説明

コントラスト向上シートの製造方法

【課題】スジ不良および充填ムラを低減することができるコントラスト向上シートの製造方法を提供する。
【解決手段】本発明の一の態様によれば、表面2bに複数の溝2aが並設された光透過部2と、光透過部2の溝2a内に形成された光吸収部4とを備えるコントラスト向上シート5の製造方法であって、表面2bに複数の溝2aが並設されたシート状の光透過部2を移動させながら、光透過部2の表面2bにインキ組成物3を連続的に供給し、インキ組成物3の供給位置よりも下流側に配置された掻取部材41の上流側かつ掻取部材41の直近にインキ組成物3を含むインキ溜まり3aを形成しつつ、掻取部材41により光透過部2の表面2b上のインキ組成物3を掻き取る工程とを備え、インキ溜まり3aを構成するインキ組成物3の一部は、吸引され、再び光透過部2の表面に供給されることを特徴とする、コントラスト向上シート5の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コントラスト向上シートの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置では、通常、観察者がどのような位置から見ても良好な画像が得られるように、視野角が広いことが好まれる。一方、例えば通勤電車の中で仕事をする場合やATM等の公共の場に設置された液晶表示装置では、周りの人から画面を覗かれては困ることがあり、このような場合には液晶表示装置の観察者のみに見え、他人からは見えないようにプライバシーを保護するための覗き見防止機能が求められている。また、カーナビゲーションシステム等の車載型の液晶表示装置においては、夜間などに液晶表示装置の画面が窓ガラスに映り込み、視界を遮る現象がおこるため、映り込み防止機能が求められており、光線出光角度の制御が望まれている。
【0003】
このような要求に対して、例えば、特開2006−119365号公報(特許文献1)には、光透過層と遮光層とを交互に並べた構造であるルーバータイプの光学シートが提案されており、遮光層として、光透過層を構成する材料にカーボンブラックやカーボンファイバー等の充填材を混合したものを用いることが開示されている。
【0004】
一方、上記のようなルーバー型の光学シートは、斜め方向の映像光を単純にカットするものであるため、表示装置の種類によっては、観測者に到達させるべき映像光の拡散光源を減少させてしまうことにもなるため、表示画面の輝度が低下する場合があった。
【0005】
上記の問題を解消するため、外光を遮光してコントラストを向上させ、かつ二重像の発生も減少させることができるコントラスト向上シートを設置することが提案されている。このようなコントラスト向上シートとして種々の構造のものが提案されており、例えば、表面に複数の溝が並設された光透過部と、溝に光透過部よりも屈折率の低い材料とカーボン顔料等とを充填させて形成された光吸収部とを有するものが提案されている(例えば、特開2006−85050号公報等:特許文献2)。
【0006】
そして、コントラスト向上シートの製造において、電離放射線硬化型樹脂等のレンズ材料に着色樹脂ビーズを混合したインキ組成物を光透過部の溝に充填し、電離放射線を照射して硬化させて光吸収部を形成することが行われている(例えば、国際出願公開公報WO2006/090784:特許文献3)。
【0007】
インキ組成物の充填は、例えば、ドクターブレードを固定した状態で、表面に複数の溝が並設されたシート状の光透過部を移動させながら、ドクターブレードの上流側よりインキ組成物を光透過部の表面に供給し、ドクターブレードの上流側かつドクターブレードの直近にインキ溜まりを形成しつつ、ドクターブレードで光透過部の表面上のインキ組成物を掻き取ることにより行うことができる。
【0008】
しかしながら、このような方法により、インキ組成物を充填すると、帯状の充填ムラやスジ不良等が発生しやすい。コントラスト向上シートの外観品質は、画質に直接結び付くため、高い品質が要求される。このため、上記したような充填ムラやスジ不良を極力低減することが好ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2006−119365号公報
【特許文献2】特開2006−85050号公報
【特許文献3】国際出願公開公報WO2006/090784
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものである。すなわち、スジ不良および充填ムラを低減することができるコントラスト向上シートの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、充填ムラおよびスジ不良を低減するため鋭意研究を重ねた結果、インキ溜まりを構成するインキ組成物の粘度上昇および粘度ムラを抑制した場合には、充填ムラおよびスジ不良が低減されることを見出した。本発明は、かかる知見に基づいて完成されたものである。
【0012】
本発明の一の態様によれば、表面に複数の溝が並設された光透過部と、前記光透過部の前記溝内に形成された光吸収部とを備えるコントラスト向上シートの製造方法であって、表面に複数の溝が並設されたシート状の光透過部を移動させながら、前記光透過部の前記表面にインキ組成物を連続的に供給し、前記インキ組成物の供給位置よりも下流側に配置された掻取部材の上流側かつ前記掻取部材の直近にインキ組成物を含むインキ溜まりを形成しつつ、前記掻取部材により前記光透過部の表面上の前記インキ組成物を掻き取る工程とを備え、前記インキ溜まりを構成する前記インキ組成物の一部は、吸引され、再び前記光透過部の表面に供給されることを特徴とする、コントラスト向上シートの製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0013】
本発明の一の態様のコントラスト向上シートの製造方法によれば、インキ組成物を連続的に供給しながら、インキ溜まりを構成するインキ組成物の一部を吸引することにより、インキ溜まりを構成するインキ組成物の粘度上昇および粘度ムラを抑制することができ、それにより充填ムラおよびスジ不良を低減することができる。また、インキ溜まりを構成するインキ組成物の一部を吸引することにより、インキ溜まりの滞留を抑制することができ、これによりインキ組成物の長寿命化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】実施形態に係るコントラスト向上シートの製造工程を模式的に示した図である。
【図2】実施形態に係る光透過部の形成工程を模式的に示した図である。
【図3】実施形態に係る粘着層および剥離層を有する基材を示した図である。
【図4】実施形態に係るインキ組成物の充填工程を模式的に示した図である。
【図5】実施形態に係る掻取部の断面図である。
【図6】実施形態に係る掻取部の側面図である。
【図7】実施形態に係る掻取部材による掻き取りの様子を模式的に示した図である。
【図8】実施形態に係るコントラスト向上シートを備えた表示装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<コントラスト向上シートの製造方法>
先ず、本発明によるコントラスト向上シートの製造方法について、図面を参照しながら説明する。図1は本実施形態に係るコントラスト向上シートの製造工程を模式的に示した図であり、図2は本実施形態に係る光透過部の形成工程を模式的に示した図であり、図3は本実施形態に係る粘着層および剥離層を有する基材を示した図である。
【0016】
まず、基材1上に、層厚方向断面において複数の溝2aが並設された光透過部2を形成する(図1(a))。図1(a)に示される溝2aは基材1側に向けて先細る略台形状となっている。溝2aは、略台形状に限られず、例えば、略V字状または略矩形状に形成されていてもよい。溝2aは基材1の長手方向に沿って延在している。
【0017】
基材1は、光透過部2や後述する光吸収部4を形成するためのベースとなる層である。基材1としては、透明樹脂フィルム、透明樹脂板、透明樹脂シートや透明ガラスを用いることができる。透明樹脂フィルムとしては、トリアセテートセルロース(TAC)フィルム、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル系フィルム、ジアセチルセルロースフィルム、アセテートブチレートセルロースフィルム、ポリエーテルサルホンフィルム、ポリアクリル系樹脂フィルム、ポリウレタン系樹脂フィルム、ポリエステルフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリスルホンフィルム、ポリエーテルフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリエーテルケトンフィルム、(メタ)アクリルロニトリルフィルム等を好適に使用できるが、これらの中でも、ポリエステル系フィルムが好ましく用いられる。ポリエステル系フィルムとしては、ポリエチレンテレフタレートの他、ポリブチレンテレフタレート、ポリナフタレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート等が挙げられる。
【0018】
この光透過部2の形成は、使用する樹脂の種類によって異なる。例えば、光透過部2を透明な熱可塑性樹脂を用いて形成する場合には、加熱した金型を熱可塑性樹脂に押圧する熱プレス法や射出成型法、金型内に熱可塑性樹脂モノマーを注入して重合・固化させるキャスティング法等によって、光透過部2を形成することができる。また、電離放射線硬化型樹脂、特に紫外線硬化型樹脂を用いる場合には、当該樹脂を成形型内に注入して紫外線を照射して硬化させる、いわゆるUV法によって、光透過部2を形成することができる。これらの方法の中でも、本発明においては、量産性に優れるUV法が好適に使用できる。UV法によれば、金型ロールを用いて、光透過部2を連続的に製造することができる。
【0019】
具体的には、例えば、図2に示されるように、所定ピッチで光透過部2の形に対応した形の溝を有する金型ロール10と、ニップロール11との間に基材1を送り込む。図1中の矢印は、基材1を送り込む方向を表したものである。基材1の送り込みに合わせて、金型ロール10と基材1との間に供給部12から例えば紫外線硬化型樹脂等を含む光透過部形成用組成物13の液滴を供給し続ける。供給部12から基材1上に光透過部形成用組成物13を供給するとき、金型ロール10と基材1との間に、光透過部形成用組成物13が溜まった組成物溜まり14が形成されるようにする。この組成物溜まり14を形成することによって、光透過部形成用組成物13が基材1の幅方向に広がる。
【0020】
上記のようにして金型ロール10と基材1との間に供給された光透過部形成用組成物13は、金型ロール10とニップロール11との間の押圧力により、基材1と金型10との間に充填される。その後、電離放射線照射装置15によって光透過部形成用組成物13に紫外線を照射し、光透過部形成用組成物13を硬化させて、光透過部2を形成する。光透過部2を形成した後、剥離ロール16を介して、金型ロール10から光透過部2を引き剥がす。
【0021】
金型ロール10に送り込まれる基材1は、図3に示されるように粘着層6および剥離層7を備えていてもよい。粘着層6は、コントラスト向上シートを表示装置の表示部に接着させるためのものである。粘着層6に用いられる粘着剤は光を透過するとともに、適切に光学シートを他に接着させることができれば、その材料は特に限定されるものではない。粘着剤としては、例えばアクリル系の共重合体を挙げることができる。
【0022】
剥離層7は、取扱時に粘着層6が他に接触しないようにするためのものであり、粘着層6上に形成されている。剥離層7としては、特に限定されるものではないが、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂等が挙げられる。
【0023】
なお、次のインキ組成物の充填工程の前に、光透過部2の溝2aの表面に親水化処理を行っておくことが好ましい。溝2aの表面を親水化処理を行うことにより、溝2aへインキ組成物をより充填し易くなり、インキ充填率が向上する。親水化処理は、従来公知の方法を好適を用いて行うことができる。例えば、低圧プラズマ処理、大気圧プラズマ処理、コロナ処理、紫外線照射処理、エキシマランプ処理等のドライプロセスや、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、エタノールアミン等によるアルカリ処理等のウエットプロセスが挙げられる。これらの中でも、大気圧プラズマ処理が、製造効率の観点から好ましい。
【0024】
基材1上に光透過部2を形成した後、溝2a内にインキ組成物3を充填する(図1(b))。図4は本実施形態に係るインキ組成物の充填工程を模式的に示した図であり、図5は本実施形態に係る掻取部の断面図であり、図6は本実施形態に係る掻取部の側面図であり、図7は本実施形態に係る掻取部材による掻き取りの様子を模式的に示した図である。なお、図4中の矢印Aは光透過部の移動方向を表すものであり、矢印Bはインキ組成物の循環方向を表すものである。
【0025】
まず、溝2a内にインキ組成物3を充填するための充填装置について説明する。充填装置は、図4に示されるように、主に、供給部30と、掻取部40と、インキ循環系50と、搬送系(図示せず)とを備えている。
【0026】
供給部30は、インキ組成物3を光透過部2の表面2bに供給するためのものである。供給部30は、光透過部2の幅方向においてインキ組成物3を均一に供給できるものであることが好ましい。
【0027】
供給部30としては、ダイコーター、バーコーター、ロールコーター、またはナイフコーターが挙げられるが、これらの中でも、光透過部2の幅方向においてインキ組成物3を光透過部2の表面2bに均一に供給できるダイコーターが好ましい。
【0028】
掻取部40は、光透過部2の表面2b上に供給されたインキ組成物3を掻き取るためのものである。掻取部40は、光透過部2の表面2bに供給されたインキ組成物3を実際に掻き取る掻取部材41と、掻取部材41を保持するホルダ42と、掻取部材41の剛性を高める当板43とを備えている。
【0029】
掻取部材41は、供給部30によるインキ組成物3の供給位置よりも下流側に配置されている。すなわち、例えば掻取部材41は、供給部30よりも下流側に配置されている。また、掻取部材41は、溝2aの延在方向と直交するように配置されている。
【0030】
掻取部材41は薄板状のものであり、掻取部材41の厚さは約200μm程度とすることができる。掻取部材41としては例えばドクターブレード等を用いることができる。掻取部材41は、少なくとも1枚の掻取部材から構成されていればよいが、2枚の掻取部材から構成されていることが好ましい。本実施形態では、図5に示されるように、掻取部材41が、第1の掻取部材44と、光透過部2の移動方向に対して第1の掻取部材41よりも下流に位置する第2の掻取部材45とから構成されている例について説明する。
【0031】
第1の掻取部材44および第2の掻取部材45は、以下の理由から、第2の掻取部材45の先端45aが第1の掻取部材44の先端44aよりも0.3mm以上0.5mm未満突き出るように設定した状態で、第1の掻取部材44の先端44aが光透過部2の表面2bに接触するように、かつ第2の掻取部材45の先端45aが光透過部2の表面2bに接触しないように配置されていることが好ましい。ここで、第2の掻取部材45の先端45aが、第1の掻取部材44の先端44aよりも0.3mm以上0.5mm未満突き出ているとは、図5に示される長さLが0.3mm以上0.5mm未満であることを意味する。
【0032】
例えば、第2の掻取部材45の先端45aが第1の掻取部材44の先端44aよりも0.5mm以上突き出るように設定して、第1の掻取部材44の先端44aが光透過部2の表面2bに接触せず、かつ第2の掻取部材45の先端45aが光透過部2の表面2bに接触するように第1の掻取部材44および第2の掻取部材45を配置すると、第1の掻取部材44と光透過部2の表面2bとの間の隙間に、インキ組成物3が滞留し、または詰まってしまい、インキ組成物3の濃度ムラが形成され、これにより、後述する光吸収部4にスジ不良が発生するおそれがある。
【0033】
また、第2の掻取部材45の先端45aが第1の掻取部材44の先端44aよりも0.3mm未満突き出るように設定して、第1の掻取部材44の先端44aが光透過部2の表面2bに接触し、かつ第2の掻取部材45の先端45aが光透過部2の表面2bに接触しないように第1の掻取部材44および第2の掻取部材45を配置すると、第2の掻取部材45による掻き取り性が劣り、光透過部2上にインキ組成物3が残存するという現象(黒スジ不良)が発生するおそれがある。
【0034】
さらに、第2の掻取部材45の先端45aが第1の掻取部材44の先端44aよりも0.3mm以上0.5mm未満突き出るように設定した場合であっても、第1の掻取部材44の先端44aが光透過部2の表面2bに接触し、かつ第2の掻取部材45の先端45aが光透過部2の表面2bに接触するように第1の掻取部材44および第2の掻取部材45を配置すると、第1の掻取部材44が光透過部2の表面2bに押し込まれた状態となるので、第2の掻取部材45による掻き取り性が劣り、黒スジ不良が発生するおそれがある。
【0035】
これに対し、第1の掻取部材44および第2の掻取部材45は、第2の掻取部材45の先端45aが第1の掻取部材44の先端44aよりも0.3mm以上0.5mm未満突き出るように設定された状態で、第1の掻取部材44の先端44aが光透過部2の表面2bに接触するように、かつ第2の掻取部材45の先端45aが光透過部2の表面2bに接触しないように配置された場合には、第1の掻取部材44と光透過部2の表面2bとの間の隙間に、インキ組成物3が滞留または詰まることもなく、また第2の掻取部材45による掻き取り性が向上するので、スジ不良および黒スジ不良の両方の発生を抑制することができる。
【0036】
図5に示される第1の掻取部材44と第2の掻取部材45との間隔dは、0.05〜2mmであることが好ましい。この数値範囲が好ましいとしたのは、この間隔dが0.05mm未満であると、第1の掻取部材44と第2の掻取部材45が重なってしまい、インキ組成物3の掻き取りが不十分となるおそれがある。またこの間隔dが2mmを超えると、第1の掻取部材44と第2の掻取部材45の間にインキ組成物3が詰まってしまい、スジの原因となるおそれがあるからである。
【0037】
図5に示される光透過部2の表面2bに対する第1の掻取部材44および第2の掻取部材45の角度α、βは、40°以上70°以下であることが好ましく、50〜65°であることがより好ましい。この数値範囲が好ましいとしたのは、角度α、βが40°未満であると、インキ組成物3の掻き取りが不十分となるおそれがあるからであり、また角度α、βが70°を超えると、第1の掻取部材44および第2の掻取部材45による掻き取り効率は向上するものの、インキ組成物3に接触する第1の掻取部材44および第2の掻取部材45の面積が小さくなるので、黒スジ不良が発生するおそれがあるからである。
【0038】
当板43は、第2の掻取部材45に接し、かつ第2の掻取部材45とホルダ42との間に配置されている。当板43は第2の掻取部材45の剛性を高めることができる材料から構成されていればよく、例えば厚さ600μmのステンレス鋼等から構成することができる。
【0039】
当板43は、第2の掻取部材45の突出し量が1〜10mmとなるように配置されていることが好ましく、さらに3〜7mmとなるように配置されていることがより好ましい。「突出し量」とは、第2の掻取部材45における当板43により覆われていない部分の縦方向の長さ、すなわち、図5に示される当板43の下端から第2の掻取部材45の先端45aまでの長さLを意味する。
【0040】
ホルダ42は、図4および図6に示されるように、掻取部材41を保持する保持部46と、保持部46の幅方向における両方の端部46aに設けられ、保持部46の端部46aよりも上流側に突き出た堰部47とを備えている。堰部47は、後述するインキ溜まり3aを保持するためのものである。堰部47を設けることにより、効率良くインキ溜まり3aを保持することができる。
【0041】
堰部47は、インキ溜まり3aを構成するインキ組成物3の一部を吸引するための吸引孔47aを有している。吸引孔47aの直径は、10〜16mmであることが好ましい。この数値範囲が好ましいとしたのは、この直径が10mm未満であると、インキ組成物3を吸引するのに多大な時間を要するからであり、またこの直径が16mmを超えると、過剰にインキ組成物3を吸引してしまうからである。
【0042】
吸引孔47aは堰部47の底面47bおよび側面のいずれかに形成されているが、インキ溜まり3aの液面安定性を考慮すると、堰部47の底面47bに形成されていることが好ましい。図6においては、吸引孔47aは堰部47の底面47bから堰部47の外側側面47cに形成されており、底面47b側から吸引されたインキ組成物3は外側側面47cから排出されるようになっている。また、図6に示されるように、吸引孔47aが堰部47の底面47bに形成されている場合には、堰部47は、インキ組成物3を吸引可能なように堰部42の底面47bと光透過部2の表面2bとの間に若干隙間を有するよう配置されることが好ましい。
【0043】
吸引孔47aには、図4に示されるインキ循環系50が接続されている。インキ循環系50は、エア吸引クリーナ等のクリーナ51、ダイアフラムポンプ等のポンプ52、53、混合タンク54、未使用インキ組成物貯留タンク55およびフィルタ56等を備えている。
【0044】
クリーナ51は、インキ組成物3を吸引するためのものであり、ポンプ52の前段に配置されている。ポンプ52は、クリーナ51内のインキ組成物3を搬送し、混合タンク54に送出するためのものである。混合タンク54は、回収された使用済みのインキ組成物3と、未使用インキ組成物貯留タンク55に貯留されている未使用のインキ組成物3とを混合するためのものである。
【0045】
混合タンク54においては、使用済みのインキ組成物3と、未使用のインキ組成物3とは、混合比が1:4〜4:1となるように混合されることが好ましい。また、混合タンク54においては、混合後のインキ組成物3の粘度が好ましくは2500〜5000mPa・sとなるように、より好ましくは3000〜4000mPa・sとなるようにインキ組成物3の粘度が調整される。この数値範囲が好ましいとしたのは、インキ組成物3の粘度が2500mPa・s未満であると、溝にインキ組成物3が充填させることが困難となるおそれがあり、またインキ組成物3の粘度が5000mPa・sを超えると、インキ組成物3を吸引することが困難となるおそれがある。なお、インキ組成物の粘度は、B型粘度計を用いて25℃の環境下にて測定した値を意味するものとする。
【0046】
ポンプ53は、混合タンク54内の混合後のインキ組成物3を供給部30に送出するためのものであり、フィルタ56はポンプ53と供給部30との間に介在している。搬送系は、光透過部2を搬送するためのものであり、例えば搬送ロール等から構成されている。
【0047】
次に、インキ組成物3について説明する。インキ組成物3は、透明な電離放射線樹脂組成物と光吸収粒子とを含むものである。電離放射線硬化型樹脂組成物としては、従来公知の視認性向上シートや視野角向上シート等に用いられる電離放射線硬化型樹脂組成物を用いることができる。例えば、アクリレート系の官能基を有するものを好適に使用することができ、具体的には、比較的低分子量のポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、アルキッド樹脂、スピロアセタール樹脂、ポリブタジェン樹脂、ポリチオールポリエン樹脂、多価アルコール等の多官能化合物の(メタ)アルリレート等のオリゴマー又はプレポリマーを挙げることができる。なお、視認性向上シートの光透過部を構成する材料にもよるが、これらの樹脂のなかなら光透過部を構成する材料よりも屈折率の小さい樹脂を選択すればよい。
【0048】
また、上記樹脂組成物中には、反応性希釈剤を添加してもよく、このような反応性希釈剤としては、エチル(メタ)アクリレート、エチルヘキシル(メタ)アクリレート、スチレン、メチルスチレン、N−ビニルピロリドン等の単官能モノマー並びに多官能モノマーを使用してもよく、具体的は、リメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオール(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0049】
電離放射線硬化型樹脂組成物を紫外線硬化型樹脂組成物とするには、組成物中に光重合開始剤としてアセトフェノン類、ベンゾフェノン類、ミヒラーベンゾイルベンゾエート、α−アミロキシムエステル、テトラメチルチュウラムモノサルファイド、チオキサントン類や、光増感剤としてn−ブチルアミン、トリエチルアミン、ポリ−n−ブチルホソフィン等を混合して用いることができる。特に本発明では、オリゴマーとしてウレタンアクリレート、モノマーとしてジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等を混合するのが好ましい。
【0050】
光吸収粒子としては、樹脂ビーズやガラスビーズに、映像光の特性に合わせて特定の波長を選択的に吸収できる光吸収粒子を使用してもよく、カーボンブラック、グラファイト、繊維状炭素、黒色酸化鉄等の金属塩、染料、顔料等の着色剤を練り込んだものを使用することができる。着色剤の練り込み易さの観点からは、樹脂ビーズを用いることが好ましい。樹脂ビーズとしては、メラミンビーズ、アクリルビーズ、アクリル−スチレンビーズ、ポリカーボネートビーズ、ポリエチレンビーズ、ポリスチレンビーズ、塩ビビーズ等を好適に使用することができる。また、ウレタン架橋微粒子やシリコン系ビーズも好適に使用できる。これらの樹脂ビーズは、上記した電離放射線硬化型樹脂組成物の屈折率差が0.1程度のものを用いることが好ましい。また、着色剤を練り込む前の樹脂としては、透明な樹脂でも使用できるが、顔料または染料等で着色された樹脂を用いることが好ましいく、映像光の特性に合わせて特定の波長を選択的に吸収するものであってよいが、好ましくは黒色に着色された樹脂ビーズが用いられる。
【0051】
着色剤としては、上記したもののなかでもカーボンブラックが好適に使用できる。樹脂ビーズへのカーボンブラックの練り込み量は、樹脂ビーズ1質量部に対してカーボンブラックを0.1〜0.7質量部程度であり、好ましくは0.15〜0.5質量部、より好ましくは0.2〜0.35質量部である。カーボンブラックの練り込み量が0.7質量部よりも多いと樹脂ビーズが割れやすくなる場合があり、一方、0.1質量部よりも少ないと、所望の黒色性を有する光吸収粒子を得られない場合がある。また、カーボンブラックは、平均粒子径が10〜500nmのものを好適に使用することができ、例えば、ファーネスブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック、サーマルブラック、カーボンナノチューブ、カーボンファイバー等が使用できる。また、市販のものを使用することもでき、例えば、HCFシリーズ、MCFシリーズ、RCFシリーズ、LFFシリーズ(いずれも三菱化学株式会社製)、バルカンシリーズ(キャボット社製)、ケッチェンシリーズ(ライオン株式会社製)を好適に使用することができる。なお、ここでの平均粒子径とは、カーボンブラック粒子を電子顕微鏡で観察して求めた算術平均径を意味する。
【0052】
電離放射線硬化型樹脂組成物への光吸収粒子の分散性を向上させるために、光吸収粒子を表面処理しておくこともできる。表面処理としては、従来公知のシリカコーティングによる親水処理や、プラズマ等による表面改質が挙げられる。
【0053】
上記した各成分を含むインキ組成物3は、電離放射線硬化型樹脂組成物に、所定量の光吸収粒子を混合し、所望により重合開始剤等を添加することにより調製される。光吸収粒子の添加量は、インキ組成物の全質量に対して15〜35%の範囲とすることが好ましく、この範囲とすることにより、よりコントラストに優れるコントラスト向上シートを実現することができる。光吸収粒子の含有量が少なすぎると、光吸収部の光遮光性が不十分となる場合があり、光吸収粒子の含有量が多すぎると、樹脂ビーズどうしが接触し割れや欠けの問題が発生し易くなる。
【0054】
このような充填装置およびインキ組成物3を使用して、光透過部2の溝2aにインキ組成物3を充填する。
【0055】
具体的には、まず、図4に示されるように、供給部30および掻取部40に対して、搬送系によりシート状の光透過部2を基材1とともに移動させながら、光透過部2の表面2bに供給部30からインキ組成物3を連続的に供給し、供給部30の下流に位置する掻取部40により光透過部2の表面2b上のインキ組成物3を掻き取る。これにより、溝2aにインキ組成物3が充填されるとともに、光透過部2の表面2bに存在する余剰のインキ組成物3が掻き取られる。
【0056】
ここで、インキ組成物3の供給は、図7に示されるように、第1の掻取部材44の上流側かつ第1の掻取部材44の直近にインキ組成物を含むインキ溜まり3aが形成されるように行われる。具体的には、インキ溜まり3aは、供給部30から比較的過剰にインキ組成物3を光透過部2の表面2bに供給することにより形成される。図7に示した矢印は、光透過部2の移動方向を表したものである。
【0057】
また、供給部30からのインキ組成物3の供給および掻取部40によるインキ組成物3の掻き取りを行いながら、インキ溜まり3aを構成するインキ組成物3の一部を堰部47の吸引孔47aを介してポンプ52により吸引する。堰部47の吸引孔47aから吸引された使用済みのインキ組成物3は、ポンプ52により、混合タンク54に送られる。
【0058】
混合タンク54に送られた使用済みのインキ組成物3は、混合タンク54にて、未使用のインキ組成物3と混合され、その後、ポンプ53によりフィルタ56を介して供給部30に送られる。そして、再び、供給部30から光透過部2の表面2bに供給される。
【0059】
溝2aにインキ組成物3を充填した後、電離放射線を放射して、溝2a内のインキ組成物3を硬化させて、略台形の断面形状を有する光吸収部4を形成する(図1(c))。これにより、コントラスト向上シート5が作製される。インキ組成物3の硬化方法としては、通常の硬化方法、即ち、電子線又は紫外線の照射によって硬化することができる。例えば、電子線硬化の場合には、コックロフトワルトン型、バンデグラフ型、共振変圧型、絶縁コア変圧器型、直線型、ダイナミトロン型、高周波型等の各種電子線加速機から放出される50〜1000keV、好ましくは100〜300keVのエネルギーを有する電子線等が使用され、紫外線硬化の場合には超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボンアーク、キセノンアーク、メタルハライドランプ等の光線から発する紫外線等が利用できる。
【0060】
インキ溜まりを形成すると、時間が経つにつれてインキ溜まりを構成するインキ組成物の粘度が上昇し、またはインキ溜まり中に粘度ムラが生じてしまい、これらが充填ムラおよびスジ不良の一因となると考えられる。これに対し、本実施形態によれば、インキ組成物3を連続的に供給しながら、インキ溜まり3aを構成するインキ組成物3の一部を吸引するので、インキ溜まり3aを構成するインキ組成物3の粘度上昇および粘度ムラを抑制することができる。これにより、充填ムラおよびスジ不良を低減することができる。
【0061】
インキ溜まりを構成するインキ組成物の粘度上昇は、インキ組成物の短寿命化引き起こすが、本実施形態によれば、インキ溜まり3aを構成するインキ組成物3の一部を吸引しているので、インキ組成物3の粘度上昇を抑制することができ、インキ組成物3の長寿命化を図ることができる。
【0062】
<コントラスト向上シート>
上記のようにして得られたコントラスト向上シート5は、基材1と、基材1上に形成され、かつ複数の溝2aを有する光透過部2と、溝2a内に形成された光吸収部4とを備えている。
【0063】
光吸収部4は、光透過部2の屈折率と同じかまたは小さい屈折率を有する。光透過部2と光吸収部4との屈折率が上記のような関係となることにより、所定条件で光透過部2に入射した光源からの映像光を光吸収部4と光透過部2との境界面で適切に反射させ、観測者に明るい映像を提供することができる。また、観測者側からの外光の一部を吸収するため、コントラストも向上する。また、光透過部2と光吸収部4との境界面で反射せずに、光吸収部4の内側に入射した迷光が、光吸収部4中の光吸収材によって吸収される。また、所定角度で入射した観測者側からの外光を適切に吸収することができるため、コントラストを向上させることもできる。
【0064】
また、コントラスト向上シートを2層重ね合わせてもよく、その場合、各コントラスト向上シートで異なった構造となるようにしてもよい。例えば、1層目のコントラスト向上シートと2層目のコントラスト向上シートとで、光吸収部の幅やピッチ、深さ、形状を変えたり、光吸収部の厚み方向の向きを変えたり、映像光に対する光吸収部のバイアス角度(水平方向に対する光吸収部の傾斜角度)を変えたりすることができる。また、光吸収部を形成する材料(樹脂の種類や光吸収粒子の濃度)を変えることもできる。例えば、2層目は効率良く外光をカットし、コントラストの向上を重視した設計とし、2層目は反射を利用した正面輝度向上効果を重視した設計とするような、各層で作用効果を変えることが好ましい。
【0065】
本発明によるコントラスト向上シートは、従来の光学シートや視野角拡大部材に採用されている他の機能層を含んでいてもよい。具体的には、反射防止層、粘着層、電磁波遮蔽層、波長フィルタ層、防眩層、ハードコート層などを適宜組み合わせてもよい。これらの各機能層の積層順や積層数は、用途に応じて適宜決定することができる。
【0066】
本発明によるコントラスト向上シートは、例えば、表示装置の表示部上に配置することができる。具体的には、コントラスト向上シートは、例えば、表示装置用光学フィルタとして使用することができる。表示装置の表示部としては、例えばプラズマディスプレイ、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、電界放出ディスプレイ(FED)、表面伝導型電子放出素子ディスプレイ(SED)、プロジェクションテレビ等が挙げられる。
【0067】
<表示装置用光学フィルタおよび表示装置>
以下、本発明によるコントラスト向上シートを表示装置用光学フィルタとして表示装置の表示部に取り付けた例について説明する。図8は本実施形態に係るコントラスト向上シートを備えた表示装置の断面図である。図8に示される表示装置60は、上記した製造方法により製造されたコントラスト向上シート5を備えている。コントラスト向上シート5は、基材1が映像光源側となるように表示装置60の表示部61に接着層62を介して貼り付けられている。コントラスト向上シート5の前面側には、帯電防止層63、反射防止層64、防眩層65等が配置されている。なお、本実施の形態においては、コントラスト向上シート5の前面に帯電防止層63等が配置されているが、これらに限られず、電磁波、赤外線、またはネオン線を遮断する層を配置してもよい。
【実施例】
【0068】
以下、実施例を示し、本発明を具体的に説明する。本実施例においては、上記実施の形態と同様の方法でコントラスト向上シートを作製し、コントラスト向上シートの外観観察を行った。
【0069】
実施例
<インキ組成物の調製>
光硬化型プレポリマーとして、エポキシアクリレートオリゴマーOxirane,2,2'-[(1-methylethylidene)bis(4,1-phenyleneoxymethylene)]bis-,homopolymer,2-propenoate20.0質量部と、反応性希釈モノマーとして、2−フェノキシエチル=アクリラート20.0質量部、α−アクリロイル−ω−フェノキシポリ(オキシエチレン)20.0質量部、及び2−{2−[2−(アクリロイルオキシ)(メチル)エトキシ](メチル)エトキシ}(メチル)エチル=アクリラート13.0質量部と、光吸収粒子として、平均粒径4.0μmのカーボンブラックを25%含有したアクリル架橋微粒子(ガンツ化成株式会社製)20.0質量部と、光重合開始剤として、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(商品名:イルガキュア184、チバ・スペシャリティケミカルズ株式会社製)7質量部と、を混合し、均一化してインキ組成物を得た。
【0070】
このインキ組成物の25℃での粘度は、4000mPa・sであった。なお、本発明において、粘度は、JIS K-5400の回転粘度計法に基づいて測定した。具体的には、株式会社東京計器製のBL型粘度計、No.4ロータを使用し、25℃で12rpm、1分後の粘度計の指示値を測定し、測定した粘度計指示値に換算乗数(本条件では500)を乗じた値を粘度とした。
【0071】
なお、このインキ組成物の光吸収粒子を除いた組成物を厚さ10μmで塗工し、高圧水銀灯により800mJ/cmの紫外線を照射して硬化させ、多波長アッベ屈折計DR−M4(株式会社アタゴ製)を用いて589nmの屈折率を測定したところ、1.547であった。
【0072】
<光透過部形成用組成物の調整>
ビスフェノールA―エチレンオキシド2モル付加物41質量部、イソホロンジイソシアネート14.0質量部を、およびウレタン化触媒としてビスマストリ(2−エチルヘキサノエート)(2−エチルヘキサン酸50%溶液))0.02質量部を加え、80℃で5時間反応させ、その後、2−ヒドロキシエチルアクリレート5質量部を加え、80℃で5時間反応させて得られたウレタンアクリレート系オリゴマーを、光硬化型プレポリマーとして用いた。このウレタンアクリレート系オリゴマー32、0質量部と、光硬化性モノマーとして、フェノキシエチルアクリレート(分子量192)10.0質量部、およびビスフェノールAのEO4モル付加物のジアクリレート(分子量512)30.0質量と、金型離型剤として、テトラデカノール−エチレンオキシド10モル付加物のリン酸エステル(モノエステル/ジエステル=モル比1/1)0.03質量部と、テアリルアミンエチレンオキシド15モル付加物0.02質量部、光重合開始剤として、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(商品名:イルガキュア184、チバ・スペシャリティケミカルズ株式会社製)3質量部と、を混合し、均一化して光透過部形成用組成物を得た。
【0073】
なお、この光透過部形成用組成物を厚さ100μmで塗工し、高圧水銀灯により800mJ/cmの紫外線を照射して光透過部構成組成物を硬化させ、多波長アッベ屈折計DR−M4(株式会社アタゴ製)を用いて589nmの屈折率を測定したところ、1.550であった。
【0074】
<コントラスト向上シートの作製>
上記、光透過部形成用組成物をポリエチレンテレフタラート基材(東洋紡績株式会社、A4300、100μm)上に供給し、光透過部形成用組成物を硬化させて、表面に複数の溝が並設された光透過部を形成した。
【0075】
次いで、光透過部を基材毎移動させながら、ダイコーターのダイヘッドから、上記で得られたインキ組成物が光透過部の幅方向において均一に供給されるように、光透過部の表面に連続的に供給し、その後、掻取部材としての金属製のドクターブレードを用いて、光透過部の表面のインキ組成物を掻き取った。
【0076】
インキ組成物の供給は、ドクターブレードの上流側かつドクターブレードの直近にインキ溜まりが形成されるように行われた。また、ダイヘッドからのインキ組成物の供給およびドクターブレードによるインキ組成物の掻き取りを行いながら、インキ溜まりを構成するインキ組成物の一部をエア吸引クリーナにより吸引した。そして、吸引された使用済みのインキ組成物を、ポンプにより混合タンクに送り、混合タンクにて、未使用のインキ組成物と混合した。そして、この混合後のインキ組成物を、ポンプによりフィルタを介してダイヘッドに送り、再び、ダイヘッドから光透過部の表面に供給した。
【0077】
光透過部の溝にインキ組成物を充填した後、インキ組成物に紫外線を照射して、インキ組成物を硬化させることにより、光吸収部を形成し、実施例1のコントラスト向上シートを作製した。
【0078】
比較例
まず、実施例1と同様に、実施例1の光透過部形成用組成物をポリエチレンテレフタラート基材(東洋紡績株式会社、A4300、100μm)上に供給し、光透過部形成用組成物を硬化させて、表面に複数の溝が並設された光透過部を形成した。
【0079】
次いで、光透過部を移動させながら、光透過部の中央部付近に配置された1本のノズルから、上記で得られたインキ組成物を光透過部の表面に供給し、その後、金属製のドクターブレードを用いて、光透過部の表面のインキ組成物を掻き取った。
【0080】
インキ組成物は、ドクターブレードの上流側かつドクターブレードの直近にインキ溜まりが形成されるようにノズルから供給されたが、ノズルから連続的に供給せずに、インキ溜まりがなくなり始めたときに、再びインキ組成物を供給した。また、インキ溜まりを構成するインキ組成物を吸引しなかった。
【0081】
光透過部の溝にインキ組成物を充填した後、インキ組成物に紫外線を照射して、インキ組成物を硬化させることにより、光吸収部を形成し、比較例のコントラスト向上シートを作製した。
【0082】
外観観察
このようにして作製された実施例および比較例のコントラスト向上シートの外観を観察したところ、比較例のコントラスト向上シートには、充填ムラおよびスジ不良が観察された。これに対し、実施例のコントラスト向上シートには、充填ムラおよびスジ不良が観察されず、良好な状態であった。
【0083】
これらの結果から、連続的にインキ組成物を供給しながら、インキ溜まりを構成するインキ組成物の一部を吸引した場合には、充填ムラおよびスジ不良が低減できることが確認された。
【符号の説明】
【0084】
1…基材、2…光透過部、2a…溝、2b…表面、3…インキ組成物、3a…インキ溜まり、4…光吸収部、5…コントラスト向上シート、30…供給部、40…掻取部、41…掻取部材、42…ホルダ、43…当板、44…第1の掻取部材、44a…先端、45…第2の掻取部材、45a…先端、46…保持部、46a…端部、47…堰部、47a…吸引孔、50…インキ循環系、60…表示装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に複数の溝が並設された光透過部と、前記光透過部の前記溝内に形成された光吸収部とを備えるコントラスト向上シートの製造方法であって、
表面に複数の溝が並設されたシート状の光透過部を移動させながら、前記光透過部の前記表面にインキ組成物を連続的に供給し、前記インキ組成物の供給位置よりも下流側に配置された掻取部材の上流側かつ前記掻取部材の直近にインキ組成物を含むインキ溜まりを形成しつつ、前記掻取部材により前記光透過部の表面上の前記インキ組成物を掻き取る工程とを備え、
前記インキ溜まりを構成する前記インキ組成物の一部は、吸引され、再び前記光透過部の表面に供給されることを特徴とする、コントラスト向上シートの製造方法。
【請求項2】
吸引された前記インキ組成物が、未使用の前記インキ組成物と混合された後、前記光供給部の表面に供給される、請求項1に記載のコントラスト向上シートの製造方法。
【請求項3】
吸引された前記インキ組成物と、未使用の前記インキ組成物との混合比が1:4〜4:1である、請求項2に記載のコントラスト向上シートの製造方法。
【請求項4】
前記インキ組成物の供給が、前記光透過部の幅方向において均一に前記インキ組成物が供給されるように行われる、請求項1ないし3のいずれか1項に記載のコントラスト向上シートの製造方法。
【請求項5】
前記インキ組成物の供給が、ダイコート方式により行われる、請求項1ないし4のいずれか1項に記載のコントラスト向上シートの製造方法。
【請求項6】
前記掻取部材を保持する保持部と、前記保持部の幅方向における両端部に設けられ、前記保持部の前記両端部よりも上流側に突き出た、前記インキ溜まりを保持するための堰部とを備えるホルダをさらに備えている、請求項1ないし5のいずれか1項に記載のコントラスト向上シートの製造方法。
【請求項7】
前記堰部が、前記堰部の底面に、前記インキ組成物の一部を吸引するため吸引孔を有する、請求項1ないし6のいずれか1項に記載のコントラスト向上シートの製造方法。
【請求項8】
供給される前記インキ組成物の粘度が2500〜5000mPa・sである、請求項1ないし7のいずれか1項に記載のコントラスト向上シートの製造方法。
【請求項9】
前記光透過部の溝の形状が、略台形状、略V字状、または略矩形状である、請求項1ないし8のいずれか1項に記載のコントラスト向上シートの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−150342(P2012−150342A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−9809(P2011−9809)
【出願日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】