説明

コンデンサ及び電力変換装置

【課題】発熱体の近くに存在するコンデンサ素子の温度上昇を抑制でき、そのコンデンサ素子の寿命低下を防止できるコンデンサ1を提供する。
【解決手段】両端に一対の電極面7を有する複数個のコンデンサ素子3が、電極面7が同一方向を向くように収納ケース2内に配置されている。複数個のコンデンサ素子3を電気的に並列接続する一対の接続部材4が、コンデンサ素子3の電極面7に配置されている。接続部材4は、複数個のコンデンサ素子3のうち、該コンデンサ素子3以外の発熱体8に最も近いコンデンサ素子3aに流れる電流が、他のコンデンサ素子3に流れる電流よりも小さくなるように、部分的に電気抵抗が高くなるよう構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数個のコンデンサ素子を有するコンデンサと、該コンデンサを用いた電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、電力変換装置等に用いるためのコンデンサが知られている(下記特許文献1参照)。図14、図15に、従来のコンデンサ90の分解斜視図及び断面図を示す。同図に示すごとく、このコンデンサ90は、収納ケース92に複数個のコンデンサ素子91を収納し、樹脂95によってコンデンサ素子91を封止したものである。個々のコンデンサ素子91は両端に一対の電極面96を備えており、この電極面96に金属製のバスバー93,94が接続されている。バスバー93,94によって、複数個のコンデンサ素子91が並列接続されている。
【0003】
図14、図15に示すごとく、バスバー93,94は、他の電子部品に接続するための接続端子93a,94aを備える。この接続端子93a,94aは、バスバー93,94から収納ケース92の開口部97に向かって立設し、樹脂95の表面から突出している。
【0004】
一方、図15に示すごとく、コンデンサ90の近辺には、リアクトル99等の発熱体が配置されている。このリアクトル99と、コンデンサ90と、図示しない半導体モジュール等とによって、上記電力変換装置が構成されている。
電力変換装置の使用時には、コンデンサ90の各コンデンサ素子91に電流が流れ、各コンデンサ素子91は、その抵抗熱によって温度が上昇する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許3864938号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが従来のコンデンサ90は、使用すると接続端子94aにも、そこに流れる電流によって抵抗熱が発生し、この接続端子94aに近接するコンデンサ素子91aは、上述した自身の発熱に加えて、接続端子94aの熱をも受けることになり、特に温度が上昇しやすいという問題がある。コンデンサ素子91は、使用時の温度が高くなりすぎると寿命が短くなる。そのため、複数個のコンデンサ素子91のうち、接続端子94aに近接するコンデンサ素子91aの寿命が特に短くなりやすい。
それ故、従来のコンデンサ90は、他のコンデンサ素子91が正常であるにもかかわらず、一部のコンデンサ素子91aのために、コンデンサ90全体としての寿命が短くなりやすくなる問題があった。これを防止するため、従来のコンデンサ1は、コンデンサ素子91aの寿命が尽き、故障した後でも全体として正常に稼動できるように、コンデンサ素子を余分に搭載する必要があった。
【0007】
また、図15に示すごとく、リアクトル99に近接するコンデンサ素子91bも、このリアクトル99から発生する熱を受けて温度が上昇し、寿命が短くなりやすい。
【0008】
さらに、コンデンサ90を車両に搭載した場合には、車両のエンジンから発生する熱を受けて、一部のコンデンサ素子91のみが特に温度が上昇し、寿命が短くなるという問題がある。
そのため、エンジンやリアクトル、または上記接続端子等の発熱体の近くに存在するコンデンサ素子の温度上昇を抑制でき、そのコンデンサ素子の寿命低下を防止できるコンデンサが望まれている。
【0009】
本発明は、かかる従来の問題点に鑑みてなされたもので、発熱体の近くに存在するコンデンサ素子の温度上昇を抑制でき、そのコンデンサ素子の寿命低下を防止できるコンデンサと、該コンデンサを備えた電力変換装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
第1の発明は、収納ケースと、
両端に一対の電極面を有し、該電極面が同一方向を向くように上記収納ケース内に配置された複数個のコンデンサ素子と、
該コンデンサ素子の上記電極面に配置され、複数個の上記コンデンサ素子を電気的に並列接続する一対の接続部材とを備え、
該接続部材は、複数個の上記コンデンサ素子のうち、該コンデンサ素子以外の発熱体に最も近い上記コンデンサ素子に流れる電流が、他のコンデンサ素子に流れる電流よりも小さくなるように、部分的に電気抵抗が高くなるよう構成されていることを特徴とするコンデンサにある(請求項1)。
【0011】
第2の発明は、電力変換回路を構成する半導体チップを内蔵する半導体モジュールと、リアクトルと、コンデンサとを有する電力変換装置であって、
上記コンデンサは、
収納ケースと、
両端に一対の電極面を有し、該電極面が同一方向を向くように上記収納ケース内に配置された複数個のコンデンサ素子と、
該コンデンサ素子の上記電極面に配置され、複数個の上記コンデンサ素子を電気的に並列接続する一対の接続部材とを備え、
該接続部材は、複数個の上記コンデンサ素子のうち、上記電力変換回路内の発熱体に最も近い上記コンデンサ素子に流れる電流が、他のコンデンサ素子に流れる電流よりも小さくなるように、部分的に電気抵抗が高くなるよう構成されていることを特徴とする電力変換装置にある(請求項5)。
【発明の効果】
【0012】
次に、第1の発明の作用効果について説明する。
本発明では、複数個のコンデンサ素子のうち発熱体に最も近いコンデンサ素子に流れる電流が、他のコンデンサ素子に流れる電流よりも小さくなるように、接続部材の電気抵抗を部分的に高くした。
このようにすると、発熱体に近いコンデンサ素子の温度上昇を抑制でき、このコンデンサ素子の寿命低下を防止することができる。すなわち、上述したように、コンデンサは複数個のコンデンサ素子を備えており、使用時に流れる電流によって、個々のコンデンサ素子が発熱する。本発明では、発熱体に近いコンデンサ素子に流れる電流を、他のコンデンサ素子よりも少なくしたため、発熱体に近いコンデンサ素子から発生する抵抗熱を少なくすることができる。
【0013】
そのため、発熱体に近いコンデンサ素子は、発熱体から熱を受けたとしても、自身が発生する抵抗熱が少ないため、他のコンデンサ素子と比較して、温度が特に高くなる問題が生じにくい。これにより、複数個のコンデンサ素子の温度を均一化でき、発熱体に近いコンデンサ素子のみ温度が高くなって寿命が低下する不具合を防止することができる。
それ故、本発明では、コンデンサ素子全体としての寿命を長くすることができる。また、発熱体に近いコンデンサ素子が故障した後でも正常に稼動できるように、コンデンサ素子を余分に搭載しておく等の必要もない。
【0014】
次に、第2の発明の作用効果について説明する。本発明は、半導体モジュールと、コンデンサと、リアクトルとを備える電力変換装置において、電力変換回路内の発熱体に最も近いコンデンサ素子に流れる電流が、他のコンデンサ素子に流れる電流よりも小さくなるように、接続部材の電気抵抗を部分的に高くした。
このようにすると、発熱体に最も近いコンデンサ素子の温度上昇を抑制でき、このコンデンサ素子の寿命低下を防止できる電力変換装置を提供することができる。
すなわち、電力変換装置は、リアクトルや放電抵抗等の発熱体と、コンデンサとが1つのケース内に収納され、近接しているため、上記コンデンサ素子が発熱体の熱を受けやすい。また、電力変換装置を車両に搭載した場合には、近接するエンジンの熱をコンデンサ素子が受けやすい。
しかし本発明では、電力変換回路内の発熱体に最も近いコンデンサ素子に流れる電流が、他のコンデンサ素子に流れる電流よりも小さくなるように、接続部材の電気抵抗を部分的に高くしたため、発熱体に最も近いコンデンサ素子から発生する抵抗熱を少なくすることができる。これにより、発熱体に近いコンデンサ素子のみ温度が高くなって寿命が低下する不具合を防止することができる。
【0015】
以上のごとく、本発明によれば、発熱体の近くに存在するコンデンサ素子の温度上昇を抑制でき、そのコンデンサ素子の寿命低下を防止できるコンデンサと、該コンデンサを備えた電力変換装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】実施例1における、コンデンサの断面図であって、図3のB−B断面図。
【図2】実施例1における、コンデンサの断面図であって、図3のC−C断面図。
【図3】図1のA−A断面図。
【図4】実施例1における、コンデンサの分解斜視図。
【図5】実施例1における、コンデンサの断面図であって、バスバーを変更したもの。
【図6】実施例2における、コンデンサの断面図。
【図7】実施例2における、コンデンサの断面図であって、ワイヤを変更したもの。
【図8】実施例3における、電力変換装置の回路図。
【図9】実施例3における、コンデンサの断面図。
【図10】実施例3における、コンデンサの断面図であって、バスバーを変更したもの。
【図11】実施例3における、コンデンサの断面図であって、接続部材をワイヤ群に変更したもの。
【図12】実施例3における、コンデンサの断面図であって、ワイヤを変更したもの。
【図13】実施例4における、コンデンサの断面図。
【図14】従来例における、コンデンサの分解斜視図。
【図15】従来例における、コンデンサの断面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
上述した本発明における好ましい実施の形態につき説明する。
第1の発明において、上記接続部材は金属板からなるバスバーであり、該バスバーは板状本体部と、該板状本体部から突出して個々の上記コンデンサ素子の上記電極面に接続する突出部とを有し、複数個の上記コンデンサ素子のうち上記発熱体に最も近い上記コンデンサ素子に接続する上記突出部は、他の上記コンデンサ素子に接続する上記突出部よりも電気抵抗が高くなるよう構成されていることが好ましい(請求項2)。
このように、接続部材としてバスバーを用いると、コンデンサ素子に流れる電流を、製造ばらつきの影響を受けることなく一定にしやすくなる。すなわち、バスバーは、金属板にプレス加工または切削加工を施して製造するため、上記突出部の形状や厚さを一定にしやすい。そのため、突出部の電気抵抗の製造ばらつきを小さくすることができ、この突出部を通してコンデンサ素子に流れる電流を一定にしやすい。これにより、発熱体に最も近いコンデンサ素子に流れる電流を、確実に少なくすることができる。
【0018】
なお、発熱体に近いコンデンサ素子に接続する突出部の電気抵抗を高くするためには、例えば、電流が流れる方向に直交する方向における、突出部の断面積を小さくすればよい。また、板状本体部よりも導電率の低い金属材料を突出部に用いてもよい。
【0019】
また、上記接続部材は複数本のワイヤからなるワイヤ群であり、個々の上記コンデンサ素子の上記電極面に上記ワイヤが接続されており、複数個の上記コンデンサ素子のうち上記発熱体に最も近い上記コンデンサ素子に接続する上記ワイヤは、他のコンデンサに接続する上記ワイヤよりも電気抵抗が高くなるよう構成されていてもよい(請求項3)。
このように、接続部材としてワイヤ群を用いると、ワイヤは可撓性があるため、金属板からなるバスバーを接続部材に用いた場合と比較して、コンデンサ素子の電極面に接続する際の作業を行いやすくなる。
なお、発熱体に最も近いコンデンサに接続するワイヤの電気抵抗を高くするためには、例えば、そのワイヤの断面積を他のワイヤよりも小さくすればよい。また、電気抵抗を高くするワイヤを、他のワイヤよりも導電率の低い材料を用いて製造してもよい。
【0020】
また、上記接続部材は、上記発熱体に近い上記コンデンサ素子ほど流れる電流が少なくなるように、上記電気抵抗が段階的に高くなるよう構成されていることが好ましい(請求項4)。
このようにすると、複数個のコンデンサ素子の温度を均等化しやすくなる。すなわち、発熱体に近く、熱を受けやすいコンデンサ素子ほど電気抵抗を大きくすることにより、その発熱を抑制する。これにより、複数個のコンデンサ素子の温度を均等化することができる。
【実施例】
【0021】
(実施例1)
本発明の実施例にかかるコンデンサ及び電力変換装置につき、図1〜図5を用いて説明する。図1〜図4に示すごとく、本例のコンデンサ1は収納ケース2を備える。そして、両端に一対の電極面7を有する複数個のコンデンサ素子3が、該電極面7が同一方向を向くように収納ケース2内に配置されている。複数個のコンデンサ素子3を電気的に並列接続する一対の接続部材4が、コンデンサ素子3の電極面7に配置されている。
接続部材4は、複数個のコンデンサ素子3のうち、該コンデンサ素子3以外の発熱体8に最も近いコンデンサ素子3aに流れる電流が、他のコンデンサ素子3に流れる電流よりも小さくなるように、部分的に電気抵抗が高くなるよう構成されている。
以下、詳説する。
【0022】
本例のコンデンサ1は、コンデンサ素子3として、金属化フィルムを巻回もしくは積層してなるフィルムコンデンサを使用している。そして、その巻回軸方向の両端に、一対の電極面7が形成されている。また、複数個のコンデンサ素子3は、上記巻回軸方向を上下方向(ケース底面に直交する方向)にして収納ケース2内に並んでいる。コンデンサ素子3は、収納ケース2内において、樹脂12に埋設されている。
【0023】
また、図4に示すごとく、本例では、接続部材4は金属板からなるバスバー5であり、該バスバー5は板状本体部50と、該板状本体部50から突出して個々のコンデンサ素子3の電極面7に接続する突出部51とを有する。そして、複数個のコンデンサ素子3のうち発熱体8に最も近いコンデンサ素子3aに接続する突出部51aは、他のコンデンサ素子3に接続する突出部51よりも電気抵抗が高くなるよう構成されている。
【0024】
バスバー5は、外部装置と接続するための接続端子80a,80bを備える。この外部端子80a,80bは、図3に示すごとく、バスバー5から収納ケース2の開口側へ立設し、樹脂12の表面から突出している。コンデンサ1を使用すると、接続端子80a,80bに流れる電流によって、該接続端子80a,80bが発熱する。本例のコンデンサ1は、この接続端子80a,80bが発熱体8となっている。
【0025】
図4に示すごとく、本例では、発熱体8に近いコンデンサ素子3aに接続する突出部51aの電気抵抗を高くするために、該突出部51aの、突出方向に直交する平面における断面の断面積を、他の突出部51の断面積よりも小さくしている。
なお、本例では図4に示すごとく、接続端子80aに近いコンデンサ素子32aよりも、接続端子80bに近いコンデンサ素子31aの方が、コンデンサ素子と接続端子との並走距離が長いため、より加熱されやすくなっている。そのため、コンデンサ素子31aに接続する突出部511aの電気抵抗を、コンデンサ素子32aに接続する突出部512aの電気抵抗よりも高くしてもよい。例えば、突出部511aの、突出方向に直交する平面における断面の断面積を、突出部512aの断面積よりも小さくしてもよい。
【0026】
なお、図5に示すごとく、発熱体8に近いコンデンサ素子3aに接続する突出部51aの電気抵抗を高くするために、該突出部51aのみ、他の突出部51よりも導電率の低い金属材料で構成してもよい。例えば、突出部51a以外の突出部51と、板状本体部50とを銅により構成し、突出部51aを銅よりも導電率の低いアルミニウム等の金属で構成してもよい。なお、この場合は、突出部51aの断面積と、他の突出部51の断面積とを同じにしてもよい。
【0027】
次に、本例の作用効果について説明する。
本発明では、複数個のコンデンサ素子3のうち発熱体8に最も近いコンデンサ素子3aに流れる電流が、他のコンデンサ素子3に流れる電流よりも小さくなるように、接続部材4の電気抵抗を部分的に高くした。
このようにすると、発熱体8に近いコンデンサ素子3aの温度上昇を抑制でき、このコンデンサ素子3aの寿命低下を防止することができる。すなわち、上述したように、コンデンサ1は複数個のコンデンサ素子3を備えており、使用時に流れる電流によって、個々のコンデンサ素子3が発熱する。本発明では、発熱体8に近いコンデンサ素子3aに流れる電流を、他のコンデンサ素子3よりも少なくしたため、発熱体8に近いコンデンサ素子3aから発生する抵抗熱を少なくすることができる。
【0028】
そのため、発熱体8に近いコンデンサ素子3aは、発熱体8から熱を受けたとしても、自身が発生する抵抗熱が少ないため、他のコンデンサ素子3と比較して、温度が特に高くなる問題が生じにくい。これにより、複数個のコンデンサ素子3の温度を均一化でき、発熱体8に近いコンデンサ素子3aのみ温度が高くなって寿命が低下する不具合を防止することができる。
それ故、本発明では、コンデンサ素子3全体としての寿命を長くすることができる。また、発熱体8に近いコンデンサ素子3aが故障した後でも正常に稼動できるように、コンデンサ素子3を余分に搭載しておく等の必要もない。
【0029】
また、本例では、接続部材4としてバスバー5を用いている。このようにすると、コンデンサ素子3に流れる電流を、製造ばらつきの影響を受けることなく一定にしやすくなる。すなわち、バスバー5は、金属板にプレス加工または切削加工を施して製造するため、突出部51の形状や厚さを一定にしやすい。そのため、突出部51の電気抵抗の製造ばらつきを小さくすることができ、この突出部51を通してコンデンサ素子3に流れる電流を一定にしやすい。これにより、発熱体8に最も近いコンデンサ素子3aに流れる電流を、確実に少なくすることができる。
【0030】
以上のごとく、本例によれば、発熱体8の近くに存在するコンデンサ素子3aの温度上昇を抑制でき、そのコンデンサ素子3aの寿命低下を防止できるコンデンサ1を提供することができる。
【0031】
(実施例2)
本例は、接続部材4を変更した例である。図6に示すごとく、本例では、接続部材4は複数本のワイヤ60からなるワイヤ群6であり、個々のコンデンサ素子3の電極面7にワイヤ60が接続されており、複数個のコンデンサ素子3のうち発熱体8に最も近いコンデンサ素子3aに接続するワイヤ60aは、他のコンデンサ1に接続するワイヤ60よりも電気抵抗が高くなるよう構成されている。
【0032】
各ワイヤ60は、金属からなる導線を樹脂で被覆した被覆導体線である。各ワイヤ60は、先端が各コンデンサ素子3の電極面7に接続され、そこからコンデンサ1の短手方向(図6の上下方向)の中央に集められると共に、図6の右側へ引き出されている。また、コンデンサ1には、外部装置と接続するための接続端子80a,80bが設けられており、一方の接続端子80aにワイヤ60が接続されている。なお、図6には、コンデンサ素子3の一対の電極面7のうち、収納ケース2の開口側に位置する電極面7に接続するワイヤ60を記したが、収納ケース2の底面側に位置する電極面7にもワイヤ(図示しない)が接続されている。このワイヤは、接続端子80bに接続されている。これらの接続端子80a,80bは、コンデンサ1の使用に伴う電流によって発熱し、温度が上昇する。本例では、この接続端子80が発熱体8となっている。
【0033】
図6に示すごとく、本例では、発熱体8に近いコンデンサ素子3aに接続するワイヤ60aの電気抵抗を高くするために、該ワイヤ60aを他のワイヤ60よりも細く、小さい断面積としている。
【0034】
なお、図7に示すごとく、発熱体8に近いコンデンサ素子3aに接続するワイヤ60aを他のワイヤ60と同等の太さ(断面積)としても良いが、この場合には、ワイヤ60aの電気抵抗を高くするために、該ワイヤ60aを、他のワイヤ60よりも導電率が低い金属材料で構成する必要がある。
【0035】
その他、実施例1と同様の構成を有する。
【0036】
本例の作用効果について説明する。上述のように、接続部材4としてワイヤ群6を用いると、ワイヤ60は可撓性があるため、金属板からなるバスバー5を接続部材4に用いた場合と比較して、コンデンサ素子3の電極面7に接続する際の作業を行いやすくなる。
その他、実施例1と同様の作用効果を有する。
【0037】
(実施例3)
本例は、コンデンサ1を用いて電力変換装置10を構成した例である。図8に示すごとく、本例の電力変換装置10は、電力変換回路を構成する半導体チップを内蔵する半導体モジュール11と、リアクトル81と、コンデンサ1と、放電抵抗82とを有する。
【0038】
本例の電力変換装置10は、ハイブリッドカーや電気自動車等の車両に搭載される。この電力変換装置10は、図8に示すごとく、昇圧部10aとインバータ部10bとを備える。昇圧部10aで直流電源14の電圧を昇圧し、インバータ部10bによって、昇圧した直流電力を交流電力に変換する。そして、交流電力を使って三相交流モータ15を駆動し、車両を走行させる。上記コンデンサ1は、昇圧部10aで昇圧した電圧を平滑化するための平滑用コンデンサ1aとして用いられる。
【0039】
一方、三相交流モータ15が停止して、コンデンサ1に電荷が溜まったままの状態になると、この電荷が感電事故の原因となるおそれがあるため、これを防止するために、電荷消去用の放電抵抗82が、コンデンサ1と並列接続された状態で設けられている。
【0040】
なお、昇圧部10aには昇圧用コンデンサ13が設けられている。この昇圧用コンデンサ13を構成するコンデンサ素子と、上述した平滑用コンデンサ1aを構成するコンデンサ素子3とを1個の収納ケース2内に収納しても良い。
【0041】
本例の電力変換装置10に用いるコンデンサ1の断面図を図9に示す。斜視図は、図4と略同じなので、省略する。図9に示すごとく、コンデンサ1は、収納ケース2を備える。また、両端に一対の電極面7を有する複数個のコンデンサ素子3が、電極面7が同一方向を向くように収納ケース2内に配置されている。また、複数個のコンデンサ素子3を電気的に並列接続する一対の接続部材4が、コンデンサ素子3の電極面7に配置されている。接続部材4は、複数個のコンデンサ素子3のうち、電力変換回路内の発熱体8に最も近いコンデンサ素子3aに流れる電流が、他のコンデンサ素子3に流れる電流よりも小さくなるように、部分的に電気抵抗が高くなるよう構成されている。
【0042】
図9に示すごとく、接続部材4は金属板からなるバスバー5である。このバスバー5は、板状本体部50と、突出部51とを備える。本例では、放電抵抗82(発熱体8)に近接するコンデンサ素子3aに接続する突出部51aの断面積を小さくすることにより、該突出部51aの電気抵抗を高くした。
【0043】
また、本例では、放電抵抗82に比べて接続端子80a,80bの発熱は無視できるほど小さいので、放電抵抗82に近接するコンデンサ素子3aに接続する突出部51aのみ電気抵抗を高くし、接続端子80a,80bに近接するコンデンサ素子3に接続する突出部51は電気抵抗を高くしなかった。すなわち、本例における発熱体8は放電抵抗82のみであり、接続端子80a,80bは発熱体8に含まれない。
【0044】
また、図10に示すごとく、突出部51aを、他の突出部51よりも導電率が低い金属材料で構成してもよい。
さらに、図11に示すごとく、接続部材4として、複数本のワイヤ60からなるワイヤ群6を用いてもよい。図11では、放電抵抗82に近接するコンデンサ素子3aに接続するワイヤ60aの電気抵抗を高めるために、該ワイヤ60aを他のワイヤ60よりも細くしている。
【0045】
また、図12に示すごとく、放電抵抗82に近接するコンデンサ素子3aに接続するワイヤ60aの電気抵抗を高くするために、該ワイヤ60aを、他のワイヤ60よりも導電率が低い金属材料で構成してもよい。
【0046】
本例の作用効果について説明する。本例は、半導体モジュールと、コンデンサ1と、リアクトルとを備える電力変換装置10において、電力変換回路内の発熱体8に最も近いコンデンサ素子3aに流れる電流が、他のコンデンサ素子3に流れる電流よりも小さくなるように、接続部材4の電気抵抗を部分的に高くした。
このようにすると、発熱体8に最も近いコンデンサ素子3aの温度上昇を抑制でき、このコンデンサ素子3aの寿命低下を防止できる電力変換装置10を提供することができる。
すなわち、電力変換装置10は、リアクトルや放電抵抗等の発熱体8と、コンデンサ1とが1つのケース内に収納され、近接しているため、コンデンサ素子3が発熱体8の熱を受けやすい。また、電力変換装置10を車両に搭載した場合には、近接するエンジンの熱をコンデンサ素子3が受けやすい。
【0047】
しかし本発明では、電力変換回路内の発熱体8に最も近いコンデンサ素子3aに流れる電流が、他のコンデンサ素子3に流れる電流よりも小さくなるように、接続部材4の電気抵抗を部分的に高くしたため、発熱体8に最も近いコンデンサ素子3aから発生する抵抗熱を少なくすることができる。これにより、発熱体8に近いコンデンサ素子3aのみ温度が高くなって寿命が低下する不具合を防止することができる。
【0048】
以上のごとく、本例によれば、発熱体8の近くに存在するコンデンサ素子3aの温度上昇を抑制でき、そのコンデンサ素子3aの寿命低下を防止できる電力変換装置10を提供することができる。
【0049】
(実施例4)
本例は、実施例1において接続部材4の形状を変更した例である。本例では図13に示すごとく、接続部材4は、発熱体8に近いコンデンサ素子3aほど流れる電流が少なくなるように、電気抵抗が段階的に高くなるよう構成されている。
【0050】
図13に示すごとく、本例では、接続部材4としてバスバー5を用いている。バスバー5は、板状本体部50と、コンデンサ素子3に接続する突出部51とを備える。突出部51は、放電抵抗82に最も近い2個の突出部51aと、この突出部51aに隣接する突出部51bと、これらの突出部51a,51b以外の突出部51cとからなる。突出部51aは電気抵抗が最も高く、突出部51bは2番目に電気抵抗が高い。また、突出部51cは、最も電気抵抗が小さい。
なお、本例では、突出部51の断面積を、放電抵抗82に近づくほど段階的に小さくすることにより、突出部51の電気抵抗を段階的に高くしている。
その他、実施例1と同様の構成を有する。
【0051】
本例の作用効果について説明する。上記構成にすると、複数個のコンデンサ素子3の温度を均等化しやすくなる。すなわち、発熱体8に近く、熱を受けやすいコンデンサ素子3ほど電気抵抗を大きくすることにより、その発熱を抑制する。これにより、複数個のコンデンサ素子3の温度を均等化することができる。
その他、実施例1と同様の作用効果を有する。
【符号の説明】
【0052】
1 コンデンサ
10 電力変換装置
2 収納ケース
3 コンデンサ素子
4 接続部材
5 バスバー
50 板状本体部
51 突出部
6 ワイヤ群
60 ワイヤ
7 電極面
8 発熱体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
収納ケースと、
両端に一対の電極面を有し、該電極面が同一方向を向くように上記収納ケース内に配置された複数個のコンデンサ素子と、
該コンデンサ素子の上記電極面に配置され、複数個の上記コンデンサ素子を電気的に並列接続する一対の接続部材とを備え、
該接続部材は、複数個の上記コンデンサ素子のうち、該コンデンサ素子以外の発熱体に最も近い上記コンデンサ素子に流れる電流が、他のコンデンサ素子に流れる電流よりも小さくなるように、部分的に電気抵抗が高くなるよう構成されていることを特徴とするコンデンサ。
【請求項2】
請求項1において、上記接続部材は金属板からなるバスバーであり、該バスバーは板状本体部と、該板状本体部から突出して個々の上記コンデンサ素子の上記電極面に接続する突出部とを有し、複数個の上記コンデンサ素子のうち上記発熱体に最も近い上記コンデンサ素子に接続する上記突出部は、他の上記コンデンサ素子に接続する上記突出部よりも電気抵抗が高くなるよう構成されていることを特徴とするコンデンサ。
【請求項3】
請求項1において、上記接続部材は複数本のワイヤからなるワイヤ群であり、個々の上記コンデンサ素子の上記電極面に上記ワイヤが接続されており、複数個の上記コンデンサ素子のうち上記発熱体に最も近い上記コンデンサ素子に接続する上記ワイヤは、他のコンデンサに接続する上記ワイヤよりも電気抵抗が高くなるよう構成されていることを特徴とするコンデンサ。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれか1項において、上記接続部材は、上記発熱体に近い上記コンデンサ素子ほど流れる電流が少なくなるように、上記電気抵抗が段階的に高くなるよう構成されていることを特徴とするコンデンサ。
【請求項5】
電力変換回路を構成する半導体チップを内蔵する半導体モジュールと、リアクトルと、コンデンサとを有する電力変換装置であって、
上記コンデンサは、
収納ケースと、
両端に一対の電極面を有し、該電極面が同一方向を向くように上記収納ケース内に配置された複数個のコンデンサ素子と、
該コンデンサ素子の上記電極面に配置され、複数個の上記コンデンサ素子を電気的に並列接続する一対の接続部材とを備え、
該接続部材は、複数個の上記コンデンサ素子のうち、上記電力変換回路内の発熱体に最も近い上記コンデンサ素子に流れる電流が、他のコンデンサ素子に流れる電流よりも小さくなるように、部分的に電気抵抗が高くなるよう構成されていることを特徴とする電力変換装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2011−96917(P2011−96917A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−250747(P2009−250747)
【出願日】平成21年10月30日(2009.10.30)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】