説明

コンバインの排藁処理部構造

【課題】コンバインにおける排藁細断装置の開閉蓋の開閉動作と排藁カッターへ排藁を案内する排藁押え部材の揺動動作とが干渉しないように作動させる作動手段を提供する。
【解決手段】排藁細断装置54の上部に後支点Xとして前部を上下に揺動させて開閉する開閉蓋56を備え、排藁搬送装置34の排藁を上方から押え込んで排藁細断装置54に案内する下方位置と、上方に離れた退避位置とに移動自在な排藁押え部材50を備えて、開閉蓋56を閉じ位置から開き位置に操作した後に、排藁押え部材50を退避位置から下方位置に操作し、排藁押え部材50を下方位置から退避位置に操作した後に、開閉蓋56を開き位置から閉じ位置に操作する作動手段を備えてある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脱穀装置の後部にカッターを収容した排藁細断装置と、排藁放出装置又は排藁結束装置を設けて、排藁細断装置の上面に後支点として前部を上下に揺動させて開閉する開閉蓋の開閉で排藁を長藁のまま圃場に放出する場合とカッターで細断する場合とに排藁の処理を切換えるように構成したコンバインの排藁処理部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、フィードチェーン6で株元を挾持しながら扱室8から搬出される排藁を、横倒れ姿勢で穂先側に寄せながら斜め後方側に搬送する排藁搬送装置23を備えるとともに、この排藁搬送装置23の搬送下手側に、供給刃51と切刃50からなるカッター24を収容した排藁細断装置23と、その後方に排藁放出装置25からなる排藁非細断処理装置を設けるとともに、排藁細断装置のカッター24の上方に後支点として前部を上下に揺動させて開閉するカバー58を備え、排藁を排藁細断装置で処理する細断処理状態のときにはカバー58を開いて排藁を上部開口よりカッター24へ案内し、排藁を排藁非細断処理装置で処理する非細断処理状態ときにはカバー58を閉じて排藁をカバー58の上方を通って後方の排藁非細断処理装置へ送るようにしてカバー58の開閉により排藁処理を切換えるように構成したものが知られている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1のものでは、排藁搬送装置23の搬送フレーム23に前支点で後部を上下に揺動固定自在なバネ板60を設けて、カッター24で長藁を細断ときには長藁をカッター24に供給するためにカバー58を開けるとともにバネ板60を下降姿勢にし、長藁で放出するときはバネ板60を上昇姿勢に切換えてカバー58を閉じるようにしていた。
【特許文献1】特開平10−215672号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1のものでは、バネ板とカバーとを別々の操作手段で排藁の細断処理状態と長藁処理状態とに切換えていたので、操作性等の面で改善の余地がある。
【0005】
本発明は、排藁の細断処理状態と長藁処理状態とに切換えるのに手間がかからずしかも誤操作のないようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
〔第1発明の構成〕
上記の目的を達成するため、第1発明は、脱穀フィードチェーンで株元を挾持しながら扱室から搬出される排藁を、横倒れ姿勢で後方側に搬送する排藁搬送装置を備え、この排藁搬送装置の搬送下手側に排藁を細断する排藁細断装置と、その後方に排藁を放出又は結束する長藁処理装置とを設け、排藁細断装置の上部に後支点として前部を上下に揺動させて開閉する開閉蓋を備え、排藁搬送装置の排藁を上方から押え込んで排藁細断装置に案内する下方位置と上方に離れた退避位置とに移動自在な排藁押え部材を備え、開閉蓋を閉じ位置から開き位置に操作した後に、排藁押え部材を退避位置から下方位置に操作し、排藁押え部材を下方位置から退避位置に操作した後に、開閉蓋を開き位置から閉じ位置に操作する作動手段を備えたものである。
【0007】
〔第1発明作用〕
第1発明によると、排藁を細断処理するときには、作動手段の作動により開閉蓋が閉じ位置から開き位置に操作された後に、排藁押え部材が退避位置から下方位置に操作され、又、排藁を長藁のまま藁処理をするときには、作動手段の作動により排藁押え部材が下方位置から退避位置に操作された後に、開閉蓋が開き位置から閉じ位置に操作される。
【0008】
〔第1発明の効果〕
第1発明によると、排藁細断装置の開閉蓋を開けて排藁を細断するときには、排藁押え部材を下方位置へ作動させることにより、排藁を上方から押え込んで排藁細断装置のカッターへ案内するようにしてあるので、乾燥した藁や麦藁等の重量の軽い藁をカッターへ送り込むときに浮き藁の発生を抑え、カッターへの藁の入り込みが良くなり、カッターの詰まり頻度が減少する。
【0009】
前記開閉蓋と排藁押え部材とは、排藁を細断処理するときには、開閉蓋を閉じ位置から開き位置に操作した後に、排藁押え部材を退避位置から下方位置に操作し、排藁を長藁のまま藁処理をするときには、排藁押え部材を下方位置から退避位置に操作した後に、開閉蓋を開き位置から閉じ位置に操作するようにしてあるので、開閉蓋と排藁押え部材とが干渉しないで、両者を確実に所定位置に揺動させることができ、藁作業の切換えが簡単且つスムーズに行えるという利点がある。
【0010】
〔第2発明の構成〕
第2発明は第1発明において、作動手段には単一の電動モータを備え、この電動モータに開閉蓋と排藁押え部材とをそれぞれ連係機構を介して連係させたものである。
【0011】
〔第2発明の作用効果〕
第2発明によると、単一の電動モータに開閉蓋と排藁押え部材とをそれぞれ連係機構を介して連係させることにより、排藁を細断処理するときには、開閉蓋を閉じ位置から開き位置に操作した後に、排藁押え部材を退避位置から下方位置に操作し、排藁を長藁のまま藁処理をするときには、排藁押え部材を下方位置から退避位置に操作した後に、開閉蓋を開き位置から閉じ位置に操作するようにしてあるので、作動手段を安価に提供できるとともに、メンテナンスも容易に行うことができる。
【0012】
〔第3発明の構成〕
第3発明は第1発明において、作動手段には単一の人為操作具を備え、この人為操作具に開閉蓋と排藁押え部材とをそれぞれ連係機構を介して連係させてある。
【0013】
〔第3発明の作用効果〕
別々の操作具をそれぞれ排藁細断装置の開閉蓋と排藁押え部材とに個々に連係させた場合は、操作順序を誤ると開閉蓋と排藁押え部材とが干渉して開閉蓋や排藁押え部材を変形させたり破損させたりする不都合が生じることがある。これに対して、第3発明によると、単一の人為操作具の操作により、排藁を細断処理するときには、開閉蓋を閉じ位置から開き位置に操作した後に、排藁押え部材を退避位置から下方位置に操作し、排藁を長藁のまま藁処理をするときには、排藁押え部材を下方位置から退避位置に操作した後に、開閉蓋を開き位置から閉じ位置に操作するようにしてあるので、開閉蓋と排藁押え部材とが干渉しないで、両者を確実に切換えることができるとともに、作動手段を安価に提供でき、又、メンテナンスも容易に行うことができる。
【0014】
〔第4発明の構成〕
第4発明は第1発明において、作動手段には複数の電動モータを備えるとともに、各電動モータに開閉蓋と排藁押え部材とをそれぞれ別々に連係機構を介して連係させて、これらをシーケンス制御する制御装置を備えたものである。
【0015】
〔第4発明の作用〕
第4発明によると、各電動モータを排藁細断装置の開閉蓋と排藁押え部材とにそれぞれ別々に連係機構を介して連係させて、排藁を細断処理するときには、一方の電動モータの作動により開閉蓋を閉じ位置から開き位置に操作した後に、他方の電動モータを作動させて排藁押え部材を退避位置から下方位置に操作し、又、排藁を長藁のまま藁処理をするときには、他方の電動モータを作動させて排藁押え部材を下方位置から退避位置に操作した後に、一方の電動モータを作動させて排藁細断装置の開閉蓋を開き位置から閉じ位置に操作するようにシーケンス制御をするようにしてある。
【0016】
〔第4発明の効果〕
第4発明によると、排藁細断装置の開閉蓋と排藁押え部材とを別々の電動モータに連係させて操作するようにしてあるので、電動モータを任意の配置しやすい場所に設置できるとともに、開閉蓋及び排藁押え部材を連係させる連係部材を省略したり短くして簡素な構成とすることができる利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態の一例を図面の記載に基づいて説明する。
〔コンバインの全体構成〕
図1および図2に示すように、左右一対のクローラ走行装置1で支持された機体フレーム2の前方側に刈取前処理装置3を配設し、機体フレーム2の前方右側には、操縦席4を配備した操縦部5を設けてある。
前記操縦部5の後方左側には、刈取前処理装置3側から搬送されてきた穀稈を受け継いで脱穀フィードチェーン6で把持しながら扱室22で脱穀処理する脱穀装置7を、その右側には脱穀処理された籾を貯留するグレンタンク8を配設し、さらに後方側には脱穀装置7から排出される排藁を放出または細断処理するための排藁処理部9を配設してある。
【0018】
クローラ走行装置1は、トラックフレーム10に前後方向での複数箇所に遊転自在に支持されている遊転輪11と、トラックフレーム10の後端部に支持されているクローラ緊張輪12とを装備してあり、機体フレーム2に固定のミッションケース(図外)に駆動回転自在に支持されている駆動スプロケット13から伝達される動力で駆動されるゴム製のクローラベルト14を、遊転輪11、クローラ緊張輪12及び駆動スプロケット13にわたって巻回してある。
【0019】
刈取前処理装置3は、前処理部主フレーム15の上部の左右横軸芯P1周りに油圧シリンダ16の駆動によって、上下に昇降自在に揺動するように構成されている。この刈取前処理装置3には、植立穀稈を分草するデバイダ17、デバイダ17で分草された穀稈を引き起こす引起し装置18、引き起こした穀稈を刈取るバリカン型の刈取装置19、刈取られた穀稈を後方の脱穀装置7に向けて搬送する縦搬送装置20を備えている。
【0020】
図2に示すように、前記脱穀装置7は、刈取前処理装置3で刈り取られた穀稈を、フィードチェーン6で後方に搬送される途中で扱処理するように、上部に前後軸心周りに回転駆動される扱胴21を軸支した扱室22を設けて脱穀部を構成するとともに、扱胴21の下方に張設された受網23から漏下してくる処理物を選別処理する選別部24を配設した構造となっている。
【0021】
選別部24は、漏下処理物を後方に揺動移送しながら篩い選別して藁屑類を装置後端の排塵口25から機外に排出する揺動選別装置26と、この揺動選別装置26に後方に向かう選別風を供給する唐箕27と、選別漏下される籾を回収してグレンタンク8に貯溜するスクリュー搬送式一番物回収部28と、下方に落下する二番物を回収して揺動選別装置26の移送方向上手側に還元させる二番物回収部29とを設け、扱室22の送塵口30から排出される処理物を再処理する分離ドラム31を、扱胴21の回転軸芯Oと直交する横軸芯P周りに回転する状態に配備するとともに、分離ドラム31の後方に、塵埃を吸引して機外に排出する排塵ファン32を設けて構成してある。なお、フィードチェーン6の終端部は側面視で分離ドラム31を越える状態に後方に延出してある。
【0022】
分離ドラム31は、送塵口30から排出される処理物にほぐし作用を与えるもので、図3に示すように、扱き口が位置する脱穀フィードチェーン6側(左側)とは反対側(右側)ほど大径のテーパ形状に形成してある。これにより送塵口30から出た藁屑と籾の混合物を処理量の多い右側から左側に向けて送りながら撹拌することで、処理物にほぐし作用を与えて藁屑と籾の分離を促進することで、排藁間に刺さり込んでいる刺さり籾を二番物回収部29に落下回収しやすくしている。分離ドラム31で撹拌されて生じた細かい藁屑や塵埃等は、唐箕27による選別風で吹き上げられた細かい藁屑や塵埃等とともに排塵ファン32で吸引して機外に排出するようにしている。
分離ドラム31としては、図8に示すように、扱胴21の回転軸芯Oと直交する横軸芯P方向に2つに分離した分離ドラム31a、31bに分割し、右側の分離ドラム31aを左側の分離ドラム31bよりも高速で回転させるように構成してもよい。又、右側の分離ドラム31aの半径を左側の分離ドラム31bの半径よりも大径に構成して、両者の回転速度を同速に、或いは右側の分離ドラム31aをドラム径の条件に加えて左側の分離ドラム31bよりも高速で回転させるように構成してもよい。
【0023】
排藁搬送装置34は、排藁の穂先側を上方から係止搬送する排藁穂先係止搬送装置35と株元側を挾持搬送する排藁株元挟持搬送装置36とから構成されている。排藁穂先係止搬送装置35は、後部の第1駆動スプロケット37と前部の第1従動スプロケット38とにわたって係止爪付きの無端回動チェーン39を巻回し、その始端部を分離ドラム31と排塵ファン32との間のほぼ直上方位置に位置させ、排藁が穂先側に斜め搬送されるように、平面視で脱穀フィードチェーン6の搬送作用経路に対し傾斜姿勢の搬送作用経路Rを形成してある。排藁株元挟持搬送装置36は、後部の第2駆動スプロケット40と前部の第2従動スプロケット41とを支持フレーム42で支持し、前後のスプロケット40,41に亘って爪付き無端回動チェーン43を巻回し、これの下方に挟持案内杆44を備えている。
【0024】
挟持案内杆44は、パイプ製の前案内杆45と、これの中において摺動移動自在に装備された後案内杆46とで構成され、前後の上昇付勢機構47によって爪付き無端回動チェーン43に押圧接触する状態に支持されている。後案内杆46は、プッシュプルワイヤ48を介してギヤードモータ49で駆動伸縮移動自在に構成されている。
【0025】
図3、図4、図5に示すように、排藁株元挟持搬送装置36の支持フレーム42と排藁穂先係止搬送装置35のカバー体との間に2本の排藁押え棒50を支承してある。この排藁押え棒50は、引張バネ51で下降付勢されているとともに支軸52周りで揺動自在に支承されており、排藁を後方の排藁放出装置53に向けて移動させるときは、図5に示すように上方に退避させ、排藁細断装置54で細断するときは、図4、図7に示すように下方に移動させるように構成されている。
【0026】
又、カッター55の上部を覆う後支点Xで開閉揺動自在な開閉蓋56を、リンク57,58,59、セクターギヤ60、ピニオンギヤ61等の連動手段62を介してステッピングモータ63で開閉駆動操作するように構成してある。そして、ギヤードモータ49及びステッピングモータ63を正逆に駆動操作するための制御装置64と切換スイッチ65とを設けてある。
【0027】
排藁処理部9は、脱穀された排藁を細断して圃場に放出したり、長藁状態のままで圃場に放出したりするものであり、詳しくは次の如く構成してある。
脱穀装置7の後部カバー66の後方に隣接して排藁カバー67が設けられている。排藁処理部9は、排藁カバー67の下に配設した排藁細断装置54と、その後方に配設した排藁放出装置53とで構成されている。
【0028】
排藁株元挟持搬送装置36の挾持案内杆44における後案内杆46を短縮側に調節すると、排藁を排藁細断装置54の上方近くまで搬送してから搬送を解除し、後案内杆46を伸長側に調節すると、排藁を排藁細断装置54の上方を通過させて排藁カバー67の後端側の排出口付近まで搬送してから搬送を解除するように構成してある。
【0029】
これにより、排藁搬送装置34は、脱穀フィードチェーン6により扱室22から搬出された排藁を脱穀フィードチェーン6から横倒れ姿勢で受け継いでその横倒れ姿勢のままで穂先側に寄せながら機体後方側に搬送する。排藁株元挟持搬送装置36の挾持案内杆44の後案内杆46を短縮側に調節した場合は、排藁搬送装置34で搬送している排藁を排藁細断装置54の上方近くまで搬送して落下させる。後案内杆46を伸長側に調節した場合は、排藁搬送装置34で搬送している排藁を排藁細断装置54の上方を通過させて排藁カバー67の後端側まで搬送して落下させる。
【0030】
図3に示すように、前記排藁カバー67の穂先側の横側壁部69に開口(図示せず)を設け、この開口に対する揺動開閉自在な開閉蓋70を備えてある。前記開口は、排藁搬送装置34で排藁を排藁カバー67の後端側に搬送していく際に、図3に二点鎖線で示す如く排藁の穂先側が通過していくように配置してある。
【0031】
次に排藁細断装置54及び排藁放出装置53について説明する。
図4に示すように、排ワラ細断装置54のカッター55は、排ワラの稈身方向に平行な2本の駆動回動自在なカッター軸91,92の軸芯方向に並べて一体回動自在に備えてある回転受刃93と回転切刃94によって排ワラを稈身方向に細断し、細断された排ワラはカッター55の下方に位置する排出口95から圃場に落下させる。
【0032】
排藁細断装置54のカッターカバー71の後部に左右一対の支持ブラケット72を介して支承した支持軸73に排藁を受け止める複数本の排藁受止め杆からなるドロッパ74を固設してある。このドロッパ74を構成する各排藁受止め杆は板バネで構成してあり、その遊端部は、排藁を未刈地から離れる方に放出されるように、右斜め後方に傾斜させてある。ドロッパ74は、スプリング(図示せず)で上方側に付勢されているとともに図4に示す姿勢より上方に揺動しないようにストッパー(図示せず)で受止められている。
【0033】
排藁放出装置53には、排藁搬送装置34の搬送終端で放出された排藁をドロッパ74に落下案内する2本の案内棒75,76を設けてある。この案内棒75,76は排藁搬送装置34の搬送終端側を支持する支持部材77から延設したブラケット(図示せず)に位置調節自在にボルト止めしてある。案内棒75,76を収納姿勢にするときはボルトを緩めてカッターカバー71の後面に沿わせて収納する。
【0034】
機体右側の案内棒75の後方延出長さは左側の案内棒76よりも短くして、受止め案内状態においてカッターカバー71の後面からの距離が、穂先側となる右側を短く、株元側となる左側を少し長くしてある。これによって、ドロッパ74で受止められた状態では、排藁は、案内棒75,76の縦杆部分75a,76aで支持されて一時的に止められる。従って、排藁がドロッパ74に集積し、その荷重が一定以上重たくなってドロッパ74が下降揺動した際、排藁がドロッパ74が延出された斜め外方に放出される。
【0035】
次に排藁細断装置54の開閉蓋56と排藁押え部材50を揺動させる作動手段について説明する。
前記排藁押え部材としての排藁押え棒50の支軸52より上方に延長した部材80には引張バネ51で排藁押え棒50を下方に付勢しているとともに、延長部材80から引張バネ51に抗して排藁押え棒50を上方に引上げるために、端部に引張スプリング81を取り付けたワイヤー82を、滑車83を介してセクタギヤ60と一体に揺動するレバー84に取り付けてある。
【0036】
図5は、開閉蓋56を閉じた状態で、レバー84は、ワイヤー82がセクタギヤ60の回動軸芯P2を通るときのワイヤー82の直線と重なる位置よりも5〜6度上方にオーバーした位置にあるとき(このとき、ワイヤー82のレバー84に対する連結点は、ワイヤー84が回転軸芯P2を通るときの直線よりも少し上方に位置する状態)で、この状態のときに開閉蓋56が閉じ状態となる。この状態で、リンク58とリンク59のなす角度は95〜96度の鈍角の状態にあり、この状態からステッピングモータ63を正転駆動させるとセクタギヤ60が時計回りに回転し、レバー84が図5の状態から10度余り回転する間は排藁押え棒50は殆ど下降しない。これに対して、リンク59が時計回りに回転してリンク59に付設され、リンク58の長孔58aに係合した係合ピン59aが時計回りに回動するに伴って引張スプリング85の引張力により開閉蓋56が大きく開閉作動し、排藁押え棒50が大きく下降する前に、開閉蓋56が開放位置近く、又は開放位置まで開き、これに引き続くステッピングモータ63の駆動で、排藁押え棒50が開閉蓋56の前方を通って下降する。開閉蓋56が引張スプリング85の引張力で開いた後は、リンク59の先端の係合ピン59aはリンク58の長孔58a内を時計回りに回転することができ、これによって、開閉蓋56が開いた後、リンク59の時計回りの回転で排藁押え棒50が下降できるようになっている。排藁押え棒50は、延長部材80がストッパ88に接当すると下降が止まる。
【0037】
開閉蓋56を揺動させるリンク57は、コイルスプリング89により反時計方向に付勢されているとともに、開閉蓋56がストッパ87に接当する開放位置までは開閉蓋56に付設した止め片90に接当した位置固定状態にあり、開閉蓋56がストッパ87に接当した後、図6の位置の排藁押え棒50はステッピングモータ63の引き続く駆動で図7に示すように下降するが、ステッピングモータ63が駆動し続けてセクタギヤ60及びリンク59が時計方向に回転してリンク57が後支点X回りに時計方向に引っ張られると、開閉蓋56がストッパ87に接当した状態のまま、リンク57は時計方向に回動することができる。
【0038】
図7の状態からステッピングモータ63を逆転させると、リンク57が止め片90に接当するまで半時計方向に回転し、リンク57が止め片90に接当するとリンク59の先端の係合ピン59aが長孔58a内を半時計回りに移動して、排藁押え棒50は上昇するとともに、その後、排藁押え棒50が開閉蓋56の上端よりも上昇した時点で開閉蓋56をスプリング85に抗してリンク57を半時計方向に回転させて、図5の閉じ状態になる。
【0039】
次に切換スイッチ65の操作による作動状態について説明する。
切換スイッチ65をドロッパ位置Dに操作すると、先ずギヤードモータ49が正転駆動され、後案内杆46を、その後端が第2駆動スプロケット40の部位に位置するまで後方に突出移動させ、次いでステッピングモータ63を逆転駆動して開閉蓋56を閉じ操作し、図5に示すように、排藁の放出位置が後寄りになって排藁をドロッパ74に導く長藁処理状態が得られる。
【0040】
切換スイッチ65をカッター位置Kに操作すると、先ずステッピングモータ63を正転駆動して開閉蓋56を開き操作し、次いでギヤードモータ49が逆転駆動され、後案内杆46を前方に引込み移動し、図7に示すように、排藁の放出位置が前寄りになって排藁をカッター55に導く細断処理状態が得られる。この細断処理状態では、排藁押え棒50の後部がカッター55に近づいて、軽い排藁を後方に飛散しないように上から押え込むように送り込むことができるので、詰まり無く確実良好に排藁を細断することができる。
【0041】
〔別実施の形態〕
前記排藁細断装置54の後側の排藁放出装置53に代えて排藁結束装置を搭載してもよい。排藁放出装置や排藁結束装置を長藁処理装置と総称する。
【0042】
上記実施の形態では、排藁押え棒50を左右で2本設けたが、支軸52に、左右に所定間隔を隔てて3本以上の棒材、又は1枚の広幅の排藁押え板を設けたものでもよい。これら排藁押え棒及び排藁押え板を排藁押え部材と総称する。
【0043】
上記実施の形態では、作動手段として単一のステッピングモータ63に開閉蓋56と排藁押え棒50とをそれぞれ連係機構を介して連係させる構成としたが、電動モータ個別に備え、各電動モータに開閉蓋56と排藁押え棒50とをそれぞれ別々に連係機構を介して連係させて、これらを制御装置64でシーケンス制御するように構成してもよい。
【0044】
上記実施の形態では、作動手段としてステッピングモータ63で制御するように構成したが、油圧モータや人為操作具でもよい。作動手段に手動レバーやペダル等の単一の人為操作具を用いた場合は、人為操作具に開閉蓋と排藁押え部材とをそれぞれ連係機構を介して連係させるように構成すればよい。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】コンバイン全体の側面図
【図2】コンバインの脱穀処理部を示す側面図
【図3】コンバインの排藁処理部を示す平面図
【図4】コンバインの排藁処理部を示す側面図
【図5】排藁切断装置の開閉蓋と排藁押え部材の作動状態を示す側面図
【図6】排藁切断装置の開閉蓋と排藁押え部材の作動状態を示す側面図
【図7】排藁切断装置の開閉蓋と排藁押え部材の作動状態を示す側面図
【図8】分離ドラムの別構造を示す排藁処理部の平面図
【符号の説明】
【0046】
6 脱穀フィードチェーン
22 扱室
34 排藁搬送装置
50 排藁押え部材
53 長藁処理装置
54 排藁細断装置
56 開閉蓋
63 モータ
64 制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
脱穀フィードチェーンで株元を挾持しながら扱室から搬出される排藁を、横倒れ姿勢で後方側に搬送する排藁搬送装置を備え、この排藁搬送装置の搬送下手側に排藁を細断する排藁細断装置と、その後方に排藁を放出又は結束する長藁処理装置とを設け、前記排藁細断装置の上部に後支点として前部を上下に揺動させて開閉する開閉蓋を備え、前記排藁搬送装置の排藁を上方から押え込んで前記排藁細断装置に案内する下方位置と上方に離れた退避位置とに移動自在な排藁押え部材を備え、
前記開閉蓋を閉じ位置から開き位置に操作した後に、前記排藁押え部材を退避位置から下方位置に操作し、前記排藁押え部材を下方位置から退避位置に操作した後に、前記開閉蓋を開き位置から閉じ位置に操作する作動手段を備えてあるコンバインの排藁処理部構造。
【請求項2】
前記作動手段には単一のモータを備え、このモータに前記開閉蓋と前記排藁押え部材とをそれぞれ連係機構を介して連係させてある請求項1記載のコンバインの排藁処理部構造。
【請求項3】
前記作動手段には単一の人為操作具を備え、この人為操作具に前記開閉蓋と前記排藁押え部材とをそれぞれ連係機構を介して連係させてある請求項1記載のコンバインの排藁処理部構造。
【請求項4】
前記作動手段には複数のモータを備えるとともに、各モータに前記開閉蓋と前記排藁押え部材とをそれぞれ別々に連係機構を介して連係させて、これらをシーケンス制御する制御装置を備えてある請求項1記載のコンバインの排藁処理部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−81843(P2010−81843A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−253301(P2008−253301)
【出願日】平成20年9月30日(2008.9.30)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】