説明

コンクリート表面検査装置

【課題】様々な汚れが付着しているコンクリート表面であっても、ひび割れや段差の存在を簡単に知ることができる。
【解決手段】コンクリート表面3に欠陥部分(ひび割れや段差)3aがある場合、ライト4A,4Bの照射方向によって該欠陥部分3aに影が出来たり出来なかったりする。いま、所定の領域Aについての複数の画像データを二値化処理し、該二値化処理した複数の画像データの差分画像を生成したとする。コンクリート表面の汚れは、どの画像データにも映っているので、差分画像では相殺されて現れないが、欠陥部分3aの影は、出来たり出来なかったりするので、差分画像に現れる。したがって、該差分画像を見れば、欠陥部分3aの存在を簡単に知ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート表面を撮影した画像を利用して該表面の検査を行うコンクリート表面検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コンクリート表面(例えば、トンネル壁面)の剥がれ落ちや浸水等を未然に防止するためのものとして、コンクリート表面を撮影した画像を使ってひび割れや段差(以下、“ひび割れ等”とする)の有無を検知するようにした装置(コンクリート表面検査装置)が提案されている(例えば、特許文献1及び2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−212309号公報
【特許文献2】特開2009−133085号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、通常のコンクリート表面では様々な汚れが付着しているので、“ひび割れ等”か単なる“汚れ”かを写真(撮影した画像)だけで判断することは困難であった。
【0005】
また、このような問題を解決する方法としてはフラクタル理論を利用してひび割れ等を検出する方法があるが、そのような方法を実施しようとすると装置の構成が複雑化し、高価になってしまうという問題があった。
【0006】
本発明は、安価で簡単な構造でありながらコンクリート表面を検査できるコンクリート表面検査装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に係る発明は、図1に例示するものであって、コンクリート表面(3)を撮影した画像を利用して該表面(3)の検査を行うコンクリート表面検査装置(1)において、
コンクリート表面(3)を照明する複数のライト(4A,4B)と、
該複数のライト(4A,4B)を選択的に点灯させる点灯制御部(8)と、
該ライト(4)により照明されるコンクリート表面(3)を撮影するカメラ(5)と、
該カメラ(5)からの画像データを順次二値化処理する二値化処理部(6)と、
前記二値化処理した複数の画像データであって、コンクリート表面(3)の所定の領域(A)に関する複数の画像データ(例えば、図2(a) 及び(b) に示す2枚の画像データ)の差分画像(同図(c) 参照)を生成する差分画像生成部(7)と、を備えたことを特徴とする。
【0008】
請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明において、図3(a) (b) に符号14A,14B,14C,14Dで例示するように、前記複数のライトが、コンクリート表面(3)に沿うと共に前記カメラ(5)を囲むように配置されてなることを特徴とする。
【0009】
請求項3に係る発明は、請求項2に係る発明において、図3(b) に例示するように、前記点灯制御部(8)が、前記複数のライト(14A,14B,14C,14D)を順番に点灯するように構成されたことを特徴とする。
【0010】
請求項4に係る発明は、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の発明において、少なくとも前記ライト(4A,4B、又は14A,14B,14C,14D)及び前記カメラ(5)を搭載して移動する移動装置(図1の符号2参照)を備えたことを特徴とする。
【0011】
請求項5に係る発明は、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の発明において、前記複数のライト(4A,4B、又は14A,14B,14C,14D)は、色温度が異なる異種のライトであることを特徴とする。
【0012】
請求項6に係る発明は、請求項5に係る発明において、前記複数のライトの内の一つがハロゲンランプであり、前記複数のライトの内の一つがLEDランプであることを特徴とする。
【0013】
請求項7に係る発明は、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の発明において、前記複数のライト(4A,4B、又は14A,14B,14C,14D)は、色温度が略同じの同種のライトであることを特徴とする。
【0014】
請求項8に係る発明は、請求項7に係る発明において、前記複数のライトが、ハロゲンランプ又はLEDランプであることを特徴とする。
【0015】
請求項9に係る発明は、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の発明において、前記複数のライトは、色温度が異なる異種の複数のライト、及び色温度が略同じの同種の複数のライトが混在されてなり、
前記ライト制御部(8)によって異種の複数のライトを選択的に点灯させてひび割れを検出し、該ライト制御部(8)によって同種の複数のライトを選択的に点灯させて段差を検出するように構成されたことを特徴とする。
【0016】
なお、括弧内の番号などは、図面における対応する要素を示す便宜的なものであり、従って、本記述は図面上の記載に限定拘束されるものではない。
【発明の効果】
【0017】
請求項1に係る発明によれば、差分画像を利用しているので、様々な汚れが付着しているコンクリート表面であっても、ひび割れ等の存在を簡単に知ることができる。また、二値化処理等を利用しているだけなので、フラクタル理論を利用するような装置に比べて構造は簡単であり、コストも低く抑えることができる。
【0018】
請求項2及び3に係る発明によれば、ひび割れ等の方向が縦横斜めのどの方向であったとしても該ひび割れ等に影が出来、差分画像からひび割れ等の有無を検出することができる。
【0019】
請求項4に係る発明によれば、広範囲に亘ってコンクリート表面の検査を行うことができる。
【0020】
請求項5及び6に係る発明によれば、ひび割れを精度良く検出することができる。
【0021】
請求項7及び8に係る発明によれば、段差を精度良く検出することができる。
【0022】
請求項9に係る発明によれば、ひび割れ及び段差の両方を精度良く検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】図1は、本発明に係るコンクリート表面検査装置の構成の一例を示す模式図である。
【図2】図2(a) は、ひび割れの影が映っている二値化画像の例を示す模式図であり、同図(b)は、ひび割れの影が映っていない二値化画像の例を示す模式図であり、同図(c) は、それらの差分画像の例を示す模式図である。
【図3】図3(a) は、本発明に係るコンクリート表面検査装置の構成の一例を示す側面図であり、同図(b)は、同図(a) のB−B矢視図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図1乃至図3に沿って、本発明の実施の形態について説明する。
【0025】
本発明に係るコンクリート表面検査装置は、コンクリート表面を撮影した画像を利用して該表面の検査を行う装置であって、図1に符号1で例示するように、
・ コンクリート表面3を照明する複数のライト4A,4Bと、
・ 該複数のライト4A,4Bを選択的に点灯させる点灯制御部8と、
・ 該ライト4により照明されるコンクリート表面3を撮影するカメラ5と、
・ 該カメラ5からの画像データを順次二値化処理する二値化処理部6と、
・ 前記二値化処理した複数の画像データであって、コンクリート表面3の所定の領域(例えば、符号A参照)に関する複数の画像データの差分画像を生成する差分画像生成部7と、
を備えたことを特徴とする。このうちの点灯制御部8としては、
・ 手動でライト4A,4Bの切り換えを行うスイッチ
・ カメラ5のシャッターに同期して自動で点灯切り換えを行うような制御ユニット
などを挙げることができる。
【0026】
コンクリート表面3にひび割れや段差等の欠陥部分3aがあると、照明を当てる方向によって影が出来たり出来なかったりする。いま、所定の領域Aについて、前記二値化処理部6が欠陥部分3aに影3bが出来ている二値化画像(例えば、図2(a) 参照)と、欠陥部分3aに影が出来ていない二値化画像(例えば、図2(b) 参照)とを生成したとする。図中の符号3bは、欠陥部分に出来た影を捉えたものであり、それ以外のもの(黒い点や線や、黒塗り部分)はコンクリート表面の汚れ等である。そして、前記差分画像生成部7が、それらの二値化画像の差分画像を生成すると、図2(c)
に示すように、欠陥部分の影3bのみが抽出され、欠陥部分の存在を簡単に知ることができる。本発明によれば、差分画像を利用しているので、様々な汚れが付着しているコンクリート表面であっても、ひび割れ等の存在を簡単に知ることができる。また、二値化処理等を利用しているだけなので、フラクタル理論を利用するような装置に比べて構造は簡単であり、コストも低く抑えることができる。
【0027】
なお、検査対象のコンクリート表面としては、例えば、トンネル壁面を挙げることができる。また、少なくとも上述のライト4A,4Bやカメラ5を移動装置2に搭載しておいて、ライト4A,4Bやカメラ5を移動させながら撮影するようにしても良い。これにより、広範囲に亘る検査を簡単に行うことができる。そのような移動装置2としては、
・ 自動車等のような自走式のもの
・ 外部電源からの電気の供給を受けて駆動される台車
・ 人力で移動される台車
などを挙げることができる。残りの二値化処理部6や差分画像生成部7や点灯制御部8は、移動装置2に搭載しておいても、搭載しておかなくても良い。このような移動装置2によって移動しながら撮影するようにした場合には、差分画像上で見つけたひび割れ等がコンクリート表面上のどの位置にあるか(例えば、該ひび割れ等が実際のトンネルのどの部分にあるか)を知る必要があるが、該ひび割れ等が映っている写真が何枚目に撮影されたものであるか等の情報や、他の公知技術に基づいて知るようにすると良い。
【0028】
ところで、前記複数のライトは、図3(a) (b) に示すように、
・ コンクリート表面3に沿う位置(つまり、コンクリート表面3と各ライトとの距離がほぼ等しくなる位置)であって、
・ しかも、前記カメラ5を囲むような位置(例えば、図3(b) に符号14A,14B,14C,14Dに示すように、カメラ5の上下左右の4つの位置)に、
配置しても良い。その場合、前記点灯制御部8が、これらの複数のライト14A,14B,14C,14Dを順番に(例えば、例えば、矢印に示す順番で)点灯するように構成しておくと良い。そのようにした場合には、ひび割れ等の方向が縦横斜めのどの方向であったとしても該ひび割れ等に影が出来、差分画像からひび割れ等の有無を検出することができる。
【0029】
また、前記複数のライト4A,4B(或いは14A,14B,14C,14D)は、色温度が異なる異種のライトにすると良い。例えば、ライトを2個設ける場合には、一つをハロゲンランプ(色温度は2000K程度)とし、他をLEDランプ(色温度は10000K程度)にすると良い。そのようにした場合には、
・ 一方のライトだけを点灯した状態でのカメラ5による撮影
・ 他方のライトだけを点灯した状態でのカメラ5による撮影
・ 各撮影画像の二値化処理
・ 該二値化処理した画像の差分画像生成
を実施することでひび割れを精度良く検出することができる。つまり、色温度が違うライトの使用は、段差の検出よりもひび割れの検出に向いている。
【0030】
さらに、前記複数のライト4A,4B(或いは14A,14B,14C,14D)は、色温度が略同じの同種のライトにすると良い。例えば、複数のライトの全てをハロゲンランプにするか、複数のライトの全てをLEDランプにすると良い。そのようにした場合には、
・ 一方のライトだけを点灯した状態でのカメラ5による撮影
・ 他方のライトだけを点灯した状態でのカメラ5による撮影
・ 各撮影画像の二値化処理
・ 該二値化処理した画像の差分画像生成
を実施することで段差を精度良く検出することができる。つまり、色温度が略同じであるライトの使用は、ひび割れよりも段差の検出に向いている。
【0031】
なお、色温度が異なる異種の複数のライトと、色温度が略同じの同種の複数のライトとを混在させておいて、前記ライト制御部8によって異種の複数のライトを選択的に点灯させてひび割れを検出し、該ライト制御部8によって同種の複数のライトを選択的に点灯させて段差を検出するように構成しておくと、ライト制御部8による点灯制御によってひび割れ及び段差の両方を精度良く検出することが可能となる。
【0032】
また、上述のカメラ5は、
・ 所定の間隔で静止画像を得るデジタルカメラであっても、
・ 或いは、動画像を得るビデオカメラであっても、
どちらでも良い。
【符号の説明】
【0033】
1 コンクリート表面検査装置
2 移動装置
3 コンクリート表面
4A,4B ライト
14A,14B,14C,14D ライト
5 カメラ
6 二値化処理部
7 差分画像生成部
8 点灯制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリート表面を撮影した画像を利用して該表面の検査を行うコンクリート表面検査装置において、
コンクリート表面を照明する複数のライトと、
該複数のライトを選択的に点灯させる点灯制御部と、
該ライトにより照明されるコンクリート表面を撮影するカメラと、
該カメラからの画像データを順次二値化処理する二値化処理部と、
前記二値化処理した複数の画像データであって、コンクリート表面の所定の領域に関する複数の画像データの差分画像を生成する差分画像生成部と、
を備えたことを特徴とするコンクリート表面検査装置。
【請求項2】
前記複数のライトは、コンクリート表面に沿うと共に前記カメラを囲むように配置されてなる、
ことを特徴とする請求項1に記載のコンクリート表面検査装置。
【請求項3】
前記点灯制御部は、前記複数のライトを順番に点灯するように構成された、
ことを特徴とする請求項2に記載のコンクリート表面検査装置。
【請求項4】
少なくとも前記ライト及び前記カメラを搭載して移動する移動装置、
を備えたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のコンクリート表面検査装置。
【請求項5】
前記複数のライトは、色温度が異なる異種のライトである、
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のコンクリート表面検査装置。
【請求項6】
前記複数のライトの内の一つはハロゲンランプであり、前記複数のライトの内の一つはLEDランプである、
ことを特徴とする請求項5に記載のコンクリート表面検査装置。
【請求項7】
前記複数のライトは、色温度が略同じの同種のライトである、
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のコンクリート表面検査装置。
【請求項8】
前記複数のライトは、ハロゲンランプ又はLEDランプである、
ことを特徴とする請求項7に記載のコンクリート表面検査装置。
【請求項9】
前記複数のライトは、色温度が異なる異種の複数のライト、及び色温度が略同じの同種の複数のライトが混在されてなり、
前記ライト制御部によって異種の複数のライトを選択的に点灯させてひび割れを検出し、該ライト制御部によって同種の複数のライトを選択的に点灯させて段差を検出するように構成された、
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のコンクリート表面検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−117788(P2011−117788A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−274237(P2009−274237)
【出願日】平成21年12月2日(2009.12.2)
【出願人】(000174943)三井住友建設株式会社 (346)
【Fターム(参考)】