説明

コンクリート製品の敷設方法

【課題】作業者の熟練度合いを問わず安全かつ容易な施工が可能で、工期の短縮化及びコスト低廉が図れる耐久性の高いコンクリート製品の敷設方法を提供する。
【解決手段】下地造成工程Aと、裏面所定箇所に所定の間隔をあけて複数個のU字形安全筋6と高さ調整部材7が突設されているコンクリート製品5を、そのU字形安全筋に吊り上げ装置を係止させてコンクリート製品を吊り上げ、そして、所定位置まで吊り上げ状態のまま移動させ、下地の上面にU字形安全筋を介してコンクリート製品を仮置きし、その後、U字形安全筋に係止している吊り上げ装置を取り外すコンクリート製品仮置き工程Bと、下地の上面に仮置きしたコンクリート製品の高さを調整してコンクリート製品を据付けるコンクリート製品据付工程Cと、下地とコンクリート製品との間の空間K2に生コンクリートを流し込むコンクリート打設工程Dとを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート製品、例えば擁壁、歩道ブロック、階段ブロック、張ブロックなどのコンクリート製品を施工領域に敷設する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、合板や木材を加工した型枠に生コンクリートを投入打設して擁壁、水路、ボックスなどの構造物が現場施工によって造られていた。そして、この型枠の大部分は構造物完成後、廃棄処分されていたのが現状である。しかし、昨今の地球温暖化対策や環境保全の声が高まる中、このような合板や木材からなる型枠の使用が抑制されてきている。また、型枠大工と言われる熟練した技能者の高齢化、及び「きつい、汚い、危険」との土木現場の悪印象から、後継者不足、労働者減少という問題も発生している。そこで、このような種々の問題が発生していることを契機として、現在、上述した現場施工の構造物から、工場生産のコンクリート製品を現場で据付ける工法へと移り変わってきている。
【0003】
このようなコンクリート製品を現場で据付ける工法の一例として、特許文献1に開示の工法が知られている。
すなわち、工場にて所定形状のコンクリート製品(コンクリート製排水溝ブロック)を成形し、そのコンクリート製品を施工現場に運搬して、所定の施工現場に据付固定する工法の一つである。図3(a)は、従来工法の概略工程を示すフロー図である。
(1)まず、施工面の堀削、基面整正し、その後、基礎砕石を裏込め・敷均し・転圧し、そして砕石押さえコンクリート(均しコンクリート)を打ち込んで基礎を整え、その後、高さ調整のためモルタルを敷均し、そして最後に鏝仕上げして基礎コンクリート面(モルタル面)を形成する。次に、数日掛けてこの基礎コンクリート面(モルタル面)を養生する(下地造成工程・養生工程)。
(2)そして、この養生工程を終えた段階で、コンクリート製品を仮置きし(コンクリート製品仮置き工程)、そして、基礎コンクリートとコンクリート製品との間に所定の楔片などの高さ調整治具を差し込んで、基礎コンクリートとコンクリート製品との間に所定の空間を形成する(コンクリート製品据付工程)。
(3)そして次に、基礎コンクリートとコンクリート製品との間の空間に生コンクリートを打設して施工を完了していた(コンクリート打設工程)。
【特許文献1】特公平7−45753号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、このような従来の工法では、次のような課題を抱えていたものである。
(1)下地面が施工基準面よりも高い場合、基準値内にコンクリート製品の据付ができないため、施工基準面よりも1cm〜2cm程度低めに下地面(モルタル)を仕上げる必要があった。このような仕上げは、熟練した職人による手作業で行われるため、その労力が多大であり、特に真夏の炎天下での施工や、真冬の寒空の下での施工にあっては大変な作業を強いられることとなっていた。
また、従来、この種の工法の場合、下地面(モルタル面)の仕上げによって工事の出来不出来が左右されるものであった。従って、現場作業では、モルタル面が可能な限り平滑・平面となるように、木鏝、金鏝などで丁寧に仕上げる必要性があり、多くの時間と労力が強いられていた。さらに、このような作業はある程度の技術を有する者でなければできず、作業者が限定されてしまうという課題も抱えていた。
【0005】
(2)仮に下地面を鏡面のように仕上げることができたとしても、JIS規格では、コンクリート製品自体の控え長(厚さ)の許容誤差が±5mm迄許容されており、コンクリート製品を据付たとき、隣接するコンクリート製品との間で最大10mmの落差が出来てしまうこととなる。このような落差が隣接するコンクリート製品の間で生じてしまうのでは構造物の仕上がり精度が低くひいては、不適格な工事となる虞があった。
【0006】
(3)楔片などの高さ調整治具を基礎コンクリートとコンクリート製品との間に介在させるにあたり、基礎コンクリート上に仮置きしたコンクリート製品との間にバールなどを差し込んで持ち上げたり、数人の作業者が素手で持ち上げたりしていた。
しかし、コンクリート製品は現場での施工を考慮したものではなかったため、コンクリート製品を持ち上げている作業中あるいは楔片を所定位置にかませている作業中に、誤ってコンクリート製品が落下してしまうことがあり、作業者の手や足などがコンクリート製品の下敷きになって大怪我をすることもあった。
【0007】
(4)下地がモルタルを敷均して構成するものであったため、降雨、降雪あるいは悪天候などの場合には、モルタルの敷均し工程ができなかった。
さらに、モルタルを敷均した後、所定時間養生しなければならなかったため、その養生に日数が掛かり、その結果、工期が全体的に長期にわたってしまい、結果的にコスト高を招いていた。
また、モルタルにて構成された下地と、打設される生コンクリートとは一体化されず、その耐久性の面において課題を有していた。
【0008】
本発明は、このような問題を解決するためになされており、その目的とするところは、作業者の熟練度合いを問わず安全かつ容易な施工が可能で、工期の短縮化及びコスト低廉が図れる耐久性の高いコンクリート製品の敷設方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このような目的を達成するために、第1の発明は、所定の造成領域に下地を造成する下地造成工程と、
裏面所定箇所に、所定の間隔をあけて複数個のU字形安全筋と高さ調整部材が突設されているコンクリート製品を、そのU字形安全筋に吊り上げ装置の先端金具を係止させてコンクリート製品を吊り上げ、
そして、所定位置まで吊り上げ状態のまま移動させ、前記造成した下地の上面所定位置に、前記U字形安全筋と高さ調整部材のいずれかを介してコンクリート製品を仮置きし、その後、U字形安全筋に係止している前記先端金具を取り外すコンクリート製品仮置き工程と、
前記下地の上面に仮置きしたコンクリート製品の高さを調整してコンクリート製品を据付けるコンクリート製品据付工程と、
前記下地とコンクリート製品との間の空間に生コンクリートを流し込むコンクリート打設工程と、
を含むことを特徴とするコンクリート製品の敷設方法としたことである。
【0010】
第2の発明は、第1の発明において、下地造成工程は、
施工領域を整地してなる整地面と、該整地面上に砕石を敷設してなる砕石面とで構成された下地を造成することを含む、ことを特徴とするコンクリート製品の敷設方法としたことである。
【0011】
第3の発明は、第1又は第2の発明において、コンクリート製品据付工程は、
高さ調整ボルトで、下地の上面に仮置きしたコンクリート製品の施工基準面高さを調整するとともにその高さ位置を固定する、ことを特徴とするコンクリート製品の敷設方法としたことである。
【0012】
第4の発明は、第3の発明において、コンクリート製品据付工程は、
下地とコンクリート製品との間の空間にジャッキを配し、該ジャッキによってコンクリート製品の施工基準面高さを調整し、
その後、高さ調整ボルトでコンクリート製品の高さ位置を固定し、
その後、前記ジャッキを取り外す工程を含む、ことを特徴とするコンクリート製品の敷設方法としたことである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、作業者の熟練度合いを問わず安全かつ容易な施工が可能で、工期の短縮化及びコスト低廉が図れる耐久性の高いコンクリート製品の敷設方法を提供できた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明コンクリート製品の敷設方法の一実施形態について説明する。なお、本実施形態は本発明の一例にすぎずなんらこれに限定解釈されるものではなく、本発明の範囲内で設計変更可能である。本発明は、コンクリート製品、例えば擁壁、舗道、階段ブロック、張ブロックなどの予め工場で作られたコンクリート製品(コンクリート二次製品ともいう。)を施工領域に敷設するための工法で、特に大型のコンクリート製品の敷設に適している。
【実施例1】
【0015】
図1は本発明の実施例1で、工程の流れを示す概略断面図、図2はコンクリート製品の一例で、裏側から見た状態の斜視図である。
【0016】
本発明のコンクリート製品の敷設方法の実施例1は、(1)下地造成工程A→(2)コンクリート製品仮置き工程B→(3)コンクリート製品据付工程C→(4)コンクリート打設工程Dにて構成されている。次に、それぞれの工程について説明する。
【0017】
下地造成工程Aは、所定の造成領域に下地を造成する工程で、本実施例では、施工領域を整地してなる整地面造成工程A1と、該整地面造成工程A1によって整地された整地面1上に砕石を敷設する砕石面造成工程A2とにより下地4を構成するものとしている(図1(a)及び(b))。
【0018】
ここで、整地面造成工程A1とは、造成する領域(施工面)の堀削、基面整正する工程をいう(図1(a))。砕石面造成工程A2とは、前記整地面造成工程A1によって造成された整地面1上に基礎砕石を敷均し、転圧して砕石面2を造成する工程をいう(図1(b))。これら各工程は従来周知の工程が採用可能であるため特に詳細な説明は省略する。すなわち、本実施例によれば、従来の工法のように基礎コンクリート面を構成するための生コンクリートの打設作業、養生などが不要となる。従って、時間的・費用的なコスト軽減となる。
【0019】
また、本実施例の下地造成工程Aでは、後述するように下地4とコンクリート製品5との間に所定の空間K1を形成して仮置きするため、この下地4を鏡面仕上げする必要がない(粗面状態でよい。)。従って、従来のように下地4の上面を鏡面仕上げするための熟練工を必要とせず、人員確保のための労力及びコストの軽減となる。
【0020】
なお、下地造成工程Aは本実施例の工程に何等限定されず、その他の下地造成工程を採用することも可能である。すなわち、砕石面2の上面に基礎コンクリートを打設することで下地4を構成することもある。このような場合であっても、後述するコンクリート打設工程Dにおいて、打設される生コンクリート(後打ちコンクリート)が固化するときに基礎コンクリート面の表面は、鏡面仕上げする必要がなく、粗面である方が胴込コンクリートとの一体化が強固になされる。従って、このような形態を採用する場合であっても、従来のように鏡面仕上げをするための熟練工を必要としないため、人員確保のための労力、コストの軽減となる。
【0021】
本実施例で用いられるコンクリート製品5は、工場内において型枠成型され、裏面5aの所定箇所に、所定の間隔をあけて複数個のU字形安全筋6…と高さ調整部材7…が突設されている。
【0022】
本実施例では、所定厚さの平面視略矩形状に形成された重量のある大型の張りブロック(コンクリート製品)5を一例として採用しており、この張りブロック5の裏面5aに所定間隔をあけて8個のU字形安全筋6が両端を埋設した状態で一体に突設されている。
また、この張りブロック5の裏面5aにおける四隅部分に4個の高さ調整部材7が一端側を埋設した状態で一体に突設されている。さらに、この張りブロック5の両長辺部分5c,5cには、敷設する際に隣接する張りブロック5の長辺部分5cとの接合容易化を図るため、重ね合わせ片5d…を突設している。本実施例では、一方の長辺部分5cに突設される重ね合わせ片5dは、裏面5aから同一平面をもって延設されるとともに、表面5f方向へと傾斜面(重ね合わせ面)5eをもって形成されており、他方の長辺部分5cに突設される重ね合わせ片5dは、表面5fから同一平面をもって延設されるとともに、裏面5a方向へと傾斜面(重ね合わせ面)5gをもって形成されている。この両傾斜面(重ね合わせ面)5e,5gは、隣接する張りブロック5同士を接合する際に、その面5e,5g同士が重なるように同一の傾斜角度をもって形成されている。
【0023】
U字形安全筋6は、左右の脚部6a,6aと該脚部6a,6a間にわたって架け渡される接地部6bとで正面視略U字形状に形成された周知のU字形安全筋で、コンクリート製品5の裏面5aにおいて縁部5bから所定距離内方(矢印N方向)に入った位置に、両脚部6a,6aの端部をコンクリート製品5の裏面5aに埋設して所定の高さHに突設されて備えられている。全てのU字形安全筋6…の突設高さは、全て同一の高さH位置となるように成形時に調整する。
【0024】
また、それぞれのU字形安全筋6は、長辺部分5c,5c間にわたって同一線上に所定間隔をあけて2個、そして短辺部分5h,5h間にわたって同一線上に所定間隔をあけて4個ずつ突設されている。この場合、長辺部分5c,5c間にわたって設けられるU字形安全筋6,6は、それぞれの孔部6c,6cの中心を通る線S1を同一として備えられている。また、短辺部分5h,5h間にわたって設けられるU字形安全筋6…は、それぞれの接地部6b…が、その長さ方向で同一線S2上に位置するように設けられている。
【0025】
このように、U字形安全筋6を縁部5bから所定距離内方に入った位置に備えたことにより、コンクリート製品5の仮置き工程においてU字形安全筋6が下地4との間に所定の空間K1を形成し、コンクリート製品5と下地4との間に手足を挟む事故がなく安全性が高いだけではなく、下地4とU字形安全筋6との間によって手足を挟む事故もなく安全性をさらに向上する。
また、U字形安全筋6は、工場において、型枠から成形されたコンクリート製品5を、所定の吊り上げ装置(図示せず)によって吊り上げる際の被係止部としても機能する。さらにコンクリート製品5の仮置き工程Bにおいて、吊り上げ装置CLによって吊り上げる際の被係止部としても機能する。
【0026】
高さ調整部材(高さ固定部材ともいう。)7は、簡単機構によって、下地4上に仮置きしたコンクリート製品5の天地方向(図中符号Tで示す方向)の高さを容易に調整し得るもので特に限定されず本発明の範囲内で周知の調整部材が採用可能である。
【0027】
高さ調整部材7の一実施例を図2に基づいて説明すると、例えば、コンクリート製品5に一端8aが埋設される第1の棒状金具部8と、下地4上に接するベースプレート9cを一端9aに備えた第2の棒状金具9と、その第1の棒状金具8の他端8bと、第2の棒状金具9の他端9bとをそれぞれ同軸に連結する筒部10とで構成されており、筒部10の内周に設けられている図示しない雌ネジ部に、第1の棒状金具8の外周に設けた雄ネジ部8dと、第2の棒状金具の外周に設けた雄ネジ部9dを高さ方向に進退自在に連結してなる周知の高さ調整ボルト(高さ固定ボルトともいう。)が採用されている。すなわち、筒部10を所定方向に回転作動させることにより、筒部10内の雌ネジ部に螺合している雄ネジ部8dと雄ネジ部9dにより棒状金具8と棒状金具9がそれぞれ上下同一方向に進退作動して伸縮作動する。
この高さ調整部材7は、少なくとも伸長時において、上述したU字形安全筋6の接地部6bよりもベースプレート9cが突出する構造を有していればよく、その形態などは特に限定解釈されるものではない。
【0028】
なお、上述したU字形安全筋6と高さ調整部材7の配設数量などは特に限定解釈されず本発明の範囲内で設計変更可能である。
また、コンクリート製品5は、特に限定されず本発明の範囲内で、例えば擁壁、歩道ブロック、階段ブロックなどの周知のコンクリート製品を採用可能であるが、本実施例のように大型のコンクリート製品における敷設工程において本発明は特に有効である。
さらに、コンクリート製品5は本実施例によれば、裏面5a側を鏡面仕上げする必要性がなく、むしろ凹凸で粗面に仕上げられているほうが、コンクリート打設工程Dにより設けられる後打ちコンクリート11との密着が良く一体化に寄与する。
【0029】
コンクリート製品仮置き工程Bは、前記造成した下地4の上面所定位置に、コンクリート製品5を仮置きする工程である(図1(C))。
具体的には、前記コンクリート製品5のU字形安全筋6の孔部6cに、クレーンなどの吊り上げ装置CLの先端金具CL1を挿入させて係止させ、コンクリート製品5を吊り上げる。そして、所定位置まで吊り上げ状態のまま移動させ、前記造成した下地4の上面所定位置に、前記U字形安全筋6と高さ調整部材7のいずれかを介してコンクリート製品5を仮置きする工程である。
本実施例では、吊り上げ装置CLによる吊り上げ工程前に、全ての高さ調整部材7を最も短く縮めて、U字形安全筋6の接地部6bよりも、コンクリート製品5の裏面5a寄りに位置させておく。従って、仮置きした際には、すべてのU字形安全筋6の接地部6bのみが下地4の上面に接触し、下地4とコンクリート製品5との間には、U字形安全筋6の突設高さHに対応した空間K1が形成されるものとしている。
このように下地4とコンクリート製品5との間に所定の空間K1が形成されるため、後述するように、この空間K1にジャッキなどのコンクリート製品の持ち上げ装置を使用することができ、作業者の労力軽減・安全性確保にもなる。
【0030】
なお、本実施例のように大型のコンクリート製品5を吊り上げ移動させる場合、強度的な問題と安定性の問題から、吊り上げ装置CLの先端金具CL1は複数個使用され、複数箇所のU字形安全筋6…に係止させるものとする。なお、さらに落下防止のため、先端金具CL1に一体に備えられている係止ピンPを、コンクリート製品5の所定箇所に固定しておくのが好ましい。
そして、下地4の上面所定位置に、前記U字形安全筋6を介してコンクリート製品5を降ろし、その後、U字形安全筋6の孔部6cに係止している前記先端金具CL1を取り外してコンクリート製品5が仮置きされる。
なお、本実施例では、吊り上げ装置CL及び先端金具CL1の概要を図1にて二点鎖線で示しているが、特に限定解釈されるものではなく、他の周知の吊り上げ装置を適宜選択することができる。
本実施例によれば、U字形安全筋6に吊り上げ装置CLの先端金具CL1を差し込み係止できるため、吊り上げ移動時のコンクリート製品5の落下も防止できる。
【0031】
コンクリート製品据付工程Cは、前記下地4の上面に仮置きしたコンクリート製品5の高さを調整してコンクリート製品5を所定高さに据付ける工程である(図1(C))。
本発明によれば、コンクリート製品据付工程Cは、コンクリート製品5の裏面5aに予め突設させてあった高さ調整部材7を伸縮作動させることで、下地4の上面に仮置きしたコンクリート製品5の施工基準面高さを調整するとともにその高さ位置を固定する。
【0032】
例えば本実施例によると、コンクリート製品据付工程Cは、まず、下地4とコンクリート製品5との間の空間K1に図示しない所定のジャッキを配し、該ジャッキによってコンクリート製品5を上下昇降調整してその施工基準面高さを調整・決定する。
そしてその後、ジャッキによって調整・決定した施工基準面高さを維持・固定できるように、所定のあるいは全ての高さ調整部材7を伸縮調整し、コンクリート製品5の高さ位置を固定する。
そしてその後、前記ジャッキを取り外す。これにより、下地4とコンクリート製品5との間には、高さ調整部材7によって形成された所定の空間K2が形成されている。なお、高さ調整部材7を伸長させることにより、U字形安全筋6を浮かせた状態に施工基準面高さを調整・固定した場合には、上述した空間K2が形成されるが、U字形安全筋6が接地した状態(前記仮置き状態)で施工基準面高さが決定・固定される場合には、下地4とコンクリート製品5との間に形成される空間は仮置き時の空間K1と同じである。
本実施例では、特に図示はしていないが、ジャッキの一例として、周知のつめ付き油圧ジャッキなどを使用すると取り扱い・操作が容易であるため好ましい。
【0033】
コンクリート打設工程Dは、前記下地4とコンクリート製品5との間の空間K2(あるいはK1)に所定量の生コンクリートを流し込み・養生し、下地4とコンクリート製品5との間に打設された後打ちコンクリート(胴込コンクリート)11によって下地4とコンクリート製品5とを一体化する工程である(図1(d))。
このとき本実施例によれば、コンクリート製品5の裏面5aに一体に突設されている複数個のU字形安全筋6…と高さ調整部材7…が、後打ちコンクリート11が固化したときに、後打ちコンクリート11と一体化され、差し筋としての効果を有する。
また、コンクリート製品据付工程Cによって下地4とコンクリート製品5との間に空間K2が形成されているため、後打ちコンクリート11の厚さ・密着及び一体化の確認が可能である。
【0034】
そして、所定の施工領域にわたり、上述したコンクリート製品仮置き工程B→コンクリート製品据付工程C→コンクリート打設工程Dを所定回数繰り返し行い、施工領域のコンクリート製品敷設工程を終了する。
ここで、順次行われるコンクリート製品仮置き工程Bにおいて、隣接する張りブロック5,5は、それぞれの重ね合わせ片5d,5dの傾斜面(重ね合わせ面)5e,5g同士を接合させてコンクリート製品5を仮置きしていく。
【0035】
本実施例によれば、上述のように高さ調整部材7によって隣接するコンクリート製品との間の高さ調整を容易に行うことができるため、従来のように高さ調整のためのモルタル敷設工程や熟練を要する鏡面仕上げ工程なども不要となり、下地造成の簡素化(工程数の減少,作業時間の短縮)が図れる。モルタル面の仕上げ作業がなく施工容易であるため、技術者で無くても誰でも容易に施工することができる。
これは、コンクリート製品でJIS規格(控え長の許容誤差プラス・マイナス5mm)を満たさない製品であっても使用できることとなる。すなわち、コンクリート製品の不良発生率が大幅に減少する。従って、工場製造の負担も軽減され、かつコスト軽減も図れる。
なお、上述した本実施例では、コンクリート製品仮置き工程B→コンクリート製品据付工程C→コンクリート打設工程Dを1サイクルとして施工し、これを繰り返すものとしているが、コンクリート製品仮置き工程B→コンクリート製品据付工程Cを順次施工領域にわたって全て完了させ、その後にコンクリート製品を据付けた全施工領域にわたってコンクリート打設工程Dを施工することも本発明の範囲内であって何等これを妨げるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の一実施形態を示す工程概略断面図で、(a)乃至(c)は下地造成工程、(d)はコンクリート製品仮置き工程・コンクリート製品据付工程、(e)はコンクリート打設工程を示す。
【図2】(a)はコンクリート製品の一実施形態を示す裏側から見た概略斜視図、(b)は高さ調整部材の一実施形態を示す概略正面図である。
【図3】(a)は従来工法の概略工程を示すフロー図、(b)は本実施例工法の概略工程を示すフロー図である。
【符号の説明】
【0037】
A 下地造成工程
A1 整地面造成工程
A2 砕石面造成工程
B コンクリート製品仮置き工程
C コンクリート製品据付工程
D コンクリート打設工程
1 整地面
2 砕石面
4 下地
5 コンクリート製品
6 U字形安全筋
7 高さ調整部材
11 コンクリート(後打ちコンクリート)
CL 吊り上げ装置
CL1 先端金具
K1,K2 空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の造成領域に下地を造成する下地造成工程と、
裏面所定箇所に、所定の間隔をあけて複数個のU字形安全筋と高さ調整部材が突設されているコンクリート製品を、そのU字形安全筋に吊り上げ装置の先端金具を係止させてコンクリート製品を吊り上げ、
そして、所定位置まで吊り上げ状態のまま移動させ、前記造成した下地の上面所定位置に、前記U字形安全筋と高さ調整部材のいずれかを介してコンクリート製品を仮置きし、その後、U字形安全筋に係止している前記先端金具を取り外すコンクリート製品仮置き工程と、
前記下地の上面に仮置きしたコンクリート製品の高さを調整してコンクリート製品を据付けるコンクリート製品据付工程と、
前記下地とコンクリート製品との間の空間に生コンクリートを流し込むコンクリート打設工程と、
を含むことを特徴とするコンクリート製品の敷設方法。
【請求項2】
下地造成工程は、
施工領域を整地してなる整地面と、該整地面上に砕石を敷設してなる砕石面とで構成された下地を造成することを含む、
ことを特徴とする請求項1に記載のコンクリート製品の敷設方法。
【請求項3】
コンクリート製品据付工程は、
高さ調整部材で、下地の上面に仮置きしたコンクリート製品の施工基準面高さを調整するとともにその高さ位置を固定する、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のコンクリート製品の敷設方法。
【請求項4】
コンクリート製品据付工程は、
下地とコンクリート製品との間の空間にジャッキを配し、該ジャッキによってコンクリート製品の施工基準面高さを調整し、
その後、高さ調整部材でコンクリート製品の高さ位置を固定し、
その後、前記ジャッキを取り外す工程を含む、
ことを特徴とする請求項3に記載のコンクリート製品の敷設方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−174926(P2008−174926A)
【公開日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−7692(P2007−7692)
【出願日】平成19年1月17日(2007.1.17)
【出願人】(594149240)
【出願人】(501433206)
【Fターム(参考)】