説明

コンデンサ及びその製造方法

【課題】小型でありながら、容量密度の向上,電極金属の任意性の向上,製造プロセスの簡略化を図ることができるコンデンサ及びその製造方法を提供する。
【解決手段】コンデンサ素子12は、一対の導電体層14,16と、多数の略チューブ状の誘電体18と、該誘電体18の内側の第1電極20及び外側の第2電極24と、前記第1電極20と導電体層16を絶縁する絶縁キャップ22と、前記第2電極24と導電体層14を絶縁する絶縁キャップ26により構成される。誘電体18は、高アスペクト比を有しており、金属基材の陽極酸化により形成される。該誘電体18を、ハニカム構造を形成する六角形の頂点とその中央に配置し、容量を規定する面積を増大させることにより高容量化が可能となる。また、誘電体18の形成後に、電極材料を空隙部に充填するため、電極材料の任意性向上と製造プロセスの簡略化が可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンデンサ及びその製造方法に関し、更に具体的には、容量密度の向上,電極金属の任意性向上,製造プロセスの簡略化に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在広く用いられているコンデンサとして、Al電解コンデンサや積層セラミックコンデンサが知られている。Al電解コンデンサでは、電解液を使うために、液漏れなどの問題がある。また、積層セラミックスコンデンサでは焼成が必要であり、電極と誘電体間における熱収縮などの問題がある。小型で大容量のコンデンサを実現する技術としては、例えば、下記特許文献1に示す粒界絶縁型半導体磁気コンデンサや、特許文献2に示すコンデンサ構造体およびその製造方法がある。
【0003】
前記特許文献1には、相対向端面に向かって伸びる複数個の通孔を有してなる半導体粒界絶縁型誘導体磁器と、この誘電体磁器の前記相対向端面にそれぞれ設けられた外部接続用電極と、前記誘電体磁器の各通孔に挿通された高融点金属よりなる容量用電極体とよりなり、この容量用電極体は、隣り合うものが互いに異なる前記外部接続用電極に導通接続されていることが開示されている。また、前記特許文献2には、基板を陽極酸化して得られた多孔質基板をマスクとして用いて薄膜形成処理を行い、コンデンサ用基板の表面に多数の柱状体が規則的に形成された第1電極と、前記柱状体の外側を覆うように、前記第1電極の表面に形成された誘電体薄膜と、前記柱状体の外側を覆うように、前記誘電体薄膜の表面に形成された第2電極とを形成してコンデンサ構造体を得る方法が開示されている。
【特許文献1】特公昭61−29133号公報
【特許文献2】特開2003−249417公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、以上のような背景技術には次のような課題がある。まず、前記特許文献1に記載の技術では、複数個の通孔を有する半導体粒界絶縁型誘電体磁器を誘電体層として用いており、前記各通孔に選択的に容量用電極体を挿通する構造であるが、微細加工が困難なため、面積の増大による大容量化が困難である。また、前記特許文献2に記載の技術では、マスクとして用いる多孔質基板への電極材料の付着や、該多孔質基板自体のエッチングによる孔の拡大等が生じるため、均一な断面形状及び所望長さの柱状体を得るのが難しい。また、前記柱状体が高くなると、その後に形成する誘電体薄膜に膜厚の差が生じやすいため、柱状体を高くして大容量化を図るのが難しいことなどがある。
【0005】
本発明は、以上の点に着目したもので、小型でありながら、容量密度の向上を図ることができるコンデンサ及びその製造方法を提供する。また、本発明は、電極金属の任意性の向上及び製造プロセスの簡略化を図ることができるコンデンサ及びその製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、所定の間隔で対向する一対の導電体層と、該導電体層と略直交し、かつ、両端の開口部が前記一対の導電体層の内側主面に接続するとともに、金属の陽極酸化物により形成された高アスペクト比を有する略チューブ状の複数の誘電体と、一端が前記一対の導電体層のうちの一方の導電体層に接続し、他端が前記一対の導電体層のうちの他方の導電体層と絶縁するように、前記誘電体の中空部に充填される第1の電極と、一端が前記他方の導電体層に接続し、他端が前記一方の導電体層と絶縁するように、前記誘電体間の空隙に充填される第2の電極,を備えたコンデンサである。
【0007】
また、本発明のコンデンサの主要な形態の一つは、前記第1及び第2の電極と前記導電体層との間に設けた間隙によって、前記電極と導電体層とを絶縁すること,あるいは、前記第1及び第2の電極と前記導電体層との間に設けた絶縁体によって、前記電極と導電体層とを絶縁することを特徴とする。他の形態は、前記絶縁体が、金属酸化物,SiO又は樹脂であることを特徴とする。更に他の形態は、前記誘電体が、前記導電体層と略平行な断面において、ハニカム構造を形成する六角形の頂点とその中央に配置されていることを特徴とする。
【0008】
また、本発明は、金属の基材を陽極酸化し、該基材の対向する一対の主面と略直交する方向に、一方の主面で開口し他方の主面で閉口する高アスペクト比を有する複数の孔を形成する工程1と、前記基材の他方の主面全体に、導電性のシード層を形成する工程2と、前記基材を加工し、前記孔を中空部とする略チューブ状の誘電体を形成する工程3と、前記誘電体の周囲の隙間を、該誘電体の開口端が所定の厚みで露出するように導電体で埋め込み、前記シード層上に第1の電極を形成する工程4と、前記基材の一方の主面に導電体層を形成して、前記誘電体の露出した開口端面を覆い、かつ、前記第1の電極との間に絶縁用の隙間を形成するとともに、前記シード層を除去する工程5と、前記シード層の除去後に露出する基材の主面において、該主面を所定の厚みで切除し、前記誘電体の閉口端を開口する工程6と、前記導電体層をシードとし、前記誘電体の孔に、前記工程6で開口した端面との間に所定の隙間を形成するように導電体を埋め込み、第2の電極を形成する工程7と、前記導電体層と対向し、前記工程6で開口した誘電体の開口端面を覆うとともに、前記第2の電極との間に絶縁用の隙間を形成する他の導電体層を形成する工程8と、を含むコンデンサの製造方法である。
【0009】
また、本発明のコンデンサの製造方法の主要な形態の一つは、前記工程4で形成した第1の電極上に、前記誘電体の端面との段差を埋める絶縁体を設ける工程と、前記工程7で形成した第2の電極上に、前記誘電体の端面との隙間を埋める絶縁体を設ける工程と、を含むものである。他の形態は、前記第1及び第2の電極と前記導電体層との間に設ける絶縁体を、金属酸化物,SiO又は樹脂としたものである。更に他の形態は、前記工程1は、前記基材の主面と略平行な断面において、ハニカム構造を形成する六角形の頂点とその中央に位置するように、前記孔を形成するものである。本発明の前記及び他の目的,特徴,利点は、以下の詳細な説明及び添付図面から明瞭になろう。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、金属の陽極酸化物からなる高アスペクト比を有する略チューブ状の構造体を誘電体とし、該誘電体の内側と外側に電極を設けて、正極と負極を同軸状に形成するとともに、前記略柱状の電極の先端に絶縁用のギャップ(間隙)や絶縁体を設けて電極の振り分けを行うこととしたので、容量を規定する面積を大きくして高容量化を図ることができる。また、誘電体の構造体を先に形成して空隙部に後から電極材料を充填するため、電極金属種の任意性が増すとともに、製造プロセスが簡便になるという効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための最良の形態を、実施例に基づいて詳細に説明する。
【実施例1】
【0012】
最初に、図1〜図4を参照しながら本発明の実施例1を説明する。図1(A)は、本実施例のコンデンサ素子の外観斜視図,図1(B)は前記(A)を#A−#A線に沿って切断し矢印方向に見た断面図,図1(C)は本実施例のコンデンサの断面であり、前記(A)を#B−#B線に沿って切断し矢印方向に見た断面図に相当する。図2及び図3は、本実施例の製造工程の一例を示す図であり、図4は、本実施例と比較例の電極構造の断面形状を示す模式図である。
【0013】
本実施例のコンデンサ10は、図1に示すようにコンデンサ素子12を中心に構成されている。前記コンデンサ素子12は、所定の間隔で対向する一対の導電体層14,16と、多数の略チューブ状の誘電体18と、該誘電体18の内側に充填された第1電極20と、前記多数の誘電体18間に充填された第2電極24と、前記第1電極20と導電体層16を絶縁するための絶縁キャップ22と、前記第2電極24と導電体層14を絶縁するための絶縁キャップ26により構成されている。前記誘電体18は、前記導電体層14及び16と略直交するとともに、両端の開口部が前記導電体層14及び16の内側主面に接続されている。このような形状の誘電体18は、縦横比が大きく(すなわち、高アスペクト比を有しており)、金属の陽極酸化物により形成されている。
【0014】
特に、前記第1電極20と、この第1電極20の周りに形成された誘電体18の組み合わせの配置が重要になる。図1(B)に示すように、ハニカム構造を形成する六角形の各頂点と、前記六角形の中央位置との関係になるように配置され、どの組み合わせも同じように関係付けられるような配置が望ましい。そして、誘電体18と誘電体18の間は、前記第2電極24で埋め尽くされることにより、第1電極20と第2電極24とで誘電体18を挟むことで容量を形成するバランスが適切になり、容量の最大化を構成することが可能になる。従って、できる限り小さな六角形の頂点と中央の位置になる関係が好ましい。この関係の限界は、エッチング精度と誘電体18の絶縁耐圧特性などで決定される。これらの技術の進歩と共に高い容量のコンデンサの実現が可能になる。
【0015】
前記誘電体18としては、弁金属(例えば、Al,Ta,Nb,Ti,Zr,Hf,Zn,W,Sbなど)の酸化物が用いられ、導電体層14及び16としては、金属全般(例えば、Cu,Ni,Cr,Ag,Au,Pd,Fe,Sn,Pb,Pt,Ir,Rh,Ru,Alなど)が用いられる。また、第1電極20及び第2電極24としては、例えば、Cu,Ni,Cr,Ag,Au,Pd,Fe,Sn,Pb,Pt,Coやこれらの合金などが用いられる。前記絶縁キャップ22及び26としては、例えば、金属酸化物や,SiO,電着樹脂(例えば、ポリイミド,エポキシ,アクリルなど)が用いられる。前記金属酸化物としては、具体的には、弁金属(Al,Ta,Nb,Ti,Zr,Hf,Zn,W,Sbなど)の酸化物や電着TiOのほか、ABO構造を有する複合酸化物も含まれる。
【0016】
また、前記コンデンサ素子12の各部の寸法の一例を示すと、導電体層14と導電体層16の間隔が数μm〜数100μm、導電体層14及び16の厚みが数10nm〜数μm、チューブ状の誘電体18の径は、内径外径ともに数nm〜数100nm程度となっている。また、前記絶縁キャップ22及び26の厚みは、数10nm〜数10μm、前記誘電体18間の間隔が、数10nm〜数100nm,誘電体18の厚さ(外径−内径)が、数nm〜数100nm程度となっている。
【0017】
本実施例では、前記導電体層14を表面電極,導電体層16を裏面電極とし、第1電極20を負極,第2電極24を正極としているが、これは一例であり、必要に応じて適宜変更してよい。以上のような構造のコンデンサ素子12は、図1(C)に示すように、全体が絶縁フィルム28により被覆されており、該絶縁フィルム28の所定の位置に設けられた開口から、接続ランド30,32を介して、リード線などの引出部34,36に接続されている。
【0018】
次に、図2及び図3も参照して、本実施例のコンデンサ10の製造方法を説明する。まず、図2(A)に示すように、弁金属(Al,Ta,Nb,Ti,Zr,Hf,Zn,W,Sbなど)からなる基材50を用意する。該基材50の表面50Aには、陽極酸化の基点となる図示しないピットが、ハニカムレイアウトで形成される。次に、図2(B)に示すように、陽極酸化処理により、多数の略柱状の孔(ホール)54を形成する。該孔54は、本実施例では、酸化物基材52の主面と略直交する断面において、ハニカム構造を形成する六角形の頂点とその中央に配置されるように形成されている。このような孔54の形成技術は公知である。図示の例では、前記孔54は、一方の端部が酸化物基材52の表面52Aで開口し、他方の端部が酸化物基材52の裏面52B側で閉口している。
【0019】
次に、図2(C)に示すように、裏面52B側に、導電体からなるシード層56を形成する。シード層56としては、金属全般(例えば、Cu,Ni,Cr,Ag,Au,Pd,Fe,Sn,Pb,Pt,Ir,Rh,Ru,Alなど)が用いられる。該シード層56は、メッキシードの機能とともに、以下の工程で形成するチューブ状の誘電体18を支持する機能を有している。次に、前記酸化物基材52の前記孔54のパイプ状となる部分の周囲を除く部分をエッチングし、図2(D)に示すように、前記シード層56上に、前記孔54を中空部とする略チューブ状の誘電体18を形成する。このとき、多数の誘電体18間には空隙58が形成される。そして、前記シード層56をシードとしてメッキすることにより、図2(E)に示すように、前記空隙58を、メッキ導体で埋め込み、第2電極24を形成する。このとき、該第2電極24の表面24Aと、前記誘電体18の開口端面18Aの間に、所定の隙間が生じるようにする。そして、前記第2電極24の表面24Aに、陽極酸化,酸化物電着,樹脂電着などの手法により、図2(F)に示すように絶縁キャップ26を形成する。なお、前記陽極酸化を行う際には、前記シード層56を給電層としてプラス電圧を印加する。
【0020】
次に、前記絶縁キャップ26上に、図3(A)に示すように、PVDなどの手法により、導電体層14(本実施例では表面電極)を形成する。該導電体層14は、前記誘電体18の開口端面18A側を塞いでいるが、前記絶縁キャップ26の存在により、前記第2電極24とは絶縁した状態となっている。図3(B)に示す工程以降では、前記図3(A)で形成された構造を上下に180度回転し、裏面側から見た状態で説明を行う。
【0021】
前記導電体層14の形成後、裏面側のシード層56を除去し、図3(B)に示すように誘電体18の閉口端面18Cを露出させる。そして、同図に点線で示すように、酸化物基材52を、主面と略平行な面で切除することにより、図3(C)に示すように、前記誘電体18の底部を開口する。次に、前記導電体層14をシードとし、前記誘電体18の中空部を図3(D)に示すようにメッキで埋め込み、第1電極20を形成する。なお、該第1電極20は、端面20Bが、誘電体18の開口端面18Bとの間に所定の段差を有するように形成される。そして、前記第2電極20の端面20Bに、陽極酸化,酸化物電着,樹脂電着などの手法により、図3(E)に示すように、絶縁キャップ22を形成する。最後に、前記絶縁キャップ22の上に、図3(F)に示すように、導電体層16(裏面電極)を形成する。以上の手順により、導電体層14が誘電体18の内部の第1電極20に接続され、導電体層16が誘電体18の外部の第2電極24に接続された同軸構造のコンデンサ素子12が得られる。
【0022】
仮に、図4(A)に示す比較例のように、ハニカム構造を形成する六角形の頂点に第2電極24(正極)を配置し、前記六角形の中心に第1電極20(負極)を配置すると、中心の第1電極20を6本の第2電極24が誘電体18を介して取り囲む構造となり、外周の第2電極24の間のスペースが無駄になってしまう。これに対して、本実施例では、図4(B)に示すように、第1電極20と第2電極24が、いわば同軸状に配置された構造となっており、同図(A)に示す比較例のような電極配置と比較して、空間をより有効に使うことができるため、正負電極の距離を同じとした場合、容量を1.5倍程度大きくすることができる。
【0023】
このように、実施例1によれば、金属の陽極酸化物からなる高アスペクト比を有する略チューブ状の誘電体18の内側と外側に第1電極20と第2電極24を設けて、正極と負極を同軸状に形成するとともに、前記第1電極20と第2電極24の先端に絶縁キャップ22,26を設けて電極の振り分けを行うこととしたので、次のような効果がある。
(1)容量を規定する面積を大きくして高容量化を図ることができる。
(2)電極の振り分けに誘電体からなる絶縁キャップ22,26を用いることとしたので、第1電極20及び第2電極24の先端面の面積もコンデンサ10の容量向上に利用できる。
(3)誘電体18の構造体を形成してから第1電極20及び第2電極24を空隙部に充填することとしたので、電極材料の任意性が増すとともに、製造プロセスの簡略化を図ることができる。
【実施例2】
【0024】
次に、図5〜図7を参照しながら本発明の実施例2を説明する。なお、上述した実施例1と同一ないし対応する構成要素には同一の符号を用いることとする。図5は、本実施例のコンデンサ素子の主要断面図,図6及び図7は、本実施例の製造工程の一例を示す図である。図5の断面に示すように、本実施例は、第1電極20の先端と導電体層16との間にエアギャップ102が形成されるとともに、第2電極24の先端と導電体層14との間にエアギャップ104が形成されており、前記エアギャップ102及び104によって、絶縁を行って電極の振り分けを行う構造となっている。この他の基本的な構造は、上述した実施例1と同様である。
【0025】
次に、図6及び図7を参照しながら、本実施例の製造方法を説明する。なお、図6(A)〜(E)までの工程は、上述した実施例1と同様であり、略チューブ状の誘電体18間の空隙58に第2電極24が充填される。本実施例では、誘電体18間の空隙58に第2電極24が充填された後、図6(F)に示すように、前記誘電体18の開口端面18Aを塞ぐように導電体層14を設けることにより、該導電体層14と前記第2電極24の間に、絶縁用のエアギャップ104が形成される。次に、図7(A)に示すように、前記シード層56を除去し、前記誘電体18の閉口端面18Cを露出させる。なお、本工程以降では、前記図6(F)で得られた構造体を上下に180度回転し、裏面側から見た状態で説明を行っている。そして、前記裏面を図7(A)に点線で示すように、基材の主面と略平行な面で切除し、図7(B)に示すように、誘電体18の端部を開口する。
【0026】
次に、前記導電体層14をシードとし、図7(C)に示すように、誘電体18の内部をメッキで埋め込み、第1電極20を形成する。このとき、第1電極20の端面20Bが、誘電体18の開口端面18Bに達しない状態で止めておく。そして、前記第2電極裏面24B上に、図7(D)に示すように、導電体層16を形成する。該導電体層16は、前記開口端面18Bを塞ぐ状態で形成され、前記第1電極20の端面20Bとは接続されない。以上の手順により、導電体層14が誘電体18の内部の第1電極20に接続され、他方の導電体層16が誘電体18の外部の第2電極24に接続された同軸構造のコンデンサ素子100が形成される。本実施例のコンデンサ素子100も、前記実施例1と同様に、全体が絶縁フィルムなどで被覆され、適宜位置において電極が引き出される。本実施例の基本的効果は、前記実施例1と基本的に同様であるが、エアギャップ102,104を利用して電極の振り分けを行っているため、製造工程をより簡略化することができる。
【0027】
なお、本発明は、上述した実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることができる。例えば、以下のものも含まれる。
(1)前記実施例で示した形状,寸法は一例であり、必要に応じて適宜変更してよい。
(2)材料についても同様に、公知の各種の材料を使用してよい。例えば、誘電体を形成する金属基材としては、アルミニウムが好適であるが、陽極酸化が可能な金属であれば、他の公知の各種の金属が適用可能である。
【0028】
(3)前記実施例1で示した絶縁キャップ22,26の形成方法も一例であり、同様の効果を奏するように適宜変更してよい。例えば、前記実施例1では、陽極酸化を具体例として挙げたが、これも一例であり、他の絶縁体によって絶縁を図るようにしてもよい。例えば、前記実施例1の図2(E)に示す工程後、シード層56を給電層として塩化チタン溶液中でマイナス電圧を印加し、引き続き450℃で熱処理することにより、TiOからなる絶縁キャップ26を形成するようにしてもよい。また、前記図2(E)に示す工程後、露出した第2電極24を介してSiOを電着してもよいし、あるいは、電極表面24AにSn−Pdのような触媒金属を一端電着し、これを種として無電界でSiOを析出させてもよい。また、電極表面24Aと誘電体の開口端面18Aの隙間を埋めるように樹脂を塗布し、表面の樹脂のみをエッチングや研磨で除去することで、前記隙間に樹脂を残すようにしてよい。更に、前記隙間を埋めるように絶縁体を成膜し、表面の絶縁体のみをエッチングや研磨で除去することで、前記隙間に絶縁体を残すようにしてもよい。他方の絶縁キャップ22についても同様である。
【0029】
(4)実施例1で示した電極引出構造も一例であり、同様の効果を奏するように適宜設計変更可能である。
(5)前記実施例で示した製造工程も一例であり、同様の効果を奏するように適宜変更してよい。例えば、表面電極と裏面電極のいずれを先に形成するかも一例であり、必要に応じて適宜変更してよい。また、例えば、前記実施例1では、絶縁キャップ22,26を設けるために第1電極20及び第2電極24を、誘電体18の一方の端面に達しないように充填することとしたが、これも一例であり、前記第1電極20と第2電極24が接触しない範囲内であれば、前記誘電体18の端面から露出するようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明によれば、金属の陽極酸化物からなる高アスペクト比を有する略チューブ状の構造体を誘電体とし、該誘電体の内側と外側に電極を設けて、正極と負極を同軸状に形成するとともに、前記略柱状の電極の先端に絶縁用のギャップ(間隙)や絶縁体を設けて電極の振り分けを行うこととしたので、コンデンサの用途に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の実施例1を示す図であり、(A)はコンデンサ素子の外観斜視図,(B)は前記(A)を#A−#A線に沿って切断し矢印方向に見た断面図,(C)は本実施例のコンデンサの断面であり、前記(A)を#B−#B線に沿って切断し矢印方向に見た断面図に相当する。
【図2】前記実施例1の製造工程の一例を示す図である。
【図3】前記実施例1の製造工程の一例を示す図である。
【図4】前記実施例1と比較例の電極構造の段面形状を示す模式図である。
【図5】本発明の実施例2のコンデンサ素子の主要断面図である。
【図6】前記実施例2の製造工程の一例を示す図である。
【図7】前記実施例2の製造工程の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0032】
10:コンデンサ
12:コンデンサ素子
14:導電体層(表面電極)
16:導電体層(裏面電極)
18:誘電体
18A,18B:開口端面
18C:閉口端面
20:第1電極(負極)
20A,20B:端面
22,26:絶縁キャップ
24:第2電極(正極)
24A:表面
24B:裏面
28:絶縁フィルム
30,32:接続ランド
34,36:引出部
50:基材
50A:表面
52:酸化物基材
52A:表面
52B:裏面
54:孔(ホール)
56:シード層
58:空隙
100:コンデンサ素子
102,104:エアギャップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の間隔で対向する一対の導電体層と、
該導電体層と略直交し、かつ、両端の開口部が前記一対の導電体層の内側主面に接続するとともに、金属の陽極酸化物により形成された高アスペクト比を有する略チューブ状の複数の誘電体と、
一端が前記一対の導電体層のうちの一方の導電体層に接続し、他端が前記一対の導電体層のうちの他方の導電体層と絶縁するように、前記誘電体の中空部に充填される第1の電極と、
一端が前記他方の導電体層に接続し、他端が前記一方の導電体層と絶縁するように、前記誘電体間の空隙に充填される第2の電極と、
を備えたことを特徴とするコンデンサ。
【請求項2】
前記第1及び第2の電極と前記導電体層との間に設けた間隙によって、前記電極と導電体層とを絶縁することを特徴とする請求項1記載のコンデンサ。
【請求項3】
前記第1及び第2の電極と前記導電体層との間に設けた絶縁体によって、前記電極と導電体層とを絶縁することを特徴とする請求項1記載のコンデンサ。
【請求項4】
前記絶縁体が、金属酸化物,SiO又は樹脂であることを特徴とする請求項3記載のコンデンサ。
【請求項5】
前記誘電体が、前記導電体層と略平行な断面において、ハニカム構造を形成する六角形の頂点とその中央に配置されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のコンデンサ。
【請求項6】
金属の基材を陽極酸化し、該基材の対向する一対の主面と略直交する方向に、一方の主面で開口し他方の主面で閉口する高アスペクト比を有する複数の孔を形成する工程1と、
前記基材の他方の主面全体に、導電性のシード層を形成する工程2と、
前記基材を加工し、前記孔を中空部とする略チューブ状の誘電体を形成する工程3と、
前記誘電体の周囲の隙間を、該誘電体の開口端が所定の厚みで露出するように導電体で埋め込み、前記シード層上に第1の電極を形成する工程4と、
前記基材の一方の主面に導電体層を形成して、前記誘電体の露出した開口端面を覆い、かつ、前記第1の電極との間に絶縁用の隙間を形成するとともに、前記シード層を除去する工程5と、
前記シード層の除去後に露出する基材の主面において、該主面を所定の厚みで切除し、前記誘電体の閉口端を開口する工程6と、
前記導電体層をシードとし、前記誘電体の孔に、前記工程6で開口した端面との間に所定の隙間を形成するように導電体を埋め込み、第2の電極を形成する工程7と、
前記導電体層と対向し、前記工程6で開口した誘電体の開口端面を覆うとともに、前記第2の電極との間に絶縁用の隙間を形成する他の導電体層を形成する工程8と、
を含むことを特徴とするコンデンサの製造方法。
【請求項7】
前記工程4で形成した第1の電極上に、前記誘電体の端面との段差を埋める絶縁体を設ける工程と、
前記工程7で形成した第2の電極上に、前記誘電体の端面との隙間を埋める絶縁体を設ける工程と、
を含むことを特徴とする請求項6記載のコンデンサの製造方法。
【請求項8】
前記第1及び第2の電極と前記導電体層間に設ける絶縁体を、金属酸化物,SiO又は樹脂としたことを特徴とする請求項7記載のコンデンサの製造方法。
【請求項9】
前記工程1は、前記基材の主面と略平行な断面において、ハニカム構造を形成する六角形の頂点とその中央に位置するように、前記孔を形成することを特徴とする請求項6〜8のいずれかに記載のコンデンサの製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate