説明

コンクリートの歩車道境界ブロック及びその製造方法

【課題】自重により歩車道境界ブロックどうしが接触する面では、ブロック表面に設けられたガラスビーズがつぶれて再帰反射の機能を発揮できなくなるとこと。
【解決手段】太陽光が照射される天面を有し、該天面には、多数の凹凸部8が形成されるコンクリート製の歩車道境界ブロック7を備え、凹凸部8に積層されると共に、表面にガラスビーズ50が分散されている塗料層30を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はコンクリート製品に関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリート製品の表面に金属アルミニウムや採油などからなる太陽光反射層を形成す
る技術が特許文献1に開示されている。
このコンクリート製品では、太陽からの熱線を反射して宇宙へ返し、コンクリート製品の熱吸収・昇温・蓄熱を低減させている。かかるコンクリート製品を利用することでヒートアイランド現象が抑制されることとなる。
本件発明に関連する技術を開示する文献として特許文献2、特許文献3を参照されたい。
【0003】
【特許文献1】特開2007−192016号公報
【特許文献2】特開2004−182917号公報
【特許文献3】特開平08−134854号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のコンクリート製品によれば太陽光線が反射され、その結果としてヒートアイランド現象が抑制されることとなる。本発明者らは、かかるコンクリート製品に着目し、ガラスビーズを有する歩車道境界ブロックを製作した後、スペースを少なくするために、歩車道境界ブロックを積み重ねて保管する。これは、歩車道境界ブロックを施工地までトラックなどで運搬する場合も同様である。歩車道境界ブロックを重ねると、歩車道境界ブロックは数十Kgを有するため、自重により歩車道境界ブロックどうしが接触する面では、ブロック表面に設けられたガラスビーズがつぶれて、あるいは積み重ねによるセメント・モルタルによる汚れにより、再帰反射の機能を発揮できなくなるという課題に気が付き、この発明を完成するに至った。
すなわち、この発明の第1の局面は次のように規定される。
太陽光が照射される天面を有するコンクリート製の歩車道境界ブロックであって、
前記天面には凹凸部が形成され、
該凹凸部に積層されると共に、表面にガラスビーズが分散されている塗料層を、
備えることを特徴とするコンクリートの歩車道境界ブロック。
【0005】
このように第1の局面に規定されるによれば、歩車道境界ブロックを積み重ねても、歩車道境界ブロックの天面に形成された凸部が他のブロックに接触し、他のブロックは凹部に設けられたガラスビーズにほとんど干渉しない。これにより、凹部のガラスビーズが保護される。よって、天面における太陽光線の再帰反射機能が維持される。
また、天面に凹凸を設けることにより、車両ヘッドランプ等の水平光に対してもその再帰反射機能が効率的に奏されることとなる。
【0006】
また、この発明の第2の局面は次のように規定される。
天面に凹凸部が形成されるコンクリート製の歩車道境界ブロックを製作する第1工程と、
該第1工程を実行した後、前記凹凸部に積層する塗料層を作る第2工程と、
該第2工程を実行した後、前記塗料層にガラスビーズを分散する第3工程とを
備えたことを特徴とするコンクリートの歩車道境界ブロックの製造方法。
【0007】
このように第2の局面に規定されるコンクリートの歩車道境界ブロックの製造方法によれば、太陽光が照射される天面を有し、該天面には、多数の凹凸部が形成されるコンクリート製の歩車道境界ブロックであって、前記凹凸部に積層されると共に、表面にガラスビーズが分散されている塗料層を、備えた歩車道境界ブロックを簡易に製造できる。このようにして得られた歩車道境界ブロックは、上記第1の局面と同様の作用効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明者らの検討によれば、凹凸部は、ガラスビーズのつぶれ防止の観点、あるいはモルタルによる汚れ防止の観点、更には再帰反射効果を有する点を考慮して決定する。
凹部の深さ(この明細書では、凸部の頂部と凹部の底部との距離の平均をいう)は、少なくとも、凹部に埋設されるガラスビーズが凸部を超えないものとする。凹部のガラスビーズを保護するためである。水平光に対する再帰反射を機能させるため、凹部の側壁にもガラスビーズを配設することが好ましい。塗料層の厚み等を考慮して、本発明者らの検討によれば、凹部の深さは3mm〜10mmとすることが好ましいことがわかった。凹部(凸部)を構成する斜面は傾斜していることが好ましい。即ち、底面と傾斜面との挟角を鈍角(例えば120度〜150度)とすることが好ましい。重力を利用して底面と塗料層の塗料層へ同時にガラスビーズを埋め込むことができるからである。また、傾斜面とすることにより、ガラスビーズの付着が安定する。
また、凹部の幅(面積)はこれをできる限り広くとることが好ましい。ガラスビーズの保護される凹部の面積を広くとることにより再帰反射の効率が向上するからである。
積み重ねられた歩車道境界ブロックを支える機械的強度を備え、積み重ねられた歩車道境界ブロックが凸部以外の天面のガラスビーズに干渉しないようにできるのであれば、天面には少なくとも3つ凸部が形成されていればよい。
【0009】
凹凸部は天面の全域又は一部に形成される。凹部又は凸部の形状は任意に選択することができる。凸部の形状として、多角柱、多角錐、多角錘台、円柱、円錐、円錐台、半球、半楕円球等の独立したものを採用することができる。これら独立の凸部と同一断面形状の連続体(凸条部)を用いることもできる。凸条部を利用するときは、凸条部の配列方向を任意に設定することができる。例えば、一対の凸条部をT字形に突合せることができる。
凹部の底面は平面とすることが好ましい。塗料層の厚さ制御し易いからである。勿論、凹部の底面を曲面としたり、底面へ更に凹凸形状を付与することができる。
【0010】
凹凸部を有するコンクリートの歩車道境界ブロックを成形するには、歩車道境界ブロック成形用型枠の対応するパネル面には、歩車道境界ブロックに形成しようとする凹凸と逆の凸凹模様が形成されている。
型枠のパネル面に凸凹模様を形成する手段としては、表面に凸凹模様を形成したプラスチック板を当該パネルに貼着する方法、アルミニウム板等の金属板を屈曲させたもので凸凹模様のあるパネルを形成する方法、鉄板表面に切削やエッチングで凸凹部を設けてこれを当該パネルに貼着する方法などがある。いずれにしても、歩車道境界ブロック成形用型枠の成形面に充分に耐久性のある材料を用いて凹凸模様を形成し、成形したコンクリートブロックを脱型する際には、凹凸模様を形成した成形面を型枠側に残して脱型する。
なお、天面が平坦な歩車道境界ブロックを製作後、エッチングなどで凹凸を設けても良い。
【0011】
上記第1の局面で規定される形状のコンクリート歩車道境界ブロックにおいては、凹凸部の上面の塗料層として白色塗料を選択し、その膜厚を100〜700μmとし、さらにガラスビーズの平均粒径を塗料層の膜厚の50〜250%とすることが太陽光線の反射効率を大きくする見地から好ましいことがわかった。塗料は白色に限定されるものではなく、黄色、赤色など任意の色を選択することができる。
ここに、白色塗料を用いるのは白色光である太陽光線の全波長成分を反射するためである。金属アルミニウム膜などの鏡面材料によっても太陽光線の全波長成分を反射することができるが、かかる材料にガラスビーズを安定して固定することは困難である。
塗料の材質はコンクリート部品を安定して被覆できるものであれば特に限定されないが、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、メタクリル酸メチル樹脂、飽和ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂等を用いることができる。
【0012】
白色塗料の膜厚を100μm未満とすると、コンクリート製品の地色が表出するおそれがあり、またガラスビーズを充分に埋め込めずその支持力が不安定となるおそれがあり、好ましくない。700μmを超えて白色塗料の膜厚を厚くすることは経済的ではない。また、ガラスビーズが完全若しくはその大部分が塗料層の内に埋没して太陽光線に対する再帰反射に寄与しなくなるおそれがあり、好ましくない。
白色塗料のより好ましい膜厚は200〜500μmである。
環境に対する配慮から、白色塗料は水性塗料とすることが好ましい。
【0013】
ガラスビーズの平均粒径が塗料層の膜厚の50%未満となると、ガラスビーズの全部若しくは大部分が塗料層内に埋没して太陽光線に対する再帰反射に寄与しなくなるおそれがあるので好ましくない。他方、ガラスビーズの平均粒径が塗料層の膜厚の250%を超えると、塗料層によるガラスビーズの保持力が不充分になるおそれがある。
ガラスビーズはその半分が塗料層中へ埋入されることが好ましい。塗料層に対する安定性を確保しつつ太陽光に対する最大の再帰反射機能を維持するためである。塗料層中にガラスビーズの半分が埋入されるようにするには、塗料の厚さに対するガラスビーズ直径の長さを200%とすることが好ましい。こうであれば、ガラスビーズの下縁が基体部(下地層)で支持されるので、ガラスビーズを完全に塗料層中へ沈みこませた状態で、ガラスビーズの半分が塗料層から表出し、太陽光線を再帰反射させる。この場合、塗料層の粘度や乾燥度合いを厳密に管理する必要が無くなり、製造が容易になる。
もちろん、塗料の粘度や塗料とガラスビーズとの比重の差、塗料の乾燥度等により、塗料層に対するガラスビーズの埋入の度合いが異なるので、塗料の膜厚に対するガラスビーズの直径が200%未満であっても、ガラスビーズの半分が塗料層中に埋入した状態を作り得る。
【0014】
塗料層及びガラスビーズは少なくとも凹部の上面及び側面に形成されていればよい。勿論、凸部の上面に形成することを排除するものではない。
塗料層に対してガラスビーズは均一に分散させることが好ましいが、ガラスビーズの分散濃度に変化を持たせてもよい。ガラスビーズの濃度変化の境界線により、文字、シンボル模様その他の図形を表現することができる。
ガラスビーズは太陽光線の全波長成分を反射させる見地から無色透明とすることが好ましい。
【実施例】
【0015】
以下、この発明の実施例について説明する。
図1に実施例による歩車道境界ブロックが施工された斜視図を示す。
車道1と歩道3との境界を分離する歩車道境界ブロック部5と、車道1と歩道3とを横断する横断用ブロック10とを有している。
歩車道境界ブロック部5は、略長方形体の第1の歩車道境界ブロック7と、歩車道境界ブロック7の側面端に接触すると共に、一端側に斜面を有する第2の歩車道境界ブロック17とを備えている。
【0016】
図2に歩車道境界ブロックの斜視図を示す。
第1の歩車道境界ブロック7は側面視ほぼ台形で、その天面Aには、凹凸部8が形成されていて、車道側側面11の全面に水平方向に連続する山部13が複数条形成されている。
【0017】
図3に歩車道境界ブロックの凹凸部8の拡大断面図を示す。
図3において、歩車道境界ブロック7は、天面Aの下地7aに凹部7uと、凸部7tとから成る凹凸部8が設けられており、凹凸部8の上に下地層20が積層され、下地層20の上に塗料層30が積層されており、塗料層30には、ガラスビーズ50が多数埋め込まれている。凸部7tの形状は直方体形状である。
なお、図4に示すように、凸部17tの形状を四角錘台形状することができる。このように凸部(凹部)の側面に傾斜を設けることにより、天面の全面が太陽光を反射可能となる。また、ガラスビーズの付着も安定する。なお、図4において、図3と同一の要素には同一の符号を付してその説明を省略する。
凹部7uの深さは、約5mmに形成されて、凹部7uの底面の面積と凸部7tの天面の面積より広く(約2倍)とした。
【0018】
実施例の歩車道境界ブロックは次のようにして製造される。
まず、図5(a)に示すように、基台101の上に、パレット103を置き、パレット103の上に、箱状の成形型111を載せる。この成形型111の底面には、歩車道境界ブロック7の天面部の凹凸部8を成型するために逆の凸凹模様が形成されている。基台101には、上部に孔113e,115eを有すると共に、倒伏自在に箱形状の二つの側面部成形型113,115を有している。
【0019】
まず、側面部成形型113,115を閉じて、側面部成形型113,115の孔113e,115eからコンクリートを流し込んで、固化した後、側面部成形型113,115を倒して開放し、凹凸部8を有する歩車道境界ブロック7を製作する(第1工程)。
【0020】
実施例では、下地層20としてエポキシ樹脂を採用した。コンクリート製の下地7aに対して塗料層30を固定するものであればその材質は特に制限されるものではない。
天面が水平となるように、歩車道境界ブロック7を、図5(a)の状態から180度回転させる。そして、図5(b)に示すように、2液混合タイプのエポキシ系プライマーを用い、ローラ203(又は刷毛)にて下地層20の表面に均等厚さに塗布した。塗布量は0.1〜1.5kg/mである。塗布後、養生のため2〜3時間放置して乾燥させた。
【0021】
塗料層30には水性白色塗料を用いた。この塗料の成分は次の通りである。
白色顔料(酸化チタン) 58重量%
樹脂エマルジョン(アクリルエマルジョン) 16重量%
補助剤(分散剤、防腐剤、省泡剤等) 1重量%
溶媒(揮発性有機溶剤(3重量%):水(22重量%))25重量%

図5(b)に示すように、上記塗料をエアスプレー205により下地層20の上面へ均等に塗布した(第2工程)。塗料の使用量は0.2〜0.5L/mであり、その結果、塗料層30の膜厚は200〜500μmとなった。
【0022】
図5(c)に示すように、塗料層30を塗布した直後に、即ち、塗料が乾燥する前に、塗料層30の表面にガラスビーズ50を散布する。この実施例ではガラスビーズ50を篩い器303に充填し、篩い器303を振動させることにより塗料層30の表面へガラスビーズ50を均等に散布した。勿論、エアスプレー等の他の方法によりガラスビーズ50を塗料層30の表面へ供給することもできる。
乾燥前で流動性のある塗料層30上へ散布されたガラスビーズ50はその一部が自重に
より塗料層30へ沈みこむ。そして、塗料の乾燥にともない塗料層30へ強固に固定される(第3工程)。
この実施例では下記ガラスビーズを採用した。
比重:2.4〜2.5
平均粒径:500〜800μm
屈折率:1.50〜1.64

ガラスビーズ50の散布量は0.4kg/m2とした。
【0023】
このように構成された歩車道境界ブロック7によれば、歩車道境界ブロック7を積み重ねても、積み重ねられた(即ち上側の)歩車道境界ブロックが凸部7tで支えられる。その結果、凹部7uに設けられたガラスビーズ50に上側の歩車道境界ブロックが干渉することはなく、凹部7uのガラスビーズは殆ど損傷しない。凹部7uの面積を広くとってあるので、天面Aにおける再帰反射機能は十分に維持される。
また、歩車道境界ブロック7の天面Aに照射された太陽光線は、凹凸部8に形成された白色塗料層30で反射されることはもとより、ガラスビーズ50により再帰反射される。
上記の実施例では、歩車道境界ブロック7において天面Aへ塗料層30とガラスビーズ50を配設したが、車道側側面11と反対側の側面(即ち、歩道側側面)やブロック17の斜面にも同様に凹凸部設け、その上面へ塗料層30を塗布し、ガラスビーズ50を散布することができる。
【0024】
この発明は、上記発明の実施の形態及び実施例の説明に何ら限定されるものではない。特許請求の範囲の記載を逸脱せず、当業者が容易に想到できる範囲で種々の変形態様もこの発明に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】図1は本発明の実施例による歩車道境界ブロックが施工された斜視図である。
【図2】図2は実施例の歩車道境界ブロックの斜視図である。
【図3】図3は実施例の歩車道境界ブロックの凹凸部の拡大断面図である。
【図4】図4は他の実施例の歩車道境界ブロックの凹凸部の拡大断面図である。
【図5】図5は実施例の歩車道境界ブロックを製造する工程図である。
【符号の説明】
【0026】
7 歩車道境界ブロック
8 凹凸部
20 下地層
30 塗料層
50 ガラスビーズ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽光が照射される天面を有するコンクリート製の歩車道境界ブロックであって、
前記天面には凹凸部が形成され、
該凹凸部に積層されると共に、表面にガラスビーズが分散されている塗料層を、
備えることを特徴とするコンクリートの歩車道境界ブロック。
【請求項2】
天面に凹凸部が形成されるコンクリート製の歩車道境界ブロックを製作する第1工程と、
該第1工程を実行した後、前記凹凸部に積層する塗料層を作る第2工程と、
該第2工程を実行した後、前記塗料層にガラスビーズを分散する第3工程とを
備えたことを特徴とするコンクリートの歩車道境界ブロックの製造方法。
【請求項3】
前記凹部の深さは、3mm〜10mmである、
ことを特徴とする請求項1に記載のコンクリートの歩車道境界ブロック。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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