コンクリート構造物の再構築方法、コンクリート構造物の製造方法、及び、これらの工法に用いることができる防食部材
【課題】優れた防食効果(耐腐食効果)を有し、迅速、且、安価に施工することができるコンクリート構造物の再構築方法、コンクリート構造物の製造方法、及び、これらの構築方法により製造されたコンクリート構造物を提供する。
【解決手段】本発明に係るコンクリート構造物の再構築方法は、可撓性を有する合成樹脂製薄板材の両端を接合して形成した筒状の防食部材1を、軸方向a1に沿って湾曲させて、コンクリート構造物の内部空間400に導入し、内部空間400において防食部材1を変形前の筒状に復元させ、コンクリート構造物の内壁面40と、防食部材1の裏面11との間に隙間g1を有する状態で、防食部材1を内側から支持部材8によって支持し、隙間g1に裏込め材5を充填し、コンクリート構造物の内壁面40と、防食部材とを一体的に結合させる工程を含む。
【解決手段】本発明に係るコンクリート構造物の再構築方法は、可撓性を有する合成樹脂製薄板材の両端を接合して形成した筒状の防食部材1を、軸方向a1に沿って湾曲させて、コンクリート構造物の内部空間400に導入し、内部空間400において防食部材1を変形前の筒状に復元させ、コンクリート構造物の内壁面40と、防食部材1の裏面11との間に隙間g1を有する状態で、防食部材1を内側から支持部材8によって支持し、隙間g1に裏込め材5を充填し、コンクリート構造物の内壁面40と、防食部材とを一体的に結合させる工程を含む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート構造物の再構築方法、コンクリート構造物の製造方法、、及び、これらの工法に用いることができる防食部材に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、下水道施設は、下水管路網を構成する排水管と、この下水管路網の保守管理を行うためのマンホール、及び、下水管路網を通じて集水された下水の浄化処理槽などを有し、これらが有機的に接続されて構成されている。これら排水管、マンホール、及び、浄化処理槽などは、通常、コンクリート材料でなる構造物である。
【0003】
この種のコンクリート構造物は、その使用環境によって内壁面に腐食等の劣化が生じ易いことが知られている。例えば、下水道施設の排水管路網には、糞尿等を含む家庭排水、工業設備から排出される各種廃液、さらには硫黄酸化物を含む雨水等が流れており、これら排水から発生する硫化水素ガスにより、排水管、マンホール、及び、浄化処理槽の内壁面が腐食される。
【0004】
上述したコンクリート構造物の内壁面の腐食部分を補修せずに放置した場合、周囲からの土圧により腐食面に亀裂が生じ、この亀裂に起因して漏水事故や、崩落事故が生じる危険性が極めて高くなる。従って、内壁面が腐食したコンクリート構造物は、早急に腐食面を補修(再構築)することが重要となる。
【0005】
一般に、この種の既設コンクリート構造物の再構築工事に求められる技術的課題として、第1に、簡易な方法で実行できること、及び、小規模な設備で実行できることが重要である。例えば、既設マンホールの再構築工事において、従来の主流であった敷設替え工法は、開削により既設マンホールを除去し、新規マンホールを埋設する工法であった。このように施工に要する設備が大規模化する工法によると、工事のたびに全面通交止めが必要になる等、一般交通に対する負担が過度に発生することとなる。従って、重大な交通渋滞を招くことの好ましくない幹線道路や、交通量の激しい繁華街では、実質的に既設マンホールの補修工事を行うことができないという問題を生じる。
【0006】
第2に、既設コンクリート構造物の補修工事は、施工期間の短縮化を図りうる構成であることが望ましい。既に述べたように、既設マンホールの補修工事においては、一般交通への負担の低減を考慮しなければならない。施工に要する設備が大規模化する工法によると、マンホール内壁面の補修作業の他に、施工設備の搬送、設置、及び、撤収作業を要することとなる。従って、施工期間の長期化が避けられず、施工地域において交通渋滞が慢性化する問題を生じていた。
【0007】
第3に、一般的なマンホールは、開口部分の径寸法が600mm程度、内部空間の径寸法が900mm程度で構成されており、開口部分が内部空間よりも狭い構造になっている。従って、防食部材は、開口部分から内部空間に案内しうる寸法であること、及び、マンホールの内壁面に可能な限り追従し、内部空間を最大限有効利用しうる大容量を備えていることの相反する要請を達成していなければならない。
【0008】
上述した問題を解決するため、例えば、特許文献1には、有底筒形の合成樹脂製防食部材を小さく折り畳んで既設人孔内に挿入した後、加熱スチームを導入して防食部材を元の形に復元し、この防食部材の周壁と既設人孔の周壁との間の間隙に充填剤を流し込み、防食部材を周壁内面に固定する補修方法が開示されている。
【0009】
しかし、特許文献1によると、防食部材は、導入された加熱スチームを外部に漏出させないような密閉構造を有しなければならないから、その分だけ、製造コスト高となる。また、防食部材の復元作業には加熱スチーム供給装置が必要になるから、施工コスト高を招くとともに、施工期間の長期化を招く。さらに、防食部材の折り畳み作業、及び、復元作業には、高度な熟練技術が要求されるから、施工コスト高を招くとともに、施工期間の長期化を招く。
【0010】
また、特許文献2には、縦方向に1箇所切断された筒状のプラスチック製防食部材を縮径させてマンホール内に挿入する工程と、挿入後に防食部材を拡径させ、マンホール内壁面を覆う工程と、マンホール内壁面と防食部材との隙間に液状のライニング用硬化性注入材を充填して硬化させるライニング工程とを含むマンホール補修方法が開示されている。
【0011】
しかし、特許文献2によると、筒状防食部材は縦方向に1箇所切断されており、この切断箇所を接続するまでは安定して自立させることができないから、施工効率が悪い。また、上述した切断箇所の接続作業、及び、継ぎ目のシール作業は、狭いマンホール内で行われることとなるから、施工効率が悪い。さらに、接続作業、及び、シール作業を、狭いマンホール内で行ったとしても、作業の正確性を保つことが難しいから、補修効果の信頼性が損なわれる。
【特許文献1】特許2552593号公報
【特許文献2】特開2641713号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の課題は、迅速、且、安価に施工することができるコンクリート構造物の再構築方法、コンクリート構造物の製造方法、及び、これらの工法に用いることができる防食部材を提供することである。
【0013】
本発明のもう1つの課題は、優れた防食効果(耐腐食効果)を有するコンクリート構造物の再構築方法、コンクリート構造物の製造方法、及び、これらの工法に用いることができる防食部材を提供することである。
【0014】
本発明のさらにもう1つの課題は、コンクリート構造物と、防食部材との構造的一体性を向上することができるコンクリート構造物の再構築方法、コンクリート構造物の製造方法、及び、これらの工法に用いることができる防食部材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
1.コンクリート構造物の再構築方法について
本発明に係るコンクリート構造物の再構築方法は、可撓性を有する合成樹脂製薄板材の両端を接合して形成した筒状の防食部材を湾曲させて、コンクリート構造物の内部空間に導入し、内部空間において防食部材を変形前の筒状に復元させ、コンクリート構造物の内壁面と、防食部材の裏面との間に隙間を有する状態で、防食部材を内側から支持部材によって支持し、隙間に裏込め材(接着材)を充填し、コンクリート構造物の内壁面と、防食部材とを一体的に結合させる工程を含む。
【0016】
上述したように、本発明に係るコンクリート構造物の再構築方法によると、コンクリート構造物の内壁面を防食部材で覆うことができる。従って、コンクリート構造物の内部空間に、硫化水素ガスが発生したとしても、内壁面を腐食から保護することができる。
【0017】
また、本発明に係るコンクリート構造物の再構築方法によると、簡易な方法、及び、小規模な設備で実行できるから、迅速、且、安価に再構築工事を行うことができる。
【0018】
具体的に、可撓性を有する合成樹脂製薄板材の両端を接合して形成した筒状の防食部材をさせて、コンクリート構造物の内部空間に導入し、内部空間において防食部材を変形前の筒状に復元させるから、例えば、開口部分が狭い構造のマンホールに対しても防食部材を導入することができる。
【0019】
しかも、防食部材は、可撓性を有する合成樹脂製薄板材の両端を接合して筒状に形成されるから、施工に係るコンクリート構造物の径寸法に容易に追従して、様々な径寸法を有する防食部材を迅速、且、安価に用意することができる。
【0020】
また、防食部材は、コンクリート構造物の内部空間において復元させた状態で、無端の筒状であるから、切断箇所の接続作業、及び、継ぎ目のシール作業が不要である。従って、効率よく作業を行うことができるとともに、防食効果(耐腐食効果)の信頼性を確保することができる。
【0021】
さらに、防食部材は、コンクリート構造物の内部空間において復元させた状態で、筒状であるから、例えばマンホールの内部底面に自立させることができる。従って、防食部材の内部空間に支持部材を導入して、防食部材を支持部材によって支持固定する作業を容易に行うことができる。
【0022】
2.コンクリート構造物の製造方法について
本発明に係るコンクリート構造物の再構築方法の技術的思想は、周知のコンクリート構造物の腐食問題を踏まえ、コンクリート構造物の製造方法にも応用することができる。即ち、本発明に係るコンクリート構造物の製造方法は、可撓性を有する合成樹脂製薄板材の両端を接合して形成した筒状の防食部材を内型装置に取り付け、防食部材を内側から内型装置によって支持し、防食部材の裏面から間隔を隔てて外型装置を配置し、外型装置の内面と、防食部材の裏面との間の隙間に、コンクリート材料を打設する工程を含む。
【0023】
上述したコンクリート構造物の製造方法によると、内壁面が、予め防食部材によって覆われているコンクリート構造物を製造することができる。
【0024】
3.防食部材について
本発明に係る防食部材は、支持部と、不織布とを含む。支持部は、湾曲可能な薄板状であって、繊維強化プラスチックを主成分としている。不織布は、一面側が支持部の一面に食い込んで結合されており、他面側が支持部の一面上に露出している。
【0025】
上述したように、本発明に係る防食部材において、支持部は、繊維強化プラスチックを主成分としているから、例えば、硫化水素ガスに起因する腐食作用に対して、優れた防食効果(耐腐食効果)を有する。
【0026】
上述した防食部材における最大の特徴の1つは、不織布を有する点にある。即ち、不織布は、繊維を3次元方向に重ね合わせて結合した多孔質構造であって、一面側が支持部の一面に食い込んで結合されている。この構造によると、不織布と、支持部との結合強度(構造的一体性)が確保され、不織布が支持部から剥離するなどの不都合は生じない。
【0027】
また、不織布は、他面側が支持部の一面上に露出しているから、この露出部分における不織布の多孔質構造により、不織布の内部にモルタル等の裏込め材(接着材)を含浸させることができるとともに、含浸した裏込め材に対して不織布の多孔質構造が、優れたアンカー効果を奏する。
【0028】
しかも、不織布は、支持部の一面上に食い込んで結合されており、不織布と、支持部との結合強度が確保されているから、裏込め材に対する不織布のアンカー効果も飛躍的に向上させることができる。
【0029】
本発明に係る防食部材は、既に説明した本発明に係るコンクリート構造物の再構築方法、及び、コンクリート構造物の製造方法にも当然用いることができる。従って、上述した防食部材の利点を全て有するコンクリート構造物の再構築方法、及び、コンクリート構造物の製造方法を提供することができる。
【0030】
本発明の他の目的、構成及び利点については、添付図面を参照し、更に詳しく説明する。添付図面は、単に、例示に過ぎない。
【発明の効果】
【0031】
以上述べたように、本発明によれば、次のような効果を得ることができる。
(1)迅速、且、安価に施工することができるコンクリート構造物の再構築方法、コンクリート構造物の製造方法、及び、これらの構築方法により製造されたコンクリート構造物と、これらの構築方法に用いることができる防食部材を提供することができる。
(2)優れた防食効果(耐腐食効果)を有するコンクリート構造物の再構築方法、コンクリート構造物の製造方法、及び、これらの構築方法により製造されたコンクリート構造物と、これらの構築方法に用いることができる防食部材を防食部材、防食部材の製造方法、及び、コンクリート構造物を提供することができる。
(3)コンクリート構造物と、防食部材との構造的一体性を向上することができるコンクリート構造物の再構築方法、コンクリート構造物の製造方法、及び、これらの構築方法により製造されたコンクリート構造物と、これらの構築方法に用いることができる防食部材を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
図1は、本発明の一実施形態に係るコンクリート構造物について一部を省略して示す正面断面図である。図1に示すコンクリート構造物は、防食部材1と、基体部4と、裏込め材(接着材)5と、流入管71と、流出管72とを含む。
【0033】
基体部4は、所謂、組立て式の既設マンホールであって、グランドライン6の地下において、内壁面40により区画された内部空間400を有している。具体的に基体部4は、それぞれコンクリート材料を主成分とする斜壁ブロック41、直壁ブロック42、及び、底塊ブロック43を含み、これらが上述した順序で高さ方向Tに一体的に積み重ねられて、構成されている。
【0034】
流入管71、及び、流出管72は、一般にコンクリート材料を主成分とする管体であって、それぞれ底塊ブロック43に配置された流路(インバート)430に連通して配置されている。下水70は、流入管71を通じて内部空間400に一旦流入した後、インバート430に沿って流下され、流出管72に排出される。
【0035】
防食部材1は、防食効果を有する合成樹脂材料を主成分としている。用いられる合成樹脂材料としては、例えば、不飽和ポリエステル(UP)、ビニルエステル樹脂(VE)、エポキシ樹脂(EP)、フェノール樹脂(PF)などの熱硬化性樹脂や、ポリエチレン樹脂(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリアミド樹脂(PA)などの熱可塑性樹脂を用いることができる。
【0036】
防食部材1の具体的構成について、より詳細に説明すると、防食部材1は、湾曲可能な可撓性を有する薄板状(シート状)を、筒状に成形したものである。防食部材1の端縁の継ぎ目101は、所謂ラップ接合や裏打ち接合によって、予め密閉的(水密的)に接合されている。
【0037】
防食部材1の可撓性は、材質に由来するものであってもよいし、形状に由来するものであってもよい。例えば、防食部材1の厚み寸法は、好ましくは0.5〜2.0mm程度であり、主としてその薄板構造により可撓性が確保されている。
【0038】
図1に示したコンクリート構造物は、好ましくは複数の防食部材1を含む。複数の防食部材1は、高さ方向Tに連結されている斜壁ブロック41、直壁ブロック42、及び、底塊ブロック43に対して、内壁面40に沿って高さ方向Tに連続して配置され、内壁面40を一体的に被覆している。
【0039】
図1に示すように、この種の組立て式マンホールは、開口部410の径寸法が600mm程度、直壁ブロックの径寸法が900mm程度であり、内部空間400は開口部410で最も縮径された形状となる。従って、複数の防食部材1は、少なくとも斜壁ブロック41の内壁面40を被覆するものと、直壁ブロック42から底塊ブロック43の内壁面40を被覆するものに分けて、高さ方向Tに隣接する継ぎ目102を周知のシール剤などで密閉的(水密的)に接合することが好ましい。
【0040】
裏込め材(接着材)5は、例えばモルタルなどであって、基体部4の内壁面40と、防食部材1の裏面11との相対向面間、及び、内壁面40から腐食部分を除去した後の凹凸部分44に充填され、基体部4と防食部材1とを一体的に結合している。
【0041】
図1を参照して説明したコンクリート構造物の構造によると、コンクリート材料を主成分とする基体部4の内壁面40が防食部材1によって覆われているから、内部空間400に硫化水素ガスが発生したとしても、内壁面40を硫化水素ガスに起因する腐食から保護することができる。
【0042】
ところで、図1に示したように、この種のマンホールは、通常、斜壁ブロック41の開口部410の径寸法が600mm程度、直壁ブロック42から底塊ブロック43までの直筒部分42−43の径寸法が900mm程度であり、内部空間400は開口部410で最も縮径された形状となる。従って、既設マンホールの再構築工事において、直筒部分42−43の径寸法に合わせて筒状の防食部材1を用意したとしても、そのままでは防食部材1を開口部410から内部空間400に導入することができない。
【0043】
上述した問題について、本発明は、防食部材1を内部空間400に導入するための構成について工夫を加えた点に特徴の1つがある。以下、図1を参照して説明したコンクリート構造物について、さらに図2乃至図10に示す具体的な再構築方法の観点から説明する。図2乃至図10は、本発明の一実施形態に係るコンクリート構造物の再構築方法を示す図である。図2乃至図10において、図1に示した構成部分と同一の構成部分には、同一の参照符号を付す。
【0044】
まず、図2に示す工程では、基体部4の内壁面40に生じた腐食部分を、例えば高圧水洗浄により予め除去する。内壁面40に生じた腐食部分を除去した後の凹凸部分44には、エポキシ樹脂やモルタル等の補修剤を充填して、補強してもよい。
【0045】
図3及び図4に示す工程は、図2に示した工程の後の工程であって、湾曲可能な可撓性を有する合成樹脂製薄板(シート)を、予め直筒部分42−43の内壁面形状に沿った直筒状(円筒状)に成形した防食部材1aを用意する。防食部材1aの径寸法は、直筒部分42−43の径寸法の径寸法(900mm程度)より、小さい程度に設定することが好ましい。防食部材1aにおいて、薄板材を筒状に成形した際に生じる端縁の継ぎ目101は、所謂ラップ接合や裏打ち接合によって、密閉的(水密的)に接合されている。
【0046】
図4に示すように、直筒状の防食部材1aを、矢印a1で示す軸方向に沿って凹状に湾曲変形させることにより、一点鎖線で示す開口部410の形状、及び、径寸法に対して、通過可能な形状、及び、径寸法に縮径させる。
【0047】
図5に示す工程は、図3及び図4に示した工程の後の工程であって、縮径させた防食部材1aを、開口部410から内部空間400に導入する。図示していないが、縮径させた防食部材1aは、開口部410を通過させ、内部空間400に導入した後に、変形前の直筒状に復元(拡径)させ、底塊ブロック43の内部底面上に立設される。
【0048】
図6に示す工程は、図5に示した工程の後の工程であって、湾曲可能な可撓性を有する合成樹脂製薄板(シート)を、予め斜壁ブロック41の内壁面形状に沿って斜筒状に成形した防食部材1bを用意し、この防食部材1bを縮径して、開口部410から内部空間400に導入する。防食部材1bは、内部空間400に導入した後、先に導入した防食部材1aに積み重ね、高さ方向Tに隣接する防食部材1a、1bの継ぎ目102を周知のシール材などで密閉的(水密的)に接合する。防食部材1a、1bのそれぞれは、その裏面11と、基体部4の内壁面40との相対向面間に隙間g1が生じるように、予め考慮して径寸法、及び、形状が調節されている。
【0049】
図7に示す工程は、図6に示した工程の後の工程であって、開口部410から支持部材8を導入し、防食部材1a、1bの筒状の内部空間に支持部材8を立設する。支持部材8は、好ましくは、開口部410から導入可能な組立て構造であって、防食部材1a、1bの表面12の形状に追従した表面形状を有している。
【0050】
防食部材1a、1bは、表面12が支持部材8の上に固定され、この支持部材8によって、表面の捻れや皺、凹凸が延ばされる。支持部材8の内部には、好ましくは支持装置80を配置し、防食部材1a、1b、及び、支持部材8の内倒を防止する。
【0051】
図9に示す工程は、図7及び図8に示した工程の後の工程であって、防食部材1a、1bの裏面11と、基体部4の内壁面40との隙間g1に、例えばモルタルなどの裏込め材(接着材)5を充填する。裏込め材5は、隙間g1、及び、内壁面40から腐食部分を除去した後の凹凸部分44に充填される。裏込め材5は、養生期間を経て硬化することにより、基体部4と防食部材1とを一体的に結合する。
【0052】
図10に示す工程は、図9に示した工程の後の工程であって、好ましくは裏込め材5が完全に硬化した後、防食部材1a、1bの内部に立設した支持部材8、及び、支持装置80を分解して、開口部410から搬出する。こ
図2乃至図10を参照して説明したコンクリート構造物の再構築方法によると、簡易な方法、及び、小規模な設備で実行できるから、迅速、且、安価に施工することができる。
【0053】
具体的に、予め筒状に成形した防食部材1a、1bを開口部410の径寸法に合わせて湾曲変形(縮径)させて、内部空間400に導入し、この内部空間400において防食部材1a、1bを変形前の筒状に復元(拡径)させるから、例えば、開口部410が狭い構造のマンホールに対しても防食部材1a、1bを導入することができる。
【0054】
また、防食部材1a、1bのそれぞれは、内部空間400において復元させた状態で、予め継ぎ目101が水密的に接合されている無端の筒状であるから、継ぎ目101の接続作業が不要である。従って、防食部材1a、1bの組立て工数を削減し、もって施工効率を向上することができる。
【0055】
さらに、防食部材1a、1bのそれぞれは、予め継ぎ目101が水密的に接合されている無端の筒状であるから、継ぎ目101のシール作業が不要である。従って、防食効果(耐腐食効果)の信頼性を確保することができる。
【0056】
加えて、防食部材1a、1bのそれぞれは、内部空間400において復元させた状態で、無端の筒状であるから、例えば底塊ブロック43の内部底面に自立させることができる。従って、防食部材1a、1bの内部に支持部材8を導入して、防食部材1a、1bを支持部材8によって支持固定する作業を容易に行うことができる。
【0057】
防食部材1a、1bは、湾曲可能な可撓性を有する合成樹脂製薄板(シート)の両端を接合して筒状に形成されたものでなる。従って、施工に係るコンクリート構造物の径寸法に容易に追従して、様々な径寸法を有する防食部材防食部材1a、1bを迅速、且、安価に用意することができる。
【0058】
また、合成成樹脂製薄板(シート)の両端を接合して筒状に成形して防食部材1a、1bを構成する工程によると、合成樹脂製薄板の製造加工は、既存の設備を用いて行うことが可能であり、量産性に富むから、製造コストを低減することができる。
【0059】
さらに、防食部材1a、1bは、可撓性を有し変形可能であるからから、嵩張らない態様で迅速、且、大量に輸送することができる。
【0060】
図1乃至図10を参照して説明したコンクリート構造物の再構築工法は、周知のコンクリート構造物の腐食問題を踏まえ、新規製造されるコンクリート構造物にも応用することができる。図11は本発明のもう一つの実施形態に係るコンクリート構造物の一部を破断して示す平面図、図12は図11に示したコンクリート構造物の一部を破断して示す正面図である。図11及び図12において、図1乃至図10に示した構成部分と同一の構成部分には、同一の参照符号を付す。
【0061】
図11及び図12に示すコンクリート構造物は、所謂、組立て式の既設マンホールの直壁ブロック(図1乃至図10参照)であって、防食部材1と、基体部4とを含む。
【0062】
防食部材1は、湾曲可能な可撓性を有する薄板状(シート状)を、筒状に成形したものであって、防食効果を有する合成樹脂材料を主成分としている。用いられる合成樹脂材料としては、例えば、不飽和ポリエステル(UP)、ビニルエステル樹脂(VE)、エポキシ樹脂(EP)、フェノール樹脂(PF)などの熱硬化性樹脂や、ポリエチレン樹脂(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリアミド樹脂(PA)などの熱可塑性樹脂を用いることができる。
【0063】
基体部4は、組立て式マンホールの直壁ブロックの例(図8乃至図14参照)であって、内壁面40により区画された内部空間400を有している。
【0064】
図11及び図12に示したコンクリート構造物において、防食部材1は、内壁面40に直接配置され、内壁面40を一体的に被覆している。この構造によっても、図1を参照して説明したコンクリート構造物の利点を全て有することができる。
【0065】
本発明は、防食部材1を内壁面40に配置するための構成について工夫を加えた点に特徴の1つがある。以下、図11及び図12を参照して説明したコンクリート構造物について、さらに図13乃至図17に示す具体的な製造方法の観点から説明する。図13乃至図17は、本発明のもう一つの実施形態に係るコンクリート構造物の製造方法を示す図である。図13乃至図17において、図1乃至図12に示した構成部分と同一の構成部分には、同一の参照符号を付す。
【0066】
まず、湾曲可能な可撓性を有する薄板状(シート状)を、筒状に成形した防食部材1を用意する。筒状に成形した防食部材1の径寸法は、予め、内型装置81の径寸法(900mm程度)より、小さい程度に設定することが好ましい。防食部材1の端縁の継ぎ目101は、所謂ラップ接合や裏打ち接合によって水密的に接合されている。さらに、図13及び図14に示す工程では、内型装置81の巻装面810に、筒状の防食部材1を配置する。内型装置81は、好ましくは既存のコンクリート成型設備において用いられている成型設備であって、後の脱型作業を実施しやすくするために、巻装面810に離型剤が塗布されている。また、防食部材1の外周面には、通常、生コンクリート材料との接着性を高めるため、粒径の大きな砂粒9又は砂利9などが吹き付けられる。
【0067】
図15に示す工程は、図13及び図14に示した工程の後の工程であって、防食部材1の外面から間隔g2を隔てて外型装置82を配置し、外型装置82の内壁面820と、防食部材1の裏面11との間隔g2に、生コンクリート材料4を打設する。間隔g2は、最終成型物の厚みに応じて適宜調節する。外型装置82は、既存のコンクリート成型設備において用いられているものを用いることができる。外型装置82は、後の脱型作業を実施しやすくするために、複数に分割しうる構造を有するとともに、内壁面820に離型剤が塗布されている。
【0068】
図16に示す工程は、図15に示した工程の後の工程であって、間隔g2に打設された生コンクリート材料4は、所定の養生期間を経て基体部4に成形され、防食部材1と一体的に結合される。
【0069】
図17に示す工程は、図16に示した工程の後の工程であって、基体部4の成形後、内型装置81を矢印m3で示す方向に脱型し、外型装置82を矢印m4で示す方向に分離し、コンクリート構造物を脱型する。
【0070】
図13乃至図17を参照して説明したコンクリート構造物の製造方法によると、図1乃至図13を参照して説明した利点を、予め全て有するコンクリート構造物を提供することができる。例えば、コンクリート材料を主成分とする基体部4の内壁面40が防食部材1によって覆われているから、内壁面40を腐食から保護することができる。
【0071】
ところで、図1乃至図17を参照して説明したコンクリート構造物、及び、コンクリート構造物の再構築方法において、防食部材1の裏面11と、基体部4の内壁面40との隙間g1に充填される裏込め材5が、例えば合成樹脂系接着剤である場合には、裏込め材5と、基体部4との材質の相違により、裏込め材5、及び、この裏込め材5により固定されている防食部材1が、内壁面40から剥離しやすいことが確認されている。
【0072】
一方、裏込め材5が、セメントモルタルである場合には、裏込め材5と、合成樹脂を主成分とする防食部材1との材質の相違により、防食部材1が裏込め材5から剥離しやすいことが確認されている。
【0073】
この点、防食部材1と、内壁面40との構造的一体性を確保するための技術として、従来は、防食部材1の裏面11にアンカー突起を設けるなどの対策が採られている。しかし、このようなアンカー突起を防食部材1の裏面11に多数成形するには、新たな金型が必要になるなど過大な設備投資を強いられ、コスト高を招く。
【0074】
上述した問題を解決するため、本発明では、内壁面40との構造的一体性を確保しうるとともに、迅速、且、安価に製造することができる防食部材であって、さらに本発明に係るコンクリート構造物の再構築/製造方法にも用いることができる防食部材を提供する。以下、本発明に係る防食部材について説明する。
【0075】
図18は本発明の一実施形態に係る防食部材の一部平面図、図19は図18に示した防食部材1の一部側面図、図20は図18及び図19に示した防食部材1の一部を拡大して示す断面図である。図18乃至図20を参照すると、本発明の一実施形態に係る防食部材1は、支持部10と、不織布20とを含む。
【0076】
支持部10は、湾曲可能な可撓性を有する薄板状(シート状)であって、一面13と、他面14とを有している。支持部10の厚み寸法d10は、好ましくは0.5〜2.0mm程度である。
【0077】
具体的に支持部10は、繊維強化プラスチック(FRP=Fiber Reinforced Plastics)を主成分としている。本明細書において、繊維強化プラスチックとは、母材となるプラスチック材料の中に、強化用の繊維骨材を混合したものをいう。
【0078】
一般に、母材となるプラスチック材料としては、熱硬化性樹脂が用いられることが多い。例えば、FRPに用いられる熱硬化性樹脂としては、不飽和ポリエステル(UP)、ビニルエステル樹脂(VE)、エポキシ樹脂(EP)、フェノール樹脂(PF)などをあげることができる。一方、母材としてポリエチレン樹脂(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリアミド樹脂(PA)などの熱可塑性樹脂を用いた繊維強化熱可塑性プラスチック(FRTP=Fiber Reinforced Thermo Plastics)もある。
【0079】
さらに、FRPには、母材に混合される繊維骨材の種類に応じて、G−FRP(ガラス繊維を使用)、C−FRP(炭素繊維を使用)、A−FRP(アラミド繊維を使用)などがある。
【0080】
図18乃至図20に示した防食部材1の支持部10は、上述したいずれの構成に係る繊維強化プラスチック(FRP)をも主成分とすることができる。
【0081】
図18乃至図20に示した不織布20は、一面21と、他面22とを有する綿状不織布であって、繊維を3次元方向に重ね合わせて結合した多孔質構造で構成されており、厚み寸法d20の内部にモルタル等の裏込め材(接着剤)5が含浸可能な空間を有している。具体的に不織布20の厚み寸法d20は、好ましくは0.5〜3.0mm程度であって、より好ましくは0.5〜1.5mm程度である。
【0082】
不織布20は、一面21の側が、部分的に支持部10の一面13に食い込んで結合されており、他面22の側が、部分的に支持部10の一面13上に露出している。支持部10と、不織布20との結合構造について、より詳細に説明すると、支持部10の一面13と、一面13に向かい合う不織布20の一面21との相対向部分には、支持部10と、不織布20とが相互に食い込んで結合された埋設部分201が存在しており、この埋設部分201により支持部10と、不織布20とが一体的に結合されている。一方、不織布20は、その厚み寸法d20において、埋設部分201以外の露出部分202が、支持部10の一面13上に配置されている(図3参照)。
【0083】
図18乃至図20を参照して説明した防食部材1において、支持部10は、繊維強化プラスチックを主成分としているから、例えば、硫化水素ガスに起因する腐食作用に対して、優れた防食効果(耐腐食効果)を有する。
【0084】
また、防食部材1、及び、防食部材1を構成する支持部10は、薄板状(シート状)であって、量産性に富む形状であるから、製造コストを低減することができる。
【0085】
さらに、防食部材1、及び、防食部材1を構成する支持部10は、薄板状(シート状)であるから、嵩張らない態様で迅速、且、大量に輸送することができる。
【0086】
図18乃至図20を参照して説明した防食部材1の特徴の1つは、不織布20を有する点にある。不織布20は、繊維を3次元方向に重ね合わせて結合した多孔質構造を有しており、内部(露出部分202)にモルタル等の接着材が含浸可能な空間を有している。この構造によると、露出部分202にモルタル等の接着材を含浸させることができるとともに、含浸した接着材に対して不織布20の多孔質構造が、優れたアンカー効果を奏することができる。
【0087】
ここで、不織布20の厚み寸法d20は、好ましくは0.5〜3.0mm程度であって、より好ましくは0.5〜1.5mm程度である。不織布20の厚み寸法d20が0.5mmより薄いと、露出部分202に対する接着材の含浸量が不足し、アンカー効果を充分に確保することができない。
【0088】
一方、不織布20の厚み寸法d20が3.0mmより厚くなると、不織布20の露出部分202へ、接着材を充分に含浸させることが困難になる。その結果、露出部分202の内部に接着材が含浸していない領域(非含浸領域)が生じやすくなり、不織布20に外的圧力が加えられた場合に、非含浸領域を境にして不織布20の破断事故が生じるなど、不織布20のアンカー効果の信頼性に問題が生じる。
【0089】
また、接着材としてモルタルを用いる場合に、不織布20の厚み寸法d20が3.0mmより厚くなると、露出部分202の表面でモルタルがセメント成分と水分とに濾過(分離)されてしまうことが確認されており、不織布20のアンカー効果の信頼性に問題が生じる。
【0090】
不織布20は、一面21の側が支持部10の一面13に食い込んで結合されているから、不織布20と、支持部10との結合強度が向上する。従って、不織布20が支持部10から剥離するなどの不都合は生ぜず、不織布20のアンカー効果も飛躍的に向上させることができる。
【0091】
図18乃至図20を参照して説明した防食部材1の支持部10と、不織布20との結合構造について、さらに図21に示す製造方法の観点から説明する。図21は、本発明に係る防食部材1の製造方法の一実施形態を示す図である。図21において、図1乃至図20に示した構成部分と同一の構成部分には、同一の参照符号を付す。
【0092】
図21に示す製造方法は、図18乃至図20に示した防食部材1の連続成形工程を示しており、支持フィルム30と、第1の供給装置31と、搬送ローラー32と、第2の供給装置33と、圧着ローラー34と、硬化処理部35と、巻取り装置36とを有する。以下、説明の都合上、支持部10を構成する繊維強化プラスチックの母材として熱硬化性樹脂を用いた場合の例を説明する。
【0093】
第1の供給装置31は、塗布部を有している。塗布部は、例えば支持フィルム30の幅寸法と同寸法の開口幅を有する塗布ノズル(図示しない)を備えており、外部の貯留タンク(図示しない)から供給される未硬化状態(ペースト状)の熱硬化性樹脂を、支持フィルム30の上に連続して塗布する。支持フィルム30は、搬送ローラー32によって矢印m1で示す搬送方向に送られているから、支持フィルム30の上には、母材となる未硬化状態の熱硬化性樹脂が、シート状に塗布形成される。以下、シート状に形成された未硬化状態の熱硬化性樹脂を、熱硬化性樹脂グリーンシート10aと称する。
【0094】
第2の供給装置33は、熱硬化性樹脂グリーンシート10aの中に、繊維骨材を混合させる。具体的に繊維骨材が粉末状(繊維状)である場合、第2の供給装置33は、外部の貯留タンクから供給される繊維骨材を、熱硬化性樹脂グリーンシート10aに連続して付着させ、混合させる。一方、繊維骨材がシート状である場合、第2の供給装置33は、外部から供給される繊維骨材シートを、熱硬化性樹脂グリーンシート10aに載置して、混合させる。第2の供給装置33により、熱硬化性樹脂グリーンシート10aに繊維骨材が混合されて、未硬化状態のFRP薄板材10bが形成される。
【0095】
未硬化状態のFRP薄板材10bは、支持フィルム30の上に形成されており、搬送ローラー32によって支持フィルム30とともに、さらに搬送方向m1に送られる。そして、この未硬化状態のFRP薄板材10bに対して、不織布20を載置する。不織布20は、図示しない供給装置から、搬送ローラー32によって矢印に示す搬送方向m2に搬送され、好ましくは圧着ローラー34によって、未硬化状態のFRP薄板材10bの一面上に、不織布20が載置される。不織布20は、その一面21が、これに接触する未硬化状態のFRP薄板材10bの一面に食い込まされる。なお、支持部10に対する不織布20の食い込み距離(埋設深さ寸法)は、圧着ローラー34の配置、及び、押し圧力を予め設定しておくことにより、調節することができる。
【0096】
一面に不織布20が食い込んだ状態で載置された未硬化状態のFRP薄板材10cは、搬送ローラー32によってさらに搬送方向m1に搬送され、硬化処理部35に送られる。硬化処理部35は、具体的に繊維強化プラスチックの母材として熱硬化性樹脂を用いた場合には、主として加熱処理、さらには圧着処理を行う装置であって、一面に不織布20が食い込んだ状態で載置された未硬化状態のFRP薄板材10cに加熱処理及び圧着処理を行うことにより、両者を結合させた状態で硬化させる。硬化処理部35によって、未硬化状態のFRP薄板材10cは支持部10に形成され、図1乃至図3を参照して説明した防食部材1が得られる。
【0097】
硬化処理により形成された防食部材1は、さらに冷却処理(図示しない)を経て、巻取り装置36によって巻き取られ、裁断処理(図示しない)を経て保管される。そして、具体的な施工条件に応じて、所望の形状に切断加工されて使用される。
【0098】
図21を参照して説明した製造方法によると、図18乃至図21を参照して説明した利点を全て有する防食部材1を、安価で製造することができる。例えば、本発明に係る防食部材1は、既存のFRP成形装置に対し、不織布20を取り付ける工程を追加することで製造可能である。即ち、新たな金型を準備する必要が無いから、過大な設備投資を強いられることがなく、製造コストを低減することができる。
【0099】
さらに、この種の不織布20は、製造、又は、入手が容易であるから防食部材1の製造コストを低減することができる。
【0100】
図18乃至図21を参照して説明した防食部材1は、これを筒状に成形することにより、図1乃至図17を参照して説明したコンクリート構造物の再構築/製造方法の防食部材1として用いることができる。図22は本発明のもう一つの実施形態に係るコンクリート構造物について一部を省略して示す正面断面図、図23は図22の23−23線に沿った部分断面図、図24は図22及び図23に示したコンクリート構造物の一部を拡大して示す図である。
【0101】
図22乃至図24に示すコンクリート構造物(既設マンホール)と、図1を参照して説明したコンクリート構造物(既設マンホール)とを対比すると、両者は防食部材1の内部構成の点で、相違点を有している。以下、防食部材1の内部構成を中心に説明する。
【0102】
図22乃至図24に示すコンクリート構造物(既設マンホール)は、図18乃至図21を参照して説明した防食部材1と、基体部4と、裏込め材(接着剤)5とを含む。
【0103】
基体部4は、所謂、組立て式マンホールであって、内壁面40により区画された内部空間400を有している。防食部材1は、内壁面40に沿って配置され、内壁面40を被覆している。裏込め材5は、例えばモルタルなどであって、基体部4の内周面41と、防食部材1の一面との相対向面間(隙間g1)、及び、内周面41から腐食部分を除去した後の凹凸部分42に充填され、不織布20の内部(露出部分202)に含浸している。
【0104】
図22乃至図24を参照して説明したマンホールの構造によると、図18乃至図21を参照して説明した防食部材1の利点を全て有することができる。例えば、防食部材1は、繊維強化プラスチックを主成分とする支持部10が、内部空間400の側に配置されているから、防食部材1が内周面41に配置された後にも、内部空間400に継続して発生する硫化水素ガスに対して、優れた防食効果(耐腐食効果)を有し、内周面41を腐食から保護することができる。
【0105】
コンクリート構造物の再構築工事において、内周面41を防食部材1で覆う場合、両者の結合にはセメントモルタルが裏込め材5として広く用いられている。従来の防食部材は、合成樹脂材料(又はFRP)のみからなる構成であったから、セメントモルタルと、防食部材との材質の相違により、防食部材がセメントモルタルから剥離しやすい点で改善の余地があった。
【0106】
これに対し、本発明に係る防食部材1は不織布20を有し、不織布20は、繊維を3次元方向に重ね合わせて結合した多孔質構造であって、他面22の側が支持部10の一面上に露出しているから、この露出部分202の内部にモルタル等の裏込め材5を含浸させることにより、裏込め材5に対して不織布20の多孔質構造が、優れたアンカー効果を奏する。従って、内周面41と、防食部材1との結合強度(構造的一体性)を向上することができる。
【0107】
防食部材1は、湾曲可能な薄板状であるから、マンホールの規模や、内周面41の形状に容易に追従して配置し、内周面41を覆うことができる。
【0108】
なお、コンクリート構造物の製造において、内周面41を防食部材1で覆う場合、露出部分202の内部に、生コンクリート材料を含浸させることにより、不織布20が基体部4の内周面41に直接埋設される。即ち、不織布20は、その一面21が部分的に、内周面41に直接食い込んだ状態で結合される。この構造によっても、図18乃至図21を参照して説明した防食部材1、及び、これを用いたコンクリート構造物の利点を全て有することができる。
【0109】
また、図22乃至図24に示すコンクリート構造物は、所謂マンホールであるが、これは例示に過ぎない。本発明に係る防食部材1を用いたコンクリート構造物は、マンホール以外にも、排水管や、さらにはマンホールなど、その使用環境によって表面に腐食等の劣化が生じる全てのコンクリート構造物を含む。図25及び図26は、本発明のもう一つの実施形態に係るコンクリート構造物について一部を省略して示す正面断面図である。
【0110】
図25に示すコンクリート構造物は、所謂、排水管であって、コンクリート製の管体の内周面41により区画された貫通空間を有している。
【0111】
防食部材1の支持部10は、排水管の内周面41に追従して筒状に湾曲されており、不織布20は、一面21の側が支持部10の一面11に食い込んで結合されており、他面22の側が支持部10の一面11上に露出している。防食部材1は、基体部4の内部に配置されており、内周面41を被覆している。裏込め材5は、例えばモルタルなどであって、基体部4の内周面41と、防食部材1の一面との相対向面間、及び、内周面41から腐食部分を除去した後の凹凸部分42に充填され、不織布20の内部に含浸されている(図24参照)。
【0112】
図25を参照して説明したコンクリート構造物の構造によっても、図18乃至図24を参照して説明した防食部材1、及び、これを用いたコンクリート構造物の利点を全て有することができる。例えば、本発明に係る防食部材1の特徴の1つは、不織布20の一面21の側が支持部10の一面11に食い込んで結合されており、他面22の側が支持部10の一面11上に露出(露出部分202)している構成により、露出部分202に含浸させた裏込め材5に対して、不織布20の多孔質構造が、優れたアンカー効果を奏する点にある。従って、不織布20の土台となる支持部10の形状は、基体部4の具体的な形状に追従して設定することができる。
【0113】
しかも、支持部10は、湾曲可能な可撓性を有する薄板状であるから、排水管の内径寸法や、内径面形状に容易に追従して成形することができる、基体部4の具体的な形状に追従することができる。
【0114】
さらに、支持部10は、湾曲可能な可撓性を有する薄板状であるから、図7に示すような断面円形状の管体の他にも、基体部4の形状に追従して様々な形状をとることができる。加えて、不織布20は、多孔質構造であるから、支持部10の形状の変化を阻害することなく、容易に追従することができる。
【0115】
図26に示すコンクリート構造物は、所謂、浄化処理槽であって、図18乃至図24を参照して説明した防食部材1と、基体部4と、裏込め材(接着材)5とを含む。
【0116】
基体部4は、流入管71を通じて集水された下水70を浄化処理するための水槽であって、コンクリート材料を主成分とし、グランドライン6の地下に、内周面41により区画された内部空間(浄化処理空間)40を有している。下水70は、浄化処理された後、流出管72を通じて次の浄化処理段階に送水される。
【0117】
浄化処理槽は、複数の防食部材1を含む。防食部材1のそれぞれは、図18乃至図21を参照して説明したものでなり、複数が内周面41に沿って連続して配置され、内周面41を被覆している。
【0118】
裏込め材5は、例えばモルタルなどであって、基体部4の内周面41と、防食部材1の一面との相対向面間(隙間g1)、及び、内周面41から腐食部分を除去した後の凹凸部分42に充填され、不織布20の内部(露出部分202)に含浸している。
【0119】
図26を参照して説明したコンクリート構造物の構造によっても、図18乃至図24を参照して説明した防食部材1、及び、これを用いたコンクリート構造物の利点を全て有することができる。
【0120】
以上、好ましい実施例を参照して本発明の内容を具体的に説明したが、本発明の基本的技術思想及び教示に基づいて、当業者であれば、種種の変形態様を採り得ることは自明である。
【図面の簡単な説明】
【0121】
【図1】本発明の一実施形態に係るコンクリート構造物について一部を省略して示す正面断面図である。
【図2】本発明の一実施形態に係るコンクリート構造物の再構築方法を示す図である。
【図3】図2に示した工程の後の工程を示す斜視図である。
【図4】図3に示した工程の平面図である。
【図5】図3及び図4に示した工程の後の工程を示す図である。
【図6】図5に示した工程の後の工程を示す図である。
【図7】図6に示した工程の後の工程を示す図である。
【図8】図7の8−8線に沿った部分断面図である。
【図9】図7及び図8に示した工程の後の工程を示す図である。
【図10】図9に示した工程の後の工程を示す図である。
【図11】本発明のもう一つの実施形態に係るコンクリート構造物の一部を破断して示す平面図である。
【図12】図11に示したコンクリート構造物の一部を破断して示す正面図である。
【図13】本発明のもう一つの実施形態に係るコンクリート構造物の製造方法を示す図である。
【図14】図13に示した工程の一部を破断して示す正面図である。
【図15】図13及び図14に示した工程の後の工程を示す図である。
【図16】図15に示した工程の後の工程を示す図である。
【図17】図16に示した工程の後の工程を示す図である。
【図18】本発明の一実施形態に係る防食部材の一部平面図である。
【図19】図18に示した防食部材の一部側面図である。
【図20】図18及び図19に示した防食部材の一部を拡大して示す断面図である。
【図21】本発明に係る防食部材の製造方法の一実施形態を示す図である。
【図22】本発明のもう一つの実施形態に係るコンクリート構造物について一部を省略して示す正面断面図である。
【図23】図22の23−23線に沿った部分断面図である。
【図24】図22及び図23に示したコンクリート構造物の一部を拡大して示す図である。
【図25】本発明のもう一つの実施形態に係るコンクリート構造物について一部を省略して示す正面断面図である。
【図26】本発明のもう一つの実施形態に係るコンクリート構造物について一部を省略して示す正面断面図である。
【符号の説明】
【0122】
1a、1b 防食部材
10 支持部
11 裏面
4 基体部
40 内壁面
400 内部空間
5 裏込め材
8 支持部材
81 内型装置
82 外型装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート構造物の再構築方法、コンクリート構造物の製造方法、、及び、これらの工法に用いることができる防食部材に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、下水道施設は、下水管路網を構成する排水管と、この下水管路網の保守管理を行うためのマンホール、及び、下水管路網を通じて集水された下水の浄化処理槽などを有し、これらが有機的に接続されて構成されている。これら排水管、マンホール、及び、浄化処理槽などは、通常、コンクリート材料でなる構造物である。
【0003】
この種のコンクリート構造物は、その使用環境によって内壁面に腐食等の劣化が生じ易いことが知られている。例えば、下水道施設の排水管路網には、糞尿等を含む家庭排水、工業設備から排出される各種廃液、さらには硫黄酸化物を含む雨水等が流れており、これら排水から発生する硫化水素ガスにより、排水管、マンホール、及び、浄化処理槽の内壁面が腐食される。
【0004】
上述したコンクリート構造物の内壁面の腐食部分を補修せずに放置した場合、周囲からの土圧により腐食面に亀裂が生じ、この亀裂に起因して漏水事故や、崩落事故が生じる危険性が極めて高くなる。従って、内壁面が腐食したコンクリート構造物は、早急に腐食面を補修(再構築)することが重要となる。
【0005】
一般に、この種の既設コンクリート構造物の再構築工事に求められる技術的課題として、第1に、簡易な方法で実行できること、及び、小規模な設備で実行できることが重要である。例えば、既設マンホールの再構築工事において、従来の主流であった敷設替え工法は、開削により既設マンホールを除去し、新規マンホールを埋設する工法であった。このように施工に要する設備が大規模化する工法によると、工事のたびに全面通交止めが必要になる等、一般交通に対する負担が過度に発生することとなる。従って、重大な交通渋滞を招くことの好ましくない幹線道路や、交通量の激しい繁華街では、実質的に既設マンホールの補修工事を行うことができないという問題を生じる。
【0006】
第2に、既設コンクリート構造物の補修工事は、施工期間の短縮化を図りうる構成であることが望ましい。既に述べたように、既設マンホールの補修工事においては、一般交通への負担の低減を考慮しなければならない。施工に要する設備が大規模化する工法によると、マンホール内壁面の補修作業の他に、施工設備の搬送、設置、及び、撤収作業を要することとなる。従って、施工期間の長期化が避けられず、施工地域において交通渋滞が慢性化する問題を生じていた。
【0007】
第3に、一般的なマンホールは、開口部分の径寸法が600mm程度、内部空間の径寸法が900mm程度で構成されており、開口部分が内部空間よりも狭い構造になっている。従って、防食部材は、開口部分から内部空間に案内しうる寸法であること、及び、マンホールの内壁面に可能な限り追従し、内部空間を最大限有効利用しうる大容量を備えていることの相反する要請を達成していなければならない。
【0008】
上述した問題を解決するため、例えば、特許文献1には、有底筒形の合成樹脂製防食部材を小さく折り畳んで既設人孔内に挿入した後、加熱スチームを導入して防食部材を元の形に復元し、この防食部材の周壁と既設人孔の周壁との間の間隙に充填剤を流し込み、防食部材を周壁内面に固定する補修方法が開示されている。
【0009】
しかし、特許文献1によると、防食部材は、導入された加熱スチームを外部に漏出させないような密閉構造を有しなければならないから、その分だけ、製造コスト高となる。また、防食部材の復元作業には加熱スチーム供給装置が必要になるから、施工コスト高を招くとともに、施工期間の長期化を招く。さらに、防食部材の折り畳み作業、及び、復元作業には、高度な熟練技術が要求されるから、施工コスト高を招くとともに、施工期間の長期化を招く。
【0010】
また、特許文献2には、縦方向に1箇所切断された筒状のプラスチック製防食部材を縮径させてマンホール内に挿入する工程と、挿入後に防食部材を拡径させ、マンホール内壁面を覆う工程と、マンホール内壁面と防食部材との隙間に液状のライニング用硬化性注入材を充填して硬化させるライニング工程とを含むマンホール補修方法が開示されている。
【0011】
しかし、特許文献2によると、筒状防食部材は縦方向に1箇所切断されており、この切断箇所を接続するまでは安定して自立させることができないから、施工効率が悪い。また、上述した切断箇所の接続作業、及び、継ぎ目のシール作業は、狭いマンホール内で行われることとなるから、施工効率が悪い。さらに、接続作業、及び、シール作業を、狭いマンホール内で行ったとしても、作業の正確性を保つことが難しいから、補修効果の信頼性が損なわれる。
【特許文献1】特許2552593号公報
【特許文献2】特開2641713号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の課題は、迅速、且、安価に施工することができるコンクリート構造物の再構築方法、コンクリート構造物の製造方法、及び、これらの工法に用いることができる防食部材を提供することである。
【0013】
本発明のもう1つの課題は、優れた防食効果(耐腐食効果)を有するコンクリート構造物の再構築方法、コンクリート構造物の製造方法、及び、これらの工法に用いることができる防食部材を提供することである。
【0014】
本発明のさらにもう1つの課題は、コンクリート構造物と、防食部材との構造的一体性を向上することができるコンクリート構造物の再構築方法、コンクリート構造物の製造方法、及び、これらの工法に用いることができる防食部材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
1.コンクリート構造物の再構築方法について
本発明に係るコンクリート構造物の再構築方法は、可撓性を有する合成樹脂製薄板材の両端を接合して形成した筒状の防食部材を湾曲させて、コンクリート構造物の内部空間に導入し、内部空間において防食部材を変形前の筒状に復元させ、コンクリート構造物の内壁面と、防食部材の裏面との間に隙間を有する状態で、防食部材を内側から支持部材によって支持し、隙間に裏込め材(接着材)を充填し、コンクリート構造物の内壁面と、防食部材とを一体的に結合させる工程を含む。
【0016】
上述したように、本発明に係るコンクリート構造物の再構築方法によると、コンクリート構造物の内壁面を防食部材で覆うことができる。従って、コンクリート構造物の内部空間に、硫化水素ガスが発生したとしても、内壁面を腐食から保護することができる。
【0017】
また、本発明に係るコンクリート構造物の再構築方法によると、簡易な方法、及び、小規模な設備で実行できるから、迅速、且、安価に再構築工事を行うことができる。
【0018】
具体的に、可撓性を有する合成樹脂製薄板材の両端を接合して形成した筒状の防食部材をさせて、コンクリート構造物の内部空間に導入し、内部空間において防食部材を変形前の筒状に復元させるから、例えば、開口部分が狭い構造のマンホールに対しても防食部材を導入することができる。
【0019】
しかも、防食部材は、可撓性を有する合成樹脂製薄板材の両端を接合して筒状に形成されるから、施工に係るコンクリート構造物の径寸法に容易に追従して、様々な径寸法を有する防食部材を迅速、且、安価に用意することができる。
【0020】
また、防食部材は、コンクリート構造物の内部空間において復元させた状態で、無端の筒状であるから、切断箇所の接続作業、及び、継ぎ目のシール作業が不要である。従って、効率よく作業を行うことができるとともに、防食効果(耐腐食効果)の信頼性を確保することができる。
【0021】
さらに、防食部材は、コンクリート構造物の内部空間において復元させた状態で、筒状であるから、例えばマンホールの内部底面に自立させることができる。従って、防食部材の内部空間に支持部材を導入して、防食部材を支持部材によって支持固定する作業を容易に行うことができる。
【0022】
2.コンクリート構造物の製造方法について
本発明に係るコンクリート構造物の再構築方法の技術的思想は、周知のコンクリート構造物の腐食問題を踏まえ、コンクリート構造物の製造方法にも応用することができる。即ち、本発明に係るコンクリート構造物の製造方法は、可撓性を有する合成樹脂製薄板材の両端を接合して形成した筒状の防食部材を内型装置に取り付け、防食部材を内側から内型装置によって支持し、防食部材の裏面から間隔を隔てて外型装置を配置し、外型装置の内面と、防食部材の裏面との間の隙間に、コンクリート材料を打設する工程を含む。
【0023】
上述したコンクリート構造物の製造方法によると、内壁面が、予め防食部材によって覆われているコンクリート構造物を製造することができる。
【0024】
3.防食部材について
本発明に係る防食部材は、支持部と、不織布とを含む。支持部は、湾曲可能な薄板状であって、繊維強化プラスチックを主成分としている。不織布は、一面側が支持部の一面に食い込んで結合されており、他面側が支持部の一面上に露出している。
【0025】
上述したように、本発明に係る防食部材において、支持部は、繊維強化プラスチックを主成分としているから、例えば、硫化水素ガスに起因する腐食作用に対して、優れた防食効果(耐腐食効果)を有する。
【0026】
上述した防食部材における最大の特徴の1つは、不織布を有する点にある。即ち、不織布は、繊維を3次元方向に重ね合わせて結合した多孔質構造であって、一面側が支持部の一面に食い込んで結合されている。この構造によると、不織布と、支持部との結合強度(構造的一体性)が確保され、不織布が支持部から剥離するなどの不都合は生じない。
【0027】
また、不織布は、他面側が支持部の一面上に露出しているから、この露出部分における不織布の多孔質構造により、不織布の内部にモルタル等の裏込め材(接着材)を含浸させることができるとともに、含浸した裏込め材に対して不織布の多孔質構造が、優れたアンカー効果を奏する。
【0028】
しかも、不織布は、支持部の一面上に食い込んで結合されており、不織布と、支持部との結合強度が確保されているから、裏込め材に対する不織布のアンカー効果も飛躍的に向上させることができる。
【0029】
本発明に係る防食部材は、既に説明した本発明に係るコンクリート構造物の再構築方法、及び、コンクリート構造物の製造方法にも当然用いることができる。従って、上述した防食部材の利点を全て有するコンクリート構造物の再構築方法、及び、コンクリート構造物の製造方法を提供することができる。
【0030】
本発明の他の目的、構成及び利点については、添付図面を参照し、更に詳しく説明する。添付図面は、単に、例示に過ぎない。
【発明の効果】
【0031】
以上述べたように、本発明によれば、次のような効果を得ることができる。
(1)迅速、且、安価に施工することができるコンクリート構造物の再構築方法、コンクリート構造物の製造方法、及び、これらの構築方法により製造されたコンクリート構造物と、これらの構築方法に用いることができる防食部材を提供することができる。
(2)優れた防食効果(耐腐食効果)を有するコンクリート構造物の再構築方法、コンクリート構造物の製造方法、及び、これらの構築方法により製造されたコンクリート構造物と、これらの構築方法に用いることができる防食部材を防食部材、防食部材の製造方法、及び、コンクリート構造物を提供することができる。
(3)コンクリート構造物と、防食部材との構造的一体性を向上することができるコンクリート構造物の再構築方法、コンクリート構造物の製造方法、及び、これらの構築方法により製造されたコンクリート構造物と、これらの構築方法に用いることができる防食部材を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
図1は、本発明の一実施形態に係るコンクリート構造物について一部を省略して示す正面断面図である。図1に示すコンクリート構造物は、防食部材1と、基体部4と、裏込め材(接着材)5と、流入管71と、流出管72とを含む。
【0033】
基体部4は、所謂、組立て式の既設マンホールであって、グランドライン6の地下において、内壁面40により区画された内部空間400を有している。具体的に基体部4は、それぞれコンクリート材料を主成分とする斜壁ブロック41、直壁ブロック42、及び、底塊ブロック43を含み、これらが上述した順序で高さ方向Tに一体的に積み重ねられて、構成されている。
【0034】
流入管71、及び、流出管72は、一般にコンクリート材料を主成分とする管体であって、それぞれ底塊ブロック43に配置された流路(インバート)430に連通して配置されている。下水70は、流入管71を通じて内部空間400に一旦流入した後、インバート430に沿って流下され、流出管72に排出される。
【0035】
防食部材1は、防食効果を有する合成樹脂材料を主成分としている。用いられる合成樹脂材料としては、例えば、不飽和ポリエステル(UP)、ビニルエステル樹脂(VE)、エポキシ樹脂(EP)、フェノール樹脂(PF)などの熱硬化性樹脂や、ポリエチレン樹脂(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリアミド樹脂(PA)などの熱可塑性樹脂を用いることができる。
【0036】
防食部材1の具体的構成について、より詳細に説明すると、防食部材1は、湾曲可能な可撓性を有する薄板状(シート状)を、筒状に成形したものである。防食部材1の端縁の継ぎ目101は、所謂ラップ接合や裏打ち接合によって、予め密閉的(水密的)に接合されている。
【0037】
防食部材1の可撓性は、材質に由来するものであってもよいし、形状に由来するものであってもよい。例えば、防食部材1の厚み寸法は、好ましくは0.5〜2.0mm程度であり、主としてその薄板構造により可撓性が確保されている。
【0038】
図1に示したコンクリート構造物は、好ましくは複数の防食部材1を含む。複数の防食部材1は、高さ方向Tに連結されている斜壁ブロック41、直壁ブロック42、及び、底塊ブロック43に対して、内壁面40に沿って高さ方向Tに連続して配置され、内壁面40を一体的に被覆している。
【0039】
図1に示すように、この種の組立て式マンホールは、開口部410の径寸法が600mm程度、直壁ブロックの径寸法が900mm程度であり、内部空間400は開口部410で最も縮径された形状となる。従って、複数の防食部材1は、少なくとも斜壁ブロック41の内壁面40を被覆するものと、直壁ブロック42から底塊ブロック43の内壁面40を被覆するものに分けて、高さ方向Tに隣接する継ぎ目102を周知のシール剤などで密閉的(水密的)に接合することが好ましい。
【0040】
裏込め材(接着材)5は、例えばモルタルなどであって、基体部4の内壁面40と、防食部材1の裏面11との相対向面間、及び、内壁面40から腐食部分を除去した後の凹凸部分44に充填され、基体部4と防食部材1とを一体的に結合している。
【0041】
図1を参照して説明したコンクリート構造物の構造によると、コンクリート材料を主成分とする基体部4の内壁面40が防食部材1によって覆われているから、内部空間400に硫化水素ガスが発生したとしても、内壁面40を硫化水素ガスに起因する腐食から保護することができる。
【0042】
ところで、図1に示したように、この種のマンホールは、通常、斜壁ブロック41の開口部410の径寸法が600mm程度、直壁ブロック42から底塊ブロック43までの直筒部分42−43の径寸法が900mm程度であり、内部空間400は開口部410で最も縮径された形状となる。従って、既設マンホールの再構築工事において、直筒部分42−43の径寸法に合わせて筒状の防食部材1を用意したとしても、そのままでは防食部材1を開口部410から内部空間400に導入することができない。
【0043】
上述した問題について、本発明は、防食部材1を内部空間400に導入するための構成について工夫を加えた点に特徴の1つがある。以下、図1を参照して説明したコンクリート構造物について、さらに図2乃至図10に示す具体的な再構築方法の観点から説明する。図2乃至図10は、本発明の一実施形態に係るコンクリート構造物の再構築方法を示す図である。図2乃至図10において、図1に示した構成部分と同一の構成部分には、同一の参照符号を付す。
【0044】
まず、図2に示す工程では、基体部4の内壁面40に生じた腐食部分を、例えば高圧水洗浄により予め除去する。内壁面40に生じた腐食部分を除去した後の凹凸部分44には、エポキシ樹脂やモルタル等の補修剤を充填して、補強してもよい。
【0045】
図3及び図4に示す工程は、図2に示した工程の後の工程であって、湾曲可能な可撓性を有する合成樹脂製薄板(シート)を、予め直筒部分42−43の内壁面形状に沿った直筒状(円筒状)に成形した防食部材1aを用意する。防食部材1aの径寸法は、直筒部分42−43の径寸法の径寸法(900mm程度)より、小さい程度に設定することが好ましい。防食部材1aにおいて、薄板材を筒状に成形した際に生じる端縁の継ぎ目101は、所謂ラップ接合や裏打ち接合によって、密閉的(水密的)に接合されている。
【0046】
図4に示すように、直筒状の防食部材1aを、矢印a1で示す軸方向に沿って凹状に湾曲変形させることにより、一点鎖線で示す開口部410の形状、及び、径寸法に対して、通過可能な形状、及び、径寸法に縮径させる。
【0047】
図5に示す工程は、図3及び図4に示した工程の後の工程であって、縮径させた防食部材1aを、開口部410から内部空間400に導入する。図示していないが、縮径させた防食部材1aは、開口部410を通過させ、内部空間400に導入した後に、変形前の直筒状に復元(拡径)させ、底塊ブロック43の内部底面上に立設される。
【0048】
図6に示す工程は、図5に示した工程の後の工程であって、湾曲可能な可撓性を有する合成樹脂製薄板(シート)を、予め斜壁ブロック41の内壁面形状に沿って斜筒状に成形した防食部材1bを用意し、この防食部材1bを縮径して、開口部410から内部空間400に導入する。防食部材1bは、内部空間400に導入した後、先に導入した防食部材1aに積み重ね、高さ方向Tに隣接する防食部材1a、1bの継ぎ目102を周知のシール材などで密閉的(水密的)に接合する。防食部材1a、1bのそれぞれは、その裏面11と、基体部4の内壁面40との相対向面間に隙間g1が生じるように、予め考慮して径寸法、及び、形状が調節されている。
【0049】
図7に示す工程は、図6に示した工程の後の工程であって、開口部410から支持部材8を導入し、防食部材1a、1bの筒状の内部空間に支持部材8を立設する。支持部材8は、好ましくは、開口部410から導入可能な組立て構造であって、防食部材1a、1bの表面12の形状に追従した表面形状を有している。
【0050】
防食部材1a、1bは、表面12が支持部材8の上に固定され、この支持部材8によって、表面の捻れや皺、凹凸が延ばされる。支持部材8の内部には、好ましくは支持装置80を配置し、防食部材1a、1b、及び、支持部材8の内倒を防止する。
【0051】
図9に示す工程は、図7及び図8に示した工程の後の工程であって、防食部材1a、1bの裏面11と、基体部4の内壁面40との隙間g1に、例えばモルタルなどの裏込め材(接着材)5を充填する。裏込め材5は、隙間g1、及び、内壁面40から腐食部分を除去した後の凹凸部分44に充填される。裏込め材5は、養生期間を経て硬化することにより、基体部4と防食部材1とを一体的に結合する。
【0052】
図10に示す工程は、図9に示した工程の後の工程であって、好ましくは裏込め材5が完全に硬化した後、防食部材1a、1bの内部に立設した支持部材8、及び、支持装置80を分解して、開口部410から搬出する。こ
図2乃至図10を参照して説明したコンクリート構造物の再構築方法によると、簡易な方法、及び、小規模な設備で実行できるから、迅速、且、安価に施工することができる。
【0053】
具体的に、予め筒状に成形した防食部材1a、1bを開口部410の径寸法に合わせて湾曲変形(縮径)させて、内部空間400に導入し、この内部空間400において防食部材1a、1bを変形前の筒状に復元(拡径)させるから、例えば、開口部410が狭い構造のマンホールに対しても防食部材1a、1bを導入することができる。
【0054】
また、防食部材1a、1bのそれぞれは、内部空間400において復元させた状態で、予め継ぎ目101が水密的に接合されている無端の筒状であるから、継ぎ目101の接続作業が不要である。従って、防食部材1a、1bの組立て工数を削減し、もって施工効率を向上することができる。
【0055】
さらに、防食部材1a、1bのそれぞれは、予め継ぎ目101が水密的に接合されている無端の筒状であるから、継ぎ目101のシール作業が不要である。従って、防食効果(耐腐食効果)の信頼性を確保することができる。
【0056】
加えて、防食部材1a、1bのそれぞれは、内部空間400において復元させた状態で、無端の筒状であるから、例えば底塊ブロック43の内部底面に自立させることができる。従って、防食部材1a、1bの内部に支持部材8を導入して、防食部材1a、1bを支持部材8によって支持固定する作業を容易に行うことができる。
【0057】
防食部材1a、1bは、湾曲可能な可撓性を有する合成樹脂製薄板(シート)の両端を接合して筒状に形成されたものでなる。従って、施工に係るコンクリート構造物の径寸法に容易に追従して、様々な径寸法を有する防食部材防食部材1a、1bを迅速、且、安価に用意することができる。
【0058】
また、合成成樹脂製薄板(シート)の両端を接合して筒状に成形して防食部材1a、1bを構成する工程によると、合成樹脂製薄板の製造加工は、既存の設備を用いて行うことが可能であり、量産性に富むから、製造コストを低減することができる。
【0059】
さらに、防食部材1a、1bは、可撓性を有し変形可能であるからから、嵩張らない態様で迅速、且、大量に輸送することができる。
【0060】
図1乃至図10を参照して説明したコンクリート構造物の再構築工法は、周知のコンクリート構造物の腐食問題を踏まえ、新規製造されるコンクリート構造物にも応用することができる。図11は本発明のもう一つの実施形態に係るコンクリート構造物の一部を破断して示す平面図、図12は図11に示したコンクリート構造物の一部を破断して示す正面図である。図11及び図12において、図1乃至図10に示した構成部分と同一の構成部分には、同一の参照符号を付す。
【0061】
図11及び図12に示すコンクリート構造物は、所謂、組立て式の既設マンホールの直壁ブロック(図1乃至図10参照)であって、防食部材1と、基体部4とを含む。
【0062】
防食部材1は、湾曲可能な可撓性を有する薄板状(シート状)を、筒状に成形したものであって、防食効果を有する合成樹脂材料を主成分としている。用いられる合成樹脂材料としては、例えば、不飽和ポリエステル(UP)、ビニルエステル樹脂(VE)、エポキシ樹脂(EP)、フェノール樹脂(PF)などの熱硬化性樹脂や、ポリエチレン樹脂(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリアミド樹脂(PA)などの熱可塑性樹脂を用いることができる。
【0063】
基体部4は、組立て式マンホールの直壁ブロックの例(図8乃至図14参照)であって、内壁面40により区画された内部空間400を有している。
【0064】
図11及び図12に示したコンクリート構造物において、防食部材1は、内壁面40に直接配置され、内壁面40を一体的に被覆している。この構造によっても、図1を参照して説明したコンクリート構造物の利点を全て有することができる。
【0065】
本発明は、防食部材1を内壁面40に配置するための構成について工夫を加えた点に特徴の1つがある。以下、図11及び図12を参照して説明したコンクリート構造物について、さらに図13乃至図17に示す具体的な製造方法の観点から説明する。図13乃至図17は、本発明のもう一つの実施形態に係るコンクリート構造物の製造方法を示す図である。図13乃至図17において、図1乃至図12に示した構成部分と同一の構成部分には、同一の参照符号を付す。
【0066】
まず、湾曲可能な可撓性を有する薄板状(シート状)を、筒状に成形した防食部材1を用意する。筒状に成形した防食部材1の径寸法は、予め、内型装置81の径寸法(900mm程度)より、小さい程度に設定することが好ましい。防食部材1の端縁の継ぎ目101は、所謂ラップ接合や裏打ち接合によって水密的に接合されている。さらに、図13及び図14に示す工程では、内型装置81の巻装面810に、筒状の防食部材1を配置する。内型装置81は、好ましくは既存のコンクリート成型設備において用いられている成型設備であって、後の脱型作業を実施しやすくするために、巻装面810に離型剤が塗布されている。また、防食部材1の外周面には、通常、生コンクリート材料との接着性を高めるため、粒径の大きな砂粒9又は砂利9などが吹き付けられる。
【0067】
図15に示す工程は、図13及び図14に示した工程の後の工程であって、防食部材1の外面から間隔g2を隔てて外型装置82を配置し、外型装置82の内壁面820と、防食部材1の裏面11との間隔g2に、生コンクリート材料4を打設する。間隔g2は、最終成型物の厚みに応じて適宜調節する。外型装置82は、既存のコンクリート成型設備において用いられているものを用いることができる。外型装置82は、後の脱型作業を実施しやすくするために、複数に分割しうる構造を有するとともに、内壁面820に離型剤が塗布されている。
【0068】
図16に示す工程は、図15に示した工程の後の工程であって、間隔g2に打設された生コンクリート材料4は、所定の養生期間を経て基体部4に成形され、防食部材1と一体的に結合される。
【0069】
図17に示す工程は、図16に示した工程の後の工程であって、基体部4の成形後、内型装置81を矢印m3で示す方向に脱型し、外型装置82を矢印m4で示す方向に分離し、コンクリート構造物を脱型する。
【0070】
図13乃至図17を参照して説明したコンクリート構造物の製造方法によると、図1乃至図13を参照して説明した利点を、予め全て有するコンクリート構造物を提供することができる。例えば、コンクリート材料を主成分とする基体部4の内壁面40が防食部材1によって覆われているから、内壁面40を腐食から保護することができる。
【0071】
ところで、図1乃至図17を参照して説明したコンクリート構造物、及び、コンクリート構造物の再構築方法において、防食部材1の裏面11と、基体部4の内壁面40との隙間g1に充填される裏込め材5が、例えば合成樹脂系接着剤である場合には、裏込め材5と、基体部4との材質の相違により、裏込め材5、及び、この裏込め材5により固定されている防食部材1が、内壁面40から剥離しやすいことが確認されている。
【0072】
一方、裏込め材5が、セメントモルタルである場合には、裏込め材5と、合成樹脂を主成分とする防食部材1との材質の相違により、防食部材1が裏込め材5から剥離しやすいことが確認されている。
【0073】
この点、防食部材1と、内壁面40との構造的一体性を確保するための技術として、従来は、防食部材1の裏面11にアンカー突起を設けるなどの対策が採られている。しかし、このようなアンカー突起を防食部材1の裏面11に多数成形するには、新たな金型が必要になるなど過大な設備投資を強いられ、コスト高を招く。
【0074】
上述した問題を解決するため、本発明では、内壁面40との構造的一体性を確保しうるとともに、迅速、且、安価に製造することができる防食部材であって、さらに本発明に係るコンクリート構造物の再構築/製造方法にも用いることができる防食部材を提供する。以下、本発明に係る防食部材について説明する。
【0075】
図18は本発明の一実施形態に係る防食部材の一部平面図、図19は図18に示した防食部材1の一部側面図、図20は図18及び図19に示した防食部材1の一部を拡大して示す断面図である。図18乃至図20を参照すると、本発明の一実施形態に係る防食部材1は、支持部10と、不織布20とを含む。
【0076】
支持部10は、湾曲可能な可撓性を有する薄板状(シート状)であって、一面13と、他面14とを有している。支持部10の厚み寸法d10は、好ましくは0.5〜2.0mm程度である。
【0077】
具体的に支持部10は、繊維強化プラスチック(FRP=Fiber Reinforced Plastics)を主成分としている。本明細書において、繊維強化プラスチックとは、母材となるプラスチック材料の中に、強化用の繊維骨材を混合したものをいう。
【0078】
一般に、母材となるプラスチック材料としては、熱硬化性樹脂が用いられることが多い。例えば、FRPに用いられる熱硬化性樹脂としては、不飽和ポリエステル(UP)、ビニルエステル樹脂(VE)、エポキシ樹脂(EP)、フェノール樹脂(PF)などをあげることができる。一方、母材としてポリエチレン樹脂(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリアミド樹脂(PA)などの熱可塑性樹脂を用いた繊維強化熱可塑性プラスチック(FRTP=Fiber Reinforced Thermo Plastics)もある。
【0079】
さらに、FRPには、母材に混合される繊維骨材の種類に応じて、G−FRP(ガラス繊維を使用)、C−FRP(炭素繊維を使用)、A−FRP(アラミド繊維を使用)などがある。
【0080】
図18乃至図20に示した防食部材1の支持部10は、上述したいずれの構成に係る繊維強化プラスチック(FRP)をも主成分とすることができる。
【0081】
図18乃至図20に示した不織布20は、一面21と、他面22とを有する綿状不織布であって、繊維を3次元方向に重ね合わせて結合した多孔質構造で構成されており、厚み寸法d20の内部にモルタル等の裏込め材(接着剤)5が含浸可能な空間を有している。具体的に不織布20の厚み寸法d20は、好ましくは0.5〜3.0mm程度であって、より好ましくは0.5〜1.5mm程度である。
【0082】
不織布20は、一面21の側が、部分的に支持部10の一面13に食い込んで結合されており、他面22の側が、部分的に支持部10の一面13上に露出している。支持部10と、不織布20との結合構造について、より詳細に説明すると、支持部10の一面13と、一面13に向かい合う不織布20の一面21との相対向部分には、支持部10と、不織布20とが相互に食い込んで結合された埋設部分201が存在しており、この埋設部分201により支持部10と、不織布20とが一体的に結合されている。一方、不織布20は、その厚み寸法d20において、埋設部分201以外の露出部分202が、支持部10の一面13上に配置されている(図3参照)。
【0083】
図18乃至図20を参照して説明した防食部材1において、支持部10は、繊維強化プラスチックを主成分としているから、例えば、硫化水素ガスに起因する腐食作用に対して、優れた防食効果(耐腐食効果)を有する。
【0084】
また、防食部材1、及び、防食部材1を構成する支持部10は、薄板状(シート状)であって、量産性に富む形状であるから、製造コストを低減することができる。
【0085】
さらに、防食部材1、及び、防食部材1を構成する支持部10は、薄板状(シート状)であるから、嵩張らない態様で迅速、且、大量に輸送することができる。
【0086】
図18乃至図20を参照して説明した防食部材1の特徴の1つは、不織布20を有する点にある。不織布20は、繊維を3次元方向に重ね合わせて結合した多孔質構造を有しており、内部(露出部分202)にモルタル等の接着材が含浸可能な空間を有している。この構造によると、露出部分202にモルタル等の接着材を含浸させることができるとともに、含浸した接着材に対して不織布20の多孔質構造が、優れたアンカー効果を奏することができる。
【0087】
ここで、不織布20の厚み寸法d20は、好ましくは0.5〜3.0mm程度であって、より好ましくは0.5〜1.5mm程度である。不織布20の厚み寸法d20が0.5mmより薄いと、露出部分202に対する接着材の含浸量が不足し、アンカー効果を充分に確保することができない。
【0088】
一方、不織布20の厚み寸法d20が3.0mmより厚くなると、不織布20の露出部分202へ、接着材を充分に含浸させることが困難になる。その結果、露出部分202の内部に接着材が含浸していない領域(非含浸領域)が生じやすくなり、不織布20に外的圧力が加えられた場合に、非含浸領域を境にして不織布20の破断事故が生じるなど、不織布20のアンカー効果の信頼性に問題が生じる。
【0089】
また、接着材としてモルタルを用いる場合に、不織布20の厚み寸法d20が3.0mmより厚くなると、露出部分202の表面でモルタルがセメント成分と水分とに濾過(分離)されてしまうことが確認されており、不織布20のアンカー効果の信頼性に問題が生じる。
【0090】
不織布20は、一面21の側が支持部10の一面13に食い込んで結合されているから、不織布20と、支持部10との結合強度が向上する。従って、不織布20が支持部10から剥離するなどの不都合は生ぜず、不織布20のアンカー効果も飛躍的に向上させることができる。
【0091】
図18乃至図20を参照して説明した防食部材1の支持部10と、不織布20との結合構造について、さらに図21に示す製造方法の観点から説明する。図21は、本発明に係る防食部材1の製造方法の一実施形態を示す図である。図21において、図1乃至図20に示した構成部分と同一の構成部分には、同一の参照符号を付す。
【0092】
図21に示す製造方法は、図18乃至図20に示した防食部材1の連続成形工程を示しており、支持フィルム30と、第1の供給装置31と、搬送ローラー32と、第2の供給装置33と、圧着ローラー34と、硬化処理部35と、巻取り装置36とを有する。以下、説明の都合上、支持部10を構成する繊維強化プラスチックの母材として熱硬化性樹脂を用いた場合の例を説明する。
【0093】
第1の供給装置31は、塗布部を有している。塗布部は、例えば支持フィルム30の幅寸法と同寸法の開口幅を有する塗布ノズル(図示しない)を備えており、外部の貯留タンク(図示しない)から供給される未硬化状態(ペースト状)の熱硬化性樹脂を、支持フィルム30の上に連続して塗布する。支持フィルム30は、搬送ローラー32によって矢印m1で示す搬送方向に送られているから、支持フィルム30の上には、母材となる未硬化状態の熱硬化性樹脂が、シート状に塗布形成される。以下、シート状に形成された未硬化状態の熱硬化性樹脂を、熱硬化性樹脂グリーンシート10aと称する。
【0094】
第2の供給装置33は、熱硬化性樹脂グリーンシート10aの中に、繊維骨材を混合させる。具体的に繊維骨材が粉末状(繊維状)である場合、第2の供給装置33は、外部の貯留タンクから供給される繊維骨材を、熱硬化性樹脂グリーンシート10aに連続して付着させ、混合させる。一方、繊維骨材がシート状である場合、第2の供給装置33は、外部から供給される繊維骨材シートを、熱硬化性樹脂グリーンシート10aに載置して、混合させる。第2の供給装置33により、熱硬化性樹脂グリーンシート10aに繊維骨材が混合されて、未硬化状態のFRP薄板材10bが形成される。
【0095】
未硬化状態のFRP薄板材10bは、支持フィルム30の上に形成されており、搬送ローラー32によって支持フィルム30とともに、さらに搬送方向m1に送られる。そして、この未硬化状態のFRP薄板材10bに対して、不織布20を載置する。不織布20は、図示しない供給装置から、搬送ローラー32によって矢印に示す搬送方向m2に搬送され、好ましくは圧着ローラー34によって、未硬化状態のFRP薄板材10bの一面上に、不織布20が載置される。不織布20は、その一面21が、これに接触する未硬化状態のFRP薄板材10bの一面に食い込まされる。なお、支持部10に対する不織布20の食い込み距離(埋設深さ寸法)は、圧着ローラー34の配置、及び、押し圧力を予め設定しておくことにより、調節することができる。
【0096】
一面に不織布20が食い込んだ状態で載置された未硬化状態のFRP薄板材10cは、搬送ローラー32によってさらに搬送方向m1に搬送され、硬化処理部35に送られる。硬化処理部35は、具体的に繊維強化プラスチックの母材として熱硬化性樹脂を用いた場合には、主として加熱処理、さらには圧着処理を行う装置であって、一面に不織布20が食い込んだ状態で載置された未硬化状態のFRP薄板材10cに加熱処理及び圧着処理を行うことにより、両者を結合させた状態で硬化させる。硬化処理部35によって、未硬化状態のFRP薄板材10cは支持部10に形成され、図1乃至図3を参照して説明した防食部材1が得られる。
【0097】
硬化処理により形成された防食部材1は、さらに冷却処理(図示しない)を経て、巻取り装置36によって巻き取られ、裁断処理(図示しない)を経て保管される。そして、具体的な施工条件に応じて、所望の形状に切断加工されて使用される。
【0098】
図21を参照して説明した製造方法によると、図18乃至図21を参照して説明した利点を全て有する防食部材1を、安価で製造することができる。例えば、本発明に係る防食部材1は、既存のFRP成形装置に対し、不織布20を取り付ける工程を追加することで製造可能である。即ち、新たな金型を準備する必要が無いから、過大な設備投資を強いられることがなく、製造コストを低減することができる。
【0099】
さらに、この種の不織布20は、製造、又は、入手が容易であるから防食部材1の製造コストを低減することができる。
【0100】
図18乃至図21を参照して説明した防食部材1は、これを筒状に成形することにより、図1乃至図17を参照して説明したコンクリート構造物の再構築/製造方法の防食部材1として用いることができる。図22は本発明のもう一つの実施形態に係るコンクリート構造物について一部を省略して示す正面断面図、図23は図22の23−23線に沿った部分断面図、図24は図22及び図23に示したコンクリート構造物の一部を拡大して示す図である。
【0101】
図22乃至図24に示すコンクリート構造物(既設マンホール)と、図1を参照して説明したコンクリート構造物(既設マンホール)とを対比すると、両者は防食部材1の内部構成の点で、相違点を有している。以下、防食部材1の内部構成を中心に説明する。
【0102】
図22乃至図24に示すコンクリート構造物(既設マンホール)は、図18乃至図21を参照して説明した防食部材1と、基体部4と、裏込め材(接着剤)5とを含む。
【0103】
基体部4は、所謂、組立て式マンホールであって、内壁面40により区画された内部空間400を有している。防食部材1は、内壁面40に沿って配置され、内壁面40を被覆している。裏込め材5は、例えばモルタルなどであって、基体部4の内周面41と、防食部材1の一面との相対向面間(隙間g1)、及び、内周面41から腐食部分を除去した後の凹凸部分42に充填され、不織布20の内部(露出部分202)に含浸している。
【0104】
図22乃至図24を参照して説明したマンホールの構造によると、図18乃至図21を参照して説明した防食部材1の利点を全て有することができる。例えば、防食部材1は、繊維強化プラスチックを主成分とする支持部10が、内部空間400の側に配置されているから、防食部材1が内周面41に配置された後にも、内部空間400に継続して発生する硫化水素ガスに対して、優れた防食効果(耐腐食効果)を有し、内周面41を腐食から保護することができる。
【0105】
コンクリート構造物の再構築工事において、内周面41を防食部材1で覆う場合、両者の結合にはセメントモルタルが裏込め材5として広く用いられている。従来の防食部材は、合成樹脂材料(又はFRP)のみからなる構成であったから、セメントモルタルと、防食部材との材質の相違により、防食部材がセメントモルタルから剥離しやすい点で改善の余地があった。
【0106】
これに対し、本発明に係る防食部材1は不織布20を有し、不織布20は、繊維を3次元方向に重ね合わせて結合した多孔質構造であって、他面22の側が支持部10の一面上に露出しているから、この露出部分202の内部にモルタル等の裏込め材5を含浸させることにより、裏込め材5に対して不織布20の多孔質構造が、優れたアンカー効果を奏する。従って、内周面41と、防食部材1との結合強度(構造的一体性)を向上することができる。
【0107】
防食部材1は、湾曲可能な薄板状であるから、マンホールの規模や、内周面41の形状に容易に追従して配置し、内周面41を覆うことができる。
【0108】
なお、コンクリート構造物の製造において、内周面41を防食部材1で覆う場合、露出部分202の内部に、生コンクリート材料を含浸させることにより、不織布20が基体部4の内周面41に直接埋設される。即ち、不織布20は、その一面21が部分的に、内周面41に直接食い込んだ状態で結合される。この構造によっても、図18乃至図21を参照して説明した防食部材1、及び、これを用いたコンクリート構造物の利点を全て有することができる。
【0109】
また、図22乃至図24に示すコンクリート構造物は、所謂マンホールであるが、これは例示に過ぎない。本発明に係る防食部材1を用いたコンクリート構造物は、マンホール以外にも、排水管や、さらにはマンホールなど、その使用環境によって表面に腐食等の劣化が生じる全てのコンクリート構造物を含む。図25及び図26は、本発明のもう一つの実施形態に係るコンクリート構造物について一部を省略して示す正面断面図である。
【0110】
図25に示すコンクリート構造物は、所謂、排水管であって、コンクリート製の管体の内周面41により区画された貫通空間を有している。
【0111】
防食部材1の支持部10は、排水管の内周面41に追従して筒状に湾曲されており、不織布20は、一面21の側が支持部10の一面11に食い込んで結合されており、他面22の側が支持部10の一面11上に露出している。防食部材1は、基体部4の内部に配置されており、内周面41を被覆している。裏込め材5は、例えばモルタルなどであって、基体部4の内周面41と、防食部材1の一面との相対向面間、及び、内周面41から腐食部分を除去した後の凹凸部分42に充填され、不織布20の内部に含浸されている(図24参照)。
【0112】
図25を参照して説明したコンクリート構造物の構造によっても、図18乃至図24を参照して説明した防食部材1、及び、これを用いたコンクリート構造物の利点を全て有することができる。例えば、本発明に係る防食部材1の特徴の1つは、不織布20の一面21の側が支持部10の一面11に食い込んで結合されており、他面22の側が支持部10の一面11上に露出(露出部分202)している構成により、露出部分202に含浸させた裏込め材5に対して、不織布20の多孔質構造が、優れたアンカー効果を奏する点にある。従って、不織布20の土台となる支持部10の形状は、基体部4の具体的な形状に追従して設定することができる。
【0113】
しかも、支持部10は、湾曲可能な可撓性を有する薄板状であるから、排水管の内径寸法や、内径面形状に容易に追従して成形することができる、基体部4の具体的な形状に追従することができる。
【0114】
さらに、支持部10は、湾曲可能な可撓性を有する薄板状であるから、図7に示すような断面円形状の管体の他にも、基体部4の形状に追従して様々な形状をとることができる。加えて、不織布20は、多孔質構造であるから、支持部10の形状の変化を阻害することなく、容易に追従することができる。
【0115】
図26に示すコンクリート構造物は、所謂、浄化処理槽であって、図18乃至図24を参照して説明した防食部材1と、基体部4と、裏込め材(接着材)5とを含む。
【0116】
基体部4は、流入管71を通じて集水された下水70を浄化処理するための水槽であって、コンクリート材料を主成分とし、グランドライン6の地下に、内周面41により区画された内部空間(浄化処理空間)40を有している。下水70は、浄化処理された後、流出管72を通じて次の浄化処理段階に送水される。
【0117】
浄化処理槽は、複数の防食部材1を含む。防食部材1のそれぞれは、図18乃至図21を参照して説明したものでなり、複数が内周面41に沿って連続して配置され、内周面41を被覆している。
【0118】
裏込め材5は、例えばモルタルなどであって、基体部4の内周面41と、防食部材1の一面との相対向面間(隙間g1)、及び、内周面41から腐食部分を除去した後の凹凸部分42に充填され、不織布20の内部(露出部分202)に含浸している。
【0119】
図26を参照して説明したコンクリート構造物の構造によっても、図18乃至図24を参照して説明した防食部材1、及び、これを用いたコンクリート構造物の利点を全て有することができる。
【0120】
以上、好ましい実施例を参照して本発明の内容を具体的に説明したが、本発明の基本的技術思想及び教示に基づいて、当業者であれば、種種の変形態様を採り得ることは自明である。
【図面の簡単な説明】
【0121】
【図1】本発明の一実施形態に係るコンクリート構造物について一部を省略して示す正面断面図である。
【図2】本発明の一実施形態に係るコンクリート構造物の再構築方法を示す図である。
【図3】図2に示した工程の後の工程を示す斜視図である。
【図4】図3に示した工程の平面図である。
【図5】図3及び図4に示した工程の後の工程を示す図である。
【図6】図5に示した工程の後の工程を示す図である。
【図7】図6に示した工程の後の工程を示す図である。
【図8】図7の8−8線に沿った部分断面図である。
【図9】図7及び図8に示した工程の後の工程を示す図である。
【図10】図9に示した工程の後の工程を示す図である。
【図11】本発明のもう一つの実施形態に係るコンクリート構造物の一部を破断して示す平面図である。
【図12】図11に示したコンクリート構造物の一部を破断して示す正面図である。
【図13】本発明のもう一つの実施形態に係るコンクリート構造物の製造方法を示す図である。
【図14】図13に示した工程の一部を破断して示す正面図である。
【図15】図13及び図14に示した工程の後の工程を示す図である。
【図16】図15に示した工程の後の工程を示す図である。
【図17】図16に示した工程の後の工程を示す図である。
【図18】本発明の一実施形態に係る防食部材の一部平面図である。
【図19】図18に示した防食部材の一部側面図である。
【図20】図18及び図19に示した防食部材の一部を拡大して示す断面図である。
【図21】本発明に係る防食部材の製造方法の一実施形態を示す図である。
【図22】本発明のもう一つの実施形態に係るコンクリート構造物について一部を省略して示す正面断面図である。
【図23】図22の23−23線に沿った部分断面図である。
【図24】図22及び図23に示したコンクリート構造物の一部を拡大して示す図である。
【図25】本発明のもう一つの実施形態に係るコンクリート構造物について一部を省略して示す正面断面図である。
【図26】本発明のもう一つの実施形態に係るコンクリート構造物について一部を省略して示す正面断面図である。
【符号の説明】
【0122】
1a、1b 防食部材
10 支持部
11 裏面
4 基体部
40 内壁面
400 内部空間
5 裏込め材
8 支持部材
81 内型装置
82 外型装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性を有する合成樹脂製薄板材の両端を接合して形成した筒状の防食部材を湾曲させて、コンクリート構造物の内部空間に導入し、
前記内部空間において前記防食部材を変形前の筒状に復元させ、
前記コンクリート構造物の内壁面と、前記防食部材の裏面との間に隙間を有する状態で、前記防食部材を内側から前記支持部材によって支持し、
前記隙間に裏込め材を充填し、前記コンクリート構造物の内壁面と、前記防食部材とを一体的に結合させる工程を含む、
コンクリート構造物の再構築方法。
【請求項2】
請求項1に記載されたコンクリート構造物の再構築方法であって、さらに前記防食部材は、支持部と、不織布とを有しており、
前記支持部は、湾曲可能な可撓性を有する薄板状であって、繊維強化プラスチックを主成分としており、
前記不織布は、一面側が前記支持部の一面に食い込んで結合されており、他面側が前記支持部の一面上に露出している、
前記防食部材を用いたコンクリート構造物の再構築方法。
【請求項3】
可撓性を有する合成樹脂製薄板材の両端を接合して形成した筒状の防食部材を内型装置に取り付け、前記防食部材を内側から前記内型装置によって支持し、
前記防食部材の裏面から間隔を隔てて外型装置を配置し、
前記外型装置の内面と、前記防食部材の裏面との間の隙間に、コンクリート材料を打設する工程を含む、コンクリート構造物の製造方法。
【請求項4】
請求項3に記載されたコンクリート構造物の製造方法であって、さらに前記防食部材は、支持部と、不織布とを有しており、
前記支持部は、湾曲可能な可撓性を有する薄板状であって、繊維強化プラスチックを主成分としており、
前記不織布は、一面側が前記支持部の一面に食い込んで結合されており、他面側が前記支持部の一面上に露出している、
前記防食部材を用いたコンクリート構造物の製造方法。
【請求項5】
支持部と、不織布とを含む防食部材であって、
前記支持部は、湾曲可能な可撓性を有する薄板状であって、繊維強化プラスチックを主成分としており、
前記不織布は、一面側が前記支持部の一面に食い込んで結合されており、他面側が前記支持部の一面上に露出している、防食部材。
【請求項6】
防食部材と、基体部とを含むコンクリート構造物であって、
前記防食部材は、請求項5に記載されたものでなり、
前記基体部は、内壁面により区画された内部空間を有しており、前記内壁面が、前記防食部材によって覆われている、コンクリート構造物。
【請求項1】
可撓性を有する合成樹脂製薄板材の両端を接合して形成した筒状の防食部材を湾曲させて、コンクリート構造物の内部空間に導入し、
前記内部空間において前記防食部材を変形前の筒状に復元させ、
前記コンクリート構造物の内壁面と、前記防食部材の裏面との間に隙間を有する状態で、前記防食部材を内側から前記支持部材によって支持し、
前記隙間に裏込め材を充填し、前記コンクリート構造物の内壁面と、前記防食部材とを一体的に結合させる工程を含む、
コンクリート構造物の再構築方法。
【請求項2】
請求項1に記載されたコンクリート構造物の再構築方法であって、さらに前記防食部材は、支持部と、不織布とを有しており、
前記支持部は、湾曲可能な可撓性を有する薄板状であって、繊維強化プラスチックを主成分としており、
前記不織布は、一面側が前記支持部の一面に食い込んで結合されており、他面側が前記支持部の一面上に露出している、
前記防食部材を用いたコンクリート構造物の再構築方法。
【請求項3】
可撓性を有する合成樹脂製薄板材の両端を接合して形成した筒状の防食部材を内型装置に取り付け、前記防食部材を内側から前記内型装置によって支持し、
前記防食部材の裏面から間隔を隔てて外型装置を配置し、
前記外型装置の内面と、前記防食部材の裏面との間の隙間に、コンクリート材料を打設する工程を含む、コンクリート構造物の製造方法。
【請求項4】
請求項3に記載されたコンクリート構造物の製造方法であって、さらに前記防食部材は、支持部と、不織布とを有しており、
前記支持部は、湾曲可能な可撓性を有する薄板状であって、繊維強化プラスチックを主成分としており、
前記不織布は、一面側が前記支持部の一面に食い込んで結合されており、他面側が前記支持部の一面上に露出している、
前記防食部材を用いたコンクリート構造物の製造方法。
【請求項5】
支持部と、不織布とを含む防食部材であって、
前記支持部は、湾曲可能な可撓性を有する薄板状であって、繊維強化プラスチックを主成分としており、
前記不織布は、一面側が前記支持部の一面に食い込んで結合されており、他面側が前記支持部の一面上に露出している、防食部材。
【請求項6】
防食部材と、基体部とを含むコンクリート構造物であって、
前記防食部材は、請求項5に記載されたものでなり、
前記基体部は、内壁面により区画された内部空間を有しており、前記内壁面が、前記防食部材によって覆われている、コンクリート構造物。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図2】
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【図17】
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【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【公開番号】特開2008−88715(P2008−88715A)
【公開日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−271414(P2006−271414)
【出願日】平成18年10月3日(2006.10.3)
【出願人】(591084654)エバタ株式会社 (35)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年10月3日(2006.10.3)
【出願人】(591084654)エバタ株式会社 (35)
【Fターム(参考)】
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