説明

コルゲートチューブとそれを用いたハーネス配索構造

【課題】屈曲すべき方向には柔軟に屈曲し、屈曲を阻止すべき方向には確実に屈曲を抑止することのできるコルゲートチューブとそれを用いたハーネス配索構造を提供する。
【解決手段】周方向の凸条2と凹溝3とを交互に複数並列に配設したハーネス挿通用のコルゲートチューブ1において、複数の凹溝3をチューブ長手方向に横断して直線的に続く屈曲抑止用のリブ4を形成し、凹溝内でリブの両側を湾曲壁5とした。凹溝3の底部に湾曲底壁7を形成した。コルゲートチューブ内に電線を挿通し、コルゲートチューブ1を給電装置31,51のケース32,52内に屈曲して伸縮自在に配置し、リブ4をコルゲートチューブの屈曲部42,56の屈曲外径r1,r5と屈曲内径r2,r6との中間の端部に配置しつつチューブ長手方向に延長した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両ボディに沿って配索されたり、スライドドアやスライドシート等の給電装置に使用されるハーネス外装部材であるコルゲートチューブとそれを用いたハーネス配索構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図6は、従来のハーネス外装部材の一形態、図7は、ハーネス外装部材を用いたハーネス配索構造の一形態を示すものである(特許文献1参照)。
【0003】
図6の如く、このハーネス外装部材61は、合成樹脂で形成された複数の矩形筒状のリンク駒62をその軸部63と孔部64とで相互に連結してキャタピラ状に延長し、軸部63の径方向に屈曲自在で、軸部63の軸線方向に屈曲不能に構成した所謂ケーブルベアと呼称されるものである。
【0004】
図7の如く、ハーネス外装部材61には複数本の絶縁被覆電線(ワイヤハーネス)65が挿通され、ハーネス外装部材61の両端からワイヤハーネス65が導出されて一方の電源側と他方の負荷側とに接続されている。ハーネス外装部材61はケース66の内側空間においてU字状に屈曲されて上下二層に平行に配置されている。
【0005】
ハーネス外装部材61の一端がケース66の上部に固定され、一端側のハーネス部分65aが車両ボディ側のワイヤハーネスにコネクタ接続され、ハーネス外装部材61の他端側(符号65で代用)はケース内を移動自在で、他端側のハーネス部分がケース66のカバー67を経てシート側のワイヤハーネスにコネクタ接続される。
【0006】
シート68のスライド動作に伴って、鎖線の如く他端側のハーネス部分65が前後に移動しつつ、ハーネス外装部材61が前後方向に伸縮する。ハーネス外装部材61は軸部63(図6)の軸線方向には屈曲しないから、ケース内でハーネス外装部材61が左右方向に横振れすることなく前後方向のみにスムーズに伸縮する。
【0007】
図8〜図9は、従来のハーネス外装部材の他の形態として、合成樹脂製のコルゲートチューブの一例を示すものである(特許文献2参照)。
【0008】
一般的にコルゲートチューブは、周方向の凸条と凹溝とを軸線方向に交互に連続して配置して構成され、良好な屈曲性を有したものである。図8のコルゲートチューブ71は、凸条72の中心と凹溝73の中心とが偏心して配置され、凸条72の一方の山部72aが径方向に長く突出し、他方の山部72bが径方向に短く突出したものである。
【0009】
コルゲートチューブ71内には複数本の絶縁被覆電線(ワイヤハーネス)が挿通されて、外部との干渉や雨水や塵等から保護される。ワイヤハーネスは例えばコルゲートチューブ71の両端から導出されて、電源側と負荷側に接続される。
【0010】
図8の構成によって、図9(a)の如く、短く突出した山部72bを内側としてコルゲートチューブ71を屈曲させた際に、矢印R1の小さな半径で屈曲し、図9(b)の如く、長く突出した山部72aを内側としてコルゲートチューブ71を屈曲させた際に、矢印R2の大きな半径で屈曲する。このように、例えば車両ボディ等の屈曲半径Rに応じて、適宜コルゲートチューブ71の向きを周方向に変えることで、車両ボディに密着したガタ付きのないコルゲートチューブ71とワイヤハーネスの配索を行うことができる。
【0011】
コルゲートチューブ71は合成樹脂で形成され、ある程度の弱い剛性を有したものであるが、合成ゴムを材料として、防水グロメット(図示せず)の柔軟な蛇腹部を円弧山状の凸条と円弧谷状の凹溝とで構成させることも、特許文献2には記載されている。
【特許文献1】実開平4−62244号公報(図1〜図3)
【特許文献2】特開平10−148279号公報(図5)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、上記従来の図6のハーネス外装部材にあっては、複数のリンク駒62を連結させる工程を要するために、コスト高になると共に、各リンク駒62の板厚をある程度厚く設定する必要があるために、軽量化には適さないという問題があった。
【0013】
また、上記従来の図8の偏心したコルゲートチューブや一般的な偏心のないコルゲートチューブにあっては、図6のハーネス外装部材61に較べて、樹脂成形で安価に且つ軽量に形成することができるものの、U字状にコルゲートチューブを屈曲させて、例えば図7のハーネス外装部材61のように進退(伸縮)させた場合に、チューブ径方向に屈曲性が良好であるために、図6のハーネス外装部材61の軸部63の軸心方向の屈曲を阻止したような作用が得られず、コルゲートチューブが横振れ(横ずれ)や蛇行を起こし、コルゲートチューブとそれを覆うケースとの干渉やそれに伴う摩耗や打音等を生じたり、コルゲートチューブチューブ内の電線に余分な屈曲が加わって、電線の耐久性が低下するといった懸念があった。
【0014】
本発明は、上記した点に鑑み、従来の図6のハーネス外装部材の特性と図8のコルゲートチューブの特性を兼ね備えたコルゲートチューブ、すなわち屈曲すべき方向には柔軟に屈曲し、屈曲を阻止すべき方向には確実に屈曲を抑止することのできるコルゲートチューブとそれを用いたハーネス配索構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するために、本発明の請求項1に係るコルゲートチューブは、周方向の凸条と凹溝とを交互に複数並列に配設したハーネス挿通用のコルゲートチューブにおいて、前記複数の凹溝をチューブ長手方向に横断して直線的に続く屈曲抑止用のリブが形成され、該凹溝内で該リブの両側が湾曲壁となっていることを特徴とする。
【0016】
上記構成により、リブの有る側でコルゲートチューブの剛性が高まり、リブを屈曲内径または屈曲外径とするコルゲートチューブの屈曲に対してリブが屈曲を抑止し、リブとは90゜反転した方向にコルゲートチューブが屈曲自在となる。特に、リブの両側の湾曲壁でコルゲートチューブの屈曲性が高まる。これは、湾曲壁の湾曲方向にコルゲートチューブを屈曲させるからに他ならない。リブは一本でも対称に二本配置してもよい。コルゲートチューブは断面円形でも断面長円形でも略長方形でもよい。
【0017】
請求項2に係るコルゲートチューブは、請求項1記載のコルゲートチューブにおいて、前記凹溝の底部に湾曲底壁が形成されていることを特徴とする。
【0018】
上記構成により、湾曲底壁がリブによる屈曲性の低下を補って、リブの湾曲壁との相乗効果でコルゲートチューブの屈曲性が一層高められる。これは、湾曲底壁の湾曲方向にコルゲートチューブが屈曲するからに他ならない。
【0019】
請求項3に係るコルゲートチューブは、請求項1又は2記載のコルゲートチューブにおいて、断面長円形状ないし断面長方形状のコルゲートチューブであって、前記リブが長径側の両端部に一対配置されたことを特徴とする。
【0020】
上記構成により、一対のリブを結ぶ仮想直線の方向にコルゲートチューブの曲げ剛性が高まり、断面長円形状ないし断面長方形状のコルゲートチューブの長径方向の曲げ難さと相俟って、コルゲートチューブがリブ側の有る側に一層曲がり難くなる。各リブの両側の湾曲壁はこの曲がり難さと対照的にリブとは90゜方向のコルゲートチューブの屈曲性を高める。
【0021】
請求項4に係るコルゲートチューブを用いたハーネス配索構造は、請求項1〜3の何れかに記載のコルゲートチューブを用いたハーネス配索構造において、前記コルゲートチューブ内に電線が挿通され、該コルゲートチューブが給電装置のケース内に屈曲して伸縮自在に配置され、前記リブが該コルゲートチューブの屈曲部の屈曲外径と屈曲内径との中間の端部に配置されつつチューブ長手方向に延長されたことを特徴とする。
【0022】
上記構成により、例えばケースの長手方向に沿ってワイヤハーネスの各ハーネス部分が屈曲部を介して平行に配索され、屈曲部の外周のコルゲートチューブの屈曲外径と屈曲内径との中間の端部のリブとそれに続く各ハーネス部分の外周のコルゲートチューブのリブとがケース厚み方向のコルゲートチューブの振れや蛇行を抑止し、且つ屈曲部におけるリブの両側の湾曲壁が屈曲性を高める。例えばケースはスライドドア等に配置され、ケース内にスライダがスライド自在に設けられ、コルゲートチューブがワイヤハーネスと共にU字状に屈曲配索されつつ、スライダを経て車両ボディ等に導出される。ワイヤハーネスをスライダを経てスライドシート等に配索することも可能である。
【0023】
請求項5に係るコルゲートチューブを用いたハーネス配索構造は、請求項4記載のコルゲートチューブを用いたハーネス配索構造において、前記ケースから外側に導出されたハーネス部分の外周のコルゲートチューブにおいて前記リブが該コルゲートチューブの屈曲外径と屈曲内径との中間の端部に配置されつつチューブ長手方向に延長されたことを特徴とする。
【0024】
上記構成により、例えばスライドドア側のケースから車両ボディにかけてハーネス部分が導出され、そのハーネス部分がスライドドアの開閉に伴って前後に屈曲する際に、そのハーネス部分の屈曲とは90゜位相した上側及び/又は下側のリブがハーネス部分の上下方向の振れや蛇行を抑止すると共に、リブの前後両側の湾曲壁がハーネス部分の屈曲を小さな力でスムーズに行わせる。
【発明の効果】
【0025】
請求項1記載の発明によれば、リブの有る側でコルゲートチューブの振れや蛇行が抑止されるから、例えばコルゲートチューブを給電装置のケース内に配置した際に、ケースとコルゲートチューブとの干渉やそれに伴う異音や摩耗や、コルゲートチューブ内の電線の屈曲疲労等が防止されると共に、繰り返しの屈曲や熱影響によるコルゲートチューブの伸びやタレがリブによって防止される。また、リブの両側の湾曲壁がコルゲートチューブのリブとは90゜方向の屈曲性を高めるから、コルゲートチューブを小径に屈曲させることで、給電装置のコンパクト化が可能になると共に、リブやコルゲートチューブ自体の屈曲耐久性が向上する。また、コルゲートチューブをワイヤハーネスと共に車両ボディの曲面に沿って配索する場合に、コルゲートチューブをリブで屈曲規制しつつリブのない側に自在に屈曲させることで、ワイヤハーネスの組付方向性が定まり、ワイヤハーネスのコネクタの向き等が正確に規定されると共に、リブの両側の湾曲壁でワイヤハーネスの屈曲配索が小さな力で容易に行われる。
【0026】
請求項2記載の発明によれば、リブの湾曲壁と凹溝の湾曲底壁との相乗効果でコルゲートチューブの屈曲性が一層高められ、請求項1記載の発明の効果であるコルゲートチューブの小径屈曲化による給電装置のコンパクト化とコルゲートチューブ自体の屈曲耐久性の向上が促進される。
【0027】
請求項3記載の発明によれば、対称に配置された一対のリブによって、請求項1記載の発明の効果であるコルゲートチューブの振れや蛇行の抑止による、ケースとコルゲートチューブとの干渉やそれに伴う異音や摩耗や、コルゲートチューブ内の電線の屈曲疲労や、繰り返しの屈曲や熱影響によるコルゲートチューブの伸びやタレの防止が促進される。
【0028】
請求項4記載の発明によれば、給電装置のケースとコルゲートチューブとの干渉やそれに伴う異音や摩耗や、コルゲートチューブ内の電線の屈曲疲労等が防止されると共に、繰り返しの屈曲や熱影響によるコルゲートチューブの伸びやタレがリブによって防止されて、給電の信頼性が向上する。また、リブの両側の湾曲壁によってコルゲートチューブを小径に屈曲させることで、給電装置のコンパクト化が可能になると共に、リブやコルゲートチューブ自体の屈曲耐久性が向上する。
【0029】
請求項5記載の発明によれば、例えばスライドドア側のケースから車両ボディにかけて配索されたハーネス部分の外周のコルゲートチューブが、リブの有る方向への振れや蛇行なく、リブとは90゜位相した方向にスムーズに屈曲するから、車両の渡り部におけるコルゲートチューブ内の電線の屈曲疲労等が防止されると共に、繰り返しの屈曲や熱影響によるコルゲートチューブの伸びやタレがリブによって防止されて、給電の信頼性が向上すると同時に、リブやコルゲートチューブ自体の屈曲耐久性が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
図1〜図2は、本発明に係るハーネス外装部材としてのコルゲートチューブの一実施形態を示すものである。
【0031】
図1の如く、このコルゲートチューブ1は、合成樹脂を材料として、周方向の凸条2と凹溝3とをチューブ長手方向に交互に等ピッチで複数並列に形成したものにおいて、各凹溝3の間で各凸条2をチューブ長手方向(軸線方向)の屈曲抑止用のリブ4で一直線上に相互に連結し、各凹溝3の間でリブ4の両側壁を断面半円状に湾曲させた湾曲壁5とし、リブ4の中心から両側の湾曲壁5に向かう方向(矢印B方向)の良好な屈曲性を確保し、且つリブ4の頂部6に向かう方向(矢印C方向)及びその反対方向の強い剛性を確保したものである。
【0032】
リブ4の両側の湾曲壁5は表裏の湾曲面(外側の湾曲面を符号5で代用する)を有し、裏側の湾曲面はチューブ内側に位置している。また、コルゲートチューブ1の凹溝3の底部には断面略半円状の湾曲底壁7が形成されており、それによってもコルゲートチューブ1の矢印B方向の屈曲性が高められている。湾曲底壁7は表裏に湾曲底面を有している。
【0033】
コルゲートチューブ1の凸条2の頂部(外周面)8の幅W1は既存のコルゲートチューブ1の頂部の幅よりもやや小さく設定されており、頂部8はテーパ状の前後の傾斜状の壁部9で湾曲底壁7に接線方向に続き、頂部8の幅W1よりも凸条2の底端側の幅W2がやや大きくなっている。それに伴って、凹溝3の湾曲底面7の幅よりも開口端10の幅が大きくなっている。これによっても矢印B方向の屈曲性が高められている。
【0034】
なお、明細書中で「前後」「上下」「左右」の方向性は説明の便宜上のものであり、必ずしもコルゲートチューブ1の実装方向と一致するものではない。
【0035】
図2の如く、リブ4は、凹溝3の湾曲底面7から略垂直(略直角、正確にはやや傾斜状)に立ち上げられた上下の湾曲壁5と、両凸条2の頂部8と同一面で左右の湾曲壁5を連結する頂壁6とで構成されており、リブ4の内部は中空になっている。凹溝3の底面は湾曲底面7であり、湾曲壁5は凹溝3内で前後の凸条2の前後の内側壁9を相互に連結しており、頂壁6は凸条2の頂部6の表面(外周面)と同一半径の円弧面を有する。
【0036】
本例のコルゲートチューブ1は断面長円形のものであり、両側の長径側の端部の中央において各リブ4が180゜対称に配置されている。左右一対のリブ4の中心を結ぶ仮想直線はコルゲートチューブ1の長径方向の中心線をなす。図2において、長径側の寸法L1の範囲は凸条2と凹溝3が直線的に形成された部分であり、残りの長径側の端部の凸条2と凹溝3は半円状に形成されている。
【0037】
図1の拡大図の如く、リブ4の頂壁6は各凸条2の間(凹溝3内)において一直線上に配置されて、コルゲートチューブ1の全長ないしチューブ所要部の全長に渡って連続している。チューブ所要部とは、後述の使用例等において屈曲しつつ進退(伸縮)する部分のことである。
【0038】
リブ4の上下両側の湾曲壁7は断面半円状になっているが、これは、リブ4と前側の凸条2との交差部が1/4円弧状に形成され、同じリブ4と後側の凸条2との交差部が1/4円弧状に形成されたことで、前後合わせて1/2円弧状すなわち半円状となったものである。断面半円状ではなく円弧状のもの、すなわち湾曲壁5が接線方向に凹溝3の両側壁9に続いていないものでも屈曲性を高める上で有効である。
【0039】
リブ4の両側の湾曲壁5は、凹溝3の前後両側の傾斜状の壁部9と同様に、頂壁6から凹溝3の湾曲底壁9にかけて少し傾斜状に形成されており、リブ4の頂壁6の幅S1よりもリブ4の底部側の幅S2が大きくなっている。図2においてリブ4の断面は略台形状となっている。これによってもコルゲートチューブ1の屈曲性が高められている。凹溝3内の各傾斜状や湾曲状の壁部5,7,9は樹脂成形時の成型金型の型抜き性を高める上でも有効である。
【0040】
上記コルゲートチューブ1は短径方向の良好な屈曲性と長径方向の剛性を有し、短径方向(矢印B方向)に屈曲自在で、長径方向(矢印C方向)に屈曲不能である。特にリブ4が上下両側に湾曲壁5を有し、湾曲壁5で前後の凸条2の壁部8に続いているから、短径方向の屈曲性が極めて良好である。
【0041】
それにより、例えばコルゲートチューブ1をチューブ内の複数本の電線(ワイヤハーネス)と共に車両ボディ等に配索する際に、コルゲートチューブ1の外周面が車両ボディに隙間なく密着して、ガタ付きやそれに伴う異音やコルゲートチューブ1の摩耗等が確実に防止される。
【0042】
また、後述のような車両のスライドドアやスライドシートに適用した際に、直線的に続くリブ4によってコルゲートチューブ1の長径方向の剛性が高められているから、ケース内でのコルゲートチューブ1の横振れや蛇行等が抑止され、且つ上記同様の短径方向の柔軟な屈曲性が得られる。
【0043】
一般的なコルゲートチューブ1の材質はPPやPAが多く採用されているが、上記コルゲートチューブ1はリブ4で剛性を高めているため、PE等の軟質材も使用可能である。軟質材の使用によってコルゲートチューブ1の屈曲性が一層アップする。リブ4を除く複数の凸条2と凹溝3とで構成される部分をチューブ本体又はチューブ主体部と呼称してもよい。
【0044】
なお、上記コルゲートチューブ1においては、凸条4の前後の壁部9やリブの上下の湾曲壁5を傾斜状としたが、傾斜状に代えて垂直な壁部や湾曲壁を形成することも可能である。また、凸条2の傾斜状の壁部9を垂直な壁部に変えると共に、凹溝3の湾曲底壁7を水平な底壁に変えて、リブ4のみを形成することも可能である。この場合でもリブ4の上下の湾曲壁5は必要である。
【0045】
また、図2のコルゲートチューブ1は断面長円形に形成されているが、断面円形に形成することも可能である。この場合もリブ6の両側の湾曲壁5は必須である。また、図2のコルゲートチューブ1は二本のリブ4を有しているが、例えばリブ4を一本とすることも可能である。これは断面円形のコルゲートチューブについても同様である。リブ4のある側の剛性が高く、リブ4とは180゜反対側の剛性がある程度低くなる。
【0046】
また、上記コルゲートチューブ1においては、リブ4を凸条2と同じ高さで一体に形成したが、例えばリブ4を凸条2の半分程度の高さないし3/4程度の高さで突出形成し、リブ4の頂壁6を凹溝3の前後の9壁部に交差させることも可能である。この場合も、リブ4の上下の湾曲壁5は必須である。但し、リブ4を凸条2と同じ高さに形成した場合は、コルゲートチューブ1の樹脂成形(型抜き性)が容易化するという利点がある。
【0047】
また、一般的にコルゲートチューブには長手方向の切れ目を入れて、切れ目から各電線をチューブ内に挿入するものと、切れ目を上下にラップさせたものと、切れ目がなく、チューブの前後の開口端から電線を挿入するものとがあるが、上記コルゲートチューブ1はその何れにおいても効果を発揮し得るものである。切れ目の位置はリブとは90゜反転した位置にあることが好ましい。
【0048】
図3〜図5は、上記コルゲートチューブ1の適用例を示すものである。
【0049】
図3は、コルゲートチューブ1をスライドドア用の常時給電装置31に適用した例を示すものである。この常時給電装置31は、合成樹脂製の長方形状の縦置きのケース32と、ケース内にスライド自在に配置されたスライダ33と、ケース内で下側から上向きにU字状に折り返されて上下平行に延び、スライダ33を経て車両ボディ側のハーネス保持具(回転クランプ)34まで導出されたコルゲートチューブ付きのワイヤハーネス(符号1で代用)とを備えている。
【0050】
ケース32は、ケース本体40の高さ方向ほぼ中央の水平なガイドレール35と、下側の隔壁36の内側のハーネス挿通路37と、ケース本体内のハーネス収容空間を覆うカバー38とを備えている。カバー38は係止突起と係合孔といった係止手段39でケース本体40に固定されている。ケース本体40はドアパネル(図示せず)に固定される。ワイヤハーネスの下側のハーネス部分43がケース本体40の裏側からドア内に導出されて、ドア側のワイヤハーネス(図示せず)にコネクタ接続される。
【0051】
スライダ33には揺動クランプ45が揺動自在に設けられ、上側のハーネス部分41が揺動クランプ45を経てケース32の外側へ導出され、水平なハーネス部分43が車両ボディ(図示せず)との間の渡り空間を横断してハーネス保持具34まで続く。ワイヤハーネスはハーネス保持具34から電線部分46として車両ボディ内へ導出されて車両ボディ側(電源側)のワイヤハーネスにコネクタ接続される。ハーネス保持具34は自身もピン47を支点に揺動するが、内側のインナクランプ(図示せず)がコルゲートチューブ1と共に周方向に回動して捩れを吸収する。
【0052】
図4(a)は図3のコルゲートチューブ1を示すE−E断面図、図4(b)は同じくF−F断面図を示すものであり、図3のケース32内でコルゲートチューブ1は、図4(a)の如く水平方向に長径方向を一致させ、垂直方向に短径方向を一致させて配索され、ケース32から車両ボディ側に導出されたハーネス部分44のコルゲートチューブ1は、図4(b)の如く垂直方向に長径方向を一致させ、水平方向に短径方向を一致させている。
【0053】
そして、ケース内のハーネス部分41〜43の左右両側に屈曲抑止用のリブ4が配設され、ケース外のハーネス部分44の上下両側に屈曲抑止用のリブ4が配設されている。ケース内でワイヤハーネスは、上側の水平なハーネス部分41と、それに続く略半円状の屈曲部42と、それに続く下側の水平なハーネス部分43と、スライダ33から上側のハーネス部分41に湾曲状に立ち上げられたハーネス部分49とで構成されている。
【0054】
ケース内でコルゲートチューブ1の屈曲部42の屈曲外径r1と屈曲内径r2との中間位置すなわちコルゲートチューブ1の径方向左右両側にリブ4が配置されている。また、ケース外でコルゲートチューブ1の屈曲部(符号44で代用)の屈曲外径r3と屈曲内径r4との中間位置すなわちコルゲートチューブ1の径方向上下両側にリブ4が配置されている。
【0055】
図3の状態は車両左側のスライドドアを全開にした状態であり、スライドドアを前方(図4で右側)へ閉じるに従って、スライダ33が後方へ移動し、上側のハーネス部分41が短縮されつつ下側のハーネス部分43が延長されてケース内でワイヤハーネスが略J字状に屈曲する。ワイヤハーネスの屈曲部42の位置は順次後方に移動する。
【0056】
この際、コルゲートチューブ1は左右(横方向)のリブ4(図4(a))で横振れや蛇行が抑止され、コルゲートチューブ1の両側部とケース32の垂直な基板部48やカバー38との干渉やそれに伴う異音や摩耗等が防止される。また、リブ4の上下両側の湾曲壁5(図1)が柔軟に屈曲するから、ケース内でのコルゲートチューブ1の屈曲が小さな力でスムーズに行われ、特に、スライダ33から上向きに立ち上げられたハーネス部分49やU字状の屈曲部42においてリブ4の湾曲壁5(図1)で柔軟に屈曲し、且つ湾曲壁5によってリブ4の変形や傷みが防止されて耐久性が向上する。
【0057】
また、ケース外側のハーネス部分44はハーネス保持具34を支点に弓なりに湾曲しつつスライダ33と共にケース32の後方へ相対的に移動する(実際にはケース32が前方へ移動し、ハーネス部分44はほぼ一定の位置で前後に屈曲する)。
【0058】
この際、ハーネス部分44の上下両側のリブ4(図4(b))がハーネス部分44の上下方向の振れや蛇行やバタツキを抑止すると共に、リブ4の前後の湾曲壁5がハーネス部分44の前後方向の屈曲性を高めて、ハーネス部分44を小さな力でスムーズに屈曲可能とする。
【0059】
スライドドアを全閉から開く際には上記とは逆の動作でコルゲートチューブ1が移動しつつ、前記同様のリブ4とその湾曲壁5の作用効果が奏せられる。なお、図3でケース32の下側のハーネス挿通路37内のハーネス部分43は屈曲しないから、このハーネス部分にはリブ4を設けても設けなくともよい。
【0060】
図5は、コルゲートチューブ1を車両のスライドシート用の常時給電装置51に適用した例を示すものである。この常時給電装置51は、金属製の長形の横置きのケース52と、ケース52のケース本体(符号52で代用)のガイドレール53にスライド自在に係合したスライダ54と、スライダ54に一端を固定され、ケース本体52に他端を固定されて、ケース内にU字状に屈曲して配索されるコルゲートチューブ付きのワイヤハーネス(符号1で代用)とを備えている。ケース52の上カバーは図示を省略している。
【0061】
スライダ54はシート側に連結され、スライダ54側のハーネス部分55がシート内の補機等に接続され、固定側のハーネス部分57がフロアハーネス等(図示せず)を経て電源側に接続される。コルゲートチューブ1はG−G断面が前記図4(b)の形態となっており、上下にリブ4を有している。すなわち、コルゲートチューブ1の屈曲部56の屈曲外径r5と屈曲内径r6の中間位置すなわちコルゲートチューブ1の径方向上下両側にリブ4が配置されている。
【0062】
シートを前後にスライドさせると、スライダ54が前後に一体に移動し、それと同時にワイヤハーネスが前後に伸縮する。ワイヤハーネスの屈曲部56の位置は移動に伴って前後に変化する。ワイヤハーネスの上下にリブ4があるから、ワイヤハーネスの上下方向の縦振れや蛇行やバタツキが抑止され、屈曲部56の上下のリブ4の前後の湾曲壁5(図1)で屈曲部56の屈曲性が高まり、屈曲部56が小さな力でスムーズに屈曲する。これにより、図3の例と同様の効果を奏する。
【0063】
なお、給電装置としては上記の二例以外の構成のものも必要に応じて適宜採用可能である。図3の給電装置31をスライドドアではなく車両ボディに配置し、ハーネス保持具をスライドドアに配置することも可能である。また、スライドドアやスライドシート以外に回動式のバックドア等に給電装置31に類するものを配置することも可能である。スライドシートやスライドドア等はスライド構造体と総称し、車両ボディは固定構造体と総称する。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明に係るコルゲートチューブの一実施形態を示す正面図である。
【図2】同じくコルゲートチューブを示す図1のA−A断面図である。
【図3】コルゲートチューブを適用した常時給電装置の一例を示す斜視図である。
【図4】(a)はコルゲートチューブを示す図3のE−E相当断面図、(b)は同じくコルゲートチューブを示す図3のF−F相当断面図である。
【図5】コルゲートチューブを適用した常時給電装置の他の例を示す斜視図である。
【図6】従来のハーネス外装部材の一例を示す正面図である。
【図7】同じく従来のハーネス外装部材を適用した給電装置を示す分解斜視図である。
【図8】従来の他の外装部材としてのコルゲートチューブの一形態を示す断面図である。
【図9】(a)は同じくコルゲートチューブを小径に屈曲させた状態、(b)はコルゲートチューブを大径に屈曲させた状態をそれぞれ示す断面図である。
【符号の説明】
【0065】
1 コルゲートチューブ
2 凸条
3 凹溝
4 リブ
5 湾曲壁
7 湾曲底壁
31,51 給電装置
32,52 ケース
42,56 屈曲部
44 ハーネス部分
1,r5 屈曲外径
2,r6 屈曲内径
3 屈曲外径
4 屈曲内径

【特許請求の範囲】
【請求項1】
周方向の凸条と凹溝とを交互に複数並列に配設したハーネス挿通用のコルゲートチューブにおいて、前記複数の凹溝をチューブ長手方向に横断して直線的に続く屈曲抑止用のリブが形成され、該凹溝内で該リブの両側が湾曲壁となっていることを特徴とするコルゲートチューブ。
【請求項2】
前記凹溝の底部に湾曲底壁が形成されていることを特徴とする請求項1記載のコルゲートチューブ。
【請求項3】
断面長円形状ないし断面長方形状のコルゲートチューブであって、前記リブが長径側の両端部に一対配置されたことを特徴とする請求項1又は2記載のコルゲートチューブ。
【請求項4】
前記コルゲートチューブ内に電線が挿通され、該コルゲートチューブが給電装置のケース内に屈曲して伸縮自在に配置され、前記リブが該コルゲートチューブの屈曲部の屈曲外径と屈曲内径との中間の端部に配置されつつチューブ長手方向に延長されたことを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載のコルゲートチューブを用いたハーネス配索構造。
【請求項5】
前記ケースから外側に導出されたハーネス部分の外周のコルゲートチューブにおいて前記リブが該コルゲートチューブの屈曲外径と屈曲内径との中間の端部に配置されつつチューブ長手方向に延長されたことを特徴とする請求項4記載のコルゲートチューブを用いたハーネス配索構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−60754(P2007−60754A)
【公開日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−240709(P2005−240709)
【出願日】平成17年8月23日(2005.8.23)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.ケーブルベア
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】