説明

コルゲートチューブ及びコルゲートチューブの製造方法

【課題】屈曲方向を所定方向に確実に規制可能で、かつブロー成型可能なコルゲートチューブを提供する。
【解決手段】コルゲートチューブ10は、軸線方向に延びて弾性的に屈曲可能な略円筒状のチューブ本体20を備える。チューブ本体20には、軸線方向の全長に亘ってスリット23が形成されている。チューブ本体20は、スリット23の幅を広げる向きに拡開可能とされている。チューブ本体20には、軸線方向に沿って折り畳まれた形態の突条部25が設けられている。突条部25は、チューブ本体20においてスリット23とは径方向反対側の位置に配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電線を保護するコルゲートチューブ及びコルゲートチューブの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、コルゲートチューブが開示されている。このものは、合成樹脂製であって、軸線方向に延びて弾性的に屈曲可能な円筒状のチューブ本体を備えている。チューブ本体には、複数の凸条と凹溝とが軸線方向に交互に並んで形成されている。各凹溝内には、各凸条を連結しつつ軸線方向に沿って一直線状に延びるリブが形成されている。リブは、チューブ本体の径方向両端に対をなして配置されている。
【0003】
上記構成であれば、チューブ本体は、リブの突出方向となる径方向両端側への屈曲動作が規制され、リブの突出方向と直交する側への屈曲動作が許容される。このため、電線の配索方向が平面方向等の所定方向のみに規定され、自動車におけるスライドドア等の可動部に好適に使用可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−60754号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記従来のコルゲートチューブでは、リブが凹溝の深さ範囲に設けられるため、凹溝の深さによってリブの突出量が制約されるという事情がある。したがって、凹溝の深さが浅い場合には、リブの突出量も小さくなり、大きな外力が加わったときに、チューブ本体が本来の屈曲方向とは異なる径方向両端側へも屈曲する可能性がある。これに対して、リブがチューブ本体の径方向内側へ突出する形態であれば、凹溝の深さにリブの突出量が制約されることはない。しかるにこの場合、チューブ本体の厚みがリブの形成部分で局部的に増大するため、コルゲートチューブの一般的な成形手法であるブロー成形を行い難いという問題がある。
【0006】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、屈曲方向を所定方向に規制可能で、かつブロー成型可能なコルゲートチューブを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するための手段として、請求項1の発明は、軸線方向に延びて弾性的に屈曲可能な略円筒状のチューブ本体を備えたコルゲートチューブであって、前記チューブ本体には、前記軸線方向に沿って折り畳まれた形態の突条部が設けられているところに特徴を有する。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1に記載のものにおいて、前記突条部が、前記チューブ本体の径方向内側へ突出する形態とされているところに特徴を有する。
【0009】
請求項3の発明は、請求項2に記載のものにおいて、前記チューブ本体の内部空間が、前記突条部を介して2室に仕切られているところに特徴を有する。
【0010】
請求項4の発明は、請求項1ないし3のいずれか1項に記載のコルゲートチューブを製造する方法であって、前記軸線方向に沿った折返部から一対の半割体が拡開する形態のチューブ本体母材をブロー成型し、次いで、前記折返部を介して両半割体を互いに近づける向きに屈曲させることにより、前記突条部を形成し、さらに前記両半割体を円筒状に回曲して前記チューブ本体を形成するところに特徴を有する。
【発明の効果】
【0011】
<請求項1の発明>
チューブ本体には軸線方向に沿って折り畳まれた形態の突条部が設けられているから、チューブ本体が突条部の突出方向へ屈曲するのが規制される一方、チューブ本体が突条部の突出方向と直交する方向へ屈曲するのが許容される。したがって、コルゲートチューブの屈曲方向が所定方向に規定される。この場合、突条部が軸線方向に折り畳まれた形態とされるため、ブロー成型を行うことが可能となる。
【0012】
<請求項2の発明>
突条部がチューブ本体の径方向内側へ突出する形態とされているため、突条部と外部異物との干渉が回避される。
【0013】
<請求項3の発明>
チューブ本体の内部空間が突条部を介して2室に仕切られているため、各部屋毎に異なる種類の電線を挿入して配索することが可能となる。
【0014】
<請求項4の発明>
ブロー成型によってチューブ本体が形成されるため、成型性に優れる。また、チューブ本体の外周面にテープを巻き付ける等することで、チューブ本体の回曲状態を確実に保持できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施形態1に係るコルゲートチューブの一端部の斜視図である。
【図2】屈曲状態にあるコルゲートチューブの両端部の斜視図である。
【図3】チューブ本体母材の正面図である。
【図4】折返部を介して両半割体を互いに近づけた状態をあらわす正面図である。
【図5】両半割体を円筒状に回曲する前の状態をあらわす正面図である。
【図6】両半割体を円筒状に回曲した状態をあらわす正面図である。
【図7】コルゲートチューブの正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
<実施形態1>
本発明の実施形態1を図1ないし図7によって説明する。実施形態1に係るコルゲートチューブ10は、自動車におけるスライドドア部、スライドシート部、ドアミラー部、及びチルト式ステアリング部等の図示しない可動部に好適に使用されるものであって、軸線方向に延びて弾性的に屈曲可能(湾曲変形可能)な円筒状(円管状)のチューブ本体20を備えている。
【0017】
チューブ本体20は合成樹脂製であって、その周壁に、突出部21と凹溝22とが軸線方向にほぼ同ピッチで交互に並んで形成されている。突出部21と凹溝22とはチューブ本体20をほぼ一周する略環状の形態とされ、チューブ本体20の周壁はその全体がほぼ同一厚みで構成されている。なお、本実施形態の場合、突出部21の突出量及び凹溝22の深さは、後述する第1、第2屈曲部26、28及びスリット23へ向けて次第に減ぜられている。
【0018】
また、チューブ本体20には軸線方向の全長に亘ってスリット23が形成され、チューブ本体20はスリット23の幅を広げる向きに拡開可能とされている。そして、チューブ本体20内には、開口状態のスリット23を通して複数本の被覆電線(後述する第1、第2電線60、70)が挿入可能とされている(図7を参照)。なお、スリット23は常には閉じ状態に保たれている。
【0019】
さて、チューブ本体20には、スリット23と径方向反対側で対向する位置に、突条部25が形成されている。突条部25は、チューブ本体20の周壁を、軸線方向に沿いつつ径方向内側へ折り畳むことにより、実質的に二枚重ねされた形態とされている。具体的には、突条部25は、チューブ本体20の周壁において軸線方向に沿った第1屈曲部26から径方向内側へ突出する第1片部27と、同周壁において軸線方向に沿った第2屈曲部28から径方向内側へ突出する第2片部29と、第1、第2片部27、29の両突出端同士を連ねる折返部24とからなる。第1、第2屈曲部26、28は互いにほぼ同一線上に配置され、第1、第2片部27、29の相互の対向面はほぼ密着した状態に保たれる。なお、本実施形態の場合、突条部25は、チューブ本体20の軸線方向の全長に亘って形成されている。
【0020】
また、折返部24はスリット23の近傍に配置されている。このため、チューブ本体20内は突条部25を境として径方向両側の2室に区画される。区画された2室のうちの1室は、複数の第1電線60を挿入可能な第1室31となり、もう1室は、第1電線60とは異なる複数の第2電線70を挿入可能な第2室32となる。
【0021】
次に、コルゲートチューブ10の製造方法を説明する。
まず、周知のブロー成型によって図3に示すチューブ本体母材33を形成する。チューブ本体母材33は、軸線方向に沿った折返部24と、折返部24から両側方へ拡開する一対の半割体34とからなる。第1、第2片部27、29は、両半割体34において折返部24から直線状に延びる一対の直線部35で構成され、チューブ本体20の外周部分は、両半割体34において両直線部35の延出端から半円弧状に延びる一対の半円弧部36で構成される。そして、両直線部35の延出端は、第1、第2屈曲部26、28となり、折返部24とともに薄肉に形成されている。
【0022】
上記の状態から、折返部24を支点として両直線部35を互いに近づける向きに変位させて当接させると、突条部25が形成される(図4を参照)。さらに、両半円弧部36を回曲させつつ相互の延出端同士を突き合わせて円状に変形させると、チューブ本体20が形成される(図5及び図6を参照)。両直線部35を互いに近づける際には、折返部24が屈曲のきっかけを構成し、両半円弧部36を回曲させる際には、第1、第2屈曲部26、28が屈曲のきっかけを構成することになる。
【0023】
次いで、円筒状に形成されたチューブ本体20のスリット23を弾性的に拡開させ、その状態で、第1、第2室31、32内にそれぞれ第1、第2電線60、70を挿入する。その後、チューブ本体20の外周面にテープ等の保持部材50が巻き付けられて固定されることにより、チューブ本体20の円筒形状(回曲形状)が確実に保持される。
【0024】
こうして形成されたチューブ本体20は、図2に示すように、突条部25の突出方向と直交する方向への屈曲動作が許容される一方、突条部25の突出方向と平行な方向への屈曲動作が規制される。したがって、チューブ本体20は、可動部の動作に応じて、突条部25の突出方向と直交する方向に沿った一平面に沿って変位することが可能となる。
【0025】
また、本実施形態の場合、突条部25がチューブ本体20の径方向内側へ突出する形態とされているため、突条部25と外部異物との干渉が回避される。さらに、チューブ本体20の内部空間が突条部25を介して第1、第2室31、32に仕切られ、第1、第2室31、32内にそれぞれ異種の第1、第2電線60、70を挿入して配索することが可能となる。さらにまた、ブロー成型によってチューブ本体20が形成されるため、成型性に優れる。
【0026】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)チューブ本体の回曲状態を保持する保持部材として、テープの代わりに周知のクリップが用いられてもよい。
【0027】
(2)突条部は、チューブ本体の軸線方向の全長ではなく、一部に形成されるものであってもよい。この場合に、突条部は、チューブ本体の軸線方向に間隔をあけて断続的に形成されるものであってもよい。
【0028】
(3)突条部とスリットとは、互いにチューブ本体の径方向両端から位置ずれして配置されるものであってもよい。
【符号の説明】
【0029】
10…コルゲートチューブ
20…チューブ本体
24…折返部
25…突条部
33…チューブ本体母材
34…半割体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸線方向に延びて弾性的に屈曲可能な略円筒状のチューブ本体を備えたコルゲートチューブであって、
前記チューブ本体には、前記軸線方向に沿って折り畳まれた形態の突条部が設けられていることを特徴とするコルゲートチューブ。
【請求項2】
前記突条部が、前記チューブ本体の径方向内側へ突出する形態とされている請求項1記載のコルゲートチューブ。
【請求項3】
前記チューブ本体の内部空間が、前記突条部を介して2室に仕切られている請求項2記載のコルゲートチューブ。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項記載のコルゲートチューブを製造する方法であって、
前記軸線方向に沿った折返部から一対の半割体が拡開する形態のチューブ本体母材をブロー成型し、次いで、前記折返部を介して両半割体を互いに近づける向きに屈曲させることにより、前記突条部を形成し、さらに前記両半割体を円筒状に回曲して前記チューブ本体を形成することを特徴とするコルゲートチューブの製造方法

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−165522(P2012−165522A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−22771(P2011−22771)
【出願日】平成23年2月4日(2011.2.4)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【Fターム(参考)】