説明

コンクリート充填鋼管柱

【課題】鋼管の側壁の局部座屈を抑制しつつ、鋼管内へのコンクリートの充填性が向上されたコンクリート充填鋼管柱を得ることを目的とする。
【解決手段】鋼管12の内部には規制プレート24が配置されている。各規制プレート24は、鋼管12のコーナー部において隣り合う側壁12A間に渡っており、その幅方向の両端部24Tを隣り合う側壁12Aに接触させた状態で配置されている。これにより、鋼管12の内部が、中央充填室26Aとコーナー充填室26Bとに仕切られている。また、また、各規制プレート24には、隣接する中央充填室26Aとコーナー充填室26Bとをつなぐ複数の貫通孔32が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート充填鋼管柱に関する。
【背景技術】
【0002】
鋼管内にコンクリートが充填されたコンクリート充填鋼管(CFT(Concrete Filled Steel Tube))柱が知られている(例えば、特許文献1)。CFT柱では、一般に、中空の鋼管柱と比較して負担可能な軸力(負担軸力)が大きく、またコンクリートが充填されている分、熱容量が増加するため、耐火性能に優れている。そのため、設計条件(例えば、柱の負担軸力が比較的小さく火災継続時間が短い場合など)によっては、CFT柱の耐火被覆を省略することが可能である。
【0003】
ここで、特許文献1に開示された技術では、鋼管の内周面に、当該鋼管の軸方向へ延びるリブ(フラットバー)が点溶接で取り付けられている。そして、火災時に、鋼管とコンクリートとの熱膨張差によってコンクリートに発生する軸方向の引張り力にリブが抵抗することにより、コンクリートに発生する水平方向のひび割れを抑制し、CFT柱の座屈を防止している。
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示された技術のように鋼管の内周面にリブを点溶接する構成では、火災時におけるコンクリートのひび割れが抑制されるものの、加熱されて耐力、剛性が低下した鋼管の変形を十分に規制することができず、当該側壁に局部座屈が発生する可能性がある。
【0005】
一方、断面十字形に組み合わされた2枚の鉄板を鋼管内に配置し、溶接で固定したコンクリート充填鋼管柱が知られている(例えば、特許文献2)。しかしながら、特許文献2に開示された技術では、2枚の鉄板によって鋼管内が4つの充填室に仕切られる。従って、各充填室にコンクリートを充填しなければならず、コンクリートの充填作業が煩雑化すると共に、各充填室へのコンクリートの充填効率が低下する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−204993号公報
【特許文献2】特開平9−88238号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記の事実を考慮し、鋼管の側壁の局部座屈を抑制しつつ、鋼管内へのコンクリートの充填性が向上されたコンクリート充填鋼管柱を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載のコンクリート充填鋼管柱は、鋼管と、前記鋼管の内部に長手方向を上下方向として配置され、幅方向の両端部を前記鋼管の側壁に接触又は近接させて該鋼管の内部を複数の充填室に仕切ると共に、前記鋼管の変形を規制する規制部材と、前記充填室に充填される充填コンクリートと、を備え、前記規制部材には、隣接する前記充填室をつなぐ貫通孔が形成されている。
【0009】
請求項1に記載のコンクリート充填鋼管柱によれば、規制部材の幅方向の両端部を、鋼管の側壁に接触又は近接させることにより、規制部材の幅方向の一方の端部が鋼管の側壁に接触又は近接しない構成と比較して、鋼管の側壁の変形に対する規制効果が向上する。従って、鋼管の側壁の局部座屈が抑制されるため、コンクリート充填鋼管柱の耐火性能が向上する。
【0010】
また、隣接する充填室をつなぐ貫通孔を規制部材に形成したことにより、当該貫通孔を通して各充填室に充填コンクリートが充填される。従って、各充填室に対する充填コンクリートの充填効率が向上すると共に、施工性が向上する。
【0011】
請求項2に記載のコンクリート充填鋼管柱は、請求項1に記載のコンクリート充填鋼管柱において、前記鋼管が、角形鋼管であり、前記規制部材が、前記角形鋼管における隣り合う側壁間に渡っている。
【0012】
請求項2に記載のコンクリート充填鋼管柱によれば、角形鋼管における隣り合う側壁に規制部材を渡したことにより、鋼管の側壁に対して隣り合う鋼管の側壁が、面外剛性だけでなく、面外剛性よりも大きい面内剛性で抵抗する。従って、鋼管の側壁の変形に対する規制効果が向上する。
【0013】
請求項3に記載のコンクリート充填鋼管柱は、請求項1又は請求項2に記載のコンクリート充填鋼管柱において、前記規制部材が、前記鋼管の側壁に接合されている。
【0014】
請求項3に記載のコンクリート充填鋼管柱によれば、規制部材を鋼管の側壁に接合したことにより、鋼管の側壁の内側への変形だけでなく、鋼管の側壁の外側への変形も規制される。従って、鋼管の側壁の局部座屈に対する抑制効果が向上するため、コンクリート充填鋼管柱の耐火性能が向上する。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、上記の構成としたので、鋼管の側壁の局部座屈を抑制しつつ、鋼管内へのコンクリートの充填性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態に係るコンクリート充填鋼管柱を示す斜視図である。
【図2】(A)は、本発明の一実施形態に係るコンクリート充填鋼管柱を示す図1の平断面図であり、(B)は、本発明の一実施形態に係るコンクリート充填鋼管柱を示す図1の縦断面図である。
【図3】本発明の一実施形態における規制部材の変形例を示す図2に相当する平断面図である。
【図4】(A)及び(B)は、本発明の一実施形態における規制部材の変形例を示す図2に相当する平断面図である。
【図5】(A)及び(B)は、本発明の一実施形態における規制部材の変形例を示す図2に相当する平断面図である。
【図6】耐火試験の試験結果であり、加熱時間と鋼管の軸方向の変形量との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しながら、本発明の一実施形態に係るコンクリート充填鋼管柱について説明する。なお、各図において適宜図示される矢印Zは鋼管の軸方向を示している。
【0018】
図1、図2(A)、及び図2(B)には、一実施形態に係るコンクリート充填鋼管柱10の一部が示されている。コンクリート充填鋼管柱10は、例えば、高層建物や超高層建物等の高い強度(例えば、設計基準強度で60N/mm以上、軸力比(軸力/(柱の水平断面積×充填コンクリートの設計基準強度)で0.3以上の高い軸力)が求められる柱として好適に用いられるものである。
【0019】
コンクリート充填鋼管柱10は、鋼管12と、鋼管12の内部に配置される規制部材としての規制プレート24を備えている。鋼管12は角形鋼管からなり、軸方向(矢印Z方向)を上下方向として、図示しない基礎等の上に立てられている。なお、鋼管12の外周部には耐火被覆が施されておらず、コンクリート充填鋼管柱10は、無耐火被覆のコンクリート充填鋼管柱(無耐火被覆CFT柱)とされている。
【0020】
図2(A)に示されるように、規制プレート24は板状の鋼板で構成され、鋼管12の4つのコーナー部にそれぞれ配置されている。なお、説明の便宜上、鋼管12における隣り合う側壁を側壁12A、側壁12Bとして以下説明する。規制プレート24は、長手方向を上下方向(鋼管12の軸方向)として配置され、鋼管12の下端部から上端部に渡って設けられている。また、各規制プレート24は、鋼管12のコーナー部において、隣り合う鋼管12の側壁12A,12B間に渡っており、その幅方向の両端部24T(の端面)を隣り合う側壁12A,12Bにそれぞれ接触させた状態で配置されている。また、規制プレート24の両端部24Tは、隣り合う側壁12A,12Bに溶接、接着剤等で接合されている。即ち、隣接する鋼管12の側壁12A,12B同士が、規制プレート24で連結されている。
【0021】
鋼管12の各側壁12A,12Bには、当該側壁12A,12Bを幅方向(鋼管12の周方向)に略3等分する位置に、規制プレート24の端部24Tがそれぞれ接合されている。これらの規制プレート24によって、鋼管12の内部が水平方向(鋼管12の軸方向と直交する方向)に複数の充填室に仕切られている。具体的には、鋼管12の中央部に設けられ、平面視にて8角形の中央充填室26Aと、鋼管12の各コーナー部に設けられ、平面視にて3角形の4つのコーナー充填室26Bとに仕切られている。これらの中央充填室26A及びコーナー充填室26Bには、充填コンクリート14が充填されている。
なお、充填コンクリート14は、各中央充填室26A及びコーナー充填室26Bに充填されたコンクリートが硬化したものである。
【0022】
ここで、各規制プレート24には、中央充填室26Aとコーナー充填室26Bとをつなぐ複数の貫通孔32が、当該規制プレート24の幅方向及び長手方向に間隔を空けて形成されている。これにより、中央充填室26Aとコーナー充填室26Bとの間で、硬化する前のコンクリートが流動するようになっている。
なお、規制プレート24には、少なくとも1つの貫通孔32が形成されていれば良く、また、貫通孔32の形状、大きさは、コンクリートの粘性や骨材の大きさに応じて適宜変更可能である。
【0023】
次に、本実施形態に係るコンクリート充填鋼管柱の作用について説明する。
【0024】
例えば、図2(B)に示されるように、火災によってコンクリート充填鋼管柱10が矢印A方向から加熱されると、先ず、温度上昇に伴って鋼管12が熱膨張し、鋼管12が軸方向(矢印Z方向)へ伸張すると共に、徐々に軟化して剛性が低下する。また、鋼管12の側壁12Aを介して、当該側壁12Aを内部から支持する充填コンクリート14の外周部に熱が伝達され、当該外周部の温度が上昇する。そして、充填コンクリート14の外周部の温度が所定温度(熱劣化温度)以上になると、充填コンクリート14の外周部が熱劣化する。これにより、充填コンクリート14の外周部が脆く、脆性的に破壊され易くなり、鋼管12の側壁12Aの支持強度が低下する。この結果、図中の二点鎖線で示されるように、温度上昇により剛性が低下した鋼管12の側壁12Aが面外方向へ凸状に湾曲し、局部座屈する。そして、鋼管12の側壁12Aが局部座屈すると、矢印Qで示されるように、内側へ凸状に湾曲した鋼管12の側壁12Aによって充填コンクリート14の外周部が押圧され、当該外周部が圧壊する。また、鋼管12の側壁12Aに局部座屈が発生すると、鋼管12が軸方向(矢印Z方向)に縮むため、鋼管12が負担していた軸力Fの一部が充填コンクリート14に導入され、充填コンクリート14の負担軸力が増加する。これにより、充填コンクリート14の外周部の圧壊が促進され、コンクリート充填鋼管柱10の耐力(軸耐力)が急激に低下し、最終的に破壊に至る。
【0025】
このように鋼管12の側壁12Aに局部座屈が発生すると、充填コンクリート14が所定の耐力(火災時耐力)を発揮する前に、コンクリート充填鋼管柱10は脆性的に崩壊してしまう。
【0026】
そこで、本実施形態では、図2(A)に示されるように、鋼管12のコーナー部に規制プレート24を配置し、規制プレート24の幅方向の両端部24Tを隣り合う鋼管12に側壁12A,12Bに接合している。即ち、規制プレート24によって隣り合う鋼管12の側壁12A,12B同士を連結している。これにより、鋼管12の側壁12A,12Bの剛性、特に面外剛性が増加するため、鋼管12の側壁12Aの内側(鋼管12の中心軸の向かう側)への変形(面外変形)が規制される。また、規制プレート24が、隣り合う鋼管12の側壁12A,12Bに接合されているため、鋼管12の側壁12A,12Bの内側への変形だけでなく、外側への変形も規制される。更に、規制プレート24は、充填コンクリート14に埋設されており、充填コンクリート14の内部に入り込んでいる。従って、充填コンクリート14の外周部が熱劣化しても、充填コンクリート14の内部によって規制プレート24が支持されるため、鋼管12の側壁12Aの変形が規制される。
【0027】
また、規制プレート24によって隣り合う鋼管12の側壁12A,12B同士を連結したことにより、例えば、隣り合う一方の側壁12Aが内側へ変形して規制プレート24を押圧したときに、隣り合う他方の側壁12Bに規制プレート24を介して押圧力Pが伝達される。即ち、一方の鋼管12の側壁12Aの内側への変形に対し、規制プレート24だけでなく、他方の側壁12Bが抵抗する。
【0028】
また、規制プレート24を介して対向する他方の側壁12Bに伝達される押圧力Pは、隣り合う他方の側壁12Bに対して傾斜する方向に作用する。そのため、隣り合う他方の側壁12Bが、面外剛性(矢印Pに対する剛性)だけでなく、面外剛性よりも大きい面内剛性(矢印Pに対する剛性)で抵抗する。これにより、隣り合う一方の側壁12Aの内側への変形に対する規制効果が向上する。従って、隣り合う鋼管12の側壁12A,12B間に規制プレート24が渡らない構成と比較して、鋼管12の側壁12Aの内側への変形に対する規制効果が向上する。これと同様に、鋼管12の側壁12Aの外側への変形に対する規制効果も向上する。
【0029】
このように本実施形態では、隣り合う鋼管12の側壁12A,12B同士を規制プレート24で連結することにより、火災時における鋼管12の側壁12A,12Bの局部座屈が抑制される。従って、コンクリート充填鋼管柱10に所定の耐力(軸耐力)を発揮させることが可能になるため、コンクリート充填鋼管柱10の耐火性能が向上する。更に、鋼管12の側壁12A,12Bを幅方向(鋼管12の周方向)に略3等分する位置を規制プレート24で支持したことにより、各側壁12A,12Bの幅方向の座屈長さL,L(図2(A)参照)が、側壁12A,12Bの幅Lの略1/3になる。従って、側壁12A,12Bの局部座屈に対する抑制効果が向上する。
【0030】
また、規制プレート24には、隣接する中央充填室26Aとコーナー充填室26Bとをつなぐ複数の貫通孔32が形成されている。従って、コンクリート充填鋼管柱10の施工時に、例えば、中央充填室26Aにコンクリートを充填すると、硬化前のコンクリートが貫通孔32を流動して、コーナー充填室26Bに充填される。従って、鋼管12への充填コンクリート14の充填作業の手間が低減される。また、充填室の平断面積が狭い場合、コンクリートが充填室の全体に行き渡らず、充填ムラが発生し易い。これに対して本実施形態では、規制プレート24に形成された貫通孔32を通して、中央充填室26Aからコーナー充填室26Bへコンクリートが流動するため、コーナー充填室26Bに対するコンクリートの充填効率が向上する。更に、規制プレート24に形成された貫通孔32にもコンクリートが充填されるため、規制プレート24と充填コンクリート14(図1参照)との付着力(一体性)が高められる。従って、鋼管12の側壁12Aの変形に対する規制効果が向上する。
【0031】
次に、本実施形態に係るコンクリート充填鋼管柱の変形例について説明する。
【0032】
鋼管12に対する規制プレート24の配置は、上記したものに限らない。例えば、図3に示されるように、規制プレート24の幅方向の両端部24Tを、隣り合う鋼管12の側壁12A,12Bの幅方向の中央部に接触させた状態で配置しても良い。このように、鋼管12の側壁12A,12Bのうち、面外剛性が最も小さくなる幅方向の中央部を規制プレート24で支持することにより、側壁12Aの局部座屈を効率的に抑制することができる。また、上記実施形態と比較して、コーナー充填室26Bの平断面積が広くなり、コーナー充填室26B内のコンクリートの流動性が向上する。従って、コーナー充填室26Bに対するコンクリートの充填性が向上する。
【0033】
また、上記実施形態では、隣り合う鋼管12の側壁12A間に渡って規制プレート24を配置したが、これに限らない。例えば、図4(A)に示されるように、対向する鋼管12の側壁12A間に渡って規制プレート28を配置しても良い。具体的には、規制プレート28は、その幅方向の両端部28Tを、対向する鋼管12の側壁12Aの幅方向の中央部にそれぞれ接触させた状態で配置されており、鋼管12の内部を2つの充填室26Cに仕切っている。また、規制プレート28には、隣接する充填室26Cをつなぐ複数の貫通孔34が形成されている。
【0034】
このように、対向する鋼管12の側壁12A間に渡って規制プレート28を配置することにより、例えば、対向する一方の側壁12Aが内側へ変形して規制プレート28を押圧したときに、対向する他方の側壁12Aに規制プレート28を介して押圧力が伝達される。即ち、対向する一方の側壁12Aの内側への変形に対し、規制プレート28だけでなく、対向する他方の側壁12Aが抵抗する。従って、対向する側壁12A間に規制プレート28が渡らない構成と比較して、側壁12Aの内側への変形に対する規制効果が向上する。また、規制プレート28の両端部28Tを側壁12Aにそれぞれ接合することにより、側壁12Aの外側への変形も規制される。従って、鋼管の側壁12Aの局部座屈が抑制されるため、コンクリート充填鋼管柱の耐火性能が向上する。
【0035】
なお、図4(A)に示す構成では、鋼管12の内部に1枚の規制プレート28を配置したが、対向する複数枚の規制プレート28を鋼管12の内部に配置しても良い。また、図4(B)に示されるように、複数の貫通孔40が形成された2枚の規制プレート36,38を平面視にて十字形状に連結し、各々の幅方向の両端部36T,38Tを対向する鋼管12の側壁12A,12Bにそれぞれ接触させた状態で配置しても良い。この場合、鋼管12の内部が4つの充填室26Dに仕切られる。これにより、対向する側壁12Bの局部座屈も抑制することができる。
【0036】
更に、上記実施形態では、鋼管12として角形鋼管を用いたが、断面多角形の鋼管を用いても良い。また、図5(A)に示されるように、断面円形の丸形鋼管42を用いても良い。この場合、例えば、貫通孔44が形成された2枚の規制プレート46,48を平面視にて十字形状に連結し、各々の両端部46T,48Tを丸形鋼管42の側壁42Aに接触させた状態で配置しても良い。これにより、丸形鋼管42の内部は、4つの充填室50Aに仕切られる。また、図5(B)に示されるように、貫通孔52が形成された3枚の規制プレート54を平面視にて三角形状に組み合わせ、各々の両端部54Tを丸形鋼管42の側壁42Aに接触させた状態で、丸形鋼管42の内部に配置しても良い。この場合、丸形鋼管42の内部が、3枚の規制プレート54で囲まれた充填室50Bと、丸形鋼管42の側壁42Aと各規制プレート54とで囲まれた3つの充填室50Cとに仕切られる。また、3枚の規制プレート54がトラス構造を構成するため、丸形鋼管42の側壁42Aの内側への変形に対する規制効果が向上する。
【0037】
また、上記実施形態では、図2(A)に示されるように、規制部材としての規制プレート24の幅方向の両端部24Tを鋼管12の側壁12Aに接合したが、これに限らない。例えば、規制プレート24の幅方向の両端部24Tを鋼管12の側壁12Aに接合せずに接触させ、鋼管12の側壁12Aの内側への変形のみを規制しても良い。この構成によっても、鋼管12の側壁12Aの局部座屈を抑制することができる。なお、規制プレート24の幅方向の両端部24Tを鋼管12の側壁12Aに接合しない場合は、運搬時や鋼管12へのコンクリート充填時における位置ズレを防止するために、規制プレート24の上端部及び下端部を点溶接、接着剤等で仮留めしても良い。また、規制プレート24の幅方向の両端部24Tを鋼管12の側壁12Aに接触させずに、当該側壁12Aが局座屈しない程度に近接させて配置しても良い。つまり、鋼管12の側壁12Aと規制プレート24の幅方向の端部24Tとの間に、当該側壁12Aが局座屈しない程度の隙間を設け、当該隙間に充填コンクリート14を充填しても良い。
【0038】
また、上記実施形態では、鋼管12の下端部から上端部に渡って規制プレート24を配置したが、長手方向の長さが短くされた複数の規制プレート24を、鋼管12の軸方向に間隔を空けて配置しても良い。更には、規制プレート24の貫通孔32は、必要に応じて設ければ良く、適宜省略可能である。
【0039】
また、上記実施形態におけるコンクリート充填鋼管柱10には、必要に応じて耐火被覆を施しても良い。
【0040】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明はこうした実施形態に限定されるものでなく、一実施形態及び各種の変形例を適宜組み合わせて用いても良いし、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得ることは勿論である。
【0041】
次に、耐火試験について説明する。
【0042】
本耐火試験では、高層建物や超高層建物等の高い強度(例えば、設計基準強度で60N/mm以上、軸力比(軸力/(柱の水平断面積×充填コンクリートの設計基準強度)で0.3以上の高い軸力)が求められるコンクリート充填鋼管柱において、鋼管12の内部に充填される充填コンクリート14の骨材が、耐火性能に与える影響を検証した。充填コンクリート14の骨材としては、従来から一般的に用いられている硬質砂岩骨材と、近年、広く用いられるようになってきた石灰岩骨材を用いた。
【0043】
耐火試験では、2つの試験体1,2に鉛直荷重(軸力比=0.4)を載荷しながら、試験体1,2をバーナーで加熱し、各試験体1,2の軸方向の変形量をそれぞれ測定した。試験体1は、石灰岩骨材を用いたコンクリートを角形鋼管に一律に充填した従来のコンクリート充填鋼管柱であり、試験体2では、硬質砂岩骨材を用いたコンクリートを角形鋼管に一律に充填した従来のコンクリート充填鋼管柱である。また、試験体1,2における角形鋼管の水平断面積は同一であり、これらの角形鋼管に充填されるコンクリートのコンクリート強度も略同一(呼び強度55N/mm、試験時強度70N/mm程度)である。
【0044】
図6には、耐火試験の試験結果が示されている。図中に実線で示す曲線は試験体1の試験結果であり、点線で示す曲線は試験体2の試験結果である。なお、図6における横軸は加熱時間(分)であり、縦軸は試験体1,2の軸方向の変形量(mm)である。この変形量(mm)は、各試験体1,2に鉛直荷重を載荷した状態をゼロとし、軸方向に伸びる方向を正、軸方向に縮む方向を負としている。
【0045】
図6に示される試験結果から、石灰岩骨材を用いた試験体1は、硬質砂岩骨材を用いた試験体2よりも早期に軸方向の変形量(縮み量)が大きくなり、急激に耐力が低下したことが分かる。これは、石灰岩骨材を用いた試験体1では、充填コンクリートの外周部が早期に熱劣化し、鋼管の側壁に局部座屈が発生したためと考えられる。石灰岩骨材を用いたコンクリートは、硬質砂岩骨材を用いたコンクリートに比べ耐火性能が劣ることが知られている。試験体1は加熱によって熱劣化し、脆くなった鋼管周辺のコンクリートが、図2(B)に示す鋼管の面外への変形を抑えることができなくなり、鋼管の局部座屈によって脆性的に崩壊したものと思われる。このように負担軸力が大きいCFT柱(例えば軸力比0.3以上)に石灰岩のように脆い骨材を用いる場合は、充填コンクリートが十分な耐力を残している場合でも、鋼管の局部座屈によって早期に破壊が生じる。なお、骨材として安山岩、流紋岩を用いたコンクリートは、硬質砂岩骨材を用いたコンクリートと同等以上の耐火性能を有することが知られている。従って、石灰岩骨材を用いたコンクリートは、安山岩、流紋岩を用いたコンクリートよりも早期に熱劣化するが分かる。
【0046】
一方、石灰岩は、硬質砂岩、安山岩、流紋岩等と比較して安価で、かつコンクリート強度の高強度化(設計基準強度で80N/mm程度まで)が可能であり、近年、広く用いられるようになっている。従って、上記実施形態及び各種の変形例は、前述した高い強度が求められ、かつ、充填コンクリートの骨材として石灰岩が用いられたコンクリート充填鋼管柱に特に有効であり、このようなコンクリート充填鋼管柱に上記実施形態及び各種の変形例を適用することで、コスト削減を図りつつ、コンクリート充填鋼管柱の耐火性能を飛躍的に向上させることができる。
【0047】
なお、上記実施形態及び各種の変形例は、充填コンクリートの骨材として硬質砂岩、安山岩、流紋岩等を用いたコンクリート充填鋼管柱や、一般的な強度のコンクリート充填鋼管柱にも、当然ながら適用可能である。
【符号の説明】
【0048】
10 コンクリート充填鋼管柱
12 鋼管
12A 側壁
12B 側壁
14 充填コンクリート
24 規制プレート(規制部材)
26A 中央充填室(充填室)
26B コーナー充填室(充填室)
26C 充填室
26D 充填室
28 規制プレート(規制部材)
32 貫通孔
34 貫通孔
36 規制プレート(規制部材)
38 規制プレート(規制部材)
40 貫通孔
42 丸形鋼管(鋼管)
42A 側壁
44 貫通孔
46 規制プレート(規制部材)
48 規制プレート(規制部材)
50A 充填室
50B 充填室
50C 充填室
52 貫通孔
54 規制プレート(規制部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼管と、
前記鋼管の内部に長手方向を上下方向として配置され、幅方向の両端部を前記鋼管の側壁に接触又は近接させて該鋼管の内部を複数の充填室に仕切ると共に、前記鋼管の変形を規制する規制部材と、
前記充填室に充填される充填コンクリートと、
を備え、
前記規制部材には、隣接する前記充填室をつなぐ貫通孔が形成されている請求項1に記載のコンクリート充填鋼管柱。
【請求項2】
前記鋼管が、角形鋼管であり、
前記規制部材が、前記角形鋼管における隣り合う側壁間に渡っている請求項1に記載のコンクリート充填鋼管柱。
【請求項3】
前記規制部材が、前記鋼管の側壁に接合されている請求項1又は請求項2に記載のコンクリート充填鋼管柱。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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