コンバインの刈取り部昇降構造
【課題】 刈高さ自動制御装置を備えることなく比較的安定した刈高さでの収穫作業を行うことのできるコンバインの刈取り部昇降構造を提供する。
【解決手段】 引起こし装置7、刈取り装置8、刈取り穀稈搬送装置11を備えた刈取り部3を、走行機体2の前部に昇降可能に連結したコンバインの刈取り部昇降構造において、刈取り部3の下部における左右両端に、刈取り部3を圃場面に受け止め支持させるための接地体25を装備する。
【解決手段】 引起こし装置7、刈取り装置8、刈取り穀稈搬送装置11を備えた刈取り部3を、走行機体2の前部に昇降可能に連結したコンバインの刈取り部昇降構造において、刈取り部3の下部における左右両端に、刈取り部3を圃場面に受け止め支持させるための接地体25を装備する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、引起こし装置、刈取り装置、刈取り穀稈搬送装置を備えた刈取り部を、走行機体の前部に昇降可能に連結した自脱型のコンバインの刈取り部支持構造に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、コンバインにおいては刈取り部を自動昇降制御して圃場面に追従させるよう構成した、いわゆる刈高さ自動制御装置を備えたものが主流を占めており、刈取り部の対地高さを超音波センサを利用した検出装置で検出し、この検出情報に基づいて昇降用シリンダの作動を司る電磁制御弁を制御する手段が採用されている(例えば、特許文献1参照)。また、対地高さ検出装置を、接地追従する接地センサの上下揺動変位を回転式のポテンショメータで検出する接地式に構成したものも旧来より知られている。
【特許文献1】特開2001−275433号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
刈高さ自動制御装置を備えたコンバインは、安定した刈高さでの刈取り収穫作業を行える反面、刈高さ自動制御装置を構成するのに高価な機器類を必要とするために、小型のコンバインでは制御装置の占めるコスト比率が大きいものとなり、全体として割高な機械とならざるを得ないものとなっている。このため、小型機種のユーザーの間では、高価な刈高さ自動制御装置を備えることなく、安定した刈高さでの収穫作業を行うことのできる安価なコンバインの実用化が望まれている。
【0004】
本発明はこのような実情に着目してなされたものであって、刈高さ自動制御装置を備えることなく比較的安定した刈高さでの収穫作業を行うことのできるコンバインの刈取り部昇降構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1の発明の特徴は、引起こし装置、刈取り装置、刈取り穀稈搬送装置を備えた刈取り部を、走行機体の前部に昇降可能に連結したコンバインの刈取り部昇降構造であって、
前記刈取り部に上昇方向への荷重軽減用の付勢力を印加して、刈取り部を接地追従して自由昇降するよう構成し、
前記刈取り部の下端部に前向き片持ち状に配備されたフレーム杆の前端に、前記引起こし装置の下部に配備されるデバイダ支持杆を脱着可能に連結するとともに、このデバイダ支持杆の下部にそり状の接地体を連結固着し、この接地体を前記フレーム杆の下部にまで延出して、その延出部位を前記フレーム杆に受け止め支持させてあることにある。
【0006】
上記構成によると、刈取り収穫作業時には、刈取り部を自重で接地追従させることで、略一定した刈高さでの収穫が可能となる。この場合、刈取り部を接地支持する接地体が機体前端に配備されるデバイダ支持杆に取付けられているので、機体が前下がり傾斜したり、田面の隆起部にさしかかっても、接地体が刈取り部前端近くで接地して地中への没入を阻止するので、デバイダが圃場の隆起部などに突き刺さるようなことが未然に回避される。
【0007】
ここで、デバイダ支持杆はフレーム杆の前端に脱着自在に連結されており、コンバインの運搬移動や格納、等に際してデバイダ支持杆をデバイダと共に取外すことができるようになっており、かつ、デバイダ支持杆自体の前後長さはさほど大きくはない。しかし、このようなデバイダ支持杆に取付ける接地体は、このデバイダ支持杆を越えてフレーム杆の下方にまで延出されているので、前後に長く接地して刈取り部を確実に接地支持する。また、フレーム杆の下方にまで延出された接地体の後端部をフレーム杆に受け止め支持させてあるので、接地体に作用する接地荷重が確実にフレーム杆に受け止め支持される。
【0008】
従って、第1の発明によると、刈取り部前端近くに比較的前後に長い接地体を設けることができ、地面への突っ込みなく刈取り部を圃場面に自重で接地追従させることができ、高価な自動昇降制御装置を用いないものでありながら、比較的安定した刈高さでの収穫作業を行うことのできるようになった。
【0009】
第2の発明の特徴は、第1の発明において、前記接地体を、U形に屈曲された縦断面形状を備えるとともに、前端部および後端部の下面を先上がりにした舟形に構成するとともに、接地体におけるU形断面の後端部を前記フレーム杆に下方より係合させてあることにある。
【0010】
上記構成によると、前端部および後端部の下面を先上がりにした舟形に構成された接地体は、接地前進あるいは接地後進しても引っ掛かりなく円滑に圃場面を滑走する。また、接地体は、前端部が連結されるとともに、後端部が引起こし装置支持用フレーム杆に係合支持されるので、接地しながら機体を操向した際に圃場面から受ける横荷重にも十分耐えることができる。
【0011】
従って、第2の発明によると、脱着されるデバイダ支持杆から後ろ向き片持ち状に延出された接地体の後端部を強固に支持することができ、例えば、接地体後端部を引起こし装置支持用フレームにボルト連結するような構造にする場合に比較して簡素なものにすることができ、コスト低減に有効となる。
【0012】
第3の発明の特徴は、第1または第2の発明において、前記接地体を左右最外側の前記デバイダ支持杆に装備してあることにある。
【0013】
上記構成によると、刈取り部の下部は左右の接地体の大きいスパンでもって接地支持され、軟弱な圃場においても沈下少なく刈取り部を接地追従させることができる。
【0014】
従って、第3の発明によると、刈取り部を安定よく接地追従させることができ、自重追従性能を高める上で有効となる。
【0015】
第4の発明の特徴は、既刈側の前記デバイダ支持杆に装備した前記接地体を、未刈側の前記デバイダ支持杆に装備した前記接地体よりも横幅を広く構成してあることにある。
【0016】
上記構成によると、刈取り部の最未刈側においては、引起し装置支持用フレーム杆の外方には未刈り作物が植立しているとともに、内側には刈取られる作物が位置しており、ここに設ける接地体の横幅は余り大きく設定できないが、刈取り部の最既刈側においては、引起し装置支持用フレーム杆の外方に直立した作物はなく、ここに設ける接地体の横幅は、横幅を既刈り側に拡張することが許容される。
【0017】
従って、第4の発明によると、刈取り部を極力大きい接地面積で接地追従させることができ、沈下の少ない安定した自重追従を実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
【0019】
図1に、自脱型のコンバインの全体側面が示されている。このコンバインは、左右一対のクローラ走行装置1で走行する走行機体2の前部に、刈取り部3が後部上方の支点Pを中心にして揺動昇降可能に連結されるとともに、走行機体2の右側前半部に、原動部を備えた運転部4が配備され、かつ、走行機体2の左側に脱穀装置5が搭載されるとともに、走行機体2の右側後半部に、収穫した穀粒を貯留する穀粒タンク6が配備された構造となっている。
【0020】
この例の前記刈取り部3は2条刈り仕様に構成されており、植立穀稈を所定の立姿勢にまで引起こす左右一対の引起し装置7、引起した穀稈の株元部を切断するバリカン型の刈取り装置8、2条分の刈取り穀稈を刈幅の中間部位に合流する回転パッカ9、合流された刈取り穀稈の株元側を挟持して後方上方に搬送して、前記脱穀装置5の左外側面に備えられたフィードチェーン10に横倒れ姿勢にして供給する刈取り穀稈搬送装置11、等を、前記支点Pを中心として上下揺動可能に走行機体2の前部に連結された刈取り部主フレーム12に装着して構成されている。
【0021】
図8および図9に示すように、前記刈取り部主フレーム12はパイプ材からなり、その基端部が走行機体2の前部に立設された支持台13に前記支点Pを中心に上下揺動自在、かつ、支点Pに沿って左右移動可能に支持されている。前記支持台13には油圧シリンダ14によって横向き支点a回りに揺動操作されるアーチ形の支持アーム15が装着されており、この支持アーム15の遊端部に前記刈取り部主フレーム12が受け止め支持されている。
【0022】
また、前記支持アーム15には、減速機付きの電動モータ16によって正逆転駆動されるネジ軸17が横架支承されるとともに、このネジ軸17によって左右にネジ送り駆動される可動部材18に刈取り部主フレーム12が係合され、ネジ軸17の正逆転によって刈取り部主フレーム12が左右に位置変更されるようになっている。つまり、このコンバインでは、走行機体2に対して刈取り部3を横スライドして位置変更できるように構成されており、機体左側を未刈り側として回り刈りする通常の収穫作業時には、刈取り部3を横移動範囲の左側限界まで移動させて、刈取り部3をクローラ走行装置1に対して未刈り側(左側)に突出させ、左側のクローラ走行装置1の通過によって未刈り側に排出された泥が未刈り作物の株元に盛り上がって作物を倒したり、次の刈取り行程で刈取り装置8が盛り上がった泥に突入することを未然に回避する。また、圃場の中間を突っ切る中割り作業時には、刈取り部3を横移動範囲の右側限界まで移動させて、刈取り部3を左右のクローラ走行装置1の横幅内に位置させることで、クローラ走行装置1で作物を踏み倒すことなく刈取り走行する。
【0023】
なお、前記刈取り部主フレーム12は、刈取り部3が横スライドしない簡易仕様の機種にも利用されるものであり、この仕様の機種に利用する場合には、図14(ロ)に示すように、刈取り部主フレーム12に固設してあるブラケット51に支点金具52をボルト連結し、この支点金具52にネジ送り式の伸縮駆動機構53を連結することで、刈取り部3を昇降駆動する構造が構成される。また、上記のように刈取り部3を横スライドさせる仕様の機種においては、支点金具が横移動すると他の装置に干渉するので、図14(イ)に示すように、ブラケットに支点金具を取付けない状態にして使用する。
【0024】
刈取り部3を昇降する前記油圧シリンダ14には圧縮コイルバネ19が装着されており、図10(イ)に示すように、刈取り部3が刈取り作業高さ範囲に下降されていると、ピストンロッド14aに外嵌装着した接当部材20を介して刈取り部3の重量が圧縮コイルバネ19に作用し、油圧シリンダ14に働く荷重が軽減され、また、図10(ロ)に示すように、刈取り部3が刈取り作業高さ範囲より上昇されると、前記接当部材20は圧縮コイルバネ19から離間し、圧縮コイルバネ19は初期圧縮状態で待機するようになっている。
【0025】
図2に示すように、前記刈取り部主フレーム12の先端部には、丸パイプ材からなる3本のフレーム杆21がフォーク状に連結されており、左右両端のフレーム杆21の前部に左右の引起し装置7の下部がステー22を介して連結支持されるとともに、これらフレーム杆21に、前記刈取り装置8や回転パッカ9、等が支持されている。また、各フレーム杆21の前端にデバイダ支持杆23が脱着可能に差込み連結されている。
【0026】
図3に示すように、デバイダ支持杆23は、フレーム杆21に内嵌する径の丸パイプ材からなり、つぶし加工した前端扁平部23aにデバイダ24が高さ調節および角度調節可能に装着されている。また、デバイダ支持杆23の下部には鋼板製の接地体25の前端が溶接固定されるとともに、デバイダ支持杆23と接地体25の前後中間部位同士をつなぐ連結金具26が起立され、この連結金具26をフレーム杆21の前端に備えた連結金具27に接合してボルト締め連結することで、デバイダ支持杆23をフレーム杆21に所定姿勢で固定するよう構成されている。
【0027】
図6に示すように、前記接地体25は、U形に屈曲された縦断面形状を備えるとともに、前端部および後端部の下面を先上がりにした舟形にプレス加工されたものであり、接地体25におけるU形断面の後端部がフレーム杆21に下方より係合されている。このようにすることで、デバイダ支持杆23から後向き片持ち状態に延出された前後に長い接地体25に働く接地荷重をデバイダ支持杆23とフレーム杆21とで確実に支持するとともに、接地状態のままで機体操向を行った場合などに接地体25に働く横方向荷重にも十分耐えられるように構成されている。また、未刈り側のデバイダ支持杆23に備えられた左の接地体25は未刈り作物と引起し刈取られる作物の間を通過し、また、中央の接地体25は引起し刈取られる2条の作物の間を通過することになるので、図5に示すように、横幅の狭い同一の仕様のものが利用され、これに対して右側の接地体25の右側は既刈り地となるので、図7に示すように、作物の無い右側に張り出した幅広の仕様のものが利用され、接地体全体としての接地面積を極力大きく確保するようにしている。
【0028】
図13に、刈取り部昇降用の前記油圧シリンダ14における操作用油圧回路が示されている。油圧シリンダ14は単動型が使用されており、運転部4に配備された操作レバー30によって切換え操作される3位置切換え型の制御弁31にスローリターンバルブ32を介して接続されている。制御弁31は、油圧シリンダ14からの排油を阻止して刈取り部3を任意の高さ位置に固定できる「中立」位置、油圧シリンダ14に圧油を供給して刈取り部3を上昇駆動する「上昇」位置、および、油圧シリンダ14からの排油を許容して刈取り部3を自重下降させる「下降」位置に切換え可能となっている。
【0029】
図11に示すように、操作レバー30は支点b周りに前後揺動可能に支点ブラケット33に支持されており、制御弁31の前記切換え位置に対応して、「中立」、「上昇」、および、「下降」の各操作位置に切換え操作可能に構成されるとともに、レバー支点bに装備したねじりバネ34によって「中立」に復帰付勢されている。このねじりバネ34は、その前後の遊端34a,34bで、支点ブラケット33に設けた固定ピン35と、操作レバー30に設けた作動ピン36を前後から挟持して操作レバー30を「中立」に保持しており、操作レバー30を「中立」から「上昇」あるいは「下降」に操作することで、ねじりバネ34の前後の遊端34a,34bの一方が固定ピン35で支持された固定端として機能するとともに、他方が作動ピン36で押圧移動される可動端として機能し、単一のバネで前後いずれの方向へも中立復帰付勢力をもたらすものである。
【0030】
また、操作レバー30の前記「下降」位置のさらに前方には前記制御弁31を引き続き「下降」状態に切換え維持する「接地刈取り」位置が設定されており、この操作位置で操作レバー30を係止保持するレバーロック機構37が配備されている。
【0031】
図12に示すように、前記レバーロック機構37は、操作レバー30の基部に固着された扇形のロック板38と、支点c周りに前後揺動可能に配備されるとともにバネ39によってロック板外周に向けて揺動付勢されたロックアーム40とで構成されており、ロックアーム40に設けたロックピン41をロック板38の外周に設けた突起42と係合させることでロック機能がもたらされるようになっている。つまり、操作レバー30が「上昇」位置から「下降」位置までの昇降操作範囲ではロックピン41はロック板38の円弧状外周に作用しており、ねじりバネ34による上記中立復帰機で操作レバー30は中立復帰する。そして、操作レバー30を、「下降」位置を越えて「接地刈取り」位置にまで操作すると、図12(イ)に示すように、ロック板外周の突起42がロックピン41を上方に乗り越え、ねじりバネ34による復帰付勢力ではロック板38がロックピン41を越えて中立側に揺動できなくなり、操作レバー30が「接地刈取り」位置に保持されるのである。
【0032】
操作レバー30が「接地刈取り」位置に保持された状態は昇降自由状態にあるので、刈取り部3は機械的な下限まで自重下降可能であるが、上記したように、刈取り部3には接地体25が備えられているとともに、油圧シリンダ14には荷重軽減用の圧縮コイルバネ19が装備されているので、刈取り部3は自重およびバネ付勢力とバランスした接地圧で接地体25が接地するまで下降し、以後、圃場面の起伏に接地追従して刈取り部3は昇降する。これによって特別な昇降制御を行うことなく刈取り部3の対地高さが略一定に維持され、安定した刈り高さでの刈取り収穫を行うことができる。また、圃場の隆起部へのデバイダ24の突っ込み防止機能も発揮される。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】コンバインの全体側面図
【図2】刈取り部の平面図
【図3】デバイダ取付け部の分解側面図
【図4】デバイダ取付け部の側面図
【図5】未刈り側および中央の接地体の縦断側面図(イ)と平面図(ロ)
【図6】図5におけるa−a断面図(イ)とb−b断面図(ロ)
【図7】既刈り側の接地体の縦断側面図(イ)と平面図(ロ)
【図8】刈取り部昇降構造の側面図
【図9】刈取り部昇降構造の平面図
【図10】刈取り部昇降構造の下降状態の側面図(イ)と上昇状態の側面図(ロ)
【図11】刈取り部昇降用操作レバーの側面図
【図12】刈取り部昇降用操作レバーの各操作状態を示す側面図
【図13】刈取り部昇降用の油圧回路図
【図14】刈取り部における主フレームの側面図
【符号の説明】
【0034】
3 刈取り部
7 引起し装置
8 刈取り装置
11 刈取り穀稈搬送装置
21 フレーム杆
25 接地体
【技術分野】
【0001】
本発明は、引起こし装置、刈取り装置、刈取り穀稈搬送装置を備えた刈取り部を、走行機体の前部に昇降可能に連結した自脱型のコンバインの刈取り部支持構造に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、コンバインにおいては刈取り部を自動昇降制御して圃場面に追従させるよう構成した、いわゆる刈高さ自動制御装置を備えたものが主流を占めており、刈取り部の対地高さを超音波センサを利用した検出装置で検出し、この検出情報に基づいて昇降用シリンダの作動を司る電磁制御弁を制御する手段が採用されている(例えば、特許文献1参照)。また、対地高さ検出装置を、接地追従する接地センサの上下揺動変位を回転式のポテンショメータで検出する接地式に構成したものも旧来より知られている。
【特許文献1】特開2001−275433号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
刈高さ自動制御装置を備えたコンバインは、安定した刈高さでの刈取り収穫作業を行える反面、刈高さ自動制御装置を構成するのに高価な機器類を必要とするために、小型のコンバインでは制御装置の占めるコスト比率が大きいものとなり、全体として割高な機械とならざるを得ないものとなっている。このため、小型機種のユーザーの間では、高価な刈高さ自動制御装置を備えることなく、安定した刈高さでの収穫作業を行うことのできる安価なコンバインの実用化が望まれている。
【0004】
本発明はこのような実情に着目してなされたものであって、刈高さ自動制御装置を備えることなく比較的安定した刈高さでの収穫作業を行うことのできるコンバインの刈取り部昇降構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1の発明の特徴は、引起こし装置、刈取り装置、刈取り穀稈搬送装置を備えた刈取り部を、走行機体の前部に昇降可能に連結したコンバインの刈取り部昇降構造であって、
前記刈取り部に上昇方向への荷重軽減用の付勢力を印加して、刈取り部を接地追従して自由昇降するよう構成し、
前記刈取り部の下端部に前向き片持ち状に配備されたフレーム杆の前端に、前記引起こし装置の下部に配備されるデバイダ支持杆を脱着可能に連結するとともに、このデバイダ支持杆の下部にそり状の接地体を連結固着し、この接地体を前記フレーム杆の下部にまで延出して、その延出部位を前記フレーム杆に受け止め支持させてあることにある。
【0006】
上記構成によると、刈取り収穫作業時には、刈取り部を自重で接地追従させることで、略一定した刈高さでの収穫が可能となる。この場合、刈取り部を接地支持する接地体が機体前端に配備されるデバイダ支持杆に取付けられているので、機体が前下がり傾斜したり、田面の隆起部にさしかかっても、接地体が刈取り部前端近くで接地して地中への没入を阻止するので、デバイダが圃場の隆起部などに突き刺さるようなことが未然に回避される。
【0007】
ここで、デバイダ支持杆はフレーム杆の前端に脱着自在に連結されており、コンバインの運搬移動や格納、等に際してデバイダ支持杆をデバイダと共に取外すことができるようになっており、かつ、デバイダ支持杆自体の前後長さはさほど大きくはない。しかし、このようなデバイダ支持杆に取付ける接地体は、このデバイダ支持杆を越えてフレーム杆の下方にまで延出されているので、前後に長く接地して刈取り部を確実に接地支持する。また、フレーム杆の下方にまで延出された接地体の後端部をフレーム杆に受け止め支持させてあるので、接地体に作用する接地荷重が確実にフレーム杆に受け止め支持される。
【0008】
従って、第1の発明によると、刈取り部前端近くに比較的前後に長い接地体を設けることができ、地面への突っ込みなく刈取り部を圃場面に自重で接地追従させることができ、高価な自動昇降制御装置を用いないものでありながら、比較的安定した刈高さでの収穫作業を行うことのできるようになった。
【0009】
第2の発明の特徴は、第1の発明において、前記接地体を、U形に屈曲された縦断面形状を備えるとともに、前端部および後端部の下面を先上がりにした舟形に構成するとともに、接地体におけるU形断面の後端部を前記フレーム杆に下方より係合させてあることにある。
【0010】
上記構成によると、前端部および後端部の下面を先上がりにした舟形に構成された接地体は、接地前進あるいは接地後進しても引っ掛かりなく円滑に圃場面を滑走する。また、接地体は、前端部が連結されるとともに、後端部が引起こし装置支持用フレーム杆に係合支持されるので、接地しながら機体を操向した際に圃場面から受ける横荷重にも十分耐えることができる。
【0011】
従って、第2の発明によると、脱着されるデバイダ支持杆から後ろ向き片持ち状に延出された接地体の後端部を強固に支持することができ、例えば、接地体後端部を引起こし装置支持用フレームにボルト連結するような構造にする場合に比較して簡素なものにすることができ、コスト低減に有効となる。
【0012】
第3の発明の特徴は、第1または第2の発明において、前記接地体を左右最外側の前記デバイダ支持杆に装備してあることにある。
【0013】
上記構成によると、刈取り部の下部は左右の接地体の大きいスパンでもって接地支持され、軟弱な圃場においても沈下少なく刈取り部を接地追従させることができる。
【0014】
従って、第3の発明によると、刈取り部を安定よく接地追従させることができ、自重追従性能を高める上で有効となる。
【0015】
第4の発明の特徴は、既刈側の前記デバイダ支持杆に装備した前記接地体を、未刈側の前記デバイダ支持杆に装備した前記接地体よりも横幅を広く構成してあることにある。
【0016】
上記構成によると、刈取り部の最未刈側においては、引起し装置支持用フレーム杆の外方には未刈り作物が植立しているとともに、内側には刈取られる作物が位置しており、ここに設ける接地体の横幅は余り大きく設定できないが、刈取り部の最既刈側においては、引起し装置支持用フレーム杆の外方に直立した作物はなく、ここに設ける接地体の横幅は、横幅を既刈り側に拡張することが許容される。
【0017】
従って、第4の発明によると、刈取り部を極力大きい接地面積で接地追従させることができ、沈下の少ない安定した自重追従を実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
【0019】
図1に、自脱型のコンバインの全体側面が示されている。このコンバインは、左右一対のクローラ走行装置1で走行する走行機体2の前部に、刈取り部3が後部上方の支点Pを中心にして揺動昇降可能に連結されるとともに、走行機体2の右側前半部に、原動部を備えた運転部4が配備され、かつ、走行機体2の左側に脱穀装置5が搭載されるとともに、走行機体2の右側後半部に、収穫した穀粒を貯留する穀粒タンク6が配備された構造となっている。
【0020】
この例の前記刈取り部3は2条刈り仕様に構成されており、植立穀稈を所定の立姿勢にまで引起こす左右一対の引起し装置7、引起した穀稈の株元部を切断するバリカン型の刈取り装置8、2条分の刈取り穀稈を刈幅の中間部位に合流する回転パッカ9、合流された刈取り穀稈の株元側を挟持して後方上方に搬送して、前記脱穀装置5の左外側面に備えられたフィードチェーン10に横倒れ姿勢にして供給する刈取り穀稈搬送装置11、等を、前記支点Pを中心として上下揺動可能に走行機体2の前部に連結された刈取り部主フレーム12に装着して構成されている。
【0021】
図8および図9に示すように、前記刈取り部主フレーム12はパイプ材からなり、その基端部が走行機体2の前部に立設された支持台13に前記支点Pを中心に上下揺動自在、かつ、支点Pに沿って左右移動可能に支持されている。前記支持台13には油圧シリンダ14によって横向き支点a回りに揺動操作されるアーチ形の支持アーム15が装着されており、この支持アーム15の遊端部に前記刈取り部主フレーム12が受け止め支持されている。
【0022】
また、前記支持アーム15には、減速機付きの電動モータ16によって正逆転駆動されるネジ軸17が横架支承されるとともに、このネジ軸17によって左右にネジ送り駆動される可動部材18に刈取り部主フレーム12が係合され、ネジ軸17の正逆転によって刈取り部主フレーム12が左右に位置変更されるようになっている。つまり、このコンバインでは、走行機体2に対して刈取り部3を横スライドして位置変更できるように構成されており、機体左側を未刈り側として回り刈りする通常の収穫作業時には、刈取り部3を横移動範囲の左側限界まで移動させて、刈取り部3をクローラ走行装置1に対して未刈り側(左側)に突出させ、左側のクローラ走行装置1の通過によって未刈り側に排出された泥が未刈り作物の株元に盛り上がって作物を倒したり、次の刈取り行程で刈取り装置8が盛り上がった泥に突入することを未然に回避する。また、圃場の中間を突っ切る中割り作業時には、刈取り部3を横移動範囲の右側限界まで移動させて、刈取り部3を左右のクローラ走行装置1の横幅内に位置させることで、クローラ走行装置1で作物を踏み倒すことなく刈取り走行する。
【0023】
なお、前記刈取り部主フレーム12は、刈取り部3が横スライドしない簡易仕様の機種にも利用されるものであり、この仕様の機種に利用する場合には、図14(ロ)に示すように、刈取り部主フレーム12に固設してあるブラケット51に支点金具52をボルト連結し、この支点金具52にネジ送り式の伸縮駆動機構53を連結することで、刈取り部3を昇降駆動する構造が構成される。また、上記のように刈取り部3を横スライドさせる仕様の機種においては、支点金具が横移動すると他の装置に干渉するので、図14(イ)に示すように、ブラケットに支点金具を取付けない状態にして使用する。
【0024】
刈取り部3を昇降する前記油圧シリンダ14には圧縮コイルバネ19が装着されており、図10(イ)に示すように、刈取り部3が刈取り作業高さ範囲に下降されていると、ピストンロッド14aに外嵌装着した接当部材20を介して刈取り部3の重量が圧縮コイルバネ19に作用し、油圧シリンダ14に働く荷重が軽減され、また、図10(ロ)に示すように、刈取り部3が刈取り作業高さ範囲より上昇されると、前記接当部材20は圧縮コイルバネ19から離間し、圧縮コイルバネ19は初期圧縮状態で待機するようになっている。
【0025】
図2に示すように、前記刈取り部主フレーム12の先端部には、丸パイプ材からなる3本のフレーム杆21がフォーク状に連結されており、左右両端のフレーム杆21の前部に左右の引起し装置7の下部がステー22を介して連結支持されるとともに、これらフレーム杆21に、前記刈取り装置8や回転パッカ9、等が支持されている。また、各フレーム杆21の前端にデバイダ支持杆23が脱着可能に差込み連結されている。
【0026】
図3に示すように、デバイダ支持杆23は、フレーム杆21に内嵌する径の丸パイプ材からなり、つぶし加工した前端扁平部23aにデバイダ24が高さ調節および角度調節可能に装着されている。また、デバイダ支持杆23の下部には鋼板製の接地体25の前端が溶接固定されるとともに、デバイダ支持杆23と接地体25の前後中間部位同士をつなぐ連結金具26が起立され、この連結金具26をフレーム杆21の前端に備えた連結金具27に接合してボルト締め連結することで、デバイダ支持杆23をフレーム杆21に所定姿勢で固定するよう構成されている。
【0027】
図6に示すように、前記接地体25は、U形に屈曲された縦断面形状を備えるとともに、前端部および後端部の下面を先上がりにした舟形にプレス加工されたものであり、接地体25におけるU形断面の後端部がフレーム杆21に下方より係合されている。このようにすることで、デバイダ支持杆23から後向き片持ち状態に延出された前後に長い接地体25に働く接地荷重をデバイダ支持杆23とフレーム杆21とで確実に支持するとともに、接地状態のままで機体操向を行った場合などに接地体25に働く横方向荷重にも十分耐えられるように構成されている。また、未刈り側のデバイダ支持杆23に備えられた左の接地体25は未刈り作物と引起し刈取られる作物の間を通過し、また、中央の接地体25は引起し刈取られる2条の作物の間を通過することになるので、図5に示すように、横幅の狭い同一の仕様のものが利用され、これに対して右側の接地体25の右側は既刈り地となるので、図7に示すように、作物の無い右側に張り出した幅広の仕様のものが利用され、接地体全体としての接地面積を極力大きく確保するようにしている。
【0028】
図13に、刈取り部昇降用の前記油圧シリンダ14における操作用油圧回路が示されている。油圧シリンダ14は単動型が使用されており、運転部4に配備された操作レバー30によって切換え操作される3位置切換え型の制御弁31にスローリターンバルブ32を介して接続されている。制御弁31は、油圧シリンダ14からの排油を阻止して刈取り部3を任意の高さ位置に固定できる「中立」位置、油圧シリンダ14に圧油を供給して刈取り部3を上昇駆動する「上昇」位置、および、油圧シリンダ14からの排油を許容して刈取り部3を自重下降させる「下降」位置に切換え可能となっている。
【0029】
図11に示すように、操作レバー30は支点b周りに前後揺動可能に支点ブラケット33に支持されており、制御弁31の前記切換え位置に対応して、「中立」、「上昇」、および、「下降」の各操作位置に切換え操作可能に構成されるとともに、レバー支点bに装備したねじりバネ34によって「中立」に復帰付勢されている。このねじりバネ34は、その前後の遊端34a,34bで、支点ブラケット33に設けた固定ピン35と、操作レバー30に設けた作動ピン36を前後から挟持して操作レバー30を「中立」に保持しており、操作レバー30を「中立」から「上昇」あるいは「下降」に操作することで、ねじりバネ34の前後の遊端34a,34bの一方が固定ピン35で支持された固定端として機能するとともに、他方が作動ピン36で押圧移動される可動端として機能し、単一のバネで前後いずれの方向へも中立復帰付勢力をもたらすものである。
【0030】
また、操作レバー30の前記「下降」位置のさらに前方には前記制御弁31を引き続き「下降」状態に切換え維持する「接地刈取り」位置が設定されており、この操作位置で操作レバー30を係止保持するレバーロック機構37が配備されている。
【0031】
図12に示すように、前記レバーロック機構37は、操作レバー30の基部に固着された扇形のロック板38と、支点c周りに前後揺動可能に配備されるとともにバネ39によってロック板外周に向けて揺動付勢されたロックアーム40とで構成されており、ロックアーム40に設けたロックピン41をロック板38の外周に設けた突起42と係合させることでロック機能がもたらされるようになっている。つまり、操作レバー30が「上昇」位置から「下降」位置までの昇降操作範囲ではロックピン41はロック板38の円弧状外周に作用しており、ねじりバネ34による上記中立復帰機で操作レバー30は中立復帰する。そして、操作レバー30を、「下降」位置を越えて「接地刈取り」位置にまで操作すると、図12(イ)に示すように、ロック板外周の突起42がロックピン41を上方に乗り越え、ねじりバネ34による復帰付勢力ではロック板38がロックピン41を越えて中立側に揺動できなくなり、操作レバー30が「接地刈取り」位置に保持されるのである。
【0032】
操作レバー30が「接地刈取り」位置に保持された状態は昇降自由状態にあるので、刈取り部3は機械的な下限まで自重下降可能であるが、上記したように、刈取り部3には接地体25が備えられているとともに、油圧シリンダ14には荷重軽減用の圧縮コイルバネ19が装備されているので、刈取り部3は自重およびバネ付勢力とバランスした接地圧で接地体25が接地するまで下降し、以後、圃場面の起伏に接地追従して刈取り部3は昇降する。これによって特別な昇降制御を行うことなく刈取り部3の対地高さが略一定に維持され、安定した刈り高さでの刈取り収穫を行うことができる。また、圃場の隆起部へのデバイダ24の突っ込み防止機能も発揮される。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】コンバインの全体側面図
【図2】刈取り部の平面図
【図3】デバイダ取付け部の分解側面図
【図4】デバイダ取付け部の側面図
【図5】未刈り側および中央の接地体の縦断側面図(イ)と平面図(ロ)
【図6】図5におけるa−a断面図(イ)とb−b断面図(ロ)
【図7】既刈り側の接地体の縦断側面図(イ)と平面図(ロ)
【図8】刈取り部昇降構造の側面図
【図9】刈取り部昇降構造の平面図
【図10】刈取り部昇降構造の下降状態の側面図(イ)と上昇状態の側面図(ロ)
【図11】刈取り部昇降用操作レバーの側面図
【図12】刈取り部昇降用操作レバーの各操作状態を示す側面図
【図13】刈取り部昇降用の油圧回路図
【図14】刈取り部における主フレームの側面図
【符号の説明】
【0034】
3 刈取り部
7 引起し装置
8 刈取り装置
11 刈取り穀稈搬送装置
21 フレーム杆
25 接地体
【特許請求の範囲】
【請求項1】
引起こし装置、刈取り装置、刈取り穀稈搬送装置を備えた刈取り部を、走行機体の前部に昇降可能に連結したコンバインの刈取り部昇降構造であって、
前記刈取り部の下部における左右両端に、前記刈取り部を圃場面に受け止め支持させるための接地体を装備してあることを特徴とするコンバインの刈取り部昇降構造。
【請求項2】
左右両端の前記接地体のうち、既刈り側の接地体が、未刈り側の接地体よりも大きい接地面積を有するように構成してあることを特徴とする請求項1に記載のコンバインの刈取り部昇降構造。
【請求項1】
引起こし装置、刈取り装置、刈取り穀稈搬送装置を備えた刈取り部を、走行機体の前部に昇降可能に連結したコンバインの刈取り部昇降構造であって、
前記刈取り部の下部における左右両端に、前記刈取り部を圃場面に受け止め支持させるための接地体を装備してあることを特徴とするコンバインの刈取り部昇降構造。
【請求項2】
左右両端の前記接地体のうち、既刈り側の接地体が、未刈り側の接地体よりも大きい接地面積を有するように構成してあることを特徴とする請求項1に記載のコンバインの刈取り部昇降構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2007−6904(P2007−6904A)
【公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−285009(P2006−285009)
【出願日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【分割の表示】特願2003−274592(P2003−274592)の分割
【原出願日】平成15年7月15日(2003.7.15)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【分割の表示】特願2003−274592(P2003−274592)の分割
【原出願日】平成15年7月15日(2003.7.15)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】
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