説明

コンクリート打設基準高さ表示装置及びコンクリート打設表面均し方法

【課題】打設するコンクリートの上面が勾配を有する場合であっても、効率の良い作業でコンクリートの上面を所定の高さに正確に均して仕上げる。
【解決手段】回転部3にレーザ光Lを射出するレーザ光発生器2を取り付け、該回転部をモータ5で駆動してレーザ光を装置1の底面近くから周囲に射出する。レーザ光の射出方向は、回転部回転中心軸線Aと直角となるように設定されている。回転部は、3本の支持脚23により支持された支持基部に回転可能に支持されており、回転部の回転中心軸線は鉛直方向に対して全方向への傾斜の調整が可能とする。回転中心軸線の傾斜の調整によりレーザ光の射出方向は打設されるコンクリートの仕上げ面と平行に設定する。一方、コンクリート面を均す均しこて51には受光体50を取り付け、レーザ光が受光体に照射される位置を基準としてコンクリートの表面を均す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、打設されるコンクリートの上面を予め定められた高さに均すための基準を表示するコンクリート打設基準高さ表示装置及び予め定められた高さにコンクリート打設表面を均す方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コンクリートを打設して上面を所定の高さに仕上げるには、仕上げ面の高さを表示した表示棒を複数の箇所に配置し、この表示棒に記された基準線に基づいてコンクリートの上面を均す作業を行っている。表示棒は、鋼又はプラスティック等の棒状部材を用いることができ、コンクリートの仕上げ面の高さとなる基準線をテープ等で表示したものが多く使用されている。
コンクリートは表示棒に記された基準線を目安にして流しこまれ、バイブレータによる振動で流し込んだときに取り込まれた気泡を排除してコンクリート内に空隙が生じないようにしている。そして表示棒に記された基準線付近までコンクリートが流し込まれると「均しこて」等を用いて表面が均される。このとき、表示棒は撤去するか、又はコンクリート内に埋め込まれる。
【0003】
上記のような表示棒に代えて、打設されるコンクリートの上面より上方にレーザ光を照射することによって、仕上げ面の高さの基準となる位置を表示する技術が開示されている。
例えば、特許文献1に記載のコンクリート床仕上げ装置では、レーザ光を射出するレーザ光線投射装置を構築予定の建造物の鉄筋に固定し、打設されるコンクリート面の仕上げ高さよりも上方の所定高さにレーザ光を照射する。このレーザ光はコンクリートの仕上げ面を均す器具に照射され、この照射された位置を基準にしてコンクリート上面が均されるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−152668号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のように表示棒を用いる場合、バイブレータの振動で表示棒の位置がずれることがあり、仕上げ面の高さを正確に表示できないことがある。また、打設するコンクリートの範囲内に数多くの表示棒を立てる必要があり、作業量が増加する。さらに、表示棒を埋め込んだり、撤去したりすることによってコンクリート内に空隙が生じやすいという問題もある。
一方、特許文献1に記載のコンクリート床仕上げ装置では、レーザ光線投射装置が建造物の鉄筋に固定されるので、打設するコンクリートの上面に勾配を形成しようとするときに、コンクリート仕上げ面の勾配に沿ってレーザ光が照射されるように設定することはできない。
【0006】
本願発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、打設するコンクリートの上面高さの基準となる位置を精度よく表示できる簡易なコンクリート打設基準高さ表示装置、及び打設するコンクリートの上面を所定の高さに精度よく均すことができるコンクリート打設表面の均し方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、請求項1に係る発明は、 レーザ光を射出するレーザ光発生器と、 前記レーザ光発生器を支持し、該レーザ光発生器から射出されるレーザ光が周囲に投射されるように回転する回転部と、 前記回転部を支持する支持基部と、 前記支持基部に支持され、前記回転部を回転駆動するモータと、を備え、 前記レーザ光発生器は、前記レーザ光の射出方向が前記回転部の回転中心軸線と直角となるように配置され、
前記支持基部は、前記回転部の回転中心軸線を鉛直方向に対して全方向へ傾斜させる角度の調整が可能となるように該回転部を支持するものであることを特徴とするコンクリート打設基準高さ表示装置を提供する。
【0008】
このコンクリート打設基準高さ表示装置では、打設するコンクリートの上面が勾配を有するように仕上げる場合に、勾配に応じて回転中心軸線の傾斜角を調整することができる。したがって、回転中心軸線をコンクリートの仕上げ面と垂直となるように設定することができ、レーザ光をコンクリートの仕上げ面と平行に射出することができる。このレーザ光が照射される位置を基準としてコンクリートの上面を均すことにより、コンクリートの上面が勾配を有するときにも簡単にかつ精度良く、打設したコンクリートの上面を仕上げることが可能となる。
【0009】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載のコンクリート打設基準高さ表示装置において、 前記回転部は、前記支持基部に備えられた支持板を上下方向に貫通し、軸受けを介して該支持板に支持された回転軸と、 前記回転軸の下端に固着された回転板と、を有し、 前記レーザ光発生器は、前記支持板の下方において前記回転板に支持されているものとする。
【0010】
このコンクリート打設基準高さ表示装置では、レーザ光発生器を装置の下方に配置して回転させることができる。つまり、装置が設置される面に近い高さでレーザ光を投射することができる。例えば、コンクリートを水平方向へ順次に打ち継ぐ場合に、先にコンクリートを打設した領域にこのコンクリート打設基準高さ表示装置を設置すると、次に打設するコンクリートの上面と近接した高さにレーザ光を照射することができる。これにより、仕上げ面の高さの把握が容易となり、仕上げ面を精度よく均すことができる。
【0011】
請求項3に係る発明は、 レーザ光を射出するレーザ光発生器を搭載して回転駆動される回転部と、該回転部を支持する支持基部とを有するコンクリート打設基準高さ表示装置を、コンクリート打設範囲の近傍に置いて打設するコンクリートの上面とほぼ同じ高さに支持し、 前記レーザ光発生器は、前記回転部の回転中心軸線と前記レーザ光の射出方向とが直角になるように支持し、 前記回転中心軸線は、打設するコンクリートの上面と垂直になるように設定し、 前記回転部を回転駆動するとともに、前記レーザ光発生器からレーザ光を射出してコンクリート打設範囲にある受光体に照射し、 該受光体に照射された前記レーザ光の照射位置を基準高さとしてコンクリートの上面を均すことを特徴とするコンクリート打設表面の均し方法を提供する。
【0012】
このコンクリート打設表面の均し方法では、レーザ光発生器を支持する回転板の回転中心軸線がコンクリートの仕上げ面に対して垂直となるように調整されるので、打設されるコンクリートの仕上げ面が勾配を有していてもコンクリート仕上げ面と平行にレーザ光を射出することができる。したがって、レーザ光が受光体に照射される位置を基準高さとし、コンクリートの上面高さを上記受光位置から常に同じ高さとなるように均すことによって、勾配を有する仕上げ面を迅速に精度よく仕上げることが可能となる。
【0013】
請求項4に係る発明は、請求項3に記載のコンクリート打設表面の均し方法において、 前記回転中心軸線を打設するコンクリートの上面と垂直になるように設定する工程は、前記回転部を回転駆動してレーザ光を射出し、コンクリート打設範囲の少なくとも3箇所の位置で、打設するコンクリートの上面から同じ高さの位置にレーザ光が照射されるように前記支持基部を設置するものとする。
【0014】
このコンクリート打設表面の均し方法では、レーザ光発生器を支持する回転部の回転中心軸線を、打設するコンクリートの上面と垂直に設定し、レーザ光が打設するコンクリートの上面と常に平行に射出されるように設定する作業を簡単に行うことができる。
【0015】
請求項5に係る発明は、請求項3又は請求項4に記載のコンクリート打設表面の均し方法において、 前記受光体は、コンクリート打設上面を均す均しこての上面に取り付けておくものとする。
【0016】
このコンクリート打設表面の均し方法では、「均しこて」に取り付けられた受光体にレーザ光が照射され、仕上げ面の高さの基準が表示される。したがって、作業者はコンクリートの上面を均しながら仕上げ面の高さの基準を容易に視認することができ、コンクリートの上面を効率良く高い精度で均すことができる。
【0017】
請求項6に係る発明は、請求項5に記載のコンクリート打設表面の均し方法において、 前記受光体は、前記均しこてに対して着脱可能であるとともに、前記受光体の取り付け位置を上下方法に調整可能となったものを用いるものとする。
【0018】
このコンクリート打設表面の均し方法では、受光体を取り付ける高さ方向の位置が調整可能となっているので、コンクリート打設基準高さ表示装置を設置するときにレーザ光が射出される高さが変動しても、受光体の所定位置にレーザ光を受光した状態でコンクリートの上面を所定の高さに均すことができる。
また、既存の均しこてに受光体を容易に取り付けることができる。
【0019】
請求項7に係る発明は、請求項3から請求項6までのいずれかに記載のコンクリート打設表面均し方法において、 前記受光体として、形状が円錐形、多角錐形、円錐台形又は多角錐台形となった部材を用いるものとする。
【0020】
このコンクリート打設表面均し方法では、受光体の水平方向の断面は上部が小さく下部に向かって徐々に大きくなるので、コンクリートの上面を見下ろすようにしてコンクリート面を均す作業者は、そのままの姿勢で受光体に照射されるレーザ光を視認することができる。したがって、受光体に照射されるレーザ光の位置に基づいてコンクリートの上面を均す作業の効率が向上する。
【発明の効果】
【0021】
本願発明に係るコンクリート打設基準高さ表示装置及びコンクリート打設表面均し方法では、レーザ光発生器が回転部の回転にともなって回転し、レーザ光を打設するコンクリートの上面と平行に投射することができる。また、レーザ光を回転させることにより、受光体に繰り返しレーザ光が照射され、作業者は基準となる高さを常に認識しながらコンクリートの仕上げ面を均すことができ、コンクリートの上面を高い精度で効率よく均すことができる。
また、コンクリートの仕上げ面の勾配に応じて、回転部の回転中心軸線の傾斜を全方向に調整することによって、コンクリートの上面を水平に仕上げる場合のみでなく、コンクリートの上面が勾配を有する場合にも、打設するコンクリートの上面と平行にレーザ光を投射して、コンクリート上面を仕上げるときの基準高さとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本願発明の一実施形態であるコンクリート打設基準高さ表示装置の概略断面図及び概略平面図である。
【図2】本願発明の一実施形態であるコンクリート打設表面均し方法を示す概略図である。
【図3】本願発明の一実施形態であるコンクリート打設表面均し方法の概略を示す平面図である。
【図4】図2及び図3に示すコンクリート打設表面均し方法でコンクリート打設基準高さ表示装置を設定する方法を示す概略図である。
【図5】図2及び図3に示すコンクリート打設表面均し方法で使用する受光体及び均しこての概略斜視図及び概略側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本願発明の実施の形態を図に基づいて説明する。
図1(a)は、本願発明の一実施形態であるコンクリート打設基準高さ表示装置の概略断面図、図1(b)は概略平面図である。
このコンクリート打設基準高さ表示装置1は、レーザ光を射出するレーザ光発生器2と、このレーザ光発生器2を支持して回転する回転部3と、回転部3を回転可能に支持する支持基部4と、回転部3を回転駆動するモータ5と、支持基部4の上部及びモータ5を覆うカバー6と、で主要部が構成されている。
【0024】
上記レーザ光発生器2は、レーザ光射出口2aからほぼ線状にレーザ光を射出するものであり、本実施の形態では、コンクリートの打設作業を行う環境で約10m離れた距離までレーザ光の照射が視認できるものとなっている。
上記回転部3は、円形の回転板11と、回転板11の上面のほぼ中央に固着された回転基部12と、この回転基部12に固着され、上方へ突き出すように設けられた回転軸13とから形成されている。そして、上記レーザ光発生器2は、回転板11上にレーザ光射出口2aを半径方向外側に向けて支持され、射出されるレーザ光Lが回転軸13の回転中心軸線Aと直角になるように設定されている。
【0025】
上記支持基部4は、軸受け21を介して回転部3が備える回転軸13を支持する円形の支持板22と、上記支持板22を3点で支持し、それぞれが高さの調整を可能とする支持脚部23と、で主要部が構成されている。
上記支持板22は、ほぼ中央に上下方向の貫通孔を有しており、この貫通孔を下方から上方へ突き出すように貫通する回転軸13を、この回転軸回りの回転が可能に支持するものである。これにより、回転軸13の下端に結合された回転板11は、支持板22の下方で回転するものとなっている。
【0026】
上記支持脚部23は、図1(b)に示すように、3つの支持脚23−1,23−2,23−3により構成され、支持板22を3点で支持するものとなっている。これら支持脚23−1,23−2,23−3のそれぞれは軸部23aと頭部23bとを有し、軸部23aにはネジ山が形成されてボルト状となっている。そして、支持板22の外縁部より張り出すように設けられた張り出し支持部24を貫通するネジ孔に螺合されており、支持脚23を回転することにより、それぞれの支持脚23−1,23−2,23−3は張り出し支持部24から下方への突き出し量を調整することができるものである。したがって、この支持脚23−1,23−2,23−3のそれぞれを回転することによって支持板22の傾斜を調整することができ、支持板22に支持された回転部3の回転中心軸線Aの傾斜を鉛直線に対して全方向に調整が可能となっている。
【0027】
上記モータ5は、図1(a)に示すように、支持板22上に支持されており、モータ5の駆動軸5aに固着された駆動ギア31が、回転部3の回転軸13に固着された駆動伝達ギア32と噛み合わされている。これにより、モータ5の回転駆動力は支持板22の下方に設けられた駆動ギア31から駆動伝達ギア32に伝達され、回転部3を回転駆動する。そして、回転板11の回転にともなってレーザ光発生器2が回転し、レーザ光Lを周囲に照射するものとなっている。
【0028】
上記カバー6は、支持板22及びモータ5を覆うように設けられている。そして、カバー6の上面は平坦となっており、中央部には装置を持ち運びするための把持部33が備えられている。また、この装置カバー18の上面にレベルゲージ34が取り付けられており、回転軸13の傾斜を測定することができるようになっている。
なお、レベルゲージ34は、デジタル化された公知の傾斜計を装置カバー6の上面に載せて測定するものでもあってもよいし、カバー6に固着されているものであってもよい。
【0029】
次に、このようなコンクリート打設基準高さ表示装置1を用いてコンクリートの仕上げ面を均すコンクリート打設表面均し方法について説明する。
図2は、本願に係る発明の一実施形態であるコンクリート打設表面均し方法を示す概略図であり、図3は同じコンクリート打設表面均し方法の概略を示す平面図である。
この方法は、少なくとも上床版がコンクリートで形成される橋桁40の構築に適用したものであり、予め設定されたブロック毎にコンクリートを打設するときに上床版の上面を所定の高さに均す方法を示すものである。一般に橋桁の上床版の上面は道路等の縦断勾配及び横断勾配によって傾斜しており、所定の高さにおいて所定の方向に傾斜するように仕上げられる。
この実施の形態では、既にコンクリートが打設され、硬化した第1のブロック41上にコンクリート打設基準高さ表示装置1を設置し、この第1のブロック41と接続するようにコンクリートが打設される新たな第2のブロック42の上面を均すものである。上記コンクリート打設基準高さ表示装置1から投射されるレーザ光Lは、新たにコンクリートが打設される範囲の全体にレーザ光Lが照射され、受光体50にレーザ光Lが照射された位置を視認することができるように、レーザ光Lの出力が決められる。
【0030】
コンクリート打設基準高さ表示装置1の設置は次のように行うことができる。
コンクリート打設基準高さ表示装置1は、既にコンクリートが打設された第1のブロック41上の新たにコンクリートが打設される第2のブロック42と近接した位置に、3本の支持脚23−1,23−1,23−3によって支持させる。これらの支持脚23のそれぞれの高さを調節することにより、回転部3の回転中心軸線Aが打設される第2のブロックのコンクリートの予め設定された上面43に対して直角となるように設定する。このとき、カバーに設けられたレベルゲージ34を用いて調整することもできるが、次のように設定することが望ましい。
第2のブロックのコンクリートを打設する範囲内において、少なくとも異なる3箇所、例えば図3中に示すa点、b点、c点で打設するコンクリートの上面高さをレベル等によって正確に設定する。この上面高さを設定した位置には、例えば図4に示すように仮ゲージ44を立てて上面高さを明示しておく。そして、第1のブロック41上に設置されたコンクリート打設基準高さ表示装置1の回転部3を回転駆動し、レーザ光Lを第2のブロック42上に投射する。投射されたレーザ光が上記3箇所(a点、b点、c点)において、仮ゲージ44上のコンクリートの上面高さより上方へ同じ高さ位置を照射するようにコンクリート打設基準高さ表示装置1の3本の支持脚23−1,23−1,23−3を設定する。このように設定することによって回転部3の回転中心軸線Aは第2のブロック42の上面と垂直に設定され、レーザ光Lは常に打設するコンクリートの上面と平行に投射されることになる。また、レーザ光Lはコンクリートの仕上げ面よりやや上方の位置に照射される。
【0031】
一方、上記レーザ光Lが照射される受光体50は、打設されたコンクリートの上面を均すための均しこて51に取り付けて用いる。
上記受光体50は、本実施の形態では合成樹脂等からなり、図5に示すように形状がほぼ円錐台となって下部より上部で断面が縮小されている。そして、レーザ光Lを受光しやすいように傾斜した側面が黒色となっている。
この受光体50は、底部に磁石52が備えられており、鋼からなる均しこて51の上面に磁力によって取り付けることができるものである。また、木製の均しこてに対しては両面テープ又は接着剤を用いて接着することができる。このような受光体50は、均しこて51を用いてコンクリートの上面を均す作業者が上方から受光体50を見下ろすことになり、側面に照射されるレーザ光Lを容易に視認することが可能となっている。
【0032】
上記受光体50の側面には、図5に示すように受光基準線50aが水平方向に記されており、その上下には副基準線50bが引かれている。そして、均しこて51の底面が設定されたコンクリートの上面高さ43にあるときにレーザ光Lが受光基準線50a上に照射されるように受光体50の高さを調整しておく。
例えば、レーザ光Lがコンクリートの上面を仕上げようとする高さから30mm上方に射出される場合は、図5に示すように、均しこて51の底面から30mmの高さに受光基準線があるように受光体50の高さを調整する。また、仕上げ面の不陸の許容範囲が予め定められた仕上げ面の高さの上下に20mmであると、副基準線は受光基準線の上方及び下方へ20mm離れた位置にそれぞれ記される。
なお、受光体50の高さの調整は、例えば次のように行うことができる。
均しこて51に取り付けるための磁石52を受光体50にねじ込んで一体とするものとしておく。これにより、ねじ込み量を調整して磁石52が受光体50の底面から突出する量を変動させることが可能となり、この磁石52を介して均しこて51に取り付けたときに、受光体50の高さが調整される。
【0033】
コンクリートの打設は、型枠45内に未硬化のコンクリートを流し込むとともに、バイブレータ等を用いて気泡が取り込まれないように均す。そして、ほぼ目標とする高さまで打設されると、均しこて51を用いて上面を所定の高さに仕上げる。このとき均しこて51には上記受光体50を取り付けるととともに、上記コンクリート打設基準高さ表示装置1から、コンクリートを打設している領域に向かってレーザ光Lを照射する。このとき、コンクリート打設基準高さ表示装置1は、既にコンクリートが硬化した第1のブロック41上に設置されているのでバイブレータによる振動がレーザ光の照射に影響を与えることは少なく、レーザ光Lを正確に照射することができる。
【0034】
上記レーザ光Lは、レーザ光打設基準高さ表示装置1の回転部3が回転することによって旋回するように移動し、図3に示すように新たにコンクリートを打設する範囲のほぼ全域に投射される。したがって、この範囲内にある受光体50に対して繰り返しレーザ光Lが照射され、受光体50がこの範囲内で移動しても常にコンクリートの上面の仕上げ高さより所定量だけ高い位置を示すことになる。そして、均しこて51の均し面から受光体50の受光基準線までの高さは、上記所定量となるように調整されている。これにより打設されたコンクリートの上面を均している作業者が、受光体50の受光基準線50a上にレーザ光Lが照射されていることを視認すれば、コンクリートの上面は予め定められた高さになっている。また、レーザ光Lが受光基準線50aより上方に照射されているときには、均しこて51を接触させている位置の高さが所定の上面高さより低くなっており、レーザ光Lが受光基準線50aより下方に照射されているときには、均しこて51を接触させている位置の高さが所定の上面高さより高くなっていることが分かる。したがって、速やかにコンクリートの上面の高さを是正するように均すことができる。また、副基準線50bはコンクリートの上面の仕上げ高さの許容誤差と対応するように記されているので、コンクリートの上面を均しながら、生じてしまった不陸が許容されるものであるか否かを速やかに判断することが可能となる。
【0035】
なお、本実施の形態では、円錐台形の受光体50を用いたが、作業者がコンクリート面を均しながらレーザ光Lの照射位置及び受光基準線を容易に視認することができるものであれば他の形状の受光体であってもよい。さらに、レーザ光の受光能力を高めるための材料で受光体の外周面を覆い、作業者がより容易にレーザ光の受光位置を視認できるようにしてもよい。
【0036】
また、レーザ光発生装置2を搭載した回転部3を駆動するモータ5の駆動を制御することによりレーザ光Lの旋回する速度を変更することができる。この速度は、コンクリートを打設する範囲の広さやレーザ光を照射する受光体50までの距離に応じて調整するのが望ましい。本実施の形態では、レーザ光Lの照射距離を約10mとし、1回/秒の速度で回転させた。これにより、第2のブロック42のコンクリートを打設する範囲で、受光体50に照射されるレーザ光Lの位置を容易に視認できる状態となった。
【符号の説明】
【0037】
1:コンクリート打設基準高さ表示装置、 2:レーザ光発生器、 2a:レーザ光射出口、 3:回転部、 4:支持基部、 5:モータ、 6:カバー、
11:回転板、 12:回転基部、 13:回転軸、
21:軸受け、 22:支持板、 23:支持脚、 24:張り出し支持部、
31:駆動ギア、 32:駆動伝達ギア、 33:把持部、 34:レベルゲージ、
40:橋桁、 41:第1のブロック、 42:第2のブロック、 43:コンクリートの予め設定された上面、 44:仮ゲージ、 45:型枠、
50:受光体、 50a:受光基準線、 50b:副基準線、 51:均しこて、 52:磁石、
A:回転部の回転中心軸線、 L:レーザ光、

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ光を射出するレーザ光発生器と、
前記レーザ光発生器を支持し、該レーザ光発生器から射出されるレーザ光が周囲に投射されるように回転する回転部と、
前記回転部を支持する支持基部と、
前記支持基部に支持され、前記回転部を回転駆動するモータと、を備え、
前記レーザ光発生器は、前記レーザ光の射出方向が前記回転部の回転中心軸線と直角となるように配置され、
前記支持基部は、前記回転部の回転中心軸線を鉛直方向に対して全方向へ傾斜させる角度の調整が可能となるように該回転部を支持するものであることを特徴とするコンクリート打設基準高さ表示装置。
【請求項2】
前記回転部は、前記支持基部に備えられた支持板を上下方向に貫通し、軸受けを介して該支持板に支持された回転軸と、
前記回転軸の下端に固着された回転板と、を有し、
前記レーザ光発生器は、前記支持板の下方において前記回転板に支持されていることを特徴とする請求項1に記載のコンクリート打設基準高さ表示装置。
【請求項3】
レーザ光を射出するレーザ光発生器を搭載して回転駆動される回転部と、該回転部を支持する支持基部とを有するコンクリート打設基準高さ表示装置を、コンクリート打設範囲の近傍に置いて打設するコンクリートの上面とほぼ同じ高さに支持し、
前記レーザ光発生器は、前記回転部の回転中心軸線と前記レーザ光の射出方向とが直角になるように支持し、
前記回転中心軸線は、打設するコンクリートの上面と垂直になるように設定し、
前記回転部を回転駆動するとともに、前記レーザ光発生器からレーザ光を射出してコンクリート打設範囲にある受光体に照射し、
該受光体に照射された前記レーザ光の照射位置を基準高さとしてコンクリートの上面を均すことを特徴とするコンクリート打設表面の均し方法。
【請求項4】
前記回転中心軸線を打設するコンクリートの上面と垂直になるように設定する工程は、前記回転部を回転駆動してレーザ光を射出し、コンクリート打設範囲の少なくとも3箇所の位置で、打設するコンクリートの上面から同じ高さの位置にレーザ光が照射されるように前記支持基部を設置することを特徴とする請求項3に記載のコンクリート打設表面の均し方法。
【請求項5】
前記受光体は、コンクリート打設上面を均す均しこての上面に取り付けておくことを特徴とする請求項3又は請求項4に記載のコンクリート打設表面均し方法。
【請求項6】
前記受光体は、前記均しこてに対して着脱可能であるとともに、前記受光体の取り付け位置を上下方法に調整可能となったものを用いることを特徴とする請求項5に記載のコンクリート打設表面均し方法。
【請求項7】
前記受光体として、形状が円錐形、多角錐形、円錐台形又は多角錐台形となった部材を用いることを特徴とする請求項3から請求項6までのいずれかに記載のコンクリート打設表面均し方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−153423(P2011−153423A)
【公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−14229(P2010−14229)
【出願日】平成22年1月26日(2010.1.26)
【出願人】(000174943)三井住友建設株式会社 (346)
【Fターム(参考)】