説明

コンクリートの管理方法およびコンクリートの管理装置

【課題】 コンクリートの製造から使用されるまでの各部位に置けるコンクリートの性状を確実に把握ができるとともに、打設されたコンクリートの素性を把握可能であるコンクリートの管理方法等を提供する。
【解決手段】 コンクリート情報を取得したコンクリート管理端末25の制御部は、コンクリートの種類に応じたコンクリート使用可能時間を、記憶部に保存されているデータベースより取得する。さらに、コンクリート製造時刻とコンクリート使用可能時間とから、ロット毎にコンクリートの仕様可能時刻を算出して記憶部に記憶する。また、コンクリートのポンプによる輸送量(設定量)を記憶部から取得し、輸送されるコンクリート量と輸送されるコンクリート情報とを記憶部に記憶する。また、コンクリート管理端末25は、各部におけるコンクリートの残量を算出し、表示装置に各種情報を表示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、場所打ちライニング工法によってトンネルを施工する際に用いられるコンクリートの管理方法およびコンクリートの管理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の場所打ちライニング工法におけるコンクリートは、製造されてから圧送されて打設が行われるまでの間は、締め固めをせず充填可能なフレッシュ性能を有しているが、製造から所定時間を経過すると硬化が始まり、ポンプへの負荷が増大し、さらには圧送が困難となる。したがって、硬化が始まったコンクリートは廃棄する必要がある。また、不慮のトラブルが発生した場合にも、トラブルに対応する間に配管等の内部でコンクリートが硬化してしまうことがあり、さらにこの硬化コンクリートを除去する工数を要する場合がある。
【0003】
一方、適切に打設が行われた場合においても、打設されたコンクリートが硬化し、所定の強度を発現してトンネル支保工として機能するためには、一定の養生期間が必要となる。しかし、養生不足で内型枠を解体してしまうと、トンネル崩壊の恐れがある。また、必要以上に養生期間を取ってしまうと、他の作業が待機状態となり、過剰な施工時間を要することとなる。したがって、適切なタイミングで内型枠を解体する必要がある。
【0004】
このような、コンクリートの流動性保持時間や脱型時期を適切に把握する方法として、例えば、コンクリートの温度を、時間を追って測定し、温度の経時変化によってコンクリートの流動性保持時間を推定し、さらに脱型時期を推定するライニング方法がある(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6−240993号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1記載のライニング方法は、コンクリートの製造部から打設位置までの各部において温度を測定する必要があり、また、打設されたコンクリートの温度も管理する必要があることから、温度管理が極めて複雑となり、また、実際に打設されたコンクリートの温度や配管内、ポンプ内のコンクリートの温度をすべて正確に測定することも困難である。
【0007】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、コンクリートの製造から使用されるまでの各部位に置けるコンクリートの性状を確実に把握ができるとともに、打設されたコンクリートの素性を把握可能であるコンクリートの管理方法等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前述した目的を達成するため、第1の発明は、コンクリートを製造し、前記コンクリートを運搬車両により運搬して荷下し、第1のポンプおよび第1の配管を介してレミキサに投入し、前記レミキサ内のコンクリートを第2のポンプおよび第2の配管を介してトンネル内面に打設する場所打ちライニング工法におけるコンクリートの管理方法であって、コンクリートの製造時にコンクリート情報を取得する工程(a)と、前記工程(a)で取得されたコンクリート情報およびコンクリートの使用量に基づき、前記運搬車両、前記第1の配管、前記レミキサおよび前記第2の配管の各部におけるそれぞれのコンクリート残量を算出する工程(b)と、前記コンクリート情報および各部におけるコンクリート残量を表示装置に表示させる工程(c)と、を具備することを特徴とする各部におけるコンクリートの状況を管理可能であることを特徴とするコンクリートの管理方法である。
【0009】
前記コンクリート情報は、コンクリート種類情報、コンクリート製造量情報およびコンクリート製造時刻情報を含み、前記工程(b)の後、前記コンクリート製造時刻情報および前記コンクリート種類情報からコンクリート使用可能時刻を算出する工程(d)と、前記コンクリート使用可能時刻からコンクリート使用残時間を算出する工程(e)と、を更に具備し、前記工程(c)は、各部ごとに前記コンクリート使用残時間を前記表示装置に更に表示させてもよい。
【0010】
掘削工程で生じたトラブルに対し、トラブル対応予定時間と、各部における前記コンクリート使用残時間とを比較し、前記トラブル対応予定時間に対して前記コンクリート使用残時間が短い場合に、対応する量のコンクリートを対応部位より排出し、前記第1の配管、前記レミキサおよび前記第2の配管の中のそれぞれのコンクリートの前記コンクリート使用残時間が前記トラブル対応予定時間よりも長くなるようにすることが望ましい。
【0011】
前記工程(e)の後、掘削情報に応じて、コンクリート使用予定量を算出し、前記コンクリート使用予定量と前記コンクリート使用残時間とからコンクリートの過不足量を予測する工程(f)を更に具備し、前記工程(c)は、コンクリートの過不足予測量を前記表示装置にさらに表示させる工程であり、コンクリートの過不足量予測に応じてコンクリートの製造工程を管理してもよい。
【0012】
前記コンクリート情報に基づき、トンネル内面に打設されたコンクリートの必要養生時間を算出する工程(g)をさらに有し、内型枠の解体可否を判断することが望ましい。
【0013】
コンクリート打設時に、打設部位と使用されたコンクリートのコンクリート情報とを記憶し、コンクリート打設後に、打設部位ごとのコンクリート情報を確認可能としてもよい。
【0014】
第1の発明によれば、コンクリート製造から打設までにおいて各部位で保持されるコンクリートの残量及び情報が表示装置により表示されるため、各部におけるコンクリートの情報を視認することができる。
【0015】
特に、コンクリート情報(コンクリート種類情報、コンクリート製造量情報およびコンクリート製造時刻情報など)から、コンクリート使用可能残時間(すなわち、コンクリートが硬化して使用できなくなるまでの時間)を算出し、各部におけるコンクリートのコンクリート使用可能残時間(以下、単に使用残時間とする)を表示させれば、配管内等でコンクリートが硬化したりすることがない。
【0016】
特に、トラブルが生じた場合には、トラブルの対応時間よりも短いコンクリート使用残時間のコンクリートを予め廃棄(配管等から排出)することで、トラブル対応中に、コンクリートが配管等内部で硬化することがない。したがって、トラブル対応後、硬化コンクリートを除去する必要がない。
【0017】
また、掘削情報(掘進速度、排土量、これらの変化量、および掘削予定工程など)から、将来のコンクリート使用予定量を算出し、これと各部のコンクリート使用残時間とから各時刻における実際に使用可能なコンクリート量を算出し、使用予定量と使用可能量とから、各時刻におけるコンクリートの過不足量を表示させることで、コンクリートの過不足量を視認することができ、コンクリートを過剰に製造して廃棄したり、コンクリートが不足してコンクリートの製造待ちなどが生じることがない。
【0018】
また、打設されたコンクリートの情報から、必要な養生時間(硬化して強度が発現する時間)が、打設部位ごと(例えば内型枠ごと)に算出されれば、内型枠の解体可否を容易に管理でき、適切なタイミングで内型枠を解体することができる。
【0019】
また、施工後において、コンクリートの打設部位ごとに打設されたコンクリート情報が記憶されていれば、内型枠を撤去後であっても、各部のコンクリート情報を確認することができ、トラブル等が生じた際の原因究明等も容易に行うことができる。
【0020】
第2の発明は、場所打ちライニング工法におけるコンクリートの管理装置であって、コンクリート種類情報、コンクリート製造量情報およびコンクリート製造時刻情報を取得可能なコンクリート情報取得手段と、前記コンクリート種類情報ごとのコンクリート使用可能時間をデータベースより取得し、前記コンクリート使用可能時間および前記コンクリート製造時刻情報からコンクリート使用可能時刻を算出する使用可能時刻算出手段と、時間毎のコンクリート使用量を取得し、コンクリートの取り扱い部位ごとのコンクリート残量を算出するとともに、各部におけるコンクリート使用残時間を算出する使用残時間算出手段と、各部位におけるコンクリート残量およびコンクリート使用残時間を表示する表示手段と、を具備することを特徴とするコンクリートの管理装置である。
【0021】
掘進情報から、将来のコンクリート使用予定量を算出し、前記コンクリート使用予定量と前記コンクリート使用残時間からコンクリートの過不足量を算出する過不足量算出手段を更に具備し、前記表示手段は、各時刻におけるコンクリート過不足量を表示可能であってもよい。
【0022】
第2の発明によれば、コンクリート情報を入力し、コンクリートの使用量情報を取得することで、各部のコンクリートの状態を表示装置で視認することができる。したがって、各部のコンクリートの状態を確実に知ることができる。
【0023】
また、コンクリートの過不足量を表示可能であるため、コンクリートの製造管理が容易である。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、コンクリートの製造から使用されるまでの各部位に置けるコンクリートの性状を確実に把握ができるとともに、打設されたコンクリートの素性を把握可能であるコンクリートの管理方法等を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】(a)はトンネル施工現場1の概要を示す図、(b)はコンクリートの流れを示すフロー図。
【図2】コンクリート管理端末を示す図。
【図3】コンクリートの管理工程を示すフロー図。
【図4】表示画面29を示す図。
【図5】工程表示部31を示す図。
【図6】コンクリート使用予定量表示部を示す図。
【図7】コンクリート保持状態表示部を示す図。
【図8】トラブル時の対応工程を示すフロー図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態にかかるコンクリートの管理方法等について説明する。図1(a)は、トンネル施工現場1の概要を示す図であり、図1(b)は、コンクリートの流れを示すフロー図である。
【0027】
トンネルは、シールド機15によって掘削される。シールド機15は、図示を省略した内型枠から反力を得て推進し(図中矢印A方向)、シールド機15の後方に順次内型枠が組み立てられる。内型枠と地山との隙間(トンネル内面)にはコンクリートが打設される。コンクリートが固化し、十分な強度を発現し、内型枠とコンクリートとの摩擦によって、シールド機15の推進力が得られる状態において、後方より順次内型枠が解体される。以上のように、トンネルが場所打ちライニング工法によって施工される。
【0028】
打設されるコンクリートは、コンクリート製造部3により製造される(ステップ101)。コンクリート製造部で製造されたコンクリートは、運搬車両3aに移送される(ステップ102)。コンクリートは、運搬車両3bによって坑内の荷下し部5までを運搬される(ステップ103)。荷下し部5までコンクリートを運搬した運搬車両3cは、坑内の荷下し部5にてコンクリートを荷降ろす(ステップ104)。
【0029】
荷下されたコンクリートは、第1のポンプであるポンプ5によって、第1の配管である配管7を介してレミキサ9に輸送される(ステップ105)。掘削部17近傍に配置されたレミキサ9内のコンクリートは、第2のポンプである複数のポンプ11によって、第2の配管である配管13を介して、シールド機15後方のそれぞれの部位に輸送される(ステップ106)。輸送されたコンクリートは、内型枠の外方(トンネル内面)に打設される。以上の各工程を順次同時進行で行いながら、トンネルの施工が行われる。
【0030】
次に、コンクリートの管理について説明する。図2は、コンクリート管理端末25等を示す図である。コンクリート管理端末25は、各種の情報処理を行い、コンクリートの状態等を表示可能である。
【0031】
なお、コンクリート管理端末25としては、例えば通常のコンピュータが使用でき、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等で構成され、記憶部等に格納されるプログラムをRAM上のワークメモリ領域に呼び出して実行し、バスを介して接続された各部を駆動制御する制御部と、制御部が実行するプログラムや各種情報、データ等が格納される記憶部と、通信制御装置、通信ポート等を有し、コンピュータとネットワーク間等の通信を媒介する通信インタフェースである通信制御部と、データの入力を行うキーボード等の入力装置を有する入力部と、液晶パネル等の表示部と、コンピュータに周辺機器を接続させるためのポートである周辺機器I/F部等がバスを介して接続される。
【0032】
コンクリート管理端末25は、ネットワーク27を介して製造管理端末19、入荷管理端末21、掘削管理端末23等と接続されている。製造管理端末19は、コンクリート製造部3に設置されており、主に、コンクリート製造時のコンクリート情報等を入力可能である。コンクリート情報とは、例えば、コンクリートの製造ロットNo.や、コンクリートの種類、コンクリートの製造量、コンクリートの製造時刻などである。入力されたコンクリート情報はコンクリート管理端末25に送信されて記憶部に記憶される。
【0033】
入荷管理端末21は、荷下し部5に設置されており、主に、荷下されたコンクリートの情報等を入力可能である。たとえば、運搬車両ごとに付された車両番号やコンクリートのロットNo.等を入力可能である。入力された情報はコンクリート管理端末25に送信され、入力された情報に対応したコンクリート情報を呼び出し、当該コンクリートが荷下されたことを確認する。なお、荷下されるコンクリート情報を荷下し者が直接入荷管理端末に入力してもよい。
【0034】
掘削管理端末23は、掘削部17に設置されており、主に、掘削情報等を取得・入力可能である。たとえば、シールド機の掘進速度や、掘進推力、切羽土圧などのシールド機関連情報や、妻型枠位置・圧力、コンクリートの供給量、打設量、打設圧力などのコンクリート関連情報や、掘進工程、内型枠組み立て等の各工程状況も取得・入力可能である。掘削情報は、掘削管理端末23に入力手段によって入力されてもよく、または、ネットワークで接続されたシールド機の各機器等から直接各種情報を取得してもよい。
【0035】
なお、製造管理端末19、入荷管理端末21、掘削管理端末23は、各種情報を入力し、コンクリート管理端末25に情報を送信可能であればよい。例えば、コンクリート管理端末と同様の構成のコンピュータであってもよく、または入力手段および通信手段のみを有するタッチパネル、押しボタン等であってもよい。
【0036】
また、コンクリート管理端末25は、トンネル施工現場内部に設置されてもよく、または、トンネル施工現場外の管理事務所やシールド機内部等、いずれの場所に設置されてもよい。または、複数の表示装置がコンクリート管理端末25とネットワークで接続されており、コンクリート管理端末25によって各表示装置等に送信された情報を、各部に設置された表示装置が表示するようにしてもよい。また、コンクリート管理端末25からの情報を、製造管理端末19、入荷管理端末21、掘削管理端末23に表示してもよい。
【0037】
次に、コンクリートの管理装置であるコンクリート管理端末25による情報処理について説明する。図3は、コンクリート管理の概略工程を示すフロー図である。まず、コンクリートが製造され、製造されたコンクリートが運搬車両に移送される(ステップ201)。この際のコンクリート情報(ロットNo.やコンクリート種類、製造時刻、製造量、運搬車両No.等)が製造管理端末に入力される(ステップ202)。入力されたコンクリート情報は、ロット毎にネットワークを介してコンクリート管理端末25に送信され、コンクリート管理端末25の記憶部に記憶される。すなわち、コンクリート管理端末25のコンクリート情報取得手段によってコンクリート情報が取得される。なお、コンクリート情報取得手段は、製造管理端末からのネットワーク接続による情報取得のみではなく、記録媒体による取得や入力部による入力であってもよい。
【0038】
コンクリート情報を取得したコンクリート管理端末25の制御部は、使用可能時刻算出手段によって、コンクリートの種類に応じたコンクリート使用可能時間(製造から硬化するまでの時間)を、記憶部に保存されているデータベースより取得する(ステップ211)。さらに、使用可能時刻算出手段は、コンクリート製造時刻とコンクリート使用可能時間とから、ロット毎にコンクリートの使用可能時刻を算出して記憶部に記憶する(ステップ212)。
【0039】
一方、コンクリートは、コンクリートが積載された運搬車両によって坑内に運搬され(ステップ203)、所定の荷下し部に荷下される(ステップ204)。この際、荷下した車両No.、荷下し時刻、荷下し量などの入荷情報が入荷管理端末に入力される(ステップ205)。入力された入荷情報は、ネットワークを介してコンクリート管理端末25に送信され、コンクリート管理端末25の記憶部に記憶される。なお、荷下し量は、運搬車両の重量変化等により取得してもよい。
【0040】
入荷情報を取得したコンクリート管理端末25の制御部は、車両ごとの荷下し量を確認し、どの順序でコンクリートが荷下されたのかの荷下し順序を記憶部に記憶する(ステップ213)。また、コンクリートのポンプによる輸送量(設定量)を記憶部から取得し、輸送されるコンクリートのコンクリート量とコンクリート情報とを記憶部に記憶する。また、制御部は、使用残時間算出手段によって、ロット毎のコンクリートの使用残時間を算出するとともに、コンクリートの使用量情報を後述する掘削管理端末より取得し、各部位ごとのロット毎のコンクリート量と、各部位ごとの使用残時間を随時更新していく(ステップ214)。
【0041】
一方、荷下し部に荷下されたコンクリートは、ポンプによってレミキサに輸送される(ステップ206)。レミキサに輸送されるロット順序、コンクリート量やコンクリート情報は、コンクリート管理端末25によって管理されている。
【0042】
レミキサに輸送されたコンクリートは、さらにポンプによってシールド機後方に輸送される(ステップ207)。この際、輸送されたコンクリート量および使用されたポンプ等の情報が掘削管理端末に入力される(ステップ208)。なお、コンクリートの輸送量は、レミキサの重量変化や各ポンプに取り付けられた流量計等により算出される。輸送されたコンクリートはトンネル内面に打設され(ステップ209)、打設量として掘削管理端末に入力される(ステップ10)。
【0043】
コンクリート管理端末25は、掘削管理端末からの各種情報を取得する。また、コンクリート管理端末25の制御部は、あらかじめ設定されたレミキサ容量、各配管の容量等を記憶部より取得し、ポンプ毎にシールド機後方に輸送されたコンクリート量、コンクリート打設量等から各部におけるコンクリートの残量(ロット毎の残量)を算出し、各部ごとに残存するコンクリートのコンクリート使用可能残時間を算出し、さらに表示装置に各種情報を表示するとともにこれらの情報を記憶する(ステップ215)。以上により、表示手段である表示装置には、各部におけるコンクリートの状態(ロット毎のコンクリート残量および各ロット毎の使用可能残時間等)が表示され、これにより、各部のコンクリート状態を視認することができる。また、使用されたコンクリートの情報は、内型枠ごと(打設部位ごと)に記憶部に記憶され、どの部位にどのコンクリートが使用されたのかが記憶される。
【0044】
なお、各種情報を取得したコンクリート管理端末25は、各種の情報に基づき、トンネル施工工程の予定を作成することもでき、これに伴う時刻毎のコンクリートの使用予定量を算出することもできる。また、コンクリートの使用予定量に基づき、コンクリートの製造予定を算出することもでき、さらに、現状のコンクリート製造予定およびコンクリート使用量とから、将来のコンクリートの過不足量を算出することもできる。さらに、打設後のコンクリート情報として、コンクリート養生時間を算出し、内型枠毎に解体可能時刻を算出することもできる。このような各種の情報処理内容については、後述する。
【0045】
次に、表示画面について説明するとともに、コンクリート管理端末の機能についてさらに説明する。図4は表示画面の一例を示す。なお、前述の通り、表示画面は、コンクリート管理端末25に表示してもよく、またはコンクリート管理端末25とネットワークを介して接続され、他の場所に設置された表示装置に同時に表示するようにしてもよい。
【0046】
表示画面29は、例えば、工程表示部31、コンクリート使用予定量表示部33、コンクリート情報表示部35、コンクリート保持状態表示部37、運搬車両情報表示部39等からなる。なお、この他に、掘削情報や、打設位置情報、内型枠情報(内型枠No.や内型枠位置情報および各内型枠外方に打設されたコンクリート情報など)、コンクリート製造情報、トラブル情報などが表示可能である。
【0047】
図5は、工程表示部31の表示例を示す拡大図である。工程表示部31は、トンネル施工の各工程予定と、各時刻における予定コンクリート製造量等が同一時間軸で表示される。たとえば、内型枠組立工程、内型枠解体・運搬工程、シールド掘進工程等が表示される。各工程は、シールド機の掘進状況や地盤状況などを加味して予測される。コンクリート管理端末は、得られた掘削情報等に基づき、あらかじめ設定された各工程の所要時間に基づいて各工程の予定を算出する。なお、作業者が工程の予定を入力・修正可能にしてもよい。
【0048】
工程表示部31には、各ロットNo.ごとのコンクリートの製造予定等を表示する。コンクリートの製造予定は、前述のトンネル施工の各工程に基づき、コンクリートの使用予定量が決定され、これに基づいて製造予定が決定される。製造が予定された各ロットのコンクリートは、ロット毎に、製造予定時刻41、運搬予定時間43、使用可能時間45が色分けされて表示される。コンクリート製造部では、当該表示(またはこれによる指示)に基づいて、コンクリートの製造を行う。
【0049】
図6は、コンクリート使用予定量表示部33の表示例を示す図である。コンクリート使用予定量表示部33には、コンクリート管理端末によって、前述した各工程予定を考慮して、各内型枠毎に打設コンクリート予定必要量47が算出されて表示される。これに対応するように、必要量に応じたコンクリート使用予定量49が計算され、各部に残っているロット毎のコンクリート量が割り当てられる。
【0050】
なお、工程の実際の進捗によって、使用コンクリートの打設前(打設中)にコンクリートが使用可能時刻を超えると判断した場合には、当該ロットのコンクリートは廃棄予定となる。また、配管の洗浄等を行う際にも当該配管内に残るロットのコンクリートが廃棄予定となる。すなわち、各時刻における使用予定量と各時刻における使用可能コンクリート量とが常に比較され、制御部の過不足量算出手段によって過不足量が算出され表示される。なお、前述のコンクリートの製造予定は、ある程度の余裕を考慮しつつ、使用可能時刻の超過による廃棄予定コンクリート量ができるだけ少なくなるように常に更新設定される。
【0051】
図7は、コンクリート保持状態表示部37の表示例を示す図である。コンクリート保持状態表示部37は、荷下し部から打設部までの概略図が表示されており、例えば、荷下し部に設置されたポンプ5とポンプ5からレミキサ9まで接続される配管7と、レミキサ9と、レミキサ9から複数のポンプ11によってそれぞれのポンプと打設部までを接続する配管13a、13b、・・・、13j等が表示される。なお、ポンプ13a・・の個数は、表示例に限られない。
【0052】
コンクリート保持状態表示部37では、例えばコンクリートのロット毎に色分けされる(なお、コンクリートのロット毎の色分けは、他の表示部におけるロット毎の表示色と統一することが望ましい)。また、図示を省略するが、各部におけるコンクリートの残量が表示される。たとえば、レミキサ9内のコンクリート残量や、各配管内、ポンプ内のコンクリート残量が表示される。なお、各部におけるロット毎のコンクリート残量は、単純に後ろから送られたロットのコンクリートと直前に送られたロットのコンクリートとが混ざりあわないと仮定して、常に先入れされたコンクリートが先に押し出されていくとして算出される。
【0053】
図7の例では、ロットが異なるコンクリートA〜Dが各部に残存している例を示す。例えば、コンクリートAは、現在荷降ろしを終えた直後であり、ポンプ5によって配管7内に送られ始めた状態である。また、コンクリートBはコンクリートAにより押し出されるようにレミキサ9内に送られ、配管7およびレミキサ内9内にまだ未使用で残っている状態である。また、コンクリートCはレミキサ9内にわずかに残っているが、配管13a〜13e内に残存しており、対応するポンプ11によって使用(打設)中である。また、コンクリートDは、そのほとんどが既に使用されているが、一部が配管13g、13h内に残っている状態である。
【0054】
各ロット毎のコンクリート情報の詳細は、コンクリート情報表示部35(図4)に表示される。コンクリート情報表示部では、ロット毎のコンクリート種類、製造時刻、使用可能時間、使用可能時刻等が表示されている。また、コンクリート使用可能残時間が逐一更新され、ロット毎にあとどれくらいの時間、使用が可能であるかを視認することができる。なお、コンクリート保持状態表示部37においては、ロット毎に色分けをして表示したが、例えば、使用可能残時間毎に色分けをしてもよい。
【0055】
また、運搬車両情報表示部39(図4)には、運搬車両ごとに積載されたコンクリート情報が表示されており、すでに製造済みのコンクリートが輸送中であることが分かる。
【0056】
また、どの内型枠(トンネル施工部位)にどのコンクリートが使用されたかがコンクリート管理端末に記憶される。したがって、内型枠毎に、ロット毎に異なる必要養生時間を算出し、管理することもできる。このような、解体予定時刻を内型枠毎に表示させてもよい。また、トンネルの各部において、どのロットのコンクリートが使用されたのかが記憶されているため、事後的に、コンクリートの使用履歴を調査することもできる。なお、必要養生時間は、コンクリートが硬化して所定の強度が発現されるまでの時間であり、あらかじめコンクリート種類ごとに設定された強度発現時間を記憶部から呼び出して算出すれば良い。
【0057】
以上説明したように、本実施の形態にかかるコンクリートの管理方法によれば、表示画面29によって、コンクリートの製造状況、各部ごとの残量と各部ごとに残存するコンクリート情報等が視認でき、さらに、掘削工程やこれに伴うコンクリート使用必要量とこれに対するコンクリート使用可能量などを一目で視認することができる。
【0058】
したがって、現状または将来のコンクリートの過不足情報や、コンクリートの使用可能残時間の管理によって、配管内での硬化や、必要以上に多くのコンクリートを製造することによる大量のコンクリートの廃棄などを防止することができる。
【0059】
また、打設された内型枠毎に打設されたコンクリートの必要養生時間を算出して表示することで、内型枠の解体可否を確認することができる。
【0060】
次に、トラブルが生じた際の対応方法について説明する。図8は、トラブル時の対応工程を示すフロー図である。掘削工程等において何らかのトラブルが発生すると(ステップ301)、例えば掘削管理端末にトラブル内容に基づいて、対応予定時間が入力される(ステップ302)。なお、トラブル内容を自動で検知し、トラブル種類に応じたトラブル対応予定標準時間を設定しておき、コンクリート管理端末に送信するようにしてもよい。
【0061】
トラブル対応予定時間を取得したコンクリート管理端末は、配管やレミキサ内に残存するコンクリートの使用残時間をロットごとに比較する(ステップ303)。配管等内部に残るコンクリートの使用残時間が対応時間よりも全て長い場合には、トラブル対応後にもコンクリートを使用することが可能であるため、そのままトラブルの対応をして復旧する(ステップ306)。一方、一部にトラブル対応時間よりも短い使用残時間のロットのコンクリートがあれば、トラブル対応とともに、当該部位より対象のコンクリートを排出する(ステップ305)。
【0062】
以上により、トラブル対応中や対応後におけるコンクリートの配管内での硬化に伴う硬化コンクリートの除去作業等が不要となる。なお、トラブル情報を取得したコンクリート管理端末は、前述した予定工程を見直すとともに、コンクリート使用予定量および使用可能量等を算出しなおし、過不足量を再計算し、工程表示部31およびコンクリート使用予定量表示部33等の表示内容を変更する。
【0063】
以上、添付図を参照しながら、本発明の実施の形態を説明したが、本発明の技術的範囲は、前述した実施の形態に左右されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0064】
1………トンネル施工現場
3………コンクリート製造部
3a、3b、3c………運搬車両
5………荷下し部
7………配管
9………レミキサ
11………ポンプ
13………配管
15………シールド機
17………掘削部
19………製造管理端末
21………入荷管理端末
23………掘削管理端末
25………コンクリート管理端末
27………ネットワーク
29………表示画面
31………工程表示部
33………コンクリート使用予定量表示部
35………コンクリート情報表示部
37………コンクリート保持状態表示部
39………運搬車両表示部
41………製造予定時刻
43………運搬予定時間
45………使用可能時間
47………コンクリート予定必要量
49………コンクリート使用予定量

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリートを製造し、前記コンクリートを運搬車両により運搬して荷下し、第1のポンプおよび第1の配管を介してレミキサに投入し、前記レミキサ内のコンクリートを第2のポンプおよび第2の配管を介してトンネル内面に打設する場所打ちライニング工法におけるコンクリートの管理方法であって、
コンクリートの製造時にコンクリート情報を取得する工程(a)と、
前記工程(a)で取得されたコンクリート情報およびコンクリートの使用量に基づき、前記運搬車両、前記第1の配管、前記レミキサおよび前記第2の配管の各部におけるそれぞれのコンクリート残量を算出する工程(b)と、
前記コンクリート情報および各部におけるコンクリート残量を表示装置に表示させる工程(c)と、
を具備することを特徴とする各部におけるコンクリートの状況を管理可能であることを特徴とするコンクリートの管理方法。
【請求項2】
前記コンクリート情報は、コンクリート種類情報、コンクリート製造量情報およびコンクリート製造時刻情報を含み、
前記工程(b)の後、前記コンクリート製造時刻情報および前記コンクリート種類情報からコンクリート使用可能時刻を算出する工程(d)と、
前記コンクリート使用可能時刻からコンクリート使用残時間を算出する工程(e)と、
を更に具備し、
前記工程(c)は、各部ごとに前記コンクリート使用残時間を前記表示装置に更に表示させることを特徴とする請求項1記載のコンクリートの管理方法。
【請求項3】
掘削工程で生じたトラブルに対し、トラブル対応予定時間と、各部における前記コンクリート使用残時間とを比較し、前記トラブル対応予定時間に対して前記コンクリート使用残時間が短い場合に、対応する量のコンクリートを対応部位より排出し、前記第1の配管、前記レミキサおよび前記第2の配管の中のそれぞれのコンクリートの前記コンクリート使用残時間が前記トラブル対応予定時間よりも長くなるようにすることを特徴とする請求項2記載のコンクリートの管理方法。
【請求項4】
前記工程(e)の後、掘削情報に応じて、コンクリート使用予定量を算出し、前記コンクリート使用予定量と前記コンクリート使用残時間とからコンクリートの過不足量を予測する工程(f)を更に具備し、
前記工程(c)は、コンクリートの過不足予測量を前記表示装置にさらに表示させる工程であり、
コンクリートの過不足量予測に応じてコンクリートの製造工程を管理することを特徴とする請求項2または請求項3のいずれかに記載のコンクリートの管理方法。
【請求項5】
前記コンクリート情報に基づき、トンネル内面に打設されたコンクリートの必要養生時間を算出する工程(g)をさらに有し、内型枠の解体可否を判断することを特徴とする請求項2から請求項4のいずれかに記載のコンクリートの管理方法。
【請求項6】
コンクリート打設時に、打設部位と使用されたコンクリートのコンクリート情報とを記憶し、コンクリート打設後に、打設部位ごとのコンクリート情報を確認可能であることを特徴とする請求項2から請求項5のいずれかに記載のコンクリートの管理方法。
【請求項7】
場所打ちライニング工法におけるコンクリートの管理装置であって、
コンクリート種類情報、コンクリート製造量情報およびコンクリート製造時刻情報を取得可能なコンクリート情報取得手段と、
前記コンクリート種類情報ごとのコンクリート使用可能時間をデータベースより取得し、前記コンクリート使用可能時間および前記コンクリート製造時刻情報からコンクリート使用可能時刻を算出する使用可能時刻算出手段と、
時間毎のコンクリート使用量を取得し、コンクリートの取り扱い部位ごとのコンクリート残量を算出するとともに、各部におけるコンクリート使用残時間を算出する使用残時間算出手段と、
各部位におけるコンクリート残量およびコンクリート使用残時間を表示する表示手段と、
を具備することを特徴とするコンクリートの管理装置。
【請求項8】
掘進情報から、将来のコンクリート使用予定量を算出し、前記コンクリート使用予定量と前記コンクリート使用残時間からコンクリートの過不足量を算出する過不足量算出手段を更に具備し、
前記表示手段は、各時刻におけるコンクリート過不足量を表示可能であることを特徴とする請求項7記載のコンクリートの管理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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