説明

コンバインの刈刃装置

【課題】 摺動自在に設けた刈刃の往復運動にともなって発生する衝撃音や振動を対向刈刃の構成にして緩和するが、該対向刈刃の境界部に堆積物が発生して切断性能を阻害する課題があり、これを解消する刈刃装置の提供である。
【解決手段】 2分割した可動刃が摺動する対向刈刃の上方に分草杆を配置した刈刃装置において、対向刈刃1の境界部2に仕切り板3を設け、その下端5を受け刃6の上面7に近設するようにし、その取付けは該仕切り板3を分草杆8から垂下させるとともに可撓部材で形成して、境界部2に作用する負荷に対し適度に撓む構成にした刈刃装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
バリカン型の切断装置を構成する受け刃上に2分割した可動刃を装備した対向刈刃にし、往復運動にともなう振動の発生を防止したコンバインの刈刃装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来受け刃台の上面に2分割した可動刃を対向させ、往復運動による刈刃振動を防止した切断装置が知られているが、可動刃が対向する境界部で切断性能が低下したり、スターホイルの非作用側が隣接する刈刃の中央付近で刈取り穀稈の稈元側が通過しない空間が刈刃上に拡大し、藁屑や泥土が堆積して切断する穀稈の侵入を妨げ、刈り高さが不揃いになったり扱残しを生じる原因になる。これを解消する手段に前記境界部における可動刃の後方側をV字形の形状にし、対向運動によって堆積物を後方に押出す構成にしたものがある(例えば特許文献1参照。)
。又、可動刃が対向する刈刃先端に向けて分草杆から稈ガイドを垂下させ、切断直前の穀稈を左右に分草するものが開示されている(例えば特許文献2参照。)。しかしながら、前者は可動刃が出会う刈刃の後端部に限定して排出作用が行われるものであって、後者は泥土や藁屑が分草杆と刈刃上面の隙間に挟まる堆積物には除去作用が及ばない構成である。
【0003】
【特許文献1】実開平02−14331号公報(第1−3頁、第1、2図)
【特許文献2】特開平02−07606号公報(第5頁、第4、5図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
分割した可動刃の対向運動にともなって境界部に異物が噛込み、異状音の発生や刈刃の損傷を招くとともに刈刃上に滞留した堆積物が固形化して切断する穀稈の侵入を妨げ、切断性能が低下する課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このような課題を解消するために、対向刈刃と分草杆の間に生じた隙間を仕切り板で塞ぎ堆積物の挟み込みを防止し、可動刃が出会う境界部の刈刃衝撃を緩和する刈刃装置にしたものである。
【0006】
刈刃を形成する受け刃台を刈取り全幅に架設し、2分割した可動刃が対向する方向に摺動する対向刈刃にするとともに、その上方を横断する分草杆を複数配置した刈刃装置において、対向刈刃の境界部に仕切り板を設け、該仕切り板の下端を受け刃の上面に近設させ、前記対向刈刃の中央付近で刈刃上の空間を左右に分断し堆積物の押し込みを防ぐ構成にした。
【0007】
仕切り板を刈刃の上方を横断する分草杆から垂下させて設けた簡便な遮蔽構造にし、堆積物の挟み込みを防止する構成にした。
【0008】
仕切り板を可撓部材で形成し、境界部に作用する負荷の変動に応じて該可撓部材が適度に撓む構成にした。
【発明の効果】
【0009】
スターホイル31bの非作用側が隣接する刈刃中央部と対向刈刃1の境界部2が同じ配置になり、搬送穀稈の稈元が刈刃上を通過しないために堆積物が排出されず、中分草杆8bと対向刈刃1の隙間Hに泥土や藁屑が挟まり対向運動によって固形化し、該中分草杆8bの近傍に誘導された穀稈の侵入が妨害されて刈跡が不揃いになるが、本発明はこの隙間Hに可撓部材で形成した仕切り板3を設けてこれを塞ぎ、前記する堆積物の挟み込みを防止して排出と移動を促進させ、刈刃部に侵入する穀稈の切断を円滑に行い刈跡を均一にするとともに搬送穀稈の稈元揃いを安定させたものである。
【0010】
又、仕切り板3を可撓部材で形成したので可動刃16が出合う境界部2で小石や異物を噛込んだ場合でも、前記仕切り板3に作用する負荷の変動に応じて可撓部13が適度に撓む特性によって、常に仕切り板3が垂直位置に復元されて遮断した効果が向上し、対向刈刃1の破損や変形を防止した刈刃装置になった。しかも、刈取りフレーム25を構成する中分草杆8bの下方に溶着した刈刃ガイド10の後方に仕切り板3が設けられ、地中に刈刃が潜り込んだり、畦畔に衝突しても強固な前記刈刃ガイド10に保護され損傷が防止されるとともに、可撓部材を刈刃ガイド10と押え板12で挟着する該仕切り板3の構成にしたことによって部品交換や上下調節等が容易に行える特性がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
対向刈刃の振動抑制を効果的に引き出せる対向刈刃1の構成にし、出合い隙間の切断障害を解消した刈刃装置にしたものであって、可撓部材で形成した仕切り板3で中分草杆8bと対向刈刃1との間に生じた隙間Hを塞ぐ簡便な遮蔽構造により、分割した可動刃16の上方に滞留する堆積物を排出して切断性能を維持し
、稈元の揃いが安定する切断性能を実現させた刈刃装置の形態である。上記する構造の詳細を以下の実施例で説明する。
【実施例】
【0012】
本発明によるバリカン型の刈刃を形成する受け刃台を刈取部の全幅に架設し、2分割した可動刃が対向する方向に摺動する刈刃構造にするとともに、その上方を横断する分草杆を複数配置した刈刃装置において、可動刃16が対向する矢印イの方向に摺動する刈刃装置を装備したコンバインの構造概要を図7に示す4条刈りコンバインの要部側面図と、図6に示す刈取部の全体平面図で説明すると、左右一対のクローラ走行装置20に支持された機台21上に脱穀部Bが搭載され
、前方に立設する据付け台22で刈取入力ケース23を回動自在に支持し、これを中心に刈取部Cが昇降する回動支点Pにして刈高さ調節を行ないながら収穫作業をするものである。又、刈取りフレーム25を構成する分草杆8の先端には、刈幅に応じた分草板26を複数固着して倒伏穀稈等を浮揚させ、連設する引起装置27に内装したタイン28の引起し作用で穀稈を起立させ、稈元側を掻込ベルト30で狭持しながらスターホイル31に誘導し、後方に掻き込みながら前記可動刃16の対向運動で穀稈を切断する刈刃装置を装備したものである。
【0013】
切断後の穀稈搬送経路は、一対のスターホイル31を噛合させた一側にスプロケット32を固着して、後方の合流部33に臨ませた転輪35に左右の下部搬送チェン38を巻回させ、これに出退自在の狭扼ガイド40を対設して下部搬送路41aが形成され、平面視でハの字型に対向する右側の下部搬送路41bも同様の搬送構造にした4条刈りコンバインの下部搬送装置にしてある。このように切断した穀稈を双方の下部搬送路41a、41bで狭扼しながら後方の前記合流部33に向けて搬送し、継設する揚上搬送装置42に受継がせ、脱穀部Bに張設したフィードチェン43の始端側に受継ぎ、脱粒処理を行うようにしたコンバインの刈取り搬送の形態である。
【0014】
このような刈取部Cの下方に横設した対向刈刃1は、回動支点Pを形成する刈取り入力ケース23から斜降する2軸ケース44と、その先端に連結した刈取り駆動ケース45によってエの字形をしたケース構造にし、該刈取り駆動ケース45の両端から分草杆8aを前方に延設させ、これを連結する支持パイプ46を設けて4条刈りを行う穀稈の侵入通路47を複数本の中分草杆8bで形成し、その基部側を該支持パイプ46に固着させ前記分草杆8と同様に前方に延出したものである。
【0015】
又、各分草杆8a、8bの下方に設けた取付け部にこれを横断する受け刃台4が水平に螺着され、併設した受け刃6の上面7に2分割した可動刃16を複数のナイフクリップ9で摺動自在に装着した刈取りフレーム25の構造にするとともに、刈取り駆動ケース45の左右から出力したリンク機構51によって、前記可動刃16を対向運動させる刈刃駆動装置にしてある。
【0016】
図1は対向刈刃の境界部を示す平面図であって、図2の仕切り板の側面図と図3の要部を断面した正面図を併用し、2組のスターホイルが噛合する掻込み装置を備えた4条刈りの刈刃構造を説明すると、対向刈刃1の中央付近でスターホイル31bの非作用側が隣接(図4参照)するようになり、該対向刈刃1の上方に搬送穀稈が通過しない空間が生じ、この間を横断する中分草杆8bを設けた上下の配置になり。可動刃16が対向する境界部2と該中分草杆8bと、隙間Hが対向刈刃1の中央付近で一致する刈刃構造にしたものである。
【0017】
このようなスターホイル31bは矢印ロの方向に回転し、中分草杆8bを挟んだ左右の空間に藁屑や泥土を取り合い対向刈刃1の中央付近で堆積物が停滞し、これを可動刃16の対向運動で境界部2に向けて押し込み、堆積物を固形化させたり前記隙間Hに藁屑等を挟み込み移動と排出が妨げられ、後続する刈取り穀稈の侵入が充分に行われず切断性能が低下するようになる。
【0018】
非作用側が隣接するスターホイル31bによって対向刈刃1上に生じた空間に対し、本発明の要旨である仕切り板3を用いて隙間Hを遮断した構造について説明すると、従来から可動刃16の前方に設置してある刈刃ガイド10を分草杆8から垂設し、受け刃6の先端から切り上げた形状にして後方に連設したガイド側面11を対向刈刃1の上方まで延伸し、該ガイド側面11に可撓部材で形成した仕切り板3を沿わせるために、中分草杆8bの上方に溶着した取付け板17に間座18を介在させて取付け高さの調節を行い、その外側から押え板12を接当させて仕切り板3を固定ボルト50とナット56で挟着する取付け構造にしてある。
【0019】
図4は分草杆に装着した刈刃の後面図であって、図5の斜視図と図2の側面図を併用して仕切り板の調節構造を説明すると、長穴14を穿った押え板12にバケットボルト53で仕切り板3を先に装着し、該押え板12の端面15を受け刃6の上面7から離反する位置にして該仕切り板3の下端が露出する可撓部13を形成させ、前述するように仕切り板3の内面とガイド側面11を一致させる間座18を介在させ、中分草杆8bに溶着した取付け板17に固定ボルト50で装着し、前記ガイド側面11と押え板12で仕切り板3を挟着する構成にしたものである。
【0020】
仕切り板3の下端5が受け刃6の上面7に接近した遮蔽構造にするために、刈高さ調節を行った場合の該仕切り板3の調節について説明すると、図4は対向刈刃1の低い設定を示してあり、これを高い位置に変更するには、分草杆8の下方に吊設した受け刃台4との間に挟持させた調節パイプ19を該受け刃台4の下方側に変更する調節ボルト55の脱着操作を行い、図示する位置から前記調節パイプ19の高さ分だけ刈刃位置が高い方に変化するものである。
【0021】
この対向刈刃1の位置変更に追随させて仕切り板3の下端5を受け刃6の上面に近設させる上下調節は、先ず固定ボルト50のナット56を弛め押え板12の長穴14を活用して一体化した仕切り板3の移動を行うものであって、可撓部13の面積を保持したままガイド側面11に沿った調節であり、位置変更をした受け刃6の上面7に前記仕切り板3の下端5が接近した位置に前記ナット56で螺着する構成にしてある。
【0022】
以上説明したように可撓部材で形成した仕切り板3を受け刃6の上面7と中分草杆8bとの隙間Hに装着し、堆積物の挟み込みを防ぐ遮蔽構造にしたので、堆積物が排出されずに該隙間Hに挟まり対向運動によって固形化し、侵入する穀稈を妨げて刈跡を不揃いにする藁屑や泥土の排出が促進され、刈跡を均一にするものである。又、可動刃16が境界部2で小石や異物を噛込んでも可撓部材で形成した前記仕切り板3には柔軟性があり、作用する負荷や衝撃の大きさに応じて適度に撓む機能があり、対向刈刃1の破損や変形が防止できる構造にしてある。しかも、中分草杆8bの下方に溶着された刈刃ガイド10の直後に仕切り板3が設けられ、刈刃が土中に潜り込んだり畦畔に衝突しても強固な前記刈刃ガイド10に保護され損傷が防止されるとともに、前記仕切り板3が挟着された取付け構造であって部品交換や上下調節等が容易に行える特性がある。
【産業上の利用可能性】
【0023】
対向刈刃を刈取りフレームの下側に装備して切断性能を向上させる刈取り装置に適応できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】対向刈刃の境界部を示す平面図である。
【図2】境界部に設けた仕切り板の側面図である。
【図3】仕切り板を断面した拡大正面図である。
【図4】分草杆に装着した刈刃の後面図である。
【図5】仕切り板を装着した斜視図である。
【図6】刈取部の全体平面図である。
【図7】コンバインの要部側面図である。
【符号の説明】
【0025】
H・・隙間
1・・対向刈刃 2・・境界部 3・・仕切り板
4・・受け刃台 5・・下端 6・・受け刃
7・・上面 8・・分草杆 10・・刈取ガイド
11・・ガイド側面 12・・押え板 13・・可撓部
15・・端面 16・・可動刃 17・・取付け板
18・・間座 19・・調節パイプ 31・・スターホイル
47・・侵入通路 50・・固定ボルト 53・・バケットボルト
55・・調節ボルト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
刈刃を形成する受け刃台を刈取り全幅に架設し、2分割した可動刃が対向する方向に摺動する対向刈刃にするとともに、その上方を横断する分草杆を複数配置した刈刃装置において、対向刈刃(1)の境界部(2)に仕切り板(3)を設け
、該仕切り板(3)の下端(5)を受け刃(6)の上面(7)に近設させたことを特徴とするコンバインの刈刃装置。
【請求項2】
仕切り板(3)を刈刃の上方を横断する分草杆(8)から垂下させて設けたことを特徴とする請求項1に記載したコンバインの刈刃装置。
【請求項3】
仕切り板(3)を可撓部材で形成したことを特徴とする請求項1、又は請求項2に記載したコンバインの刈刃装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−109724(P2006−109724A)
【公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−298581(P2004−298581)
【出願日】平成16年10月13日(2004.10.13)
【出願人】(000005164)セイレイ工業株式会社 (125)
【Fターム(参考)】