説明

コンタクトレンズ及び点眼薬再湿潤剤組成物及びその用途

主活性粘滑成分としてヒアルロン酸(ヒアルロン酸ナトリウム)、保存効果のために安定化オキシ−クロロ複合体(Advanced Medical Optics からOcuPureTM として、Allergan からPuriteTM として、Biocide からPurogene として市販)、涙膜を模倣する平衡塩、緩衝剤としてホウ酸ナトリウムを含む安定な再湿潤組成物が開示される。1つの態様では、好ましい安定な組成物は、コンタクトレンズを装用している又はしていないヒトの眼に使用し得る。他の態様では、好ましい組成物は、殺菌後のコンタクトレンズの保存用及び状態調節用溶液としても使用し得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、ヒトの眼において使用するのに適した再湿潤剤組成物に関する。再湿潤剤組成物は、コンタクトレンズを装用している又は装用していないヒトの眼に使用することができる。加えて、本発明の組成物は、殺菌後のコンタクトレンズの保存又は状態調節用溶液として使用することができる。とりわけ、好ましい組成物は、乾燥又は刺激(炎症)を経験しているコンタクトレンズ装用者に、優れた初期快適性及び長期快適性を提供する。
【背景技術】
【0002】
コンタクトレンズは、正常機能が損なわれた視力に対する有益な選択肢を提供する。コンタクトレンズに使用する材料については非常な改良がなされてきたが、コンタクトレンズを使用することによる刺激はなお残っている。装用者は、コンタクトレンズの湿分損失の故に、乾燥してかゆい眼をしばしば経験する。これは、環境汚染とからみあい、アレルギーを伴うことがある。過敏感は、レンズに付着した粒子により生じることもある。レンズを続けて使用するために、使用者はしばしば再湿潤溶液の助けをかりることになる。このような溶液は、コンタクトレンズを再水和し、それにより装用者の快適性を増すために使用される。このような溶液は、レンズの表面から粒子状物を除去するために、及び必要ならレンズを保存するためにも使用することができる。このような溶液は、コンタクトレンズを使用していないが、ドライアイ症候群を患っている人にも使用できる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
このような溶液は眼に使用されるので、滅菌され、刺激を与える不純物を含んでいてはならない。多くの既知保存剤は、残念ながら、眼に使用するのには適していない。非刺激的で有効な保存剤を見出す必要がある。さらに、もし再湿潤溶液が抗菌活性を有しているなら、有用である。必要とされる最小抗菌活性は、再湿潤溶液又は眼の中で、微生物が実質的に増加しないことを確実にしなければならない。これにより、使用者が不必要な眼の感染又は刺激を確実に受けなくなる。
【0004】
再湿潤に加え、類似の性質を有する保存及び状態調節用溶液に対する要求もある。
【0005】
眼に対して向上した快適性を与える再湿潤、保存及び状態調節用溶液に対する要求が引き続き存在する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
1つの態様によれば、主活性粘滑成分としてヒアルロン酸(ヒアルロン酸ナトリウム)、保存効果のために安定化オキシ−クロロ複合体(Advanced Medical Optics からOcuPureTM として、Allergan からPuriteTM として、Biocide からPurogene として市販)、及び緩衝剤としてホウ酸ナトリウムを含む好ましい安定な再湿潤組成物が開示される。別の態様において、好ましい安定な組成物は、涙液膜を模倣する平衡塩及び/又は付加的粘滑剤を更に含む。1つの態様において、好ましい安定な組成物は、コンタクトレンズを装用している又は装用していないヒトの眼において使用される。例えば、好ましい安定な組成物は、ドライアイの症状を処置するのに使用し得る。他の態様において、好ましい安定な組成物は、殺菌の後でコンタクトレンズを保存及び状態調節するための溶液としても使用し得る。
【0007】
ヒアルロン酸が主活性粘滑剤である1つの態様において、ヒアルロン酸は、好ましくは約200,000〜4,000,000ダルトンの分子量を有する。好ましくは、分子量範囲は、約750,000〜2,000,000ダルトンである。より好ましくは、分子量範囲は、約800,000〜1,750,000ダルトンである。さらに好ましくは、分子量範囲は、約900,000〜1,500,000ダルトンである。好ましい態様において、ヒアルロン酸の濃度は、約0.005%〜約0.5%w/v(質量/容量)である。好ましくは、ヒアルロン酸の濃度は、約0.01%〜約0.3%w/vである。より好ましい態様において、ヒアルロン酸の濃度は、約0.02%〜約0.2%w/vである。別の好ましい態様において、ヒアルロン酸の濃度は、約0.05%〜約2%w/v、より好ましくは、約0.1%〜約5%w/vであるが、約0.2、0.4、0.6、0.8、1.2、1.4、1.6及び1.8%w/vの濃度も含み得る。好ましくは、安定化オキシ−クロロ複合体の濃度は、約0.0015%〜約0.05%w/vである。より好ましくは、安定化オキシ−クロロ複合体の濃度は、約0.002%〜約0.04%w/vである。さらに好ましくは、安定化オキシ−クロロ複合体の濃度は、約0.0025%〜約0.03w/vである。別の好ましい安定化オキシ−クロロ複合体の濃度は、約0.003%〜約0.02w/vである。さらに好ましい態様では、安定化オキシ−クロロ複合体の濃度は、約0.0035%〜約0.01w/vである。より好ましくは、安定化オキシ−クロロ複合体の濃度は、約0.004%〜約0.009w/vである。1つの好ましい態様の組成物は、約6.0〜約9.0、好ましくは約6.8〜約8.0、より好ましくは約7.0〜約7.4のpHを有し、最も好ましいpHは約7.2である。このようなpH値を維持するため、ホウ酸及び十分なホウ酸塩を適当な対イオンと共に含む緩衝溶液が添加される。
【0008】
1つの態様において、好ましい安定な組成物は、更に平衡塩を含む。ある態様では平衡塩は、好ましくはNaCl、KCl、CaCl及びMgClを、約140〜約400mOsm/kg、好ましくは約240〜約330mOsm/kg、より好ましくは約260〜約300mOsm/kg、最も好ましくは約270mOsm/kgの組成物浸透圧(又は重量オスモル濃度(osmolality))を与えるような比率で、含む。1つの態様において、NaClの濃度は、約0.1〜約1%w/v、好ましくは約0.2〜約0.8%w/v、より好ましくは約0.39%w/vであり、KClの濃度は、約0.02〜約0.5%w/v、好ましくは約0.05〜約0.3%w/v、より好ましくは約0.14%w/vであり、CaClの濃度は、約0.0005〜約0.1%w/v、好ましくは約0.005〜約0.08%w/v、より好ましくは約0.06%w/vであり、MgClの濃度は、約0.0005〜約0.1%w/v、好ましくは約0.005〜約0.08%w/v、より好ましくは約0.06%w/vである。
【0009】
1つの態様において、好ましい安定な組成物は、更に付加的な粘滑剤を含む。適当な付加的粘滑剤には、約0.2〜約2.5%の範囲のセルロース誘導体、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース及びメチルセルロース;約0.01%のゼラチン;約0.05〜約1%、また約0.2〜約1%のポリオール、例えばグリセリン、ポリエチレングリコール300、ポリエチレングリコール400、ポリソルベート80及びプロピレングリコール;約0.1〜約4%のポリビニルアルコール;約0.1〜約2%のポビドン;及びここに記載の他の粘滑剤と共に使用する場合の約0.1%以上のデキストランが包含されるが、これらに限定されない。これら付加的粘滑剤の中で、ある態様では、ポリオールが特に好ましい、他の態様では、セルロース誘導体も好ましい。好ましいセルロース誘導体は、約80,000又はそれ未満、より好ましくは約10,000〜約40,000の分子量を有する。ある状況では、大きい分子量を有する粘滑剤は、好ましい組成物に対して負の影響を与えることがあり得る。
【0010】
別の態様では、好ましい安定な再湿潤組成物は、ドライアイ症状を処置するために、ヒトの眼に投与される。好ましい態様では、安定な組成物は、コンタクトレンズを装用している又は装用していない眼に投与し得る。ヒアルロン酸が主活性粘滑剤である1つの態様では、ヒアルロン酸は、約200,000〜4,000,000ダルトンの分子量を有する。好ましくは、分子量範囲は、約750,000〜2,000,000ダルトンである。より好ましくは、分子量範囲は、約800,000〜1,750,000ダルトンである。さらに好ましくは、分子量範囲は、約900,000〜1,500,000ダルトンである。好ましい態様において、ヒアルロン酸の濃度は、約0.005%〜約0.5%w/v(質量/容量)である。好ましくは、ヒアルロン酸の濃度は、約0.01%〜約0.3%w/vである。より好ましい態様において、ヒアルロン酸の濃度は、約0.02%〜約0.2%w/vである。別の好ましい態様において、ヒアルロン酸の濃度は、約0.05%〜約2%w/v、より好ましくは、約0.1%〜約5%w/vであるが、約0.2、0.4、0.6、0.8、1.2、1.4、1.6及び1.8%w/vの濃度も含み得る。好ましくは、安定化オキシ−クロロ複合体の濃度は、約0.0015%〜約0.05%w/vである。より好ましくは、安定化オキシ−クロロ複合体の濃度は、約0.002%〜約0.04%w/vである。さらに好ましくは、安定化オキシ−クロロ複合体の濃度は、約0.0025%〜約0.03w/vである。別の好ましい安定化オキシ−クロロ複合体の濃度は、約0.003%〜約0.02w/vである。さらに好ましい態様では、安定化オキシ−クロロ複合体の濃度は、約0.0035%〜約0.01w/vである。より好ましくは、安定化オキシ−クロロ複合体の濃度は、約0.004%〜約0.009w/vである。1つの好ましい態様の組成物は、約6.0〜約9.0、好ましくは約6.8〜約8.0、より好ましくは約7.0〜約7.4のpHを有し、最も好ましいpHは約7.2である。このようなpH値を維持するため、ホウ酸及び十分なホウ酸塩を適当な対イオンと共に含む緩衝溶液が添加される。
【0011】
1つの態様において、好ましい安定な組成物は、更に平衡塩を含む。ある態様では平衡塩は、好ましくはNaCl、KCl、CaCl及びMgClを、好ましくは約240〜約330mOsm/kg、より好ましくは約260〜約300mOsm/kg、最も好ましくは約270mOsm/kgの組成物切浸透圧を与えるような比率で、含む。
【0012】
1つの態様において、好ましい安定な組成物は、更に付加的な粘滑剤を含む。適当な付加的粘滑剤には、約0.2〜約2.5%の範囲のセルロース誘導体、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース及びメチルセルロース;約0.01%のゼラチン;約0.05〜約1%、また約0.2〜約1%のポリオール、例えばグリセリン、ポリエチレングリコール300、ポリエチレングリコール400、ポリソルベート80及びプロピレングリコール;約0.1〜約4%のポリビニルアルコール;約0.1〜約2%のポビドン;及びここに記載の他の粘滑剤と共に使用する場合の約0.1%以上のデキストランが包含されるが、これらに限定されない。これら付加的粘滑剤の中で、ある態様では、ポリオールが特に好ましい、他の態様では、セルロース誘導体も好ましい。好ましいセルロース誘導体は、約80,000又はそれ未満、より好ましくは約10,000〜約40,000の分子量を有する。ある状況では、大きい分子量を有する粘滑剤は、好ましい組成物に対して負の影響を与えることがあり得る。
【0013】
これら態様は全て、本明細書に開示した発明の範囲に入ることが意図されている。本発明のこれら及び他の態様は、好ましい形態についての以下の詳細な記載から、当業者には明らかにになるであろうが、本発明は、記載した特定の好ましい態様に限定されるものではない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
この明細書には、再湿潤剤として有用で安定な眼用組成物が開示されている。広範には、1つの好ましい態様は、主活性粘滑成分としてのヒアルロン酸(ヒアルロン酸ナトリウム)、保存効果のための安定化オキシ−クロロ複合体、及び緩衝剤としてのホウ酸名ナトリウム/ホウ酸を含む、安定な組み合わせである。好ましい態様は、更に、涙液膜を模倣する平衡塩及び/又は付加的粘滑剤を含む。ヒアルロン酸は、乾燥及び刺激(炎症)に悩んでいるコンタクトレンズ装用者に、優れた初期快適性及び長期間持続する快適性を与える。ヒアルロン酸の粘弾性、潤滑及び水分保持特性は、周知であり、セルロース系粘滑剤(例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)及びカルボキシメチルセルロース(CMC))よりも優れている。ヒアルロン酸の特有の性質は、まばたきとまばたきとの間で粘度を維持することにより涙液を疑似するが、まばたき中に剪断により薄くなる。この性質により、滞留時間、レンズ上及び周囲での水の保持、優れたクッション効果、及びコンタクトレンズ装用に付随する乾燥及び刺激の軽減を促進する。
【0015】
本明細書で使用する場合、用語「粘滑剤」は、通常の意味で使用される広い用語であり、「粘滑剤」が、通常、粘膜表面を保護し潤滑し、乾燥及び刺激を軽減するために眼に局所的に適用される剤、通例水溶性ポリマーを意味するような態様も包含するが、これに限定されない。本明細書で使用する場合、用語「安定な組成物(製剤)」は、通常の意味で使用される広い用語であり、「安定な組成物」が、好ましい組成物の粘度が25℃で12ヶ月の期間で約70%又はそれ以下の粘度低下(ブレークダウン)、より好ましくは25℃で12ヶ月の期間で約50%又はそれ以下の粘度低下を受けるような態様も包含する。本明細書に記載した態様は、コンタクトレンズでの使用に関するが、当業者なら、好ましい態様は、コンタクトレンズを装用していないヒトにも使用され得ることを認識するであろう。
【0016】
本明細書で使用する場合、用語「安定化オキシ−クロロ複合体」は、通常の意味で使用される広い用語である。この用語は、二酸化塩素前駆体を含む安定な溶液、又は二酸化塩素と平衡状態にある二酸化塩素前駆体を包含するが、これらに限定されない。二酸化塩素前駆体は、亜塩素酸金属塩(例えば、亜塩素酸のアルカリ金属及びアルカリ土類金属塩)のような亜塩素酸塩成分を包含するが、これに限定されない。1つの特に好ましい亜塩素酸金属塩は、亜塩素酸ナトリウムである。安定化二酸化塩素のような安定化オキシ−クロロ複合体は、Advanced Medical Optics からOcuPureTM として、Allergan からPuriteTM として、Biocide からPurogene として市販されている。
【0017】
本明細書では、安定化オキシ−クロロ複合体の濃度は、潜在二酸化塩素として測定する。本明細書で使用する場合、用語「潜在的二酸化塩素」は、通常の意味で使用される広い用語である。すなわち、この用語の1つの意味は、全ての二酸化塩素前駆体、例えば亜塩素酸ナトリウムが二酸化塩素に変換されたなら供給されたであろう二酸化塩素の量を指す。亜塩素酸ナトリウムを二酸化塩素に変換する1つの方法は、亜塩素酸ナトリウムを溶解し、生成した溶液を酸性化することである。もっとも、他の変換方法も当業者には周知であり、遷移金属への接触などが包含される。
【0018】
当業者なら、安定化オキシ−クロロ複合体をヒアルロン酸に添加すると、ヒアルロン酸を含み、Purite を含まない組成物よりも粘度が大きく低下すると予想するであろう。当業者なら、オキシ−クロロ複合体ラジカルがヒアルロン酸塩のサブユニット側鎖と反応し、それによりサブユニット間の結合が切断されると予想するであろう。すなわち、当業者なら、このようなポリマー鎖の切断により、ヒアルロン酸のみを含む組成物と比べた場合、粘度がより劇的に低下すると予想するであろう。しかしながら、予想に反して、ヒアルロン酸及び安定化オキシ−クロロ複合体を含む好ましい組成物は、粘度安定をもたらす。後記実施例2に記載しているように、安定化オキシ−クロロ複合体を含む組成物と含まない組成物とを直接比較すると、安定化オキシ−クロロ複合体を含む組成物の粘度は、Purite を含まない組成物と、驚くほど類似していることが分かる。
【0019】
Purite/ホウ酸塩殺菌・緩衝系は、好ましい組成物にとって理想的である。この系は、細菌、酵母及び真菌に対して、良好な保存効果を示すことが明らかになっている。加えて、安定化オキシ−クロロ複合体保存剤は、負に帯電しており、負に帯電しているヒアルロン酸粘滑剤との相溶性が確保される。
【0020】
過ホウ酸塩又は過酸化水素系に対するPurite/ホウ酸塩系の優位さは、過ホウ酸塩及び過酸化水素は両方とも眼を刺激することである。過ホウ酸塩を水に溶解すると、過酸化水素が発生し、それが眼を刺激する。0.01%又はそれ以上の水準の過酸化水素は、眼に不快感を与えることが示されている(Paugh, J., Brennan, N., 及びEfron, N., "Ocular Response to Hydrogen Peroxide", Am J Potom Physiol Opt. 1988 Feb;65(2):91-8 参照)。従って、本発明の好ましい態様の組成物は、0.01%未満、より好ましくは約0.0075%未満、更に好ましくは約0.005%未満の過酸化水素を含み、最も好ましくは、過酸化水素を実質的に含まない。このような好ましい態様は、過酸化水素を放出する過ホウ酸塩のような成分を、0.01%未満、より好ましくは約0.0075%未満、更に好ましくは約0.005%未満の過酸化水素を生成するような濃度未満で含む。
【0021】
最も好ましくは、過酸化水素、又は過酸化水素を放出する成分が、実質的に存在しない。多くの市販安定化オキシ−クロロ複合体は、不純物として極微量の過酸化物を含んでいる。例えば、商品名Purogene としてBiocide から販売されている製品は、2%溶液中に、0.002%過酸化物までの極微量の過酸化水素を含んでいることがある。従って、Purogen を使用する本発明の好ましい態様は、過酸化水素又は過酸化水素放出化合物を添加しない場合でも、0.00003%までの過酸化物を含むことがある。
【0022】
有利には、Purite/ホウ酸塩系が、過酸化水素の存在なしに眼の中で水を反応する場合、塩と酸素のみが生成される。酸素は、刺激を生じることなく眼に拡散し、眼の低酸素状態を有利に緩和する。
【0023】
1つの好ましい組成物は、眼のミネラル組成を模倣するNaCl、KCl、CaCl及びMgCl平衡塩(balanced salts)を含むが、これらに限定されない。これら塩は、レンズ装用中に低下し得る必須の塩を代替することにより、快適さを更に増し、刺激を和らげる。平衡塩は、NaClの単独使用より好ましいが、それは、NaCl単独が実際眼にストレスを与えることがあるからである。従って、開示された塩の組み合わせが好ましい。
【0024】
予想外のことに、ヒアルロン酸、安定化オキシ−クロロ複合体及びホウ酸塩緩衝剤系の組み合わせにより、快適さが増すとともに、他の利点も得られる。例えば、後記実施例に記載するように、市販点眼薬(Refresh)と比較した場合、本発明の好ましい組成物では、点眼した後の快適効果がより長く続き、一日の終わりの快適さがより大きく、涙切れ時間が改良され、Refresh に比べて増大した快適さの故に一日のレンズ装用時間がより長くなる。
【0025】
ある態様の好ましい組成物は、他の市販再湿潤剤組成物よりも細胞毒性が低いので、より快適であると考えられる。加えて、好ましい組成物は、優れた湿潤性も与える。向上した湿潤性は、臨床的には、期待された快適さの向上及び装用時間の延長と言い換えることができる。従って、好ましい組成物は、レンズ装用に伴って乾燥及び刺激を経験しているコンタクトレンズ装用者に優れた快適さを与えるのみならず、装用時間をより長くする。
【0026】
ある態様の好ましい組成物は、コンタクトレンズ殺菌用溶液に通常使用される正帯電抗菌剤及び保存剤を中和し、それにより、快適性を増す。このことは、これら正帯電抗菌剤及び保存剤に対してアレルギーがある又は敏感であるレンズ装用者にとって特に有益である。1つの態様では、抗菌剤又は保存剤は、コンタクトレンズが眼の中にある間に、コンタクトレンズに好ましい組成物を接触させることにより、中和される。あるいは、好ましい組成物は、眼の外にあるレンズに溶液を数滴落とすことにより、又は溶液を殺菌後の保存又は状態調節用溶液として使用することにより、眼の外にあるコンタクトレンズに接触させることもできる。
【0027】
1つの態様において、好ましい安定組成物は、主活性粘滑成分としてのヒアルロン酸(ヒアルロン酸ナトリウム)、保存効果のための安定化オキシ−クロロ複合体、及び緩衝剤としてのホウ酸ナトリウム/ホウ酸を含む。好ましい態様は、更に、涙液膜を模倣する平衡塩及び/又は付加的な粘滑剤を含む。1つの態様では、ヒアルロン酸は、好ましくは約200,000〜約4,000,000ダルトンの分子量を有する。好ましくは、分子量範囲は、約750,000〜2,000,000ダルトンである。より好ましくは、分子量範囲は、約800,000〜1,750,000ダルトンである。さらに好ましくは、分子量範囲は、約900,000〜1,500,000ダルトンである。好ましい態様において、ヒアルロン酸の濃度は、約0.005%〜約0.5%w/v(質量/容量)である。好ましくは、ヒアルロン酸の濃度は、約0.01%〜約0.3%w/vである。より好ましい態様において、ヒアルロン酸の濃度は、約0.02%〜約0.2%w/vである。別の好ましい態様において、ヒアルロン酸の濃度は、約0.05%〜約2%w/v、より好ましくは、約0.1%〜約5%w/vであるが、約0.2、0.4、0.6、0.8、1.2、1.4、1.6及び1.8%w/vの濃度も含み得る。好ましくは、安定化オキシ−クロロ複合体の濃度は、約0.0015%〜約0.05%w/vである。より好ましくは、安定化オキシ−クロロ複合体の濃度は、約0.002%〜約0.04%w/vである。さらに好ましくは、安定化オキシ−クロロ複合体の濃度は、約0.0025%〜約0.03w/vである。別の好ましい安定化オキシ−クロロ複合体の濃度は、約0.003%〜約0.02w/vである。さらに好ましい態様では、安定化オキシ−クロロ複合体の濃度は、約0.0035%〜約0.01w/vである。より好ましくは、安定化オキシ−クロロ複合体の濃度は、約0.004%〜約0.009w/vである。1つの好ましい態様の組成物は、約6.0〜約9.0、好ましくは約6.8〜約8.0、より好ましくは約7.0〜約7.4のpHを有し、最も好ましいpHは約7.2である。このようなpH値を維持するため、ホウ酸及び十分なホウ酸塩を適当な対イオンと共に含む緩衝溶液が添加される。
【0028】
1つの態様において、好ましい安定な組成物は、更に平衡塩を含む。ある態様では平衡塩は、好ましくはNaCl、KCl、CaCl及びMgClを、約140〜約400mOsm/kg、好ましくは約240〜約330mOsm/kg、より好ましくは約260〜約300mOsm/kg、最も好ましくは約270mOsm/kgの組成物切浸透圧を与えるような比率で、含む。1つの態様において、NaClの濃度は、約0.1〜約1%w/v、好ましくは約0.2〜約0.8%w/v、より好ましくは約0.39%w/vであり、KClの濃度は、約0.02〜約0.5%w/v、好ましくは約0.05〜約0.3%w/v、より好ましくは約0.14%w/vであり、CaClの濃度は、約0.0005〜約0.1%w/v、好ましくは約0.005〜約0.08%w/v、より好ましくは約0.06%w/vであり、MgClの濃度は、約0.0005〜約0.1%w/v、好ましくは約0.005〜約0.08%w/v、より好ましくは約0.06%w/vである。
【0029】
1つの態様において、好ましい安定な組成物は、更に付加的な粘滑剤を含む。付加的な粘滑剤には、the United States Ophthalmic Demulcents Monograph に記載の許容された眼科用粘滑剤が包含されるが、それらに限定されない。21 CFR 349.12 (2003) 参照。適当な付加的粘滑剤には、約0.2〜約2.5%の範囲のセルロース誘導体、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース及びメチルセルロース;約0.01%のゼラチン;約0.05〜約1%、また約0.2〜約1%のポリオール、例えばグリセリン、ポリエチレングリコール300、ポリエチレングリコール400、ポリソルベート80及びプロピレングリコール;約0.1〜約4%のポリビニルアルコール;約0.1〜約2%のポビドン;及びここに記載の他の粘滑剤と共に使用する場合の約0.1%以上のデキストランが包含されるが、これらに限定されない。これら付加的粘滑剤の中で、ある態様では、ポリオールが特に好ましい、他の態様では、セルロース誘導体も好ましい。好ましいセルロース誘導体は、約80,000又はそれ未満、より好ましくは約10,000〜約40,000の分子量を有する。ある状況では、大きい分子量を有する粘滑剤は、好ましい組成物に対して負の影響を与えることがあり得る。
【0030】
別の態様では、好ましい安定な組成物は、ドライアイ症状を処置するために、ヒトの眼に投与される。他の態様では、好ましい安定な組成物は、ドライアイ症状を処置するために、哺乳類の眼に投与される。好ましい態様では、好ましい安定な組成物は、コンタクトレンズを装用している又は装用していない眼に投与し得る。1つの態様では、好ましい安定な組成物は、主たる活性粘滑剤としてのヒアルロン酸(ヒアルロン酸ナトリウム)、保存効果のための安定化オキシ−クロロ複合体、及び緩衝剤としてのホウ酸塩/ホウ酸を含む。好ましい態様は、涙液膜を模倣する平衡塩及び/又は付加的な粘滑剤を更に含む。1つの態様では、ヒアルロン酸は、約200,000〜4,000,000ダルトンの分子量を有する。好ましくは、分子量範囲は、約750,000〜2,000,000ダルトンである。より好ましくは、分子量範囲は、約800,000〜1,750,000ダルトンである。さらに好ましくは、分子量範囲は、約900,000〜1,500,000ダルトンである。好ましい態様において、ヒアルロン酸の濃度は、約0.005%〜約0.5%w/v(質量/容量)である。好ましくは、ヒアルロン酸の濃度は、約0.01%〜約0.3%w/vである。より好ましい態様において、ヒアルロン酸の濃度は、約0.02%〜約0.2%w/vである。別の好ましい態様において、ヒアルロン酸の濃度は、約0.05%〜約2%w/v、より好ましくは、約0.1%〜約5%w/vであるが、約0.2、0.4、0.6、0.8、1.2、1.4、1.6及び1.8%w/vの濃度も含み得る。好ましくは、安定化オキシ−クロロ複合体の濃度は、約0.0015%〜約0.05%w/vである。より好ましくは、安定化オキシ−クロロ複合体の濃度は、約0.002%〜約0.04%w/vである。さらに好ましくは、安定化オキシ−クロロ複合体の濃度は、約0.0025%〜約0.03w/vである。別の好ましい安定化オキシ−クロロ複合体の濃度は、約0.003%〜約0.02w/vである。さらに好ましい態様では、安定化オキシ−クロロ複合体の濃度は、約0.0035%〜約0.01w/vである。より好ましくは、安定化オキシ−クロロ複合体の濃度は、約0.004%〜約0.009w/vである。1つの好ましい態様の組成物は、約6.0〜約9.0、好ましくは約6.8〜約8.0、より好ましくは約7.0〜約7.4のpHを有し、最も好ましいpHは約7.2である。このようなpH値を維持するため、ホウ酸及び十分なホウ酸塩を適当な対イオンと共に含む緩衝溶液が添加される。
【0031】
1つの態様において、好ましい安定な組成物は、更に平衡塩を含む。ある態様では平衡塩は、好ましくはNaCl、KCl、CaCl及びMgClを、約140〜約400mOsm/kg、好ましくは約240〜約330mOsm/kg、より好ましくは約260〜約300mOsm/kg、最も好ましくは約270mOsm/kgの組成物切浸透圧を与えるような比率で、含む。1つの態様において、NaClの濃度は、約0.1〜約1%w/v、好ましくは約0.2〜約0.8%w/v、より好ましくは約0.39%w/vであり、KClの濃度は、約0.02〜約0.5%w/v、好ましくは約0.05〜約0.3%w/v、より好ましくは約0.14%w/vであり、CaClの濃度は、約0.0005〜約0.1%w/v、好ましくは約0.005〜約0.08%w/v、より好ましくは約0.06%w/vであり、MgClの濃度は、約0.0005〜約0.1%w/v、好ましくは約0.005〜約0.08%w/v、より好ましくは約0.06%w/vである。
【0032】
1つの態様において、好ましい安定な組成物は、更に付加的な粘滑剤を含む。付加的な粘滑剤には、the United States Ophthalmic Demulcents Monograph に記載の許容された眼科用粘滑剤が包含されるが、それらに限定されない。21 CFR 349.12 (2003) 参照。適当な付加的粘滑剤には、約0.2〜約2.5%の範囲のセルロース誘導体、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース及びメチルセルロース;約0.01%のゼラチン;約0.05〜約1%、また約0.2〜約1%のポリオール、例えばグリセリン、ポリエチレングリコール300、ポリエチレングリコール400、ポリソルベート80及びプロピレングリコール;約0.1〜約4%のポリビニルアルコール;約0.1〜約2%のポビドン;及びここに記載の他の粘滑剤と共に使用する場合の約0.1%以上のデキストランが包含されるが、これらに限定されない。これら付加的粘滑剤の中で、ある態様では、ポリオールが特に好ましい、他の態様では、セルロース誘導体も好ましい。好ましいセルロース誘導体は、約80,000又はそれ未満、より好ましくは約10,000〜約40,000の分子量を有する。ある状況では、大きい分子量を有する粘滑剤は、好ましい組成物に対して負の影響を与えることがあり得る。
【0033】
好ましい組成物は、標準的な配合方法、濾過方法、充填及び包装装置を用いて製造される。1つの態様において、好ましい組成物は、大量生産が可能な大規模で製造される。他の態様では、好ましい組成物は、小さい研究室規模のバッチで製造される。1つの態様において、使用される包装は、使い捨て容器からなる。ある使い捨て態様では、代替組成物は、非保存化組成物を含んでいてよい。非保存化態様では、ホウ酸塩/ホウ酸緩衝剤系を、よりマイルドな緩衝系、例えば約0.3%乳酸ナトリウムに置き換えることもできる。他の態様では、組成物は、種々のサイズの点眼用容器に入れられる。別の態様では、溶液は、組成物をコンタクトレンズの保存又は状態調節用溶液として使用するのに適した寸法の容器に入れられる。好ましい包装には、本発明組成物を光から遮断する材料が含まれるが、これに限定されない。包装の1つの態様は、緑がかった青色(teal;ティール)の瓶からなる。他の態様は、種々の色の瓶を含み、例えば青色、不透明白色、黒色又は茶色の瓶が使用できる。
【0034】
以下の詳細な実施例により、好ましい形態を説明する。これら実施例が本発明の範囲を限定すること意図していないことは、明らかである。
【実施例1】
【0035】
下記は、本発明の好ましい単一粘滑剤態様の例である。成分は以下のとおりである:
【表1】

【0036】
平衡塩を精製水に溶解し、次いで、ホウ酸、ホウ酸ナトリウム及びヒアルロン酸ナトリウムを溶解する。pHを塩基(1N水酸化ナトリウム)又は酸(1N塩酸)により、7.2に調節し、次いで、Purite を添加する。必要なら、pHを再度調節し、溶液を最終容積に調節する。生成物を、光保護のためにティール瓶に充填する。
【実施例2】
【0037】
好ましい組成物の安定性試験
下記組成物の安定性を評価した。
【表2】

【0038】
組成物を、6ml及び15mlティールLDPE(低密度ポリエチレン)製瓶に充填した。6ml瓶は各組成物2mlを含み、15ml瓶は各組成物12mlを含んでいた。瓶を下記温度で貯蔵した。
【表3】

【0039】
各組成の2つの瓶を、外観、pH、潜在二酸化塩素、ヒアルロン酸ナトリウム濃度、浸透圧、粘度、可視光透過性、滅菌性及びPETについて、試験した。
【0040】
室温で貯蔵した場合、組成物は少なくとも24ヶ月間安定である。これは、40℃で9ヶ月間貯蔵した製品について得たデータから計算した予測値に基づく。この結果は、外科処置用粘弾性物として販売されているヒアルロン酸ナトリウム溶液のほとんどが安定性の問題から冷蔵条件での貯蔵を必要とすることから、従来技術に比べて改良されたことを示す。
【実施例3】
【0041】
安定化オキシ−クロロ複合体を使用した又は使用しない組成物の安定性試験
以下の組成物の安定性を評価した。
【表4】

【0042】
組成物は、組成物2が安定化オキシ−クロロ複合体を含んでいなかったことを除き、同一である。各組成物のサンプルを、25℃、40℃及び60℃で、12、3及び2ヶ月間貯蔵した。各時点で、粘度を測定した。上記のように、安定化オキシ−クロロ複合体を含む組成物の粘度は、Purite を含まない組成物の粘度より、相当速く低下すると、当業者なら予測するであろう。下記表が示しているように、2つの組成物を直接比較すると、安定化オキシ−クロロ複合体を含む組成物の粘度は、驚くべきことに、Purite を含まない組成物と同程度であることが分かる。実際、時間ゼロ(開始)から1ヶ月までの粘度低下は、組成物2よりも組成物1のほうが非常に小さい。
【表5】

【実施例4】
【0043】
臨床研究
臨床研究は、実施例2の好ましい組成物A及び組成物Bを市販のRefresh と比較して行った。試験した各組成物について約15人の被験者を追跡した。投与は、各被験者の一方の眼に試験組成物の1滴ないし2滴を点眼し、他方の眼に対照溶液の1滴ないし2滴を点眼することからなっていた。被験者は、基準レベルのために処置の前に、処置の直後、並びに処置後5、15、30及び60分で、評価した。結果は、各時間後での基準からの平均変化により、査定した。
【0044】
研究中に、下記の安全性評価を行った。角膜浮腫、角膜新血管形成、角膜汚染、インジェクション/球充血、及び眼結膜状態を含む、細隙灯検査結果を、基準時及び全追跡期間後に、記録した。ETDRS (Early Treatment of Diabetic Retinopathy Study) 測定システムを用いて、試験レンズ矯正視力を、基準時及び全追跡期間後に記録した。追跡期間中、副作用をモニタした。
【0045】
安全性評価に加えて、研究中に、以下の評価及び測定を行った。被験者の属性、統計、レンズ装用履歴、試験前のレンズケア履歴、及び投薬方法は、最初の訪問時にのみ決定した。レンズ装用快適性、不快性の兆候、全体の主観的視力の質、及び一般的なコメントを、基準時及び全追跡期間後に、評価した。レンズ適合性及び涙干渉分光法(コンタクトレンズの前面における涙液膜切れ時間)を、投与直後の検査時を除き、基準時及び全追跡期間後に、測定した。被験者の状態を、必要とされないなら投与直後の検査時を除き、基準時及び全追跡期間後に、評価した。戻り状態は、全追跡訪問時に評価した。製品受容性は、最後の検査時に決定した。
【0046】
下記の表に示したように、臨床研究により、Refresh と比較した場合、好ましい組成物は、点眼薬を使用した後により長期間、快適性を与え、1日の終わりにより高い快適性を与え、改良された涙切れ時間を与え、提供される改良された快適性の故に1日のレンズ装用時間をより長くすることが、明らかにされている。
【0047】
被験者に、7日目及び30日目の訪問時に、再湿潤点眼薬を用いた後の快適性効果の長さを評価するよう、質問した。組成物A及びBを使用した被験者は、Refresh を使用した被験者よりも、より優れた快適性がより長かったことを報告した。例えば、30日目では、組成物Aを使用した被験者の13%及び組成物Bを使用した被験者の22.7%が、快適性効果を維持するために付加的な点眼は必要で無かったと報告したが、Refresh を使用した被験者では、4.8%であった。
【表6】

【0048】
各日の終わりでのレンズ装用快適性を、0日目(基準)、7日目及び30日目に評価した。快適性スコアは、0〜10(「レンズを我慢できない」から「レンズを感じない」まで)の尺度で、測定した。表7は、組成物A及びBが、基準から30日目までで、Refresh と比べて、快適性がより大きく増していることを示している。
【表7】

【0049】
装用しているレンズについての涙切れ時間は、各訪問時に報告された。涙切れ時間(TBUT; tear-break up time)は、0日目(基準)、7日目及び30日目に測定した。表8は、組成物A及びBが、Refresh に比べ、基準から30日目まで、改良された又はより長くなった涙切れ時間を示したことを、明示している。基準から30日目までの組成物A及びBにつての涙切れ時間の変化は、組成物Aでは1.87の増加、組成物Bについては3.06の増加であった。逆に、Refresh では、基準から30日目までで、0.52の減少であった。
【表8】

【0050】
被験者に、研究の前と比べた研究の開始時からのレンズ装用時間の変化を評価するよう、質問した。評価は、7日目と30日目に行った。表9は、組成物A及びBでは、装用時間がそれぞれ21.7%及び18.2%増しているが、Refresh では9.5%の増加でしかないことを示している。
【表9】

【0051】
上記の種々の方法及び手法は、本発明を実施するための多数の方法を提供する。もちろん、記載した目的及び利益が全て、記述した特定の態様により必ずしも達成できるものではないことは、理解されるべきである。例えば、当業者なら、ここに記載した利点又は一群の利点を達成又は最大化するように、方法を実施できるが、ここに記載した他の目的又は利点は達成しなくてもよいことを認識するであろう。
【0052】
更に、当業者は、異なる態様からの種々の要件の互換性を認識するであろう。同様に、当業者なら、上記の種々の要件及び工程、並びに要件及び工程の他の既知の均等物を組み合わせ、適合させて、ここに記載した原理に従って方法を実施することができるであろう。
【0053】
ここまで、本発明を、ある態様及び例により説明してきたが、当業者なら、具体的に記載された態様を超えて、別の態様及び/又は用途並びにそれらの変更物及び均等物にまで拡張できることを理解すべきである。従って、本発明は、記載した好ましい態様の特定の開示によっては限定されず、添付の特許請求の範囲によって限定されるのである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
約0.005%〜約0.5%w/vのヒアルロン酸、
約0.0025%〜約0.03%w/vの安定化オキシ−クロロ複合体、及び
pHを約6.0〜約9.0に維持するためのホウ酸/ホウ酸塩緩衝剤
を含み、約0.0075%以下の過酸化水素を含む、ヒトの眼に快適な安定眼用組成物。
【請求項2】
該ヒアルロン酸は、約200,000〜4,000,000ダルトンの分子量を有する請求項1に記載の安定眼用組成物。
【請求項3】
該ヒアルロン酸は、約750,000〜2,000,000ダルトンの分子量を有する請求項2に記載の安定眼用組成物。
【請求項4】
該ヒアルロン酸は、約800,000〜1,750,000ダルトンの分子量を有する請求項3に記載の安定眼用組成物。
【請求項5】
該ヒアルロン酸は、約900,000〜1,500,000ダルトンの分子量を有する請求項4に記載の安定眼用組成物。
【請求項6】
該ヒアルロン酸は、約1,000,000ダルトンの分子量を有する請求項5に記載の安定眼用組成物。
【請求項7】
該ヒアルロン酸の濃度は、約0.1%〜約0.5%w/vである請求項1に記載の安定眼用組成物。
【請求項8】
該ヒアルロン酸の濃度は、約0.01%〜約0.3%w/vである請求項1に記載の安定眼用組成物。
【請求項9】
該安定化オキシ−クロロ複合体の濃度は、約0.003%〜約0.02%w/vである請求項1に記載の安定眼用組成物。
【請求項10】
該安定化オキシ−クロロ複合体の濃度は、約0.004%〜約0.009%w/vである請求項9に記載の安定眼用組成物。
【請求項11】
該安定化オキシ−クロロ複合体の濃度は、約0.005%w/vである請求項10に記載の安定眼用組成物。
【請求項12】
該組成物のpHは、約6.8〜約8.0である請求項1に記載の安定眼用組成物。
【請求項13】
該組成物のpHは、約7.0〜約7.4である請求項12に記載の安定眼用組成物。
【請求項14】
該組成物のpHは、約7.2である請求項13に記載の安定眼用組成物。
【請求項15】
更に平衡塩を含む請求項1に記載の安定眼用組成物。
【請求項16】
該平衡塩は、NaCl、KCl、CaCl及びMgClを含む請求項15に記載の安定眼用組成物。
【請求項17】
NaClの濃度は、約0.1〜約1%w/vである請求項16に記載の安定眼用組成物。
【請求項18】
KClの濃度は、約0.02〜約0.5%w/vである請求項16に記載の安定眼用組成物。
【請求項19】
CaClの濃度は、約0.0005〜約0.1%w/vである請求項16に記載の安定眼用組成物。
【請求項20】
MgClの濃度は、約0.0005〜約0.1%w/vである請求項16に記載の安定眼用組成物。
【請求項21】
平衡塩は、約140〜約400mOsm/kgの組成物浸透圧を与える請求項15に記載の安定眼用組成物。
【請求項22】
平衡塩は、約240〜約330mOsm/kgの組成物浸透圧を与える請求項21に記載の安定眼用組成物。
【請求項23】
平衡塩は、約260〜約300mOsm/kgの組成物浸透圧を与える請求項22に記載の安定眼用組成物。
【請求項24】
平衡塩は、約270mOsm/kgの組成物浸透圧を与える請求項23に記載の安定眼用組成物。
【請求項25】
更に、約0.05〜約1%のポリオール粘滑剤を含む請求項1に記載の安定眼用組成物。
【請求項26】
更に、約0.2〜約1%のポリオール粘滑剤を含む請求項25に記載の安定眼用組成物。
【請求項27】
該ポリオール粘滑剤は、グリセリン、ポリエチレングリコール300、ポリエチレングリコール400、ポリソルベート80及びプロピレングリコールからなる群から選択される請求項25に記載の安定眼用組成物。
【請求項28】
更に、約0.2〜約2.5%のセルロース誘導体粘滑剤を含む請求項1に記載の安定眼用組成物。
【請求項29】
該セルロース誘導体粘滑剤は、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース及びメチルセルロースからなる群から選択される請求項28に記載の安定眼用組成物。
【請求項30】
該セルロース誘導体粘滑剤は、約80,000又はそれ未満の分子量を有する請求項28に記載の安定眼用組成物。
【請求項31】
該セルロース誘導体粘滑剤は、約10,000〜約40,000の分子量を有する請求項30に記載の安定眼用組成物。
【請求項32】
組成物は、約0.005%未満の過酸化水素を含む請求項1に記載の安定眼用組成物。
【請求項33】
過酸化水素を実質的に含まない請求項32に記載の安定眼用組成物。
【請求項34】
ドライアイの処置に使用するための請求項1〜33のいずれかに記載の組成物。
【請求項35】
コンタクトレンズの再湿潤に使用するための請求項1〜33のいずれかに記載の組成物。
【請求項36】
ドライアイの処置のための薬剤の製造における、請求項1〜33のいずれかに記載の組成物の使用。
【請求項37】
コンタクトレンズを再湿潤するための薬剤の製造における、請求項1〜33のいずれかに記載の組成物の使用。
【請求項38】
哺乳類の眼において涙液膜切れ(破壊)時間を延長するための薬剤の製造における、請求項1〜33のいずれかに記載の組成物の使用。

【公表番号】特表2006−516032(P2006−516032A)
【公表日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−500819(P2006−500819)
【出願日】平成16年1月8日(2004.1.8)
【国際出願番号】PCT/US2004/000298
【国際公開番号】WO2004/062660
【国際公開日】平成16年7月29日(2004.7.29)
【出願人】(502049837)アドバンスト メディカル オプティクス, インコーポレーテッド (50)
【Fターム(参考)】