説明

コンタクトレンズ用ゲル状洗浄剤

【課題】レンズ表面を改質したRGPCLや含水性SCLに対しても使用可能な洗浄剤を提供する。すなわち、高機能化されたレンズ表面に悪影響を及ぼすことなく優れた洗浄効果を発現し、かつ含水性SCLにおいても使用可能なハンドリング性(取扱い性)に優れたコンタクトレンズ用洗浄剤を提供する。
【解決手段】少なくとも低級アルコール、非イオン性の浸透圧調整剤、界面活性剤、ゲル化剤を含むことを特徴とするコンタクトレンズ用ゲル状洗浄剤。上記低級アルコールの含有量が、5.0〜30.0%の範囲内であることを特徴とする上記コンタクトレンズ用ゲル状洗浄剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゲル状のコンタクトレンズ用洗浄剤に関するものである。更に詳しくは、優れた洗浄力と取扱い性を有し、かつ、擦り洗い洗浄でもコンタクトレンズ表面に悪影響を及ぼすことがないゲル状のコンタクトレンズ用洗浄剤に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的なコンタクトレンズにおいて、装用の際に涙液や眼脂に由来する蛋白質や脂質等の汚れが付着することにより、装用感の悪化や、視力(視力矯正力)の低下等の問題が生じるので、定期的な洗浄が必要不可欠である。
【0003】
従来のコンタクトレンズ用洗浄剤としては、界面活性剤や蛋白分解酵素を含有したものがある。また、ソフトコンタクトレンズ(以下、SCL)用洗浄剤としては、一液で洗浄
・消毒・保存・すすぎが可能なマルチパーパスソリューション(MPS)が、その簡便性から広く普及している。しかし、コンタクトレンズ表面の汚れを効果的に除去するには手指による、いわゆる「擦り洗い」が好ましい。
【0004】
例えば、「擦り洗い」による洗浄剤としては、キチンと結晶セルロースを含有させた技術が開示されている(特許文献1参照)。これは、それまでの無機質研磨剤や有機粒状ポリマーを用いた場合の欠点である、レンズ表面に傷を付けたり、研磨剤が沈殿する等を防止するものである。
【0005】
更に、「擦り洗い」による洗浄剤としては、アルキレングリコール、特定構造の界面活性剤、エタノールやイソプロピルアルコール等の低級アルカノール、張性ビルダー、セルロース系の増粘剤等を主要成分とした技術が開示されている(特許文献2参照)。これは、迅速な洗浄消毒効果を目的とした、殺菌作用を有するグリコール類でレンズ表面を膨潤させて界面活性剤や低級アルカノールで洗浄消毒するものである。
【0006】
この洗浄剤では、「擦り洗い」を行う場合の作業性向上成分として、増粘剤を用いている。増粘剤としては、ヒドロキシ低級アルキルセルロース、アルキル低級アルカノイルセルロース、低級アルキルセルロース、低級アルキルアルカノイルセルロース、カルボキシ低級アルキルセルロース等を挙げて、溶液の粘度を0〜100cpsに調整している。
【0007】
一般的に、高粘度タイプのコンタクトレンズ洗浄剤が知られているが、このタイプの洗浄剤は洗浄成分がレンズに残留するという課題があり、特に有機高分子系増粘剤を用いた場合には増粘剤自体が細菌の増殖を促進するという指摘もある。
【0008】
このような課題に対処するために、高粘度とすすぎ性を両立させた技術として合成スメクタイト微粒子を分散させた洗浄剤が開示されている(特許文献3参照)。合成スメクタイト微粒子は無機物質であるため細菌は繁殖することなく、その分散含有量によって適度な増粘性とチキソトロピー性を示すので、液状からゲル状まで自在に粘度を調整できるとされている。
【特許文献1】特開昭63−136020号公報
【特許文献2】特開平02−240199号公報
【特許文献3】特開平11−281937号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、最近の酸素透過性ハードコンタクトレンズ(以下、RGPCL)は親水性付与や蛋白質等の耐汚染性付与の目的から、プラズマ表面改質やグラフト重合等によりレンズ表面を修飾、機能化させているものが多い。これらのレンズを研磨作用のある微粒子配合の洗浄剤で「擦り洗い」洗浄した場合、レンズ表面に施した機能が損失するという報告がある。また、研磨作用のある微粒子配合の洗浄剤で、含水ゲルであるSCLを「擦り洗い」洗浄すると、その光学特性を劣化させるので含水製SCLへの使用は適さない。
【0010】
本発明の目的は、従来のRGPCLのみならず、レンズ表面を改質したRGPCLや含水性SCLに対しても使用可能な洗浄剤を提供することにある。すなわち、高機能化されたレンズ表面に悪影響を及ぼすことなく優れた洗浄効果を発現し、かつ、含水性SCLにおいても使用可能なハンドリング性(取扱い性)に優れたコンタクトレンズ用洗浄剤の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、レンズ表面に悪影響を及ぼさず、かつ、十分な洗浄効果を発揮する洗浄剤であって、界面活性剤と低級アルコールを含有してなる「擦り洗い」に適するゲル状のコンタクトレンズ用洗浄剤である。
【0012】
すなわち、本発明は、少なくとも低級アルコール、非イオン性の浸透圧調整剤、界面活性剤、ゲル化剤を含むことを特徴とするコンタクトレンズ用ゲル状洗浄剤である。
【0013】
また本発明は、上記低級アルコールの含有量が、5.0〜30.0%の範囲内であることを特徴とする上記コンタクトレンズ用ゲル状洗浄剤である。
【0014】
また本発明は、上記非イオン性の浸透圧調整剤が、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、グリセリン、D−マンニトール、ソルビトール、キシリトール、トレハロース、トリメチルグリシンの中から選択された少なくとも1種類を含有することを特徴とする上記コンタクトレンズ用ゲル状洗浄剤である。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、無機質研磨剤や有機粒状ポリマーを配合しないゲル状洗浄剤であり、レンズ表面に悪影響を及ぼさずに「擦り洗い」洗浄ができる。したがって、コンタクトレンズの種類によらず有効な洗浄効果が得られる。特に、プラズマ表面改質やグラフト重合等による表面改質を施したコンタクトレンズに対しては有効かつ良好な洗浄効果が得られる。また、洗浄成分に低級アルコールを用いたのでゲル中で細菌が繁殖することがなく、かつ、ゲル状であるため洗浄成分が残留することのないコンタクトレンズ用洗浄剤が提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の洗浄剤は、低級アルコールをゲル状にして用いる「擦り洗い」に適するコンタクトレンズ用洗浄剤である。コンタクトレンズの汚れの原因の一つとして、化粧品等に含まれる油性成分に由来するものがある。これに対する洗浄剤としては、界面活性剤だけでは不十分であり、低級アルコールを配合することでレンズ表面に付着した化粧品による汚れも効果的に除去することができる。エタノールやイソプロピルアルコールは消毒効果も有するので、洗浄・消毒剤として一般的に用いられている。本発明においても、低級アルコールとしてエチルアルコール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ベンジルアルコール等が利用でき、イソプロピルアルコールが特に好ましく用いられる。
【0017】
低級アルコールを多量に配合すれば消毒効果は向上するが、コンタクトレンズへの影響や眼に対しての安全性などの点で配合量は制限される。
【0018】
本発明での使用量は、通常1.0〜60.0%の範囲内で用いることが可能であるが、1.0%未満では洗浄効果、および消毒効果の向上が十分に発揮されず、60.0%を超えるとゲル形態の形成が困難になるばかりでなく、コンタクトレンズの光学特性を著しく劣化させる。具体的には、RGPCLではレンズ素材が軟らかくなり、含水性SCLの場合ではレンズ素材が膨潤・変形するなど多大な悪影響を及ぼすので好ましくない。
【0019】
本発明において、好ましくは5.0〜30.0%の範囲であり、特に、RGPCLと含水性SCLの両用とする場合には5.0〜15.0%が好ましい。
【0020】
本発明の場合、レンズに悪影響を及ぼさないように低級アルコールの配合量は極力少なく配合するが、少ない量の低級アルコールでは十分な消毒効果を発揮できない。そこで、本発明の特徴である非イオン性浸透圧調整剤を用い、ゲルの調製時に配合して浸透圧を調節する。浸透圧の調整は、含水性SCLに使用した場合には洗浄剤成分のレンズ内部への取込みを抑制しレンズ形状を維持する効果もある。
【0021】
浸透圧調整剤としては、眼科的に従来から公知の塩化ナトリウム、塩化カリウム、硫酸ナトリウム、リン酸ナトリウム等のイオン性浸透圧調整剤の他に、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、グリセリン、トリメチルグリシン、グリシン、アラニン等のアミノ酸、キシリトール、マンニトール等の糖アルコール、グルコース、フルクトース等の単糖類をはじめトレハロース等の二糖類、それ以上の多糖類(環状多糖類であるサイクロデキストリン等も含む)等の非イオン性浸透圧調整剤が挙げられる。本発明においては、ゲル化時における粘度制御の容易性から、非イオン性浸透圧調整剤を使用する。非イオン性浸透圧調整剤としては、これらの中から1種または2種以上を適宜選択して使用することができるが、好ましくはプロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、グリセリン、D−マンニトール、ソルビトール、キシリトール、トレハロース、トリメチルグリシンの中から1種または2種以上を選択し、特に好ましくはプロピレングリコール、トリメチルグリシン、トレハロースの中から1種または2種以上を選択する。
【0022】
すなわち、プロピレングリコール、トリメチルグリシン、トレハロースは従来より保湿剤として知られており、浸透圧調整効果のみならず保湿効果も期待でき、「擦り洗い」時に手指に対して良好な作用を及ぼすからである。
【0023】
使用量としては、他の成分、例えば界面活性剤等の使用量と調整してゲル洗浄剤全体の浸透圧が通常290〜2000mmol/kg、好ましくは500〜1500mmol/kg程度となるように、その必要量を添加する。浸透圧が290mmol/kg未満では、低級アルコールの消毒効果の不足分を補うことができず、また含水性SCLは通常、浸透圧は290mmol/kgに調節されているため洗浄剤成分がレンズ中に取り込まれ不都合を生じる。
【0024】
浸透圧を2000mmol/kgより大きくすれば、少ない配合量の低級アルコールでも消毒効果を得られるが、ゲル中の水分量が少なくなり、洗浄後のコンタクトレンズ用保存剤などによるすすぎの際に、含水性SCLが著しい変形を生じるので好ましくない。
【0025】
本発明において界面活性剤は、ゲル状態を安定に維持できるものであれば特に制限はなく、陰イオン界面活性剤、陽イオン界面活性剤、非イオン界面活性剤、両性界面活性剤の何れでも使用可能であり、また、適宜組合わせて使用することもできる。
【0026】
特に好ましい界面活性剤としては、非イオン界面活性剤であり、具体的には、アルキルアルカノールアミド類、アルキルポリオキシアルキレンエーテル類、アミンオキシド類、アルキルポリグリコシド、アルキルポリグリコシドポリオキシエチレン等が挙げられる。配合量は、コンタクトレンズに悪影響を与えることなく、且つ眼に対する刺激のない濃度であれば特に制限はないが、通常、0.05%〜20.0%、好ましくは0.1〜5.0%程度の割合となるように調製する。
【0027】
本発明に使用するゲル化剤は、アルコール系の有機溶媒含有水溶液をゲル化できるものを用いる。具体的には、カルボキシビニルポリマー、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリ(メタ)アクリル酸ナトリウム、(メタ)アクリル酸アルキル共重合体等の合成有機高分子化合物、アルギン酸ナトリウム等のアルギン酸誘導体、キサンタンガム、グアーガム等のガム類、合成ケイ酸ナトリウム・マグネシウム等が挙げられる。使用量はゲル状態を安定に形成できる量を用いるが、通常0.05〜10.0%、好ましくは0.1〜5.0%程度の割合となるように調製する。
【0028】
本発明のゲル状洗浄剤は、通常pHが5〜9程度に、好ましくはpH6〜8に調整して用いる。pHが5未満、あるいは9を越える場合には、眼刺激やコンタクトレンズの素材に対しても悪影響を与える可能性がある。
【0029】
緩衝剤としては、従来より公知の方法で適宜選択して使用することができる。例えば、トリスヒドロキシメチルアミノメタンと塩酸、クエン酸等を組合わせた緩衝剤、リン酸とリン酸ナトリウムを組合わせた緩衝剤、クエン酸とリン酸ナトリウムを組合わせた緩衝剤、ホウ酸及び/またはホウ砂を組合わせた緩衝剤等が挙げられる。その使用量は、一般的な0.1〜10.0%程度の量が好ましい。0.1%未満では十分なpH安定性が得られず、また、10.0%を超えてもpHの顕著な安定性が認められないばかりか、低温下に保存する場合には、緩衝剤が析出する等の問題を生じる可能性がある。
【0030】
上記成分の他にも、本発明の目的を損なわない限り、保存剤、pH調整剤、キレート剤、粘度調整剤の他、蛋白分解酵素、脂質分解酵素をはじめとする酵素剤等、各種の添加剤を更に配合することができる。特に、ポリエチレングリコール類は「擦り洗い」の際の手指の触感を向上させる点で好ましく配合される。
【実施例】
【0031】
以下実施例によって本発明を具体的に説明するが、これらは本発明を限定するものではない。なお、以下の実施例における配合量の単位は、特に断らない限り、w/w%である。
【0032】
(実施例1〜8、比較例1〜3)
本発明による実施例の溶液と比較例の溶液を表1に示した配合量にて調製して、以下の評価を行った。
【0033】
(本実施例溶液の調製)
適量の精製水に緩衝剤、EDTA・2Na、ポリエチレングリコール、適宜選択した浸透圧調整剤を溶解させた水溶液に、ゲル化剤としてカルボキシビニルポリマーを加えて加えて均一に分散させた後、イソプロピルアルコールを加える。これに中和剤として水酸化ナトリウム水溶液を加えてゲル化させた後、界面活性剤を加え、精製水にて全量を100gとした。
【0034】
(試験1)
−洗浄力試験−
・人工汚垢レンズの作製
公知の涙液成分(蛋白質、脂質)からなる人工汚垢液に、あらかじめ化粧品(ファンデーション、マスカラ、アイシャドー)を付着させたレンズを浸漬して55℃で5時間加温し、次いでそのレンズを70℃の純水中で16時間浸漬後、50℃で6時間乾燥させて人工汚垢レンズを得た。
【0035】
試験用レンズとして、RGPCL(シード社製/シードA−1)と含水製SCL(ジョンソンエンドジョンソン社製/アキュビュー2)を用いた。
【0036】
・洗浄効果の評価
人工汚垢レンズの洗浄前のヘーズ値を測定(スガ試験機株式会社製、HGM−2DP使用)した後、表1に示した本件実施例と比較例の各洗浄剤で約30秒間(片面約15秒間)手指での擦り洗いを行った。すすぎは流水(水道水)にて、各洗浄剤の残留感(ヌルヌル感)がなくなるまで(10〜20秒間)行ない自然乾燥させた。洗浄後のレンズのヘーズ値を測定し、下記式で汚れ除去率を算出した。結果を表2に示した。
【0037】
(洗浄前のヘーズ値 − 洗浄後のヘーズ値)
汚れ除去率(%)= ────────────────―──── × 100
(洗浄前のヘーズ値)
【0038】
算出した汚れ除去率(%)から、以下に示すように5段階で洗浄力を評価した。
◎;90%以上 ○;80%以上90%未満 △;60%以上80%未満 ▲;40%以上60%未満 ×;40%未満
【0039】
汚れ除去率(%)は大きいほど好ましいが、60%以上の汚れ除去率を合格とした基準では本発明の実施例溶液は全て合格であった。
【0040】
(試験2)
−消毒効果試験−
菌株として、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa:ATCC 9027)、霊菌(Serratia marcescens:ATCC13880)、の細菌2種類、及びカンジダ(Candida albicans:ATCC 10231)の真菌1種類、全3菌種について試験を行った。
【0041】
細菌類は、ソイビーンカゼイン寒天培地の斜面培地上で35℃×24時間培養した菌原体に、滅菌済みダルベッコリン酸緩衝生理食塩水を加えて回収した懸濁液(108〜109cfu/mL)を試験菌原液とした。
【0042】
真菌類は、ブドウ糖ペプトン寒天培地の斜面培地上で35℃×24時間培養した菌原体に、滅菌済みダルベッコリン酸緩衝生理食塩水を加えて回収した懸濁液(108〜109cfu/mL)を試験菌原液とした。
【0043】
無菌化した本発明のコンタクトレンズ用溶液10mlに、終末濃度105〜106cfu/mLになるように上記各試験菌原液0.1mLを接種した後、25℃のインキュベーター中で保管した。所定の消毒時間経過後に、微生物接種後の各試験液1mLを採取し、滅菌済みの不活化剤入り液体培地(Letheen Broth)9mLに添加(10倍希釈)した後、さらに滅菌済みダルベッコリン酸緩衝生理食塩水を用いて連続した10倍希釈系列を調製し、適当な希釈倍率の3濃度で希釈された試験液1mLを滅菌済みディスポシャーレに採り、寒天培地を加えて混釈し生菌数を測定した。
【0044】
一方、本発明のコンタクトレンズ用溶液に接種した初発菌数(初期の接種菌数)は、すべての希釈に滅菌済みダルベッコリン酸生理食塩水を用いて、前述と同様の操作により生菌数を測定した。寒天培地は、細菌2種類についてはソイビーンカゼイン寒天培地、真菌1種類についてはブドウ糖ペプトン寒天培地を用いた。この寒天混釈平板法における培養条件は、細菌、真菌共に35℃×48時間とした。消毒時間経過後の対数差(生菌数減少量の対数値)は、初発菌数、および接種後試験液の生菌数(対数値)をそれぞれ算出した後、次式により初発菌数の対数値と接種後試験液の生菌数の対数値との差から求めた。その結果を表2に示す。
対数差(生菌数減少量の対数値)=
初発菌数(対数値)−接種後試験液の生菌数(対数値)
【0045】
評価は、ISOスタンドアロン試験の一次実施基準に準拠し、所定の消毒時間における対数差が、細菌類については対数差3.0以上、真菌類については対数差1.0以上が合格とした。なお、消毒時間は1分間にて試験を実施した。
【0046】
(試験3)
−機能性表面を有するコンタクトレンズへの影響の評価−
機能性表面を有するコンタクトレンズへの影響の評価として、表面を有機化合物で処理して親水化したRGPCL(シード社製/シードS−1)を用いた。
【0047】
表3に示す本発明の実施例溶液と比較例として研磨剤配合洗浄剤(シード社製/O2クリン)を用いて手指による擦り洗いを行った。各洗浄剤による擦り洗いと流水(水道水)によるすすぎを1サイクルとして、10サイクル、20サイクル、および30サイクル処理後のレンズ表面の親水性について評価した。サイクル処理前後のレンズ表面の接触角の変化量から、以下に示すように5段階でレンズ表面への影響を評価した。
【0048】
◎;10度以下 ○;10度超20度以下 △;20度超30度以下 ▲;30度超40度以下 ×; 40度超
【0049】
接触角の変化量は小さいほど好ましいが、30度以内の変化量を合格とした基準では、本発明の実施例溶液は全て合格であった。
【0050】
【表1】

【0051】
*1.プロピレングリコール
*2.トリメチルグリシン
*3.トレハロース
*4.アルキルグルコシド:コグニスジャパン(株) プランタケア2000UP(純分50%:純分換算後の配合量)
*5.ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー:旭電化工業(株)プルロニックF68
【0052】
【表2】

【0053】
*比較例1の場合、浸透圧が2500mmol/kgと大きいのでSCL(*1)では、洗浄時にレンズが収縮し、すすぎ後にはレンズが著しく変形した。
【0054】
*比較例2の場合、多量のイソプロピルアルコールにより、RGPCL(*2)ではレンズ素材が軟化し、SCL(*3)では膨潤によりレンズサイズが拡大した。また、大量のイソプロピルアルコールのため、ゲル化できなかった。
【0055】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも低級アルコール、非イオン性の浸透圧調整剤、界面活性剤、ゲル化剤を含むことを特徴とするコンタクトレンズ用ゲル状洗浄剤。
【請求項2】
前記低級アルコールの含有量が、5.0〜30.0%の範囲内であることを特徴とする請求項1記載のコンタクトレンズ用ゲル状洗浄剤。
【請求項3】
前記非イオン性の浸透圧調整剤が、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、グリセリン、D−マンニトール、ソルビトール、キシリトール、トレハロース、トリメチルグリシンの中から選択された少なくとも1種類を含有することを特徴とする請求項1〜2記載のコンタクトレンズ用ゲル状洗浄剤。


【公開番号】特開2006−11418(P2006−11418A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−152425(P2005−152425)
【出願日】平成17年5月25日(2005.5.25)
【出願人】(000131245)株式会社シード (30)
【Fターム(参考)】