説明

コンタクトレンズ包装容器溶液

【課題】快適性が改善されたコンタクトレンズの保存液、コンタクトレンズの包装方法及びコンタクトレンズ包装容器を提供
【解決手段】保存液は、粘稠剤とアルカリ金属塩とを有し、pH6〜8で、浸透圧100mOsm/kg〜400mOsm/kgで、加圧滅菌されても粘弾性を有する。粘稠剤は、ヒアルロン酸、ポリ(アクリル酸)、架橋ポリ(アクリル酸)、ポリ(メタクリル酸)、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸、のアルカリ金属塩及などから選択され、アルカリ金属塩は、塩化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸三ナトリウム、四ホウ酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、塩化カリウム、炭酸水素カリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸三カリウム、カリウム四ホウ酸塩、クエン酸カリウム、酢酸カリウム、乳酸カリウムなどから選択する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンタクトレンズ包装容器に関し、特に、コンタクトレンズ包装容器に収容される溶液に関する。
【背景技術】
【0002】
現在利用可能なコンタクトレンズ、特にソフトコンタクトレンズの装着感のレベルは、以前から利用可能であったコンタクトレンズよりも、非常に改善されている。しかしながら、コンタクトレンズ、特に新品のコンタクトレンズを最初に目に入れるときには、装着者が目の中に異物があると気づき、通常に、快適な感じがしない。このような最初の不快感は、一般的には、10分間ほど続く。また、コンタクトレンズを最初に目に入れたときには、反射的に涙が出るが、これは、目の中に異物の存在に対する自然な反応であり、大量の涙液、すなわち目から異物(この場合、コンタクトレンズ)を洗い出すための低張性の涙が出る。
【0003】
また、臨床的には、コンタクトレンズの使用を始めたこの最初の期間は、確立した観察により、最初の挿入の際には、コンタクトレンズが、通常眼球上を過度に移動するという特徴を示す。装着の後の最初の数分間内に、コンタクトレンズの移動は収まり、安定した状態となる。
【0004】
従来、涙液膜(tear film)は、3つの別々な層、すなわち外層の油性層(lipid layer)と、涙液膜の体積の90%以上を占める水性層(aqueous layer)と、眼球表面を覆う粘性蛋白層(mucin layer)とから構成されていると考えられていた。しかしながら、涙液膜は、現在、3つの別々の層ではなく、実際には油性層と、全体に亘って蛋白質の濃度が異なる水相(aqueous phase)の層とから構成されていることが認められている。
【0005】
粘性蛋白質、すなわち長鎖の糖蛋白質(glycoprotein)は、分化した角膜細胞(杯状細胞)によって分泌されるが、油性層を形成する脂質は、眼瞼縁(lid margin)にあるマイボーム線(meibomian gland)から分泌される。涙液膜の水相は、涙腺から分泌され、本質的には濾過された血清である。
【0006】
粘性蛋白質のゲル相は、涙液膜の底で、角膜上皮細胞から分泌される角膜糖衣(corneal glycocalyx)の存在によって安定する。角膜糖衣の存在により、粘性蛋白質の正常な疎水性の角膜表面への結合が促進され、また、角膜の上皮細胞上にある微絨毛(microvilli)又は突起の存在により、このプロセスは促進される。
【0007】
また、水性層中の粘性蛋白質の存在は、涙液膜に対して粘弾性の流体力学的な作用(rheology)を生じさせる。目を開いた状態において、涙液膜は、比較的高い粘性を示し、このことは、角膜上で安定な涙液膜を維持することの手助けとなる。一方、瞬きの間に、急峻な力がかかったとき、涙液膜の粘性は非常に低下し、瞼が眼球の表面上を移動するように、潤滑剤として機能する(参照、A J Bron、Prospects for the Dry Eye Ophthalmol Soc.UK 104 (1985) 801-826)。涙液膜内に存在する他の粘弾性の流体力学的な調整剤(viscoelastic rheology modifier、以下、単に粘稠剤という。)は、ヒアルロン酸、グリコサミノグリカン多糖である。
【0008】
涙液膜の成分の何らかの不足は、ドライアイという結果となる。例えば、角膜の上皮細胞への傷害は、微絨毛、更には糖衣の損失という結果となる。これは、角膜上に疎水性の箇所を発生させ、結果として涙液膜を不安定にし、臨床的には、涙液層破壊時間が短くなることによって示される。このような角膜の上皮細胞における傷害は、一般に、角膜の損傷や潰瘍の結果による感染症や精神的外傷を生じさせる。このような角膜の潰瘍は、時折、乾燥したコンタクトレンズの装着しているときに起こり、また睡眠中にコンタクトレンズを装着することによって生じる低酸素ストレスによっても起こる。
【0009】
同様に、油性層の減少は、結果として、涙液膜の水性成分が過度に蒸発しやすくなり、そして、目の表面が乾燥する。この水性成分の蒸発は、上皮杯状細胞に対する高浸透圧的な圧迫の原因となり、そして、涙液膜中の粘性蛋白質の含有量の低下をもたらし、更に、涙液膜が不安定な状態となる。
【0010】
多くの場合自覚症状がなく、コンタクトレンズの装着を禁止するような酷い症状のドライアイやわずかに目が乾燥している場合には、患者は、コンタクトレンズを装着しているとき、ドライアイの徴候を感じる。これらの患者に対して、潤滑点滴薬や湿潤溶液の使用は、ドライアイの症状の軽減することができ、標準的なコンタクトレンズの装着期間を許すことができる。
【0011】
逆に、1日の使い捨てコンタクトレンズは、装着者に新しいコンタクトレンズを毎日提供する。ソロモン他(CLAOJ, 1996; 22:250-257)は、1日以上装着することができるコンタクトレンズにおいて、頻繁に交換可能なコンタクトレンズの装着者の中でより普及している1日使い捨てコンタクトレンズの装着者の間で、乾きの症状を示すデータを発表した。
【0012】
このため、目の中にコンタクトレンズを最初の挿入したときの1日の使い捨てコンタクトレンズの快適性を改善する必要があり、直ぐに快適なコンタクトレンズは、装着者に著しい利益をもたらすからである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、このような従来の事情を鑑みて提案されたものであり、快適性が改善されたコンタクトレンズの保存液、コンタクトレンズの包装方法及びコンタクトレンズ包装容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
コンタクトレンズに対して必要な潤滑性を与えるのに用いることができるコンタクトレンズが包装される容器内の溶液を見いだした。
【0015】
一実施の形態において、本発明は、含水性のコンタクトレンズ(aqueous contact lens)の保存液である。この含水性のコンタクトレンズの保存液は、粘稠剤と、0.3%w/v以下のアルカリ金属塩とを含有し、pHが6〜8であり、浸透圧(osmolality)が100mOsm/kg〜400mOsm/kgであり、温度121℃で少なくとも15分間加圧滅菌されても粘弾性を有するものである。
【0016】
他の実施の形態において、本発明は、温度121℃で少なくとも15分間加圧滅菌される含水性のコンタクトレンズの保存液である。この含水性のコンタクトレンズの保存液は、1)ヒアルロン酸、ポリ(アクリル酸)、架橋ポリ(アクリル酸)、ポリ(メタクリル酸)、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸又はこれらのアルカリ金属塩から構成されるグループから選択された粘稠剤と、2)塩化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸三ナトリウム、四ホウ酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、塩化カリウム、炭酸水素カリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸三カリウム、カリウム四ホウ酸塩、クエン酸カリウム、酢酸カリウム、乳酸カリウム及びこれらの混合物からなるグループから選択された約0.01%w/v〜約0.3%w/vのアルカリ金属塩とを含有する。この溶液は、pHが6〜8であり、浸透圧が100mOsm/kg〜400mOsm/kgである。
【0017】
他の実施の形態では、本発明は、コンタクトレンズと、粘稠剤を含む濃縮ゲルと、更なるコンタクトレンズ溶液成分を含む分離した他の液状成分とを収容するコンタクトレンズ包装容器である。
【0018】
本願発明の好ましい実施の形態の包装容器の溶液は、滑らかで快適にコンタクトレンズを提供する。特に、本願発明は、直ぐに快適なコンタクトレンズの提供に有効であり、コンタクトレンズを最初に装着した後のコンタクトレンズを平衡化するまでの期間を短くすることができる
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明を適用した含水性のコンタクトレンズ(aqueous contact lens)保存液、含水性のコンタクトレンズの包装方法及び包装容器について更に詳細に説明する。以下、本発明の様々な実施の形態をより詳細に説明する。各実施の形態は、明記しない限り、他の1つの又は複数の実施の形態又は実施の形態と組み合わせることができる。特に、好ましい又は有利であると示されたあらゆる特徴は、好ましい又は有利であると示された他のいずれかの特徴と組み合わせることができる。
【0020】
ここで使用する用語「コンタクトレンズ保存液」は、コンタクトレンズを保存することを意図した溶液と、コンタクトレンズ包装容器に使用される溶液とを含み、これらの溶液を包装容器の溶液と称する。一時的にコンタクトレンズと接する溶液、例えば湿潤溶液、洗浄液、点眼液は、この用語「包装容器の溶液」に含まれない。
【0021】
コンタクトレンズ包装容器の溶液は、包装容器に入れるとき、成分の均質な混合溶液として予め混合してもよく、あるいは以下に詳細に説明するように、2つ以上の異なる成分を一緒に包装容器内に入れて、包装容器の溶液を造ってもよい。更に、包装容器の溶液の一部は、コンタクトレンズ自身から由来するものであってもよい。例えば、包装容器の溶液(又はその一部)に含まれる目の潤滑剤は、コンタクトレンズに由来するものであってもよい。非重合性物質、例えばグリセロール又はプロピレングリコールを、加工助剤又は非反応性希釈剤として、コンタクトレンズの形成に時に添加することは、一般的であり、これらは、次の重合では、非水和のレンズ内に残存する。コンタクトレンズが一旦作製されると、非反応性希釈剤は、キセロゲルのレンズを可塑化するのに役立ち、コンタクトレンズを柔らかく、柔軟にすることができる。一般に、希釈剤は、コンタクトレンズの加水反応を通じて、抽出されることによって、コンタクトレンズから取り除かれる。しかしながら、コンタクトレンズは、最終的に包装されている状態では水和されているため、希釈剤は、コンタクトレンズから抽出され、コンタクトレンズの包装容器の溶液の一部を構成する。
【0022】
本願発明の特徴的な実施の形態によれば、この記載したコンタクト包装容器の溶液には、例えばポリアニオンポリマのような粘稠剤が含まれており、この溶液に粘弾性の流体力学的な作用を与えることができる。通常、粘稠剤の濃度は、0.05%w/v〜2%w/vであり、より好ましくは0.1%w/v〜1%w/vである。粘稠剤は、ポリアニオンポリマであり、またこのポリアニオンポリマは目の潤滑剤としても用いることができる。本願発明は、コンタクトレンズの包装容器の溶液を目的とするものであり、必要条件である少なくとも15分間、温度121℃で加圧滅菌する最終の滅菌に適し、コンタクトレンズを包装容器から取り出す時に、上述した潤滑性を提供できるような十分な粘弾性を維持することができる。
【0023】
粘弾性の流体力学的な作用によって、この溶液は、非ニュートン流体力学的な挙動を示し、特に、非常に急峻な力を受けたとき、急峻でなく且つ低粘性の条件のもとにおいては、比較的高い粘性を示すことが分かった。0又は低い剪断(0.3rpm)条件の下では、この溶液の粘度は、ブルックフィールド粘度計による測定で10センチポアズ(cps)を上回り、好ましくは、50cpsより大きく、更に好ましくは100cps〜500cpsであるが、高い剪断(12rpm)条件の下では、25cps以下に落ち、2.5cps以下に落ちる場合もある。低い剪断力での好ましい溶液の粘性は、好ましくは、高い剪断力での粘性の少なくとも150%、より好ましくは200%以上、そして可能な限り、300%、500%又は1000%である。特に示さない限り、粘性は、室温で測定した。
【0024】
このように、1つの実施の形態において、溶液の粘性は、0又は低い剪断(0.3rpm)条件の下で、ブルックフィールド粘度計による測定で好ましくは10cpsを上回り、より好ましくは10cps〜50cpsであるが、高い剪断(12rpm)条件の下では、2.5cps以下に減少する。
【0025】
他の実施の形態では、この溶液の粘性は、0又は低い剪断(0.3rpm)条件の下で、ブルックフィールド粘度計による測定で好ましくは50cpsを上回り、より好ましくは100cps〜500cpsであるが、高い剪断(12rpm)条件の下では、25cps以下に減少する。
【0026】
粘稠剤は、ヒアルロン酸、ポリ(アクリル酸)、架橋ポリ(アクリル酸)、ポリ(メタクリル酸)、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸又はこれらのアルカリ金属塩のうちの1つ又はこれらの混合物から選択される。好ましい架橋ポリ(アクリル酸)は、カルボマー、例えばU.S.P24及び国民医薬品集19に記載されている商品名カルボポール(登録商標)NF941、商品名カルボポール(登録商標)NF934、及び他の種類のカルボポールである。
【0027】
粘稠剤は、部分的又は全部が中和されたポリアニオンポリマである。ポリアニオンポリマを部分的に中和した場合には、錠剤型の緩衝剤として機能する。
【0028】
例えばヒアルロン酸のような多糖類の誘導体は、溶液中の粘稠剤として使用でき、この多糖類の誘導体の平均分子量は、溶液の粘弾性を破壊せずに加圧滅菌している間の加水分解による分子量減少を考慮して、加圧滅菌前において、少なくとも100万ダルトンであり、多分散性が小さいことが好ましい。ヒアルロン酸溶液に対する加圧滅菌の影響については、ボーナー(Bothner)、ワーラー(Waaler)著「Int.J.Biol Macromol(1988),10:287〜291」に記載されており、引用することによって、本願に援用される。
【0029】
この溶液には、更に、多くても0.3%w/vのアルカリ金属塩が含まれている。このアルカリ金属塩を含有させる場合には、保存液(包装容器の溶液)の約0.01%w/v〜0.3%w/vの濃度で使用することが好ましい。このアルカリ金属塩を含有させる場合には、溶液中の少なくとも0.015%w/vとすることがより好ましい。適当なアルカリ金属塩としては、塩化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸三ナトリウム、四ホウ酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、塩化カリウム、炭酸水素カリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸三カリウム、カリウム四ホウ酸塩、クエン酸カリウム、酢酸カリウム、乳酸カリウム及びこれらの混合物である。この溶液には、非イオン性の緊張調製剤と共に、塩化ナトリウムを含有することが好ましく、塩化ナトリウムの濃度は0.01%w/v〜0.3%w/vであり、好ましくは0.01%w/v〜0.2%w/vである。
【0030】
これらの非イオン性の緊張調製剤は、目に対して、無毒性かつ非刺激性でなければならない。限定されるものではないが、非イオン性の緊張調製剤の例としては、単純な糖(例えばグルコース、フルクトース、ラクトース、ガラクトース、ショ糖、マンノース、キシロース、リボース及びアラビノース)、デクスパンテノール、ソルビトール、マンニトール、アスコルビン酸、尿素及びアラビトールを含むものである。当業者が認める他の物質も用いることができる。最も好ましくは、目の潤滑剤としても機能できる更なる非イオン性の緊張調製剤は、例えば、グリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリ(メタクリル酸グリセリル)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(ビニルピロリジノン)及びこれらの混合物を含むものである。これら目の潤滑剤の全体の濃度は、0.1%〜5%であり、好ましくは0.2%〜2%である。緊張調製剤、すなわちアルカリ金属塩及び非イオン性の緊張調整剤の両方は、別々に又は組み合わせて使用することができ、溶液全体の浸透圧(osmolality)は、100mOsmol/kg〜400mOsmol/kgであり、より好ましくは200mOsmol/kg〜400mOsmol/kgである。湿潤剤、例えば非イオン界面活性剤、両性界面活性剤及びこれらの混合物を加えることができる。
【0031】
この溶液のpHは、6.0〜8.0、好ましくは7.0〜7.5に保たれている。このpHは、更なる緩衝剤、例えばリン酸ナトリウム、ホウ酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウムの添加によって、又はポリアニオンポリマを部分的に中和することによって得られた固有の緩衝液を使用することによって、適当な範囲にすることができる。
【0032】
好ましくは、この包装容器の溶液は、あるコンタクトレンズ装着者に、望ましくない免疫反応を引き起こす可能性がある動物性タンパク質は入っていない。
【0033】
上述した溶液は、コンタクトレンズを包装するために現在広く用いられている従来の緩衝液の食塩水の代わりに用いることができ、特に、ブリスタ中に包装された1日使い捨てのコンタクトレンズの溶液に使用できる。この包装方式の例としては、米国特許第435,6号、米国特許第4,691,820号、米国特許第5,467,868号、米国特許第5,704,468号、米国特許第5,823,327号及び国際公開番号WO97/20019に記載されており、引用することによって、本願に援用される。
【0034】
通常、プラスチック製のボート又はブリスタは、適当な量の本願発明の溶液で満たされ、それからこの溶液中にコンタクトレンズが置かれている。そして、このブリスタは、ブリスタ上に、アルミニウム箔が積層されたプラスチックをヒートシールすることによって密封される。密封されたならば、ブリスタと内容物(コンタクトレンズ及び包装容器の溶液)は、加圧滅菌に滅菌することができる。そして、密封され、滅菌された包装容器は、必要となるまで、保管される。
【0035】
患者によって開封されると、コンタクトレンズは、通常のコンタクトレンズの挿入方法によって、目の中に入れられる。
【0036】
更なる問題が多くのコンタクトレンズメーカの前に生じ、ブリスタ中に包装されたコンタクトレンズがブリスタに強く密着する傾向があり、多くの場合、コンタクトレンズがブリスタの壁に対して平らになる程度まで密着する。これは、コンタクトレンズ使用者にとって非常に厄介なことであり、密着したコンタクトレンズが取れるかどうか試み、結果としてコンタクトレンズが破れてしまったり、縁が損傷を受けてしまう。一般的には、このコンタクトレンズの密着の防止には、包装容器用の食塩水に対して界面活性剤の量を調整して加えることによって得ることができる。
【0037】
このコンタクトレンズの密着は、多くのコンタクトレンズ材料が表面の逆転、すなわちコンタクトレンズの表面の特性が本質的な親水性から本質的な疎水性に変わるという事実に起因する。高エネルギ環境、例えば水又は食塩水の下では、高分子鎖の親水性部分、(例えばヒドロキシル基)は、コンタクトレンズの外側を向くので、親水性表面を呈する。低いエネルギ環境、(例えば、空気、ポリプロピレンのような疎水性ポリマ)の下では、コンタクトレンズ材料は、界面において疎水性部分(例えば、メチル基、高分子主鎖)を呈する。
【0038】
加圧滅菌している間、コンタクトレンズの含水量は減少し、コンタクトレンズは、疎水性相互作用(hydrophobic interaction)によって、ポリプロピレン性のブリスタの壁に強く密着する。
【0039】
本発明の第2の実施の形態は、少量の水の中の高分子成分からなるゲルである(以下、ゲル成分とも称する)。そして、量が制御されたゲル成分は、標準的なコンタクトレンズ包装容器用のブリスタの底面に配置され、包装容器の底面にコンタクトレンズを密着(又は配置)するのに使用する。残りの成分は、密閉され、加圧滅菌されるコンタクトレンズ包装容器に、溶液(以下、液状成分とも称する)として後で加えられる。
【0040】
特定の理論に縛れることなく、上述したように、ブリスタの表面上に、コンタクトレンズが上述したゲルとともに密着することによって、コンタクトレンズとブリスタの壁(表面)との間に緩衝層が形成され、これにより、コンタクトレンズのブリスタ表面に対する密着を防止し、特に、加圧滅菌の間、コンタクトレンズの密着を防止する。加圧滅菌後、ゲル中の粘弾性成分は、24〜48時間かけて、その表面から拡散して、均一な溶液を形成する。
【0041】
また、ゲル成分は、ある程度の静摩擦を有し、ゲル成分を使用することにより、ロボットによりブリスタへのコンタクトレンズの搬送を助け、一時的な粘着力は、搬送アームからコンタクトレンズを離すのを助けする。
【0042】
本発明の第3の実施の形態は、溶液中のゲル成分は、再び、別途調製され、そして、薄いデザインの包装容器、すなわちレトルト型の包装容器の場合に、レトルト型の包装容器の内部の高さがコンタクトレンズの自然なままの矢状高よりも低くなっている中で、平らにした状態でコンタクトレンズを保持できるように、コンタクトレンズの位置の位置決めに使用することができる。このような包装容器は、PCT/AU02/01105、同様に、米国特許出願第10/789,961号に記載され、引用することによって、本願に援用される。液状成分を添加した後、包装容器は、密閉され、加圧滅菌される。薄い設計の包装容器とすることにより、本発明の溶液は、本質的に、不均質な状態で残り、したがって、2つのコンタクトレンズの面(表面及び裏面)において、コンタクトレンズの表面と包装容器との密着に差が生じる。
【0043】
例えば、PCT/AU02/01105には、主として、アルミニウムがラミネートされた2枚のポリプロピレンからなり、これらをヒートシールすることにより、2枚で小さいな袋を形成した包装容器が記載されている。そして、この全厚は、0.5mm以下であることから、本質的には平坦形状のアルミニウム箔によって、コンタクトレンズが保持されている。
【0044】
先行技術の包装容器及びコンタクトレンズの包装容器において、少量の食塩水と共に、コンタクトレンズは、包装容器に収容される。包装作業において、含水前のコンタクトレンズは、予め裁断されたホイル(第1のアルミニウム箔)の中心上に前面を下にして配置される。そして、少量の食塩水(通常>0.5ml)は、むき出しにされたコンタクトレンズの凹面(又はベースカーブ)に入れられ、第2のラミネートされたアルミニウム箔は、コンタクトレンズの上に置かれ、下側のアルミニウム箔上にヒートシールされる。この作業中、コンタクトレンズは、主に、平坦形状に変形し、コンタクトレンズのベースカーブ内に入っている食塩水は、コンタクトレンズの平衡な水和状態を保つため、コンタクトレンズと密接に接しながら、包装容器中に閉じ込められる。
【0045】
このような同じ包装容器は、本発明に使用することができる。下側のアルミニウム箔の中央に、本願発明の溶液のゲル成分を塗布することによって、よりすばらしくは、包装過程で最適な位置に、確実にコンタクトレンズを保持することができる。ゲル成分は、本発明の溶液中の残りの液状成分がコンタクトレンズの凹面中に入るように安定した向きにコンタクトレンズを保持する役目をする。
【0046】
意外にも、最適な位置で、コンタクトレンズを下側のアルミニウム箔に密着させるための本発明の溶液中のゲル成分は、小袋(又はレトルト)の包装を開封したときに、コンタクトレンズが最適な方向で装着者に常に提示されることを確実にする役目をする。
【0047】
小袋を開封すると、即座に、コンタクトレンズがベースカーブ上のアルミニウム箔にゆるく密着していることが分かる。これは、コンタクトレンズが正しい方向(すなわち、裏返しではない)であるという確信をもって、装着者がコンタクトレンズを摘んでアルミニウム箔から取り、コンタクトレンズを目に入れることができる。
【0048】
特定の理論に縛られることなく、小さな容器(小袋)の容積は、制限されているので、コンタクトレンズは基本的には平坦に、包装アルミニウム箔に密着して維持され、ゲル成分と液状成分とが均一な状態を形成する機械がほとんどなく、コンタクトレンズの前面は、ゲル成分が豊富な溶液と接触を維持し、一方、ベースカーブ(base curve)は、液状成分が豊富な溶液と接触を維持していると考えられる。
【0049】
この不均質性は、提示されたコンタクトレンズの前面の下側のアルミニウム箔に対する本質的な密着性を無くし、一方、ベースカーブは、上側のアルミニウム箔に弱く密着し、このように小袋の開封を確実にし、コンタクトレンズが装着者に対して前面が常に提示されることが確実となる。
【0050】
ベースカーブは、アルミニウム箔の表面に弱く密着するけれども、その密着力は、疎水性相互作用というよりもむしろ毛管現象であり、それゆえ、何らかの有害な影響を導くほどの十分な強さではないと考えられる。
【0051】
これらの毛管力は弱いので、ラミネートされたアルミニウム箔上に平坦に引っ張られず、半球レンズの圧縮による縮みを示す。この縮みは、コンタクトレンズをアルミニウム箔から軽く摘んでとるのに都合がよい。
【0052】
これは、平坦なポリプロピレン表面に対して疎水的に密着しているコンタクトレンズと対比することができる。コンタクトレンズの表面全体は、ポリプロピレン表面に対して平坦に引っ張られ、コンタクトレンズの直径が見た目大きくなる。
【0053】
包装容器からの取り外しときには、コンタクトレンズの前面上のより高い濃度の粘弾性材料が装着者になじみ、コンタクトレンズの目に入れる手助けとなる。急峻な力を受けたとき、粘弾性の溶液は、粘性の減少を示し、より滑らかな界面を示す。しかしながら、コンタクトレンズは、指の上で動かない状態で保持されたとき、すなわち急峻な力を受けない条件の下では、より高い見かけ粘度となり、指先の適所にコンタクトレンズを保持するのに役立ち、目への挿入を容易にする。
【実施例】
【0054】
1.ヒアルロン酸ナトリウム(塩酸製剤)の粘性溶液
1リットルの脱イオン水を、円筒形の攪拌層内に入れ、攪拌機の刃を用いて、適度な回転速度で攪拌する。そして、この脱イオン水に、塩化ナトリウム(0.10g)、プロピレングリコール(10.00g)、アラビトール(10.00g)を加えて、溶解させる。
【0055】
次に、凍結乾燥されたヒアルロン酸ナトリウムを1g(分子量3,000,000ダルトン)を、ゆっくりと複数回に分けて攪拌機中の渦の中に撒くことにより、加える。はっきりと、均一な粘弾性溶液が得られるまで、数時間連続的に攪拌する。得られた溶液のpHは、約210mOsm/kgの溶液を得るために、0.1Mの塩酸溶液又は0.1Mのトリエタノールアミン溶液を適当に添加し、7.2〜8.00の間に調製する。
【0056】
2.ヒアルロン酸ナトリウム(塩酸製剤)の粘性溶液
1リットルの脱イオン水を、円筒形の攪拌層内に入れ、攪拌機の刃を用いて、適度な回転速度で攪拌する。そして、この脱イオン水に、塩化ナトリウム(0.30g)、プロピレングリコール(7.5g)、アラビトール(10.00g)を加えて、溶解させる。
【0057】
次に、100mlのHealon(登録商標)(ファイザー株式会社)、1%のヒアルロン酸ナトリウムを攪拌している溶液中に複数回に分けて加える。はっきりと、均一な粘弾性溶液が得られるまで、数時間連続的に攪拌する。得られた溶液のpHは、約242mOsm/kgの溶液を得るために、0.1Mの塩酸溶液又は0.1Mのトリエタノールアミン溶液を適当に添加し、7.2〜8.00の間に調製する。
【0058】
3.粘稠剤としてのカルボマーの使用
1リットルの脱イオン水を、円筒形の攪拌層内に入れ、攪拌機の刃を用いて、適度な回転速度で攪拌する。そして、カルボポール(登録商標)NF941(1.50g)を、30分に亘って、攪拌機中の渦の中に複数回に分けて撒き、均一に分散するまで攪拌する。
【0059】
次に、塩化ナトリウム(2.0g)、プロピレングリコール(10.00g)、グリセロール(5.0g)、無水単糖類(10.00g)を脱イオン水に加え、溶解させる。
【0060】
次に、上記混濁した溶液を連続して掻き混ぜながら、0.1Mの水酸化ナトリウム溶液の液滴をpHが7.0〜7.6となるように加える。水酸化ナトリウム溶液を加えている間、澄み、顕著に粘度上昇が観察される。この溶液の最終的な浸透圧は、約309mOsm/kgとなる。
【0061】
4.混合した粘稠剤の使用
1リットルの脱イオン水を、円筒形の攪拌層内に入れ、攪拌機の刃を用いて、適度な回転速度で攪拌する。そして、カルボポール(登録商標)NF941(1.00g)を30分にわたって、攪拌機中の渦の中に複数回に分けて撒き、均一に分散するまで攪拌する。そして、50mlのHealon(登録商標)(ファイザー株式会社)、すなわち1%のヒアルロン酸ナトリウムを攪拌している溶液の一部に加える。次に、塩化ナトリウム(0.5g)、グリセロール(10.0g)、グルコース(10.00g)、アラビトール(10.00g)を脱イオン水に順番に加えて、溶解させる。
【0062】
次に、上記混濁した溶液を連続して掻き混ぜながら、0.1Mの水酸化ナトリウム溶液の液滴を、pHが7.0〜7.6となるように加える。水酸化ナトリウム溶液を加えている間、澄み、顕著に粘度上昇が観察される。この溶液の最終的な浸透圧は、約250mOsm/kgとなる。
【0063】
5.標準的なブリスタデザイン中にコンタクトレンズを密着させるためのゲルの使用
少量(0.05ml)のHealon(登録商標)の液滴を標準的なポリプロピレンのブリスタの中央に付ける。次に、Healon(登録商標)の液滴上に、含水のコンタクトレンズを前面を下にして載せる。塩化ナトリウム(0.01%w/v)、プロピレングリコール(0.75%w/w)及びアラビトール(1%w/w)の水溶液を0.45ml、ブリスタに入れ、次に、第2のラミネート箔をポリプロピレンのスペーサの表面にヒートシールし、密封する。
【0064】
次に、この包装容器を121℃、15分間加圧滅菌により滅菌する。次に、内容物が平衡状態となるまで、包装容器を24時間保つ。開封することで、収容された溶液の弾力性は、約242mOsm/kgとなる。
【0065】
6.コンタクトレンズからの目の潤滑剤の一部の導出
コンタクト製剤は、メタクリル酸−2−ヒドロキシエチル(54.00g)、グリセロールモノメタクリルレート(35.00g)、エチレングリコールジメタクリレート(0.5g)、グリセロール(10g)及びベンゾインジメチルエーテル(0.5g)を混ぜることによって調製する。次に、コンタクトレンズ製剤は、2つのポリプロピレン型に入れ、紫外線(360nm)を照射して重合する。重合した後、可塑化が不完全なコンタクトレンズを、ポリプロピレン型から取り出す。水和されていないコンタクトレンズの重さは、20mgであり、このうち、2mgは、グリセロールである。乾燥したコンタクトレンズは、コンタクトレンズブリスタボートに置かれ、実施例1の包装容器の溶液を0.5ml加える。次に、ブリスタを密封し、包装容器を加圧滅菌する。次に、次の製剤から構成され、塩化ナトリウム(0.01%)、ヒアルロン酸(0.1%)、プロピレングリコール(1.0%)、グリセロール(0.4%)、これらのうち、グリセロールは、水和されていないコンタクトレンズから抽出される。
【0066】
7.小袋型の包装容器中のコンタクトレンズを位置決めするゲルの使用
本実施例の用途として、コンタクトレンズ容器は、2枚のアルミニウム箔がラミネートされたものであり、小袋を形成するためにヒートシールされる。少量(0.05ml)のHealon(登録商標)(ファイザー株式会社)の液滴を、予め裁断されたアルミニウム箔がラミネートされたポリプロピレンの中央に付ける。次に、Healon(登録商標)の液滴上に、含水のコンタクトレンズを前面を下にして載せる。次に、塩化ナトリウム(0.01%w/v)、プロピレングリコール(0.75%w/w)及びアラビトール(1%w/w)の水溶液0.45mlを、コンタクトレンズのベースカーブに入れ、下側のアルミニウム箔上に第2のアルミニウム箔がラミネートされたポリプロピレンをヒートシールして完成する。
【0067】
次に、この包装容器を121℃、15分間加圧滅菌により滅菌する。封じ込まれる空気の体積を減少するために、非平衡加圧滅菌を効率よく用いて、包装容器を滅菌する。包装容器を開けると、コンタクトレンズは、拘束されていたベースカーブが自由になり、アルミニウム箔上に正しい方向で置かれる。更にまた、コンタクトレンズには、その中央に、微小なリップ(a slight ripple)を設けたものがあり、このリップにより、目の中に挿入するために、コンタクトレンズを容易に包装容器から取り出すことができる。
【0068】
粘稠剤からなるゲル、及び更なるコンタクトレンズ包装溶液成分を含有する独立した液状成分を用いることにより、コンタクトレンズを入れる際に利点がある独創的なコンタクトレンズ包装容器を提供することができる。なお、ゲル及び液状成分は、共にコンタクトレンズ包装容器に収納される。
【0069】
本発明の範囲及び思想から逸脱することなく、上述した本発明の包装容器方法及びコンタクトレンズの保存液を様々に修正及び変更できることは、当業者にとって明らかである。本発明は、独立請求項に記載されている。本発明を特定の好ましい実施の形態を用いて説明したが、本発明は、これらの実施の形態に限定されるものではない。実際、本発明を実施するための上述した実施の形態の様々な変更は、特許請求の範囲を逸脱しない範囲内であれば、化学又は関連分野の当業者とって明らかである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンタクトレンズと、
上記粘稠剤からなる濃縮ゲルと、
付加的にコンタクトレンズ包装容器溶液に含有される他の液状成分とから構成されているコンタクトレンズの包装容器。

【公開番号】特開2012−83750(P2012−83750A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−204745(P2011−204745)
【出願日】平成23年9月20日(2011.9.20)
【分割の表示】特願2007−534107(P2007−534107)の分割
【原出願日】平成17年9月30日(2005.9.30)
【出願人】(508055973)メニコン シンガポール ピーティーイー. リミテッド (4)
【Fターム(参考)】