説明

コンニャク芋乾燥組成物及びその製造方法

【課題】コンニャク由来の粗粉に含まれる夾雑物の除去と、コンニャク由来の蛋白質やマンナンを可溶化して高付加価値を付与したコンニャク関連食品を提供する。
【解決手段】コンニャク粗粉をヘミセルラーゼ及びペクチナーゼで処理する工程と、コンニャク粗粉をプロテアーゼで処理する工程と、ヘミセルラーゼ、ペクチナーゼ及びプロテアーゼ処理液をろ過する工程と、得られたろ液を乾燥する工程とを含むコンニャク芋乾燥組成物の製造方法を提供する。これまで有効活用されていなかったコンニャクくず芋又はコンニャク余剰種芋やコンニャクトビ粉の有効活用を図ることが可能となった。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンニャク芋、コンニャク荒粉又はコンニャクトビ粉を原料として得られるコンニャク芋乾燥組成物とその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コンニャク芋は、種々の糖類や蛋白質を含むことが知られている。なかでも、コンニャク精粉の製造工程で発生するコンニャクトビ粉は、コンニャク芋の皮に由来するもので、蛋白質を含め有用な成分を多く含むことが知られている(非特許文献1)。しかし、コンニャク芋は、マンナンを主成分とするコンニャク精粉が食用コンニャクの原料として利用されるだけで、蛋白質を含んだコンニャクトビ粉は、表皮の不純物やくず芋、余剰種芋等も含まれているために食用としては利用されず、飼料増量剤や有機肥料として利用されているにすぎない。
また、特許文献1は、コンニャク芋を有機溶媒等で抽出して得られる抗酸化物を含む組成物を開示している。
【0003】
【非特許文献1】日本食品科学工学会誌、第48巻、第12号、943〜947(2001年)
【特許文献1】特開2005−168352号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述したように、コンニャクトビ粉は有用な成分を多く含んでおり、特に、蛋白質やマンナン以外の多糖を多く含んでいることから、粉砕した粉末を食用に供することが試みられていた。しかし、コンニャクトビ粉には土等の夾雑物が多く含まれ、この夾雑物と粉を分離するためにコストがかかるため、現実的な有効活用とはなっていない。
また、コンニャクトビ粉から抗酸化剤等の有効成分を抽出する技術は、コンニャクトビ粉の大部分を占める蛋白質(約20%含有)やマンナン以外の多糖類(炭水化物として約65%含有)を利用することができず、有用成分の活用という観点からは改善の余地がある。
本発明は、これらの問題を鑑み、これまで食用に供されることのなかったくず芋、余剰種芋、コンニャクトビ粉等の有効利用を図り、高付加価値を付与したコンニャク関連食品とその製造方法を提供することにある。
【0005】
本発明者らは、コンニャク芋の乾燥粗砕品の荒粉や皮、くず芋、余剰種芋等を乾燥、粉砕したトビ粉に多く含まれるマンナン以外の多糖類と蛋白質の有効活用を目的に研究を進めたところ、コンニャク由来の粗粉をヘミセルラーゼで処理すると溶液の粘性は低下するが、コンニャク由来の粗粉に含まれる夾雑物と蛋白質及び酵素処理で得られたオリゴ糖との分離が困難になるという問題に直面した。夾雑物を含んだまま利用すると、土や黒褐色異物を含んでいる為に食品として使用するには問題がある。
すなわち、本発明が解決しようとする技術的課題は、コンニャク由来の粗粉に含まれるコンニャク由来の蛋白質やマンナンを液化してから夾雑物をろ過して除去し、高付加価値を付与したコンニャク関連食品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、コンニャク粗粉をヘミセルラーゼ及びペクチナーゼで処理する工程と、コンニャク粗粉をプロテアーゼで処理する工程と、ヘミセルラーゼ、ペクチナーゼ及びプロテアーゼ処理液をろ過する工程と、得られたろ液を乾燥する工程とを含むコンニャク芋乾燥組成物の製造方法を提供する。
さらに、本発明は、コンニャク粗粉をヘミセルラーゼ及びペクチナーゼで処理する工程と、コンニャク粗粉をプロテアーゼで処理する工程と、ヘミセルラーゼ、ペクチナーゼ及びプロテアーゼ処理液をろ過する工程と、得られたろ液を乾燥する工程により得られるコンニャク芋乾燥組成物を提供する。
【発明の効果】
【0007】
本発明のコンニャク芋乾燥組成物の製造方法は、コンニャク由来の粗粉に含まれる夾雑物を取り除くことができ、さらにこれまで食用に供されることの少なかったマンナン以外のヘミセルロースと蛋白質を有効に活用することが可能となる。
本発明のコンニャク芋乾燥組成物は、オリゴ糖や蛋白質やペプチドを含むのでサプリメントとして、あるいは他の食品、例えば米、麺類やパン類等の栄養補助・強化剤として添加して使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下に、本発明のコンニャク芋乾燥組成物の製造方法の工程概要を説明する。
本発明で用いるコンニャク由来の粗粉とは、コンニャク芋の荒粉、また、くず芋や皮及び余剰種芋を含んだトビ粉である。
コンニャク荒粉は、芋を水洗いし、輪切りにして乾燥後、粗粉砕したものであり、「荒粉」「あらこん」と称されている。
コンニャク芋のトビ粉は荒粉から分離した皮部分や、くず芋や余剰種芋等を水洗いし、輪切りにして乾燥後粉砕した食用には適さない部分をいう。
これらのコンニャクイモの粗粉を以下の工程に沿って処理し、コンニャク芋乾燥組成物とする。
【0009】
(1)酵素溶液の調整
コンニャク由来の粗粉の5〜20倍重量の水をpH調整して、ヘミセルラーゼ、ペクチナーゼを添加し、酵素溶液とする。pH調整の範囲は、特に限定されるものではなく、ヘミセルラーゼ、ペクチナーゼの至適pHを考慮して決められるがpH3〜6が好ましい。また、pH調整剤も特に限定されるものではなく、食品のpH調整に用いられるものが好ましい。
【0010】
(2)ヘミセルラーゼ、ペクチナーゼ処理
得られた酵素溶液にコンニャク由来の粗粉を徐々に加え、反応温度40〜50℃で3〜6時間酵素反応を行う。コンニャク由来の粗粉は、少量ずつ加える。一度に添加するとコンニャク由来の粗粉が溶液中で塊となって酵素反応に悪影響を及ぼすので好ましくない。また、反応時間は、コンニャク由来の粗粉の酵素処理量に応じて変更すればよいが、長すぎるとヘミセルロース分解が進み単糖の割合が増えることになる。オリゴ糖までの分解とするのが好ましい。
なお、ヘミセルラーゼのみで処理すると粘性の高い酵素反応液となり、後工程であるろ過に悪影響がある。
反応の終了後は、加熱等によりヘミセルラーゼとペクチナーゼを失活させる。
【0011】
(3)プロテアーゼ処理
ヘミセルラーゼとペクチナーゼ処理液にプロテアーゼを加えて酵素反応を行う。プロテアーゼは特に限定されるものではなく、例えば、酸性プロテアーゼ、中性プロテアーゼあるいはアルカリプロテアーゼを用いることができるが、ヘミセルラーゼとペクチナーゼ処理液が酸性であるので、酸性プロテアーゼが好ましい。例えば、低温域に至適温度範囲がある、例えばニューラーゼが好ましい。酵素処理条件は、使用するプロテアーゼの至適条件を考慮して決定することができる。なお、反応時間は、10〜20時間の範囲である。
反応の終了後は、加熱等によりプロテアーゼを失活させる。
【0012】
(4)ろ過処理
ヘミセルラーゼ、ペクチナーゼ処理とプロテアーゼ処理を施した反応液を冷却した後、ろ過する。ろ過にあたり、パーライト等のろ過助剤を加えた後ろ過してもよい。
(5)乾燥処理
得られたろ液を乾燥して粉末化する。乾燥は、噴霧乾燥、凍結乾燥、加熱減圧乾燥等の手段を用いて行うことができる。なお、乾燥にあたっては、デキストリンで被乾燥物を保護してもよい。
以下、実施例に沿って本発明を説明する。
【実施例1】
【0013】
水900mlを45℃に加温し、クエン酸5g、ヘミセルラーゼ(アマノ製薬、ヘミセルラーゼ「アマノ」90)0.7g及びペクチナーゼLH(ヤクルト社製)0.07gを加えて溶解した後、コンニャク荒粉100gを25gずつ15分間毎に注加した。なお、コンニャク荒粉は、コンニャク芋を水洗いし、輪切りにして乾燥後、粗粉砕したものであり、水分5.8%、蛋白質15.3%、炭水化物76%であった。
ヘミセルラーゼ及びペクチナーゼによる荒粉の処理は、45〜48℃で5時間攪拌して酵素反応を行った。反応液の粘性はあがることもなく、攪拌に問題はなかった。
ついで、反応液を90℃に加熱してヘミセルラーゼ及びペクチナーゼを失活させ、液温を40℃に冷却し、プロテアーゼ(アマノ製薬、ニューラーゼF3G)を0.3g加えて、さらに40〜43℃で16時間反応させた。反応後、反応液を90℃に加熱してプロテアーゼを失活させて40℃まで冷却した。
冷却液にパーライト30gを加えて混合した後、ろ過し、ろ液を噴霧乾燥してコンニャク芋乾燥粉末92gを得た。コンニャク芋乾燥粉末は水分4%、pH4.3(5%水溶液)であった。また、えぐ味もなく、他の食品に混ぜても味のうえでは問題のない品質であった。
【実施例2】
【0014】
水600mlを45℃に加温し、クエン酸2.6g、ヘミセルラーゼ(アマノ製薬、ヘミセルラーゼ「アマノ」90)0.5g及びペクチナーゼLH(ヤクルト社製)0.05gを加えて溶解した後、トビ粉50gを25gずつ15分間毎に注加した。
ヘミセルラーゼ及びペクチナーゼによるトビ粉の処理は、45〜48℃で6時間攪拌して酵素反応を行った。反応液の粘性はあがることもなく、攪拌に問題は生じなかった。
ついで、反応液を90℃に加熱してヘミセルラーゼ及びペクチナーゼを失活させ、液温を43℃に冷却し、プロテアーゼ(アマノ製薬、ニューラーゼF3G)を0.2g加えて、さらに41〜43℃で16時間反応させた。反応後、反応液を90℃に加熱してプロテアーゼを失活させて40℃まで冷却した。
冷却液にパーライト30gを加えて混合した後、ろ過した。ろ液にデキストリン4.4gを溶解した後、減圧濃縮・乾固してコンニャク芋乾燥粉末43gを得た。コンニャク芋乾燥粉末は水分5.1%、pH4.3(5%水溶液)T−N3.06%(ペプチド換算19.1%)であった。
(参考例1)
水1300mlを45℃に加温し、クエン酸5.22g、ヘミセルラーゼ(アマノ製薬、ヘミセルラーゼ「アマノ」90)1.0gを加えて溶解した後、トビ粉100gを25gずつ15分間毎に注加した。
ヘミセルラーゼによるトビ粉の処理は、43〜45℃で5時間攪拌して酵素反応を行った。反応液の粘性はあがっていた。酵素反応液を90℃に加熱してヘミセルラーゼを失活させ、一夜室温に放置したが上澄みはなく、目詰まりしてろ過することはできなかった。
(参考例2)
参考例1のヘミセルラーゼ処理液に0.25gのパパインW−40を加え、58〜60℃で16時間反応させた。90℃に加熱して失活させ、35℃に冷却した。パーライト30gを加え、吸引ろ過したが、ほとんどろ過できない状態であった。また、パパインW−40処理液はエグ味が強く、乾燥して粉末化しても他の食品に混ぜることは無理と判断された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンニャク粗粉をヘミセルラーゼ及びペクチナーゼで処理する工程と、
コンニャク粗粉をプロテアーゼで処理する工程と、
ヘミセルラーゼ、ペクチナーゼ及びプロテアーゼ処理液をろ過する工程と、
得られたろ液を乾燥する工程とを含む、コンニャク芋乾燥組成物の製造方法。
【請求項2】
前記コンニャク由来の粗粉がコンニャク荒粉である、請求項1記載のコンニャク芋乾燥組成物の製造方法。
【請求項3】
前記コンニャク由来の粗粉がコンニャクトビ粉である、請求項1記載のコンニャク芋乾燥組成物の製造方法。
【請求項4】
コンニャク粗粉をヘミセルラーゼ及びペクチナーゼで処理する工程と、
コンニャク粗粉をプロテアーゼで処理する工程と、
ヘミセルラーゼ、ペクチナーゼ及びプロテアーゼ処理液をろ過する工程と、
得られたろ液を乾燥する工程とを含む工程により得られる、コンニャク芋乾燥組成物。