コンクリート構造物とその製造方法およびコンクリート構造物用転写シート
【課題】被接合部材がコンクリート構造物本体とは別個の層として、コンクリート構造物本体と強固に接合したコンクリート構造物、その製造方法およびコンクリート構造物用転写シートを提供する。
【解決手段】コンクリート構造物本体に接合すべき被接合部材がその裏面側で接合部材を介してコンクリート構造物本体と接合一体化しており、前記接合部材と前記コンクリート構造物本体との界面では前記接合部材の一部とコンクリートの一部が混在している。
【解決手段】コンクリート構造物本体に接合すべき被接合部材がその裏面側で接合部材を介してコンクリート構造物本体と接合一体化しており、前記接合部材と前記コンクリート構造物本体との界面では前記接合部材の一部とコンクリートの一部が混在している。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はコンクリート構造物とその製造方法およびコンクリート構造物用転写シート(以下、単に「転写シート」ということがある)に関し、詳しくは、例えば、夜間における注意喚起や情報の表示を可能とする再帰反射性などを備えるシートがコンクリート構造物本体に接合一体化されたコンクリート構造物とその製造方法および転写シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、歩車道境界や中央分離帯などにおいて歩行者と車両の接触や車両同士の接触を防止するための境界ブロック、駐車場の車止め、住宅同士や住宅と歩道との境界に設けられるブロック塀など、様々な場面でコンクリート構造物が使用されている。
【0003】
これらコンクリート構造物について、従来、その表面に何らかの機能を持たせようという試みがなされてきた。これらの試みの中でも、反射性(特に、再帰反射性)、蛍光性、蓄光性など、視認性向上のための機能を付与する試みが多くなされてきた。
【0004】
これは、例えば、特に夜間やトンネル内において、コンクリート構造物の視認性が損なわれると、境界ブロックや車止め位置が不明確となり、車両が接触するなどして、却って事故を誘発する危険性もあるため、視認性向上への強い要請があるからである。
【0005】
例えば、コンクリート構造物の視認性を付与するための方法として、コンクリート内に、ガラスビーズなどの再帰反射性粒子を埋没させ、その一部を露出させる方法がある(例えば、特許文献1〜3参照)。
【0006】
しかし、これらの方法では、反射層や色素層といった複数の層を導入することが困難である。すなわち、これらの層は、その機能を発揮させるために、ガラスビーズなどの再帰反射性粒子よりも下層に形成しなければならないが、コンクリート構造物内部にこれらの層を形成する適切な方法がないからである。仮に何らかの方法で導入し得たとしても、不透明なコンクリート内では色がコンクリートの色によってくすんで汚れ、鮮明な色を出すことは難しい。さらに再帰反射性粒子が埋没しているため、その埋没度合により再帰反射し得る入射角が限定されたり、完全にガラスビーズが埋まってしまったりして、再帰反射効率が低い。
【0007】
なお、車両走行用空間に対面する側面の部分に、それ自身の少なくとも表面に多数の蛍光性粒状物もしくは反射性粒状物が埋設され、これら粒状物で入射光線を再帰反射しうるようにした突条を縦向きに複数条形成するようにして、再帰反射効率を向上させるようにしたコンクリート製品も知られている(特許文献4参照)。
【0008】
しかし、この技術は、蛍光性粒状物や反射性粒状物がコンクリート表面に埋設されている点では上記特許文献1〜3の技術と共通であり、結局、反射層や色素層といった複数の層を導入することが困難である点は解決されない。
【0009】
以上のような問題点を解消するためには、再帰反射層などの特性を有した部材が、コンクリート構造物本体とは別個の独立した層として存在していなければならない。
【0010】
この点、コンクリート本体に反射板を取り付ける方法も知られており(例えば、特許文献5〜7参照)、その具体的な取り付け方法としては、接着剤による貼り付けが提案されている。
【0011】
しかし、コンクリート構造物は屋外で使用されるものが多く、接着剤による貼り付けだけでは、気温や天候の著しい変化に長期間耐え得るものではない。なお、上述の特許文献5の段落[0007]には、コンクリートブロックへの反射板の取り付け方法として、コンクリートブロックの製造時にコンクリートブロックと組み合わせるという方法も開示されているが、その具体的手法は不明である。
【0012】
さらに、ブロック本体の側面に線状の凹溝を設け、これに線状の反射材を取付けるか、または複数の反射チップを糊付けなどにより凹溝内に複数配置するという方法も知られている(特許文献8参照)。
【0013】
しかし、複数の反射チップを配置する場合には、コンクリート本体と反射チップ間の接合が十分でないという上述の問題があるし、何よりも後付けであるために手間と時間がかかる。また、線状の反射材を取付ける場合、コンクリートブロックを成型するにあたり、型枠内に予め線状に形成された線状反射材を取付け、前記コンクリートブロックの車道に面する側面で、天部からやや下方の上部に、前記線状反射材を前記コンクリート製のブロック本体に一方の端面から他方の端面に向けて埋設して同時成型する方法も開示されているが、型枠内に線状反射材を取付ける具体的な方法が明らかでない。
【0014】
さらに、コンクリートの打設の際に反射部材を一体的に取り付ける工夫を施す従来技術も知られている。
【0015】
例えば、ブロック本体の側面部または上面部に長手方向に連続する線状反射面を有する反射用部材が該反射面が前記ブロック本体表面と面一となるように一体に埋設されていることを特徴とするコンクリート境界ブロックが知られている(特許文献9,10参照)。
【0016】
しかし、型枠に反射用部材を取り付ける際、型枠の寸法と反射用部材の寸法とを正確に一致させない場合には、反射用部材を型枠内の適切な位置に配置することが困難であり、生コンクリートを流し込む際の荷重によって反射用部材の位置がずれてしまう可能性もあるので、その位置管理が煩雑である。他方、型枠の寸法と反射用部材の寸法とを正確に一致させる場合は、型枠に反射用部材を取り付ける際、線状部材や枠材を型枠に接した状態で挿入することになるので、線状部材や枠材と型枠が磨耗する可能性があるし、コンクリート構造物の寸法(型枠の寸法)に応じて反射用部材の寸法を適宜設定しなければならないという問題もある。また、この技術では、反射用部材の構成要素として、線状反射面の位置を固定するための枠材が必須に用いられているが、この枠材は反射性に全く寄与しない部材であるにもかかわらず、製造される全てのブロックに埋設されることとなるので、この枠材の分だけ、コスト面でも不利である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】特許第2821945号公報
【特許文献2】特開平11−10613号公報
【特許文献3】特開2001−162613号公報
【特許文献4】特開平8−134854号公報
【特許文献5】特開2000−54308号公報
【特許文献6】特開2003−221803号公報
【特許文献7】実用新案登録第3110979号公報
【特許文献8】特開2006−200235号公報
【特許文献9】実用新案登録第3018905号公報
【特許文献10】特開平8−326021号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
そこで、本発明は、再帰反射性などの特性を発揮する部材が、コンクリート構造物本体に埋没せずに、コンクリート構造物本体とは別個の層として形成されるものであり、コンクリート構造物本体と強固に接合し、容易に剥離されることのないコンクリート構造物とその製造方法および転写シートを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本願発明者は、上記目的を達成するために鋭意検討を行った。
【0020】
その際、まず、所望の機能を発揮する物質(ガラスビーズなど)をコンクリート構造物本体に埋没させるのではなく、コンクリート構造物本体とは別個の部材として一体化する方法を検討した。
【0021】
そして、コンクリート構造物本体と強固に接合し、容易に剥離されることのないようにするためには、被接合部材とコンクリート構造物本体とを接合する接合部材と、コンクリート構造物本体との界面において、接合部材の一部とコンクリートの一部が混在している構造とすればよいことが分かった。
【0022】
本発明は、上記知見に基づき完成されるに至った。
【0023】
すなわち、コンクリート構造物本体に接合すべき被接合部材がその裏面側で接合部材を介してコンクリート構造物本体と接合一体化しており、前記接合部材と前記コンクリート構造物本体との界面では前記接合部材の一部とコンクリートの一部が混在している、ことを特徴とする。
【0024】
本発明にかかるコンクリート構造物の製造方法は、コンクリート構造物本体に接合すべき被接合部材の裏面側にアンカー材を接合し、金型に着脱可能に固定された金型用コマに前記被接合部材の表面側を仮接着し、生コンクリートを打設してコンクリートの一部を浸入させることにより、コンクリート構造物本体にアンカー材を介して前記被接合部材を接合一体化する、ことを特徴とするか、または、コンクリート構造物本体に接合すべき被接合部材の表面側を、金型に着脱可能に固定された金型用コマに仮接着し、前記被接合部材の裏面側に接着剤を塗布し、前記接着剤の硬化前に生コンクリートを打設して接着剤の一部とコンクリートの一部が混ざることにより、コンクリート構造物本体に接着用樹脂層を介して前記被接合部材を接合一体化する、ことを特徴とする。
【0025】
本発明にかかるコンクリート構造物用転写シートは、コンクリート構造物本体に転写される被転写層と、前記被転写層を支持する支持層と、前記被転写層の前記支持層とは反対側の面に接合されているとともに前記被転写層との接合面とは反対側の面でコンクリート構造物本体と接合するアンカー材層と、を備える、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0026】
本発明のコンクリート構造物は、接合部材と前記コンクリート構造物本体との界面で接合部材の一部とコンクリートの一部が混在していることにより、被接合部材がコンクリート構造物と強固に接合し、容易に剥離されることがない。
【0027】
本発明のコンクリート構造物の製造方法によれば、上述の優れた効果を有するコンクリート構造物を容易に得ることができる。また、コンクリート構造物本体に接合すべき被接合部材の表面側を、金型に着脱可能に固定された金型用コマに仮接着するので、金型は従来公知のものをそのまま適用でき、金型の設計変更に伴うコストや手間の増大がない。
【0028】
本発明のコンクリート構造物用シートは、コンクリート構造物本体と接合するアンカー材層を備えているので、上述の優れた効果を有するコンクリート構造物を得るための転写シートとして有用である。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の転写シートの一実施形態を示す拡大断面図である。
【図2】図1の転写シートにおいて、切抜きおよびリタックシートの貼り付けを行った場合の拡大断面図である。
【図3】図1もしくは図2(または図14もしくは図15)の転写シートを示す平面図である。
【図4】本発明のコンクリート構造物の一実施形態を示す断面図である。
【図5】図4のコンクリート構造物の一部を拡大した拡大断面図である。
【図6】図4のコンクリート構造物の一部を拡大した拡大断面図である。
【図7】本発明のコンクリート構造物の一実施形態を示す斜視図である。
【図8】本発明のコンクリート構造物の製造方法の一実施形態における打設時の状態を示す断面図である。
【図9】図8に示す状態の一部を拡大した拡大断面図である。
【図10】図8に示す状態の一部を拡大した拡大断面図である。
【図11】本発明のコンクリート構造物の製造方法の一実施形態における脱型後の状態を示す断面図である。
【図12】図11に示す状態の一部を拡大した拡大断面図である。
【図13】図11に示す状態の一部を拡大した拡大断面図である。
【図14】第2の実施形態に適用される転写シートの一実施形態を示す拡大断面図である。
【図15】図14の転写シートにおいて、切抜きおよびリタックシートの貼り付けを行った場合の拡大断面図である。
【図16】本発明のコンクリート構造物の一実施形態を示す断面図である。
【図17】図16のコンクリート構造物の一部を拡大した拡大断面図である。
【図18】図16のコンクリート構造物の一部を拡大した拡大断面図である。
【図19】本発明のコンクリート構造物の製造方法の一実施形態における打設時の状態を示す拡大断面図である。
【図20】本発明のコンクリート構造物の製造方法の一実施形態における打設時の状態を示す拡大断面図である。
【図21】本発明のコンクリート構造物の製造方法の一実施形態における脱型後の状態を示す拡大断面図である。
【図22】本発明のコンクリート構造物の製造方法の一実施形態における脱型後の状態を示す拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
<第1の実施形態>
以下、図1〜13を用いて、本発明にかかるコンクリート構造物およびその製造方法ならびに転写シートについて、第1の実施形態を詳しく説明するが、本発明の範囲はこれらの説明に拘束されることはなく、以下の例示以外についても、本発明の趣旨を損なわない範囲で適宜変更実施し得る。
【0031】
この第1の実施形態では、アンカー材が用いられている。
【0032】
以下では、特に断らない限り、第2の実施形態に関する説明に至るまで、上述の第1の実施形態にかかるコンクリート構造物およびその製造方法ならびに転写シートを、単に、本発明にかかるコンクリート構造物およびその製造方法ならびに転写シートと称する。
【0033】
以下では、まず、本発明のコンクリート構造物を得るために好適に使用することのできる本発明の転写シートについて説明するが、本発明のコンクリート構造物は、これを用いて得られるものに限定されない。
【0034】
〔転写シート〕
以下では、図1〜3を用いて、有色の再帰反射性を発揮することにより、視認効果と装飾効果や情報表示機能とを兼ね備えたコンクリート構造物を得るための転写シートを例に説明する。
【0035】
図1において、転写シート10は、支持層11、被転写層12、可撓性接着用樹脂層13、アンカー材層14からなる。支持層11は、第1の支持層11aと第2の支持層11bとからなり、被転写層12は、透明ビーズ層12aと色素を含有する反射層12bとからなる。
【0036】
転写シート10は、コンクリート構造物本体に転写された際、アンカー材層14がコンクリート構造物本体と接合して最下層となり、支持層11側が上層となる。
【0037】
透明ビーズ層12aにおける透明ビーズの材料としては、再帰反射性が発揮される透明性のある材料であればよく、例えば、ガラスが使用できる。市販のガラスビーズとしては、ユニチカ社製の「UB−35M」などが好ましく挙げられる。硬質の合成樹脂や透明セラミック、天然鉱物なども使用可能である。透明ビーズの形状は、理想的には球形のものが良好な再帰反射性を発揮できる。球形の透明ビーズは、任意の方向から入射した光が球内底面に焦点を結ぶように屈折し、さらに球内底面で鏡面反射した光が再び屈折して入射した方向と平行な方向に出ていく。実用的には、工業的に得られる程度の球形度を有していれば十分な再帰反射性が発揮できる。球形以外の楕円体や長円体、多面体に近い形状のものでも、球形に比べると劣るが、ある程度の再帰反射性を示すことができる。
【0038】
透明ビーズは、入射した光が内部で屈折し、透明ビーズ底面にその焦点を結び、元来た方向へ帰って行く再帰反射現象を起こすが、一部透明ビーズ外へ抜け出て行く。しかし、この透明ビーズ外へ抜け出た光の一部も、その近辺に、反射層12bに含有される反射材が存在するため、反射材で再度反射する。したがって、透明ビーズへ入射した光は、ほぼ全て、元来た方向へ戻る再帰反射光となる。さらに、透明ビーズの焦点付近には、反射層12bに含有される色素があるため、再帰反射光はその近辺の色素の色を拾いながら出て行くので、再帰反射光に色を付けることができる。
【0039】
透明ビーズの粒径は、散布による層形成の容易さや反射層12bへの付着性、再帰反射機能などの条件を考慮して設定され、例えば、1μm〜2000μmの範囲に設定できるが、好ましくは40μm〜120μmがよく、より好ましくは45μm〜75μmがよい。
【0040】
透明ビーズの屈折率によって、入射光および反射光の屈折作用が変わる。再帰反射性を良好にするには、屈折率1.5〜2.5のものが好ましく、1.8〜2.2のものがより好ましい。さらに好ましくは、屈折率1.92±0.02である。
【0041】
透明ビーズは透明性に優れたものが好ましい。ただし、再帰反射性を損なわない程度に薄く着色された半透明のビーズも使用可能であり、この明細書において、透明ビーズとは、狭義の透明ビーズだけでなく半透明ビーズをも含む意味で使用している。
【0042】
この実施形態においては、基本的には反射層12bでの反射を前提としているが、透明ビーズとして、表面の一部に反射膜が形成された自反射性を有する透明ビーズを使用してもよい。自反射性透明ビーズとしては、通常、透明ビーズの半球部分程度に反射膜を設けておく。透明ビーズに入射した光が、透明ビーズ底面に焦点を結び、その部分にある反射膜で反射して、良好な再帰反射性が発揮される。
【0043】
自反射性透明ビーズに形成される反射膜として、アルミニウム、銅、真鍮などの金属による蒸着膜が挙げられる。例えば、アルミニウム蒸着膜はシルバー色の反射光が得られ、銅蒸着膜は赤色、真鍮蒸着膜は黄色の反射光が得られる。
【0044】
このように、透明ビーズ層12aの上から前記金属などを真空蒸着することにより透明ビーズの半球部分を金属の蒸着膜で覆った自反射性透明ビーズを用いる場合には、反射層12bに代えて透明樹脂層を組み合わせて被転写層を構成するようにしてもよい。
【0045】
反射層12bの色素による着色と混色されると、少しくすみのある反射光になる。反射膜は、ある程度の光透過性を有するものでもよい。
【0046】
透明ビーズとして、材料や特性の異なる複数種類の透明ビーズを混合して使用すれば、単独種類の透明ビーズでは得られない再帰反射特性や表面性状を得ることもできる。
【0047】
次に、色素を含有する反射層12bとしては、例えば、反射材、色素、樹脂材料などを材料とする塗膜を採用することができる。
【0048】
反射材としては、微細な鱗片状、粒子状、繊維状などの形態のものが挙げられ、その粒径は、例えば、1.0〜50μmに設定できる。微細な反射材は、反射層12b中に均一に分散させることができ、反射機能が良好に発揮できる。
【0049】
反射材の具体的材料として、マイカが好ましく挙げられる。マイカは、雲母を原料として薄い鱗片状に加工されたものであり、その反射光は一般的に白色である。マイカ表面に、酸化チタンの被覆をしておくと、反射性能が高まる。反射材として、アルミニウムなどの表面反射性を有する金属、無機材料、鉱物なども使用できる。反射材が、着色されたものであれば、反射機能に加えて着色機能も発揮することができる。例えば、アルミニウム粒子は、シルバー色の反射光を出す。着色アルミニウム粒子は、その着色された色の反射光を出す。ノンリーフィングタイプのアルミニウム粒子は、表面酸化が起こり難く、良好な反射性を持続でき、使用に適したものとなる。
【0050】
色素を含有させることで、反射層12bを通過する光に色をつけて、色光からなる再帰反射光を作ることができる。その具体例として、通常の塗料用や染色用の着色材料が使用でき、各種の顔料あるいは染料が使用できる。プラスチック成形用の着色材料も使用できる。色素は、反射層12b中に分散するものであってもよいし、溶解してしまうものであってもよい。粒子状のものや鱗片状のもの繊維状のものなどが使用できる。色素の粒径を、0.01〜1μmの範囲に設定できる。一般的な市販の色素は、粒径1μm未満である。
【0051】
樹脂材料としては、熱可塑性樹脂および熱硬化性樹脂の何れも使用できる。湿気硬化型や紫外線硬化型の樹脂も使用できる。水系樹脂、有機溶剤系樹脂、それらの混合溶媒系樹脂も何れもが使用できる。具体的には、アクリル系、ウレタン系、エポキシ系、エチレン酢酸ビニル系、ポバール系、シリコーン系、ポリエステル系、ナイロン系、オレフィン系、天然ゴム系、アルキッド系、塩化ビニル系などの樹脂が挙げられる。これらの樹脂の共重合体も使用できる。一般的な接着性樹脂材料が使用できる。また、市販の接着用樹脂がそのまま使用できる場合もある。
【0052】
熱硬化性樹脂の場合、熱硬化温度が透明ビーズの機能を損なわない程度のものが好ましい。熱硬化温度が高過ぎると、加熱硬化処理において、透明ビーズが変形したり溶融したりして、再帰反射特性が損なわれる。具体的な熱硬化温度として、550℃以下が採用できる。
【0053】
樹脂材料が透明性に優れたものであれば、透明ビーズ層12aを通過して反射層12bに到達した光を、反射層12b内の反射材や色素で反射させて、色光を作り出すのに有効である。
【0054】
樹脂材料が不透明材料であれば、透明ビーズ層12aに入射した光は全て、透明ビーズの球内底面あるいは透明ビーズと反射層12bとの境界面で反射するか反射層12bで吸収される。この場合は、反射層12b内での反射材と色素とによる色光の生成は果たせない。
【0055】
反射層12bの材料としては、上記した以外にも、必要に応じて、その他の各種配合成分が採用できる。例えば、シランカップリング剤を配合しておくと、ガラスビーズと反射層12bとの接合力を高めることができる。色素の分散を助ける分散剤、反射層12bのひび割れを防ぐひび割れ防止剤、反射層12bの粘度を適度に調整する粘度調整剤などや、硬化剤、硬化促進剤、硬化遅延剤、溶剤、消泡剤、架橋剤、粘性付与剤、安定剤などが使用できる。
【0056】
透明ビーズ層12aの上には、色素を含有する反射層12bが形成されている。ただし、図1に見るように、反射層12bは、透明ビーズ層12aの全面を被覆しているのではなく、一部、被覆していない箇所がある。これは、後述するように、色素を含有する反射層12bを、所望の図形や文字を構成するように形成しているためである。装飾効果や情報表示機能を付与する必要がないのであれば、このような工夫は不要である。
【0057】
転写シート10において、被転写層12は支持層11によって支持されている。
【0058】
支持層11は、被転写層12を支持し得るものであればよく、図1〜3に示す例では、第1の支持層11aと第2の支持層11bの2層からなっている。第1の支持層11aは、例えば、ポリエステル系、アクリル系、ナイロン系、ポリイミド系、塩化ビニル系などからなるシートであり、第2の支持層11bは、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン系からなるシートである。
【0059】
第1の支持層11aの厚みは、被転写層12を支持するに足る厚みであればよく、例えば、50〜150μmが好ましい。
【0060】
第2の支持層11bの厚みは、透明ビーズ層12aにおける透明ビーズの一部を埋没させ仮保持させた状態とするため、透明ビーズの粒径よりも小さく、かつ、透明ビーズを仮保持するに足る厚みを有することが好ましい。したがって、第2の支持層11bの厚みは、透明ビーズの粒径にもよるが、例えば、20〜50μmが好ましい。
【0061】
第2の支持層11bに透明ビーズ層12aの各透明ビーズが埋没しているが、第2の支持層11bは接着性を有さず、各透明ビーズは仮保持された状態となっている。これにより、転写シート10をコンクリート構造物本体に転写した後、この第2の支持層11bを容易に剥離することができ、透明ビーズ層12aを露出させて、被転写層12の機能を良好に発揮させることができる。
【0062】
本発明の転写シート10は、図1に示すように、被転写層12とアンカー材層14との接合が可撓性接着用樹脂層13によりなされているものであることが好ましい。
【0063】
可撓性接着用樹脂層13としては、例えば、可撓性ウレタン樹脂、可撓性エポキシ樹脂からなる接着用樹脂層が好ましく挙げられ、可撓性エポキシ樹脂からなる接着用樹脂層がアンカー材を接着させるにあたり、特に好ましい。可撓性エポキシ樹脂の市販品としては、コニシ社製のボンドEシリーズが好ましく挙げられる。
【0064】
アンカー材層14は、アンカー効果、すなわち、アンカー材層14の凹凸に生コンクリートが入り込んで硬化することで優れた一体接合効果を発揮することにより、被転写層12とコンクリート構造物本体とを強固に結合させる層であり、アンカー効果を十分に発現させるものとして、コンクリート構造物本体との接合面に突起構造を有するものであることが好ましい。優れたアンカー効果を発揮させるので、気温や天候などの影響を受けやすい状況であっても優れた耐久性を有するコンクリート構造物を得させるものとなる。
【0065】
生コンクリート成分のセメントペーストがアンカー材と強固に接着するように、また、接着した後も容易に引き千切れないように、その形状は、例えば、面ファスナーのオス型様の突起構造、すなわち、面ファスナーのオス型に採用されるような鉤針型やキノコ型などの形状をしたものが有利である。接合部材の一部とコンクリートの一部が混在している状態は、オス型様の突起構造がコンクリート構造物本体に食い込むことにより実現されることになる。
【0066】
アンカー材層14の素材も、特に限定されないが、鉤針型やキノコ型形状などの突起構造1本1本が、両端を引っ張った時、伸びても良いが簡単にプツンと切れるような材質ではないことが望ましく、したがって、例えば、ポリエステル系繊維、ナイロン系繊維、ポリオレフィン系繊維、塩化ビニル系繊維、ポリウレタン系繊維、アクリル系繊維、アラミド繊維、炭素繊維、無機繊維などの強度の高い繊維が好ましく、金属製のものであってもよい。
【0067】
アンカー材層14の厚みは、例えば、1.0〜20.0mmのものが好ましく、2.0〜10.0mmのものがより好ましい。2.0mm以上であれば、その内部に生コンクリートが十分に浸入するので優れたアンカー効果が発揮され、また、10.0mm以下であれば、その内部に接着力を低下させる空気層が多く存在してしまうこともない。
【0068】
また、アンカー材の被転写層12側(コンクリート本体と接合する面の反対側)の表面は可撓性接着用樹脂層13により被転写層12と固定されるため、凹凸のない密な表面状態の方が接着性が良い。
【0069】
アンカー材の表面に比べ、裏面はアンカーの突起が1本1本出ている構造のため、空気を完全に無くすことが難しく、コンクリートとの間に空気が僅かに存在することもある。
【0070】
空気が存在すると、転写シート10をコンクリート構造物本体に転写した時、その下に空気があるため、転写シート10が破れやすくなる。
【0071】
従って、アンカー材層14の厚みは10.0mm以下が好ましいのである。
【0072】
転写シート10は、必要に応じて、図2に示すように、支持層11、被転写層12、可撓性接着用樹脂層13およびアンカー材層14が一体的に切抜かれ、各切抜き片の支持層11にリタックシート15が貼付されて、各切抜き片の相対的位置関係を固定されたものであってもよい。このような転写シート10を用いれば、コンクリート構造物本体に、所望の形状を有した転写層を形成することができ、その切抜き形状により、コンクリート構造物に切り文字や図柄のみを象嵌のように埋め込み、装飾効果や情報表示機能を与えることができる。ただし、転写シート10における被転写層12が、スクリーン印刷のように版を介して反射材層を印刷することで図柄や文字が形成されたものである場合、被転写層12に印刷された図柄や文字により装飾効果や情報表示機能を付与することができるので、切り抜いたりリタックシートを貼着したりする工程は通常不要である。
【0073】
リタックシート15としては、各切抜き片の相対的位置関係を固定でき、かつ、容易に剥離できる弱接着性のものであれば、特に限定されない。
【0074】
図3は、図1や図2に示す転写シート10全体の概観を示す平面図である。この図3では、ABCの文字が左右反転した文字情報101,102,103が形成されていることが分かる。
【0075】
この文字情報101,102,103は、図1に示す転写シート10では色素を有する反射層12bや色素含有層の印刷により形成されるものであり、図2に示す転写シート10では、リタックシート15との接合面側から順に、支持層11、被転写層12、可撓性接着用樹脂層13、アンカー材層14で構成されてなる各切抜き片の形状に基づき形成されるものである。
【0076】
上記構造を備えた転写シート10においては、アンカー材層14側でコンクリート構造物本体と接合一体化するので、転写後は、支持層11が最上層となるが、転写後は、支持層11はその効用を終えて剥離されることとなるので、最終的には、被転写層12が最上層となる。より詳しくは、透明ビーズ層12aが最上層で露出し、その下層に反射層12bが存在することとなる。
【0077】
そして、透明ビーズ層12aに入射した光は、透明ビーズにより屈折して透明ビーズ底面に焦点を結び反射するが、透明ビーズ底面にある反射層12bでより反射し、これらが合わさって再び透明ビーズ層12aを通って、再帰反射、すなわち、入射方向と同一の方向に反射される。このとき、反射層12bが色素を含有しているので、反射層12bで反射された再帰反射光は有色となる。図示しないが、反射層12bと透明ビーズ層12aとの間に色素含有層を設けるようにするならば、反射層12bに色素を含有せずとも同様の結果が得られる。
【0078】
本発明にかかる転写シートは、上記実施形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜変更実施してもよい。
【0079】
例えば、上述した図1に示す転写シート10は、支持層11(第1の支持層11aおよび第2の支持層11b)、被転写層12(透明ビーズ層12aおよび色素を含有する反射層12b)、可撓性接着用樹脂層13、アンカー材層14からなるものであり、上述した図2に示す転写シート10は、支持層11、被転写層12、可撓性接着用樹脂層13およびアンカー材層14が一体的に切抜かれ、各切抜き片の支持層11にリタックシート15が貼付されてなるものであるが、これらのうち、支持層11および被転写層12に相当する部分を、既存の反射シート(単純な反射をなし得るものだけでなく、再帰反射をなし得るものであっても良い)に置き換えることもできる。
【0080】
例えば、既存の反射シートの裏面側に可撓性接着用樹脂層13を介してアンカー材層14が接合されたものも、本発明の転写シートとすることができる。
【0081】
ただし、既存の反射シートは、インクジェットプリントなどで色を付して文字や図形が形成されているものはあるものの、反射は全面で起こるようになっており、特定の文字や図形のみを反射させることはできない。したがって、反射光によって特定の文字や図形を認識することは困難である。この点では、色素を含有する反射層12bを所望の図形や文字を構成するように形成することで特定の文字や図形のみを再帰反射させるようにした上述の実施形態のほうが有利である。
【0082】
しかし、この場合でも、既存の反射シートの裏面側に可撓性接着用樹脂層13を介してアンカー材層14が接合され、かつ、これらが一体的に所望の文字や図形や切り抜かれているとともに、上記図2に示すごとく、リタックシートで位置決めされているものであれば、所望の文字や図形のみを反射させることのできるものとなる。
【0083】
また、図1では、透明ビーズ層12aと色素を含有する反射層12bとからなり有色の再帰反射機能を有する2層構造の被転写層12について説明したが、被転写層はこれに限定されない。上述のように、透明ビーズ層12aと反射層12bの間に色素含有層を設けた3層構造のものであってもよいし、自反射透明ビーズを用いて反射層を省略したり、反射層内に透明ビーズを分散させたりした単層構造のものであってもよい。
【0084】
さらに言えば、被転写層は、コンクリート構造物本体に転写されて、コンクリート構造物に種々の特性を発現させ得るものであればよい。例えば、単純な反射機能を付与するのであれば、上記透明ビーズ層12aを用いなければよいし、単に色付けするだけであれば反射層に代えて色素含有層のみを用いればよい。また、再帰反射性などの反射性以外にも、例えば、発光性その他のあらゆる特性を有するものが挙げられる。この場合、求める特性に応じて、蛍光材料、蓄光材料などの各種材料を含有する層を採用すればよい。
【0085】
さらに、蛍光性や蓄光性と上述の反射機能との併用も可能であり、例えば、上述した反射材層12bに蛍光材料や蓄光材料を混合するようにすれば、反射と蛍光や蓄光の機能を兼ね備えた転写シートが作製できるので、コンクリート構造物により付加価値を付けた情報表示機能や装飾機能を発揮させることもできる。
【0086】
蓄光材料としては、特に限定するわけではないが、例えば、CaS:Bi(紫青色発光)、CaSrS:Bi(青色発光)、ZnS:Cu(緑色発光)、ZnCdS:Cu(黄色〜橙色発光)などの硫化物蛍光材料や、MAl2O4(Mは、カルシウム、ストロンチウムおよびバリウムからなる群から選ばれる1つ以上の金属元素)に賦活剤としてユーロピウムを添加し、さらに希土類元素を共賦活剤として添加した蓄光性蛍光材料や、Sr4Al14O25:Eu,Dy蓄光性蛍光材料などを例示することができる。
【0087】
また、図1,2に示すような2層構造であれば、第1の支持層11aにより十分な平滑性を得つつ、第2の支持層11bにより透明ビーズを仮保持することができるが、支持層11を1層とすることも可能である。特に、上述のごとく、透明ビーズを用いない実施形態においては、これを仮保持する支持層11bを設ける必要性はないといえる。
【0088】
〔転写シートの製造方法〕
上述する構造を有する転写シート10を製造する方法としては、例えば、以下の方法が採用できる。
【0089】
まず、支持層11を準備するが、この支持層11は、上述のように2層構造であることが好ましく、具体的には、第1の支持層11aの上に第2の支持層11bを積層形成する。
【0090】
つぎに、第2の支持層11bに透明ビーズ層12aとなる各透明ビーズを埋没させるのであるが、この埋没は、例えば、第2の支持層11bに加温し、流動性を帯びる程度の状態で透明ビーズを散布して、その落下衝撃や自重により行うことができ、必要に応じて押圧するようにしてもよい。第2の支持層11bに透明ビーズ層12aの各透明ビーズが埋没しているが、第2の支持層11bは接着性を有さず、各透明ビーズは仮保持された状態となっている。
【0091】
透明ビーズ層12aを形成した後、反射層12bを形成する。この反射層12bは、上述した反射材、色素、樹脂材料などを材料とする塗料を塗装または印刷し、乾燥することで形成することができる。このとき、図1では、色素を含有する反射層12bを、所望の図形や文字を構成するように形成しているが、この図形や文字の形成は、通常の印刷手段(例えば、スクリーン印刷、グラビア印刷、オフセット印刷、インクジェット印刷、コーティングなど)によりなし得るものであり、したがって、複雑な図形や文字を形成することも勿論可能である。装飾効果や情報表示機能を付与する必要がないのであれば、このような工夫は不要である。
【0092】
なお、被転写層12は、コンクリート構造物本体に転写された際、支持層11側がコンクリート構造物本体の上層となって、印刷時の図形や文字とは左右反転された状態となることに留意する。したがって、印刷は、最終的に表示したい文字や図形とは左右反転させた状態で行う必要がある。
【0093】
被転写層12の支持層11とは反対側の面にはアンカー材層14が接合される。
【0094】
図1に示す転写シート10を得る場合、被転写層12とアンカー材層14との接合を可撓性接着用樹脂層13により行う。
【0095】
可撓性接着用樹脂層13の形成は、反射層12bの上に、上で例示したような可撓性接着剤を従来公知の方法で塗布すればよい。
【0096】
次に、可撓性接着用樹脂層13の上にアンカー材層14を形成するが、このとき、可撓性接着用樹脂層13の可使時間内にアンカー材を張り合わせるようにする。可使時間を超えると可撓性接着用樹脂層13とアンカー材層14との接着が不充分となってしまうおそれがある。
【0097】
その後、必要に応じて、圧着を行い、さらに加熱を行うなどして、可撓性接着用樹脂層13を硬化させる。
【0098】
転写シート10の製造においては、必要に応じて、図2に示すように、支持層11、被転写層12、可撓性接着用樹脂層13およびアンカー材層14を一体的に切抜き、各切抜き片の支持層11にリタックシート15を貼付して、各切抜き片の相対的位置関係を固定するようにしてもよい。
【0099】
上記切抜きは、例えば、色素を含有する反射層12bで印刷した図形や文字に沿って、はさみやカッターナイフなどにより手作業で行ってもよいが、レーザーカッター、超高圧水カッターなどを用いて機械的に行うこともできる。レーザーカッターや超高圧水カッターなどを用いる場合、コンピューターで制御することができるので、色素を含有する反射層12bで図形や文字を印刷せずに、反射層12bを転写シート10の全面に形成しておいても、複雑な文字や図形を有した切抜き片を得ることができる。
【0100】
なお、「転写シート」の項でも説明したように、スクリーン印刷のように版を介して反射層12bを印刷して図柄や文字を形成し、その上から可撓性接着樹脂層13を塗布してアンカー材14を接着した転写シート10は、必ずしも図柄、文字部分を切り取る必要は無い。図柄、文字部分以外には反射層12bが無いために透明ビーズ層12a底面でのわずかな反射効果しか発現されず、他方で、反射層12bを印刷して形成された図柄、文字部分では反射層12bにおいて実用的な反射効果が発現されることになるので、図柄、文字部分を切り取らなくても、反射層12bを印刷して形成した図柄、文字部分のみが明確に視認されるからである。
【0101】
なお、「転写シート」の項末尾において詳述した、既存の反射シートを用いた転写シートを得る場合には、上記転写シートの製造方法において、支持層11および被転写層12に相当する部分を、既存の反射シートに置き換えて実施すればよい。
【0102】
すなわち、既存の反射シートの裏面側に、上記実施形態と同様にして、可撓性接着用樹脂層13を形成し、その上に、アンカー材層14を形成する。その後、必要に応じて、切抜きおよびリタックシートの貼り付けを行うこともできる。
【0103】
また、被転写層を様々に変更して実施できることも、「転写シート」の項末尾において詳述したとおりである。
【0104】
〔コンクリート構造物〕
本発明のコンクリート構造物は、コンクリート構造物本体に接合すべき被接合部材がその裏面側でアンカー材を介してコンクリート構造物本体と接合一体化しており、接合部材とコンクリート構造物本体との界面では接合部材の一部とコンクリートの一部が混在しているものであり、「転写シート」の項で説明した転写シート、特に転写シート10を用いることで容易に得ることができる。
【0105】
この場合、コンクリート構造物における被接合部材は、図4〜6に示すように、被転写層12ということになる。
【0106】
この被接合部材(被転写層12)(以下、単に「被接合部材」という)は、図7に示すように「ABC」という文字情報101,102,103が形成されている。この文字情報101,102,103は、図1に示す転写シート10を用いた場合には、色素を含有する反射層12bや色素含有層の印刷の際に形成されるものであり、図2に示す転写シート10を用いた場合は、支持層11、被転写層12、可撓性接着用樹脂層13およびアンカー材層14が一体的に切抜かれてなる切抜き片の切抜き形状に基づき形成されるものである。いずれの転写シート10においても、その裏面側で、アンカー材層14を介して、コンクリート構造物本体20との一体接合を果たしている。
【0107】
転写シート10の説明において述べたように、前記アンカー材がコンクリート構造物本体との接合面に突起構造を有するものであると、非常に強固な接合ができる。
【0108】
具体的には、生コンクリート成分のセメントペーストがアンカー材と強固に接着するように、また、接着した後も容易に引き千切れないように、その形状は、例えば、面ファスナーのオス型様の突起構造、すなわち、面ファスナーのオス型に採用されるような鉤針型やキノコ型などの形状をしたものが有利である。
【0109】
アンカー材層14の素材も、上述したとおり、鉤針型やキノコ型形状などの突起構造1本1本が、両端を引っ張った時、伸びても良いが簡単にプツンと切れるような材質ではないことが望ましく、したがって、例えば、ポリエステル系繊維、ナイロン系繊維、ポリオレフィン系繊維、塩化ビニル系繊維、ポリウレタン系繊維、アクリル系繊維、アラミド繊維、炭素繊維、無機繊維などの強度の高い繊維が好ましく、金属製のものであってもよい。
【0110】
被接合部材とアンカー材層14とは可撓性接着用樹脂層13により接着されている。
【0111】
また、後述するが、図7において、凹部21は、打設時において金型用コマが占めていた空間に起因するものである。
【0112】
既存のコンクリート構造物本体20に直接被接合部材を接合した場合には、このような凹部21は形成されず、通常、被接合部材はコンクリート構造物本体20表面よりも突出した状態となってしまい、外部からの衝撃を受けやすく、特に歩車道境界ブロックなどの用途においてタイヤとの接触などの問題が考えられるが、図7に示すように、凹部21が形成されていると、この問題が軽減される。
【0113】
なお、本発明のコンクリート構造物は、被接合部材とコンクリート構造物本体20がアンカー効果により強固に接合されている点に特徴を有するものであるので、裏面側でアンカー材層14を介してコンクリート構造物本体20と接合一体化しているものであれば、被接合部材の種類は特に限定されないのであり、再帰反射性を有するものに限られないし、印刷技術を用いたものや所望の文字や図形に切り抜かれたものに限られない。
【0114】
例えば、再帰反射性以外に、単純な反射性を有するものや、蛍光性や蓄光性などの発光性その他の特性を有するものであってもよい。さらに上述の反射機能と発光性その他の特性との併用、例えば、上述した反射材層12bに蛍光材料や蓄光材料を混合するようにすれば、反射と蛍光や蓄光の機能を兼ね備えた転写シートが作製できるので、コンクリート構造物により付加価値を付けた情報表示機能や装飾機能を発揮させることもできる。
【0115】
夜間やトンネル内などにおける視認性を考慮する必要がなく、昼間における情報表示機能や装飾機能の付与のみを目的とする場合には、これら反射性や発光性を有さずに、色彩のみで所望の文字や図形が構成されているものであってもよい。
【0116】
さらに、これら視覚情報の付与に限らず、コンクリート構造物本体に何らかの機能を付与するあらゆる場面での適用の可能性がある。
【0117】
形状については、所望の文字や図形に切抜かれたもの以外に、例えば、シート状のものであってもよいし、その他、立体的なものも含め、あらゆる形状のものが含まれる。なお、ここにいうシート状とは、厚みの薄いフィルム状をも含む概念である。
【0118】
本発明のコンクリート構造物は、さらに、コンクリート構造物本体に転写された被接合部材の表面に、撥水性および/または防汚性の薄膜を有するものであっても良い。これにより、排気ガスなどの汚れやゴミの付着を防止することが出来る。
【0119】
〔コンクリート構造物の製造方法〕
本発明のコンクリート構造物の製造方法は、コンクリート構造物本体に接合すべき被接合部材の裏面側にアンカー材を接合し、金型に着脱可能に固定された金型用コマに被接合部材の表面側を仮接着し、生コンクリートを打設することにより、コンクリート構造物本体にアンカー材を介して被接合部材を接合一体化するものであり、「転写シート」の項で説明した転写シート、特に転写シート10を用いることが好ましい。
【0120】
すなわち、転写シート10は、被接合部材を有するとともに、その裏面側にアンカー材層14が接合されているので、上記本発明のコンクリート構造物の製造方法に好適に利用できるのである。この場合、この被接合部材は、図7に示すように「ABC」という文字情報101,102,103を有するものとなる。これらの層構造に関しては、「コンクリート構造物」の項で詳述したとおりである。
【0121】
本発明のコンクリート構造物の製造方法を実施するに当たっては、まず、金型30を準備し、所望の位置に金型用コマ40を取り付ける。図8では、金型30の底面の1箇所に金型用コマ40を設けているが、側面や角に設けてもよいし、複数個所に設けてもよい。
【0122】
金型用コマ40は、金型30の任意の位置に固定することができるので、従来からある金型を、何ら改良することなくそのまま用いることができる。例えば、金型用コマ40がマグネットを備えたものであれば磁力により簡易に固定することができる。また、ねじなどにより固定するようにしてもよい。
【0123】
転写シート10は可撓性を有しているので、金型用コマ40の表面を、曲面としたり凹凸を施したり、あるいはさらに、文字や図形を施したりすることも簡易にでき、これにより、後述する打設の際に、転写シート10に立体形状を付加することができる。金型用コマ40を変更するだけでよいので、その都度、金型30の設計変更を行う場合と比べて、労力やコストが大幅に低減される。
【0124】
次に、金型用コマ40の表面に両面接着シート50を介して上記転写シート10を仮接着する。
【0125】
図9,10に示すように、転写シート10は、支持層11側で金型用コマ40の表面に両面接着シート50を介して仮接着される。図9は図1に示す転写シート10を用いた場合(切抜きなし)であり、図10は図2に示す転写シート10を用いた場合(切抜きあり)である。このとき、本発明の転写シート10は、可撓性を有する接着用樹脂層13を有しているので、金型用コマ40が上記のごとく種々の立体形状を有していても、転写シート10は、その立体形状に柔軟に追従することができる。
【0126】
このように、金型用コマ40は、マグネットやねじを利用して、金型30に着脱可能に固定されているとともに、転写シート10との接着も両面接着シート50による仮接着であるので、何回でも使用することができる。
【0127】
図8や図11では図示を省略しているが、転写シート10は、図3に示すように所望の文字情報101,102,103を有している。図1に示す転写シート10を用いる場合は、切抜きがなされていないので、リタックシート15は不要であり、図9に示すように、支持層11が、両面接着シート50を介して直接金型用コマ40と接合する。図2に示す転写シート10を用いる場合は、転写シート10の支持層11側には、文字情報101,102,103を構成する各切抜き片の相対的位置関係を固定するためのリタックシート15が存在しているので、図10に示すように、リタックシート15が、両面接着シート50を介して金型用コマ40と接合する。
【0128】
図8に示すように、金型30において、転写シート10を接着した部分以外は、離型剤60を塗布しておくことで、コンクリート構造物の脱型をスムーズに行うことができる。
【0129】
その後、コンクリート構造物本体20の原料となる生コンクリートを金型30に流し込み、締め固める。生コンクリートは、セメント、細骨材、粗骨材、水などからなる従来公知のものを用いればよい。このとき、本発明の転写シート10は、可撓性を有する接着用樹脂層13を有しているので、生コンクリートの荷重によって自在な形状となるため、コンクリート構造物が曲面・凹凸面を有していても転写シート10が容易に破壊されることはない。
【0130】
転写シート10とコンクリート構造物本体20との接合は、図9,10に示すように、転写シート10のアンカー材層14によってなされる。アンカー材層14は、アンカー効果、すなわち、アンカー材層14の凹凸に生コンクリートが入り込んで硬化することで優れた一体接合効果を発揮する。なお、転写シート10を得る際、切抜きを行っている場合は、図10に示すように、各切抜き片の間隙にも生コンクリートが入り込むことになる。
【0131】
上記打設後、上部をコテで均し、養生室で加熱処理して養生する。養生は、従来公知の方法によればよく、例えば、スチーム加熱により、60〜90℃で5〜7時間養生する。
【0132】
養生後、脱型すると、図11〜13に示すように、コンクリート構造物本体20に、アンカー材層14のアンカー効果により転写シート10が一体接合され、その上面に両面接着シート50が貼りついた状態となる。
【0133】
この状態から、転写シート10における第2の支持層11bを剥離することで、図4〜7に示すように、目的のコンクリート構造物が得られる。
【0134】
支持層11bは、接着性を有さず、単に透明ビーズを仮保持していたに過ぎないので、容易に剥離することができ、この剥離の際、第1の支持層11a、リタックシート15、両面接着シート50も同時に剥離されることになるので、図4〜7に示すコンクリート構造物では、透明ビーズ層11aが露出した状態となり、かつ、被接合部材が、コンクリート構造物本体20にアンカー材層14を介して一体接合した状態となることが分かる。これにより、コンクリート構造物は、有色の再帰反射性を十分に発現することができる。
【0135】
本発明のコンクリート構造物の製造方法においては、さらに、コンクリート構造物本体に転写された被接合部材の表面に撥水性や防汚性を有する薬剤を塗布し、薄膜を形成させることにより、排気ガスなどの汚れやゴミの付着を防止することが出来る。
【0136】
この場合、撥水性や防汚性付与の方法は、特に限定されず、例えば、撥水性は、フッ素、シリコンやこれらの化合物などの撥水性物質の1種または2種以上を主成分とする塗膜を積層することにより付与することができ、また、防汚性は、表面に親水性を付与したり、汚染物質の分解除去作用を付与したりすることによって発現させることができる。
【0137】
なお、図6では、切抜き片の存在していないところにおいて、コンクリート構造物本体20が突出して存在しているが、この突出部分の高さは極めて僅かであって、光の入射を妨げるといった実際上の問題は、何ら生じない。
【0138】
また、上記コンクリート構造物の製造方法では、金型30に金型用コマ40を取り付けて打設を行うようにしたので、図7に見るように、打設時において金型用コマ40が占めていた空間分だけ、凹部21が生じていることが分かる。このように、金型用コマ40の形状は、得られるコンクリート構造物の表面形状に影響する。したがって、凹部21にごみや汚れが溜まらないように、例えば、断面台形状の金型用コマを用いることが好ましい。これにより、ごみや汚れが雨水などで容易に流され、凹部21に溜まることがない。
【0139】
<第2の実施形態>
以下、図14〜22を用いて、本発明にかかるコンクリート構造物およびその製造方法について、第2の実施形態を詳しく説明するが、本発明の範囲はこれらの説明に拘束されることはなく、以下の例示以外についても、本発明の趣旨を損なわない範囲で適宜変更実施し得る。
【0140】
この第2の実施形態では、アンカー材を用いない。
【0141】
以下では、特に断らない限り、上述の第2の実施形態にかかるコンクリート構造物およびその製造方法を、単に、本発明のコンクリート構造物およびその製造方法と称する。
【0142】
以下では、まず、本発明のコンクリート構造物を得るために好適に使用することのできる転写シートについて説明するが、本発明のコンクリート構造物は、これを用いて得られるものに限定されない。
【0143】
なお、第1の実施形態と重複する説明は割愛し、主として第2の実施形態に特有の構成を説明する。
【0144】
〔転写シート〕
第2の実施形態において好ましく用いられる転写シートは、図14,15に示すとおりであり、可撓性接着用樹脂層およびアンカー材層を有しないこと以外は、上述する第1の実施形態と共通である。
【0145】
すなわち、図14において、転写シート10は、支持層11、被転写層12からなり、必要に応じて、図15に示すように、支持層11および被転写層12が一体的に切抜かれ、各切抜き片の支持層11にリタックシート15が貼付されて、各切抜き片の相対的位置関係を固定されたものであってもよい。被転写層12における色素を含有する反射層12bや色素含有層を印刷することにより、および/または、支持層11および被転写層12が一体的に切り抜かれていることにより、第1の実施形態と同様、図3に示したような文字情報を導入することが採用できる。
【0146】
第1の実施形態と同様に、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜変更実施してもよい。この第2の実施形態に好適に用いられる転写シートは、アンカー材を備えていないので、第1の実施形態において説明した既存の反射シート自体であることができる。
【0147】
〔転写シートの製造方法〕
上述する構造を有する転写シート10を製造する方法も、可撓性接着用樹脂層およびアンカー材層を有しないこと以外は、上述する第1の実施形態と共通であり、その変更実施の可能性も第1の実施形態と共通である。
【0148】
〔コンクリート構造物〕
第2の実施形態のおける本発明のコンクリート構造物は、接合部材がアンカー材ではなく接着剤であること以外は、第1の実施形態と共通であり、その変更実施の可能性も第1の実施形態と共通である。
【0149】
このような本発明のコンクリート構造物は、コンクリート構造物本体に接合すべき被接合部材がその裏面側で接着用樹脂層を介してコンクリート構造物本体と接合一体化しているものであり、第2の実施形態における「転写シート」の項で説明した転写シート、特に転写シート10を用いることで容易に得ることができる。
【0150】
この場合、コンクリート構造物における被接合部材は、図16〜18に示すように、被転写層12ということになる。図17は図14に示す転写シート10を用いた場合(切抜きなし)であり、図18は図15に示す転写シート10を用いた場合(切抜きあり)である。
【0151】
この被接合部材(被転写層12)(以下、単に「被接合部材」という)は、第1の実施形態と同様、図7に示すように「ABC」という文字情報を有している。ただし、その裏面側でのコンクリート構造物本体20との接合は、接着用樹脂層13を介してなされており、接着用樹脂層13とコンクリート構造物本体20との界面では接着用樹脂層13の一部とコンクリートの一部が混在している。
【0152】
このような構造のものを得るためには、後述のように、接着用樹脂層13となる接着剤を塗装し、その硬化前に生コンクリートを打設すればよい。
【0153】
〔コンクリート構造物の製造方法〕
本発明のコンクリート構造物の製造方法は、コンクリート構造物本体に接合すべき被接合部材の表面側を、金型に着脱可能に固定された金型用コマに仮接着し、被接合部材の裏面側に接着剤を塗布し、接着剤の硬化前に生コンクリートを打設して接着剤の一部とコンクリートの一部が混ざることにより、コンクリート構造物本体に接着用樹脂層を介して被接合部材を接合一体化するものであり、第2の実施形態における「転写シート」の項で説明した転写シート、特に転写シート10を用いることが好ましい。
【0154】
転写シート10は、被接合部材を有するとともに、第1の実施形態と同様、図7に示すように「ABC」という文字情報を有する。
【0155】
まず、第1の実施形態と同様、図8に示すように、金型30を準備し、所望の位置に金型用コマ40を取り付ける。
【0156】
そして、本発明のコンクリート構造物の製造方法では、次に、図19,20に示すように、転写シート10を、支持層11側で金型用コマ40の表面に両面接着シート50を介して仮接着したのち、転写シート10の裏面側に接着用樹脂層13となる接着剤を塗布し、接着剤の硬化前に生コンクリートを打設して接着剤の一部とコンクリートの一部が混ざることにより、コンクリート構造物本体20に接着用樹脂層13を介して被接合部材を接合一体化する、ことを特徴としている。図19は図14に示す転写シート10を用いた場合(切抜きなし)であり、図20は図15に示す転写シート10を用いた場合(切抜きあり)である。
【0157】
このとき、本発明のコンクリート構造物の製造方法において、接着用樹脂層13となる接着剤として可撓性を有するものを用いるようにすれば、転写シート10をコンクリート構造物本体20に接合する際、金型用コマ40が種々の立体形状を有していても、転写シート10は、その立体形状に柔軟に追従することができる。
【0158】
このように、転写シート10とコンクリート構造物本体20との接合は、硬化前の接着剤の一部に生コンクリートの一部が混ざることで優れた一体接合効果を発揮する。
【0159】
上記打設後、上部をコテで均し、養生室で加熱処理して養生し、養生後、脱型すると、図21,22に示すように、コンクリート構造物本体20と転写シート10が一体接合され、その上面に両面接着シート50が貼りついた状態となる。図21は図14に示す転写シート10を用いた場合(切抜きなし)であり、図22は図15に示す転写シート10を用いた場合(切抜きあり)である。
【0160】
この状態から、転写シート10における第2の支持層11bを剥離することで、第1の実施形態と同様、図7に示すような目的のコンクリート構造物が得られる。
【産業上の利用可能性】
【0161】
本発明は、例えば、反射性(特に再帰反射性)、蛍光性、蓄光性などの種々の機能を有する歩車道境界ブロック、車止め、ブロック塀などのコンクリート構造物や、これを製造するための好適な方法および転写シートとして好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0162】
10 転写シート
11(11a,11b) 支持層
12 被転写層
12a 透明ビーズ層
12b 色素を含有する反射層
13 接着用樹脂層
14 アンカー材層
15 リタックシート
101,102,103 文字情報
20 コンクリート構造物本体
30 金型
40 金型用コマ
50 両面接着シート
60 離型剤
【技術分野】
【0001】
本発明はコンクリート構造物とその製造方法およびコンクリート構造物用転写シート(以下、単に「転写シート」ということがある)に関し、詳しくは、例えば、夜間における注意喚起や情報の表示を可能とする再帰反射性などを備えるシートがコンクリート構造物本体に接合一体化されたコンクリート構造物とその製造方法および転写シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、歩車道境界や中央分離帯などにおいて歩行者と車両の接触や車両同士の接触を防止するための境界ブロック、駐車場の車止め、住宅同士や住宅と歩道との境界に設けられるブロック塀など、様々な場面でコンクリート構造物が使用されている。
【0003】
これらコンクリート構造物について、従来、その表面に何らかの機能を持たせようという試みがなされてきた。これらの試みの中でも、反射性(特に、再帰反射性)、蛍光性、蓄光性など、視認性向上のための機能を付与する試みが多くなされてきた。
【0004】
これは、例えば、特に夜間やトンネル内において、コンクリート構造物の視認性が損なわれると、境界ブロックや車止め位置が不明確となり、車両が接触するなどして、却って事故を誘発する危険性もあるため、視認性向上への強い要請があるからである。
【0005】
例えば、コンクリート構造物の視認性を付与するための方法として、コンクリート内に、ガラスビーズなどの再帰反射性粒子を埋没させ、その一部を露出させる方法がある(例えば、特許文献1〜3参照)。
【0006】
しかし、これらの方法では、反射層や色素層といった複数の層を導入することが困難である。すなわち、これらの層は、その機能を発揮させるために、ガラスビーズなどの再帰反射性粒子よりも下層に形成しなければならないが、コンクリート構造物内部にこれらの層を形成する適切な方法がないからである。仮に何らかの方法で導入し得たとしても、不透明なコンクリート内では色がコンクリートの色によってくすんで汚れ、鮮明な色を出すことは難しい。さらに再帰反射性粒子が埋没しているため、その埋没度合により再帰反射し得る入射角が限定されたり、完全にガラスビーズが埋まってしまったりして、再帰反射効率が低い。
【0007】
なお、車両走行用空間に対面する側面の部分に、それ自身の少なくとも表面に多数の蛍光性粒状物もしくは反射性粒状物が埋設され、これら粒状物で入射光線を再帰反射しうるようにした突条を縦向きに複数条形成するようにして、再帰反射効率を向上させるようにしたコンクリート製品も知られている(特許文献4参照)。
【0008】
しかし、この技術は、蛍光性粒状物や反射性粒状物がコンクリート表面に埋設されている点では上記特許文献1〜3の技術と共通であり、結局、反射層や色素層といった複数の層を導入することが困難である点は解決されない。
【0009】
以上のような問題点を解消するためには、再帰反射層などの特性を有した部材が、コンクリート構造物本体とは別個の独立した層として存在していなければならない。
【0010】
この点、コンクリート本体に反射板を取り付ける方法も知られており(例えば、特許文献5〜7参照)、その具体的な取り付け方法としては、接着剤による貼り付けが提案されている。
【0011】
しかし、コンクリート構造物は屋外で使用されるものが多く、接着剤による貼り付けだけでは、気温や天候の著しい変化に長期間耐え得るものではない。なお、上述の特許文献5の段落[0007]には、コンクリートブロックへの反射板の取り付け方法として、コンクリートブロックの製造時にコンクリートブロックと組み合わせるという方法も開示されているが、その具体的手法は不明である。
【0012】
さらに、ブロック本体の側面に線状の凹溝を設け、これに線状の反射材を取付けるか、または複数の反射チップを糊付けなどにより凹溝内に複数配置するという方法も知られている(特許文献8参照)。
【0013】
しかし、複数の反射チップを配置する場合には、コンクリート本体と反射チップ間の接合が十分でないという上述の問題があるし、何よりも後付けであるために手間と時間がかかる。また、線状の反射材を取付ける場合、コンクリートブロックを成型するにあたり、型枠内に予め線状に形成された線状反射材を取付け、前記コンクリートブロックの車道に面する側面で、天部からやや下方の上部に、前記線状反射材を前記コンクリート製のブロック本体に一方の端面から他方の端面に向けて埋設して同時成型する方法も開示されているが、型枠内に線状反射材を取付ける具体的な方法が明らかでない。
【0014】
さらに、コンクリートの打設の際に反射部材を一体的に取り付ける工夫を施す従来技術も知られている。
【0015】
例えば、ブロック本体の側面部または上面部に長手方向に連続する線状反射面を有する反射用部材が該反射面が前記ブロック本体表面と面一となるように一体に埋設されていることを特徴とするコンクリート境界ブロックが知られている(特許文献9,10参照)。
【0016】
しかし、型枠に反射用部材を取り付ける際、型枠の寸法と反射用部材の寸法とを正確に一致させない場合には、反射用部材を型枠内の適切な位置に配置することが困難であり、生コンクリートを流し込む際の荷重によって反射用部材の位置がずれてしまう可能性もあるので、その位置管理が煩雑である。他方、型枠の寸法と反射用部材の寸法とを正確に一致させる場合は、型枠に反射用部材を取り付ける際、線状部材や枠材を型枠に接した状態で挿入することになるので、線状部材や枠材と型枠が磨耗する可能性があるし、コンクリート構造物の寸法(型枠の寸法)に応じて反射用部材の寸法を適宜設定しなければならないという問題もある。また、この技術では、反射用部材の構成要素として、線状反射面の位置を固定するための枠材が必須に用いられているが、この枠材は反射性に全く寄与しない部材であるにもかかわらず、製造される全てのブロックに埋設されることとなるので、この枠材の分だけ、コスト面でも不利である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】特許第2821945号公報
【特許文献2】特開平11−10613号公報
【特許文献3】特開2001−162613号公報
【特許文献4】特開平8−134854号公報
【特許文献5】特開2000−54308号公報
【特許文献6】特開2003−221803号公報
【特許文献7】実用新案登録第3110979号公報
【特許文献8】特開2006−200235号公報
【特許文献9】実用新案登録第3018905号公報
【特許文献10】特開平8−326021号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
そこで、本発明は、再帰反射性などの特性を発揮する部材が、コンクリート構造物本体に埋没せずに、コンクリート構造物本体とは別個の層として形成されるものであり、コンクリート構造物本体と強固に接合し、容易に剥離されることのないコンクリート構造物とその製造方法および転写シートを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本願発明者は、上記目的を達成するために鋭意検討を行った。
【0020】
その際、まず、所望の機能を発揮する物質(ガラスビーズなど)をコンクリート構造物本体に埋没させるのではなく、コンクリート構造物本体とは別個の部材として一体化する方法を検討した。
【0021】
そして、コンクリート構造物本体と強固に接合し、容易に剥離されることのないようにするためには、被接合部材とコンクリート構造物本体とを接合する接合部材と、コンクリート構造物本体との界面において、接合部材の一部とコンクリートの一部が混在している構造とすればよいことが分かった。
【0022】
本発明は、上記知見に基づき完成されるに至った。
【0023】
すなわち、コンクリート構造物本体に接合すべき被接合部材がその裏面側で接合部材を介してコンクリート構造物本体と接合一体化しており、前記接合部材と前記コンクリート構造物本体との界面では前記接合部材の一部とコンクリートの一部が混在している、ことを特徴とする。
【0024】
本発明にかかるコンクリート構造物の製造方法は、コンクリート構造物本体に接合すべき被接合部材の裏面側にアンカー材を接合し、金型に着脱可能に固定された金型用コマに前記被接合部材の表面側を仮接着し、生コンクリートを打設してコンクリートの一部を浸入させることにより、コンクリート構造物本体にアンカー材を介して前記被接合部材を接合一体化する、ことを特徴とするか、または、コンクリート構造物本体に接合すべき被接合部材の表面側を、金型に着脱可能に固定された金型用コマに仮接着し、前記被接合部材の裏面側に接着剤を塗布し、前記接着剤の硬化前に生コンクリートを打設して接着剤の一部とコンクリートの一部が混ざることにより、コンクリート構造物本体に接着用樹脂層を介して前記被接合部材を接合一体化する、ことを特徴とする。
【0025】
本発明にかかるコンクリート構造物用転写シートは、コンクリート構造物本体に転写される被転写層と、前記被転写層を支持する支持層と、前記被転写層の前記支持層とは反対側の面に接合されているとともに前記被転写層との接合面とは反対側の面でコンクリート構造物本体と接合するアンカー材層と、を備える、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0026】
本発明のコンクリート構造物は、接合部材と前記コンクリート構造物本体との界面で接合部材の一部とコンクリートの一部が混在していることにより、被接合部材がコンクリート構造物と強固に接合し、容易に剥離されることがない。
【0027】
本発明のコンクリート構造物の製造方法によれば、上述の優れた効果を有するコンクリート構造物を容易に得ることができる。また、コンクリート構造物本体に接合すべき被接合部材の表面側を、金型に着脱可能に固定された金型用コマに仮接着するので、金型は従来公知のものをそのまま適用でき、金型の設計変更に伴うコストや手間の増大がない。
【0028】
本発明のコンクリート構造物用シートは、コンクリート構造物本体と接合するアンカー材層を備えているので、上述の優れた効果を有するコンクリート構造物を得るための転写シートとして有用である。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の転写シートの一実施形態を示す拡大断面図である。
【図2】図1の転写シートにおいて、切抜きおよびリタックシートの貼り付けを行った場合の拡大断面図である。
【図3】図1もしくは図2(または図14もしくは図15)の転写シートを示す平面図である。
【図4】本発明のコンクリート構造物の一実施形態を示す断面図である。
【図5】図4のコンクリート構造物の一部を拡大した拡大断面図である。
【図6】図4のコンクリート構造物の一部を拡大した拡大断面図である。
【図7】本発明のコンクリート構造物の一実施形態を示す斜視図である。
【図8】本発明のコンクリート構造物の製造方法の一実施形態における打設時の状態を示す断面図である。
【図9】図8に示す状態の一部を拡大した拡大断面図である。
【図10】図8に示す状態の一部を拡大した拡大断面図である。
【図11】本発明のコンクリート構造物の製造方法の一実施形態における脱型後の状態を示す断面図である。
【図12】図11に示す状態の一部を拡大した拡大断面図である。
【図13】図11に示す状態の一部を拡大した拡大断面図である。
【図14】第2の実施形態に適用される転写シートの一実施形態を示す拡大断面図である。
【図15】図14の転写シートにおいて、切抜きおよびリタックシートの貼り付けを行った場合の拡大断面図である。
【図16】本発明のコンクリート構造物の一実施形態を示す断面図である。
【図17】図16のコンクリート構造物の一部を拡大した拡大断面図である。
【図18】図16のコンクリート構造物の一部を拡大した拡大断面図である。
【図19】本発明のコンクリート構造物の製造方法の一実施形態における打設時の状態を示す拡大断面図である。
【図20】本発明のコンクリート構造物の製造方法の一実施形態における打設時の状態を示す拡大断面図である。
【図21】本発明のコンクリート構造物の製造方法の一実施形態における脱型後の状態を示す拡大断面図である。
【図22】本発明のコンクリート構造物の製造方法の一実施形態における脱型後の状態を示す拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
<第1の実施形態>
以下、図1〜13を用いて、本発明にかかるコンクリート構造物およびその製造方法ならびに転写シートについて、第1の実施形態を詳しく説明するが、本発明の範囲はこれらの説明に拘束されることはなく、以下の例示以外についても、本発明の趣旨を損なわない範囲で適宜変更実施し得る。
【0031】
この第1の実施形態では、アンカー材が用いられている。
【0032】
以下では、特に断らない限り、第2の実施形態に関する説明に至るまで、上述の第1の実施形態にかかるコンクリート構造物およびその製造方法ならびに転写シートを、単に、本発明にかかるコンクリート構造物およびその製造方法ならびに転写シートと称する。
【0033】
以下では、まず、本発明のコンクリート構造物を得るために好適に使用することのできる本発明の転写シートについて説明するが、本発明のコンクリート構造物は、これを用いて得られるものに限定されない。
【0034】
〔転写シート〕
以下では、図1〜3を用いて、有色の再帰反射性を発揮することにより、視認効果と装飾効果や情報表示機能とを兼ね備えたコンクリート構造物を得るための転写シートを例に説明する。
【0035】
図1において、転写シート10は、支持層11、被転写層12、可撓性接着用樹脂層13、アンカー材層14からなる。支持層11は、第1の支持層11aと第2の支持層11bとからなり、被転写層12は、透明ビーズ層12aと色素を含有する反射層12bとからなる。
【0036】
転写シート10は、コンクリート構造物本体に転写された際、アンカー材層14がコンクリート構造物本体と接合して最下層となり、支持層11側が上層となる。
【0037】
透明ビーズ層12aにおける透明ビーズの材料としては、再帰反射性が発揮される透明性のある材料であればよく、例えば、ガラスが使用できる。市販のガラスビーズとしては、ユニチカ社製の「UB−35M」などが好ましく挙げられる。硬質の合成樹脂や透明セラミック、天然鉱物なども使用可能である。透明ビーズの形状は、理想的には球形のものが良好な再帰反射性を発揮できる。球形の透明ビーズは、任意の方向から入射した光が球内底面に焦点を結ぶように屈折し、さらに球内底面で鏡面反射した光が再び屈折して入射した方向と平行な方向に出ていく。実用的には、工業的に得られる程度の球形度を有していれば十分な再帰反射性が発揮できる。球形以外の楕円体や長円体、多面体に近い形状のものでも、球形に比べると劣るが、ある程度の再帰反射性を示すことができる。
【0038】
透明ビーズは、入射した光が内部で屈折し、透明ビーズ底面にその焦点を結び、元来た方向へ帰って行く再帰反射現象を起こすが、一部透明ビーズ外へ抜け出て行く。しかし、この透明ビーズ外へ抜け出た光の一部も、その近辺に、反射層12bに含有される反射材が存在するため、反射材で再度反射する。したがって、透明ビーズへ入射した光は、ほぼ全て、元来た方向へ戻る再帰反射光となる。さらに、透明ビーズの焦点付近には、反射層12bに含有される色素があるため、再帰反射光はその近辺の色素の色を拾いながら出て行くので、再帰反射光に色を付けることができる。
【0039】
透明ビーズの粒径は、散布による層形成の容易さや反射層12bへの付着性、再帰反射機能などの条件を考慮して設定され、例えば、1μm〜2000μmの範囲に設定できるが、好ましくは40μm〜120μmがよく、より好ましくは45μm〜75μmがよい。
【0040】
透明ビーズの屈折率によって、入射光および反射光の屈折作用が変わる。再帰反射性を良好にするには、屈折率1.5〜2.5のものが好ましく、1.8〜2.2のものがより好ましい。さらに好ましくは、屈折率1.92±0.02である。
【0041】
透明ビーズは透明性に優れたものが好ましい。ただし、再帰反射性を損なわない程度に薄く着色された半透明のビーズも使用可能であり、この明細書において、透明ビーズとは、狭義の透明ビーズだけでなく半透明ビーズをも含む意味で使用している。
【0042】
この実施形態においては、基本的には反射層12bでの反射を前提としているが、透明ビーズとして、表面の一部に反射膜が形成された自反射性を有する透明ビーズを使用してもよい。自反射性透明ビーズとしては、通常、透明ビーズの半球部分程度に反射膜を設けておく。透明ビーズに入射した光が、透明ビーズ底面に焦点を結び、その部分にある反射膜で反射して、良好な再帰反射性が発揮される。
【0043】
自反射性透明ビーズに形成される反射膜として、アルミニウム、銅、真鍮などの金属による蒸着膜が挙げられる。例えば、アルミニウム蒸着膜はシルバー色の反射光が得られ、銅蒸着膜は赤色、真鍮蒸着膜は黄色の反射光が得られる。
【0044】
このように、透明ビーズ層12aの上から前記金属などを真空蒸着することにより透明ビーズの半球部分を金属の蒸着膜で覆った自反射性透明ビーズを用いる場合には、反射層12bに代えて透明樹脂層を組み合わせて被転写層を構成するようにしてもよい。
【0045】
反射層12bの色素による着色と混色されると、少しくすみのある反射光になる。反射膜は、ある程度の光透過性を有するものでもよい。
【0046】
透明ビーズとして、材料や特性の異なる複数種類の透明ビーズを混合して使用すれば、単独種類の透明ビーズでは得られない再帰反射特性や表面性状を得ることもできる。
【0047】
次に、色素を含有する反射層12bとしては、例えば、反射材、色素、樹脂材料などを材料とする塗膜を採用することができる。
【0048】
反射材としては、微細な鱗片状、粒子状、繊維状などの形態のものが挙げられ、その粒径は、例えば、1.0〜50μmに設定できる。微細な反射材は、反射層12b中に均一に分散させることができ、反射機能が良好に発揮できる。
【0049】
反射材の具体的材料として、マイカが好ましく挙げられる。マイカは、雲母を原料として薄い鱗片状に加工されたものであり、その反射光は一般的に白色である。マイカ表面に、酸化チタンの被覆をしておくと、反射性能が高まる。反射材として、アルミニウムなどの表面反射性を有する金属、無機材料、鉱物なども使用できる。反射材が、着色されたものであれば、反射機能に加えて着色機能も発揮することができる。例えば、アルミニウム粒子は、シルバー色の反射光を出す。着色アルミニウム粒子は、その着色された色の反射光を出す。ノンリーフィングタイプのアルミニウム粒子は、表面酸化が起こり難く、良好な反射性を持続でき、使用に適したものとなる。
【0050】
色素を含有させることで、反射層12bを通過する光に色をつけて、色光からなる再帰反射光を作ることができる。その具体例として、通常の塗料用や染色用の着色材料が使用でき、各種の顔料あるいは染料が使用できる。プラスチック成形用の着色材料も使用できる。色素は、反射層12b中に分散するものであってもよいし、溶解してしまうものであってもよい。粒子状のものや鱗片状のもの繊維状のものなどが使用できる。色素の粒径を、0.01〜1μmの範囲に設定できる。一般的な市販の色素は、粒径1μm未満である。
【0051】
樹脂材料としては、熱可塑性樹脂および熱硬化性樹脂の何れも使用できる。湿気硬化型や紫外線硬化型の樹脂も使用できる。水系樹脂、有機溶剤系樹脂、それらの混合溶媒系樹脂も何れもが使用できる。具体的には、アクリル系、ウレタン系、エポキシ系、エチレン酢酸ビニル系、ポバール系、シリコーン系、ポリエステル系、ナイロン系、オレフィン系、天然ゴム系、アルキッド系、塩化ビニル系などの樹脂が挙げられる。これらの樹脂の共重合体も使用できる。一般的な接着性樹脂材料が使用できる。また、市販の接着用樹脂がそのまま使用できる場合もある。
【0052】
熱硬化性樹脂の場合、熱硬化温度が透明ビーズの機能を損なわない程度のものが好ましい。熱硬化温度が高過ぎると、加熱硬化処理において、透明ビーズが変形したり溶融したりして、再帰反射特性が損なわれる。具体的な熱硬化温度として、550℃以下が採用できる。
【0053】
樹脂材料が透明性に優れたものであれば、透明ビーズ層12aを通過して反射層12bに到達した光を、反射層12b内の反射材や色素で反射させて、色光を作り出すのに有効である。
【0054】
樹脂材料が不透明材料であれば、透明ビーズ層12aに入射した光は全て、透明ビーズの球内底面あるいは透明ビーズと反射層12bとの境界面で反射するか反射層12bで吸収される。この場合は、反射層12b内での反射材と色素とによる色光の生成は果たせない。
【0055】
反射層12bの材料としては、上記した以外にも、必要に応じて、その他の各種配合成分が採用できる。例えば、シランカップリング剤を配合しておくと、ガラスビーズと反射層12bとの接合力を高めることができる。色素の分散を助ける分散剤、反射層12bのひび割れを防ぐひび割れ防止剤、反射層12bの粘度を適度に調整する粘度調整剤などや、硬化剤、硬化促進剤、硬化遅延剤、溶剤、消泡剤、架橋剤、粘性付与剤、安定剤などが使用できる。
【0056】
透明ビーズ層12aの上には、色素を含有する反射層12bが形成されている。ただし、図1に見るように、反射層12bは、透明ビーズ層12aの全面を被覆しているのではなく、一部、被覆していない箇所がある。これは、後述するように、色素を含有する反射層12bを、所望の図形や文字を構成するように形成しているためである。装飾効果や情報表示機能を付与する必要がないのであれば、このような工夫は不要である。
【0057】
転写シート10において、被転写層12は支持層11によって支持されている。
【0058】
支持層11は、被転写層12を支持し得るものであればよく、図1〜3に示す例では、第1の支持層11aと第2の支持層11bの2層からなっている。第1の支持層11aは、例えば、ポリエステル系、アクリル系、ナイロン系、ポリイミド系、塩化ビニル系などからなるシートであり、第2の支持層11bは、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン系からなるシートである。
【0059】
第1の支持層11aの厚みは、被転写層12を支持するに足る厚みであればよく、例えば、50〜150μmが好ましい。
【0060】
第2の支持層11bの厚みは、透明ビーズ層12aにおける透明ビーズの一部を埋没させ仮保持させた状態とするため、透明ビーズの粒径よりも小さく、かつ、透明ビーズを仮保持するに足る厚みを有することが好ましい。したがって、第2の支持層11bの厚みは、透明ビーズの粒径にもよるが、例えば、20〜50μmが好ましい。
【0061】
第2の支持層11bに透明ビーズ層12aの各透明ビーズが埋没しているが、第2の支持層11bは接着性を有さず、各透明ビーズは仮保持された状態となっている。これにより、転写シート10をコンクリート構造物本体に転写した後、この第2の支持層11bを容易に剥離することができ、透明ビーズ層12aを露出させて、被転写層12の機能を良好に発揮させることができる。
【0062】
本発明の転写シート10は、図1に示すように、被転写層12とアンカー材層14との接合が可撓性接着用樹脂層13によりなされているものであることが好ましい。
【0063】
可撓性接着用樹脂層13としては、例えば、可撓性ウレタン樹脂、可撓性エポキシ樹脂からなる接着用樹脂層が好ましく挙げられ、可撓性エポキシ樹脂からなる接着用樹脂層がアンカー材を接着させるにあたり、特に好ましい。可撓性エポキシ樹脂の市販品としては、コニシ社製のボンドEシリーズが好ましく挙げられる。
【0064】
アンカー材層14は、アンカー効果、すなわち、アンカー材層14の凹凸に生コンクリートが入り込んで硬化することで優れた一体接合効果を発揮することにより、被転写層12とコンクリート構造物本体とを強固に結合させる層であり、アンカー効果を十分に発現させるものとして、コンクリート構造物本体との接合面に突起構造を有するものであることが好ましい。優れたアンカー効果を発揮させるので、気温や天候などの影響を受けやすい状況であっても優れた耐久性を有するコンクリート構造物を得させるものとなる。
【0065】
生コンクリート成分のセメントペーストがアンカー材と強固に接着するように、また、接着した後も容易に引き千切れないように、その形状は、例えば、面ファスナーのオス型様の突起構造、すなわち、面ファスナーのオス型に採用されるような鉤針型やキノコ型などの形状をしたものが有利である。接合部材の一部とコンクリートの一部が混在している状態は、オス型様の突起構造がコンクリート構造物本体に食い込むことにより実現されることになる。
【0066】
アンカー材層14の素材も、特に限定されないが、鉤針型やキノコ型形状などの突起構造1本1本が、両端を引っ張った時、伸びても良いが簡単にプツンと切れるような材質ではないことが望ましく、したがって、例えば、ポリエステル系繊維、ナイロン系繊維、ポリオレフィン系繊維、塩化ビニル系繊維、ポリウレタン系繊維、アクリル系繊維、アラミド繊維、炭素繊維、無機繊維などの強度の高い繊維が好ましく、金属製のものであってもよい。
【0067】
アンカー材層14の厚みは、例えば、1.0〜20.0mmのものが好ましく、2.0〜10.0mmのものがより好ましい。2.0mm以上であれば、その内部に生コンクリートが十分に浸入するので優れたアンカー効果が発揮され、また、10.0mm以下であれば、その内部に接着力を低下させる空気層が多く存在してしまうこともない。
【0068】
また、アンカー材の被転写層12側(コンクリート本体と接合する面の反対側)の表面は可撓性接着用樹脂層13により被転写層12と固定されるため、凹凸のない密な表面状態の方が接着性が良い。
【0069】
アンカー材の表面に比べ、裏面はアンカーの突起が1本1本出ている構造のため、空気を完全に無くすことが難しく、コンクリートとの間に空気が僅かに存在することもある。
【0070】
空気が存在すると、転写シート10をコンクリート構造物本体に転写した時、その下に空気があるため、転写シート10が破れやすくなる。
【0071】
従って、アンカー材層14の厚みは10.0mm以下が好ましいのである。
【0072】
転写シート10は、必要に応じて、図2に示すように、支持層11、被転写層12、可撓性接着用樹脂層13およびアンカー材層14が一体的に切抜かれ、各切抜き片の支持層11にリタックシート15が貼付されて、各切抜き片の相対的位置関係を固定されたものであってもよい。このような転写シート10を用いれば、コンクリート構造物本体に、所望の形状を有した転写層を形成することができ、その切抜き形状により、コンクリート構造物に切り文字や図柄のみを象嵌のように埋め込み、装飾効果や情報表示機能を与えることができる。ただし、転写シート10における被転写層12が、スクリーン印刷のように版を介して反射材層を印刷することで図柄や文字が形成されたものである場合、被転写層12に印刷された図柄や文字により装飾効果や情報表示機能を付与することができるので、切り抜いたりリタックシートを貼着したりする工程は通常不要である。
【0073】
リタックシート15としては、各切抜き片の相対的位置関係を固定でき、かつ、容易に剥離できる弱接着性のものであれば、特に限定されない。
【0074】
図3は、図1や図2に示す転写シート10全体の概観を示す平面図である。この図3では、ABCの文字が左右反転した文字情報101,102,103が形成されていることが分かる。
【0075】
この文字情報101,102,103は、図1に示す転写シート10では色素を有する反射層12bや色素含有層の印刷により形成されるものであり、図2に示す転写シート10では、リタックシート15との接合面側から順に、支持層11、被転写層12、可撓性接着用樹脂層13、アンカー材層14で構成されてなる各切抜き片の形状に基づき形成されるものである。
【0076】
上記構造を備えた転写シート10においては、アンカー材層14側でコンクリート構造物本体と接合一体化するので、転写後は、支持層11が最上層となるが、転写後は、支持層11はその効用を終えて剥離されることとなるので、最終的には、被転写層12が最上層となる。より詳しくは、透明ビーズ層12aが最上層で露出し、その下層に反射層12bが存在することとなる。
【0077】
そして、透明ビーズ層12aに入射した光は、透明ビーズにより屈折して透明ビーズ底面に焦点を結び反射するが、透明ビーズ底面にある反射層12bでより反射し、これらが合わさって再び透明ビーズ層12aを通って、再帰反射、すなわち、入射方向と同一の方向に反射される。このとき、反射層12bが色素を含有しているので、反射層12bで反射された再帰反射光は有色となる。図示しないが、反射層12bと透明ビーズ層12aとの間に色素含有層を設けるようにするならば、反射層12bに色素を含有せずとも同様の結果が得られる。
【0078】
本発明にかかる転写シートは、上記実施形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜変更実施してもよい。
【0079】
例えば、上述した図1に示す転写シート10は、支持層11(第1の支持層11aおよび第2の支持層11b)、被転写層12(透明ビーズ層12aおよび色素を含有する反射層12b)、可撓性接着用樹脂層13、アンカー材層14からなるものであり、上述した図2に示す転写シート10は、支持層11、被転写層12、可撓性接着用樹脂層13およびアンカー材層14が一体的に切抜かれ、各切抜き片の支持層11にリタックシート15が貼付されてなるものであるが、これらのうち、支持層11および被転写層12に相当する部分を、既存の反射シート(単純な反射をなし得るものだけでなく、再帰反射をなし得るものであっても良い)に置き換えることもできる。
【0080】
例えば、既存の反射シートの裏面側に可撓性接着用樹脂層13を介してアンカー材層14が接合されたものも、本発明の転写シートとすることができる。
【0081】
ただし、既存の反射シートは、インクジェットプリントなどで色を付して文字や図形が形成されているものはあるものの、反射は全面で起こるようになっており、特定の文字や図形のみを反射させることはできない。したがって、反射光によって特定の文字や図形を認識することは困難である。この点では、色素を含有する反射層12bを所望の図形や文字を構成するように形成することで特定の文字や図形のみを再帰反射させるようにした上述の実施形態のほうが有利である。
【0082】
しかし、この場合でも、既存の反射シートの裏面側に可撓性接着用樹脂層13を介してアンカー材層14が接合され、かつ、これらが一体的に所望の文字や図形や切り抜かれているとともに、上記図2に示すごとく、リタックシートで位置決めされているものであれば、所望の文字や図形のみを反射させることのできるものとなる。
【0083】
また、図1では、透明ビーズ層12aと色素を含有する反射層12bとからなり有色の再帰反射機能を有する2層構造の被転写層12について説明したが、被転写層はこれに限定されない。上述のように、透明ビーズ層12aと反射層12bの間に色素含有層を設けた3層構造のものであってもよいし、自反射透明ビーズを用いて反射層を省略したり、反射層内に透明ビーズを分散させたりした単層構造のものであってもよい。
【0084】
さらに言えば、被転写層は、コンクリート構造物本体に転写されて、コンクリート構造物に種々の特性を発現させ得るものであればよい。例えば、単純な反射機能を付与するのであれば、上記透明ビーズ層12aを用いなければよいし、単に色付けするだけであれば反射層に代えて色素含有層のみを用いればよい。また、再帰反射性などの反射性以外にも、例えば、発光性その他のあらゆる特性を有するものが挙げられる。この場合、求める特性に応じて、蛍光材料、蓄光材料などの各種材料を含有する層を採用すればよい。
【0085】
さらに、蛍光性や蓄光性と上述の反射機能との併用も可能であり、例えば、上述した反射材層12bに蛍光材料や蓄光材料を混合するようにすれば、反射と蛍光や蓄光の機能を兼ね備えた転写シートが作製できるので、コンクリート構造物により付加価値を付けた情報表示機能や装飾機能を発揮させることもできる。
【0086】
蓄光材料としては、特に限定するわけではないが、例えば、CaS:Bi(紫青色発光)、CaSrS:Bi(青色発光)、ZnS:Cu(緑色発光)、ZnCdS:Cu(黄色〜橙色発光)などの硫化物蛍光材料や、MAl2O4(Mは、カルシウム、ストロンチウムおよびバリウムからなる群から選ばれる1つ以上の金属元素)に賦活剤としてユーロピウムを添加し、さらに希土類元素を共賦活剤として添加した蓄光性蛍光材料や、Sr4Al14O25:Eu,Dy蓄光性蛍光材料などを例示することができる。
【0087】
また、図1,2に示すような2層構造であれば、第1の支持層11aにより十分な平滑性を得つつ、第2の支持層11bにより透明ビーズを仮保持することができるが、支持層11を1層とすることも可能である。特に、上述のごとく、透明ビーズを用いない実施形態においては、これを仮保持する支持層11bを設ける必要性はないといえる。
【0088】
〔転写シートの製造方法〕
上述する構造を有する転写シート10を製造する方法としては、例えば、以下の方法が採用できる。
【0089】
まず、支持層11を準備するが、この支持層11は、上述のように2層構造であることが好ましく、具体的には、第1の支持層11aの上に第2の支持層11bを積層形成する。
【0090】
つぎに、第2の支持層11bに透明ビーズ層12aとなる各透明ビーズを埋没させるのであるが、この埋没は、例えば、第2の支持層11bに加温し、流動性を帯びる程度の状態で透明ビーズを散布して、その落下衝撃や自重により行うことができ、必要に応じて押圧するようにしてもよい。第2の支持層11bに透明ビーズ層12aの各透明ビーズが埋没しているが、第2の支持層11bは接着性を有さず、各透明ビーズは仮保持された状態となっている。
【0091】
透明ビーズ層12aを形成した後、反射層12bを形成する。この反射層12bは、上述した反射材、色素、樹脂材料などを材料とする塗料を塗装または印刷し、乾燥することで形成することができる。このとき、図1では、色素を含有する反射層12bを、所望の図形や文字を構成するように形成しているが、この図形や文字の形成は、通常の印刷手段(例えば、スクリーン印刷、グラビア印刷、オフセット印刷、インクジェット印刷、コーティングなど)によりなし得るものであり、したがって、複雑な図形や文字を形成することも勿論可能である。装飾効果や情報表示機能を付与する必要がないのであれば、このような工夫は不要である。
【0092】
なお、被転写層12は、コンクリート構造物本体に転写された際、支持層11側がコンクリート構造物本体の上層となって、印刷時の図形や文字とは左右反転された状態となることに留意する。したがって、印刷は、最終的に表示したい文字や図形とは左右反転させた状態で行う必要がある。
【0093】
被転写層12の支持層11とは反対側の面にはアンカー材層14が接合される。
【0094】
図1に示す転写シート10を得る場合、被転写層12とアンカー材層14との接合を可撓性接着用樹脂層13により行う。
【0095】
可撓性接着用樹脂層13の形成は、反射層12bの上に、上で例示したような可撓性接着剤を従来公知の方法で塗布すればよい。
【0096】
次に、可撓性接着用樹脂層13の上にアンカー材層14を形成するが、このとき、可撓性接着用樹脂層13の可使時間内にアンカー材を張り合わせるようにする。可使時間を超えると可撓性接着用樹脂層13とアンカー材層14との接着が不充分となってしまうおそれがある。
【0097】
その後、必要に応じて、圧着を行い、さらに加熱を行うなどして、可撓性接着用樹脂層13を硬化させる。
【0098】
転写シート10の製造においては、必要に応じて、図2に示すように、支持層11、被転写層12、可撓性接着用樹脂層13およびアンカー材層14を一体的に切抜き、各切抜き片の支持層11にリタックシート15を貼付して、各切抜き片の相対的位置関係を固定するようにしてもよい。
【0099】
上記切抜きは、例えば、色素を含有する反射層12bで印刷した図形や文字に沿って、はさみやカッターナイフなどにより手作業で行ってもよいが、レーザーカッター、超高圧水カッターなどを用いて機械的に行うこともできる。レーザーカッターや超高圧水カッターなどを用いる場合、コンピューターで制御することができるので、色素を含有する反射層12bで図形や文字を印刷せずに、反射層12bを転写シート10の全面に形成しておいても、複雑な文字や図形を有した切抜き片を得ることができる。
【0100】
なお、「転写シート」の項でも説明したように、スクリーン印刷のように版を介して反射層12bを印刷して図柄や文字を形成し、その上から可撓性接着樹脂層13を塗布してアンカー材14を接着した転写シート10は、必ずしも図柄、文字部分を切り取る必要は無い。図柄、文字部分以外には反射層12bが無いために透明ビーズ層12a底面でのわずかな反射効果しか発現されず、他方で、反射層12bを印刷して形成された図柄、文字部分では反射層12bにおいて実用的な反射効果が発現されることになるので、図柄、文字部分を切り取らなくても、反射層12bを印刷して形成した図柄、文字部分のみが明確に視認されるからである。
【0101】
なお、「転写シート」の項末尾において詳述した、既存の反射シートを用いた転写シートを得る場合には、上記転写シートの製造方法において、支持層11および被転写層12に相当する部分を、既存の反射シートに置き換えて実施すればよい。
【0102】
すなわち、既存の反射シートの裏面側に、上記実施形態と同様にして、可撓性接着用樹脂層13を形成し、その上に、アンカー材層14を形成する。その後、必要に応じて、切抜きおよびリタックシートの貼り付けを行うこともできる。
【0103】
また、被転写層を様々に変更して実施できることも、「転写シート」の項末尾において詳述したとおりである。
【0104】
〔コンクリート構造物〕
本発明のコンクリート構造物は、コンクリート構造物本体に接合すべき被接合部材がその裏面側でアンカー材を介してコンクリート構造物本体と接合一体化しており、接合部材とコンクリート構造物本体との界面では接合部材の一部とコンクリートの一部が混在しているものであり、「転写シート」の項で説明した転写シート、特に転写シート10を用いることで容易に得ることができる。
【0105】
この場合、コンクリート構造物における被接合部材は、図4〜6に示すように、被転写層12ということになる。
【0106】
この被接合部材(被転写層12)(以下、単に「被接合部材」という)は、図7に示すように「ABC」という文字情報101,102,103が形成されている。この文字情報101,102,103は、図1に示す転写シート10を用いた場合には、色素を含有する反射層12bや色素含有層の印刷の際に形成されるものであり、図2に示す転写シート10を用いた場合は、支持層11、被転写層12、可撓性接着用樹脂層13およびアンカー材層14が一体的に切抜かれてなる切抜き片の切抜き形状に基づき形成されるものである。いずれの転写シート10においても、その裏面側で、アンカー材層14を介して、コンクリート構造物本体20との一体接合を果たしている。
【0107】
転写シート10の説明において述べたように、前記アンカー材がコンクリート構造物本体との接合面に突起構造を有するものであると、非常に強固な接合ができる。
【0108】
具体的には、生コンクリート成分のセメントペーストがアンカー材と強固に接着するように、また、接着した後も容易に引き千切れないように、その形状は、例えば、面ファスナーのオス型様の突起構造、すなわち、面ファスナーのオス型に採用されるような鉤針型やキノコ型などの形状をしたものが有利である。
【0109】
アンカー材層14の素材も、上述したとおり、鉤針型やキノコ型形状などの突起構造1本1本が、両端を引っ張った時、伸びても良いが簡単にプツンと切れるような材質ではないことが望ましく、したがって、例えば、ポリエステル系繊維、ナイロン系繊維、ポリオレフィン系繊維、塩化ビニル系繊維、ポリウレタン系繊維、アクリル系繊維、アラミド繊維、炭素繊維、無機繊維などの強度の高い繊維が好ましく、金属製のものであってもよい。
【0110】
被接合部材とアンカー材層14とは可撓性接着用樹脂層13により接着されている。
【0111】
また、後述するが、図7において、凹部21は、打設時において金型用コマが占めていた空間に起因するものである。
【0112】
既存のコンクリート構造物本体20に直接被接合部材を接合した場合には、このような凹部21は形成されず、通常、被接合部材はコンクリート構造物本体20表面よりも突出した状態となってしまい、外部からの衝撃を受けやすく、特に歩車道境界ブロックなどの用途においてタイヤとの接触などの問題が考えられるが、図7に示すように、凹部21が形成されていると、この問題が軽減される。
【0113】
なお、本発明のコンクリート構造物は、被接合部材とコンクリート構造物本体20がアンカー効果により強固に接合されている点に特徴を有するものであるので、裏面側でアンカー材層14を介してコンクリート構造物本体20と接合一体化しているものであれば、被接合部材の種類は特に限定されないのであり、再帰反射性を有するものに限られないし、印刷技術を用いたものや所望の文字や図形に切り抜かれたものに限られない。
【0114】
例えば、再帰反射性以外に、単純な反射性を有するものや、蛍光性や蓄光性などの発光性その他の特性を有するものであってもよい。さらに上述の反射機能と発光性その他の特性との併用、例えば、上述した反射材層12bに蛍光材料や蓄光材料を混合するようにすれば、反射と蛍光や蓄光の機能を兼ね備えた転写シートが作製できるので、コンクリート構造物により付加価値を付けた情報表示機能や装飾機能を発揮させることもできる。
【0115】
夜間やトンネル内などにおける視認性を考慮する必要がなく、昼間における情報表示機能や装飾機能の付与のみを目的とする場合には、これら反射性や発光性を有さずに、色彩のみで所望の文字や図形が構成されているものであってもよい。
【0116】
さらに、これら視覚情報の付与に限らず、コンクリート構造物本体に何らかの機能を付与するあらゆる場面での適用の可能性がある。
【0117】
形状については、所望の文字や図形に切抜かれたもの以外に、例えば、シート状のものであってもよいし、その他、立体的なものも含め、あらゆる形状のものが含まれる。なお、ここにいうシート状とは、厚みの薄いフィルム状をも含む概念である。
【0118】
本発明のコンクリート構造物は、さらに、コンクリート構造物本体に転写された被接合部材の表面に、撥水性および/または防汚性の薄膜を有するものであっても良い。これにより、排気ガスなどの汚れやゴミの付着を防止することが出来る。
【0119】
〔コンクリート構造物の製造方法〕
本発明のコンクリート構造物の製造方法は、コンクリート構造物本体に接合すべき被接合部材の裏面側にアンカー材を接合し、金型に着脱可能に固定された金型用コマに被接合部材の表面側を仮接着し、生コンクリートを打設することにより、コンクリート構造物本体にアンカー材を介して被接合部材を接合一体化するものであり、「転写シート」の項で説明した転写シート、特に転写シート10を用いることが好ましい。
【0120】
すなわち、転写シート10は、被接合部材を有するとともに、その裏面側にアンカー材層14が接合されているので、上記本発明のコンクリート構造物の製造方法に好適に利用できるのである。この場合、この被接合部材は、図7に示すように「ABC」という文字情報101,102,103を有するものとなる。これらの層構造に関しては、「コンクリート構造物」の項で詳述したとおりである。
【0121】
本発明のコンクリート構造物の製造方法を実施するに当たっては、まず、金型30を準備し、所望の位置に金型用コマ40を取り付ける。図8では、金型30の底面の1箇所に金型用コマ40を設けているが、側面や角に設けてもよいし、複数個所に設けてもよい。
【0122】
金型用コマ40は、金型30の任意の位置に固定することができるので、従来からある金型を、何ら改良することなくそのまま用いることができる。例えば、金型用コマ40がマグネットを備えたものであれば磁力により簡易に固定することができる。また、ねじなどにより固定するようにしてもよい。
【0123】
転写シート10は可撓性を有しているので、金型用コマ40の表面を、曲面としたり凹凸を施したり、あるいはさらに、文字や図形を施したりすることも簡易にでき、これにより、後述する打設の際に、転写シート10に立体形状を付加することができる。金型用コマ40を変更するだけでよいので、その都度、金型30の設計変更を行う場合と比べて、労力やコストが大幅に低減される。
【0124】
次に、金型用コマ40の表面に両面接着シート50を介して上記転写シート10を仮接着する。
【0125】
図9,10に示すように、転写シート10は、支持層11側で金型用コマ40の表面に両面接着シート50を介して仮接着される。図9は図1に示す転写シート10を用いた場合(切抜きなし)であり、図10は図2に示す転写シート10を用いた場合(切抜きあり)である。このとき、本発明の転写シート10は、可撓性を有する接着用樹脂層13を有しているので、金型用コマ40が上記のごとく種々の立体形状を有していても、転写シート10は、その立体形状に柔軟に追従することができる。
【0126】
このように、金型用コマ40は、マグネットやねじを利用して、金型30に着脱可能に固定されているとともに、転写シート10との接着も両面接着シート50による仮接着であるので、何回でも使用することができる。
【0127】
図8や図11では図示を省略しているが、転写シート10は、図3に示すように所望の文字情報101,102,103を有している。図1に示す転写シート10を用いる場合は、切抜きがなされていないので、リタックシート15は不要であり、図9に示すように、支持層11が、両面接着シート50を介して直接金型用コマ40と接合する。図2に示す転写シート10を用いる場合は、転写シート10の支持層11側には、文字情報101,102,103を構成する各切抜き片の相対的位置関係を固定するためのリタックシート15が存在しているので、図10に示すように、リタックシート15が、両面接着シート50を介して金型用コマ40と接合する。
【0128】
図8に示すように、金型30において、転写シート10を接着した部分以外は、離型剤60を塗布しておくことで、コンクリート構造物の脱型をスムーズに行うことができる。
【0129】
その後、コンクリート構造物本体20の原料となる生コンクリートを金型30に流し込み、締め固める。生コンクリートは、セメント、細骨材、粗骨材、水などからなる従来公知のものを用いればよい。このとき、本発明の転写シート10は、可撓性を有する接着用樹脂層13を有しているので、生コンクリートの荷重によって自在な形状となるため、コンクリート構造物が曲面・凹凸面を有していても転写シート10が容易に破壊されることはない。
【0130】
転写シート10とコンクリート構造物本体20との接合は、図9,10に示すように、転写シート10のアンカー材層14によってなされる。アンカー材層14は、アンカー効果、すなわち、アンカー材層14の凹凸に生コンクリートが入り込んで硬化することで優れた一体接合効果を発揮する。なお、転写シート10を得る際、切抜きを行っている場合は、図10に示すように、各切抜き片の間隙にも生コンクリートが入り込むことになる。
【0131】
上記打設後、上部をコテで均し、養生室で加熱処理して養生する。養生は、従来公知の方法によればよく、例えば、スチーム加熱により、60〜90℃で5〜7時間養生する。
【0132】
養生後、脱型すると、図11〜13に示すように、コンクリート構造物本体20に、アンカー材層14のアンカー効果により転写シート10が一体接合され、その上面に両面接着シート50が貼りついた状態となる。
【0133】
この状態から、転写シート10における第2の支持層11bを剥離することで、図4〜7に示すように、目的のコンクリート構造物が得られる。
【0134】
支持層11bは、接着性を有さず、単に透明ビーズを仮保持していたに過ぎないので、容易に剥離することができ、この剥離の際、第1の支持層11a、リタックシート15、両面接着シート50も同時に剥離されることになるので、図4〜7に示すコンクリート構造物では、透明ビーズ層11aが露出した状態となり、かつ、被接合部材が、コンクリート構造物本体20にアンカー材層14を介して一体接合した状態となることが分かる。これにより、コンクリート構造物は、有色の再帰反射性を十分に発現することができる。
【0135】
本発明のコンクリート構造物の製造方法においては、さらに、コンクリート構造物本体に転写された被接合部材の表面に撥水性や防汚性を有する薬剤を塗布し、薄膜を形成させることにより、排気ガスなどの汚れやゴミの付着を防止することが出来る。
【0136】
この場合、撥水性や防汚性付与の方法は、特に限定されず、例えば、撥水性は、フッ素、シリコンやこれらの化合物などの撥水性物質の1種または2種以上を主成分とする塗膜を積層することにより付与することができ、また、防汚性は、表面に親水性を付与したり、汚染物質の分解除去作用を付与したりすることによって発現させることができる。
【0137】
なお、図6では、切抜き片の存在していないところにおいて、コンクリート構造物本体20が突出して存在しているが、この突出部分の高さは極めて僅かであって、光の入射を妨げるといった実際上の問題は、何ら生じない。
【0138】
また、上記コンクリート構造物の製造方法では、金型30に金型用コマ40を取り付けて打設を行うようにしたので、図7に見るように、打設時において金型用コマ40が占めていた空間分だけ、凹部21が生じていることが分かる。このように、金型用コマ40の形状は、得られるコンクリート構造物の表面形状に影響する。したがって、凹部21にごみや汚れが溜まらないように、例えば、断面台形状の金型用コマを用いることが好ましい。これにより、ごみや汚れが雨水などで容易に流され、凹部21に溜まることがない。
【0139】
<第2の実施形態>
以下、図14〜22を用いて、本発明にかかるコンクリート構造物およびその製造方法について、第2の実施形態を詳しく説明するが、本発明の範囲はこれらの説明に拘束されることはなく、以下の例示以外についても、本発明の趣旨を損なわない範囲で適宜変更実施し得る。
【0140】
この第2の実施形態では、アンカー材を用いない。
【0141】
以下では、特に断らない限り、上述の第2の実施形態にかかるコンクリート構造物およびその製造方法を、単に、本発明のコンクリート構造物およびその製造方法と称する。
【0142】
以下では、まず、本発明のコンクリート構造物を得るために好適に使用することのできる転写シートについて説明するが、本発明のコンクリート構造物は、これを用いて得られるものに限定されない。
【0143】
なお、第1の実施形態と重複する説明は割愛し、主として第2の実施形態に特有の構成を説明する。
【0144】
〔転写シート〕
第2の実施形態において好ましく用いられる転写シートは、図14,15に示すとおりであり、可撓性接着用樹脂層およびアンカー材層を有しないこと以外は、上述する第1の実施形態と共通である。
【0145】
すなわち、図14において、転写シート10は、支持層11、被転写層12からなり、必要に応じて、図15に示すように、支持層11および被転写層12が一体的に切抜かれ、各切抜き片の支持層11にリタックシート15が貼付されて、各切抜き片の相対的位置関係を固定されたものであってもよい。被転写層12における色素を含有する反射層12bや色素含有層を印刷することにより、および/または、支持層11および被転写層12が一体的に切り抜かれていることにより、第1の実施形態と同様、図3に示したような文字情報を導入することが採用できる。
【0146】
第1の実施形態と同様に、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜変更実施してもよい。この第2の実施形態に好適に用いられる転写シートは、アンカー材を備えていないので、第1の実施形態において説明した既存の反射シート自体であることができる。
【0147】
〔転写シートの製造方法〕
上述する構造を有する転写シート10を製造する方法も、可撓性接着用樹脂層およびアンカー材層を有しないこと以外は、上述する第1の実施形態と共通であり、その変更実施の可能性も第1の実施形態と共通である。
【0148】
〔コンクリート構造物〕
第2の実施形態のおける本発明のコンクリート構造物は、接合部材がアンカー材ではなく接着剤であること以外は、第1の実施形態と共通であり、その変更実施の可能性も第1の実施形態と共通である。
【0149】
このような本発明のコンクリート構造物は、コンクリート構造物本体に接合すべき被接合部材がその裏面側で接着用樹脂層を介してコンクリート構造物本体と接合一体化しているものであり、第2の実施形態における「転写シート」の項で説明した転写シート、特に転写シート10を用いることで容易に得ることができる。
【0150】
この場合、コンクリート構造物における被接合部材は、図16〜18に示すように、被転写層12ということになる。図17は図14に示す転写シート10を用いた場合(切抜きなし)であり、図18は図15に示す転写シート10を用いた場合(切抜きあり)である。
【0151】
この被接合部材(被転写層12)(以下、単に「被接合部材」という)は、第1の実施形態と同様、図7に示すように「ABC」という文字情報を有している。ただし、その裏面側でのコンクリート構造物本体20との接合は、接着用樹脂層13を介してなされており、接着用樹脂層13とコンクリート構造物本体20との界面では接着用樹脂層13の一部とコンクリートの一部が混在している。
【0152】
このような構造のものを得るためには、後述のように、接着用樹脂層13となる接着剤を塗装し、その硬化前に生コンクリートを打設すればよい。
【0153】
〔コンクリート構造物の製造方法〕
本発明のコンクリート構造物の製造方法は、コンクリート構造物本体に接合すべき被接合部材の表面側を、金型に着脱可能に固定された金型用コマに仮接着し、被接合部材の裏面側に接着剤を塗布し、接着剤の硬化前に生コンクリートを打設して接着剤の一部とコンクリートの一部が混ざることにより、コンクリート構造物本体に接着用樹脂層を介して被接合部材を接合一体化するものであり、第2の実施形態における「転写シート」の項で説明した転写シート、特に転写シート10を用いることが好ましい。
【0154】
転写シート10は、被接合部材を有するとともに、第1の実施形態と同様、図7に示すように「ABC」という文字情報を有する。
【0155】
まず、第1の実施形態と同様、図8に示すように、金型30を準備し、所望の位置に金型用コマ40を取り付ける。
【0156】
そして、本発明のコンクリート構造物の製造方法では、次に、図19,20に示すように、転写シート10を、支持層11側で金型用コマ40の表面に両面接着シート50を介して仮接着したのち、転写シート10の裏面側に接着用樹脂層13となる接着剤を塗布し、接着剤の硬化前に生コンクリートを打設して接着剤の一部とコンクリートの一部が混ざることにより、コンクリート構造物本体20に接着用樹脂層13を介して被接合部材を接合一体化する、ことを特徴としている。図19は図14に示す転写シート10を用いた場合(切抜きなし)であり、図20は図15に示す転写シート10を用いた場合(切抜きあり)である。
【0157】
このとき、本発明のコンクリート構造物の製造方法において、接着用樹脂層13となる接着剤として可撓性を有するものを用いるようにすれば、転写シート10をコンクリート構造物本体20に接合する際、金型用コマ40が種々の立体形状を有していても、転写シート10は、その立体形状に柔軟に追従することができる。
【0158】
このように、転写シート10とコンクリート構造物本体20との接合は、硬化前の接着剤の一部に生コンクリートの一部が混ざることで優れた一体接合効果を発揮する。
【0159】
上記打設後、上部をコテで均し、養生室で加熱処理して養生し、養生後、脱型すると、図21,22に示すように、コンクリート構造物本体20と転写シート10が一体接合され、その上面に両面接着シート50が貼りついた状態となる。図21は図14に示す転写シート10を用いた場合(切抜きなし)であり、図22は図15に示す転写シート10を用いた場合(切抜きあり)である。
【0160】
この状態から、転写シート10における第2の支持層11bを剥離することで、第1の実施形態と同様、図7に示すような目的のコンクリート構造物が得られる。
【産業上の利用可能性】
【0161】
本発明は、例えば、反射性(特に再帰反射性)、蛍光性、蓄光性などの種々の機能を有する歩車道境界ブロック、車止め、ブロック塀などのコンクリート構造物や、これを製造するための好適な方法および転写シートとして好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0162】
10 転写シート
11(11a,11b) 支持層
12 被転写層
12a 透明ビーズ層
12b 色素を含有する反射層
13 接着用樹脂層
14 アンカー材層
15 リタックシート
101,102,103 文字情報
20 コンクリート構造物本体
30 金型
40 金型用コマ
50 両面接着シート
60 離型剤
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリート構造物本体に接合すべき被接合部材がその裏面側で接合部材を介してコンクリート構造物本体と接合一体化しており、前記接合部材と前記コンクリート構造物本体との界面では前記接合部材の一部とコンクリートの一部が混在している、コンクリート構造物。
【請求項2】
前記接合部材がアンカー材である、請求項1に記載のコンクリート構造物。
【請求項3】
前記アンカー材がコンクリート構造物本体との接合面に面ファスナーのオス型様の突起構造を有するものであり、前記オス型様の突起構造がコンクリート構造物本体に食い込むことにより前記接合部材の一部とコンクリートの一部が混在している、請求項2に記載のコンクリート構造物。
【請求項4】
前記アンカー材の素材がポリエステル系繊維、ナイロン系繊維、ポリオレフィン系繊維、塩化ビニル系繊維、ポリウレタン系繊維、アクリル系繊維、アラミド繊維、炭素繊維および無機繊維から選ばれる1種である、請求項2または3に記載のコンクリート構造物。
【請求項5】
前記接合部材が接着用樹脂である、請求項1に記載のコンクリート構造物。
【請求項6】
前記被接合部材が、シート状であるか、または、部材自体の形状として文字もしくは図形の形状を備えた薄片である、請求項1から5までのいずれかに記載のコンクリート構造物。
【請求項7】
前記被接合部材が、再帰反射性および/または発光性の部材である、請求項1から6までのいずれかに記載のコンクリート構造物。
【請求項8】
前記被接合部材が、その表面に撥水性および/または防汚性の薄膜を有するものである、請求項1から7までのいずれかに記載のコンクリート構造物。
【請求項9】
コンクリート構造物本体に接合すべき被接合部材の裏面側にアンカー材を接合し、金型に着脱可能に固定された金型用コマに前記被接合部材の表面側を仮接着し、生コンクリートを打設してコンクリートの一部を浸入させることにより、コンクリート構造物本体にアンカー材を介して前記被接合部材を接合一体化する、コンクリート構造物の製造方法。
【請求項10】
コンクリート構造物本体に接合すべき被接合部材の表面側を、金型に着脱可能に固定された金型用コマに仮接着し、前記被接合部材の裏面側に接着剤を塗布し、前記接着剤の硬化前に生コンクリートを打設して接着剤の一部とコンクリートの一部が混ざることにより、コンクリート構造物本体に接着用樹脂層を介して前記被接合部材を接合一体化する、コンクリート構造物の製造方法。
【請求項11】
コンクリート構造物本体に転写される被転写層と、前記被転写層を支持する支持層と、前記被転写層の前記支持層とは反対側の面に接合されているとともに前記被転写層との接合面とは反対側の面でコンクリート構造物本体と接合するアンカー材層と、を備える、コンクリート構造物用転写シート。
【請求項12】
前記被転写層が透明ビーズ層と反射層とを有して支持層側において再帰反射性を発揮するものであって、前記透明ビーズ層は支持層上に透明ビーズの一部が埋没して仮保持され、前記反射層は前記透明ビーズ層の上に設けられており、前記被転写層が前記反射層側で前記アンカー材層と接合しているものである、請求項11に記載のコンクリート構造物用転写シート。
【請求項13】
前記反射層が色素を含有する反射層であるか、または、前記反射層と前記透明ビーズ層との間に色素含有層を備える、請求項12に記載のコンクリート構造物用転写シート。
【請求項14】
色素を含有する前記反射層または前記色素含有層が印刷により図形または文字を構成している、請求項13に記載のコンクリート構造物用転写シート。
【請求項15】
前記支持層、前記被転写層および前記アンカー材層が一体的に切抜かれ、各切抜き片の支持層にリタックシートが貼付されて各切抜き片の相対的位置関係が固定されている、請求項11から14までのいずれかに記載のコンクリート構造物用転写シート。
【請求項1】
コンクリート構造物本体に接合すべき被接合部材がその裏面側で接合部材を介してコンクリート構造物本体と接合一体化しており、前記接合部材と前記コンクリート構造物本体との界面では前記接合部材の一部とコンクリートの一部が混在している、コンクリート構造物。
【請求項2】
前記接合部材がアンカー材である、請求項1に記載のコンクリート構造物。
【請求項3】
前記アンカー材がコンクリート構造物本体との接合面に面ファスナーのオス型様の突起構造を有するものであり、前記オス型様の突起構造がコンクリート構造物本体に食い込むことにより前記接合部材の一部とコンクリートの一部が混在している、請求項2に記載のコンクリート構造物。
【請求項4】
前記アンカー材の素材がポリエステル系繊維、ナイロン系繊維、ポリオレフィン系繊維、塩化ビニル系繊維、ポリウレタン系繊維、アクリル系繊維、アラミド繊維、炭素繊維および無機繊維から選ばれる1種である、請求項2または3に記載のコンクリート構造物。
【請求項5】
前記接合部材が接着用樹脂である、請求項1に記載のコンクリート構造物。
【請求項6】
前記被接合部材が、シート状であるか、または、部材自体の形状として文字もしくは図形の形状を備えた薄片である、請求項1から5までのいずれかに記載のコンクリート構造物。
【請求項7】
前記被接合部材が、再帰反射性および/または発光性の部材である、請求項1から6までのいずれかに記載のコンクリート構造物。
【請求項8】
前記被接合部材が、その表面に撥水性および/または防汚性の薄膜を有するものである、請求項1から7までのいずれかに記載のコンクリート構造物。
【請求項9】
コンクリート構造物本体に接合すべき被接合部材の裏面側にアンカー材を接合し、金型に着脱可能に固定された金型用コマに前記被接合部材の表面側を仮接着し、生コンクリートを打設してコンクリートの一部を浸入させることにより、コンクリート構造物本体にアンカー材を介して前記被接合部材を接合一体化する、コンクリート構造物の製造方法。
【請求項10】
コンクリート構造物本体に接合すべき被接合部材の表面側を、金型に着脱可能に固定された金型用コマに仮接着し、前記被接合部材の裏面側に接着剤を塗布し、前記接着剤の硬化前に生コンクリートを打設して接着剤の一部とコンクリートの一部が混ざることにより、コンクリート構造物本体に接着用樹脂層を介して前記被接合部材を接合一体化する、コンクリート構造物の製造方法。
【請求項11】
コンクリート構造物本体に転写される被転写層と、前記被転写層を支持する支持層と、前記被転写層の前記支持層とは反対側の面に接合されているとともに前記被転写層との接合面とは反対側の面でコンクリート構造物本体と接合するアンカー材層と、を備える、コンクリート構造物用転写シート。
【請求項12】
前記被転写層が透明ビーズ層と反射層とを有して支持層側において再帰反射性を発揮するものであって、前記透明ビーズ層は支持層上に透明ビーズの一部が埋没して仮保持され、前記反射層は前記透明ビーズ層の上に設けられており、前記被転写層が前記反射層側で前記アンカー材層と接合しているものである、請求項11に記載のコンクリート構造物用転写シート。
【請求項13】
前記反射層が色素を含有する反射層であるか、または、前記反射層と前記透明ビーズ層との間に色素含有層を備える、請求項12に記載のコンクリート構造物用転写シート。
【請求項14】
色素を含有する前記反射層または前記色素含有層が印刷により図形または文字を構成している、請求項13に記載のコンクリート構造物用転写シート。
【請求項15】
前記支持層、前記被転写層および前記アンカー材層が一体的に切抜かれ、各切抜き片の支持層にリタックシートが貼付されて各切抜き片の相対的位置関係が固定されている、請求項11から14までのいずれかに記載のコンクリート構造物用転写シート。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【公開番号】特開2013−36196(P2013−36196A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−171794(P2011−171794)
【出願日】平成23年8月5日(2011.8.5)
【出願人】(599056530)株式会社小松プロセス (18)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年8月5日(2011.8.5)
【出願人】(599056530)株式会社小松プロセス (18)
【Fターム(参考)】
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