説明

コンクリートの締固め作業装置

【課題】締固め作業を均一化してコンクリートの品質を向上させるコンクリートの締固め作業装置を提供すること。
【解決手段】橋梁の幅方向に架け渡された架台12と、橋梁の長手方向に沿って架台12を移動させるための走行部36,37と、架台12に対して昇降可能に取り付けられたコンクリートの締固めを行うための複数のバイブレータ11と、バイブレータ11を架台12に対して昇降させる複数の昇降手段41と、昇降手段41,42の駆動を制御する制御手段55とを有し、制御手段55は、バイブレータ11がコンクリート内に所定時間挿入されるように、昇降手段41を駆動制御するようにしたコンクリートの締固め作業装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリートの締固め作業を均一化することにより床版コンクリートの品質を向上させるコンクリートの締固め作業装置に関する。
【背景技術】
【0002】
橋梁では、例えば複数本の鋼桁が支承を介して橋脚または橋台によって支持され、鋼桁上に床版が敷設されている。その床版は、鋼桁上に足場や型枠が設けられ、その型枠内には複数の鉄筋が格子状に配置される。そして、型枠内へコンクリートが打設されるが、その際、コンクリートが流し込まれてバイブレータ(内部振動機)による締固め作業が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−192841号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来から行われている床版コンクリートの締固め作業は、作業員がバイブレータを持って行う方法がとられているため、作業のバラツキが生じやすい。コンクリートの品質は、打設後の締固め作業の影響を受け、例えば締固め不足の場合には床版コンクリート中に空隙を残してしまい、充填不足になって耐久性を低下させる。また、逆に加振時間が長すぎた場合には、コンクリートの材料分離が起こってしまい、やはり耐久性を低下させてしまう。作業員が行う締固め作業には一定の基準はあるものの、個々の作業員の経験や勘によるところが大きい。そのため、従来の締固め作業はバラツキが生じやすく、場合によってはそれが品質に影響するおそれがあった。
【0005】
そこで、本発明は、かかる課題を解決すべく、締固め作業を均一化してコンクリートの品質を向上させるコンクリートの締固め作業装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るコンクリートの締固め作業装置は、橋梁の幅方向に架け渡された架台と、橋梁の長手方向に沿って前記架台を移動させるための走行部と、前記架台に対して昇降可能に取り付けられたコンクリートの締固めを行うための複数のバイブレータと、前記バイブレータを前記架台に対して昇降させる複数の昇降手段と、前記昇降手段の駆動を制御する制御手段とを有し、前記制御手段は、前記バイブレータがコンクリート内に所定時間挿入されるように、前記昇降手段を駆動制御するようにしたものであることを特徴とする。
また、本発明に係るコンクリートの締固め作業装置は、前記制御手段が、抜き差しによってコンクリート表面に穴が形成されない速度で前記バイブレータを昇降させるように、前記昇降手段を駆動制御するようにしたものであることが好ましい。
【0007】
また、本発明に係るコンクリートの締固め作業装置は、前記昇降手段が、回転軸にカムを備えた昇降用モータを備え、前記カムに前記バイブレータ側に設けられたローラが上方から当てられ、前記昇降用モータの回転により前記カムとローラとを介して前記バイブレータを昇降させるようにしたものであることが好ましい。
また、本発明に係るコンクリートの締固め作業装置は、前記走行部が、橋梁の長手方向に沿って車輪を回転させて移動するものであり、前記車輪には走行用モータが取り付けられ、前記架台の停止位置を検出するための検出手段とを備え、前記制御手段が、前記バイブレータの上昇時に走行し、前記検出手段からの検出信号に基づいて予め決められた停止位置で停止するように、前記走行用モータを駆動制御するようにしたものであることが好ましい。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、制御手段によって昇降手段を駆動制御し、自動でバイブレータをコンクリート内に所定時間挿入するようにしたため、これまで複数の作業員が個々に行っていた作業を、橋梁全体に渡って均一化することができ、コンクリートの品質を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】橋梁におけるンクリートの締固め作業装置を示した概念図であり、橋梁の一部を長手方向に見た図である。
【図2】架台を示した図1のA−A断面図である。
【図3】バイブレータ昇降機構を示した図1のB−B断面図である。
【図4】図4は、バイブレータ昇降機構の一部を示した図3のC−C断面図である。
【図5】締固め作業装置を示したブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に、本発明に係るコンクリートの締固め作業装置について、その実施形態を図面を参照しながら以下に説明する。図1は、橋梁におけるンクリートの締固め作業装置を示した概念図であり、橋梁の一部を長手方向(図面を貫く方向)に見た図である。橋梁は、複数本の鋼桁が支承を介して橋脚または橋台によって支持され、鋼桁上に床版が敷設されている。本実施形態の場合、鋼桁の上に合成床版鋼板パネル5が横に張り渡され、側部には側鋼板6が起立して型枠を構成している。合成床版鋼板パネル5にはスタッドジベル7が複数突き立てられ、コンクリートと合成床版鋼板パネル5との結合を良くしている。
【0011】
そして、図1には示していないが、合成床版鋼板パネル5の上にはスタッドジベル7を避けるようにして、複数の鉄筋が橋梁の長手方向と幅方向(図面の左右方向)に沿って格子状に組まれて配置されている。合成床版鋼板パネル5及び側鋼板6からなる型枠内へはコンクリートが流し込まれ、バイブレータ(内部振動機)11を備えた締固め作業装置1による床版コンクリートの締固めが行われる。
【0012】
締固め作業装置1は、複数のバイブレータ11を備えた架台12が左右の側鋼板6に掛け渡され、橋梁の長手方向に移動可能に構成されている。ここで図2は、架台12を示した図1のA−A断面図である。架台12は、橋梁の幅方向に溝形鋼31が架け渡され、その両端が横板32に接合されている。溝形鋼31は、図示するように上下に2本ずつが同じ高さに配置され、鋼板の上面板33と下面板34によって接続されている。
【0013】
横板32は、図1に示すように、断面がL字形のフレーム35の上に接合され、そのフレーム35には鋼製の車輪36を備えた走行部が構成されている。車輪36は、橋梁の型枠を構成する側鋼板6の上端の載せられ、その側鋼板6に沿って転動するようにボビン形に形成されたものである。架台12には、こうした車輪36を備えた走行部が左右対称に構成され、左右それぞれにおいて前後の車輪36の一方に走行用モータ37が車軸に連結されている。そのため、架台12は、走行用モータ37を制御することによって自動による走行が可能になっている。
【0014】
次に、その架台12に取り付けられたバイブレータ11について説明する。バイブレータ11は、架台12の長手方向(橋梁の幅方向)に複数設けられ、隣り合うものとの間隔が500mm以内になるように設定されている。本実施形態では、バイブレータ11毎に上下動を自動で行うようにバイブレータ昇降機構が構成されている。図3は、バイブレータ昇降機構を示した図1のB−B断面図であり、図4は、図3のC−C断面図である。
【0015】
バイブレータ11が配置された位置には、架台12に昇降用モータ41が取り付けられ、その回転軸にカム42が固定されている。カム42は、回転軸の回転角度に対応した曲面が形成された円板カムであり、その円周形状が卵形をしている。カム42の周面にはバイブレータ11側に取り付けられたローラ43が上から載せられており、バイブレータ11は、このカム42に支持された状態で架台12の上面板33と下面板34を貫通している。従って、カム42の回転によりローラ43が上下に移動し、それに併せて上面板33と下面板34の貫通孔に案内された状態でバイブレータ11が上下動するよう構成されている。
【0016】
次に、図5は、締固め作業装置1を示したブロック図である。架台12を走行させる走行用モータ37や、バイブレータ11を昇降させる昇降用モータ41には、これらの回転を制御するモータ駆動装置51が接続され、バイブレータ11にはバイブレータ駆動装置52が接続されている。モータ駆動装置51やバイブレータ駆動装置52には、走行用モータ37や昇降用モータ41、更にバイブレータ11を駆動させるための電源53が接続されている。また、モータ駆動装置51やバイブレータ駆動装置52には、これらを制御するコントローラ55が接続されている。そして、コントローラ55には、スイッチ56から入力されるON/OFF信号や、回転検出センサ57からの検出信号によってモータ駆動装置51やバイブレータ駆動装置52を制御するためのプログラムが格納されている。
【0017】
本実施形態の締固め作業装置1では、橋梁の長手方向に沿った架台12の所定距離の移動と停止とを繰り返し、停止位置でバイブレータ11が上下動してコンクリートの締固め作業を行うよう構成されている。そうした架台12の停止位置は、格子状に組まれた鉄筋やスタッドジベル7に当たらないようにする必要があるが、これらの位置データは予め記憶されている。そのため、コントローラ55では、バイブレータ11が鉄筋などと干渉しないで、且つ長手方向の間隔が適正値になるように停止位置が決められる。
【0018】
長手方向の移動間隔は、バイブレータ11の振動が有効であると認められる範囲の直径以下とし、平均的な流動性および粘性を有するコンクリートに対しては一般には500mm以下が望ましい。そこで、前述したように、架台12に取り付けたバイブレータ11の間隔も500mm以下としているが、移動間隔も500mm以下になるように設定される。架台12の移動距離を計測するため、車輪36にはロータリーエンコーダなどの回転検出センサ57が取り付けられ、その検出信号がコントローラ55に送信されるよう構成されている。
【0019】
バイブレータ11は、ゆっくりとコンクリートに挿入され、挿入したコンクリートからはゆっくりと引抜きを行い、締固め後に穴が残らないようにしなければならない。また、バイブレータ11をコンクリート内に挿入する締固め時間は5〜15秒程度であって、加振時間が短すぎても長すぎても良くない。そこで本実施形態では、バイブレータ11の抜き差しや、所定時間コンクリート内に挿入する昇降動作を、昇降用モータ51の回転によって制御するようにしている。
【0020】
続いて、締固め作業装置によるコンクリートの締固め作業について説明する。
橋梁は、図1に示すように、鋼桁の上に張り渡した合成床版鋼板パネル5と側部の側鋼板6によって型枠が構成されると、そこにバイブレータ11を備えた架台12が走行部を介して搭載される。型枠にはコンクリートが流し込まれ、それに対して締固めが行われる。所定位置に架台12が配置されると、作業員によってスイッチ56のONボタンが押される。すると、ON信号がコントローラ55に送信され、コントローラ55のプログラムに従い、架台12の長手方向に沿った移動と、停止位置でのバイブレータ11による締固めが実行される。
【0021】
先ず、所定位置で架台12が停止し、その架台12に複数設けられた昇降用モータ41に回転が与えられる。これによりカム42が回転し、そのカム42にローラ43を介して載せられたバイブレータ11が上下方向に移動する。カム42の形状に従ってバイブレータ11は下降し、その振動部分がコンクリート内に挿入される。このときローラ43は、カム42の回転中心からの距離が短い円周部分に当たっている。バイブレータ11は、カム42のゆっくりした回転により、或いはカム42の回転を一時停止させることにより、締固めに必要な時間コンクリート内での振動を継続する。
【0022】
その後、昇降用モータ41が回転することで、ローラ43の位置がカム42に対して回転中心から距離が遠い円周部分に移り、それに応じてバイブレータ11が上昇する。このとき、カムの回転が遅いため、バイブレータ11はゆっくりした速度で上昇してコンクリートから抜き取られる。そして、バイブレータ11が上限位置まで達した段階で昇降用モータ41の回転が止められると、次に走行用モータ37に回転が与えられる。そのため車輪36が側鋼板6の上を転動し、それによって架台12が前進する。このとき、車輪36の回転が回転検出センサ57によって検出され、その検出信号がコントローラ55へと送られている。
【0023】
コントローラ55では、回転検出センサ57の検出信号によって走行距離が算出され、次の停止位置で走行用モータ37の回転が止められる。こうして架台12が移動している間もバイブレータ11は振動したままであるが、走行中は振動を停止させるようにしてもよい。そして次の停止位置でも、前述したように昇降用モータ41に回転が与えられ、バイブレータ11がコンクリートに挿入されて締固めが行われる。このように架台12の間歇的な走行と、停止位置でのバイブレータ11による締固めが繰り返される。その後、コンクリートが流し込まれた範囲の締固めが行われると、作業員によってスイッチ56のOFFボタンが押される。すると、OFF信号がコントローラ55に送信され、走行用モータ37や昇降用モータ41、バイブレータ11への電源が遮断され、締固め作業装置1の駆動が停止する。
【0024】
本実施形態の締固め作業装置1によれば、コントローラ55による自動制御によって行うため、橋梁全体に渡ってコンクリートの締固め作業を均一化することができる。従って、これまで複数の作業員が個々に行っていた作業を統一することができ、しかもバイブレータ11の挿入時間や引抜き速度などを適正な値で実行することで、床版コンクリートの品質を向上させることができる。
【0025】
また、複数の作業員によって行っていた作業を締固め作業装置1を操作する者だけで対処することが可能になり、作業の少人数化を実現することができる。
また、コンクリートに対してバイブレータをゆっくりと抜き差しするため、密な締固め作業を実現することができる。
更に、架台12の停止位置を予め特定し、機械的に挿入して締固め作業を行うため、バイブレータ11を鉄筋に接触させてずらしてしまうようなこともなくなる。
【0026】
以上、本発明に係るコンクリートの締固め作業装置について実施形態を説明したが、本発明は、これに限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
例えば、前記実施形態では、橋梁の幅方向に対して一度に締固め作業が可能な数のバイブレータ11を設ける場合について説明したが、架台12に対してスライド機構を設け、幅方向に対して数回に分けて締固め作業を行うようしてもよい。
また、前記実施形態では、架台12を走行用モータ37を使用して自動走行させるものについて説明したが、作業員が押して手動で移動させるようにしたものであってもよい。
また、前記実施形態では、回転検出センサ57の検出信号を基に走行距離を算出して架台12を停止させる構成としたが、予め停止位置に目印を付け、それを検出して停止させるように構成してもよい。
【符号の説明】
【0027】
1 締固め作業装置
11 バイブレータ
12 架台
31 溝形鋼
36 車輪
37 走行用モータ
41 昇降用モータ
42 カム
43 ローラ
51 モータ駆動装置
52 バイブレータ駆動装置
53 電源
55 コントローラ
56 スイッチ
57 回転検出センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
橋梁の幅方向に架け渡された架台と、橋梁の長手方向に沿って前記架台を移動させるための走行部と、前記架台に対して昇降可能に取り付けられたコンクリートの締固めを行うための複数のバイブレータと、前記バイブレータを前記架台に対して昇降させる複数の昇降手段と、前記昇降手段の駆動を制御する制御手段とを有し、
前記制御手段は、前記バイブレータがコンクリート内に所定時間挿入されるように、前記昇降手段を駆動制御するようにしたものであることを特徴とするコンクリートの締固め作業装置。
【請求項2】
請求項1に記載するコンクリートの締固め作業装置において、
前記制御手段は、抜き差しによってコンクリート表面に穴が形成されない速度で前記バイブレータを昇降させるように、前記昇降手段を駆動制御するようにしたものであることを特徴とするコンクリートの締固め作業装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載するコンクリートの締固め作業装置において、
前記昇降手段は、回転軸にカムを備えた昇降用モータを備え、前記カムに前記バイブレータ側に設けられたローラが上方から当てられ、前記昇降用モータの回転により前記カムとローラとを介して前記バイブレータを昇降させるようにしたものであることを特徴とするコンクリートの締固め作業装置。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれかに記載するコンクリートの締固め作業装置において、
前記走行部は、橋梁の長手方向に沿って車輪を回転させて移動するものであり、前記車輪には走行用モータが取り付けられ、前記架台の停止位置を検出するための検出手段とを備え、
前記制御手段が、前記バイブレータの上昇時に走行し、前記検出手段からの検出信号に基づいて予め決められた停止位置で停止するように、前記走行用モータを駆動制御するようにしたものであることを特徴とするコンクリートの締固め作業装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−132266(P2012−132266A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−286796(P2010−286796)
【出願日】平成22年12月23日(2010.12.23)
【出願人】(000004617)日本車輌製造株式会社 (722)
【Fターム(参考)】