説明

コルゲイト管継手

【課題】コルゲイト管と管継手との接続を確実なものにするとともに、分解、リサイクルが容易なコルゲイト管継手を提供する。
【解決手段】コルゲイト管Tが挿入される継手本体10と、継手本体10の内孔16には奥側から順に、弾性部材71を圧縮状態で保持したスプリングパック70と、内孔16にスライド可能に配置されたシール部材40と、コルゲイト管Tに係合する爪部52を有し、弾性部材71の圧縮状態からの開放によってコルゲイト管Tに係合するリテーナ50と、継手本体10と係止されたナット部材20とを設ける。継手本体10には、係止溝18aと、これに連なる回避溝18bとを有し、ナット部材20の外径側には、外周溝25を形成し、係止溝18aと外周溝25とを跨ぐようにストップリング61を配置させ、ナット部材20の大径部21と継手本体10の端部との間に分解用リング63を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蛇腹状のコルゲイト管の接続に用いるコルゲイト管継手に関する。特には、接続作業時における確実性、あるいは、施工後にコルゲイト管の端部を切断することなく分解・リサイクルできる利点を有するコルゲイト管継手に関する。
【背景技術】
【0002】
屋内ガス配管等には、金属製の蛇腹状コルゲイト管が広く用いられている。また、このコルゲイト管とガス栓や鋼管などとを接続するための管継手が種々用いられている。例えば、特許文献1には、継手本体内に低硬度ゴムパッキンを装着し、前記継手本体内に装着した本体の軸線方向入り口側に弾発するバネと、前記継手本体内に係止して前記バネを圧縮状態に保持し、接続蛇腹管を継手本体内に挿入すると蛇腹管の端部で前記継手本体との係止が外されるガイドと、前記ガイドの係止が外されて圧縮状態のバネが伸張することにより蛇腹管の外周面に圧縮されるパッキンと、前記バネの伸張により前記パッキンを介して押され、蛇腹管の波山凹凸部に係止する抜け止め部材とからなる差込式管継手が記載されている。
【0003】
また、特許文献2には、コルゲイト管の端部が挿入される内孔を有する本体と、前記内孔内に配置された、コルゲイト管外面の環状凹部に差し込まれる爪を有し、前記本体にコルゲイト管を係止するリテーナと、コルゲイト管と前記本体との間をシールするシール手段と、前記本体に対してスライド可能に係合するとともに、特定のスライド位置において、コルゲイト管を前記本体に係止した状態で前記リテーナをロックするリテーナ押えと、前記リテーナ押えをスライド不能とする係止機構と、前記リテーナ押えが不意に移動することを防止する誤操作防止機構と、前記リテーナ押えの係止機構を解除し、コルゲイト管、前記リテーナ及び前記リテーナ押えを前記本体から抜き出し可能とする分解機構と、を具備したコルゲイト管継手が記載されている。
【0004】
【特許文献1】特開2001−132881号公報
【特許文献2】特開2004−316733号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
さて、資源枯渇や材料の高騰などの背景から建築材料分野においてもリサイクル、リユースの社会的要求が高まっている。この点において、金属製コルゲイト管を用いた配管部材では、ステンレス製のコルゲイト管、黄銅等からなる管継手本体、パッキン等の樹脂材料をそれぞれ分別する必要がある。
しかしながら、特許文献1に記載の差込式管継手は、継手本体とナット状本体とを螺合接続している構造であるので、この差込式管継手を分解する作業には、多大な工数を要するという問題があった。
【0006】
また、特許文献2に記載のコルゲイト管継手においては、分解機構を動作させて継手本体とリテーナ押えとを分解してコルゲイト管を引き出すことは可能であるが、パッキンやストッパ部材が継手本体内に残存してしまうので、材料ごとに分別するためには、更にこれを取り出す必要があり、改良の余地があった。また、筒状の継手の内面とコルゲイト管先端部外周との隙間をリング状シール材でシールしているので、コルゲイト管先端部の真円度がシール性能に直接影響を与えてしまう。即ち、コルゲイト管先端部が例えば楕円状に扁平していると、短径部ではシール面圧低下により短期間にシール性能が低下し、また長径部においてはシール面圧が必要以上に上昇するために長期に至ってはシール材が永久歪を起こしてしまい、シール材の弾性力の劣化からシール性能を低下させる懸念がある。そこで、施工現場においてコルゲイト管の扁平量を管理する必要性を生じさせている。更に、コルゲイト管を管継手に挿入した際に、コルゲイト管の先端がストッパ部材に係り合う手応えが判りづらく、コルゲイト管の挿入量が不足した状態のまま接続されるという問題があった。
【0007】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたもので、コルゲイト管と管継手との接続を確実なものにすること、及び分解、リサイクルが容易なことを実現したコルゲイト管継手を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、コルゲイト管が挿入される内孔を有した継手本体と、前記内孔の軸方向に伸縮自在な弾性部材と、前記弾性部材を圧縮状態で保持する保持手段と、前記内孔にスライド可能に配置されたシール部材と、前記コルゲイト管に係合する爪部を有し、前記爪部の内径が前記コルゲイト管の外径よりも大きい状態で配置されたリテーナと、前記継手本体と連結されたナット部材とを設け、前記コルゲイト管の挿入によって、前記保持手段は前記弾性部材の圧縮状態を開放し、前記弾性部材の伸長にともなって、前記シール部材が軸方向に圧縮され、かつ前記リテーナが縮径して前記コルゲイト管に係合するように構成され、前記保持手段は、前記弾性部材の一端を支持するリング状の支持部と、該支持部から突出した先端に形成した係止突起を有する保持部材と、前記弾性部材の他端を支持し、前記係止突起に係止されたストッパと、前記保持部材の内孔に挿通され、前記係止突起の内径側への縮径を規制する可動部材とを備えることを特徴とするコルゲイト管継手である。
【0009】
本発明において、前記可動部材は、前記係止突起の内径側への縮径を規制する厚肉部と、前記コルゲイト管に押圧される当接部を有し、前記コルゲイト管が挿入されたとき前記可動部材が前記継手本体奥方向に移動するとともに、前記当接部が縮径するように構成することができる。
【0010】
また本発明は、コルゲイト管が挿入される内孔を有した継手本体と、前記内孔の軸方向に伸縮自在な弾性部材と、前記弾性部材を圧縮状態で保持する保持手段と、前記内孔にスライド可能に配置されたシール部材と、前記コルゲイト管に係合する爪部を有し、前記爪部の内径が前記コルゲイト管の外径よりも大きい状態で配置されたリテーナと、前記継手本体と連結されたナット部材とを設け、前記コルゲイト管の挿入によって、前記保持手段は前記弾性部材の圧縮状態を開放し、前記弾性部材の伸長にともなって、前記シール部材が軸方向に圧縮され、かつ前記リテーナが縮径して前記コルゲイト管に係合するように構成され、前記保持手段は、前記弾性部材の一端を支持するリング状支持部を有し、前記支持部の内外周から一方向に延長された二重環状の部材であって、二重環の外輪の先端には係止突起が形成され、二重環の内輪は前記シール部材の内周にまで延長された保持部材と、前記弾性部材の他端を支持し、前記係止突起に係止されたストッパとからなり、前記保持部材の外輪が継手本体の内周面に嵌挿されていることを特徴とするコルゲイト管継手である。
【0011】
上記の構成によれば、コルゲイト管を挿入すると、コルゲイト管の先端が可動部材を継手本体の奥側へ移動させ、もって弾性部材を圧縮状態から開放させる。このときの音と感触は明確に作業者に伝わる。弾性部材の付勢力は、シール部材を圧縮してコルゲイト管とのシール面圧を向上させると共に、リテーナを縮径させてコルゲイト管と係止する。したがって、コルゲイト管を挿入するだけで施工作業が完了すると共に、弾性部材が圧縮状態から開放される際の音や手応えを確実に認識することができる。また、弾性部材が圧縮状態にある間は、リテーナが縮径しないので、コルゲイト管を容易に引抜くことができる。
【0012】
本発明において、前記継手本体の内孔には、係止溝と、これに連なり前記係止溝よりも大径とした回避溝とを有し、前記ナット部材の外径側には、外周溝を形成し、前記係止溝と前記外周溝とを跨ぐようにストップリングを配置させて前記継手本体と前記ナット部材とを係止すると共に、前記ナット部材の他端側には大径部が形成され、前記大径部と前記継手本体の端部との間に分解用リングを備えることが好ましい。
【0013】
この構成によれば、分解用リングを取り外してナット部材をスライドさせると、ストップリングは回避溝に移動し、継手本体とナット部材との係止状態が開放される。この状態でコルゲイト管を引抜くと、ナット部材、リテーナ、シール部材、スプリングパックが全て継手本体から取り外すことができ、取り外された部材は、それぞれリユースしたり、材料ごとにリサイクルしたりすることが容易である。
【0014】
また、上記発明において、前記シール部材は、気密パッキンと、耐火パッキンと、耐火パッキンを保持するガイドとを含み、前記ガイドは、前記継手本体の内孔に形成された段部によって、前記段部よりも奥側への移動を規制されることが望ましい。
また或いは、上記発明において、前記シール部材は、気密パッキンと、耐火パッキンとを含み、前記気密パッキンが消失したとき、前記耐火パッキンは、前記弾性部材の伸長によって前記継手本体の内孔奥側への膨張を規制されることが望ましい。
【0015】
また、上記発明において、前記ナット部材は、前記リテーナの縮径を許容するテーパ面を有することが望ましい。
また、本発明において、前記ナット部材は、前記リテーナの一端を係止し、この係止部以外でリテーナと接触せぬヌスミ凹部が形成されていることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る請求項1又は請求項3に記載のコルゲイト管継手によれば、コルゲイト管を挿入すると、コルゲイト管の先端が可動部材を継手本体の奥側へ移動させ、弾性部材を圧縮状態から開放させる。弾性部材の付勢力は、シール部材を圧縮してコルゲイト管とのシール面圧を向上させると共に、リテーナを縮径させてコルゲイト管と係止する。したがって、コルゲイト管を挿入するだけで施工作業が完了すると共に、弾性部材が圧縮状態から開放される際の音や手応えを確実に認識することができる。また、弾性部材が圧縮状態にある間は、リテーナが縮径しないので、コルゲイト管を容易に引抜くことができる。
【0017】
また、請求項4に記載のコルゲイト管継手によれば、分解リングを取り外してナット部材をスライドさせると、係止リングは回避溝に移動し、継手本体とナット部材との係止状態が開放される。この状態でコルゲイト管を引抜くと、ナット部材、リテーナ、シール部材、スプリングパックが全て継手本体から取り外すことができ、取り外された部材は、それぞれリユースしたり、材料ごとにリサイクルしたりすることが容易である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
[第1の実施の形態]
本発明の第1の実施の形態を図1から図7を用いて説明する。図1は本発明のコルゲイト管継手の一実施例の半断面図を、図2は保持部材の一実施例の斜視図を、図3は弾性部材及び保持手段の一実施例の斜視図を、図4は弾性部材の実施の形態の斜視図、図5は本発明のコルゲイト管継手にコルゲイト管を挿入途中の状態の半断面図を、図6は本発明のコルゲイト管継手にコルゲイト管を接続施工完了した状態の半断面図を示している。また、図7は本発明のコルゲイト管継手が高温にさらされた場合の状態を示す半断面図である。
【0019】
図1に示すように、コルゲイト管継手1は、一端側からコルゲイト管Tが挿入される通孔部16を有する継手本体10と、通孔部16に奥側から順に、弾性部材71を圧縮状態で保持した保持手段70と、通孔部16にスライド可能に配置されたシール部材40と、コルゲイト管Tに係合する爪部52を有するリテーナ50と、一方に大径となしたヘッド部21と他方に小径とした挿入部24とが形成され、この挿入部24が継手本体10の通孔部16に挿入されるようになした押ナット20とを有する。なお、継手本体10の他端側の外表面には他の配管部材と接続するための雄ネジ部14と雄ネジ部14を他の配管部材に螺合するための工具係部15が形成されている。
【0020】
継手本体10の通孔部16には、係止段部18aと、係止段部18aに連なり係止段部18aよりも大径とした回避溝18bが形成されている。一方、押ナット20の挿入部24には係止凹溝25が形成されている。そして、係止段部18aと係止凹溝25を跨ぐようにストップリング61が配置されている。ストップリング61は、弾性を有する金属製のC型形状のリングで、継手本体10の通孔部16に押ナット20の挿入部24を挿入する際に、係止溝25に縮径させて収納し、係止段部18aの位置に来たとき若干拡径し、これにより継手本体10と押ナット20とが予め連結されている。
【0021】
そして、継手本体10の一端面と押ナット20のヘッド部21との間には、所定の厚さの分解用リング63が挟着されており、この分解用リング63を取外すと、分解用リング63の厚さ分だけ継手本体10の通孔部16に押ナット20を押し込むことができるようになっている。すると、ストップリング61は係止段部18aの位置から回避溝18bに移動し、ここでストップリング61が拡径するので、継手本体10と押ナット20との連結が開放される。これによって、継手本体10と押ナット20とを分解することが可能となっている。
【0022】
押ナット20の挿入部24の内面側には、先端に向かって拡径するテーパ内面28が形成され、このテーパ内面28に対向するように形成されたテーパ外面54を有し、内径側にコルゲイト管Tの谷部T4に係り合う爪部52を有するリテーナ50が配置されている。そして、このリテーナ50の爪部52の内径は、無負荷状態ではコルゲイト管Tの外形よりも大としている。従って、コルゲイト管Tの挿入の段階では、リテーナ50の爪部52はコルゲイト管Tの山部T2に係り合うことなくスムースに挿入することができる。
【0023】
このリテーナ50は、継手本体10の通孔部16内において、シール部材40と押ナット20との間に配置されたリング状の部材である。そして、その後部が一体のリング状となっており、前部は軸方向の分割部53によって複数のセグメント(一例で8個)に分かれている。各セグメントの先端は、半径方向内側に張り出した爪部52が設けられている。リテーナ50は、例えば母体がプラスチック製、爪部52が真ちゅう製であり、両者は一体にモールド成形されている。
【0024】
次にシール部材40は、コルゲイト管Tの外周面をシールするリング状ゴム製弾性部材で、外径側は、継手本体10の通孔16の内周面の内径よりも大きく設定し、継手本体10の通孔部16に気密に密着するように圧入されるとともに、継手本体10の通孔部16の内周面に沿って軸方向に移動可能に配置されている。一方、内径側は、コルゲイト管Tの外径よりも若干小さく設けられている。なお、シール部材40は、特に長期間にわたってシール性能を保持する必要性から、耐ガス性を考慮しニトリルブタジエンゴム(NBR)が望ましい。
【0025】
そして、シール部材40の一端側には、断面L形の金属ガイド42が、接着されて一体化されて、金属ガイド42には耐火パッキン44が備えられている。
【0026】
耐火パッキン44は、例えば、原料ゴムと無発泡状態で熱膨張する黒鉛層間化合物と必要に応じ充填材、軟化材、加硫剤等を混練して得られたゴム配合物を、金型に充填して成形し、ついでプレス加硫することにより製造される。黒鉛層間化合物は、例えば黒鉛(六員環重合体層が層状に重なり合った炭素の六方晶系結晶体)に硫酸を反応させることにより得られる層間に硫酸銀が結合した化合物であり、170度以上に加熱されると無発泡状態で体積が数倍乃至数十倍にも増加し、800度〜1000度に加熱すると見掛けの体積は100乃至250倍に増加する。原料ゴムとしては、天然ゴム(NR)、ニトリルブタジエンゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、エチレン−プロピレンゴム(EPDM)、シリコーンゴム(Q)等を用い得る。
【0027】
コルゲイト管継手1が火災等で高温にさらされた場合、シール部材40は焼失してしまうが、耐火パッキン44が熱膨張し、継手本体10とコルゲイト管Tとの空間に充満して、コルゲイト管Tの外径をシールすることで、火災時にガス漏れが生じて被害を拡大させることを防止している。特に、金属ガイド42は、継手本体10の通孔16の段部19に係止される外径寸法をなしており、耐火パッキン44が膨張する際に金属ガイド42が段部19に係止され、通孔部16の奥側(図の右方向)には移動不可能となるので、耐火パッキン44は通孔16の入口側(図の金属ガイド42から左側)に向かって膨張し、シール面圧を確保しやすくなっている。
【0028】
また、図7に示すように、コルゲイト管継手1が火災等で高温にさらされた場合、金属ガイド42は、弾性部材71の伸長によって、継手本体10の通孔部16の奥側(図の右方向)への移動を規制することができる。この場合、金属ガイド42は段部19に係止される外形寸法である必要はない。そして、シール部材は消失してしまうので、弾性部材71は更に伸長して金属ガイド42を支持することとなる。耐火パッキン44は通孔16の奥側への膨張が規制され、入口側(図の金属ガイド42から左側)に向かって膨張するので、シール面圧を確保しやすくなっている。
なお、図7に示した弾性部材71の伸長によって耐火パッキン44の膨張を規制する形態においては、シール部材(気密パッキン)40と耐火パッキン44との間に必ずしも金属ガイド42を介在させる必要はなく、例えばシール部材(気密パッキン)40と耐火パッキン44とを直接接着することができる。この場合、火災等でシール部材(気密パッキン)40が消失すると、弾性部材71が伸長して、保持部材72の支持部72aの背面が耐火パッキン44の通孔16の奥側への膨張を規制することとなる。
【0029】
特に、通常の施工状態では、シール部材40は継手本体10の通孔部16の内周面と気密にシールしているから、シール部材40の外周面と通孔部16の内周面との接触面積は大きい方が好ましい。シール部材が消失した場合でも、弾性部材71が金属ガイド42を支持することとなるので、段部19を設けなくとも金属ガイド42の通孔部16の奥側への移動が規制される。したがって、段部19を設けない形態においては、シール部材40の外周面と通孔部16の内周面との接触面積を大きく設けることができる。
【0030】
保持手段70を構成する保持部材72は、図2に示すように、金属製の部材でリング状の支持部72aと、この支持部72aから突出させた先端に形成した係止凸部73を有する。保持手段70は、図3に示すように、保持部材72と、保持部材72の支持部72aに一端を支持されるように挿入された弾性部材71と、係止凸部73に係止されたリング状のストッパ75と、保持部材72の内周面に挿入された可動部材80とからなっている。そして、可動部材80の外周面で係止凸部73が縮径不能に保持され、弾性部材71が圧縮状態に保たれている。
【0031】
可動部材80は、円筒状の樹脂製部材で、保持部材72の内周面に嵌合される厚肉部81とシール部材40の内部にまで延長された薄肉部82とからなっている。即ち、厚肉部81が保持部材72の係止凸部73を縮径不能に支持している部分で、薄肉部82が(後述する)挿入されたコルゲイト管の先端が当接して、コルゲイト管の挿入押込み力を受ける部分である。
【0032】
弾性部材71は、ステンレス製コイルスプリングで形成されている。実施例においては断面円状のコイルスプリングを示しているが、図4(a)に示す異形断面ばね(角ばね)71A、図4(b)に示す円すいコイルばね71B、図4(c)に示すコイルドウエイブスプリング71C、図4(d)に示す波形座金71D1と平座金71D2との組合せ、図4(e)に示す微小コイルばね71Eを円状に配置させた形態、図4(f)に示す竹の子ばね71Fを採用することもできる。
【0033】
この中で、円すいコイルばね71B、コイルドウエイブスプリング71C、波形座金71D1と平座金71D2との組合せ、および竹の子ばね71Fは、弾性部材を小型化することにおいて有益で、また、コイルドウエイブスプリング71C、および微小コイルばね71Eは円周上に均一な反力を付勢できる点で有益である。
【0034】
特に、コイルドウエイブスプリング71Cは、その形状によってばね定数を選択することが容易で、一般のコイルスプリングに比べて全長を短くすることができ、また、円周上に均一な反力を付勢できるので、コルゲイト管継手をコンパクトにできるとともに、シール部材40を均一に圧縮できるために好適である。
【0035】
また、押ナット20の挿入部24には、Oリング溝23が形成され、ここに水密Oリング47が装着されている。また、押ナット20の挿通孔部22には、水密パッキン48が備えられている。従って、コルゲイト管用継手の内部に外部からの水分や粉塵等の進入を阻止している。
【0036】
また、押ナット20には、挿入孔部22から挿入部24へ貫通する通気穴26が設けられ、選択透過性部材60が設けられている。
選択透過性部材60は、四フッ化エチレン樹脂粉を押し固めたのち、延伸加工して成形した連続多孔質膜を含むシート材からなり、0.1〜5μmの連続した微細孔を有し、空気や水蒸気のような気体は通すが、水などの液体ははじくという特性を備えているものがあげられる。あるいはポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルアクリレート、ポリスチレン、エチレン酢酸ビニル共重合体、四フッ化エチレン重合体等の熱可塑性樹脂粉体から成形した連続気孔を有する多孔質体であるとか、またポリビニルアルコールとホルムアルデヒドを酸触媒と共に反応させることで成形した連続気孔を有する多孔質シート材等を用いてもよい。
【0037】
これらの選択透過性部材は、空気や水蒸気のような気体を透過する通気性、透湿性を有し、一方で水や薬液等の液体は透過させない防水性を兼ね備えるもので、他に防塵性、耐薬品性、耐熱性、耐候性等にも優れる。従って、外から継手内への固体(塵芥など)及び液体(水や露など)の透過、侵入は阻止して配管施工後長期にわたって外部からの水分や塵芥の侵入を防止し内部が腐食するなどの問題が生じない。
【0038】
具体的には、コルゲイト管Tの外周に被覆した樹脂被覆層T6の内面には管の長手方向に(図示しない)凹凸が設けられており、コルゲイト管を施工するときに誤って管に釘を打たれると、漏れ出たガスが凹凸に沿って選択透過性部材60まで導かれ、選択透過性部材60は、ガス、空気等の気体は透過するので、内封圧力の降下を検出したり、ガス漏れセンサ等を利用することによって、漏れの有無を検知し得るようにしている。
【0039】
続いて、コルゲイト管継手1にコルゲイト管Tを接続する手順とその作用について図5及び図6を用いて詳細に説明する。
【0040】
図5に示すように、コルゲイト管継手1にコルゲイト管Tを挿入すると、リテーナ50の内径がコルゲイト管Tの外径よりも大としているので、金属ガイド42まではコルゲイト管Tをスムースに挿入することができる。そして、シール部材40の内周面で若干の手応えを感じつつ、更にコルゲイト管Tを押し込むと、コルゲイト管Tの先端は可動部材80の薄肉部82端面に当接する。
【0041】
そして更に力を加えると、コルゲイト管の挿入とともに可動部材80が、通孔部16の奥方向にスライドし、可動部材80の厚肉部81が保持部材72の内周面から離間する。すると、図6に示すように、保持部材72の係止凸部73が縮径して、ストッパ75が係止凸部73から離脱する。同時に弾性部材71が伸長し、一端はストッパ75を介して通孔部16の当接段部11に当接し、他端は保持部材72を介して、シール部材40を押圧し、通孔部16の入口方向へスライドさせる。また、金属ガイド42、耐火パッキン44もスライドすることとなる。
【0042】
そして、金属ガイド42は、リテーナ50の爪部52を押圧する。リテーナ50は、その背面側にテーパ外面54が形成され、押ナット20のテーパ内面28に押付けられることとなるので、爪部52は縮径してコルゲイト管Tの谷部に係り合い、このことによって、コルゲイト管Tとコルゲイト管継手1とが強固に連結し、施工が完了する。
【0043】
すなわち、コルゲイト管Tを挿入するだけで施工作業が完了すると共に、弾性部材71が圧縮状態から開放される際の音や手応えを確実に認識することができる。
【0044】
また、リテーナ50と保持部材72の間に位置するシール部材40は、弾性部材71の付勢力を受けて軸方向に圧縮され、シール部材40とコルゲイト管Tとのシール面圧を向上することになるので、例えば多少扁平や変形のあるコルゲイト管であっても気密にシールすることができる。また、弾性部材71は、図6の如く伸長した状態でも付勢力を付加されるように設定しておくことによって、たとえシール部材40の永久歪が進行したとしてもシール面圧を一定以上に維持することができる。特に、リテーナ50は押ナット20のテーパ内面28によって縮径し、爪部52がコルゲイト管の谷部に係り合っているので、リテーナ50がこの状態で固定され、弾性部材71による付勢力によってシール部材40を確実に圧縮することができる。
【0045】
さて、コルゲイト管は、その施工手順において、コルゲイト管の谷部を管軸に直角となるように切断することが基本である(例えば図6を参照)。しかしながら、コルゲイト管の先端を若干斜めに切断してしまったり、山部で切断してしまったりすることがある。あるいは、コルゲイト管の切断は施工手順どおりであっても、狭い施工現場で、コルゲイト管を管継手に対して若干斜めに挿入せざるを得ない場合もある。
【0046】
このような場合にでも、施工が確実となるように、可動部材は、図16に示すように、可動部材80Aに置き換えることもできる。図16(a)は可動部材80Aの斜視図を、図16(b)は図1における可動部材80を可動部材80Aに置き換えた部分断面図を示している。
【0047】
図示するように、可動部材80Aは、円筒状の樹脂製部材で、保持部材72の内周面に嵌合される厚肉部81Aと、厚肉部81Aから軸方向に延長された薄肉部82Aと、薄肉部82Aの先端に形成された当接部83Aと、当接部83Aから薄肉部82Aに向かって切り欠かれたスリット84Aとを有する。当接部83Aは厚肉部81Aとほぼ同じ外径である。
【0048】
そして、コルゲイト管Tが挿入されると、コルゲイト管Tの先端が当接部83Aに当接して可動部材80Aを継手本体10の奥方向にスライドさせて追いやる。すると、保持部材72の係止凸部73が縮径して、ストッパ75が係止凸部73から離脱する。同時に弾性部材71が伸長し、一端はストッパ75を介して通孔部16の当接段部11に当接し、他端は保持部材72を介して、シール部材40を押圧し、通孔部16の入口方向へスライドさせる。
【0049】
このとき、可動部材80Aは当接部83Aから薄肉部82Aに向かって切り欠かれたスリット84Aとを有するので、係止凸部73の縮径力で当接部83Aが縮径することとなる。
【0050】
すなわち、当接部83Aは厚肉部81Aとほぼ同じ外径であるので、コルゲイト管Tの先端を若干斜めに切断してしまったり、山部で切断してしまったりした場合、あるいは、コルゲイト管の切断は施工手順どおりであっても、狭い施工現場で、コルゲイト管Tをコルゲイト管継手1に対して若干斜めに挿入せざるを得ない場合であっても、コルゲイト管Tの山部あるいは谷部に関わらず先端部分が確実に可動部材80Aを押圧することができる。
【0051】
また、可動部材80Aは樹脂製で、かつ可動部材80Aは当接部83Aから薄肉部82Aに向かって切り欠かれたスリット84Aとを有するので、係止凸部73の縮径力で当接部83Aが縮径することとなり、係止凸部73からストッパ75が離脱することを阻害する虞がない。
【0052】
続いて、コルゲイト管継手1とコルゲイト管Tとの接続を分解する手順とその作用について図8及び図9を用いて詳細に説明する。図8は分解リングを取り除き、押ナットをスライドさせた状態の半断面図、図9は継手本体からコルゲイト管を引き出した状態の判断面図である。
【0053】
まず、継手本体10の一端面と押ナット20のヘッド部21との間に装着されている分解用リング63を取外し、押ナット20を継手本体10の通孔部16に押し込む。すると、図7に示すように、ストップリング61は係止段部18aの位置から回避溝18bに移動し、ここでストップリング61が拡径するので、継手本体10と押ナット20との連結が開放される。
【0054】
次に、コルゲイト管Tを引き抜くと、図9に示すように、弾性部材71に押出されるように、コルゲイト管Tと共に、押ナット20、リテーナ50、シール部材40などが継手本体10から抜き出される。また、弾性部材71及び可動部材80も容易に取り出すことができる。
【0055】
そして、コルゲイト管Tからシール部材40、リテーナ50、押ナット20の順に取外すことができるので、ステンレス製のコルゲイト管T、黄銅製の継手本体10や押ナット20、合成ゴム製のシール部材40などその材質ごとに分別することができ、リサイクルすることが容易にできる。またコルゲイト管継手を構成する部品は再び組み立てて再利用(リユース)することもできる。
【0056】
[第2の実施の形態]
続いて、第2の実施の形態について、図10および図11を用いて説明する。図10は本発明のコルゲイト管継手の第2の実施例の半断面図を、図11は継手本体からコルゲイト管を引き出した状態の半断面図をそれぞれ示している。
なお、図1から図9に示したコルゲイト管用継手と同一の構成は、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0057】
図10に示すように、コルゲイト管継手1Aは、一端側からコルゲイト管Tが挿入される通孔部16を有する継手本体10と、通孔部16に奥側から順に、コイルドウエイブスプリング(弾性部材)71Cを圧縮状態で保持した保持手段70Aと、通孔部16にスライド可能に配置されたシール部材40と、コルゲイト管Tに係合する爪部52Aを有するリテーナ50Aと、一方に大径となしたヘッド部21と他方に小径とした挿入部24とが形成され、この挿入部24が継手本体10の通孔部16に挿入されるようになした押ナット20とを有する。
【0058】
リテーナ50Aは、一端部55が切欠きを有するリング状となっており、前部は(図示しない)軸方向の分割部によって複数のセグメント(一例で8個)に分かれ爪部52Aをなしている。そして、プレス等を用いて、全体を金属製で形成している。
【0059】
また、リテーナ50Aの一端部55は、押ナット20Aの先端内周面に形成された内面係止溝27に係止されている。また、押ナット20Aの内面係止溝27に隣接してヌスミ凹部29が形成されている。
【0060】
そして、コルゲイト管Tが挿入されると、可動部材80が、通孔部16の奥方向にスライドし、可動部材80の厚肉部81が保持部材72の内周面から離間する。すると、保持部材72の係止凸部73が縮径して、ストッパ75が係止凸部73から離脱する。同時に、コイルドウエイブスプリング71Cが伸長し、一端はストッパ75を介して通孔部16の当接段部11に当接し、他端は保持部材72を介して、シール部材40を押圧し、通孔部16の入口方向へスライドさせる。また、金属ガイド42、耐火パッキン44もスライドすることとなる。
【0061】
そして、金属ガイド42は、リテーナ50Aの爪部52Aを押圧する。リテーナ50Aは、その一端部55が押ナット20Aの内面係止溝27に係止されているので、一端部55を支点として爪部52Aが縮径し、コルゲイト管Tの谷部に係り合い、このことによって、コルゲイト管Tとコルゲイト管継手1Aとが強固に連結し、施工が完了する。
【0062】
すなわち、コルゲイト管Tを挿入するだけで施工作業が完了すると共に、コイルドウエイブスプリング71Cが圧縮状態から開放される際の音や手応えを確実に認識することができる。
【0063】
また、リテーナ50Aと保持部材72の間に位置するシール部材40は、コイルドウエイブスプリング71Cの付勢力を受けて軸方向に圧縮され、シール部材40とコルゲイト管Tとのシール面圧を向上することになるので、例えば多少扁平や変形のあるコルゲイト管であっても気密にシールすることができる。また、コイルドウエイブスプリング71Cは、図10の如く伸長した状態でも付勢力を付加されるように設定しておくことによって、たとえシール部材40の永久歪が進行したとしてもシール面圧を一定以上に維持することができる。
【0064】
また、押ナット20Aの内面係止溝27に隣接してヌスミ凹部29が形成されているので、コルゲイト管Tに引抜き方向の力が加わると、リテーナ50Aは一端部55を支点としてヌスミ凹部29の中まで移動可能となり、更に爪部52Aを縮径方向に変形させて、より強固にコルゲイト管Tの引抜きを阻止することができる。
【0065】
一方、コルゲイト管Tに押し込み方向の力が加わった場合、爪部52Aが金属ガイド42に当接しているので、爪部52Aが拡径されることがなく、コルゲイト管Tが押し込まれることもない。
【0066】
さらに、リテーナ50Aは押ナット20Aの内面係止溝27と、コルゲイト管Tの谷部T4の谷部に係り合っているので、リテーナ50Aがこの状態で固定され、コイルドウエイブスプリング71Cによる付勢力によってシール部材40を確実に圧縮することができる。
【0067】
コルゲイト管継手1Aとコルゲイト管Tとの接続を分解する手順は、コルゲイト管継手1の場合と同様である。継手本体10の一端面と押ナット20Aのヘッド部21との間に装着されている分解用リング63を取外し、押ナット20Aを継手本体10の通孔部16に押し込む。すると、ストップリング61は係止段部18aの位置から回避溝18bに移動し、ここでストップリング61が拡径するので、継手本体10と押ナット20Aとの連結が開放される。
【0068】
次に、コルゲイト管Tを引き抜くと、図11に示すように、コイルドウエイブスプリング71Cに押出されるように、コルゲイト管Tと共に、押ナット20A、リテーナ50A、シール部材40などが継手本体10から抜き出される。また、コイルドウエイブスプリング71C及び可動部材80も容易に取り出すことができる。
【0069】
そして、コルゲイト管Tからシール部材40、リテーナ50A、押ナット20Aの順に取外すことができるので、ステンレス製のコルゲイト管T、黄銅製の継手本体10や押ナット20A、合成ゴム製のシール部材40などその材質ごとに分別することができ、リサイクルすることが容易にできる。またコルゲイト管継手を構成する部品は再び組み立てて再利用(リユース)することもできる。
【0070】
[第3の実施の形態]
続いて、第3の実施の形態について、図12から図14を用いて説明する。図12は本発明のコルゲイト管継手の第3の実施例の半断面図を、図13は本発明のコルゲイト管継手の第3の実施例における保持部材の一実施例の斜視図を、図14は本発明のコルゲイト管継手にコルゲイト管の第3の実施例の接続施工完了した状態の半断面図を、図15は継手本体からコルゲイト管を引き出した状態の半断面図をそれぞれ示している。
なお、第1の実施の形態及び第2の実施の形態で示したコルゲイト管用継手と同一の構成は、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0071】
図12に示すように、コルゲイト管継手1Bは、一端側からコルゲイト管Tが挿入される通孔部16を有する継手本体10と、通孔部16に奥側から順に、コイルドウエイブスプリング(弾性部材)71Cを圧縮状態で保持した保持手段70Bと、通孔部16にスライド可能に配置されたシール部材40と、コルゲイト管Tに係合する爪部52Aを有するリテーナ50Aと、一方に大径となしたヘッド部21と他方に小径とした挿入部24とが形成され、この挿入部24が継手本体10の通孔部16に挿入されるようになした押ナット20Aとを有する。
【0072】
保持手段70Bは、保持部材72Bと、ストッパ75Bで構成され、継手本体10Bの内周突部11aに嵌挿されている。保持部材72Bは、図13に示すように、全体がリング状の部材で、内部に弾性部材71Cを収容するように断面がコの字の二重環状になっている。二重環の外輪の先端には、係止凸部73Bが形成されて、二重環の内輪はシール部材40の内周にまで延長されている。そして、コの字の奥端で弾性部材71Cの一端を支持し、係止凸部73Bに係止されたストッパ75Bが弾性部材71Cの他端を支持するように弾性部材71Cを圧縮状態で収容されている。
【0073】
そして、図14に示すように、コルゲイト管Tが挿入されると、コルゲイト管Tの先端が保持部材72Bの内輪を押圧し、保持部材72Bを継手本体10Bの奥端の保持部材収容部11bに押しやる。すると、保持部材72Bの外輪側が拡径してストッパ75Bが係止凸部73Bから離脱する。同時に弾性部材71Cが伸長し、シール部材40を押圧して、通孔部16の入口方向へスライドさせる。また、金属ガイド42、耐火パッキン44もスライドすることとなる。
【0074】
そして、金属ガイド42は、リテーナ50Aの爪部52Aを押圧する。リテーナ50Aは、その一端部55が押ナット20Aの内面係止溝27に係止されているので、一端部55を支点として爪部52Aが縮径し、コルゲイト管Tの谷部に係り合い、このことによって、コルゲイト管Tとコルゲイト管継手1とが強固に連結し、施工が完了する。
【0075】
すなわち、コルゲイト管Tを挿入するだけで施工作業が完了すると共に、弾性部材71Cが圧縮状態から開放される際の音や手応えを確実に認識することができる。
【0076】
また、シール部材40は、弾性部材71Cの付勢力を受けて軸方向に圧縮され、シール部材40とコルゲイト管Tとのシール面圧を向上することになるので、例えば多少扁平や変形のあるコルゲイト管であっても気密にシールすることができる。また、弾性部材71Cは、伸長した状態でも付勢力を付加されるように設定しておくことによって、たとえシール部材40の永久歪が進行したとしてもシール面圧を一定以上に維持することができる。
【0077】
また、押ナット20Aの内面係止溝27に隣接してヌスミ凹部29が形成されているので、コルゲイト管Tに引抜き方向の力が加わると、リテーナ50Aは一端部55を支点としてヌスミ凹部29の中まで移動可能となり、更に爪部52Aを縮径方向に変形させて、より強固にコルゲイト管Tの引抜きを阻止することができる。
【0078】
一方、コルゲイト管Tに押し込み方向の力が加わった場合、爪部52Aが金属ガイド42に当接しているので、爪部52Aが拡径されることがなく、コルゲイト管Tが押し込まれることもない。
【0079】
さらに、リテーナ50Aは押ナット20Aの内面係止溝27と、コルゲイト管Tの谷部T4の谷部に係り合っているので、リテーナ50Aがこの状態で固定され、弾性部材71Cによる付勢力によってシール部材40を確実に圧縮することができる。
【0080】
コルゲイト管継手1Bとコルゲイト管Tとの接続を分解する手順は、コルゲイト管継手1の場合と同様である。継手本体10の一端面と押ナット20Aのヘッド部21との間に装着されている分解用リング63を取外し、押ナット20Aを継手本体10Bの通孔部16に押し込む。すると、ストップリング61は係止段部18aの位置から回避溝18bに移動し、ここでストップリング61が拡径するので、継手本体10と押ナット20Aとの連結が開放される。
【0081】
次に、図15に示すように、コルゲイト管Tを引き抜くと、弾性部材71Cに押出されるように、コルゲイト管Tと共に、押ナット20A、リテーナ50A、シール部材40などが継手本体10から抜き出される。また、弾性部材71C及び保持部材72Bも容易に取り出すことができる。
【0082】
そして、コルゲイト管Tからシール部材40、リテーナ50A、押ナット20Aの順に取外すことができるので、ステンレス製のコルゲイト管T、黄銅製の継手本体10や押ナット20A、合成ゴム製のシール部材40などその材質ごとに分別することができ、リサイクルすることが容易にできる。またコルゲイト管継手を構成する部品は再び組み立てて再利用(リユース)することもできる。
【0083】
以上、説明したように、本発明に係るコルゲイト管継手によれば、
(1)コルゲイト管を所定の位置に挿入していない状態では、リテーナ(抜止め部材)がコルゲイト管に係り合うことがなく、コルゲイト管を所定の位置に挿入すると、弾性部材の圧縮状態が開放されて、リテーナがコルゲイト管に係り合うとともに、弾性部材が反発するときの音や手応えを確実に認識することができる。
(2)圧縮状態から開放された弾性部材は、シール部材を同時に圧縮することとなるので、コルゲイト管に多少の扁平や変形があったとしても、コルゲイト管の外周面を確実にシールすることができる。
(3)また、継手本体の通孔部16には、係止段部18aと、これに連なり係止段部18aよりも大径とした回避溝18bとを有し、ナット部材20の外径側には、係止凹溝25を形成し、係止段部18aと係止凹溝25とを跨ぐようにストップリング61を配置させて継手本体10とナット部材20とを係止すると共に、ナット部材20の他端側にはヘッド部21が形成され、ヘッド部21と継手本体10の端部との間に分解用リング63を備える構成であるので、分解用リング63を取外し、ナット部材20を押し込むと継手本体10とナット部材20との連結が解除され、コルゲイト管継手を構成する部品とともにコルゲイト管を分解することができる。したがって、各部材のリサイクル・リユースを容易に行うことができる。
【0084】
本発明に係るコルゲイト管継手の形状は一端に雄ねじ部を有する片ねじソケットに限らず、両ソケット、エルボ、ティー、または雌ねじを有するものであってもよい。またガス栓やガスメータなどの機器の端部に本発明の継手構造を一体的に設けることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】本発明のコルゲイト管継手の一実施例の半断面図である。
【図2】保持部材の一実施例の斜視図である。
【図3】弾性部材及び保持手段の一実施例の斜視図である。
【図4】弾性部材の実施の形態の斜視図である。
【図5】本発明のコルゲイト管継手にコルゲイト管を挿入途中の状態の半断面図である。
【図6】本発明のコルゲイト管継手にコルゲイト管を接続施工完了した状態の半断面図である。
【図7】本発明のコルゲイト管継手が高温にさらされた場合の状態を示す半断面図である。
【図8】分解リングを取り除き、押ナットをスライドさせた状態の半断面図である。
【図9】継手本体からコルゲイト管を引き出した状態の判断面図である。
【図10】本発明のコルゲイト管継手の第2の実施例の半断面図である。
【図11】本発明のコルゲイト管継手の第2の実施例において、継手本体からコルゲイト管を引き出した状態の半断面図である。
【図12】本発明のコルゲイト管継手の第3の実施例の半断面図である。
【図13】本発明のコルゲイト管継手の第3の実施例における保持部材の一実施例の斜視図である。
【図14】本発明のコルゲイト管継手にコルゲイト管の第3の実施例の接続施工完了した状態の半断面図である。
【図15】継手本体からコルゲイト管を引き出した状態の半断面図である。
【図16】可動部材の別の形態を示し、(a)は可動部材の斜視図、(b)は図1における可動部材80を可動部材80Aに置き換えた部分断面図である。
【符号の説明】
【0086】
1、1A、1B:コルゲイト管継手、
10:継手本体、14:雄ねじ部、15:工具掛部、16:通孔部、18a:係止段部、18b:回避溝、19:段部、
20、20A:押ナット、21:ヘッド部、22:挿通孔部、23:Oリング溝、24:挿入部、25:係止凹溝、26:通気穴、27:内面係止溝、28:テーパ内面、29:ヌスミ凹部、
40:シール部材(気密パッキン)、42:金属ガイド、44:耐火パッキン、47:水密Oリング、48:水密パッキン、
50、50A:リテーナ、52、52A:爪部、53:分割部、54:テーパ外面、55:一端部、
60:選択透過性部材、61:ストップリング、63:分解用リング、
70、70A、70B:保持手段、
71:弾性部材、71A:異形断面ばね(角ばね)、71B:円すいコイルばね、71C:コイルドウエイブスプリング、71D1:波形座金、71D2:平座金、71E:微小コイルばね、71F:竹の子ばね
72:保持部材、72a:支持部、73:係止凸部、75:ストッパ、
80、80A:可動部材、81、81A:厚肉部、82、82A:薄肉部、83A:当接部、84A:スリット、
T:コルゲイト管、T2:山部、T4:谷部、T6:樹脂被覆層、


【特許請求の範囲】
【請求項1】
コルゲイト管が挿入される内孔を有した継手本体と、
前記内孔の軸方向に伸縮自在な弾性部材と、前記弾性部材を圧縮状態で保持する保持手段と、前記内孔にスライド可能に配置されたシール部材と、
前記コルゲイト管に係合する爪部を有し、前記爪部の内径が前記コルゲイト管の外径よりも大きい状態で配置されたリテーナと、
前記継手本体と連結されたナット部材とを設け、
前記コルゲイト管の挿入によって、前記保持手段は前記弾性部材の圧縮状態を開放し、前記弾性部材の伸長にともなって、前記シール部材が軸方向に圧縮され、かつ前記リテーナが縮径して前記コルゲイト管に係合するように構成され、
前記保持手段は、前記弾性部材の一端を支持するリング状の支持部と、該支持部から突出した先端に形成した係止突起を有する保持部材と、前記弾性部材の他端を支持し、前記係止突起に係止されたストッパと、前記保持部材の内孔に挿通され、前記係止突起の内径側への縮径を規制する可動部材とを備えることを特徴とするコルゲイト管継手。
【請求項2】
前記可動部材は、前記係止突起の内径側への縮径を規制する厚肉部と、前記コルゲイト管に押圧される当接部を有し、前記コルゲイト管が挿入されたとき前記可動部材が前記継手本体奥方向に移動するとともに、前記当接部が縮径するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載のコルゲイト管継手。
【請求項3】
コルゲイト管が挿入される内孔を有した継手本体と、
前記内孔の軸方向に伸縮自在な弾性部材と、前記弾性部材を圧縮状態で保持する保持手段と、前記内孔にスライド可能に配置されたシール部材と、
前記コルゲイト管に係合する爪部を有し、前記爪部の内径が前記コルゲイト管の外径よりも大きい状態で配置されたリテーナと、
前記継手本体と連結されたナット部材とを設け、
前記コルゲイト管の挿入によって、前記保持手段は前記弾性部材の圧縮状態を開放し、前記弾性部材の伸長にともなって、前記シール部材が軸方向に圧縮され、かつ前記リテーナが縮径して前記コルゲイト管に係合するように構成され、
前記保持手段は、前記弾性部材の一端を支持するリング状支持部を有し、前記支持部の内外周から一方向に延長された二重環状の部材であって、二重環の外輪の先端には係止突起が形成され、二重環の内輪は前記シール部材の内周にまで延長された保持部材と、前記弾性部材の他端を支持し、前記係止突起に係止されたストッパとからなり、
前記保持部材の外輪が継手本体の内周面に嵌挿されていることを特徴とするコルゲイト管継手。
【請求項4】
前記継手本体の内孔には、係止溝と、これに連なり前記係止溝よりも大径とした回避溝とを有し、前記ナット部材の外径側には、外周溝を形成し、前記係止溝と前記外周溝とを跨ぐようにストップリングを配置させて前記継手本体と前記ナット部材とを係止すると共に、前記ナット部材の他端側には大径部が形成され、前記大径部と前記継手本体の端部との間に分解用リングを備えることを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載のコルゲイト管継手。
【請求項5】
前記シール部材は、気密パッキンと、耐火パッキンと、耐火パッキンを保持するガイドとを含み、前記ガイドは、前記継手本体の内孔に形成された段部によって、前記段部よりも奥側への移動を規制されることを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載のコルゲイト管継手。
【請求項6】
前記シール部材は、気密パッキンと、耐火パッキンとを含み、前記気密パッキンが消失したとき、前記耐火パッキンは、前記弾性部材の伸長によって前記継手本体の内孔奥側への膨張を規制されることを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載のコルゲイト管継手。
【請求項7】
前記ナット部材は、前記リテーナの縮径を許容するテーパ面を有することを特徴とする請求項1乃至6の何れかに記載のコルゲイト管継手。
【請求項8】
前記ナット部材は、前記リテーナの一端を係止し、この係止部以外でリテーナと接触せぬヌスミ凹部が形成されていることを特徴とする請求項1乃至6の何れかに記載のコルゲイト管継手。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2010−53975(P2010−53975A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−220336(P2008−220336)
【出願日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【出願人】(000005083)日立金属株式会社 (2,051)
【出願人】(000220262)東京瓦斯株式会社 (1,166)
【出願人】(000106298)株式会社サンコー (39)
【Fターム(参考)】