説明

コンデンサ

【課題】コンデンサ素子に加わる局所的な発熱を低減することにより、信頼性の高いコンデンサを提供することを目的とする。
【解決手段】両端面に電極部8を設けたコンデンサ素子1と、上面に開口部を有しコンデンサ素子1を収納するケース2と、コンデンサ素子1とケース2を絶縁する絶縁材3aと、ケース2の開口部を封止する蓋4と、蓋4に設けられた外部接続端子5と、コンデンサ素子1と外部接続端子5とを接続する上部リード線6、下部リード線7と、ケース2内に充填される絶縁油3bとを備えたコンデンサであって、コンデンサ素子1の両端面に設けた電極部8がケース2内で上下に位置するように収容され、コンデンサ素子1の上側に位置する一方の電極部8から引き出される上部リード線6の断面積よりもコンデンサ素子1の下側に位置する他方の電極部8から引き出される下部リード線7の断面積を大きくする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モーターの運転用や力率改善用をはじめとした電気機器などに用いられるコンデンサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、コンデンサ素子の両端面に設けた電極が上下方向に配置されるようにケース内に収容し、絶縁材を充填して密封した金属化フィルムコンデンサが使用されている。
【0003】
図2は従来のコンデンサの一例を示す断面図であり、図2においてリード線24a、24bの一端はコンデンサ素子21のメタリコン電極28a、28bに各々接続され、リード線24a、24bの他端は端子25に接続されて、熱硬化性樹脂29とともにコンデンサケース22に収納されている。
【0004】
このような従来のコンデンサでは、上部のメタリコン電極28aと外部接続端子25を接続するリード線24aと、下部のメタリコン電極28bと外部接続端子25を接続するリード線24bには特に注意が払われることなく、同じものを長さを変えて用いた構成が一般的であった。
【0005】
なお、この出願の発明に関する先行技術文献情報としては、例えば、特許文献1が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−110445号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記のような従来のコンデンサを高電圧、大電流下で使用した場合、抵抗値を有するリード線24a、24bも発熱するが、下部のメタリコン電極28bと端子25を接続するリード線(下部リード線)24bは、上部のメタリコン電極28aと端子25を接続するリード線(上部リード線)24aに比べて、「抵抗率×長さ÷断面積」で表される総抵抗値が高いために、上部リード線24aよりも下部リード線24bの発熱量が大きく、発熱がアンバランスとなり、局部的に発熱温度の高い部分が形成されてしまう。
【0008】
しかも、その下部リード線24bはコンデンサ素子21に接した状態で外部接続端子25に至る長い距離で引き回されているため、下部リード線24bの発熱が直接コンデンサ素子21に伝わり、高電圧、大電流下で長期間使用した場合に、コンデンサ素子21が局所的に熱のために劣化し、この局所的な部分がトリガーとなって、甚だしい場合には熱破壊に至る懸念を有するという課題があった。
【0009】
一般にコンデンサ素子の内部温度が100℃を超えると、故障率が急激に増大するため、発熱しても90℃以下とすることが必要である。
【0010】
本発明は上記従来の課題を解決するものであり、コンデンサ素子の局所的な発熱を抑制し、高電圧、大電流下で使用した場合でも信頼性の高いコンデンサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明のコンデンサは、両端面に電極部を設けたコンデンサ素子と、上面に開口部を有し前記コンデンサ素子を収納するケースと、このケースの開口部を封止する蓋と、この蓋に設けられ前記コンデンサ素子から前記ケースの外方へ電気を引き出す外部接続端子と、前記コンデンサ素子と前記外部接続端子とを接続する長さの異なる一対のリード線とを備えたコンデンサであって、前記コンデンサ素子の両端面に設けた電極部が前記ケース内で上下に位置するように収容され、前記一対のリード線は前記コンデンサ素子の上側に位置する一方の電極部から引き出される上部リード線と前記コンデンサ素子の下側に位置する他方の電極部から引き出される下部リード線とからなり、前記下部リード線の断面積が前記上部リード線の断面積よりも大きくしたものである。
【発明の効果】
【0012】
下部リード線の断面積を上部リード線の断面積よりも大きくすることにより、上部リード線と下部リード線の発熱をほぼ均等に、言い換えるならば発熱量の大きな下部リード線の発熱を抑制して上部リード線の発熱に近づけることにより、発熱のバランスが取れ、局所的に高い温度に発熱する部分を低減することができ、コンデンサ素子が局所的に高い温度にさらされることがなくなるため、コンデンサ素子の劣化の引き金(トリガー)となる局所発熱部分を避けることが可能となり、高い信頼性のコンデンサを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施の形態におけるコンデンサの内部構造を示す断面図
【図2】従来のコンデンサの内部構造を示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0015】
(実施の形態)
図1は、本発明の一実施の形態におけるコンデンサの断面図である。
【0016】
図1において、両面コロナ処理が施されたポリプロピレンフィルムの両面に、蒸着によりアルミニウムと亜鉛の合金よりなる蒸着金属電極を形成した金属化ポリプロピレンフィルム(図示せず)を巻回し、巻回した両端面にメタリコンにより、電極部8を設けたコンデンサ素子1がアルミニウムなどの金属製のケース2に収納されている。
【0017】
コンデンサ素子1とケース2の間には樹脂ケースなどの絶縁材3aが設けられてコンデンサ素子1と金属製のケース2間の絶縁を確保している。
【0018】
また、ケース2内部には、ポリブテンオイルなどの絶縁油3bが充填されている。
【0019】
ケース2は蓋4によって密封され、この蓋4に設けられた外部接続端子5とコンデンサ素子1とはメタリコン電極部8と上部リード線6と下部リード線7によって電気的に接続されている。
【0020】
このように構成されたコンデンサにおいて、外部接続端子に電圧が印加されたとき、コンデンサ素子1には印加電圧、周波数、コンデンサの静電容量に比例した電流が流れる。
【0021】
また、上部リード線6と下部リード線7にも同じ電流が流れることになる。
【0022】
そして、上部リード線6と下部リード線7がもし同じ断面積であれば、リード線の総抵抗値(抵抗率×長さ÷断面積)の大きい下部リード線7の方が上部リード線6よりも大きく発熱するが、本実施の形態のように、下部リード線7の断面積を上部リード線6の断面積よりも大きくすることにより、上部リード線6と下部リード線7の発熱をほぼ均等に、言い換えるならば発熱量の大きな下部リード線7の発熱を抑制して上部リード線6の発熱に近づけることにより、発熱のバランスが取れ、局所的に高い温度に発熱する部分を低減することができる。
【0023】
したがって、コンデンサ素子1が局所的に高い温度にさらされることがなくなるため、コンデンサ素子1の劣化の引き金(トリガー)となる局所発熱部分を避けることが可能となり、高い信頼性のコンデンサを得ることができる。
【0024】
次に、本実施の形態における実施例および比較例のコンデンサを試作し、発熱効果の比較試験を行った結果について説明する。
【0025】
まず本実施の形態における実施例として、厚み5μmのポリプロピレンフィルムにアルミニウムと亜鉛の合金よりなる蒸着金属電極を形成した両面金属化ポリプロピレンフィルム(図示せず)と金属蒸着電極を形成していない合わせフィルム(図示せず)とが交互になるように巻回して、巻回した両端面にメタリコン電極部8を形成し、定格電圧が440Vで静電容量が65μFのコンデンサ素子1を作製し、樹脂ケースよりなる絶縁材3aに入れたものをアルミニウム製のケース2に収納し、絶縁油3bとしてポリブテンオイルを充填し、アルミニウム製の蓋4で密封した。
【0026】
蓋4に設けられた外部接続端子5とコンデンサ素子1の両端面のメタリコン電極部8は断面積が0.32mm2で長さが5cmの撚り線よりなる上部リード線6と、断面積が0.82mm2、1.03mm2、1.31mm2、2.08mm2、4.17mm2で長さが13cmの撚り線よりなる下部リード線7とで、電気的に接続したものを作製し、それぞれ実施例1、実施例2、実施例3、実施例4、実施例5とした。
【0027】
これとは別に、本実施の形態である実施例と比較するための比較例として、上部リード線6として断面積が0.65mm2で長さが5cmの単線を用い、下部リード線として断面積が0.65cm2で長さが13cmの単線よりなる下部リード線7を使用した以外は実施例と同様のコンデンサを作製し、比較例とした。
【0028】
これらの実施例と比較例のコンデンサ各3個について、70℃の高温下で、交流定格電圧440Vの1.25倍(550V)の交流電圧を印加し、最も高温になるコンデンサ素子1の中央部の温度を熱電対を用いて測定した。
【0029】
その結果を(表1)に示す。(表1)で温度上昇は周囲温度70℃のもとでコンデンサ素子1の中央部の温度がどの程度上昇するかを示したものであり、コンデンサ素子1の中央部の測定温度から70℃を引いた温度で表される。
【0030】
一般にポリプロピレンフィルムよりなるコンデンサ素子1の内部温度が100℃を超えると、故障率が急激に増大するため、コンデンサ素子1の温度は発熱した状態でも上限温度として90℃以下とすることが重要である。
【0031】
【表1】

【0032】
(表1)の結果より、比較例ではコンデンサ素子1の中央部の温度が試料3個の平均で92.1℃となり、上限温度とした90℃を超えてしまったのに対して、本実施の形態による実施例1では84.0℃と低く抑えられ、上限温度とした90℃に対して約6℃の余裕があった。実施例2〜5ではさらに温度上昇が抑制された結果となっている。
【0033】
一般にコンデンサ等の故障率は温度により指数関数的に増大する傾向があり、上限温度近くにおいては、たとえ数度でも下げられるのであれば、コンデンサの信頼性に及ぼす効果は大きいものである。
【0034】
(表1)に示したように、本実施の形態の実施例1〜5では下部リード線7として断面積0.82mm2、1.03mm2、1.31mm2、2.08mm2、4.17mm2のリード線を用いたが、これは(表1)にも示したように、通常リード線の規格として使用されるアメリカンワイヤーゲージ(AWGサイズ)でそれぞれ18〜11に相当する。リード線の断面積の規格としては、このようなアメリカンワイヤーゲージ規格に準じたものを使用することが、入手の容易さ、製品規格の設計の上で便利である。
【0035】
実施例1で用いた下部リード線(断面積0.82mm2、AWGサイズで18)よりもさらに断面積の大きい下部リード線を用いた実施例2(断面積1.03mm2、AWGサイズで17)や実施例3(断面積1.31mm2、AWGサイズで16)、実施例4(断面積2.08mm2、AWGサイズで14)、実施例5(断面積4.17mm2、AWGサイズで11)とすることで、温度上昇はさらに抑制することができる。しかし、実施例4と実施例5を比較すると、リード線の断面積を2倍にしたにも関わらず温度上昇の値は殆ど変わらないことから、下部リード線の断面積は実施例4の2.08mm2(AWGサイズで14)以下で良いことが解る。
【0036】
さらに、ケース2内部の余剰スペースにも限界があり、コスト増にもつながるという点からも、下部リード線7の断面積としては、2.08mm2(AWGサイズで14)以下とすることが望ましい。
【0037】
また、上部リード線6として断面積0.32mm2(AWGサイズで22)のリード線を用いたが、さらに断面積の小さいリード線を用いてもよい。ただし、電流密度が著しく大きくならないように0.13mm2(AWGサイズで26)以上の断面積とすることが望ましい。
【0038】
以上詳述したように、本実施の形態のコンデンサによれば、極めて平易に下部リード線7の発熱を低下させ、より長寿命のコンデンサを提供することができるとともに、上部リード線6のコスト削減、組立作業性向上が図れる。
【0039】
さらにリード線(特に上部リード線6)として、撚り線を用いることにより、さらにリード線の接続が容易となり、組立作業効率の向上を図ることができる。
【0040】
上記実施例では下部リード線7の断面積により説明したが、断面積に代えて下部リード線に流れる電流の電流密度を制限することにより、下部リード線7の発熱を抑制することもできる。
【0041】
この実施例の場合には、定格電圧(440V)印加時の下部リード線の断面積を0.82mm2としているが、電流密度でいうと15A/mm2以下、より好ましくは13.1A/mm2以下とすることで、下部リード線7の発熱を抑えつつ上部リード線6との発熱バランスを取ることができ、コンデンサ素子1への局所的温度上昇要因を除去することができる。
【0042】
なお、実施の形態ではコンデンサ素子1の放電を防ぎ、絶縁性を確保するためにポリブテンオイルを絶縁油3bとして充填したが、これに限定されるものではなく、絶縁油3bとしてはポリブテンオイルの他にその他の鉱物油、植物油、あるいはこれらの混合油や、ワックスや、エポキシ樹脂などの充填樹脂を用いることもできる。
【0043】
コンデンサ素子1としては、今回の試料では交流電流用途におけるコロナ放電の影響を低減するため、アルミニウムと亜鉛の合金を用いたが、これに限定されるものではなく、アルミニウムによる金属蒸着電極であってもよい。
【0044】
ケース2としては、内部のコンデンサ素子1からの放熱のためにはアルミニウムなどの金属製のものが好ましいが、樹脂製のケースであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明のコンデンサは、誘電体フィルムに金属蒸着電極を形成した金属化フィルムを巻回してその両端面に取出電極を設けたコンデンサ素子と、このコンデンサを収納する外装ケースと、外部接続端子を有する蓋とで構成されたコンデンサであって、コンデンサ素子と外部接続端子とを電気的に接続する上部リード線と下部リード線の総抵抗値が略等しくすることで、コンデンサ素子の局所的な発熱を抑制し、信頼性の高いコンデンサを提供することができるため、各種電気機器、産業機器等に使用されるコンデンサに有用である。
【符号の説明】
【0046】
1 コンデンサ素子
2 ケース
3a 絶縁材
3b 絶縁油
4 蓋
5 外部接続端子
6 上部リード線
7 下部リード線
8 メタリコン電極部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
両端面に電極部を設けたコンデンサ素子と、上面に開口部を有し前記コンデンサ素子を収納するケースと、このケースの開口部を封止する蓋と、この蓋に設けられ前記コンデンサ素子から前記ケースの外方へ電気を引き出す外部接続端子と、前記コンデンサ素子と前記外部接続端子とを接続する長さの異なる一対のリード線とを備えたコンデンサであって、前記コンデンサ素子の両端面に設けた電極部が前記ケース内で上下に位置するように収容され、前記一対のリード線は前記コンデンサ素子の上側に位置する一方の電極部から引き出される上部リード線と前記コンデンサ素子の下側に位置する他方の電極部から引き出される下部リード線とからなり、前記下部リード線の断面積が前記上部リード線の断面積よりも大きいことを特徴とするコンデンサ。
【請求項2】
前記下部リード線の断面積が0.82mm2以上、2.08mm2以下である請求項1に記載のコンデンサ。
【請求項3】
少なくとも前記上部リード線に撚り線を用いた請求項1または2に記載のコンデンサ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2010−245426(P2010−245426A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−94807(P2009−94807)
【出願日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】