説明

コンクリート打設型枠用シート、その製造方法及びその施工方法

【課題】型枠へのシートの展張に際し、誰が施工してもシワの入らない均一な展張を安定的且つ効率的に可能にするコンクリート打設型枠用シート、その製造方法及びその施工方法を提供する。
【解決手段】コンクリート打設型枠と打設コンクリートとの間に介装される、通水性基材と、該通水性基材の打設コンクリート側の面に積層された水通過性フィルムとからなるコンクリート打設型枠用シートであって、前記水通過性フィルムが、複数の微細な透水性貫通孔を有する第一のフィルター層と、複数の微細な透水性貫通孔を有し且つ層を貫通する複数の切り込みを有する第二のフィルター層の2層とからなることを特徴とするコンクリート打設型枠用シート。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート打設型枠用シート、その製造方法及びその施工方法に関し、更に詳しくは、型枠へのシートの展張に際し、その張力を目視によって確認できるようにすることによって、誰が施工してもシワの入らない均一な展張を安定的且つ効率的に可能にするコンクリート打設型枠用シート、その製造方法及びその施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、建築現場で見られるように、合板型枠や鋼製型枠等の型枠を設置して生コンクリートを流し込み躯体や壁を構築するが、その際、生コンクリート内に滞在する空気や余剰水で出来上がりのコンクリート面に痘痕が発生し、表面美化に著しく影響を与えることから、透水性型枠シートが上記型枠に取付けられて使用されている。
一般に、この透水性型枠シートは、生コンクリートの余剰水や空気は流通するが、セメント粒子は流通しない多数の微細孔を設けた水透過性フィルムと、該微細孔から流出した余剰水と空気を外部に排出する通水性基材から構成されている(特許文献1:特開平7−34660号公報)。
そして、従来、このような透水性型枠シートの施工方法としては、まず型枠の長手方向の一方の端部側面に透水性型枠シートの一端を釘等で固定すると共に、上記透水性型枠シートを展開して上記型枠の長手方向の反対側の端部側面に上記透水性型枠シートの他端を釘等で固定し、長手方向の展張が終わった後に、次いでこの一連の型枠の長手方向への透水性型枠シートの展張を該型枠短手方向に繰り返し展開していくことによって型枠に透水性型枠シートを展張している。
しかしながら、この方法では、透水性型枠シートを展開させる力が個人の感覚となり、展開させる力が強過ぎると透水性型枠シートの固定部が破損することがあり、逆に展開させる力が弱過ぎると透水性型枠シートの弛みを十分に取り除くことができないまま展張することになるので、透水性型枠シートにシワが残り、その結果、コンクリート表面にもシワが転写され、表面の美観を著しく損なうことがあった。
このため、型枠への透水性型枠シートの展張に際し、誰が施行してもシワの入らない均一な展張を安定的且つ効率的に可能にする技術が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−34660号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、型枠へのシートの展張に際し、その張力を目視によって確認できるようにすることによって、誰が施工してもシワの入らない均一な展張を安定的且つ効率的に可能にするコンクリート打設型枠用シート、その製造方法及びその施工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記目的を達成するため、鋭意検討を行なった結果、コンクリート打設型枠と打設コンクリートとの間に介装される、通水性基材と、該通水性基材のコンクリート打設側の面に積層された水通過性フィルムとを含むコンクリート打設型枠用シートであって、前記水通過性フィルムが、複数の微細な透水性貫通孔を有する第一のフィルター層と、複数の微細な透水性貫通孔を有し且つ層を貫通する複数の切り込みを有する第二のフィルター層の2層とからなることを特徴とするコンクリート打設型枠用シートとすることによって、型枠への該シートの展張に際し、該シートを展開させる力の加減によって、該シートの第二のフィルター層の貫通切り込みの開き加減が変わり、且つその大きさや形状のシート全体に対する均一の度合いを目視によって確認することができるので、誰が施工してもシワの入らない均一な展張を安定的且つ効率的に可能にすることを見出し、本発明をなすに至った。
【0006】
即ち、本発明は、下記コンクリート打設型枠用シート、その製造方法及びその施工方法を提供する。
請求項1:
コンクリート打設型枠と打設コンクリートとの間に介装される、通水性基材と、該通水性基材の打設コンクリート側の面に積層された水通過性フィルムとを含むコンクリート打設型枠用シートであって、前記水通過性フィルムが、複数の微細な透水性貫通孔を有する第一のフィルター層と、複数の微細な透水性貫通孔を有し且つ層を貫通する複数の切り込みを有する第二のフィルター層の2層とからなることを特徴とするコンクリート打設型枠用シート。
請求項2:
前記通水性基材が白色又は淡白な色であり、前記第一のフィルター層が透明、白色又は淡白な色であり、前記第二のフィルター層が黒又は濃厚色であることを特徴とする請求項1記載のコンクリート打設型枠用シート。
請求項3:
打設コンクリート側から、前記第二のフィルター層、前記第一のフィルター層、及び前記通水性基材の順で積層されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のコンクリート打設型枠用シート。
請求項4
打設コンクリート側から、前記第一のフィルター層、前記第二のフィルター層、及び前記通水性基材の順で積層されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のコンクリート打設型枠用シート。
請求項5:
請求項1〜4のいずれかに記載のコンクリート打設型枠用シートの製造方法であって、複数の貫通切り込みを有するフィルムと無孔のフィルムとを積層後、両フィルムを貫通する複数の微細な透水性貫通孔を穿孔し、次いで通水性基材と積層することを特徴とするコンクリート打設型枠用シートの製造方法。
請求項6:
請求項1〜4のいずれかに記載のコンクリート打設型枠用シートの製造方法であって、複数の貫通切り込みを有するフィルムと無孔のフィルムと通水性基材とを積層後、これらのフィルム及び基材を貫通する微細な透水性貫通孔を穿孔することを特徴とするコンクリート打設型枠用シートの製造方法。
請求項7:
請求項1〜4のいずれかに記載のコンクリート打設型枠用シートの施工方法であって、コンクリート打設型枠側の面の一端に該コンクリート打設型枠用シートの通水性基材側の面の一端を固定した後、該コンクリート打設型枠用シートを前記コンクリート打設型枠側の面の他端へ向けて展張するに際し、該コンクリート打設型枠用シートの水透過性フィルム側から観察される全面の貫通切り込みの開き具合が一様となるように展張することを特徴とするコンクリート打設型枠用シートの施工方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、型枠へのシートの展張に際し、その張力を目視によって確認することができるので、誰が施工してもシワの入らない均一な展張を安定的且つ効率的に可能にするコンクリート打設型枠用シート、その製造方法及びその施工方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明のコンクリート打設型枠用シートの一例の一部を拡大して示す概略断面図である。
【図2】本発明のコンクリート打設型枠用シートの一例の一部を拡大して示す概略斜視図であり、(a)は該シートの展張前の状態を示しており、(b)は該シートの展張する際の状態を示している。
【図3】本発明のコンクリート打設型枠用シートの他の例の一部を拡大して示す概略斜視図であり、(a)は該シートの展張前の状態を示しており、(b)は該シートの展張後の状態を示している。
【図4】(a)〜(h)は本発明のコンクリート打設型枠用シートの第二のフィルター層の貫通切り込みのパターンの例の一部を拡大して示す概略平面図である。
【図5】(a)、(b)は本発明のコンクリート打設型枠用シートの第二のフィルター層と第一のフィルター層との点状又は線状の部分熱融着の配列の例の一部を拡大して示す平面図である。
【図6】従来のコンクリート打設型枠用シートの一例の一部を拡大して示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態及び実施例】
【0009】
本発明に係るコンクリート打設型枠用シート1は、図1に示すように、コンクリート打設型枠9と打設コンクリート10との間に介装される、通水性基材2と、該通水性基材2の打設コンクリート10側の面に積層された水通過性フィルム5とを含むコンクリート打設型枠用シート1であって、前記水通過性フィルム5が、複数の微細な透水性貫通孔6を有する第一のフィルター層3と、複数の微細な透水性貫通孔7を有し且つ層4を貫通する複数の切り込み8を有する第二のフィルター層4の2層とからなることを特徴とするコンクリート打設型枠用シート1である。
本発明に係るコンクリート打設型枠用シート1は、図6に示した従来のコンクリート打設型枠用シート1’に対して、特に、層4を貫通する複数の切り込み8を有する第二のフィルター層4を有しているところに特徴がある。
【0010】
このようなコンクリート打設型枠用シート1は、特に図示しないが、従来と同様に、まず、前記型枠9の長手方向の一方の端部側面に前記シート1の一端を釘等で固定すると共に、前記シート1を展開して前記型枠9の長手方向の反対側の端部側面に前記シート1の他端を釘等で固定し、長手方向の展張が終わった後に、次いでこの一連の前記型枠9の長手方向へのシート1の展張を該型枠9短手方向に繰り返し展開していくことによって前記型枠9に前記シート1を展張していくものである。
【0011】
ここで、コンクリート打設型枠用シート1は、水透過性フィルム5が、複数の微細な透水性貫通孔6を有する第一のフィルター層3と、複数の微細な透水性貫通孔7を有し且つ層4を貫通する複数の切り込み8を有する第二のフィルター層4の2層とからなっているので、前記シート1をコンクリート打設型枠9に施工するに際し、前記シート1を展開させる力の加減によって、前記シート1の第二のフィルター層4の貫通切り込み8の開き具合が変わり、且つその大きさや形状のシート全体に対する均一の度合いを目視によって確認することができるので、それを見ながらシート全体の貫通切り込みの開き具合が一様になるよう展張していくことによって、誰が施工してもシワの入らない均一な展張を安定的且つ効率的に可能にすることができる。
【0012】
図2及び図3は、コンクリート打設型枠用シート1を、コンクリート打設型枠9に展張していく際の第二のフィルター層4の貫通切り込み8の開き具合を示した例である。
図2のコンクリート打設型枠用シート1は、通水性基材2並びに第一のフィルター層3及び第二のフィルター層4からなる水透過性フィルム5がこの順に積層されており、図3のコンクリート打設型枠用シート1は、通水性基材2並びに第二のフィルター層4及び第一のフィルター層3からなる水透過性フィルム5がこの順に積層されている。つまり、図2と図3とでは、水透過性フィルム5中の第一のフィルター層3と第二のフィルター層4とが入れ替わっている。
【0013】
図2及び図3のいずれの態様のコンクリート打設型枠用シート1であっても、前記コンクリート打設型枠9側の面に前記通水性基材2側の面を向けて展張される。
図2中(a)及び図3中(a)は、前記シート1の型枠9の長手方向への展張前の状態を示しており、該シート1には未だ型枠9の長手方向、即ち、図中の水平方向に展開の力が掛かっていないので、第二のフィルター層4の貫通切り込み8が閉じたままになっている。
しかし、この状態から、該シート1を展張するとき、図2中(b)及び図3中(b)に示す通り、該シート1に型枠9の長手方向、即ち、図中の水平方向に展開の力が掛けられ、第二のフィルター層4の貫通切り込み8が開くことになるので、該シート1の全体に対する複数の貫通切り込み8の開き具合の大きさや形状の点で一様になるよう展張しさえすれば、誰が施工してもシワの入らない均一な展張を安定的且つ効率的に可能にすることができるようになる。
【0014】
その際、図2又は図3の態様のコンクリート打設型枠用シート1において、前記シート1の全体に対する複数の貫通切り込み8の開き具合の大きさや形状の均一性が認知できることが重要であり、例えば、前記通水性基材2が白色又は淡白な色、前記第一のフィルター層3が透明、白色又は淡白な色、前記第二のフィルター層4が黒又は濃厚色とすることが好ましい。
ここで、淡白な色とは、灰色、黄色系等の基準色で明度が高く且つ彩度が低いものが好ましく、具体的には、灰色、クリーム色、アイボリー色等が好ましく、濃厚色とは、黒、紺系等の基準色で明度が低いものが好ましく、具体的には、黒色、紺色、緑色等が好ましい。中でも屋外作業おける配色のコントラストを考慮すると、特に、白色と黒色の組み合わせ及び白色と緑色の組み合わせが好ましい。
【0015】
このように第二のフィルター層4を黒又は濃厚色とし、他の通水性基材2及び第一のフィルター層3を白色等として、両者の配色にコントラストを付けることによって、図2の態様のコンクリート打設型枠用シート1にあっては、第二のフィルター層4中の貫通切り込み8が開口した際、該開口の背後にある第一のフィルター層3が露出し認知することができ、また、図3の態様のコンクリート打設型枠用シート1にあっては、第二のフィルター層4中の貫通切り込み8が開口した際、該開口の背後にある通水性基材2の露出を第一のフィルター層3を透して認知することができる。
本発明においては、前記シート1を展張するとき、該シート1の全体に対する複数の貫通切り込み8の開き具合の大きさや形状の均一性が認知できる限り、図2及び図3のいずれの態様であっても構わないが、図2の態様が該シート1の最上部に貫通切り込み8を有する第二のフィルター層4がきているのに対し、図3の態様は該シート1の最上部に第一のフィルター層3がきていて貫通切り込み8を有する第二のフィルター層4を遮蔽しているので、概して、図2の態様の方が図3の態様よりも上記認知の質が高くなる。即ち、打設コンクリート10側から、第二のフィルター層4、第一のフィルター層3、及び通水性基材2の順で積層されているコンクリート打設型枠用シート1がより好ましい。
【0016】
コンクリート打設型枠用シート1を構成する通水性基材2並びに水透過性フィルム5をなす第一のフィルター層3及び第二のフィルター層4の材質は、特に制限されるものではなく、従来公知の生コンクリート打設工事の型枠シートの通水性基材及び水透過性フィルムと同様のものを使用することができる。
例えば、通水性基材は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル及びナイロン等の合成樹脂を用いスパンボンド法やニードルパンチ法等で作製された不織布及び/又は織布等を使用することができる。このような不織布及び/又は織布としては、目付量30〜500g/m2、特に50〜200g/m2、厚み0.1〜5mm、特に0.2〜3mmのものが好ましい。
また、水透過性フィルム5をなす第一のフィルター層3及び第二のフィルター層4は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、エチレン酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル、及びナイロン等の合成樹脂を用いインフレーション法、Tダイ法、溶液流延法及びカレンダー法等で作製されたフィルムに後述する方法によって透水性貫通孔6及び7を穿孔したものを使用することができる。
このようなフィルムとしては、第一のフィルター層3及び第二のフィルター層4のいずれも目付量10〜100g/m2、特に20〜50g/m2、厚み0.005〜0.4mm、特に0.01〜0.1mm、更に0.02〜0.05mmのものが好ましい。
また、第一のフィルター層3と第二のフィルター層4の厚さの合計は、0.04〜0.4mm、特に0.06〜0.2mmのものが好ましい。0.04mm未満では、積層工程や穿孔工程でシワが発生することがあり、0.4mm超過では、剛性が高くなり過ぎ扱いづらくなることがあるため好ましくない。
更に、第一のフィルター層3と第二のフィルター層4の厚さ比率は、1:1〜1:3程度、特に1:1〜1:1.5程度のものが好ましい。このように、第一のフィルター層3の厚さよりも第二のフィルター層4の厚さを多少大きくとることによって、第一のフィルター層3に対して、第二のフィルター層4に貫通切り込み8を設けた後でも第二のフィルター層4の引裂強度等の機械的強度を高く保つことができる。
尚、第一のフィルター層3及び第二のフィルター層4は共に、無延伸、一軸延伸、及び二軸延伸フィルムのいずれも使用することができるが、長手方向と幅方向の伸びの差が少ないものが好ましく、特に無延伸、更に引裂強度等の機械的強度を考慮すると二軸延伸が最も好ましい。
【0017】
また、第一のフィルター層3及び第二のフィルター層4に設けられる透水性貫通孔6及び7の平均口径は、生コンクリートの余剰水や空気は流通するが、セメント粒子は流通しないことが重要であり、100〜800μm、特に200〜400μmが好ましい。
【0018】
また、上記通水性基材2及び水透過性フィルム5をなすフィルム(第一のフィルター層3をなすフィルム及び第二のフィルター層4をなすフィルム)は、通常、上記ポリエチレン等の合成樹脂の材質が、透明、無色又は白色であるため、第一のフィルター層3をなすフィルムに対して、配色のコントラストを付けるため、少なくとも第二のフィルター層4をなすフィルムを黒又は濃厚色に着色する必要がある。
このようなフィルムの着色は、例えば、上述したようなフィルム作製の際、ポリエチレン等の合成樹脂に上記黒又は濃厚色の顔料を0.01〜75質量%、特に0.1〜50質量%、より好ましくは1〜30質量%配合すればよい。0.01質量%未満では十分な着色効果が得られないことがあり、75質量%超過ではフィルム強度等が著しく低下することがあるため好ましくない。
【0019】
ここで、通水性基材2及び第一のフィルター層3をなすフィルムは、上記の通り、通常、透明、無色又は白色であるため、特に、第二のフィルター層4をなすフィルムを着色する限りにおいて、着色する必要はない。
但し、必要に応じて、通水性基材2及び第一のフィルター層3をなすフィルムを淡白な色に着色してもよい。
このような第一のフィルター層3をなすフィルムの着色は、上述の通り、第二のフィルター層4の着色と同様にしてもよいし、予め着色された市販のフィルムを使用してもよい。
通水性基材2の着色は、例えば、上述したような不織布及び/又は織布作製の際、ポリエチレン等の合成樹脂に淡白な色の顔料を0.01〜75質量%、特に0.1〜50質量%、より好ましくは1〜30質量%配合すればよい。0.01質量%未満では十分な着色効果が得られないことがあり、75質量%超過ではフィルム強度等が著しく低下することがあるため好ましくない。
また、上述したような不織布及び/又は織布を上記淡白な色の顔料を溶解した浴に浸漬して染色してもよい。その際の浴温、浸漬時間、乾燥温度及び乾燥時間等の条件は特に限定されるものではなく、適宜設定され得る。
【0020】
第二のフィルター層4に設けられる複数の貫通切り込み8は、型枠9へのシート1の展張に際し、貫通切り込み8の大きさや形状のシート1全体に対する均一の度合いを目視によって容易に確認できるようにするため、予め同じ長さの線及び/又は同じ形状の模様が規則的に配列されていることが好ましく、例えば、図4中、(a)〜(h)のパターンが例示される。
ここにいう規則的な配列とは、第二のフィルター層4の平面の長尺方向に対して、任意の垂直軸及び/又は平行軸を設けたとき、当該垂直軸及び/又は平行軸に対して、同じ長さの線及び/又は同じ形状の模様が対称に配列されていることを意味する。
図4中、特に図示しないが、(e)の他、(e)の個々の縦の波形をそっくりそのまま90°回転させて横の波形に替えたパターン(e)’(これは、縦の線形のパターン(a)をそっくりそのまま90°回転させて横の線形に替えたパターン(c)を得たのと同じ変換である。)、並びに前記(e)及び(e)’の隣接する行又は列の個々の波形が一致しないように1列又は1行毎に個々の波形の行間又は列間の1/2だけずらしたパターン(e)’’(これは、パターン(a)からパターン(b)を得たのと同じ変換である。)及び(e)’’’(これは、パターン(c)からパターン(d)を得たのと同じ変換である。)でも構わない。
図4中、同様に図示しないが、(f)の他、(f)の個々の縦のくの字形をそっくりそのまま90°回転させて横のくの字形に替えたパターン(f)’(これは、縦の線形のパターン(a)をそっくりそのまま90°回転させて横の線形に替えたパターン(c)を得たのと同じ変換である。)、並びに前記(f)及び(f)’の隣接する行又は列の個々のくの字形が一致しないように1列又は1行毎に個々のくの字形の行間又は列間の1/2だけずらしたパターン(f)’’(これは、パターン(a)からパターン(b)を得たのと同じ変換である。)及び(f)’’’(これは、パターン(c)からパターン(d)を得たのと同じ変換である。)でも構わない。
【0021】
但し、例えば、図4中、(a)又は(c)のパターンのように、単純な縦の線又は横の線で構成されるパターンの場合、これらの線と垂直の方向に対して展開する力を掛けるときは、貫通切り込み8がスムーズに開くが、一方、これと平行の方向に対して展開する力を掛けるときは、貫通切り込み8が開かないことがあるため、結果として、平行の方向に対する展開の力の加減が貫通切り込み8の開き具合の大きさや形状にうまく反映されないことがある。
このような観点から、上記貫通切り込み8のパターンのうち、シート1を型枠9に展張するとき、シート1を展開する力の方向に影響を受け難い(b)、(d)、(e)、(e)’、(e)’’、(e)’’’、(f)、(f)’、(f)’’、(f)’’’、(g)及び(h)のパターンがより好ましく、特にシンプルなパターンであること、即ち、易加工性であることも考慮すると(g)又は(h)のパターンが最も好ましい。
【0022】
このような貫通切り込み8は、開口の際形成される略円形の直径が0.2〜3.0mmが好ましく、より好ましくは0.5〜1.5mmである。開口の際形成される略円形の直径が0.2mm未満の場合、開口部から露出する下部層の色が認識できないことがあり、また3.0mm超過の場合、シート1の端部固定部分が破損することがあるため好ましくない。
このような略円形の大きさを考慮すると、その円周の長さは貫通切り込み8の長さの2倍に相当するので、逆算すれば貫通切り込み8の長さは0.314〜4.710mmが好ましく、より好ましくは0.785〜2.355mmとなる。
尚、隣接する貫通切り込み8同士の間隔は、上記貫通切り込み8の長さに対して30〜200%程度が好ましい。隣接する貫通切り込み8同士の間隔が30%未満の場合、開口の際、第二のフィルター層が破断することがあり、200%超過の場合、貫通切り込み8の縦横の配列比が乱れて、開口の際、視覚的にパターンの規則性が認め難くなることがあるため好ましくない。
【0023】
このようなパターンを上記フィルムに設ける方法は、特に制限されるものではなく、例えば、カッター刃のように先端が鋭利で薄肉状の刃物を複数組み合せて上記パターンの一部をなす型を作製し、この型でその刃物が上記フィルムの全面を貫通するように押圧すればよい。
また、カッター刃のように先端が鋭利で薄肉状の刃物を複数組み合せてなる上記パターンをロール表面に設け、これと対をなす受けのロールと共に双ロールを作製し、この双ロール中に上記フィルムを通過させてその刃物が上記フィルムの全面を貫通するようにしてもよい。
【0024】
このようにして得られる各構成材料を用いて、コンクリート打設型枠用シート1を製造する方法は、前記複数の貫通切り込み8を有するフィルムと前記無孔のフィルムとを積層後、両フィルムを貫通する複数の微細な透水性貫通孔7及び6を穿孔し、次いで前記通水性基材2と積層するか、又は前記複数の貫通切り込みを有するフィルムと前記無孔のフィルムと前記通水性基材2とを積層後、これらのフィルム及び基材を貫通する微細な透水性貫通孔7及び6を穿孔すればよい。
ここで、各層の積層は、各層間を接着又は熱融着することになるが、前者の製造方法は、穿孔後、接着又は熱融着する手順を踏むので透水性貫通孔6及び7を閉塞してしまうことがあり、一方、後者の製造法は、全ての各層を接着又は熱融着した後、穿孔する手順を踏むので透水性貫通孔6及び7を閉塞することはない点で、後者の製造方法の方がより好ましい。
【0025】
また、各層の積層は、ホットメルト等の接着剤を用いて接着しても、各層間をそのまま熱融着しても構わないが、特に、第二のフィルター層4の貫通切り込み8の開口性を損なわないようにすることが重要であることから、点状又は線状等の部分接着又は部分熱融着が好ましい。
更に、このような部分接着又は部分熱融着の配列は、特に、第二のフィルター層4の各種パターンに合わせて、貫通切り込み8を避けつつ、且つ規則性を持たせた配列とすることがより好ましい。
ここにいう規則的な配列とは、上述の意味と同様であり、第二のフィルター層4の平面の長尺方向に対して、任意の垂直軸及び/又は平行軸を設けたとき、当該垂直軸及び/又は平行軸に対して、点状又は線状等の部分接着又は部分熱融着が対称に配列されていることを意味する。
【0026】
図5中の(a)は、第二のフィルター層4が図4中(b)のパターンのときの点状の部分熱融着11の配列の例を示すものであり、同図中の(b)は、同パターンのときの線状の部分熱融着12の配列の例を示すものである。このように、第二のフィルター層4のパターンに合わせて、貫通切り込み8を避けつつ、規則性を持たせた点状又は線状の部分融着11、12の配列をすることによって、特に、第二のフィルター層4の貫通切り込み8の開口性が確保されるだけでなく、シート1を展開する力の方向に影響を受け難いものとなるので好ましい。
【0027】
尚、各層の接着に際しては、ホットメルト等の接着剤を用いて接着する場合、公知のフィルムの接着方法に従えばよく、例えば、公知のポリオレフィン系、ポリアミド系等のホットメルト接着剤を用い、これを公知のディスペンサ等に供給して融点以上に加熱して溶融させると共に、上記任意の層間に点又は線状に突出して両層外部からこれを加圧すればよい。
また、各層の融着に際しては、公知のフィルムの融着方法に従えばよく、例えば、公知の加熱可能なロール表面が点状又は線状のエンボス加工が施された双ロールを用い、これを150〜300℃程度に加熱して、この間を0.2秒〜数秒の間に上記任意の積層体を通過させればよい。
【0028】
上記透水性貫通孔7及び6の穿孔については、最大径100〜800μm、ピッチ0.5〜5mm、より好ましくは最大径200〜400μm、ピッチ1〜3mmの任意の本数の針からなる剣山とこれを受けるダイ・セットを用い、上記2つ又は3つの層からなる積層体に貫通させればよい。最大径100μm、ピッチ0.5mm未満の場合、セメント粒子が目詰まりすることがあり、最大径800μm、ピッチ5mm超過の場合、セメント粒子が流出することがあるため好ましくない。
尚、貫通動力は、特に制限されるものではなく、人力でも任意のプレス機を用いても構わない。
【0029】
このようにして得られるコンクリート打設型枠用シート1の施工方法は、コンクリート打設型枠9側の面の一端にコンクリート打設型枠用シート1の通水性基材2側の面の一端を固定した後、該コンクリート打設型枠用シート1を前記コンクリート打設型枠9側の面の他端へ向けて展張するに際し、該コンクリート打設型枠用シート1の水透過性フィルム5側から観察される全面の貫通切り込み8の開き具合が一様となるように展張することを特徴とするもので、このような展張を実施することにより、結果として、前記シート1を展張する力の加減を均一にすることができるので、誰が施工してもシワの入らない均一な展張を安定的且つ効率的に可能にすることができる。
尚、ここで、コンクリート打設型枠用シート1の水透過性フィルム5側から観察される全面の貫通切り込み8の開き具合が一様となるように展張することとは、第二のフィルター層4の貫通切り込み8の開き具合に関し、その個々の大きさや形状のシート1全体に対して一様になるように展張することを意味する。そのように展張することが、シート1を全ての方向に均一に展張すべく力加減を調整することになるからである。
【0030】
以上、本発明を好適な実施形態例に基づいて説明したが、本発明は、これらに限定されることはなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変更して差支えない。
即ち、本発明は、前記シート1をコンクリート打設型枠9に施工するに際し、前記シート1を展開させる力の加減によって、前記シート1の第二のフィルター層4の貫通切り込み8の開き具合が変わり、且つその大きさや形状のシート全体に対する均一の度合いを目視によって確認することができるので、それを見ながらシート全体の貫通切り込みの開き具合が一様になるよう展張していくことによって、誰が施工してもシワの入らない均一な展張を安定的且つ効率的に可能にすることができることを特徴とするものである。
従って、貫通切り込み8のパターンは、前述の(a)〜(h)、(e)’、(e)’’、(e)’’’、(f)’、(f)’’及び(f)’’’に制限されるものではなく、これらのパターンをなす個々の線又は模様を組み合せたパターンであっても構わない。更に、個々の線又は模様が、本願発明において例示されたもの以外であって、それらを組み合せたパターンであっても構わない。
また、第二のフィルター層4と第一のフィルター層3の接着又は熱融着も本発明において例示された点状又は線状以外の配列であっても構わない。
更に、コンクリート打設型枠用シートは、コンクリート打設型枠と打設コンクリートとの間に介装される、通水性基材と、該通水性基材の打設コンクリート側の面に積層された水通過性フィルムとを含むコンクリート打設型枠用シートであるから、必要に応じて、上述したシート1の通水性基材2よりも外側、即ち、コンクリート打設型枠9側の面に、更に、例えば、特開平7−34660号公報において示されている不透水性フィルムを積層したものであっても構わない。このような不透水性フィルムを設けることにより、コンクリート表面からの水分蒸発が適度に抑制され、湿潤効果が得られることから、適正なコンクリートの養生を行なうことができる。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明によれば、型枠へのシートの展張に際し、その張力を目視によって確認することができるので、誰が施工してもシワの入らない均一な展張を安定的且つ効率的に可能にするコンクリート打設型枠用シート、その製造方法及びその施工方法を提供することができるので、型枠を設置して生コンクリートを流し込み、躯体や壁を構築する際、その表面美観を損ないたくない建築分野に有用である。
【符号の説明】
【0032】
1 コンクリート打設型枠用シート
2 通水性基材
3 第一のフィルター層
4 第二のフィルター層
5 水透過性フィルム
6 第一のフィルター層の透水性貫通孔
7 第二のフィルター層の透水性貫通孔
8 貫通切り込み
9 コンクリート打設型枠
10 打設コンクリート
11 点状の部分熱融着
12 線状の部分熱融着

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリート打設型枠と打設コンクリートとの間に介装される、通水性基材と、該通水性基材の打設コンクリート側の面に積層された水通過性フィルムとを含むコンクリート打設型枠用シートであって、前記水通過性フィルムが、複数の微細な透水性貫通孔を有する第一のフィルター層と、複数の微細な透水性貫通孔を有し且つ層を貫通する複数の切り込みを有する第二のフィルター層の2層とからなることを特徴とするコンクリート打設型枠用シート。
【請求項2】
前記通水性基材が白色又は淡白な色であり、前記第一のフィルター層が透明、白色又は淡白な色であり、前記第二のフィルター層が黒又は濃厚色であることを特徴とする請求項1記載のコンクリート打設型枠用シート。
【請求項3】
打設コンクリート側から、前記第二のフィルター層、前記第一のフィルター層、及び前記通水性基材の順で積層されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のコンクリート打設型枠用シート。
【請求項4】
打設コンクリート側から、前記第一のフィルター層、前記第二のフィルター層、及び前記通水性基材の順で積層されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のコンクリート打設型枠用シート。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載のコンクリート打設型枠用シートの製造方法であって、複数の貫通切り込みを有するフィルムと無孔のフィルムとを積層後、両フィルムを貫通する複数の微細な透水性貫通孔を穿孔し、次いで通水性基材と積層することを特徴とするコンクリート打設型枠用シートの製造方法。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれかに記載のコンクリート打設型枠用シートの製造方法であって、複数の貫通切り込みを有するフィルムと無孔のフィルムと通水性基材とを積層後、これらのフィルム及び基材を貫通する微細な透水性貫通孔を穿孔することを特徴とするコンクリート打設型枠用シートの製造方法。
【請求項7】
請求項1〜4のいずれかに記載のコンクリート打設型枠用シートの施工方法であって、コンクリート打設型枠側の面の一端に該コンクリート打設型枠用シートの通水性基材側の面の一端を固定した後、該コンクリート打設型枠用シートを前記コンクリート打設型枠側の面の他端へ向けて展張するに際し、該コンクリート打設型枠用シートの水透過性フィルム側から観察される全面の貫通切り込みの開き具合が一様となるように展張することを特徴とするコンクリート打設型枠用シートの施工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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