説明

コンバイン

【課題】従来の脱穀部のカバーに設けた照明装置は扱口の近傍にあるため、ライト部が引っ掛かって穂先を傷めたり、ライト部が少しでも動くと場合によっては扱口が全く照明されなくなる、という問題があった。更に、扱口近傍に扱深さ目印を設けた場合、扱深さ目印が全く照明されなくなったり、前記ライト部が作業者からの視線を遮って扱深さ目印が視認できなくなる、という問題もあった。
【解決手段】カバー63には扱口15を照明可能な照明装置13を設け、該照明装置13のライト部72を、前記扱口15から離間した位置に設けると共に、前記カバー63に略平行に回動して扱口15を照明可能な構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、刈取部から穀稈搬送装置によって搬送されてきた穀稈を、扱口を通して脱穀部内に搬入して脱穀するコンバインに関し、特に、前記扱口を照らす照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、コンバインにおいて、穀稈を刈取部で分草してから脱穀部内へ搬入するまでの処理状況を監視するための照明技術として、刈取部の穀稈引起し装置の上部後方から該刈取部後方の穀稈搬送装置にかけて上方を覆うようにして防塵装置を設け、該防塵装置を構成するケースに、前方と下側を照明可能な固定式の作業灯(以下、「照明装置」とする)を内設する技術(例えば特許文献1)が知られている。
また、脱穀部の前カバーに扱口を開口し、該前カバーの前面で扱口の直上近傍位置に、穀稈搬送装置によって搬送されてくる穀稈を照明可能な前後回動式の照明装置を配設する技術も知られている。
【特許文献1】特開2003−245005号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、前者の、防塵装置内に設けた照明装置は、刈取部前面から穀稈搬送装置前部にかけての範囲は照らすことができるが、更に後方に位置する扱口及びその周辺はほとんど照らすことができないため、扱口から脱穀部内に入る刈取穀稈の穂先位置を夜間は十分には視認することができずに扱深さの調整が不能となり、扱深さが浅くなって扱残し粒が増加したり、逆に扱深さが深くなって負荷が過大となり選別性能や処理効率が低下する、という問題があった。
また、後者の、脱穀部の前カバーに設けた照明装置は、穀稈搬送装置から扱口にかけての範囲を照らすことはできるものの、扱口のすぐ近傍に設けられているために、搬送されてきた穀稈が、この照明装置から突出した発光部(以下、「ライト部」とする)に引っ掛かり易く、穂先を傷めたり穀稈が扱口に詰まったりして穀粒品質や脱穀処理効率が低下する、あるいは、作業中の機体振動等によってライト部が僅かに動くだけで照明領域が扱口から簡単に外れ、特に、照明装置が前後回動式の場合には、ライト部が前方に僅かに回動するだけで扱口は全く照明されなくなり、穂先位置を視認できなくなって扱深さの調整ができなくなる、という問題があった。更に、前記穂先位置を適正位置に合わせるため扱口近傍に適正扱深さ設定用の目印(以下、「扱深さ目印」とする)を設けている場合、ライト部が該扱深さ目印に近すぎるために、扱口の場合と同様に、ライト部が僅かに動くだけで照明領域が扱深さ目印から簡単に外れ、特に、照明装置が前後回動式の場合、ライト部が前方に僅かに回動するだけで扱深さ目印は全く照明されなくなり、加えて、ライト部と扱深さ目印との位置関係によっては、運転席上の作業者から扱深さ目印への視線が、このライト部によって妨げられ、その結果、扱深さ目印を視認できなくなり、穂先位置を適正扱深さに設定できなくなる、という問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
すなわち、請求項1においては、刈取部からの穀稈を、脱穀部のカバーに設けた扱口を通して脱穀部内に搬入して脱穀するコンバインにおいて、前記カバーには扱口を照明可能な照明装置を設け、該照明装置のライト部を、前記扱口から離間した位置に設けると共に、前記カバーに略平行に回動して扱口を照明可能な構成としたものである。
請求項2においては、前記カバーで扱口近傍には、穀稈の穂先に合わせて適正扱深さを確保するための扱深さ目印を設けるものである。
請求項3においては、前記コンバインには、前記脱穀部への動力を断接する脱穀クラッチと、前記刈取部への動力を断接する刈取クラッチとを設け、前記脱穀クラッチまたは刈取クラッチの少なくとも一方を接続操作すると前記照明装置が連動して点灯し、前記脱穀クラッチおよび刈取クラッチのいずれも切断操作すると前記照明装置が連動して消灯するように構成する。
【発明の効果】
【0005】
本発明は、以上のように構成したので、以下に示す効果を奏する。
すなわち、請求項1においては、刈取部からの穀稈を、脱穀部のカバーに設けた扱口を通して脱穀部内に搬入して脱穀するコンバインにおいて、前記カバーには扱口を照明可能な照明装置を設け、該照明装置のライト部を、前記扱口から離間した位置に設けると共に、前記カバーに略平行に回動して扱口を照明可能な構成としたので、搬送されてきた穀稈が照明装置に引っ掛かって穂を傷めたり穀稈が扱口に詰まったりすることがなく、穀粒品質や脱穀処理効率の低下を確実に防止することができる。更に、ライト部が少々動いても、その照明領域は扱口近傍を扱口に沿って移動するだけで、扱口を全く照明できなくなるといったことはなく、扱口に搬入される穀稈の穂先の位置を確実に視認して扱深さの調整を行い、これにより、扱深さが浅くなって扱残し粒が増加したり扱深さが深くなって負荷が過大となることがなく、選別性能や脱穀処理効率を更に高めることができる。
請求項2においては、前記カバーで扱口近傍には、穀稈の穂先に合わせて適正扱深さを確保するための扱深さ目印を設けるので、扱口近傍の扱深さ目印は前記ライト部から十分に離間させることができ、該ライト部が少々動いても、その照明領域は扱深さ目印周辺を幅方向にわずかに移動するだけで、扱深さ目印を全く照明できなくなるといったことはなく、更に、運転席上の作業者から扱深さ目印への視線がライト部によって妨げられることがなく、扱深さ目印を確実に視認することができる。このため、扱口に搬入される穀稈の穂先の位置をこの扱深さ目印に確実に合わせることができ、扱深さをより精度良く調整することができるのである。
請求項3においては、前記コンバインには、前記脱穀部への動力を断接する脱穀クラッチと、前記刈取部への動力を断接する刈取クラッチとを設け、前記脱穀クラッチまたは刈取クラッチの少なくとも一方を接続操作すると前記照明装置が連動して点灯し、前記脱穀クラッチおよび刈取クラッチのいずれも切断操作すると前記照明装置が連動して消灯するように構成するので、いちいち作業の度に手動で照明装置の照明スイッチを入切する必要がなくなり、作業操作性が著しく向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
次に、発明の実施の形態を説明する。
図1は本発明に関わるコンバインの全体構成を示す側面図、図2は同じく平面図、図3は同じく正面図、図4は刈取部の側面図、図5は照明装置の構成を示す脱穀部前部の側面図、図6は同じく正面図、図7は反射鏡装置の構成を示すコンバイン前部の平面図、図8は照明装置の作動構成を示すブロック図である。
【0007】
まず、本発明に係わるコンバイン1の全体構成について、図1乃至図3により説明する。
コンバイン1は、左右のクローラ式走行装置18L・18Rにより走行可能とし、19L・19Rは、トラックフレーム3に架設する左右の機体フレーム、4は、フィードチェーン23等を左側に張架して扱胴21及び処理胴を内蔵する脱穀部、5は、該脱穀部4の下方に位置し、脱穀された穀粒を選別する選別装置、29は、該選別装置5により選別された穀粒を揚穀筒30を介して搬入する穀粒タンク、20は、該穀粒タンク29の穀粒を機外に搬出する排出オーガであり、6は、排藁チェーン28の終端を臨ませる排藁処理部である。そして、前記脱穀部4の前部には本発明の照明装置13が設けられている。
【0008】
更に、7は、刈刃24や引起し装置31等を備える刈取部、8は、該刈取部7後方で、丸型の操向ハンドル32や運転席33を配置したキャビン、9は、該キャビン8側方の左機体フレーム19L前部上で、前記刈取部7を上下又は左右に回動自在に支持する回動支持部、25は、該回動支持部9上の刈取部7を、刈取フレーム26を介して昇降させる油圧シリンダである。そして、前記刈取部7の前方には後方確認用の反射鏡装置14が配置されている。
【0009】
また、前記キャビン8の下方で右機体フレーム19Rの前部には、エンジン11、該エンジン11冷却用のラジエータ10などからなる空冷装置2、及びミッションケース12が配置され、エンジン11からの動力により、クローラ式走行装置18L・18Rを駆動して走行すると共に、穀稈をコンバイン1の前方から連続的に刈取って脱穀するように構成している。
【0010】
次に、前記刈取部7の構造と、刈取部7から前記脱穀部4までの穀稈の搬送構成について、図1、図3、図4により説明する。
刈取部7においては、前記回動支持部9に水平回動自在に枢支された回動体34から、右方に筒状の第1刈取フレーム39が延設され、該第1刈取フレーム39の右側より前下方には、筒状の第2刈取フレーム40が延設され、該第2刈取フレーム40の下端は、左右横方向に伸延する筒状の第3刈取フレーム41の途中部に連結されている。
【0011】
該第3刈取フレーム41の左側端部より前上方へ向けては、筒状の引起し縦フレーム42を立ち上げるとともに、該第3刈取フレーム41の右側端部より前上方へ向けて、図示せぬ支持フレームを立ち上げ、両フレームの上端間には引起し横フレーム43を横架している。該引起し横フレーム43の左右途中部より後方には、水平フレーム44を突設し、該水平フレーム44下面途中部より図示せぬフレームを前記第2刈取フレーム40の途中部に固設している。前記第3刈取フレーム41の左右側部からは、それぞれ前方へ向けて左右一対の下側連結フレーム45・45を延設しており、以上のようにして前記刈取フレーム26が構成されている。
【0012】
このような刈取フレーム26の前部には、穀稈を分草する分草板46と、穀稈を起立させる引起し装置31とが配設されている。このうちの引起し装置31は、対向するようにして配置された複数の引起タイン47を有する引起しケース48から成ると共に、引起し装置31の下部は、前記下側連結フレーム45の途中部より上方に立設した支持体49の上部に固設されている。これにより、前記分草板46を介して取り入れた未刈穀稈は、引起タイン47で引き起こされ、そのまま保持されるようにしている。なお、前記下側連結フレーム45の前後途中部間には、刈刃装置50が支持フレーム52を介して固設されている。
【0013】
また、前記引起し装置31より後方には、次のような各種搬送装置が配設されている。まず、引起し装置31の引起ケース48の直後方には、引き起こして保持された未刈穀稈の株元側を掻込むスターホイル53や掻込ベルト54から成る掻込装置55と、掻き込んだ未刈穀稈の株元を刈刃24で切断する前記刈刃装置50とが設けられ、該刈刃装置50の上方には、前記掻込装置55により掻き込まれ切断された刈取穀稈の株元を後方に送る複数の下部搬送装置56が配置されている。そして、該下部搬送装置56上方には、刈取穀稈の穂部を搬送する複数の上部搬送装置57や穂先搬送装置58が配置されている。
【0014】
更に、前記下部搬送装置56終端位置において、刈取穀稈の株元側は、下部搬送装置56後方の縦搬送装置59に受け継がれると共に、刈取穀稈の穂先側は、上部搬送装置57の後半部で挟持して搬送され、その後、前記縦搬送装置59の送り終端部の補助搬送チェーン60に受け継がれ、前記フィードチェーン23に適正姿勢で受け継がれる。これにより、前記分草板46、引起し装置31、掻込装置55、刈刃装置50を介して刈り取られた刈取穀稈は、下部搬送装置56、上部搬送装置57、穂先搬送装置58、縦搬送装置59等によって、脱穀部4前部に開口された扱口15まで搬送され、その後、この刈取穀稈の穂先は、該扱口15を通って脱穀部4内に供給されて、前記扱胴21により脱穀処理されるのである。
【0015】
次に、前記照明装置13について、図5、図6、図8により説明する。
図5、図6に示すように、照明装置13を取り付けた脱穀部4前部においては、前記フィードチェーン23に受け継がれた穀稈は、このフィードチェーン23と該フィードチェーン23上方に対向して配置した押さえ板64との間に挟持されながら搬送され、扱胴21の回転に伴って、扱口15から扱室65内に強く引き込まれつつ脱穀処理が行われる。該扱胴62の上方は、脱穀カバー61によって被装され、該脱穀カバー61の穀粒タンク29側端部は、コンバイン1の機枠に枢支されており、脱穀カバー61の外側を上方に回動させ、扱胴21内部のメンテナンス作業が容易に行えるようにしている。
【0016】
そして、前記脱穀カバー61は、正面視門型で扱室65上面を形成する本体カバー62と、該本体カバー62の前部にボルト等の連結具66によって固定された前カバー63とから構成され、該前カバー63の前面63aの上部左右略中央に、本発明に係わる照明装置13が取り付けられている。但し、前カバー63の上面前部に取り付けるように構成することも可能である。
【0017】
該照明装置13においては、側面視S字状の取付ステー69の下部がボルト等の締結具70によって前記前面63aの上部に固定されると共に、この取付ステー69の上部からは支軸71が前方に突設され、該支軸71の基部に、角度調節ノブ71aが設けられている。これにより、支軸71を矢印68のように前面63aに略平行に左右回動させた後、前記角度調節ノブ71aを締め付けて、支軸71を所定の角度に固定できるようにしている。
【0018】
この支軸71の先部にはライト部72が固設されている。該ライト部72は、前記支軸71先端に上端が固定された筒状の本体73と、該本体73下部に固定されたフード74と、該フード74下面に取り付けられた発光体のランプ75と、該ランプ75を覆うようにして前記フード74に取り付けられた透明体又は半透明体から成るケース76とから構成されている。
【0019】
このような構成において、前記ライト部72は、扱口15に対し、前後方向には前方に距離36だけ離れ、上下方向には上方に距離37だけ離れた位置に配置されており、扱口15に搬入中の穀稈77は、離れた位置からライト部72によって照明されるため、穀稈77の搬送が近くのライト部72によって阻害されることが全くなく、しかも、前記ランプ75により扱口15を広い照明領域35によって常に照らすことができるのである。
【0020】
更に、前記ライト部72は、前記支軸71を中心として前面63aに略平行に左右回動できることから、前記照明領域35を容易に変更することができる。例えば、ライト部72下方を均一に照らす通常の照明領域35から、扱口15に入りつつある穀稈77を中心に照らす照明領域35aへの変更は、角度調節ノブ71を一旦緩めてライト部72を垂直位置80から傾斜位置81まで角度79だけ回動させて傾斜姿勢72aとした後、再び角度調節ノブ71を締め付けることによって容易に行うことができる。従って、運転席上の作業者は、照明領域を迅速に適宜調整することができ、扱口15を通って搬入される穀稈77やその穂先78の状態等を、明るい照明下で迅速かつ確実に視認することができるのである。なお、前記取付ステー69とライト部72との間にL型の間座を組み込んでもよく、これにより、左右方向だけでなく前後方向にも回動できるようになり、全方向の所望の位置に照明可能としてもよい。
【0021】
すなわち、刈取部7からの穀稈77を、脱穀部4のカバーである前カバー63に設けた扱口15を通して脱穀部4内に搬入して脱穀するコンバイン1において、前記前カバー63には扱口15を照明可能な照明装置13を設け、該照明装置13のライト部72を、前記扱口15から離間した位置に設けると共に、前記前カバー63に略平行に回動して扱口15を照明可能な構成としたので、搬送されてきた穀稈77が照明装置13に引っ掛かって穂を傷めたり穀稈77が扱口15に詰まったりすることがなく、穀粒品質や脱穀処理効率の低下を確実に防止することができる。更に、ライト部72が少々動いても、その照明領域は扱口15近傍を扱口15に沿って移動するだけで、扱口15を全く照明できなくなるといったことはなく、扱口15に搬入される穀稈77の穂先78の位置を確実に視認して扱深さの調整を行い、これにより、扱深さが浅くなって扱残し粒が増加したり扱深さが深くなって負荷が過大となることがなく、選別性能や脱穀処理効率を更に高めることができる。
【0022】
また、前記前カバー63の前面63aの下端近傍に扱深さ目印67を設けることにより、作業中は、この扱深さ目印67とその延長ライン82上に、穀稈77の穂先78が絶えず搬送されてくるように扱深さを調整する構成とすることができる。これにより、この扱深さ目印67がなく、作業者が穂先78の位置を適正と思われる大体の位置に合わせて作業する場合と比べ、穂先位置の正否を、より一層迅速かつ正確に判断することができる。
【0023】
すなわち、前記カバーの前カバー63で扱口15近傍には、穀稈77の穂先78に合わせて適正扱深さを確保するための扱深さ目印67を設けるので、扱口15近傍の扱深さ目印67は前記ライト部72から十分に離間させることができ、該ライト部72が少々動いても、その照明領域は扱深さ目印67周辺を幅方向にわずかに移動するだけで、扱深さ目印67を全く照明できなくなるといったことはなく、更に、運転席33上の作業者から扱深さ目印67への視線がライト部72によって妨げられることがなく、扱深さ目印67を確実に視認することができる。このため、扱口15に搬入される穀稈77の穂先78の位置をこの扱深さ目印67に確実に合わせることができ、扱深さをより精度良く調整することができるのである。
【0024】
また、図8に示すように、このような照明装置13には、該照明装置13の前記ランプ75への電力供給の入切を行う照明スイッチ95が接続され、該照明スイッチ95は、他の照明装置や刈取部7昇降用の前記油圧シリンダ25のような種々の装置を制御するためのコントローラ96に接続されている。そして、該コントローラ96には、脱穀クラッチレバー101の脱穀クラッチ「接続」操作によってONとなる脱穀スイッチ102と、刈取クラッチレバー103の刈取クラッチ「接続」操作によってONとなる刈取スイッチ104とが接続されている。なお、これら脱穀クラッチレバー101、刈取クラッチレバー103は前記運転席33近傍に配設されている。
【0025】
そして、前記脱穀部4への動力伝達機構98においては、一対のプーリと、該一対のプーリに巻回されるベルトと、該ベルトの中途部に設けられるテンションプーリと、該テンションプーリを支持するアームと、該アームを回動させるアクチュエータ97とが備えられ、該アクチュエータ97が前記コントローラ96に接続されている。これらテンションプーリ、アーム、及びアクチュエータ97によって、エンジン11から脱穀部4までの動力伝達を断接する脱穀クラッチが形成されている。
【0026】
前記刈取部7への動力伝達機構100においても同様に、一対のプーリと、該一対のプーリに巻回されるベルトと、該ベルトの中途部に設けられるテンションプーリと、該テンションプーリを支持するアームと、該アームを回動させるアクチュエータ99とが備えられ、該アクチュエータ99も前記コントローラ96に接続されると共に、これらテンションプーリ、アーム、及びアクチュエータ99とによって刈取クラッチが形成されている。
【0027】
このような構成において、前記脱穀クラッチレバー101を「入」操作して脱穀スイッチ102をONにすると、コントローラ96が信号を発してアクチュエータ97を作動させ、テンションプーリが回動してベルトにテンションがかかるようになり、エンジン11からの動力が、動力伝達機構98を介して脱穀部4へ伝達されるようになる。同時に、コントローラ96からの信号は前記照明スイッチ95にも送信され、該照明スイッチ95が「入」となって前記ランプ75に電力が供給され、照明装置13が点灯する。
【0028】
同様にして、前記刈取クラッチレバー103を「入」操作して刈取スイッチ104をONにすると、コントローラ96が信号を発してアクチュエータ99を作動させ、テンションプーリが回動してベルトにテンションがかかるようになり、エンジン11からの動力が、動力伝達機構100を介して刈取部7へ伝達されるようになる。同時に、コントローラ96からの信号は前記照明スイッチ95にも送信され、該照明スイッチ95が「入」となって前記ランプ75に電力が供給され、照明装置13が点灯する。
【0029】
そして、前記脱穀クラッチレバー101および刈取クラッチレバー103のいずれも「切」操作すると、前記脱穀スイッチ102、刈取スイッチ104がともにOFFとなり、エンジン11から脱穀部4、刈取部7への動力伝達が切断されると共に、照明スイッチ95も「切」となって前記ランプ75に電力が供給されなくなり、照明装置13が消灯する。
【0030】
すなわち、前記コンバイン1には、前記脱穀部4への動力を断接する脱穀クラッチと、前記刈取部7への動力を断接する刈取クラッチとを設け、前記脱穀クラッチまたは刈取クラッチの少なくとも一方を接続操作すると前記照明装置13が連動して点灯し、前記脱穀クラッチおよび刈取クラッチのいずれも切断操作すると前記照明装置13が連動して消灯するので、いちいち作業の度に手動で照明装置13の照明スイッチ95を入切する必要がなくなり、作業操作性が著しく向上する。なお、前記脱穀クラッチ、刈取クラッチの構造については、本実施例のようなベルトテンション式ではなくギア式等であってもよく、エンジン11から脱穀部4や刈取部7への動力伝達を、確実に断接可能なものであればよく、特に限定されるものではない。
【0031】
次に、前記反射鏡装置14について、図3、図7により説明する。
反射鏡装置14においては、前記引起し装置31の後上端に設けられたフロントゲート38の左端からアーム16が前方に突設され、該アーム16の前端には、作業者が前記キャビン8内の運転席33からコンバイン1の左側部や後方を確認できるように、ミラー17が固設されている。
【0032】
ここで、従来のミラー90は、フロントゲート38上、またはその後方に位置されていたため、前記キャビン8のルーフ89を支持する四本のピラー85・86・87・88のうちの左前部のピラー85によって、その視野に制限を受けていた。つまり、作業者からミラー90のミラー面90aを視認可能な視線ライン91・92及びその間の範囲は、前記ピラー85によってかなりの部分が遮られていたため、作業者はわざわざ顔を大きく前方に出してからミラー面90aを視認する必要があり、コンバイン1の左側部や後方を迅速に確認することができず、円滑な運転操作ができない、という問題があった。
【0033】
そこで、本実施例では、ミラー17を、フロントゲート38よりも前方に配置し、作業者からミラー17のミラー面17aを視認可能な視線ライン93・94及びその間の範囲を、前記ピラー85よりも常に前方に設け、作業者の視線がピラー85によって遮られないようにしている。
【0034】
すなわち、キャビン8内に運転席33を設け、該運転席33の側方又は前方に刈取部7を備えると共に、該刈取部7で前記運転席33とは反対側の側端に反射鏡装置14を備えたコンバイン1において、前記反射鏡装置14におけるミラー17のミラー面17aを前記刈取部7の後上端よりも前方に配置することにより、運転席33上の作業者と前記ミラー面17aとの間の視線を確保可能な構成としたので、作業者はわざわざ顔を大きく前方に出してからミラー面17aを視認する必要がなく、運転席33にすわったままでコンバイン1の左側部や後方を迅速に確認することができ、運転操作性が大きく向上するのである。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明は、コンバイン以外でも、照明装置や検査装置を対象物の近くに設けている作業機械や各種検査ラインの用途にも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明に関わるコンバインの全体構成を示す側面図である。
【図2】同じく平面図である。
【図3】同じく正面図である。
【図4】刈取部の側面図である。
【図5】照明装置の構成を示す脱穀部前部の側面図である。
【図6】同じく正面図である。
【図7】反射鏡装置の構成を示すコンバイン前部の平面図である。
【図8】照明装置の作動構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0037】
1 コンバイン
4 脱穀部
7 刈取部
13 照明装置
15 扱口
63 カバー
67 扱深さ目印
72 ライト部
77 穀稈
78 穂先

【特許請求の範囲】
【請求項1】
刈取部からの穀稈を、脱穀部のカバーに設けた扱口を通して脱穀部内に搬入して脱穀するコンバインにおいて、前記カバーには扱口を照明可能な照明装置を設け、該照明装置のライト部を、前記扱口から離間した位置に設けると共に、前記カバーに略平行に回動して扱口を照明可能な構成としたことを特徴とするコンバイン。
【請求項2】
前記カバーで扱口近傍には、穀稈の穂先に合わせて適正扱深さを確保するための扱深さ目印を設けることを特徴とする請求項1記載のコンバイン。
【請求項3】
前記コンバインには、前記脱穀部への動力を断接する脱穀クラッチと、前記刈取部への動力を断接する刈取クラッチとを設け、前記脱穀クラッチまたは刈取クラッチの少なくとも一方を接続操作すると前記照明装置が連動して点灯し、前記脱穀クラッチおよび刈取クラッチのいずれも切断操作すると前記照明装置が連動して消灯するように構成することを特徴とする請求項1または請求項2記載のコンバイン。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−244231(P2007−244231A)
【公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−69051(P2006−69051)
【出願日】平成18年3月14日(2006.3.14)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】