説明

コンタクト及び電気コネクタ

【課題】部品点数を増加させることなくかつ比較的簡単な構造で接続対象物の抜去力を高めることが可能なコンタクト及び電気コネクタを提供すること。
【解決手段】このコンタクト1は、連結部を一軸の周りに曲がってのびた連結部3を備えている。第1の接続対象物に接続されるバネ部6と第2の接続対象物に接続される接続部7は連結部から延出させる。バネ部は、前記一軸に交差する方向で弾性変位可能な対のバネ片8を有する。対のバネ片の少なくとも一方には、バネ部に接続された第1の接続対象物の一軸に沿った抜去方向への移動を阻止する突出部13を設ける。このコンタクトをハウジングに保持させて電気コネクタを構成することも勿論可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接続対象物に圧接するバネ部を備えたコンタクト、及びそのコンタクトを用いた電気コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
電気コネクタは、接続対象物との接触を得るための導電性の部材からなるコンタクトを含んでいる。そのコンタクトは、通常、接続対象物に接触する部分を可動に支持したバネ部を備えている。接続している接続対象物の抜去力を高めるため、電気コネクタまたはコンタクトに次に説明するような様々な工夫が施されている。
【0003】
特許文献1に開示された電気コネクタは、可動な操作部材を備え、その操作部材によってコンタクトを操作して接続対象物に圧接させ、これにより接続対象物の抜去力を高めるように構成されている。
【0004】
また、特許文献2に開示されたコンタクトは、接続対象物の抜去力を高めるために3本のバネ片をクロスさせて接続対象物に圧接させる構造を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−95671号公報
【特許文献2】特開2007−280639号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示された電気コネクタでは、コンタクトとは別の部品である操作部材を必要とするので、部品点数が多くなり、コストを低下させることが難しい。さらに、操作部材を合成樹脂で作製すると、熱による変形が懸念される。操作部材が変形すると、接続対象物の抜去力が低下してしまう。かといって、操作部材を金属で作製すると、操作部材がコンタクトに当接する部分で接触不十分な場合に放電を起こす虞がある。また、電気コネクタが振動を受ける場合には、接触が不安定になるなどの問題を引き起こすことが懸念される。
【0007】
また特許文献2に開示されたコンタクトでは、3本のバネ片を備えることにより、構造が複雑になりかつ外形が大きくなってしまう。その上、バネ片をクロスさせて接続対象物に接触させる構成のため、接触状態において接続対象物にせん断力が作用し、したがって長期的な信頼性の欠如が懸念される。
【0008】
それ故に本発明の課題は、部品点数を増加させることなくかつ比較的簡単な構造で接続対象物の抜去力を高めることが可能なコンタクト及び電気コネクタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様によれば、一軸の周りに曲がってのびた連結部、前記連結部から延出し第1の接続対象物に接続されるバネ部、及び前記連結部から延出し第2の接続対象物に接続される接続部を含み、前記バネ部は、前記一軸に交差する方向で弾性変位可能な対のバネ片を有し、前記対のバネ片の少なくとも一方は、前記バネ部に接続された前記第1の接続対象物の前記一軸に沿った抜去方向への移動を阻止する突出部を有することを特徴とするコンタクトが得られる。
【0010】
前記連結部は前記一軸の周りで環状をなしていてもよい。
【0011】
前記連結部は略四角筒形状をなすように形成されており、前記対のバネ片は、前記連結部の互いに対向した2面から延出していてもよい。
【0012】
前記連結部は、前記連結部の残りの2面のうちの少なくとも一方の面に継ぎ目を有してもよい。
【0013】
前記継ぎ目は、前記一軸の周方向における相互係合により形成されていてもよい。
【0014】
前記連結部は、前記一軸の周りの少なくとも1箇所に継ぎ目を有してもよい。
【0015】
前記連結部は、前記一軸の周りで湾曲形状をなしていてもよい。
【0016】
前記対のバネ片は、プリロードをもって互いに当接した当接部と、前記第1の接続対象物に接触するための接触部とをそれぞれ有してもよい。
【0017】
前記接触部は、前記第1の接続対象物としてのランプ管に接触するのに適した形状に整形されていてもよい。
【0018】
本発明の他の態様によれば、前記コンタクトと、前記コンタクトを保持したハウジングとを含むことを特徴とする電気コネクタが得られる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の一態様に係るコンタクトは、連結部から、第1の接続対象物に接続されるバネ部と第2の接続対象物に接続される接続部を延出させ、かつ、その連結部を一軸の周りに曲げることにより、部品点数を増加させることなくかつ比較的簡単な構造で接続対象物の抜去力を高めることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1A】本発明の実施形態に係るコンタクトの斜視図である。
【図1B】図1Aのコンタクトの異なる方向から見た斜視図である。
【図1C】図1A及び図1Bに示すコンタクトの正面図である。
【図2A】図1A及び図1Bに示すコンタクトの使用形態例を示す斜視図である。
【図2B】図2Aの一部のみを示す拡大斜視図である。
【図3】図1A〜図1Cに示すコンタクトの製造方法を説明するための説明図である。
【図4】図1A〜図1Cに示すコンタクトと接続対象物との接続作用を説明するための説明図である。
【図5】図1A〜図1Cに示すコンタクトの第1の変形例の斜視図である。
【図6A】図1A〜図1Cに示すコンタクトの第2の変形例の斜視図である。
【図6B】図6Aに示す第2の変形例の異なる方向から見た斜視図である。
【図7】図1A〜図1Cに示すコンタクトの第3の変形例の要部のみの斜視図である。
【図8】図1A〜図1Cに示すコンタクトの第4の変形例の要部のみの斜視図である。
【図9】図1A〜図1Cに示すコンタクトの第5の変形例の要部のみの斜視図である。
【図10】図1A〜図1Cに示すコンタクトの第6の変形例の要部のみの斜視図である。
【図11】図1A〜図1Cに示すコンタクトの第7の変形例の要部のみの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
先ず図1A〜図1Cを参照して、本発明の実施形態に係るコンタクトの全体構造について説明する。
【0022】
図示のコンタクト1は導電性の板材により一体形成されたものであり、図1Cにおける紙面に沿った上下方向にのびた一軸2を囲むように略四角筒形状に形成された連結部3を備えている。連結部3の筒形状は、連結部3の少なくとも1面に設けた継ぎ目よりなる形状維持手段4により維持されている。なお、連結部3は曲げ伸ばし可能な板状部からなる。
【0023】
連結部3は一軸2と平行な方向を向いた上端面3a及び下端面3bを有している。連結部3の上端面3aからは、ランプ管(例えば冷陰極管)などの第1の接続対象物に接続されるためのバネ部6が延出している。また、連結部3の下端面3bからは、プリント基板などの第2の接続対象物に表面実装されて接続される接続部7が延出している。
【0024】
バネ部6は、一軸2に交差する方向で弾性変位可能な対のバネ片8を有している。対のバネ片8は、略四角筒形状をなす連結部3の互いに対向した2面の板部3−1、3−2からそれぞれ延出している。連結部3の残りの2面のうち一方の面の板部3−3には、形状維持手段4を構成する継ぎ目が設けられている。継ぎ目の一方には凹部が、他方には凸部が設けられている。継ぎ目は、連結部3を筒形状に曲げた際の対向端面にそれぞれ形成した凹部と凸部とを互いに嵌合させ、かつ、その凹部と凸部との境界部分に適宜加締を施して潰すことにより、一軸2の周方向において相互係合するように形成されている。
【0025】
対のバネ片8は、後で説明するようにプリロードをもって互いに当接した当接部9と、第1の接続対象物に接触するための接触部11と、弾性変位を効果的に得るための蛇行部12とをそれぞれ有している。蛇行部12はバネ片8の柔軟性を高めることになるため、接続するときに第1の接続対象物の傷付きを防止する作用をもつ。
【0026】
対のバネ片8の各々は、接触部11に接触した第1の接続対象物に対し、一軸2に沿った抜去方向(図1Cにおける紙面に沿った上方向)で係合する突出部13を有している。ここでは、突出部13は対のバネ片8の前部に外側から押圧加工を施すことにより当接部9に対応した部分若しくはその近傍に形成されている。突出部13については、後で詳しく説明する。
【0027】
接触部11は、第1の接続対象物の端子に接触するのに適した形状、すなわち凹部が形成されている。具体的には、接触部11の内側面に凹部をプレス形成した結果として生じた凸部14と、接触部11の内側面の端部に形成した面取り16とを、各バネ片8に設けている。凹部は第1の接続対象物の端子との接触を多点にして、接触に信頼性を向上させる。さらに、凸部14の原因となる凹部は第1の接続対象物の接続時の接触面積を減少させるので、第1の接続対象物の接続時に発生する削り屑の低減が可能になる。また、面取り16も同様に削り屑の低減に寄与する。
【0028】
図示のコンタクト1は、さらに、連結部3の残りの一面の板部3−4の上端面3aから上方に延出したストッパープレート17を含んでいる。ストッパープレート17は、対のバネ片8を保護する上に、接続された第1の接続対象物の一軸2方向の位置を制限する役目を果たす。なお、結合部18は、コンタクト1を帯状の板材から多数個連続的にかつ自動的に形成する際の一般にキャリアと呼ばれる部分に結合されていた部分である。
【0029】
図2A及び図2Bを参照して、上述したコンタクト1の使用形態例について説明する。
【0030】
図2A及び図2Bにおいて、第2の接続対象物としてのプリント基板21上にコンタクト1が複数個、互いに間隔をおいて配置されている。各コンタクト1には、第1の接続対象物として冷陰極管22が接続されている。具体的には、冷陰極管22の接続端子22aが対のバネ片8の間に挿入されている。
【0031】
図3を参照して、上述したコンタクト1の製造方法について説明する。
【0032】
コンタクト1を板材により一体形成するに際し、図3(a)に示すように連結部3の板部3−1、3−2、及び3−4を先ず直線状に形成する。この状態では対のバネ片8は互いに離間している。連結部3の継ぎ目を設ける板部3−3は二つの部分3−3a、3−3bに分割形成され、かつそれらの部分3−3a、3−3bが他の板部3−1、3−2、及び3−3に対し実質的に直角に予め折り曲げてある。なお、板部3−3を構成する二つの部分3−3a、3−3bの端面に、上述した凹部と凸部とがそれぞれ形成されている。
【0033】
次に、連結部3を2箇所の折曲部3c、3dで直角に折り曲げて対のバネ片8を互いに対向させかつ当接部9を互いに当接させる。さらに、バネ片8を弾性変形させつつ二つの部分3−3a、3−3bを互いに接近させて、前述したように凹部と凸部とを互いに嵌合させる。この状態で、凹部と凸部との境界部分を板厚方向で潰し、二つの部分3−3a、3−3bを互いに係合させて一体の板部3−3を形成する。かくして、対のバネ片8の当接部9が所謂プリロードをもって互いに当接した状態を簡単に得ることができる。
【0034】
上述したようにバネ片8にプリロードが掛かっているため、バネ片8の根元部(連結部3)が互いに離れる方向、すなわち広がる方向に力が加わり広がろうとするが、これを阻止するために連結部3に形状維持手段4を設けてバネ片8の根元部(連結部3)が互いに広がるのを防止して、バネ片8の接触圧力を適正に保つようにしている。
【0035】
図4を参照して、上述したコンタクト1について冷陰極管22と関係で説明する。
【0036】
図4(a)は対のバネ片8の当接部9が互いに当接している初期状態を示す。図4(b)に示すように当接部9を相互離間させつつ冷陰極管の接続端子22aを対のバネ片8の間に挿入する。その後に、図4(c)に示すように対のバネ片8の復元力により接触部11が接続端子22aに接触する。この状態では、接続端子22aは、前述したプリロードにより接触部11によって強く挟まれることにより、冷陰極管を無理に引き抜こうとした際における冷陰極管との抜去力を高めることができ、また、突出部13が障害部として邪魔をすることで、対のバネ片8の間からの離脱が阻止される。したがって、コンタクト1に対し冷陰極管が電気的かつ機械的に接続される。
【0037】
図5に示すように、形状維持手段4を構成する継ぎ目は、予め周方向において相互係合する形状をもつ凹部と凸部との相互嵌合によって得られてもよい。
【0038】
また、図6A及び図6Bに示すように、形状維持手段4を構成する継ぎ目をコンタクト1の前面及び背面の各々に設けてもよい。同様な変形は、図1A〜1Cに示す実施例においても可能である。
【0039】
図7〜図11を参照して、突出部13についての様々な変形例を説明する。
【0040】
上述では突出部13を対のバネ片8の前部にのみ設けた例について説明したが、図7に示すように、突出部13を、対のバネ片8のうち一方には前部にかつ他方には後部に設けてもよい。
【0041】
図8に示すように、対のバネ片8の少なくとも一方においては、突出部13を前後方向における中央部に設けてもよい。
【0042】
図9に示すように、突出部13を、対のバネ片8に切り込みを入れることにより形成してもよい。
【0043】
図10に示すように、対のバネ片8のうち、一方に切り込みを入れることにより突出部13を形成し、他方には切欠き23を設け、突出部13を直線的にのばして切欠き23内に配置してもよい。この場合、突出部13は対のバネ片8の対向面を横切ってのびることになる。
【0044】
さらに、第11図に示すように、突出部13に適宜曲げ加工を施してもよい。
【0045】
なお、図7〜図11に示す構造の様々な組み合わせが可能なことはいうまでもない。
【0046】
上述したコンタクト1は、形状維持手段4として、連結部3の継ぎ目に係合部を形成しているが、他の手段によって連結部3の形状を維持してもよい。
【0047】
例えば、コンタクト1の接続部7をプリント基板21に固定した場合には、そのプリント基板21により連結部3の形状を維持することができる。この場合には、プリント基板21の一部が形状維持手段4として働く。
【0048】
また、連結部3の折曲部3c、3dの折り曲げ角度を固定する手段を形状維持手段4としてコンタクト1に付加してもよい。
【0049】
上述したコンタクト1を絶縁性のハウジング(図示せず)に組み込むことにより電気コネクタを構成することができる。その電気コネクタによると、ハウジングにより連結部3を一軸2を囲むように曲げた形状に維持することができる。その場合には、ハウジングが形状維持手段4として働く。
【0050】
また、上述では連結部3が一軸2の周りに環状をなすようにのびているが、連結部3は環状をなすことなく、一軸2の周りに一部が開放された湾曲形状をなすようにのびていてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明によるコンタクト及び電気コネクタは、液晶表示装置のバックライトのような冷陰極管の接続に使用できる。
【符号の説明】
【0052】
1 コンタクト
2 一軸
3 連結部
3a 上端面
3b 下端面
3c、3d 折曲部
3−1、3−2、3−3、3−4 板部
4 形状維持手段
6 バネ部
7 接続部
8 バネ片
9 当接部
11 接触部
12 蛇行部
13 突出部
14 凸部
16 面取り
17 ストッパープレート
18 結合部
21 プリント基板
22 冷陰極管
22a 接続端子
23 切欠き

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一軸の周りに曲がってのびた連結部、前記連結部から延出し第1の接続対象物に接続されるバネ部、及び前記連結部から延出し第2の接続対象物に接続される接続部を含み、前記バネ部は、前記一軸に交差する方向で弾性変位可能な対のバネ片を有し、前記対のバネ片の少なくとも一方は、前記バネ部に接続された前記第1の接続対象物の前記一軸に沿った抜去方向への移動を阻止する突出部を有することを特徴とするコンタクト。
【請求項2】
前記連結部は前記一軸の周りで環状をなしている、請求項1に記載のコンタクト。
【請求項3】
前記連結部は略四角筒形状をなすように形成されており、前記対のバネ片は、前記連結部の互いに対向した2面から延出している、請求項2に記載のコンタクト。
【請求項4】
前記連結部は、前記連結部の残りの2面のうちの少なくとも一方の面に継ぎ目を有する、請求項3に記載のコンタクト。
【請求項5】
前記継ぎ目は、前記一軸の周方向における相互係合により形成されている、請求項4に記載のコンタクト。
【請求項6】
前記連結部は、前記一軸の周りの少なくとも1箇所に継ぎ目を有する、請求項2に記載のコンタクト。
【請求項7】
前記連結部は、前記一軸の周りで湾曲形状をなしている、請求項1に記載のコンタクト。
【請求項8】
前記対のバネ片は、プリロードをもって互いに当接した当接部と、前記第1の接続対象物に接触するための接触部とをそれぞれ有する、請求項1〜7のいずれか一項に記載のコンタクト。
【請求項9】
前記接触部は、前記第1の接続対象物としてのランプ管に接触するのに適した形状に整形されている、請求項8に記載のコンタクト。
【請求項10】
請求項1〜9のうちのいずれか一項に記載のコンタクトと、前記コンタクトを保持したハウジングとを含むことを特徴とする電気コネクタ。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−100751(P2011−100751A)
【公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−35723(P2011−35723)
【出願日】平成23年2月22日(2011.2.22)
【分割の表示】特願2009−27732(P2009−27732)の分割
【原出願日】平成21年2月9日(2009.2.9)
【出願人】(000231073)日本航空電子工業株式会社 (1,081)
【Fターム(参考)】