説明

コンデンサ用フィルム製造装置

【課題】乾燥炉を小型化するとともに、簡便な方法で乾燥炉内でのフィルムのばたつきを抑え、乾燥を均一に行う。
【解決手段】幅方向の所定の領域で長手方向に延びる未塗布領域が形成されるように表面に塗液が塗布されたフィルム基材31を乾燥させる乾燥炉50と、乾燥炉50の中に設けられ、未塗布領域のフィルム基材31が巻き掛けられてフィルム基材31を複数回折り返して搬送する搬送経路を形成する複数のローラ14〜18と、フィルム基材31の表面と裏面とに配置され、その間にフィルム基材31の未塗布領域を挟み込み、フィルム基材31と共に搬送経路に沿って移動する弾性体の複数の把持ワイヤ24,28とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンデンサ用フィルム製造装置の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ハイブリッド車両や電気自動車等の電動車両が多く用いられるようになってきている。このような電動車両は、充放電可能な二次電池から供給される直流電力をDC/DCコンバータで昇圧した後、インバータによって三相交流電力に変換して走行用のモータにより車両を走行させているものが多い。DC/DCコンバータやインバータには、昇圧や電力変換を行うためのスイッチング素子と電流の流れを平滑して電圧の変化を安定させるために多くのコンデンサが用いられている。
【0003】
コンデンサにはフィルムの上に金属膜を蒸着させた後、これを巻回し、誘電体のフィルムと金属膜とが交互に重なるようにした金属化フィルムコンデンサや、導電体ペーストと誘電体ペーストをセラミックフィルムの上に塗装、乾燥させて、これを積層する積層セラミックコンデンサ等が用いられることが多い。
【0004】
両面金属化フィルムコンデンサはポリプロピレン等のフィルムの両面に金属を蒸着させたもので、最初に表面に金属を蒸着させた後、フィルムを折り返して搬送し、次の工程で裏面に金属の蒸着を行ったのち、フィルムを巻き取っていくようにして製造する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
積層セラミックコンデンサの製造において、フィルムの表面に導電体ペーストや誘電体ペーストを塗布、乾燥させて導電体層、誘電体層を形成する場合、各ペーストを乾燥炉で乾燥させる際には、各ペーストの溶剤が乾燥する前にペーストの粘度が低下し、溶剤が乾燥する前に各ペーストが垂れ下がってレベリング性が悪くなる場合がある。このため、フィルムを略水平に搬送し、フィルムの上面に各ペーストを塗布後、そのままの状態で乾燥炉内を通過させ、形成される導電体層、誘電体層のレベリング性を改善する方法が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0006】
また、フィルムの表面に電極合剤を塗布し、縦型の乾燥炉に中で塗布液を乾燥させて電池用の電極シートを製造する方法が提案されている(例えば、特許文献3参照)。この方法では、縦型の乾燥炉の中で乾燥用の温風が搬送中のフィルムに当たり、フィルムがばたついて乾燥が不均一となることを防止するためにフィルムの搬送と共にフィルムの両端を挟み込みながら移動するクリップを設けることが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−95606号公報
【特許文献2】特開2003−188044号公報
【特許文献3】特開2000−88459号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
フィルムの表面に導電体ペーストや誘電体ペーストを塗布してコンデンサ用のフィルムを製造する場合、特許文献2に記載されているような従来技術では、乾燥炉を直線的に配置する必要があることから、乾燥炉のために大きな設置スペースが必要となってしまうという問題があった。また、特許文献3に記載のように移動式のクリップでフィルムを挟みこむ方法は、フィルムを搬送する機構とは別にクリップを移動させるチェーンや、チェーンを駆動する駆動機構を設ける必要があり、その構造が複雑になる上、チェーンやクリップの摩擦等により粉塵やオイルが飛散してフィルムの塗装面が汚れてしまう場合があり、コンデンサ用フィルムの製造には適用することが難しいという問題があった。
【0009】
本発明は、乾燥炉を小型化するとともに、簡便な方法で乾燥炉内でのフィルムのばたつきを抑え、乾燥を均一に行うことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のコンデンサ用フィルム製造装置は、幅方向の所定の領域で長手方向に延びる未塗布領域が形成されるように表面または裏面のいずれか一方または両方の面に塗液が塗布されたフィルム基材を乾燥させる乾燥炉と、乾燥炉の中に設けられ、未塗布領域のフィルム基材が巻き掛けられてフィルム基材を複数回折り返して搬送する搬送経路を形成する複数のローラと、フィルム基材の表面と裏面とに配置され、その間にフィルム基材の未塗布領域を挟み込み、フィルム基材と共に搬送経路に沿って移動する弾性体の複数の把持ワイヤと、を備えること、を特徴とする。
【0011】
本発明のコンデンサ用フィルム製造装置において、各把持ワイヤに所定の張力を掛ける張力印加装置を含んでいること、としても好適であるし、各把持ワイヤは、無端ワイヤであり、張力印加装置は無端ワイヤの移動経路の長さを変化させるように移動するテンションローラであること、としても好適である。
【発明の効果】
【0012】
乾燥炉を小型化するとともに、簡便な方法で乾燥炉内でのフィルムのばたつきを抑え、乾燥を均一に行うことができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態におけるコンデンサ用フィルム製造装置の構成を示す系統図である。
【図2】本発明の実施形態におけるコンデンサ用フィルム製造装置の塗液の塗装工程を示す説明図である。
【図3】本発明の実施形態におけるコンデンサ用フィルム製造装置のローラと把持ワイヤを示す説明図である。
【図4】本発明の実施形態におけるコンデンサ用フィルム製造装置の塗工フィルムの送りを示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。図1に示すように、本実施形態のコンデンサ用フィルム製造装置100は、導電体ペースト等の塗液が塗布されるフィルム基材31が巻かれている巻き出しローラ11と、フィルム基材の表面に塗液を塗布する塗工エリア41と、表面に塗液が塗布された塗工フィルム32の塗液を乾燥される乾燥炉50と、乾燥炉50で乾燥された塗工フィルム32を巻き去る巻き取りロール20とを備えている。塗工エリア41の中にはローラ12とローラ12とフィルム基材31を挟んで対向して配置され、フィルム基材31の表面に塗液を塗工するコーナーヘッド42とが設けられている。図2に示すように、コーナーヘッド42はその先端から帯状に塗液を流出させ、長手方向に向かって送られているフィルム基材31の表面に所定の幅で所定の厚さに塗液を塗工していくものである。図2に示すように、コーナーヘッド42は、フィルム基材31の中央部の幅Bの部分にのみ塗液を塗工して塗膜34を形成し、幅方向の両端の幅Aの部分には塗液を塗工しない。従って、フィルム基材31の両端は幅Aだけ塗液が塗布されていない未塗布領域33が形成される。なお、本実施形態ではフィルム基材31の表面にのみ塗工を行うので、裏面はすべて未塗布領域33となる。また、未塗布領域33は、フィルム基材31が露出した領域となっている。
【0015】
図1に示すように、乾燥炉50の中には、塗工フィルム32の裏面が巻き掛けられ、塗工フィルム32を上下に複数回折り返して搬送する搬送経路を形成する複数のローラ14から18と、塗工フィルム32の表面側の未塗布領域33に接し、塗工フィルム32と共に各ローラ14から18に巻き掛けられて塗工フィルム32の搬送経路に沿って移動する表面用把持ワイヤ24と、塗工フィルム32の裏面側の未塗布領域33に接し、塗工フィルム32と共に各ローラ14から18に巻き掛けられて塗工フィルム32の搬送経路に沿って移動する裏面用把持ワイヤ28とを備えている。表面用把持ワイヤ24は、ローラ21,22によってガイドされ、張力印加装置であるテンションローラ23によって張力Tが加えられている。また、裏面用把持ワイヤ28はローラ25,26によってガイドされ、張力印加装置であるテンションローラ27によって張力Tが加えられている。
【0016】
表面用把持ワイヤ24はローラ21、ローラ14〜18、ローラ22、テンションローラ23の順に各ローラ14〜18,21〜22、テンションローラ23に巻き掛けられる無端ワイヤであり、例えば、ゴム等の弾性体で構成されている。同様に、裏面用把持ワイヤ28はローラ25、ローラ14〜18、ローラ26、テンションローラ27の順に各ローラ14〜18,25〜26、テンションローラ27に巻き掛けられる無端ワイヤであり、例えば、ゴム等の弾性体で構成されている。各テンションローラ23,27は、図1の上下方向に移動できるよう構成されている。そして、テンションローラ23を上方向に移動させると、テンションローラ23は、各ローラ14〜18,21〜22,テンションローラ23によって規定される表面用把持ワイヤ24の移動経路の周長を長くすることとなり、これによって表面用把持ワイヤ24に掛る張力Tを大きくすることができる。また、逆にテンションローラ23を下方向に移動させると表面用把持ワイヤ24に掛る張力Tを小さくすることができる。同様に、テンションローラ27を下方向に移動させると裏面用把持ワイヤ28に掛る張力Tを大きくすることができ、テンションローラ27を上方向に移動させると裏面用把持ワイヤ28に掛る張力Tを小さくすることができる。
【0017】
図3(a)に示すように、ローラ14は、塗工フィルム32の塗膜34がなく全面が未塗布領域33である塗工フィルム32の裏面の両端が巻き掛けられるように塗工フィルム32の幅方向の両側に1つずつ合計2つ配置されている。各ローラ14は図示しないフレームに取り付けられた各シャフト14bの周りに回転自在に取り付けられている。ローラ14の表面にはそれぞれ裏面用把持ワイヤ28がはまり込む各溝14aが設けられている。各溝14aに入った各裏面用把持ワイヤ28はその各表面が各ローラ14の外表面から突出して塗工フィルム32の裏面に接触する。図1に示す他のローラ15〜18,25〜26及びテンションローラ27も同様の構造となっている。
【0018】
図3(a)に示すように、ローラ21は、塗工フィルム32の塗膜34側の塗工フィルム32の表面両端の未塗布領域33をそれぞれガイドするように塗工フィルム32の幅方向の両側に1つずつ合計2つ配置されている。各ローラ21は図示しないフレームに取り付けられた各シャフト21bの周りに回転自在に取り付けられている。ローラ21の表面にはそれぞれ表面用把持ワイヤ24がはまり込む各溝21aが設けられている。各溝21aに入った各表面用把持ワイヤ24はその各表面が各ローラ21の外表面から突出して塗工フィルム32の表面の未塗布領域33に接触する。図1に示すローラ22及びテンションローラ23も同様の構造となっている。
【0019】
図3(a)に示すように、ローラ21に設けられた溝21aとローラ14に設けられた溝14aの位置は塗工フィルム32の幅方向に少しずらして配置してあり、表面用把持ワイヤ24と裏面用把持ワイヤ28の塗工フィルム32に接する位置を幅方向に少しずらしている。このように構成することにより、各ワイヤ24,28によって未塗布領域33のフィルム基材31を損傷させることを抑制するとともに、各ワイヤの位置が幅方向にずれた場合でも塗工フィルム32が搬送路からずれることを抑制することができる。
【0020】
図3(b)に示すように、ローラ14とローラ15との間の領域では、塗工フィルム32は、両端部分でそれぞれ表面用把持ワイヤ24と裏面用把持ワイヤ28とで挟み込まれており、塗工フィルム32が表裏の方向にばたつくことが抑制されている。
【0021】
図4を参照しながら、塗工フィルム32が各把持ワイヤ24,28によって挟みこまれながら各ローラ14〜16によって搬送路に沿って搬送される状態を説明する。図4に示すように、塗工エリア41から送られてきた塗工フィルム32は、ローラ14とローラ21との間に入ってくる。ローラ21の溝21aには表面用把持ワイヤ24が巻き掛けられており、ローラ14の溝14aには裏面用把持ワイヤ28が巻き掛けられている。そして、図3(a)に示したように、塗工フィルム32は両面を各ワイヤ24,28で挟みこまれてローラ14,21を通過する。ローラ14を通過した塗工フィルム32は次に塗工フィルム32の未塗布領域33である裏面が巻き掛けられているローラ15に向かって延びていく。また、各把持ワイヤ24,28もそれぞれ次に巻き掛けられているローラ15に向かって延びていく。
【0022】
ローラ14とローラ15との間では、図3(b)に示すように塗工フィルム32は、両端の表側と裏側の各未塗布領域33でそれぞれ表面用把持ワイヤ24と裏面用把持ワイヤ28とで挟み込まれている。各把持ワイヤ24,28は各テンションローラ23,27によって所定の張力Tを保つように調整されているので、塗工フィルム32が表裏方向に移動すると張力Tにより塗工フィルム32を元の位置に戻す横力が発生する。そしてこの横力によって塗工フィルム32は元の位置に戻される。このように、張力Tが掛っている各把持ワイヤ24,28によって塗工フィルム32の両面を抑えているので、乾燥炉50の中で塗工フィルム32がばたつくことを抑制でき、表面に塗装された塗液を均一に乾燥させることができる。
【0023】
また、図1に示すよう、本実施形態では、乾燥炉50の中に上下に複数回折り返した搬送路を形成し、この搬送路に沿って塗工フィルム32を搬送しながら塗液の乾燥を行うので、搬送路が直線的であった従来技術に比べて乾燥炉50の設置面積を大幅に小さくすることができ、乾燥炉50を小型化することができる。
【0024】
以上、説明した実施形態では、表面用把持ワイヤ24,裏面用把持ワイヤ28はゴムなどの弾性体であるとして説明したが、張力Tを掛けることができるような材料であれば、ゴムに限らず、金属ワイヤ等を用いてもよい。
【符号の説明】
【0025】
11 巻き出しローラ、12−18,21−22,25−26 ローラ、14a,21a 溝、14b,21b シャフト、20 巻き取りロール、23,27 テンションローラ、24 表面用把持ワイヤ、28 裏面用把持ワイヤ、31 フィルム基材、32 塗工フィルム、33 未塗布領域、34 塗膜、41 塗工エリア、42 コーナーヘッド、50 乾燥炉、100 コンデンサ用フィルム製造装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
幅方向の所定の領域で長手方向に延びる未塗布領域が形成されるように表面または裏面のいずれか一方または両方の面に塗液が塗布されたフィルム基材を乾燥させる乾燥炉と、
乾燥炉の中に設けられ、未塗布領域のフィルム基材が巻き掛けられてフィルム基材を複数回折り返して搬送する搬送経路を形成する複数のローラと、
フィルム基材の表面と裏面とに配置され、その間にフィルム基材の未塗布領域を挟み込み、フィルム基材と共に搬送経路に沿って移動する弾性体の複数の把持ワイヤと、を備えること、
を特徴とするコンデンサ用フィルム製造装置。
【請求項2】
請求項1に記載のコンデンサ用フィルム製造装置であって、
各把持ワイヤに所定の張力を掛ける張力印加装置を含んでいること、
を特徴とするコンデンサ用フィルム製造装置。
【請求項3】
請求項2に記載のコンデンサ用フィルム製造装置であって、
各把持ワイヤは、無端ワイヤであり、
張力印加装置は無端ワイヤの移動経路の長さを変化させるように移動するテンションローラであること、
を特徴とするコンデンサ用フィルム製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−169339(P2012−169339A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−27212(P2011−27212)
【出願日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】