説明

コンクリートの運搬設備

【課題】生コンクリートを運搬する台車を小型・軽量化できるとともに、運搬設備全体を簡素化することのできるコンクリートの運搬設備を提供する。
【解決手段】バッチャープラント2とバケット置き場3との間に設置されたレール台10にレール20を敷設し、このレール20上を、基台32とこの基台32上に取り付けられて生コンクリートを運搬する運搬用ホッパ31と上記基台32に取付けられた車輪33とを備え、一端が上記レール台10の下部に設置されたウインチ42に固定された牽引用のワイヤ41p,41qにより上記レール20上を牽引される運搬台車30を走行させ、上記バッチャープラント2の供給用ホッパ2aから供給された生コンクリートを運搬し、上記バケット置き場3に載置されたバケット3aに生コンクリートを移し替えるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、ダム等の建設現場に設けられる、バッチャープラントで混練したコンクリートをホッパに収容して運搬するコンクリート運搬設備に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ダム工事では、バッチャープラントで混練された生コンクリートを運搬して、コンクリート打設用のバケットに投入する際に、トランスファーカーと呼ばれる自走式の台車が用いられている。図11はトランスファーカーの一構成例を示す図で、このトランスファーカー80は、車輪81が取り付けられた台車82と、この台車82上に設けられた枠台83と、上記枠台83の前方上側に回転自在に取り付けられたベッセル84と、上記車輪81に固定された車軸81jを回転駆動する電動機85と、上記ベッセル84を回転させて傾けるためのベッセル転倒ジャッキ86と、このベッセル転倒ジャッキ86を伸長させる油圧装置87と、上記電動機85と油圧装置87とを制御して上記ベッセル84の転倒や上記台車82の走行を制御する制御盤88と、上記制御盤88に制御信号を送る信号線や電力を供給する電源線が巻かれた電線リール89とを備え、図示しないバッチャープラントとコンクリート打設用のバケット91が載置されているバケット置き場90との間に敷設されたレールR上を、上記電線リール89を介して上記制御盤88に送られる制御信号に基づいて自走する。
上記バッチャープラントで生コンクリートを受け取ったトランスファーカー80は、はじめにレールR上を高速で走行した後所定の位置で減速してから、上記バケット91が載置されているバケット置き場90の所定の位置で停止する。その後、上記トランスファーカー80に装着されたベッセル転倒ジャッキ86を伸長させて上記ベッセル84を傾け、上記ベッセル84に搭載した生コンクリートを上記バケット91に投入する。これにより、上記ベッセル84内に収容された生コンクリートをバケット91内に入れ替えることができる。
上記バケット91はダムのコンクリート打設現場に搬送するクレーンに吊下げられており、生コンクリートを収容したバケット91は、上記クレーンによりコンクリート打設現場に搬送される(例えば、特許文献1〜3参照)。
【特許文献1】特開平7−82888号公報
【特許文献2】実開昭56−68736号公報
【特許文献3】特公平7−116701号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記トランスファーカー80のような、従来のトランスファーカーは自走式なので、台車82上に電動機85や油圧装置87などの動力設備や、これらの動力設備に電源を供給したり制御信号を送る電線リール89などを搭載する必要があるため、構造が複雑で大型となるだけでなく、トランスファーカー80の重量が重いため、車輪81やレールRとして、大きくかつ強度が高いものを用いる必要があった。
また、動力供給源としてディーゼルエンジンを搭載し、制御信号を無線にて送信するようにすれば、電線リール89を設ける必要はないが、構造が簡素化されることもなく、逆にCO2の排出により作業環境が悪化するといった問題点が発生する。
また、コンクリートの運搬方法としては、上記トランスファーカー方式の他に、台車にバケットを搭載し、これを機動車で牽引する台車方式もあるが、この場合には、運転手の他にバケットの吊り換え作業員等の人手がいることや、運搬距離が20〜30mと短いため、機動車が加速してすぐに減速する必要があるので、運搬効率が良くなかった。
【0004】
本発明は、従来の問題点に鑑みてなされたもので、生コンクリートを運搬する台車を小型・軽量化できるとともに、運搬設備全体を簡素化することのできるコンクリートの運搬設備を提供することを目的とする。
【0005】
本発明の請求項1に記載のコンクリートの運搬設備は、混練した生コンクリートを供給するバッチャープラントと上記バッチャープラントから離れた位置に設けられたバケット置き場との間に設置されたレール台と、上記レール台に敷設されたレールと、上記バッチャープラントから供給された生コンクリートを収容するホッパを備えて上記レール上を移動する運搬台車と、上記運搬台車を牽引して、上記運搬台車を上記バッチャープラントから上記バケット置き場まで移動させる牽引装置とを備えたことを特徴とするものである。
このように、運搬台車の移動を、例えば、ワイヤと汎用ウインチを使用したワイヤ式牽引装置のように、自走式から牽引式とすることにより、自走式とするための動力設備を移動体である運搬台車側から固定部であるレール台側に移すことができるので、運搬台車を小型・軽量化できる。また、位置決めや動作制御のための通信ケーブルも不要になるので、設備全体を簡素化できる。更に、動力設備として、例えば、ウインチなどの汎用機械を用いているので、コンクリートの運搬設備を安価に構築できる。
【0006】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のコンクリートの運搬設備であって、上記運搬台車は、上記ホッパを搭載する基台、及び、上記基台に取付けられた車輪を備え、上記ホッパは上記基台に、上記レールの延長方向に平行でかつレール面に垂直な面内で回転可能に取り付けられており、上記バケット置き場側の下部には、上記ホッパの下面を押し上げて上記ホッパを回転させて傾けるホッパ傾斜装置が設置されていることを特徴とするものである。これにより、簡単な構成で上記ホッパに収容した生コンクリートをバケットへ容易に入れ替えることができるとともに、油圧ジャッキやこの油圧ジャッキを作動させるための油圧装置などから成るホッパ傾斜装置を運搬台車に搭載する必要がないので、運搬台車を更に小型・軽量化できる。
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載のコンクリートの運搬設備において、上記レール台に、上記ホッパと同軸の回転軸を有する回転板を設けるとともに、上記ホッパの底部からレール台方向に突出して上記回転板と係合する脚部を設け、上記回転板と上記脚部とが係合したときに、上記回転板と上記ホッパとを一体に回転させて傾けるようにしたことを特徴とするものである。これにより、上記ホッパを精度よく傾けることができるので、ホッパ内の生コンクリートをバケットに確実に入れ替えることができる。
【0007】
また、請求項4に記載の発明は、請求項2に記載のコンクリートの運搬設備であって、上記車輪は、基台のバケット置き場側に取り付けられた前輪と基台のバッチャープラント側に取り付けられた後輪とを備えており、上記レールは、上記前輪が走行する前輪用レールと上記後輪が走行する後輪用レールとに分かれており、上記後輪用レールは、上記バケット置き場側に近づくにしたがって、上記前輪用レールよりも上方に位置するよう敷設されていることを特徴とする。これにより、ホッパ傾斜装置を用いることなくホッパを傾けることができるので、運搬設備を更に簡素化できる。
請求項5に記載の発明は、請求項1〜請求項4のいずれかに記載のコンクリートの運搬設備であって、上記レール台のバケット置き場側の端部には、上記ホッパが傾いたときに上記ホッパの下面に当接して、上記ホッパから落下する生コンクリートを上記バケット置き場に置かれたバケットの開口部に誘導する補助シュートが設けられていることを特徴とする。これにより、運搬してきた生コンクリートをバケットに確実に投入できる。また、コンクリートがバケット置き場に飛散することがないので、清掃等の手間が省け、作業効率も向上する。
請求項6に記載の発明は、請求項1〜請求項5のいずれかに記載のコンクリートの運搬設備であって、上記バケット置き場の底部には、上記バケットを下部側から支持するバケット置き台と、このバケット置き台を下部から支持するとともに上記バケット置き台を傾斜させて上記バケットを上記レール台側に傾ける傾斜手段とが設けられていることを特徴とする。これにより、バケットの開口部をホッパに近づけることができるので、上記ホッパから投入される生コンクリートをバケット内ヘスムースに入れ替えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の最良の形態について、図面に基づき説明する。
最良の形態1.
図1〜図3は本発明の最良の形態1に係るコンクリート運搬設備1を示す図である。各図において、10はレール台、20はレール、30は運搬台車、40はワイヤ式の牽引装置、50はホッパ傾斜装置、60は補助シュート、70は補助シュート回転手段で、バッチャープラント2とバケット置き場3との間にレール台10を構築し、このレール台10上にレール20を敷設するとともに、バッチャープラント2で混練された生コンクリートを運搬台車30に搭載し、この運搬台車30をワイヤ式の牽引装置40にて牽引して上記バッチャープラント2から上記バケット置き場3まで移動させ、上記運搬台車30に搭載された生コンクリートをバケット置き場3に載置されたバケット3aに移し替える。
以下、バケット置き場3側を前方、バッチャープラント2側を後方という。
レール台10は、バッチャープラント2からバケット置き場3方向に延長する2本のレール支持部材11と、地面Gに突設されてこれらのレール支持部材11を下側から支持する複数本の支柱12(12a,12b,12c)と、上記支柱12同士を連結する連結材13,14とを備え、上記バッチャープラント2の下部に設けられて生コンクリートを排出する生コンクリート供給用ホッパ2aの直下からバケット置き場3の手前まで直線状に延びる2本のレール20をそれぞれ下側から支持している。なお、連結材13は支柱12同士をレール20の前後方向に連結する連結材で、連結材14は支柱12同士をレール20の幅方向に連結する連結材である。
本例では、上記支柱12の高さを、上記バケット置き場3に近づくにつれて高くすることにより、上記レール20を、その高さが上記バケット置き場3に近づくにつれて高くなる傾斜レールとしている。
上記バケット置き場3は、ダムの一方の岸に既に打設された当該ダムの堰堤部4に設けられており、上記バケット3aは、上記バケット3aをコンクリート打設現場に搬送する図示しないケーブルクレーンに、ロープ3bにより吊るされた状態で上記バケット置き場3に載置されている。バケット置き場3は、通常は、地面を上記バケット3aの高さよりも深く掘削して形成される穴であるため、レールは傾斜がない平坦なレールが設置されるが、本例のように、バケット置き場3の穴の深さが制限される場合には、レール20の形態として傾斜レールを採用し、バケットが設置できる高さを確保すれば問題ない。なお、上記レール20の傾斜角は、バッチャープラント2とバケット置き場3との距離やバケット置き場3の穴深さ、あるいはバケット3aの高さ等により決定すればよい。
【0009】
運搬台車30は、バッチャープラント2で混練された生コンクリートを収容する運搬用ホッパ31と、この運搬用ホッパ31を搭載する基台32と、この基台32に取り付けられた車輪33と傾斜用部材34とを備えており、運搬用ホッパ31は、基台32に、傾斜用部材34を介して、上記レール20の延長方向に平行でかつ上記2本のレール20,20の作る面であるレール面に垂直な面内で回転可能に取り付けられている。
運搬用ホッパ31は、開口部31aが台形状で、かつ、その深さが前方側が浅く後方に行くにしたがって徐々に深くなっている断面が台形状の凹部を有する容器で、この運搬用ホッパ31の前方には、レール面に垂直で、かつ、開口部31a側に設けられた支点31tを支点として開閉する蓋部材31mが設けられている。また、上記傾斜用部材34は当該運搬用ホッパ31の底部31bの前方側に取り付けられており、上記底部31bの後方側には後部当接部材31cが取り付けられている。
上記傾斜用部材34は、詳細には、上記底部31bに設けられた脚支持部34aと、上記脚支持部34aの前方に設けられ、上記脚支持部34aから当該運搬用ホッパ31の幅方向の中心線に対して線対称な位置に設けられて下方に突出する一対の支点用脚部34bと、上記脚支持部34aの後方で、かつ、上記支点用脚部34bの幅方向内側に設けられた一対の係止用脚部34cとを備えている。この係止用脚部34cは、2つの突出片34m,34mとこれら突出片34m,34mを連結する連結片34nとを備えている。
一方、基台32は、上記運搬台車30の前後方向に延長しそれぞれが前,後2個の車輪33を支持する左,右の車輪支持部材32L,32Rと、上記2本の車輪支持部材32L,32R間を橋絡するように取り付けられた2本の連結部材32b,32cと、上記傾斜用部材34の支点用脚部34bの下端とピン結合し、上記支点用脚部34bを支点として、レール20の延長方向に延長し、レール20の延長方向に平行でかつレール面に垂直な面内において回転する一対の回転部材34rとを備えている。また、符号32dは上記回転部材34rの上記支点用脚部34b側と上記車輪支持部材32L,32Rとを連結する補強部材、符号32p,32qは、上記車輪支持部材32L,32Rの幅方向外側の側面に設けられて、当該運搬台車30を牽引するワイヤ41p,41qをそれぞれ固定するための第1及び第2のワイヤ固定部である。なお、この第1及び第2のワイヤ固定部32p,32qは、上記2本の車輪支持部材32L,32Rの幅方向外側の側面にそれぞれ設けられている。
車輪33は、上記車輪支持部材32L,32Rのそれぞれに取り付けられた車軸32jに、軸受けを介して回転自在に取り付けられ、上記レール20上を転動する。本例では、車輪33を上記各車輪支持部材32L,32Rの前方と後方とにそれぞれ設けるとともに、上記車輪33の幅方向外側に車輪止め33k(図2にのみ図示)を設けた。
【0010】
牽引装置40は、上記運搬台車30を牽引するためのワイヤ41(41p,41q)とこれらのワイヤ41を巻き取ったり巻き出したりするウインチ42と上記ワイヤ41を案内する複数のプーリ43,43a〜43cとを備えている。本例では、牽引装置40を2組備えている。
牽引装置40のウインチ42は、図4に示すように、周面にワイヤ案内溝42kが設けられた円筒状のドラム42Dと、このドラム42Dに減速機42Gを介して連結された電動機42Mと、上記ドラム42Dの回転角度を検出する回転角検出手段であるエンコーダ42Sと、このエンコーダ42Sの出力に基づいて上記電動機42Mの回転速度を制御して上記ワイヤ41の巻き取り速度を制御する制御装置(図示せず)とを備えている。上記ドラム42Dは、仕切板42dを境に軸方向で2つの領域に分けられており、一端が一方の領域42pに固定されたワイヤ41pが巻き取られるときには、一端が他方の領域42qに固定されたワイヤ41qが巻き出されるように構成されている。
ここで、他端が上記第1のワイヤ固定部32pに固定されているワイヤ41pを、運搬台車30をバッチャープラント2からバケット置き場3へ牽引する搬送用のワイヤとし、他端が上記第2のワイヤ固定部32qに固定されているワイヤ41qを、運搬台車30をバケット置き場3からバッチャープラント2へ戻すための帰還用のワイヤとする。図4(c)に示すように、搬送用のワイヤ41pは当該運搬台車30の前方に引き出されて、上記レール台10の前面側に設けられたプーリ43a,43bを介して、上記ウインチ42の各ドラム42Dの一方の領域42pに固定される。一方、帰還用のワイヤ41qは当該運搬台車30の後方に引き出されて、上記レール台10の後端側に設けられたプーリ43cを介して、上記牽引装置40の各ドラム42Dの一方の領域42qに固定される。したがって、上記牽引装置40の各ドラム42Dを、上記搬送用のワイヤ41pを巻き取る方向に回転させることにより、運搬台車30を前方に牽引することができる。
【0011】
ホッパ傾斜装置50は、図2及び図5(a),(b)に示すように、ホッパ傾斜用の油圧ジャッキ51とこの油圧ジャッキ51を駆動する油圧装置52と、回転補助機構53を備えている。上記油圧ジャッキ51はシリンダ51aとこのシリンダ51a内に設けられた図示しないピストンと、このピストンに取り付けられた伸縮ロット51bとを備えている。
油圧ジャッキ51のシリンダ51aは、上記2つの支柱12a,12bのうちのバケット置き場3から遠い側の支柱12bからバケット置き場3側に突設された水平板から成るジャッキ支持部材15に、回転支持手段51cを介して、レール20の延長方向に平行でかつレール面に垂直な面内において回転可能に取り付けられており、伸縮ロット51bの他端側は、上記レール20の上部まで延長して、回転補助機構53に、例えば、ピン部材により、回転可能に取り付けられている。なお、上記シリンダ51aと上記油圧装置52とは図示しない油供給ホースで連結されている。また、上記ジャッキ支持部材15には、後述する補助シュート回転用の油圧ジャッキ72のシリンダ72aが取り付けられている。
また、上記レール台10の運搬台車30が停止する位置の後部側には、クランク式のストッパ機構16が設けられている。このクランク式のストッパ機構16は、運搬台車30の後部当接部材31cを係止するための係止板16aと、油圧もしくはモータにより駆動されて伸縮する駆動ジャッキ16bと、上記係止板16aと上記駆動ジャッキ16bの先端側とを連結する椀部16cとを備えている。これにより、上記運搬台車30が停止位置にないときには、上記駆動ジャッキ16bは伸長した状態にあり、上記係止板16aはレール20の下方側に倒れている。一方、上記運搬台車30が停止位置に停止したときには、上記駆動ジャッキ16bを縮ませて、上記係止板16aをレール20の幅方向に平行な方向を回転軸として回転させ、上記レール20に垂直な方向に立ち上がらせることができる。
更に、上記レール台10の前面側上端には、補助シュート60を取り付けるための補助シュート取付板17が取り付けられている。この補助シュート取付板17は、鉛直方向に延長する板部材で、上記レール20側の支点17tを支点として、上記レール20の延長方向に平行でかつレール面に垂直な面内において回転するようにレール台10に取り付けられている。
回転補助機構53は、詳細には、2枚の回転板53aと、この回転板53aのバケット置き場3側の端部をレール20の延長方向に平行でかつレール面に垂直な面内において回転可能に支持する軸支持板53bと、上記2枚の回転板53aのバケット置き場3側とは反対側に、上記2枚の回転板53aを連結するように設けられたロット受け部材53cとを備えており、上記レール台10の最前方で、レール20,20の間に設置されている。
上記回転板53aは、レール20の延長方向に延長する、幅(レール幅方向の長さ)が上記運搬台車30の係止用脚部34cを構成する2つの突出片34mを連結する連結片34nの間隔よりも若干広い板材で、この回転板53aのバケット置き場3側とは反対側の端部には上記連結片34nを係止するための切り欠き部53sが形成されている。ここで、上記回転板53aの長さと軸支持板53bの位置とは、上記回転板53aが上記突出片34mを上記切り欠き部53sに係止し、かつ、上記回転板53aの回転軸J2と上記運搬台車30の傾斜用部材34の回転軸J1とが一致するように設計されているものとする。
また、上記ロット受け部材53cのバケット置き場3側とは反対側の端部側には、上記ホッパ傾斜用の油圧ジャッキ51の伸縮ロット51bの他端側を、上記油圧ジャッキ51のシリンダ51aを支持する回転支持手段51cの回転中心を中心として、上記レール20の延長方向に平行でかつレール面に垂直な面内において回転可能に取り付けるためのジャッキ取付部54kが設けられている。
【0012】
補助シュート60は、図5(a)に示すように、上記レール台10に設けられた補助シュート取付板17の前方であるバケット置き場3側の面に取り付けられている。この補助シュート60はバケット置き場3側が開放された、レール幅方向から見たときの断面形状が台形状で、レール20側の深さが浅くなっている箱状の部材である。
補助シュート回転手段70は、棒状の摺動部材71と、補助シュート回転用の油圧ジャッキ72とを備えている。棒状の摺動部材71の一方の端部71aは上記補助シュート取付板17の裏面側(バケット置き場3とは反対側)の面の上方であるレール20側側に摺動可能に当接しており、他方の端部71bはレール台10の前後方向に延長する連結材13に回転可能に取り付けられている。補助シュート回転用の油圧ジャッキ72はレール台10の上記ジャッキ支持部材15に取り付けられたシリンダ72aと一端が上記棒状の摺動部材71の中央部近傍に固定された伸縮ロット72bとを備えている。
上記補助シュート回転用の油圧ジャッキ72を伸長させると、上記棒状の摺動部材71はレール20の幅方向に平行な方向を回転軸として回転し、棒状の摺動部材71の一方の端部71aが上記補助シュート取付板17の裏面を押しながら下方に摺動する。これにより、上記補助シュート取付板17はその延長方向が鉛直方向から水平方向に向かって傾くように回転するので、上記補助シュート60は、その開口部60aが上方を向くように傾けられる。
なお、後述するように、上記補助シュート回転用の油圧ジャッキ72は、上記ホッパ回転用の油圧ジャッキ51を作動させる油圧装置52にて作動させることができる。
【0013】
次に、本発明によるコンクリート運搬設備1を用いた生コンクリートの運搬方法について説明する。
まず、図1に示すように、運搬台車30をレール台10上に敷設されたレール20のバッチャープラント2の供給用ホッパ2aの直下に停止させた後、上記供給用ホッパ2aを開いて、上記バッチャープラント2で混練された生コンクリートを上記運搬台車30の運搬用ホッパ31に投入する。その後、図4に示した牽引装置40の電動機42Mを作動させて、上記運搬台車30の車輪支持部材32L,32Rに設けられた第1ワイヤ固定部32pに固定されている搬送用のワイヤ41pをウインチ42のドラム42Dに巻き取ることにより、上記運搬台車30をバケット置き場3方向に牽引する。このとき、上記車輪支持部材32L,32Rに設けられた第2ワイヤ固定部32qに固定されている帰還用のワイヤ41qは、上記搬送用のワイヤ41pの巻き取りに連動して、上記ドラム42Dから巻き出されるので、上記搬送用のワイヤ41pの巻き取り速度を所定の速度になるように制御すれば、上記運搬台車30をほぼ一定の速度で上記レール20上を前進させることができる。
【0014】
運搬台車30がレール20上を前進し、図6に示すように、車輪支持部材32L,32Rの前方の端部がレール20の前方先端側に配設されている回転補助機構53の後端部から所定距離Lだけ離れた位置まで達すると、牽引装置40の図示しない制御装置は、上記搬送用のワイヤ41pの巻き取り速度を徐々に減じるように、ウインチ42のドラム42Dを回転させる電動機42Mの回転数を低下させる制御を行う。これにより、運搬台車30はホッパ傾斜装置50の回転補助機構53に向かってゆっくりと前進するので、運搬台車30を回転補助機構53の内部にスムースに導くことができる。具体的には、図3に示した運搬用ホッパ31から下方に突出する係止用脚部34cの連結片34nを図5に示した回転補助機構53の回転板53aの切り欠き部53s内にスムースに導くことができる。上記係止用脚部34cが切り欠き部53s内に収納された時点、換言すれば、係止用脚部34cの突出片34mが上記切り欠き部53sに係合した時点で、ワイヤ41pの巻き取り作業を中断し、運搬台車30を停止させる。そして、クランク式のストッパ機構16を稼働して係止板16aを回転させて上記運搬台車30の後部当接部材31cを後方から係止する。これにより、万が一、上記搬送用のワイヤ41pが緩んだ場合でも、上記運搬台車30を停止位置に保持することができる。
この停止状態では、図5(b)に示した、運搬用ホッパ31の回転軸となる各支点用脚部34bの回転軸J1と、回転補助機構53の回転軸J2とが一致するので、上記回転補助機構53のロット受け部材53cの下側をホッパ傾斜用の油圧ジャッキ51で押すことで、運搬用ホッパ31と回転補助機構53とを一体に回転させることができる。
【0015】
運搬用ホッパ31内の生コンクリートをバケット3aに移し替える際に、本例では、始めに補助シュート60を回転させて起伏させ、次に、運搬用ホッパ31と回転補助機構53とを回転させて上記運搬用ホッパ31を傾斜させる。
まず、油圧装置52を駆動して補助シュート回転用の油圧ジャッキ72の伸縮ロット72bを伸長させることにより、棒状の摺動部材71の一端71aを補助シュート取付板17の下方側に摺動させながらバケット置き場3側に倒す。これにより、補助シュート取付板17に取り付けられている補助シュート60を回転させて起伏させることができる。
次に、ホッパ傾斜用の油圧ジャッキ51の伸縮ロット51bを伸長させる。運搬用ホッパ31と回転補助機構53とは、図5(b)に示した回転軸J1,J2を回転軸として、上記レール20の延長方向に平行でかつ上記2本のレール20,20の作る面であるレール面に垂直な面内で回転する。一方、油圧ジャッキ51のシリンダ51aはジャッキ支持部材15に上記面内で回転可能に取り付けられているので、上記伸縮ロット51bの他端側は上記ロット受け部材53cの下側に当接しながら、上記ジャッキ支持部材15との連結点である回転支持手段51cの回転中心を通り、上記回転軸J1,J2と平行な直線を回転軸として回転する。これにより、上記運搬用ホッパ31を傾斜させることができる。
【0016】
そして、運搬用ホッパ31が予め所定角度(例えば、81°)傾斜させた状態で上記ホッパ傾斜用の油圧ジャッキ51の伸縮ロット51bの伸長を停止させる。このとき、上記運搬用ホッパ31の蓋部材31mは自然開放されるので、運搬用ホッパ31内の生コンクリートは運搬用ホッパ31から放出される。上記運搬用ホッパ31の傾斜角度としては、上記運搬用ホッパ31の底部31bの前端が補助シュート60の底面に当接するか、あるいは、上記底部31bの前端と補助シュート60の底面との間に若干の隙間がある状態とすることが好ましい。これにより、運搬用ホッパ31内の生コンクリートを上記補助シュート60を介してバケット3aの開口部からバケット3a内ヘスムースに移し替えることができる。
本例では、上記のように、レール20を傾斜レールとしているので、運搬台車30が停止位置において運搬用ホッパ31を傾けた場合にも、傾いた運搬用ホッパ31の下端(本例のように、補助シュート60を設けてある場合には、補助シュート60の下端)の位置を堰堤部4の上面よりも所定位置高くすることができるので、バケット置き場3におかれたバケット3aの開口部の位置が堰堤部4の上面よりも高い位置にあった場合でも、上記バケット3aに生コンクリートを移し替えることができる。
【0017】
生コンクリートが移し替えられたバケット3aは、図示しないクレーンに吊りあげられて、コンクリート打設現場まで搬送される。
一方、運搬用ホッパ31からの生コンクリートの放出が終了した後には、油圧装置52を再度駆動してホッパ傾斜用の油圧ジャッキ51の伸縮ロット51bを縮小させ、上記空になった運搬用ホッパ31を傾斜状態から元の状態に戻し、その後、上記油圧装置52により、補助シュート回転用の油圧ジャッキ72を縮小させて補助シュート60を起伏状態から元の状態に戻すとともに、係止板16aを戻して、上記運搬台車30を後方に移動可能とする。
次に、牽引装置40のドラム42Dを、生コンクリートの搬送時とは逆方向に回転させて、運搬台車30の車輪支持部材32L,32Rに設けられた第2ワイヤ固定部32qに固定されている帰還用のワイヤ41qをウインチ42のドラム42Dに巻き取ることにより、上記運搬台車30をバッチャープラント2方向に牽引する。このとき、搬送用のワイヤ41pは上記ドラム42Dから巻き出されることになる。
なお、上記運搬台車30がバッチャープラント2方向に移動するときには、運搬台車30の自重による重力が作用するが、本例では、一台のウインチ42によりワイヤ41qの巻き取りとワイヤ41pの巻き出しを行っているので、上記運搬台車30を所定の速度で下降させることができる。なお、安全のため、レール20側に車輪33を制動するブレーキ装置を設けてもよい。
空になった運搬用ホッパ31を搭載した運搬台車30は、バッチャープラント2の供給用ホッパ2aの直下に戻されて停止する。そして、上記運搬用ホッパ31に次のバケット3aに移し替えるための生コンクリートを投入する。
【0018】
以上説明したように、本最良の形態1では、バッチャープラント2とバケット置き場3との間に設置されたレール台10にレール20を敷設し、このレール20上を、基台32とこの基台32上に取り付けられて生コンクリートを運搬する運搬用ホッパ31と上記基台32に取り付けられた車輪33とを備え、一端が上記レール台10の下部に設置されたウインチ42に固定された牽引用のワイヤ41p,41qにより上記レール20上を牽引される運搬台車30を走行させ、上記バッチャープラント2の供給用ホッパ2aから供給された生コンクリートを運搬し、上記バケット置き場3に載置されたバケット3aに上記生コンクリートを移し替えるようにしたので、運搬台車30に動力設備を搭載する必要がない。したがって、運搬台車30を小型・軽量化できるとともに、動力設備としてウインチなどの汎用機械を用いているので、設備を簡素化できるため、コンクリートの運搬設備を安価に構築できる。
【0019】
また、上記運搬用ホッパ31の底部31bに、下方に突出する一対の支点用脚部34bと、上記脚支持部34aの後方でかつ上記支点用脚部34bの幅方向内側に設けられた一対の係止用脚部34cとを備えた傾斜用部材34を設け、上記基台32に、上記支点用脚部34bの下端とピン結合して上記レール20の延長方向に平行でかつレール面に垂直な面内において回転する一対の回転部材34rを設けるとともに、上記レール台10の運搬台車30が停止する位置に、一端側で上記支点用脚部34bに係合し他端側で上記運搬用ホッパ31と同軸で回転する2枚の回転板53aを備えた回転補助機構53を設け、上記2枚の回転板53a間に渡されたロット受け部材53cの下部をホッパ傾斜用の油圧ジャッキ51で上側に押して、上記運搬用ホッパ31と上記回転補助機構53とを一体に傾けるようにしたので、油圧ジャッキやこの油圧ジャッキを作動させるための油圧装置などから成るホッパ傾斜装置を運搬台車に搭載する必要がなく、運搬台車を更に小型・軽量化できるとともに、上記運搬用ホッパ31を精度よく傾けることができるので、運搬用ホッパ31の生コンクリートをバケット3aに確実に移し替えることができる。
更に、本例では、上記レール台10の前面側に、上記運搬用ホッパ31から落下する生コンクリートを上記バケット3aの開口部に誘導するための補助シュート60を設けたので、運搬してきた生コンクリートをバケット3aに確実に投入できるだけでなく、コンクリートがバケット置き場に飛散することを防止できるので、清掃等の手間が省け、作業効率も向上する。
【0020】
なお、上記最良の形態1では、ワイヤ式の牽引装置40を用いて運搬台車30を牽引する場合について説明したが、チェーン式の牽引装置を用いてもよい。この場合には、ワイヤ41に代えてチェーンを用いるとともに、ウインチ42を駆動用のスプロケットに置き換え、プーリ43,43a〜43cを従動用のスプロケットに置き換えた構成とすれば、上記ワイヤ式の牽引装置40を用いた場合と同様に、運搬台車30に動力設備を搭載する必要がないので、運搬台車30を小型・軽量化できる。
また、上記例では、レール20を傾斜レールとしたが、バケット置き場3に載置するバケット3aの開口部の高さが地面か地面よりもそれほど突出していない場合には、レール台10の支柱12の高さを同じにして、レール20を平坦にしてもよい。なお、この場合には、上記支柱12の高さは、ホッパ傾斜用の油圧ジャッキ51をレール台10の下部に設置できる高さであればよい。また、支柱12の高さを低くすると、ウインチ42や油圧装置52をレール台10の下部に設置できないこともあるが、このときには、レール台10の一方の側面側の地面などの別の場所に設置し、ワイヤ41p,41qを補助プーリでウインチ42に導いたりなどすればよい。
また、レール20の周囲を覆うレールカバーを設けてもよい。これにより、生コンクリートがこぼれた場合でも、レール20にコンクリートが付着しないので、運搬台車30をスムースに走行させることができる。また、レールカバーは、風で飛んできた砂などの異物が付着してレール20が汚れることを防止できる。
また、補助シュート60は、必ずしも必要ではなく、設けなくてもよいが、補助シュート60を設ける場合には、上記支柱12の高さを上記補助シュート60の長さを考慮した高さにする必要がある。
【0021】
また、上記例では、バケット3aを、バケット3aの開口部が水平になるように、バケット置き場3に載置したが、図7に示すように、バケット置き場3の底部3mに、水平板から成るバケット置き台3cとこのバケット置き台3cを下部から支持するとともに上記バケット置き台3cを傾斜させる傾斜手段としてのシリンダ3dとを設けるようにしてもよい。上記バケット置き台3c上にバケット3aを載置しておけば、生コンクリートの移し替え時には、上記シリンダ3dを伸長させて作動させることにより、上記バケット置き台3cを上記レール台10側に傾けることができる。したがって、上記バケット3aの開口部を運搬用ホッパ31に近づけることができるので、補助シュート60を省略しても、運搬用ホッパ31から放出される生コンクリートをバケット3a内ヘスムースに移し替えることができる。なお、補助シュート60を省略した場合には、上記運搬用ホッパ31の蓋部材31mの回転の支点を上記運搬用ホッパ31の底部31b側に設けるようにすれば、上記蓋部材31mが生コンクリートを誘導する役目をするので、生コンクリートを更にスムースに移し替えることができる。
また、上記例では、回転補助機構53を介して運搬用ホッパ31を回転して傾斜させる構成としたが、上記回転補助機構53を省略し、ホッパ傾斜用の油圧ジャッキ51で、直接運搬用ホッパ31の底部31bを押し上げる形態としてもよい。なお、上記回転補助機構53は運搬台車30のストッパ部材の機能も有しているので、回転補助機構53を省略した場合には、レール台10上に、例えば、左,右の車輪支持部材32L,32Rの先端に当接するストッパ部材をそれぞれ設けるなどして、運搬台車30のオーバーランを防止するようにすることが好ましい。
【0022】
また、上記例では、2組の牽引装置40を用いて運搬台車30を牽引したが、各組の牽引装置40のウインチを2台とし、ワイヤ41pを巻き取るウインチとワイヤ41qを巻き出すウインチとを別にしてもよい。
また、図8に示すようなワイヤリンク機構40Zを用い、2台のウインチ42p,42qを用いて運搬台車30を牽引するようにしてもよい。この場合には、上記第1及び第2のワイヤ固定部32p,32qに代えて、基台32の各車輪支持部材32L,32Rに、牽引用のプーリ43m,43nをそれぞれ設ける。ワイヤ41aの一端とワイヤ41bの一端とは一方のウインチ42pにそれぞれ固定され、ワイヤ41cの一端とワイヤ41dの一端とは他方のウインチ42qにそれぞれ固定される。上記ワイヤ41aの他端は、運搬台車30の前側から、右側の車輪支持部材32Rの前側に設けられた牽引用のプーリ43mにより、左,右の車輪支持部材32L,32R間に導かれ、第1のワイヤ連結部材44mの一端に固定され、上記ワイヤ41cの他端は、運搬台車30の前側から、左側の車輪支持部材32Lの前側に設けられた牽引用のプーリ43mにより、左,右の車輪支持部材32L,32R間に導かれ、上記第1のワイヤ連結部材44mの他端に固定される。一方、上記ワイヤ41bの他端は、運搬台車30の後側から、右側の車輪支持部材32Rの後側に設けられた牽引用のプーリ43nにより、左,右の車輪支持部材32L,32R間に導かれ、第2のワイヤ連結部材44nの一端に固定され、上記ワイヤ41dの他端は、運搬台車30の後側から、左側の車輪支持部材32Lの後側に設けられた牽引用のプーリ43nにより、左,右の車輪支持部材32L,32R間に導かれ、上記第2のワイヤ連結部材44nの他端に固定される。これにより、上記2台のウインチ42p,42qのドラム42D,42Dを、上記ワイヤ41a,41cを巻き取る方向に回転させると、上記ワイヤ41b,41dは上記ドラム42D,42Dから巻き出されるので、運搬台車30を前方に牽引することができる。
このワイヤリンク機構40Zでは、ワイヤ41a〜41dは運搬台車30に固定されておらず、かつ、巻き取られる側のワイヤ41a,41c同士と、巻き出される側のワイヤ41b,41d同士がそれぞれ、第1及び第2のワイヤ連結部材44m,44nにより連結されている構成になっているので2台のウインチ42p,42qのドラム42D,42Dの回転むら等により、各ワイヤ41a〜41dにたるみ等が生じた場合でも、これを上記第1及び第2のワイヤ連結部材44m,44nにより吸収できるので、運搬台車30をバケット置き場3の方向にスムースに牽引させることができる。なお、運搬台車30をバッチャープラント2に戻すときには、ウインチ42pのドラム42Dとウインチ42qのドラム42Dとを、それぞれ、ワイヤ41b,41dを巻き取る方向に回転させればよい。
【0023】
最良の形態2.
上記最良の形態1では、運搬台車30の基台32に車輪33を設けてレール20上を走行させるとともに、上記基台32に運搬用ホッパ31を搭載し、この運搬用ホッパ31をホッパ傾斜装置50にて傾斜させるようにしたが、運搬用ホッパに前輪と後輪を直接取り付けるとともに、レールを前輪用のレールと後輪用のレールとに分け、上記後輪用のレールのバケット置き場側を前輪用のレールよりも上方に位置するよう敷設するようにすれば、ホッパ傾斜装置50を用いることなく、運搬用ホッパを傾斜させることができる。
図9は、本発明の最良の形態2に係るコンクリート運搬設備7の要部を示す模式図で、このコンクリート運搬設備7では、運搬用ホッパ31Rの2つの幅方向の側面31kの前側と後側には、それぞれ、当該側面31kから運搬用ホッパ31Rの幅方向外側に突出する前輪用と後輪用の車軸33jが設けられており、この車軸33jに前輪33pと後輪33qとが回転自在に取り付けられている。本例では、上記前輪33pを上記側面の下側に、上記後輪33qは上記側面の上側に取り付けるとともに、レール20Rを、前輪用のレール20pの上側に後輪用のレール20qが取り付けられている2重レールとしている。前輪用のレール20pは、バケット置き場3の手前から下向きにその方向を変えて終端する。一方、後輪用のレール20qは、バケット置き場3の手前から上記前輪用のレール20pから離れて、上向きにその方向を変えて終端する。したがって、バケット置き場3の近くでは、後輪用のレール20qは前輪用のレール20pよりも上方に位置する。なお、図9において、符号31nは運搬用ホッパ31Rの前面に設けられた蓋部材である。
本例のコンクリート運搬設備7も、上記最良の形態1に示した牽引装置40と同様の構成の牽引装置40Rを2組備えている。具体的には、運搬用ホッパ31Rの両側面31kには、運搬用ホッパ31Rを牽引する搬送用のワイヤ41pの一端と帰還用のワイヤ41qの一端とをそれぞれ固定するための第1及び第2のワイヤ固定部32p,32qが設けられており、上記各ワイヤ41p,41qの他端側は、ウインチ42のドラム42Dに固定されている。これにより、搬送用のワイヤ41pが巻き取られるときには、帰還用のワイヤ41qは巻き出されるので、上記牽引装置40Rの各ドラム42Dを、上記搬送用のワイヤ41pを巻き取る方向に回転させることにより、運搬用ホッパ31Rを前方に牽引することができる。
【0024】
次に、上記運搬用ホッパ31Rの動作について図10を参照して説明する。なお、同図では、牽引装置40Rはワイヤ41p,41qのみを図示し他は省略した。
図示しないバッチャープラント2で混練された生コンクリートを搭載した運搬用ホッパ31Rは、バケット置き場3の近傍の、前輪用のレール20pと後輪用のレール20qとが分離する位置Pから所定距離Lだけ離れた位置Qまでは、ワイヤ41pに牽引されて、ほぼ一体の速度でレール20R上を走行する。上記運搬用ホッパ31Rが上記位置Qまで達すると、上記搬送用のワイヤ41pの巻き取り速度を徐々に減じて上記運搬用ホッパ31Rの走行速度を低下させる。
上記運搬用ホッパ31Rが上記位置Pを通過すると、上記レール20Rは前輪用のレール20pと後輪用のレール20qとに分離しており、かつ、後輪用のレール20qは前輪用のレール20pよりも上方に位置しているので、運搬用ホッパ31Rは前側に徐々に倒れながらゆっくりと前進する。そして、前輪33p及び後輪33qが上記前輪用のレール20pの終端部に達した時点で搬送用のワイヤ41pの巻き取り作業を中断して、上記運搬用ホッパ31Rを停止させる。
この停止状態では、運搬用ホッパ31Rは予め設定した所定角度だけ傾斜した状態となるので、運搬用ホッパ31Rの前面に設けられた蓋部材31nが下部側に開放され、上記運搬用ホッパ31R内の生コンクリートは、当該運搬用ホッパ31Rから、バケット3a内ヘ投入される。これにより、ホッパ傾斜装置を用いることなく、バケット3aに生コンクリートを移し替えることができるので、運搬設備を更に簡素化できる。
生コンクリートが移し替えられたバケット3aは、図示しないクレーンに吊りあげられて、コンクリート打設現場まで搬送される。
なお、上記最良の形態2では、レール20Rを、前輪用のレール20pの上側に後輪用のレール20qが取り付けられている2重レールとしたが、前輪用のレール20pを幅方向内側に設置し、後輪用のレール20qを幅方向外側に設置してもよい。この場合、前輪33pの位置と後輪33qの位置とは、上記レール20p,20qに合わせて適宜設定される。
【産業上の利用可能性】
【0025】
以上説明したように、本発明によれば、コンクリートを運搬する台車の移動を、汎用のウインチを使用したワイヤ牽引式で行うようにしたので、運搬台車を小型・軽量化できるとともに、運搬設備全体を簡素化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の最良の形態1に係るコンクリート運搬設備を示す図である。
【図2】本最良の形態1に係るコンクリート運搬設備を示す正面図である。
【図3】本最良の形態1に係る運搬台車の構成を示す図である。
【図4】本最良の形態1に係る牽引装置に用いられるウインチを示す図である。
【図5】本最良の形態1に係るホッパ傾斜装置の構成を示す図である。
【図6】本最良の形態1に係る運搬台車の動作を示す図である。
【図7】バケットの載置方法の他の例を示す図である。
【図8】本発明による牽引方法の他の例を示す図である。
【図9】本最良の形態2に係るコンクリート運搬設備の要部斜視図である。
【図10】本最良の形態2に係る運搬台車の動作を示す図である。
【図11】従来のトランスファーカーの一構成例を示す図である。
【符号の説明】
【0027】
1 コンクリート運搬設備、2 バッチャープラント、2a 供給用ホッパ、
3 バケット置き場、3a バケット、3b ロープ、
10 レール台、11 レール支持部材、12 支柱、13,14 連結材、
15 ジャッキ支持部材、16 ストッパ機構、17 補助シュート取付板、
20 レール、30 運搬台車、31 運搬用ホッパ、32 基台、
32L,32R 車輪支持部材、32p 第1のワイヤ固定部、
32q 第2のワイヤ固定部、33 車輪、34 傾斜用部材、
40 牽引装置、41,41p,41q ワイヤ、42 ウインチ、
42D ドラム、42G 減速機、42M 電動機、42S エンコーダ、
43 プーリ、50 ホッパ傾斜装置、51 ホッパ傾斜用の油圧ジャッキ、
52 油圧装置、53 回転補助機構、60 補助シュート、
70 補助シュート回転手段、71 棒状の摺動部材、
72 補助シュート回転用の油圧ジャッキ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
混練した生コンクリートを供給するバッチャープラントと上記バッチャープラントから離れた位置に設けられたバケット置き場との間に設置されたレール台と、
上記レール台に敷設されたレールと、
上記バッチャープラントから供給された生コンクリートを収容するホッパを備えて上記レール上を移動する運搬台車と、
上記運搬台車を牽引して、上記運搬台車を上記バッチャープラントから上記バケット置き場まで移動させる牽引装置とを備えたことを特徴とするコンクリートの運搬設備。
【請求項2】
上記運搬台車は、上記ホッパを搭載する基台、及び、上記基台に取付けられた車輪を備え、上記ホッパは上記基台に、上記レールの延長方向に平行でかつレール面に垂直な面内で回転可能に取り付けられており、上記バケット置き場側の下部には、上記ホッパの下面を押し上げて上記ホッパを回転させて傾けるホッパ傾斜装置が設置されていることを特徴とする請求項1に記載のコンクリートの運搬設備。
【請求項3】
上記レール台に、上記ホッパと同軸の回転軸を有する回転板を設けるとともに、上記ホッパの底部からレール台方向に突出して上記回転板と係合する脚部を設け、上記回転板と上記脚部とが係合した時に、上記回転板と上記ホッパとを一体に回転させて傾けるようにしたことを特徴とする請求項2に記載のコンクリートの運搬設備。
【請求項4】
上記車輪は、上記基台のバケット置き場側に取り付けられた前輪と上記基台のバッチャープラント側に取り付けられた後輪とを備えており、上記レールは、上記前輪が走行する前輪用レールと上記後輪が走行する後輪用レールとに分かれており、上記後輪用レールは、上記バケット置き場側に近づくにしたがって、上記前輪用レールよりも上方に位置するよう敷設されていることを特徴とする請求項2に記載のコンクリートの運搬設備。
【請求項5】
上記レール台のバケット置き場側の端部には、上記ホッパが傾いたときに上記ホッパの下面に当接して、上記ホッパから落下する生コンクリートを上記バケット置き場に置かれたバケットの開口部に誘導する補助シュートが設けられていることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかに記載のコンクリートの運搬設備。
【請求項6】
上記バケット置き場の底部には、上記バケットを下部側から支持するバケット置き台と、このバケット置き台を下部から支持するとともに上記バケット置き台を傾斜させて上記バケットを上記レール台側に傾ける傾斜手段とが設けられていることを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれかに記載のコンクリートの運搬設備。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−156140(P2010−156140A)
【公開日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−334671(P2008−334671)
【出願日】平成20年12月26日(2008.12.26)
【出願人】(000001317)株式会社熊谷組 (551)
【Fターム(参考)】