説明

コンデンサマイクロホン

【課題】落下等により外部から加えられた大きな衝撃による集積回路の破損を防止し、衝撃に対する信頼性を向上できるコンデンサマイクロホンを提供する。
【解決手段】回路基板23に対し振動膜30を対向配置し、振動膜30の回路基板23側にスペーサ29を介在させて背電極31を配置し、回路基板23と背電極31との間に配置したコンタクトスプリング33により、背電極31をスペーサ29に対し弾性的に当接させて回路基板23と背電極31とを導通させた。この構成において、コンデンサマイクロホン21に外部から加わった衝撃による背電極31の回路基板23側への変位に基づくコンタクトスプリング33の集積回路40への衝突を防止する当接部材41を回路基板23上に設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、バックエレクトレット型のコンデンサマイクロホンに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の技術としては、例えば特許文献1に開示されるものがある。特許文献1の構成においては、筐体内に支持された振動膜に対し、スペーサを介して背電極が対向配置されている。背電極は、回路基板と背電極との間に圧縮状態で介在されたコンタクトスプリングにより、振動膜側へ付勢されてスペーサに当接した状態で保持されるとともに回路基板に対して導通されている。そして、エレクトレット化されたフィルムが一体化された背電極としての背電極と、導電層が形成された振動膜とによりコンデンサ部を構成している。このような構成によれば、背電極においてスペーサとの当接部分に加えられる荷重はコンタクトスプリングの付勢力を越えないため、荷重があっても当接部分において誘電体層が潰されることはなく、コンデンサマイクロホンの感度が維持される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−141409号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記特許文献1のような構成においては、前述した構成のコンデンサマイクロホンが装備された携帯電話等の機器を硬い床や舗装路面等に落としたときのように、過大な加速度が背電極に瞬時に加わると、つまり、大きな衝撃が加わると、背電極がコンタクトスプリングの付勢力に抗して回路基板側へ変位する場合がある。そして、背電極が回路基板上の集積回路に強圧して、集積回路を破損させる虞がある。
【0005】
この発明は、このような従来の技術に存在する問題点に着目してなされたものである。その目的とするところは、落下等により外部から加えられた大きな衝撃による集積回路の破損を防止し、衝撃に対する信頼性を向上できるコンデンサマイクロホンを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、集積回路が実装された回路基板に対し振動膜を対向配置し、振動膜の回路基板側にスペーサを介在させて背電極を配置し、回路基板と背電極との間に配置したコンタクトスプリングにより、背電極をスペーサに対し弾性的に当接させて回路基板と背電極とを導通させたコンデンサマイクロホンにおいて、前記背電極の前記集積回路への衝突を防止する衝突防止手段を設けたことを特徴とする。
【0007】
請求項2に記載の発明は、前記衝突防止手段は、前記回路基板上に設けられ、前記背電極の回路基板側への一定量以上の変位時に、前記コンタクトスプリング又は背電極に当接して背電極の変位を規制する当接部材であることを特徴とする。
【0008】
請求項3に記載の発明は、前記当接部材は、前記背電極又はコンタクトスプリングの衝突を緩衝する弾性材よりなることを特徴とする。
請求項4に記載の発明は、前記当接部材は、前記回路基板上において前記集積回路を周囲から囲む枠体状であることを特徴とする。
【0009】
請求項5に記載の発明は、前記当接部材は、前記回路基板上に実装されているチップ部品であることを特徴とする。
(作用)
コンデンサマイクロホンに外部から加わった大きな衝撃により、背電極がコンタクトスプリングの変形を伴って回路基板側へ変位したとき、コンタクトスプリング又は背電極の集積回路への強圧が衝突防止手段により防止される。このため、集積回路の破損を防止することができる。
【発明の効果】
【0010】
この発明によれば、落下等により外部から加えられた大きな衝撃による集積回路の破損を防止し、衝撃に対する信頼性を向上できるという効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】第1実施形態のコンデンサマイクロホンを示す縦断面図。
【図2】同じく分解斜視図。
【図3】回路基板の上面を示す平面図。
【図4】(a)は回路基板の上面上に形成された導電パターンを示す平面図、(b)はレジストを示す平面図。
【図5】回路基板の裏面上に形成された導電パターンを示す平面図。
【図6】筐体基枠の上面を示す平面図。
【図7】集積回路の実装状態を示す断面図。
【図8】第2実施形態のコンデンサマイクロホンを示す縦断面図。
【図9】同じく背電極、コンタクトスプリング及び回路基板を示す斜視図。
【図10】第3実施形態のコンデンサマイクロホンを示す縦断面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(第1実施形態)
次に、この発明を具体化した第1実施形態について、図1〜図7を参照して説明する。
図1及び図2に示すように、この実施形態のコンデンサマイクロホン21の筐体22は、平板状の回路基板23と、四角枠状の筐体基枠24と、平板状のトップカバー基板25とを積層して、接着シート27A,27Bにより一体に固定した構造となっている。前記回路基板23,筐体基枠24及びトップカバー基板25はエポキシ樹脂等の樹脂製の電気絶縁体により構成されている。この実施形態では、前記部材はガラス布基材エポキシ樹脂にて構成されているが、エポキシ樹脂に限定されるものではない。
【0013】
図4(a)に示すように回路基板23の上面には銅箔よりなる導電パターン23a,23b,23cが形成されている。なお、図4(a)においては、説明の便宜上、導電パターン23a,23b,23cをハッチングで示す。
【0014】
導電パターン23aは、その第1端部50が回路基板23の上面において、長手方向の一端部寄りに、かつ、短手方向の一側端部寄りに位置するとともに、その第2端部51が回路基板23の上面において中央部寄りに延出されている。そして、導電パターン23aの第1端部50は導通部50aとされている。
【0015】
ここで、説明の便宜上、図4(a)に示すように、回路基板23の厚み方向に貫通する中心軸Oを想定し、回路基板23の上面において中心軸Oに直交する短手方向の軸をx軸とするとともに、同じく長手方向の軸をy軸とする。そして、回路基板23の上面において、x軸を対称軸とする前記導通部50aとは線対称の領域P1、及び、y軸を対称軸とする導通部50aの線対称の領域P2、並びに、中心軸Oを中心点とした導通部50aの点対称の領域P3は、導電パターンが設けられていない領域(以下、無導電パターン領域という)に含まれている。なお、無導電パターン領域とは、回路基板23の上面において、前記導電パターン23cに囲まれるとともに、導電パターン23a、23bを除外した領域である。導電パターン23bは、この実施形態では、複数(この実施形態では4個)設けられている。
【0016】
前記導電パターン23cは、アース用の導電パターンであって、筐体基枠24の枠形状に相対するように枠状に設けられている。導電パターン23a,23bは、部品接続のための導電パターンであって、電源入力用や信号取り出し用となっている。
【0017】
又、図3及び図4(b)に示すように、導電パターン23a〜23cの一部の領域、及び、無導電パターン領域において領域P1〜P3を含む面はレジスト52にて覆われている。なお、図3及び図4(b)においては、説明の便宜上、レジスト52をハッチングで示す。
【0018】
レジスト52は、例えばエポキシ樹脂等の絶縁部材からなるが、この材質に限定されるものではなく、絶縁性の合成樹脂であればよい。又、レジスト52は、その全体に亘って同一の膜厚に形成されるとともに導電パターン23aの導通部50aと同じ厚みとされている。すなわち、領域P1〜P3に位置するレジスト52の部分と、導通部50aとは回路基板23の上面を基準として同じ高さ(すなわち、厚み)となるようにされている。導通部50aとレジスト52の厚みは、通常20μm〜40μm程度に設定されている。なお、この実施形態における導通部50aとレジスト52の厚みは、30μmに設定されている。
【0019】
レジスト52には、導通部50aを露出させる切り欠き52aが形成されるとともに、x軸を対称軸とする切り欠き52aと線対称の位置には無導電パターン領域を露出させる切り欠き52cが形成されている。又、レジスト52において、導電パターン23aの第2端部51、各導電パターン23bの一端部、及び、導電パターン23cの一部に対応した部分には窓52bがそれぞれ設けられ、当該各部分はそれぞれ窓52bを介して露出されている。
【0020】
又、導電パターン23cの枠状の周部は、レジスト52にて覆われていない露出部分とされて筐体基枠24と相対する。
又、図5に示すように回路基板23の下面には銅箔よりなる複数の導電パターン23d,23eが形成されている。なお、図5においては、説明の便宜上、導電パターン23d,23eをハッチングで示す。
【0021】
図4(a)及び図5に示すように、回路基板23の外周部には、複数のスルーホール23gが設けられるとともに、同スルーホール23gの内周には図示しない導電層が形成されている。そして、これらのスルーホール23gの導電層を介して、前記導電パターン23cと導電パターン23dとが電気接続されている。導電パターン23dにおいては、その一部がアース端子となる。
【0022】
又、回路基板23の中央部には、複数のスルーホール23hが形成され、これらのスルーホール23hの内周には導電層が形成されている。そして、これらのスルーホール23hの導電層を介して、導電パターン23a,23bと導電パターン23eとが電気接続されている。この導電パターン23eは、図示しない信号出力端子や電源入力端子に接続される。
【0023】
なお、図1に示すように、回路基板23の内部には、銅箔よりなる中間層23fが設けられ、この中間層23fは、導電パターン23cと導電パターン23dとを電気接続する各スルーホール23gに対し電気接続されている。
【0024】
又、図1及び図2に示すように、回路基板23の上面には、インピーダンス変換回路を構成する特定用途向け集積回路(ASIC:Application Specific Integrated Circuit)40が実装されている。この集積回路40は、導電パターン23aの第2端部51(図3及び図4(a)に図示)と導電パターン23bとに電気接続されている。
【0025】
この集積回路40は、BGA(Ball Grid Array)又はCSP(Chip Size Package)の構成を有し、図7に示すように、QFP(Quad Flatpack Package)におけるリードに代わる半田ボール42を備えている。一方、回路基板23上の導電パターン23a〜23cの表面にはニッケル−金メッキ層43が形成され、さらにその上には、半田ボール42との良好な機械的及び電気的接続を確保するためのOSP(Organic Solderbility Preservative:有機半田特性保存)コーティング44が施されている。回路基板23の上面に半田付けされた集積回路40は、例えば1液性加熱硬化型のエポキシ樹脂からなるアンダフィル剤を回路基板23の上面との間に充填することにより回路基板23に固定される。従って、BGAやCSPよりなる集積回路40の採用により、コンデンサマイクロホン21の小型化、軽量化、高機能化、高速化が図られている。また、OSPコーティング44の採用により、ニッケル−金メッキ層43に残ったリンを除去できるので、リンによるハンダ付け時の障害が回避される。さらに、アンダフィル剤の採用により、熱的応力や物理的応力に対する回路基板23と集積回路40との接続信頼性が向上している。
【0026】
さらに、図1及び図2に示すように、回路基板23の上面には、集積回路40を周囲から囲む枠体状に形成された弾性材よりなる当接部材41が設けられている。弾性材としては、ゴム系材料や合成樹脂又は熱可塑性エラストマーが採用されている。この当接部材41の回路基板23上における高さH1は、集積回路40の高さH2と同じに設定されている。この当接部材41は、次のようにして回路基板23の上面に固定される。まず、当接部材41は、回路基板23の上面の所定位置に仮固定される。次に、集積回路40と回路基板23との間の隙間に対するアンダフィル剤の充填とともに当接部材41と回路基板23との間の隙間にもアンダフィル剤が充填される。そして、加熱によるアンダフィル剤の硬化により、当接部材41が回路基板23の上面に固定される。
【0027】
図1に示すように、筐体基枠24の上下両面及び側壁外側面には、銅箔よりなる連続した導電パターン24a,24b,24cが形成されている。導電パターン24aは、図2に示すように筐体基枠24の上開口部周縁に対して環状に設けられている。又、図示しないが、導電パターン24bは、筐体基枠24の上開口部周縁に対し、導電パターン24aと同様に環状に設けられている。
【0028】
導電パターン24cは、筐体基枠24の側壁外側面において、同筐体基枠24の4つのコーナ部Cの外側面を除いた部分に設けられた凹部24iに導電ペーストが塗布されることにより、若しくは、銅箔メッキ等の金属箔メッキを施すことにより形成され、導電パターン24a,24b同士を電気的に接続している。
【0029】
又、下面側の導電パターン24bは、図1に示すように回路基板23の上面の前記導電パターン23cに対して電気的に接続され、導電パターン23cを介して回路基板23の下面の導電パターン23dに電気的に接続されている。凹部24i内には、エポキシ樹脂等の絶縁性合成樹脂からなる充填部24jが形成されている。
【0030】
そして、図2及び図6に示すように、筐体基枠24の4つのコーナ部Cには、それぞれ断面円形のスルーホール24kが設けられている。スルーホール24kの内周には、図示しない導電層が形成されるとともに、スルーホール24kの内部には、例えば導電ペーストからなる導電剤が充填されている。
【0031】
図1及び図2に示すように筐体基枠24の下部の開口部周縁は、前記導電パターン23cの外方に配置された四角環状の接着シート27Aにより前記回路基板23に対して一体に接着固定されている。そして、回路基板23上の集積回路40等の電装部品は、この筐体基枠24内に収容配置されている。
【0032】
図1及び図2に示すように前記トップカバー基板25の上下両面には銅箔等よりなる導電パターン25a,25bが形成されている。トップカバー基板25には、外部から音を取り込むための音孔28が形成されている。そして、トップカバー基板25は、筐体基枠24の上部の開口部周縁に対し、前記導電パターン24aの外方に配置された四角環状の接着シート27Bにより接着固定されている。
【0033】
図1及び図2に示すように、前記筐体基枠24とトップカバー基板25との間には、絶縁性フィルムからなる環状のスペーサ29が挟持固定されている。スペーサ29は、筐体基枠24の導電パターン24aに対して導電性接着剤により接着されている。スペーサ29の上面にはPPS(ポリフェニレンサルファィド)フィルム等の絶縁性合成樹脂薄膜よりなる振動膜30が接着により張設されており、その振動膜30の下面には金蒸着により導電層30aが形成されている。振動膜30の四隅には、その一部を上方へ裏返した折り返し部30bが形成されている。従って、この折り返し部30bにおいては、その上側に導電層30aが配置されている。
【0034】
振動膜30及びスペーサ29には図示しないスルーホールが設けられ、導電層30aは、同スルーホールに充填された導電ペースト、及び、スペーサ29と導電パターン24aと間の導電性接着剤を介して導電パターン24aと電気的に接続されている。
【0035】
図1に示すように、前記トップカバー基板25には複数のスルーホール36が形成され、それらのスルーホール36の内周面には前記導電パターン25a,25bと連続する導電パターン25cが設けられている。また、スルーホール36内には導電性接着剤37aが充填され、この導電性接着剤37aと前記導電パターン25cとにより導電部37が形成されている。この導電部37は、振動膜30の折り返し部30bの導電層30aと電気接続されている。
【0036】
図1及び図2に示すように、筐体基枠24内において、振動膜30の下面にはスペーサ29を介在させて背電極31が対向配置されている。この背電極31は、ステンレス鋼板からなるプレート本体31aの上面にPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)等のフィルム31bが貼着されて構成されている。そのフィルム31bにはコロナ放電等による分極処理が施されており、この分極処理によりフィルム31bはエレクトレット化されている。すなわち、この実施形態のコンデンサマイクロホン21は、前記背電極31にエレクトレットが設けられたバックエレクトレットタイプとなっている。
【0037】
さらに、前記背電極31は、筐体基枠24の内周形状よりも小さな外周形状となる平面形ほぼ長円状をなすように形成されていて、それらの内外周面間には隙間Kが形成されている。背電極31の中央部には前記振動膜30の振動による空気移動を許容するための貫通孔32が形成されている。この背電極31は、フィルムを貼着したステンレス鋼の板材をフィルム側から打ち抜いて形成される。
【0038】
図1及び図2に示すように、前記筐体基枠24内において、背電極31と回路基板23との間にはコンタクトスプリング33が圧縮状態で介装されている。このコンタクトスプリング33は、背電極31をスペーサ29の下面に対し弾性的に当接させるとともに回路基板23と背電極31とを導通させている。この構成により、振動膜30と背電極31とが所定の間隔を隔てて保持され、それらの間に所定の容量を確保したコンデンサ部が形成されている。
【0039】
前記コンタクトスプリング33は、ステンレス鋼板の表裏両面に金メッキを施してなる板材を打ち抜き成形することにより全体がほぼ四角枠状に形成され、背電極31の下面に対面する2つの対面部33aと、その各対面部33aの両端から下部両側方に向かって斜めに突出する4つの脚部33bとを備えている。そして、コンタクトスプリング33の下方には空間Sが形成され、この空間S内に、回路基板23上の前記集積回路40等が配置されている。また、コンタクトスプリング33の両対面部33aは、前記当接部材41の上方に位置し、集積回路40の上方には位置していない。
【0040】
前記コンタクトスプリング33の両対面部33aの上面には背電極31の下面に当接する2つの球面状の接触部34がそれぞれ突出形成されるとともに、各脚部33bの先端下面には球面状の接触部35がそれぞれ突出形成されている。図3に示すように、4つの脚部33bのうち、1つの脚部33bは、その接触部35が回路基板23上の導電パターン23aの導通部50aに対して接触され、別の1つの脚部33bは、その接触部35が回路基板23上の領域P2に接触されている。また、4つの脚部33bのうち、残りの2つの脚部33bは、その接触部35が回路基板23の上面において領域P1,P3上に位置するレジスト52の上面に対して接触されている。すなわち、コンタクトスプリング33により、背電極31のプレート本体31aと、回路基板23の導電パターン23aとが導通されている。
【0041】
さて、上記のように構成されたコンデンサマイクロホン21において、音源からの音波がトップカバー基板25の音孔28を介して振動膜30に至ると、その振動膜30は音の周波数、振幅及び波形に応じて振動される。そして、振動膜30の振動に伴って、振動膜30と背電極31との間隔が設定値から変化し、コンデンサ部のインピーダンスが変化する。このインピーダンスの変化が、回路基板23上の集積回路40等により電圧信号に変換されて出力される。
【0042】
コンデンサマイクロホン21に対し外部から加えられた衝撃により、図1における上側から下側へ向かう向きの加速度が背電極31に加わると、背電極31は二点鎖線で示すようにコンタクトスプリング33の変形を伴って回路基板23側へ変位する。このとき、背電極31が一定距離だけ変位したところで、コンタクトスプリング33の両対面部33aの下面が当接部材41の上面に当接する。この当接により、コンタクトスプリング33の変形とともに背電極31の変位が当接部材41により規制される。ここで、当接部材41の上面に当接するコンタクトスプリング33の対面部33aの厚さT1と、当接部材41の高さH1とを合わせた寸法は、集積回路40の高さH2よりも大きい。従って、背電極31の集積回路40への衝突は防止される。また、コンタクトスプリング33が当接部材41に当接するときに、弾性材よりなる当接部材41が弾性変形するため、コンタクトスプリング33、さらに背電極31に加わる衝撃は緩衝される。従って、コンデンサマイクロホン21の各部に加わる衝撃は緩和される。
【0043】
以上詳述したこの実施形態は、下記の各効果を奏する。
(1)コンデンサマイクロホン21に外部から加わった衝撃によって背電極31が回路基板23側へ変位したときに、背電極31の集積回路40への衝突を、回路基板23上に設けられた当接部材41が防止する。このため、外部からの衝撃による集積回路40の破損を防止することができる。
【0044】
(2)当接部材41を弾性材より形成したため、コンタクトスプリング33の当接部材41への衝突時に背電極31に加わる衝撃は緩和される。従って、回路基板23と筐体基枠24との間や、筐体基枠24とトップカバー基板25との間の接着部に対する悪影響が抑えられる。
【0045】
(第2実施形態)
次に、この発明を具体化した第2実施形態について、図8及び図9を参照して説明する。なお、これ以降の実施形態については、前記第1実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0046】
図8及び図9に示すように、この実施形態における回路基板23の上面には、前記当接部材41に代えて、集積回路40とともにインピーダンス変換回路を構成する一対のチップ部品43が集積回路40の両側に配設されている。この両チップ部品43の高さH3は、集積回路40の高さH1と同じに設定されている。このチップ部品43とは、チップ抵抗やチップコンデンサのことである。このチップ抵抗は、0Ωでもよい。また、携帯電話に使用されるマイクロホンの場合においてチップコンデンサを用いる場合は、携帯電話のキャリア電波に対応したノイズフィルタ用のチップコンデンサを配置して、チップ部品43と兼用させてもよい。前記コンタクトスプリング33の両対面部33aは、両チップ部品43の上方に位置している。
【0047】
さて、コンデンサマイクロホン21に対し外部から加えられた衝撃により、図8に二点鎖線で示すように、背電極31がコンタクトスプリング33の変形を伴って回路基板23側へ変位すると、コンタクトスプリング33の両対面部33aがチップ部品43の上面にそれぞれ当接する。この当接により、コンタクトスプリング33の変形とともに背電極31の回路基板23側への変位が規制される。ここで、チップ部品43の上面に当接するコンタクトスプリング33の対面部33aの厚さT1と、チップ部品43の高さH1とを合わせた寸法は、集積回路40の高さH2よりも大きい。従って、背電極31の集積回路40への衝突は防止される。
【0048】
従って、以上のように構成されたこの実施形態は、前記第1実施形態の(1)に記載の効果を奏する。
(第3実施形態)
次に、この発明を具体化した第3実施形態について、図10を参照して説明する。
【0049】
図10に示すように、この実施形態のコンデンサマイクロホン21は、音孔60aを有する壁部60bが一方に設けられた金属製のケース60内に、振動膜61が張設された支持リング62と、スペーサ63と、円筒状の絶縁ブッシュ64とを上下に収容して構成されている。すなわち、支持リング62と絶縁ブッシュ64との間に、スペーサ63が挟持されている。前記振動膜61の上面には、金やニッケル合金よりなる図示しない蒸着膜が形成されている。絶縁ブッシュ64の内側には、エレクトレット層65が形成された背電極66と、背電極66の下面に当接するコイル形状のコンタクトスプリング67とが配置されている。さらに、ケース60の下面開口部には、インピーダンス変換回路が形成された回路基板68が配置され、この回路基板68は、ケース60の下側周縁部を内方へかしめることにより、絶縁ブッシュ64及びコンタクトスプリング67の下面に当接した状態でケース60内に固定されている。この状態において、コンタクトスプリング67は、背電極66と回路基板68との間に圧縮状態で保持されている。そして、蒸着膜が形成された振動膜61は、ケース60を介して回路基板68上のインピーダンス変換回路に電気的に接続され、背電極66は、コンタクトスプリング67を介してインピーダンス変換回路に電気的に接続されている。この振動膜61と背電極66とによりコンデンサ部が形成されている。
【0050】
回路基板68の上面には、インピーダンス変換回路の構成要素である集積回路40が配置されている。また、回路基板68の上面には、集積回路40を周囲から囲む枠体状に形成された弾性材よりなる当接部材69が設けられている。弾性材としては、ゴム系材料や合成樹脂又は熱可塑性エラストマーが採用されている。この当接部材69の高さH4は、集積回路40の高さH2よりも高く設定されている。そして、集積回路40及び当接部材69は、コンタクトスプリング67の内側中央に位置している。
【0051】
さて、コンデンサマイクロホン21に対し外部から加えられた衝撃により、図10に二点鎖線で示すように、背電極66がコンタクトスプリング67の変形を伴って回路基板68側へ変位すると、背電極66の下面が当接部材69の上面に当接する。この当接により、コンタクトスプリング67の変形とともに背電極66の回路基板68側への変位が規制される。ここで、当接部材69の高さH4は、集積回路40の高さH2よりも高い。従って、背電極66の集積回路40への衝突は防止される。
【0052】
従って、以上のように構成されたこの実施形態は、前記第1実施形態の(1)に記載の効果を奏する。
(その他の実施形態)
なお、前記第1実施形態において、枠体状の当接部材41に代えて、図2に二点鎖線で示すように、コンタクトスプリング33の両対面部33aに対面する部分のみからなる当接部材41を設けても
よい。
【符号の説明】
【0053】
21…コンデンサマイクロホン、23…回路基板、29…スペーサ、30…振動膜、33…コンタクトスプリング、40…集積回路、41…衝突防止手段としての当接部材、43…衝突防止手段としてのチップ部品、61…振動膜、63…スペーサ、66…背電極、67…コンタクトスプリング、68…回路基板、69…衝突防止手段としての当接部材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
集積回路が実装された回路基板に対し振動膜を対向配置し、振動膜の回路基板側にスペーサを介在させて背電極を配置し、回路基板と背電極との間に配置したコンタクトスプリングにより、背電極をスペーサに対し弾性的に当接させて回路基板と背電極とを導通させたコンデンサマイクロホンにおいて、
前記背電極の前記集積回路への衝突を防止する衝突防止手段を設けたことを特徴とするコンデンサマイクロホン。
【請求項2】
前記衝突防止手段は、前記回路基板上に設けられ、前記背電極の回路基板側への一定量以上の変位時に、前記コンタクトスプリング又は背電極に当接して背電極の変位を規制する当接部材であることを特徴とする請求項1に記載のコンデンサマイクロホン。
【請求項3】
前記当接部材は、前記背電極又はコンタクトスプリングの衝突を緩衝する弾性材よりなることを特徴とする請求項2に記載のコンデンサマイクロホン。
【請求項4】
前記当接部材は、前記回路基板上において前記集積回路を周囲から囲む枠体状であることを特徴とする請求項2又は3に記載のコンデンサマイクロホン。
【請求項5】
前記当接部材は、前記回路基板上に実装されているチップ部品であることを特徴とする請求項2に記載のコンデンサマイクロホン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−199889(P2010−199889A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−41395(P2009−41395)
【出願日】平成21年2月24日(2009.2.24)
【出願人】(000107642)スター精密株式会社 (253)
【Fターム(参考)】