要するセルの数も多くなる。したがって、これら周知の製造処理法に関しては処理の歩留まりが低く、また高度の処理による廃棄や手直しのために、CT検出器アセンブリに関連するコスト及び時間が増大することになる。
【0007】
CT検出器製造に関する進歩にもかかわらず、これら周知の検出器アセンブリや組み上げ処理法では、その検出器はコリメーションが最適に至らなくなる。図10を参照すると、周知の製造処理法に従って製作した周知のCT検出器1を表している。このCT検出器1は、シンチレータ・アレイ4のシンチレータ・セル3に向けて投射されたX線をコリメートする一連のタングステン製コリメータ・プレート2を含んでいる。図のように、これらコリメータ・プレート2の各々は、隣接するシンチレータ3の間に配置した反射体ライン5と全体として整列している。この反射体ライン5は、隣接するシンチレータの間で光が放出されないようにしている。このシンチレータ・アレイはフォトダイオード・アレイ6と結合させており、このフォトダイオード・アレイ6はシンチレータ・アレイからの光放出を検出し、信号処理のために対応する電気信号をデータ収集システムに伝送している。容易に分かるように、これらのコリメータ・プレートは個々のシンチレータ素子3と一体となっていない。すなわち、コリメータ・プレートとシンチレータ・セル3の間にはエア・ギャップ7が存在する。このエア・ギャップ7によって、典型的には、コリメータ・プレートとシンチレータ・アレイの間に概ね1000分の2から1000分の4インチの離間が生じている(1インチは2.54cm、約0.05mm〜0.10mm)。このエア・ギャップは、シンチレータ・アレイを受け入れかつ整列させている単一のコリメータ・アセンブリとしてそのコリメータ・プレートを形成させるというその製造処理法の結果として生じる。しかし、このエア・ギャップによって、そのCT検出器は、2つのコリメータ・プレートの間に受け入れられて隣接するシンチレータ上に入射するX線の影響を受けやすくなり、これによって再構成した最終のCT画像に望ましくない異状を生じさせることになる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、上述のエア・ギャップが存在しない一体型のシンチレータ/コリメータ、並びにこうした一体型のシンチレータ/コリメータを製造する方法を設計することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上述の欠点を克服した一体型のシンチレータ/コリメータ、並びに該シンチレータ/コリメータの製造方法を目的とする。この一体型シンチレータ/コリメータでは、コリメータ・プレートをシンチレータの反射体上面と一体にすることによって、隣接する検出器セル間でのX線クロストークが減少すると共に、コリメータ隔壁とシンチレータ反射体壁の間の寸法上の一致が改善される。シンチレータよりなるピクセル化した(pixilated)アレイを加工用土台上に配置させ、次いで、平行に整列した一連の空洞を有する型枠をこのシンチレータ・アレイの上に位置決めしている。この型枠内の空洞は、その各々がシンチレータ・アレイ内の反射体ラインと整列するように位置決めしている。高精度の加工を用いると、型枠とシンチレータ・アレイは互いに正確に整列する。適正に整列させた後、真空ポンプを用いて型枠の内部から空洞を除去している。その後、インジェクタを用いて型枠内にコリメータ混合物を配置させ、この混合物を硬化させている。コリメータ混合物が硬化したところで、一体型のシンチレータ/コリメータが形成される。
【0010】
したがって、本発明の一態様では、一体型のシンチレータ/コリメータを有する検出器を製造する方法を提供する。本方法は、シンチレータ素子のアレイまたはパックを加工用土台の上に位置決めする工程と、コリメータ型枠空洞をその内部に有するコリメータ型枠ハウジングをこのブロック上に位置決めする工程と、を含む。そのため、この型枠空洞はシンチレータのアレイパターンに対して極めて正確に一致することになる。次いで、この型枠空洞内にコリメータ混合物を配置させると共に、一体型のシンチレータ/コリメータを形成するようにこのコリメータ混合物を硬化させている。
【0011】
本発明の別の態様では、CTシステム用の検出器は、受け取ったX線を光に変換するように配列させたシンチレーション素子からなるアレイを含んでいる。シンチレーション素子のアレイの上面には複数のコリメータ素子を一体に形成させており、またこれらのコリメータ素子は、角度外に散乱されたX線がシンチレータ素子によって検出されないように減衰させる動作をする。この検出器はさらに、シンチレーション素子のアレイからの光放出を受け取るように配列させたフォトダイオード素子からなるアレイを含んでいる。
【0012】
本発明の別の態様では、ピクセル化したシンチレータからなるアレイを加工用土台上に配置する工程、並びにこのアレイに隣接してこのアレイの上面まで延びている複数の空洞を画定しているコリメータ型枠を位置決めする工程によって一体型のシンチレータ/コリメータ・アレイを形成している。次いで、一体型のシンチレータ/コリメータ・アレイが形成されるように、この複数の空洞の内部にコリメータ材料を配置して硬化させている。
【0013】
本発明のさらに別の態様では、一体型のシンチレータ/コリメータを製造するための装置は、シンチレーション材料のブロックを支持するように設計した加工用土台と、このシンチレーション材料のブロック上に位置決めされる型枠と、を含んでいる。この型枠内にブロックを整列式配列で整列させるための整列機構を設けると共に、さらにこの型枠内の空洞を除去するように設計した型枠排気装置を設けている。さらに、型枠にコリメータ材料を供給するためにコリメータ混合物供給器を設けている。
【0014】
本発明のさらに別の態様では、一体型のシンチレータ/コリメータを製造するためのシステムは、ブロック状のシンチレータ・パックを加工用土台上に位置決めするための手段、並びにこのブロックの上にコリメータ型枠を位置決めするための手段を含んでいる。ブロックとコリメータ型枠を整列させるための手段、並びにこの型枠から空洞を除去するための手段を設けている。本システムはさらに、除去した空洞が以前占有していた体積内にコリメータ材料を配置するための手段と、一体型のシンチレータ/コリメータを形成させるようにこのコリメータ材料を硬化させるための手段と、を含んでいる。
【0015】
本発明に関する様々な別の特徴、目的並びに利点は、以下の詳細な説明及び図面から明らかとなろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
添付の図面は、本発明を実施するために目下のところ企図される好ましい実施の一形態を図示したものである。
【0017】
本発明の動作環境は、4スライス型コンピュータ断層(CT)システムに関連して記載している。しかし、当業者であれば、本発明が単一スライスまたは別のマルチスライス構成での使用にも等しく適用可能であることを理解するであろう。さらに、本発明は、X線に関する検出及び変換に関連して記載することにする。しかし、当業者であればさらに、本発明が別の高周波電磁エネルギーに関する検出及び変換にも等しく適用可能であることを理解するであろう。本発明は、「第3世代」のCTスキャナに関連して記載することにするが、別のCTシステムでも等しく適用可能である。
【0018】
図1及び図2を参照すると、「第3世代」のCTスキャナに典型的なガントリ12を含むものとして、コンピュータ断層(CT)イメージング・システム10を表している。ガントリ12は、このガントリ12の対向面上に位置する検出器アレイ18に向けてX線ビーム16を投射するX線源14を有する。検出器アレイ18は、投射され患者22を透過したX線を一体となって検知する複数の検出器20により形成されている。各検出器20は、入射したX線ビームの強度、すなわちX線ビームが患者22を透過することによる減衰ビームを表す電気信号を発生させる。X線投影データを収集するためのスキャンの間に、ガントリ12及びガントリ上に装着されたコンポーネントは回転中心24の周りを回転する。
【0019】
ガントリ12の回転及びX線源14の動作は、CTシステム10の制御機構26により制御される。制御機構26は、X線源14に電力及びタイミング信号を供給するX線制御装置28と、ガントリ12の回転速度及び位置を制御するガントリ・モータ制御装置30と、を含む。制御機構26内にはデータ収集システム(DAS)32があり、これによって検出器20からのアナログ・データをサンプリングし、このデータを後続の処理のためにディジタル信号に変換している。画像再構成装置34は、サンプリングしディジタル化したX線データをDAS32から受け取り、高速で再構成を行う。再構成した画像はコンピュータ36に入力として与えられ、コンピュータにより大容量記憶デバイス38内に格納される。
【0020】
コンピュータ36はまた、キーボードを有するコンソール40を介して、オペレータからのコマンド及びスキャン・パラメータを受け取る。付属の陰極線管ディスプレイ42により、オペレータはコンピュータ36からの再構成画像やその他のデータを観察することができる。コンピュータ36は、オペレータの発したコマンド及びパラメータを用いて、DAS32、X線制御装置28及びガントリ・モータ制御装置30に対して制御信号や制御情報を提供する。さらにコンピュータ36は、モータ式テーブル46を制御して患者22及びガントリ12を位置決めするためのテーブル・モータ制御装置44を操作している。詳細には、テーブル46により患者22の各部分をガントリ開口48に通過させている。
【0021】
図3及び4に示すように、検出器アレイ18はシンチレータ・アレイ56を形成するような複数のシンチレータ57を含んでいる。シンチレータ・アレイ56の上側にコリメータ(図示せず)を位置決めし、X線ビーム16がシンチレータ・アレイ56に入射する前でこのビームをコリメートしている。
【0022】
図3に示す実施の一形態では、検出器アレイ18は、その各々が16×16のアレイサイズを有するような57個の検出器20を含んでいる。その結果、アレイ18は、16個の横列と912個の縦列(16×57検出器)を有しており、ガントリ12の各1回転によって同時に16スライス分のデータを収集することができる。
【0023】
スイッチアレイ80及び82(図4)は、シンチレータ・アレイ56とDAS32の間に結合させた多次元半導体アレイである。スイッチアレイ80及び82は、多次元アレイとして配列させた複数の電界効果トランジスタ(FET)(図示せず)を含んでいる。このFETアレイは、対応するフォトダイオード60のそれぞれに接続した多数の電気導線と、可撓性の電気的インタフェース84を介してDAS32と電気的に接続させた多数の出力導線と、を含んでいる。詳細には、フォトダイオード出力の約半数をスイッチ80と電気的に接続させ、またフォトダイオード出力の残りの半数はスイッチ82と電気的に接続させている。さらに、反射体層(図示せず)を各シンチレータ57の間に介在させ、隣接するシンチレータからの光散乱を減少させている。各検出器20は、装着用ブラケット79によって検出器フレーム77(図3)に固定している。
【0024】
スイッチアレイ80及び82はさらに、所望のスライス数並びに各スライスに対するスライス分解能に従ってフォトダイオード出力を有効にしたり、無効にしたり、組み合わせたりしているデコーダ(図示せず)を含んでいる。実施の一形態では、そのデコーダは、当技術分野で周知のデコーダ・チップまたはFETコントローラである。デコーダは、スイッチアレイ80及び82やDAS32と結合させた複数の出力線及び制御線を含んでいる。16スライス・モードとして規定した実施の一形態では、デコーダはフォトダイオード・アレイ52のすべての横列が作動状態となるようにスイッチアレイ80及び82を有効にしており、これによってDAS32により処理を受ける16スライス分のデータが同時に得られる。もちろん、別の多くのスライスの組み合わせも可能である。例えば、デコーダによって、1スライス・モード、2スライス・モード、4スライス・モードを含むような別のスライス・モードからの選択も可能である。
【0025】
図5に示すように、適当なデコーダ命令を送信することによって、フォトダイオード・アレイ52の1つまたは複数の横列からなる4スライスからデータを収集するように、スイッチアレイ80及び82を4スライス・モードで構成させることができる。スイッチアレイ80及び82の具体的な構成に応じて、フォトダイオード60の様々な組み合わせを有効にする、無効にする、あるいは組み合わせることによって、1横列分、2横列分、3横列分、または4横列分のシンチレータ・アレイ素子57からそのスライス厚を構成させることができる。追加的な例としては、そのスライスが1.25mm厚から20mm厚までの範囲にあるような1つのスライスを含む単一スライス・モードや、そのスライスが1.25mm厚から10mm厚までの範囲にあるような2つのスライスを含む2スライス・モードが含まれる。記載した数を超えるような追加的なモードも企図される。
【0026】
ここで図6を参照すると、一体型のシンチレータ/コリメータを有するCT検出器を模式的に表している。検出器20は、シンチレーション素子57からなるシンチレータ・アレイ56から光放出を受け取るように結合させたフォトダイオード・アレイ52を含んでいる。このシンチレーション・アレイまたはパック上には複数のコリメータ・プレート86を直接に造り込んでいる。このコリメータ・プレート86は、シンチレータ素子57間に配置した反射体ライン88と精度よく整列させている。シンチレータ・パック上に直接コリメータ・プレートを造り込むことによって、図10を参照して検討するエア・ギャップが排除され、このためコリメータ・プレート86によって達成させるコリメーションが改善される。以下でより詳細に記載することにするが、このコリメータ・プレートの各々はタングステンとエポキシの化合物または混合物によって形成している。
【0027】
シンチレータ・パックの上側反射面90上に直接コリメータ・プレートを造り込むことによって、シンチレータ/コリメータ構造の剛性が改善され、このためCTデータ収集中に回転するガントリによって誘導される荷重に対する検出器の応答が改善される。すなわち、図10に示すコリメータ・プレートと同様のCT検出器1のコリメータ・プレートでは、上で検討したエア・ギャップだけコリメータ・プレートがシンチレータ・アレイから分離されているため、重力や回転力で誘導される運動に影響されやすい。しかし、図6に表したCT検出器では、シンチレータ・パック上に直接コリメータ・プレートが造り込まれているため、上述した重力による影響が軽減されている。
【0028】
ここで図7を参照すると、一体型としたシンチレータ及びコリメータからなるアレイを製造するための加工アセンブリ92を表している。この加工アセンブリは、下側型枠空洞98内に位置決めしたシンチレータ・アレイ造り込みパック96を支持するように設計した加工用土台94を含んでいる。この下側型枠空洞98は、パック96と型枠102を互いに対して適正に整列させるように、上側型枠ハウジング100と整列させている。確実に適正で精度のよい整列を得るために、加工アセンブリ92はダウエルピン整列アセンブリ104を含んでいる。別のダウエルピンやボア・データム(図示せず)などの整列ツールも企図されると共に、図示したアセンブリで利用可能である。
【0029】
図示した実施形態では、型枠102は造り込みパック96に対して平行に均等に整列させた一連の空洞106を含んでいる。さらに、各空洞106はコリメータ・プレートの所望の高さと等しい高さを有すると共に、シンチレータ・アレイ造り込みパック96の上面108まで延びている。
【0030】
アセンブリ92はさらに、真空ポンプ112と接続した排気ゲート110を含んでいる。この真空ポンプは、各空洞106から空気を除去するようにCPU114によって制御している。型枠をシンチレータ・パックの上に位置決めするときに、空気が空洞106を満たす。コリメータを適正に形成させるためには、以下に記載するようにこの空気を除去しなければならない。したがって、ポンプ112を用いて空洞106から空気を除去している。型枠ハウジング100内に真空を形成させた後、空洞106の各々がコリメータ混合物で満たされるように、充填ゲート118を介してインジェクタ116によってコリメータ混合物を注入している。このコリメータ混合物は、インジェクタ116によって直接注入することや、空洞の内部から空気を除去した時点で空洞内に生成される真空によって型枠空洞内にコリメータ混合物を引き込むことができる。コリメータ混合物は、タングステンとエポキシの化合物とすることが好ましい。さらに、このコリメーション材は粉体であることが好ましい。しかし、別の化合物、混合物、並びに非粉体形状の化合物も同様に利用可能である。このコリメータ混合物は型枠ハウジング100の内部で室温またはこれ以上の温度で硬化させている。硬化した後、型枠ハウジングを除去し、これによってシンチレータ・パックの上面と一体に形成させた一連のコリメータ・プレートが残されるようにしている。
【0031】
ここで図8を参照すると、一体型のシンチレータ/コリメータ・アレイを製造するための製造処理法120は、122において開始され、124においてシンチレータ材料からなる一連のさいの目切りしたスライスは熱間硬化処理を受ける。熱間硬化処理124を受けた後、126において型枠すなわち柵が取り付けられる。この型枠は、各シンチレーション素子間に反射体材料を適正に配置させるために使用する。反射体層の形成に使用する材料は、造り込んで硬化させ(128)、次いで130においてこの型枠を除去している。反射体ラインを一体となるようにして有する得られたシンチレータ・アレイ造り込みパックは、132において切削加工(mill)している。
【0032】
造り込みパックの上側反射層を切削加工した後、134においてこの切削加工したシンチレータ・パックの周りにコリメータ空洞を位置決めしている。上述したように、この型枠空洞はコリメータ型枠を基準としてシンチレータ・パックを整列させる際に使用する。型枠空洞とシンチレータ・パックを加工用土台上で適正に位置決めした後、136においてこれらシンチレータ・パック及び型枠空洞を基準としてコリメータ型枠を位置決め、すなわち取り付けている。コリメータ型枠空洞とシンチレータ・パックは、上述したようにして、ダウエルピン整列アセンブリや一連のボア・データムを用いて適正に整列させている。型枠、空洞、及びブロックを適正に整列させた後、空洞のそれぞれの中に含まれる空気(型枠をシンチレータ・パック上に位置決めしたために生じる)を真空ポンプを用いて除去している。型枠の内部に真空が生成された後、空洞のそれぞれの中にコリメータ混合物または粉体を導入(138)する。この注入された混合物は次いで硬化(140)させており、これによって一連のコリメータ・プレートがシンチレータ・パックの上面と一体に形成されることになる。次いで142において、この型枠アセンブリを取り外し、これにより一体型としたシンチレータ及びコリメータからなるアレイを得ている。次いで、この得られたアセンブリは、一体型のシンチレータ/コリメータ・アレイ144に対する適正な整列及び製作が保証されるように、研磨、検査及び試験の段階144にかけている。
【0033】
本発明をここまで、CTイメージング・システムのCT検出器向けの一体型シンチレータ/コリメータの製作に関して記載してきた。本発明による一体型のシンチレータ/コリメータを組み込んだCT検出器は、医用イメージング・システムで使用することや、図9に表したシステムと同様の荷物検査システムで使用することもできる。
【0034】
図9を参照すると、梱包物/荷物検査システム150は、梱包物や荷物をその内部に通過させる開口154をその内部に有する回転自在のガントリ152を含んでいる。この回転自在ガントリ152には、高周波電磁エネルギー源156と、図6に示すアレイと同様の一体型のシンチレータ/コリメータ・セルからなるアレイを有すると共に、図7に関して記載した装置と同様の組み立て装置を用いて製作している検出器アセンブリ158と、を収容している。さらにコンベヤ・システム160を設けており、またコンベヤ・システム160は、スキャンのために梱包物や荷物166を自動的かつ連続的に開口154に通過させるように構造164によって支持したコンベヤ・ベルト162を含んでいる。開口154を通るように対象物166がコンベヤ・ベルト162によって供給された後、撮像データが収集され、さらにコンベヤ・ベルト162によって制御式かつ連続式で梱包物166が開口154から取り除かれる。その結果、郵便検査係、荷物取扱係、及びその他の警備要員は、梱包物166の中身に爆発物、刃物、銃器、禁制品などがないかどうかを非侵襲的に検査することができる。
【0035】
本発明は、CTベースのイメージング・システム向けの一体型シンチレータ/コリメータを製作することに関して記載している。さらに、矩形状のシンチレータ/コリメータの結合体の製作について記載している。しかし本発明は、追加的なパターンや追加的な形状のセルを製作することも企図している。さらに本発明では、上述したタングステン/エポキシ混合物以外にコリメータ材料の多くの組み合わせも考えられる。さらに、本発明の高精度の整列及び加工の態様を用いることによって、押出し成形、射出成形、その他などの様々な「成形(molding)」処理に対応することができる。この高精度整列及び加工の態様はさらに、X線感受性の構成要素に対するX線遮蔽を提供するように電子機器外装用途にも応用することが可能である。
【0036】
さらに、本発明は、1次元の軸(すなわち、z軸)方向でコリメータ・プレートをその上に造り込んでいる一体型のシンチレータに関して記載している。しかし、一体型のシンチレータ/コリメータは、x軸及びz軸方向に製造するように上で言及した方法を用いて形成させ、これによって一体型シンチレータ/コリメータからなる「チェッカー盤状の」フル2次元(2D)の配列を提供することがある。本発明は、一体型のシンチレータ/コリメータからなる部分的2Dアレイを生成させるように実現させることがある。すなわち、コリメータ型枠は、コリメータ空洞がコリメータ混合物によって満たされた際に異なる高さを有するようにして製作することがある。このため、1つの軸(すなわち、z軸)の方向におけるコリメータ・プレートが、別の軸(すなわち、x軸)の方向におけるコリメータ・プレートと比べてより大きな高さを有することがある。
【0037】
したがって、本発明の一実施形態では、一体型のシンチレータ/コリメータを有する検出器を製造する方法を提供する。本方法は、シンチレータ素子のアレイまたはパックを加工用土台の上に位置決めする工程と、コリメータ型枠空洞をその内部に有するコリメータ型枠ハウジングをこのブロック上に位置決めする工程と、を含む。そのため、この型枠空洞はシンチレータのアレイパターンに対して極めて正確に一致することになる。次いで、この型枠空洞内にコリメータ混合物を配置させると共に、一体型のシンチレータ/コリメータを形成するようにこのコリメータ混合物を硬化させている。
【0038】
本発明の別の実施形態では、CTシステム用の検出器は、受け取ったX線を光に変換するように配列させたシンチレーション素子からなるアレイを含んでいる。シンチレーション素子のアレイの上面には複数のコリメータ素子を一体に形成させており、またこれらのコリメータ素子は、角度外に散乱されたX線がシンチレータ素子によって検出されないように減衰させる動作をする。この検出器はさらに、シンチレーション素子のアレイからの光放出を受け取るように配列させたフォトダイオード素子からなるアレイを含んでいる。
【0039】
本発明の別の実施形態では、ピクセル化したシンチレータからなるアレイを加工用土台上に配置する工程、並びにこのアレイに隣接してこのアレイの上面まで延びている複数の空洞を画定しているコリメータ型枠を位置決めする工程によって一体型のシンチレータ/コリメータ・アレイを形成している。次いで、一体型のシンチレータ/コリメータ・アレイが形成されるように、この複数の空洞の内部にコリメータ材料を配置して硬化させている。
【0040】
本発明のさらに別の実施形態では、一体型のシンチレータ/コリメータを製造するための装置は、シンチレーション材料のブロックを支持するように設計した加工用土台と、このシンチレーション材料のブロック上に位置決めされる型枠と、を含んでいる。この型枠内にブロックを整列式配列で整列させるための整列機構を設けると共に、さらにこの型枠内の空洞を除去するように設計した型枠排気装置を設けている。さらに、型枠にコリメータ材料を供給するためにコリメータ混合物供給器を設けている。
【0041】
本発明のさらに別の実施形態では、一体型のシンチレータ/コリメータを製造するためのシステムは、ブロック状のシンチレータ・パックを加工用土台上に位置決めするための手段、並びにこのブロックの上にコリメータ型枠を位置決めするための手段を含んでいる。ブロックとコリメータ型枠を整列させるための手段、並びにこの型枠から空洞を除去するための手段を設けている。本システムはさらに、除去した空洞が以前占有していた体積内にコリメータ材料を配置するための手段と、一体型のシンチレータ/コリメータを形成させるようにこのコリメータ材料を硬化させるための手段と、を含んでいる。
【0042】
本発明を好ましい実施形態について記載しているが、明示的に記述した以外の等価、代替及び修正も可能であり、かつこれらも添付の特許請求の範囲の域内にあることを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】CTイメージング・システムの外観図である。
【図2】図1に示すシステムのブロック概要図である。
【図3】CTシステム検出器アレイの実施の一形態の斜視図である。
【図4】1つの検出器の実施の一形態の斜視図である。
【図5】図4の検出器の4スライス・モードによる様々な構成を表した図である。
【図6】本発明による検出器の断面概要図である。
【図7】本発明に従った一体型シンチレータ/コリメータを製造するためのアセンブリの断面概要図である。
【図8】本発明に従って一体型のシンチレータ/コリメータを形成するための製造処理法または技法の工程を表した流れ図である。
【図9】CTシステムを非侵襲的梱包物検査システムと共に使用している様子を表した外観図である。
【図10】周知の検出器の断面概要図である。
【符号の説明】
【0044】
1 CT検出器
2 コリメータ・プレート
3 シンチレータ
4 シンチレータ・アレイ
5 反射体ライン
6 フォトダイオード・アレイ
7 エア・ギャップ
10 コンピュータ断層(CT)イメージング・システム
12 ガントリ
14 X線源
16 X線ビーム
18 検出器アレイ
20 検出器
22 患者
24 回転中心
26 制御機構
28 X線制御装置
30 ガントリ・モータ制御装置
32 データ収集システム(DAS)
34 画像再構成装置
36 コンピュータ
38 大容量記憶装置
40 コンソール
42 陰極線管ディスプレイ
44 テーブル・モータ制御装置
46 モータ式テーブル
48 ガントリ開口
52 フォトダイオード・アレイ
56 シンチレータ・アレイ
57 シンチレータ
60 フォトダイオード
77 検出器フレーム
79 装着用ブラケット
80 スイッチアレイ
82 スイッチアレイ
84 電気的インタフェース
86 コリメータ・プレート
88 反射体ライン
90 上側反射面
92 加工アセンブリ
94 加工用土台
96 シンチレータ・アレイ造り込みパック
98 下側型枠空洞
100 上側型枠ハウジング
102 型枠
104 ダウエルピン整列アセンブリ
106 空洞
108 造り込みパックの上面
110 排気ゲート
112 真空ポンプ
114 CPU
116 インジェクタ
118 充填ゲート
150 梱包物/荷物検査システム
152 ガントリ
154 開口
156 高周波電磁エネルギー源
158 検出器アセンブリ
160 コンベヤ・システム
162 コンベヤ・ベルト
164 構造
166 梱包物、荷物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一体型のシンチレータ及びコリメータ(144)を有する検出器(20)を製造する方法(120)であって、
加工用土台(94)上にシンチレータ・パックのブロックを位置決めする工程(122)と、
コリメータ型枠空洞(106)をその内部に有するコリメータ型枠ハウジングを前記ブロック(96)上に位置決めする工程(126)と、
前記ブロックと前記型枠ハウジングを整列させる工程(126)と、
前記型枠空洞内に入るようにコリメータ混合物を配置させる工程(136)と、
コリメータ混合物を硬化させ一体型のシンチレータ及びコリメータ(144)を形成させる工程(140)と、
を含む方法。
【請求項2】
前記コリメータ型枠を前記ブロック上に位置決めする前に、該ブロックの上側反射体表面を切削加工する工程(132)をさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記整列の後に、前記ブロックと前記コリメータ型枠ハウジングを一緒に固定する工程(136)をさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記整列の工程が、一組のピン(104)を用いて前記ブロック(96)、前記コリメータ型枠ハウジング(102)及び前記型枠空洞(106)を互いを基準として適正な向きにする工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記コリメータ型枠空洞(106)が、コリメータ混合物を受け入れるように設計している平行に整列させた一連の空洞を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記コリメータ型枠ハウジング(102)がステンレス鋼から形成されている、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
真空ポンプ(112)を用いて前記型枠空洞から空気を除去する工程(138)をさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記コリメータ混合物がタングステンとエポキシの化合物である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記一体型のシンチレータ及びコリメータを研磨する工程(144)をさらに含む請求項1に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2004−333490(P2004−333490A)
【公開日】平成16年11月25日(2004.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−132862(P2004−132862)
【出願日】平成16年4月28日(2004.4.28)
【出願人】(300019238)ジーイー・メディカル・システムズ・グローバル・テクノロジー・カンパニー・エルエルシー (1,125)
【Fターム(参考)】