説明

コントラスト調整方法

【課題】滑らかに変化する任意のコントラストカーブを用いてコントラストを調整する。
【解決手段】入力するソースにおける黒点と白点と1つ以上の中間点(n個)の明度と、
各点における出力明度と、x軸を入力明度とすると共にこのx軸に直交するy軸を出力明
度としたときの各点の傾きと、からなるパラメーターを設定し(S200)、黒点から白
点に向けて入力明度の小さい方から順に2点を始点と終点として3次方程式とその微分式
(dy/dx)に代入して4つの式からなる連立方程式を作成し(S210)、この連立
方程式を解いて3次曲線を求め(S220)、各2点間で得られる3次曲線により黒点か
ら白点までを繋いでコントラストカーブとする(S240)。中間点の座標と傾きとを調
整することにより、中間点近傍のコントラストカーブを所望のものに調整し、中間点付近
のコントラストを所望のものとすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コントラスト調整方法に関し、詳しくは、RGBソースに対して、ガンマ変
換、色彩値空間への変換、ガマットマッピングを施して出力デバイスのCMYの出力量を
導出する色変換においてコントラストを調整するコントラスト調整方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の色変換方法としては、RGBソースに対して、ガンマ変換、色彩値空間
への変換、ガマットマッピングを施して出力デバイスのCMYの出力量を導出するものが
提案されている(例えば、特許文献1参照)。この色変換方法では、入力ソースに対する
コントラストの調整は、ガンマ変換によるコントラストカーブにより行なわれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−124243号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述の色変換方法では、RGBソースを入力してプリントすると、好ま
しいコントラストが得られない場合がある。例えば、印刷メディアとして光沢紙を用いる
場合には、良好なコントラストの画像が印刷されるが、普通紙などの明度レンジの狭いメ
ディアを用いると、ガンマ変換によるコントラストカーブだけではコントラストが不足し
、いわゆる「眠い」出力となってしまう。
【0005】
本発明のコントラスト調整方法は、滑らかに変化する任意のコントラストカーブを用い
てコントラストを調整することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のコントラスト調整方法は、上述の主目的を達成するために以下の手段を採った

【0007】
本発明のコントラスト調整方法は、
入力したRGBソースに対して、ガンマ変換、色彩値空間への変換、ガマットマッピン
グを施して出力デバイスのCMYの出力量を導出する色変換においてコントラストを調整
するコントラスト調整方法であって、
黒点と白点と少なくとも一つの中間点との各々に対して、入力明度をx軸とすると共に
出力明度をy軸としたときに、x軸とy軸とを直交させてなるxy平面における座標(x
,y)とxy平面における傾き(g=dy/dx)とをパラメータとして設定し、該設定
したパラメータを満たすように前記黒点と前記白点と前記中間点とを滑らかな曲線により
接続してなるコントラストカーブを設定し、前記設定したコントラストカーブを用いたコ
ントラスト処理をRGBソースに対する前記色彩値空間への変換とガマットマッピングと
の間で施す、
ことを特徴とする。
【0008】
この本発明のコントラスト調整方法では、黒点と白点と少なくとも一つの中間点に所望
のパラメータを設定することにより、パラメータを満たすように黒点と白点と少なくとも
一つの中間点とを滑らかな曲線により接続してなるコントラストカーブを設定し、この設
定したコントラストカーブを用いたコントラスト処理をRGBソースに対する色彩値空間
への変換とガマットマッピングとの間で施すことにより、所望のコントラストの出力を得
ることができる。したがって、普通紙などの明度レンジの狭いメディアに対しては入力明
度に対して中間層で出力明度が立ち上がるように中間点の座標と傾きとを設定することに
より、コントラストの高い見栄えのする出力とすることができる。なお、「CMYの出力
量」には、シアン,マゼンタ,イエローの3色(CMY)の出力量だけでなく、シアン,
マゼンタ,イエロー,ブラックの4色(CMYK)の出力量も含まれる。
【0009】
こうした本発明のコントラスト調整方法において、前記滑らかな曲線は複数の数学的な
曲線を連結してなるものとすることもできる。この場合、前記滑らかな曲線は複数の3次
元曲線を連結してなるものとすることができ、更にこの場合、前記滑らかな曲線は、前記
黒点から前記中間点を経由して前記白点に亘る各点において、始点として選択する点のパ
ラメータを(xs、ys、gs)とし、終点として次に選択する点のパラメータを(xe
、ye、ge)としたときに、該パラメータを次式(1),(2)に代入して得られる式
(3)〜(6)の4つの式からなる連立方程式の解から得られる3次曲線で該2点を結ぶ
曲線として連結してなるものとすることもできる。こうすれば、容易に黒点から少なくと
も一つの中間点と白点とを連続する滑らかな曲線を得ることができる。
【0010】
y=ax3+bx2+cx+d (1)
g=3ax2+2bx+c (2)
ys=a(xs)3+b(xs)2+c(xs)+d (3)
gs=3a(xs)2+2b(xs)+c (4)
ye=a(xe)3+b(xe)2+c(xe)+d (5)
ge=3a(xe)2+2b(xe)+c (6)
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】コントラスト調整方法を用いた色変換処理を示すフローチャート。
【図2】コントラストカーブ作成処理の一例を示すフローチャート。
【図3】1つの中間点を用いたコントラストカーブの作成の様子を示す説明図。
【図4】中間点の傾きによりコントラストが変化する様子を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、本発明を実施するための実施形態について説明する。図1は、本発明の一実施形
態としてのコントラスト調整方法を用いた色変換処理を示すフローチャートである。実施
形態の色変換処理は、図示するように、加色法の3原色であるレッド,グリーン,ブルー
(RGB)により表わされる色データとしてのRGBソースを入力すると、RGBソース
に対してガンマ変換により明るさの補正を行ない(ステップS100)、ガンマ変換後の
RGBによるXYZ座標の色を色彩値空間(例えば、Lab空間)に変換し(ステップS
110)、後述するコントラストカーブ作成処理により作成したコントラストカーブを用
いてコントラスト調整を行ない(ステップS120)、このコントラスト調整を行なった
色彩値空間の色をガマットマッピングにより色彩値空間におけるプリンターなどの減色法
の3原色であるシアン,マゼンタ,イエロー(CMY)やこれにブラック(K)を用いる
出力デバイスの色再現域に変換し(ステップS130)、これを出力デバイスのCMYの
各出力量(CMY出力量)またはCMYKの各出力量(CMYK出力量)に変換し(ステ
ップS140)、これを出力することにより行なう。ガンマ変換や色彩値空間への変換、
ガマットマッピング、CMYやCMYKへの変換については、周知の技術を用いており、
本発明の中核をなさないため、これ以上の詳細な説明は省略する。
【0013】
次に、ステップS120で用いるコントラストカーブの作成について図2に例示するコ
ントラストカーブ作成処理を用いて説明する。コントラストカーブ作成処理は、まず、入
力するソースにおける黒点と白点と1つ以上の中間点(n個)の明度の座標(xb,xw
,x1,x2,・・・,xn)と、各点における出力明度(yb,yw,y1,y2,・
・・,yn)と、x軸を入力明度とすると共にこのx軸に直交するy軸を出力明度とした
ときの各点の傾き(gb,gw,g1,g2,・・・,gn)と、からなるパラメーター
を設定する(ステップS200)。この黒点、白点、n個の中間点のパラメータ(入力明
度,出力明度,傾き)は任意である。
【0014】
次に、黒点から白点に向けて入力明度の小さい方から順に2点を始点(xs,ys,g
s)と終点(xe,ye,ge)として選択し、次式(1),(2)に代入して式(3)
〜(6)の4つの式を連立方程式として作成し、この連立方程式を解いて3次曲線を設定
する処理(ステップS210,S220)を終点が白点に至るまで繰り返し(ステップS
230)、終点が白点に至ると、得られた全ての3次曲線を対応する2点に描くことによ
り結んでコントラストカーブを作成して(ステップS240)、処理を終了する。
【0015】
y=ax3+bx2+cx+d (1)
g=3ax2+2bx+c (2)
ys=a(xs)3+b(xs)2+c(xs)+d (3)
gs=3a(xs)2+2b(xs)+c (4)
ye=a(xe)3+b(xe)2+c(xe)+d (5)
ge=3a(xe)2+2b(xe)+c (6)
【0016】
図3に、黒点(xb,yb,gb)と1つの中間点(x1,y1,g1)と白点(xw
,yw,gw)を用いてコントラストカーブを作成している様子を示す。図中、曲線L1
は、黒点と中間点とを結ぶと共に、黒点の傾きが「gb」であり、且つ、中間点の傾きが
「g1」となる3次曲線であり、曲線L2は、中間点と白点とを結ぶと共に、中間点の傾
きが「g1」であり、且つ、白点の傾きが「gw」となる3次曲線である。二つの曲線L
1,L2は、中間点において共に傾きが「g1」となっているから、中間点において滑ら
かに繋がれている。したがって、中間点の傾きを変えることにより、中間点近傍のコント
ラストを調整することができる。
【0017】
図4に、中間点の傾きによりコントラストが変化する様子を示す。図中、実線の曲線L
1,L2は上述した図3に示したものと同じであり、一点鎖線の曲線L3,L4は、中間
点の傾きを「g1」より小さな「g2」としたときに上述の式(1)〜(6)により得ら
れる黒点と中間点とを結ぶ3次曲線および中間点と白点とを結ぶ3次曲線である。図示す
るように、実線の曲線L1,L2からなるコントラストカーブを用いると、入力明度のL
in1〜Lin2の範囲が出力明度のLo121〜Lo122の範囲となり、一点鎖線の
曲線L3,L4からなるコントラストカーブを用いると、入力明度のLin1〜Lin2
の範囲が出力明度のLo121〜Lo122の範囲より狭いLo341〜Lo342の範
囲となる。したがって、実線の曲線L1,L2からなるコントラストカーブを用いた場合
の方が一点鎖線の曲線L3,L4からなるコントラストカーブを用いた場合に比して入力
明度のLin1〜Lin2の範囲に対してコントラストの高いものとすることができる。
【0018】
以上説明した実施形態のコントラスト調整方法によれば、中間点の傾きを調整すること
により、中間点近傍のコントラストを所望のコントラストに調整することができる。この
結果、普通紙などの明度レンジの狭いメディアに対しては入力明度に対して中間層で出力
明度が立ち上がるように中間点の座標と傾きとを設定することにより、コントラストの高
い見栄えのする出力とすることができる。
【0019】
実施形態のコントラスト調整方法では、黒点から白点に向けて入力明度の小さい方から
順に2点を順に3次曲線により繋ぐものとしたが、黒点から白点に向けて入力明度の小さ
い方から順に2点を順に4次曲線以上のn次曲線により繋ぐものとしたり、ベゼー曲線な
どのn次曲線以外の曲線を用いて繋ぐものとしてもよい。
【0020】
以上、本発明を実施するための実施形態について説明したが、本発明はこうした実施形
態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる
形態で実施し得ることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0021】
本発明は、色変換を伴う装置の製造産業などに利用可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力したRGBソースに対して、ガンマ変換、色彩値空間への変換、ガマットマッピン
グを施して出力デバイスのCMYの出力量を導出する色変換においてコントラストを調整
するコントラスト調整方法であって、
黒点と白点と少なくとも一つの中間点との各々に対して、入力明度をx軸とすると共に
出力明度をy軸としたときに、x軸とy軸とを直交させてなるxy平面における座標(x
,y)とxy平面における傾き(g=dy/dx)とをパラメータとして設定し、該設定
したパラメータを満たすように前記黒点と前記白点と前記中間点とを滑らかな曲線により
接続してなるコントラストカーブを設定し、前記設定したコントラストカーブを用いたコ
ントラスト処理をRGBソースに対する前記色彩値空間への変換とガマットマッピングと
の間で施す、
ことを特徴とするコントラスト調整方法。
【請求項2】
請求項1記載のコントラスト調整方法であって、
前記滑らかな曲線は、複数の数学的な曲線を連結してなる、
コントラスト調整方法。
【請求項3】
請求項2記載のコントラスト調整方法であって、
前記滑らかな曲線は、複数の3次元曲線を連結してなる、
コントラスト調整方法。
【請求項4】
請求項3記載のコントラスト調整方法であって、
前記滑らかな曲線は、前記黒点から前記中間点を経由して前記白点に亘る各点において
、始点として選択する点のパラメータを(xs、ys、gs)とし、終点として次に選択
する点のパラメータを(xe、ye、ge)としたときに、該パラメータを次式(1),
(2)に代入して得られる式(3)〜(6)の4つの式からなる連立方程式の解から得ら
れる3次曲線で該2点を結ぶ曲線として連結してなる、
コントラスト調整方法。
y=ax3+bx2+cx+d (1)
g=3ax2+2bx+c (2)
ys=a(xs)3+b(xs)2+c(xs)+d (3)
gs=3a(xs)2+2b(xs)+c (4)
ye=a(xe)3+b(xe)2+c(xe)+d (5)
ge=3a(xe)2+2b(xe)+c (6)

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−211504(P2011−211504A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−77493(P2010−77493)
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】