説明

コンバイン

【課題】刈取装置3の駆動機構(刈取入力ベルト機構)を簡単に構成できるものでありながら、刈取装置3や脱穀装置5に対するメンテナンス作業性を向上できるようにしたコンバインを提供するものである。
【解決手段】刈取装置3を横軸4a回りに回動させて昇降動可能に構成する一方、刈取装置3を縦軸150回りに回動させることによって刈取装置3が横移動するように構成してなるコンバインにおいて、ミッションケース26からの刈取駆動力を伝達する機体側入力軸178が走行機体1に配置され、刈取装置3に刈取駆動力を伝達する移動側入力軸45が刈取装置3に配置され、刈取装置3が縦軸150回りに横移動することによって係脱するギヤ機構185を介して、機体側入力軸178に移動側入力軸45が連結される構造であって、ミッションケース26内に、刈取装置3の駆動速度を切換えるPTO変速機構110と、所定の一定回転速度で刈取装置3を作動させるPTO一定回転機構111とを配置したものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圃場に植立した穀稈を刈取って穀粒を収集するコンバインに係り、より詳しくは、走行機体の前側に昇降可能に支持した刈取装置が、走行機体の一方の外側方に横移動するように構成したコンバインに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、一般的に、コンバインは、エンジンの出力が最高になる状態にエンジンの出力回転数を維持し、ミッションケースから走行部や刈取装置等にエンジンの出力を伝達し、走行部の駆動速度(車速)と同調した速度で刈取装置を作動することによって、車速が変更されても、圃場の作物に対して刈取装置が略一定の速度で作用するように構成している。
【0003】
従来のコンバインにおいては、走行機体の前側に昇降可能に支持した刈取装置が、走行機体の一方の外側方(フィードチェンが設置された側)に横移動するように構成されていた。また、刈取装置の側方のうちエンジンやミッションケースが配置された側に、刈取入力プーリ及び刈取入力ベルトを設けていた。ミッションケースから刈取装置に刈取入力ベルトを介してエンジンの駆動力(車速同調回転力)を伝達していた(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2006−61120号公報
【特許文献2】特開2004−16111号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記従来技術は、エンジンやミッションケースが配置された側と反対側の刈取装置の側方に、刈取入力プーリを取付けた構造に比べ、ミッションケースと刈取装置との間に配置する刈取装置の駆動機構(刈取入力ベルト機構)を簡単に構成できる。しかしながら、走行機体の外側方に刈取装置を横移動させる際に、刈取入力プーリに掛け回した刈取入力ベルトの掛け外し操作が、走行機体の外側方から簡単に行えない。走行機体の外側方のメンテナンス作業位置に、刈取作業姿勢の刈取装置を横移動させるのに手間がかかるから、刈取装置の後側や脱穀装置の前側を開放するのが面倒であった。刈取装置や脱穀装置に対するメンテナンス性を大幅に妨げる等の問題がある。
【0005】
また、前記従来技術は、例えば走行部の駆動速度と同調した速度で作動させる刈取装置の駆動速度を切換えるPTO変速機構と、PTO変速伝達用の刈取入力ベルト機構と、所定の回転速度で刈取装置を作動させるPTO一定回転機構と、PTO一定回転伝達用の刈取入力ベルト機構とを設けることによって、刈取装置の駆動機能を向上できる。しかしながら、走行機体の外側方に刈取装置を横移動させる際に、刈取入力ベルト機構の掛け外し作業がさらに面倒になる等の問題がある。なお、PTO変速機構とPTO一定回転機構を単一のギヤケースに組付けることによって、刈取入力ベルト機構を簡単に構成でき、且つ刈取装置の駆動機能を向上できるが、ミッションケースと別にギヤケースが必要になるから、刈取装置の駆動機構が高価になる等の製造コスト上の問題がある。
【0006】
本発明の目的は、エンジン又はミッションケースと刈取装置との間に配置する刈取装置の駆動機構(刈取入力ベルト機構)を簡単に構成できるものでありながら、走行機体の外側方に刈取装置を移動させて行うメンテナンス作業が簡単に実行でき、刈取装置や脱穀装置に対するメンテナンス作業性を向上できるようにしたコンバインを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するため、請求項1に係る発明のコンバインは、エンジンを搭載した走行機体と、前記エンジンの回転力がミッションケースを介して伝達される走行部と、前記走行部の駆動速度と同調した車速同調速度で作動させる刈取装置とを備え、前記刈取装置を横軸回りに回動させて昇降動可能に構成する一方、前記刈取装置を縦軸回りに回動させることによって前記刈取装置が横移動するように構成してなるコンバインにおいて、前記ミッションケースからの刈取駆動力を伝達する機体側入力軸が前記走行機体に配置され、前記刈取装置に刈取駆動力を伝達する移動側入力軸が前記刈取装置に配置され、前記刈取装置が縦軸回りに横移動することによって係脱するギヤ機構を介して、前記機体側入力軸に移動側入力軸が連結される構造であって、前記ミッションケース内に、前記刈取装置の駆動速度を切換えるPTO変速機構と、所定の一定回転速度で前記刈取装置を作動させるPTO一定回転機構とを配置したものである。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のコンバインにおいて、前記縦軸回りの回動によって前記刈取装置を横移動させる電動アクチュエータと、前記刈取装置の縦軸回りの回動を規制するロック機構とを備え、前記走行機体の運転部から前記電動アクチュエータ又は前記ロック機構をオペレータが操作可能に構成したものである。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載のコンバインにおいて、前記ロック機構が解除操作されて、前記刈取装置が前記縦軸回りに回動可能に支持された状態で、前記走行機体に搭載されたバッテリに、前記電動アクチュエータが作動可能に接続されるように構成する一方、前記ロック機構がロック操作されて前記刈取装置を刈取作業状態に支持した状態で、前記エンジンを作動可能に構成したものである。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に係る発明によれば、エンジンを搭載した走行機体と、前記エンジンの回転力がミッションケースを介して伝達される走行部と、前記走行部の駆動速度と同調した車速同調速度で作動させる刈取装置とを備え、前記刈取装置を横軸回りに回動させて昇降動可能に構成する一方、前記刈取装置を縦軸回りに回動させることによって前記刈取装置が横移動するように構成してなるコンバインにおいて、前記ミッションケースからの刈取駆動力を伝達する機体側入力軸が前記走行機体に配置され、前記刈取装置に刈取駆動力を伝達する移動側入力軸が前記刈取装置に配置され、前記刈取装置が縦軸回りに横移動することによって係脱するギヤ機構を介して、前記機体側入力軸に移動側入力軸が連結される構造であって、前記ミッションケース内に、前記刈取装置の駆動速度を切換えるPTO変速機構と、所定の一定回転速度で前記刈取装置を作動させるPTO一定回転機構とを配置したものであるから、前記エンジン又はミッションケースと前記刈取装置との間に配置する前記刈取装置の駆動機構(刈取入力ベルト機構)を簡単に構成できる。前記走行機体の外側方に前記刈取装置を移動させて行うメンテナンス作業が簡単に実行できる。前記刈取装置の内部や脱穀装置の前部等のメンテナンス作業性を向上できる。また、前記ミッションケース内に、前記PTO変速機構と、前記PTO一定回転機構とを配置することによって、前記PTO変速機構又は前記PTO一定回転機構を設けるギヤケース等が不要である。前記PTO変速機構及び前記PTO一定回転機構の両方に、前記刈取装置の駆動機構(刈取入力ベルト機構)を兼用できる。したがって、前記走行機体を小型化したり、その重量を軽減したり、その製造コストを低減することができるものである。
【0011】
請求項2に係る発明によれば、前記縦軸回りの回動によって前記刈取装置を横移動させる電動アクチュエータと、前記刈取装置の縦軸回りの回動を規制するロック機構とを備え、前記走行機体の運転部から前記電動アクチュエータ又は前記ロック機構をオペレータが操作可能に構成したものであるから、前記刈取装置の内部や脱穀装置の前部等のメンテナンス作業に必要な操作、例えばエンジンを停止させたり、前記ロック機構を解除させたり、前記電動アクチュエータを作動させる等の一連の操作を、前記運転部のオペレータによって簡単に実行できる。また、手動操作で前記刈取装置を縦軸回りに回動させる必要がないから、前記刈取装置の回動操作部等を設ける必要がない。したがって、前記刈取装置の外側方に、刈取作業外の部品(前記刈取装置の回動操作部等)を突出させることがない。前記刈取装置の外形状をシンプルに構成できるものである。
【0012】
請求項3に係る発明によれば、前記ロック機構が解除操作されて、前記刈取装置が前記縦軸回りに回動可能に支持された状態で、前記走行機体に搭載されたバッテリに、前記電動アクチュエータが作動可能に接続されるように構成する一方、前記ロック機構がロック操作されて前記刈取装置を刈取作業状態に支持した状態で、前記エンジンを作動可能に構成したものであるから、前記走行機体の外側方に前記刈取装置を移動させるメンテナンス作業において、前記エンジンを停止させた後、前記ロック機構を離脱させ、次いで前記電動アクチュエータを作動できる。また、前記走行機体の収納位置(刈取作業状態に支持される位置)に前記刈取装置を復動させ、前記ロック機構を係合させ、次いで前記エンジンを作動できる。前記刈取装置のメンテナンス作業性や、前記エンジンを作動させる運転の再開操作性等を向上できるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下に、本発明を具体化した実施形態を図面に基づいて説明する。図1はコンバインの左側面図、図2はコンバインの平面図、図3はコンバインの駆動系統図、図4はミッションケースの駆動系統図、図5は油圧回路図、図6は刈取装置の左側面説明図、図7は刈取装置の平面説明図、図8は刈取装置の正面説明図、図9は刈取装置の一部分を示す平面断面図、図10は刈取装置を縦軸回りに回動させる電気回路図である。図1及び図2を参照しながら、コンバインの全体構造について説明する。なお、以下の説明では、走行機体1の進行方向に向かって左側を単に左側と称し、同じく進行方向に向かって右側を単に右側と称する。
【0014】
本実施形態のコンバインは、走行部としての左右一対の走行クローラ2にて支持された走行機体1を備えている。走行機体1の前部には、穀稈を刈取りながら取込む農作業部としての4条刈り用の刈取装置3が、単動式の昇降油圧シリンダ4によって刈取回動支点軸4a回りに昇降調節可能に装着されている。走行機体1には、フィードチェン6を有する脱穀装置5と、該脱穀装置5から取出された穀粒を貯留する穀粒タンク7とが横並び状に搭載されている。本実施形態では、脱穀装置5が走行機体1の進行方向左側に、穀粒タンク7が走行機体1の進行方向右側に配置されている。走行機体1の後部に旋回可能な排出オーガ8が設けられ、穀粒タンク7の内部の穀粒が、排出オーガ8の籾投げ口9からトラックの荷台またはコンテナ等に排出されるように構成されている。刈取装置3の右側方で、穀粒タンク7の前側方には、運転部10が設けられている。
【0015】
運転部10には、操縦ハンドル11と運転座席12とが配置されている。操縦ハンドル11は、運転座席12の前方に配置したハンドルコラム13に設けられている。また、運転部10には、主変速レバー14と、副変速レバー15と、脱穀クラッチレバー16と、刈取クラッチレバー17とを配置している。前記各レバー14,15,16,17等は、運転座席12の左側方に配置したレバーコラム18に設けられている。運転座席12の下方の走行機体1には、動力源としてのエンジン20が配置されている。
【0016】
図1に示されるように、走行機体1の下面側に左右のトラックフレーム21を配置している。トラックフレーム21には、走行クローラ2にエンジン20の動力を伝える駆動スプロケット22と、走行クローラ2のテンションを維持するテンションローラ23と、走行クローラ2の接地側を接地状態に保持する複数のトラックローラ24と、走行クローラ2の非接地側を保持する中間ローラ25とを設けている。駆動スプロケット22は、トラックフレーム21の前端側に設けたミッションケース26に、車軸27を介して配置している(図3参照)。駆動スプロケット22によって走行クローラ2の前側を支持し、テンションローラ23によって走行クローラ2の後側を支持し、トラックローラ24によって走行クローラ2の接地側を支持し、中間ローラ25によって走行クローラ2の非接地側を支持する。
【0017】
次に、図1及び図2を参照して刈取装置3の構造を説明する。図1及び図2に示すように、刈取回動支点軸4aに連結した刈取フレーム29の下方には、圃場に植立した未刈り穀稈(作物)の株元を切断するバリカン式の刈刃装置30が設けられている。刈取フレーム29の前方には、圃場に植立した未刈り穀稈を引起す4条分の穀稈引起装置31が配置されている。穀稈引起装置31とフィードチェン6の前端部(送り始端側)との間には、刈刃装置30によって刈取られた刈取り穀稈を搬送する穀稈搬送装置32が配置されている。なお、穀稈引起装置31の下部前方には、圃場に植立した未刈り穀稈を分草する4条分の分草体33が突設されている。エンジン20にて走行クローラ2を駆動して圃場内を移動しながら、刈取装置3によって圃場に植立した未刈り穀稈を連続的に刈取る。
【0018】
次に、図3を参照してコンバインの刈取り駆動構造を説明する。図3に示すように、穀稈引起装置31は、分草体33によって分草された未刈穀稈を起立させる複数の引起タイン34を有する4条分の引起ケース35を有する。穀稈搬送装置32は、右側2条分の引起ケース35から導入される右側2条分の穀稈の株元側を掻込む左右の右スターホイル36R及び左右の右掻込ベルト37Rと、左側2つの引起ケース35から導入される左側2条分の穀稈の株元側を掻込む左右の左スターホイル36L及び左右の左掻込ベルト37Lとを有する。刈刃装置30は、右スターホイル36R及び左右の右掻込ベルト37R、左スターホイル36L及び左右の左掻込ベルト37Lによって掻込まれた4条分の穀稈の株元を切断するバリカン形の左右の刈刃38を有する。
【0019】
また、穀稈搬送装置32は、右側2条分のスターホイル36R及び掻込ベルト37Rによって掻込まれた右側2条分の刈取穀稈の株元側を後方に搬送する右株元搬送チェン39Rと、左側2条分のスターホイル36L及び掻込ベルト37Lによって掻込まれた左側2条分の刈取穀稈の株元側を右株元搬送チェン33Rの搬送終端部に合流させる左株元搬送チェン39Lとを有する。左右の株元搬送チェン39R,39Lによって搬送する4条分の刈取穀稈の株元側を、右株元搬送チェン39Rの搬送終端部に合流させる。
【0020】
穀稈搬送装置32は、右株元搬送チェン39Rから4条分の刈取穀稈の株元側を受継ぐ縦搬送チェン40と、縦搬送チェン40の搬送終端部からフィードチェン6の搬送始端部に4条分の刈取穀稈の株元側を搬送する補助株元搬送チェン41とを有する。縦搬送チェン40から、補助株元搬送チェン41を介して、フィードチェン6の搬送始端部に、4条分の刈取穀稈の株元側を搬送する。
【0021】
穀稈搬送装置32は、右株元搬送チェン39Rにて搬送される右側2条分の刈取穀稈の穂先側を搬送する右穂先搬送タイン42Rと、左株元搬送チェン39Lにて搬送される左側2条分の刈取穀稈の穂先側を搬送する左穂先搬送タイン42Lとを有する。脱穀装置5の扱室内に、4条分の刈取穀稈の穂先側を搬送する。
【0022】
図3に示すように、上述した刈取回動支点軸4a上に配置する刈取り入力軸45を備える。刈取り入力軸45に、縦伝動軸46及び横伝動軸47と引起変速機構48とを介して、引起横伝動軸49を連結する。引起横伝動軸49は、4条分の各引起ケース35の引起タイン駆動軸50にそれぞれ連結している。分草体33の後方で刈取フレーム29の上方に引起ケース35が立設され、引起ケース35の上端側の背面から引起タイン駆動軸50を突出している。引起タイン駆動軸50及び引起横伝動軸49を介して、複数の引起タイン34を設けた引起タインチェン34aが駆動される。
【0023】
図3に示すように、横伝動軸47に左右のクランク軸52a,52bを介して左右の刈刃38を連結する。横伝動軸47を介して左右の刈刃38を同期させて駆動するように構成している。なお、刈刃装置30は、4条分の刈幅の中央部で分割して左右の刈刃38を形成し、左右の刈刃38を相反する方向に往復移動させ、往復移動によって発生する左右の刈刃38の振動(慣性力)を相殺可能に構成している。
【0024】
図3に示すように、穀稈搬送装置32の各駆動部に、縦伝動軸46及び横伝動軸47を介して、刈取り入力軸45の回転力を伝えるように構成している。即ち、刈取り入力軸45に後搬送駆動軸54を連結し、後搬送駆動軸54を介して、補助株元搬送チェン41及び右穂先搬送タイン42Rを駆動するように構成している。縦伝動軸46に右搬送駆動軸55を連結し、右搬送駆動軸55を介して、右株元搬送チェン39R及び右穂先搬送タイン42Rと、右スターホイル36R及び右掻込ベルト37Rとを駆動するように構成している。
【0025】
また、右搬送駆動軸55に縦搬送伝動軸56を連結し、縦搬送伝動軸56を介して、縦搬送チェン40を駆動するように構成している。横伝動軸41の左端側に、引起変速機構48を設けた左搬送駆動軸57を連結している。左搬送駆動軸57を介して、左株元搬送チェン39L及び左穂先搬送タイン42Lと、左スターホイル36L及び左掻込ベルト37Lとを駆動するように構成している。
【0026】
次に、図1及び図2を参照して、脱穀装置5の構造を説明する。図1及び図2に示されるように、脱穀装置5には、穀稈脱穀用の扱胴60と、扱胴60の下方に落下する脱粒物を選別する揺動選別盤61及び唐箕ファン62と、扱胴60の後部から取出される脱穀排出物を再処理する処理胴63と、揺動選別盤61の後部の排塵を排出する排塵ファン71とが備えられている。なお、扱胴60の回転軸芯線は、フィードチェン6による穀稈の搬送方向(換言すると走行機体1の進行方向)に沿って延びている。穀稈搬送装置によって搬送された穀稈の株元側は、フィードチェン6に受け継がれて挟持搬送される。そして、この穀稈の穂先側が脱穀装置5の扱室内に搬入されて扱胴60にて脱穀されるように構成している。
【0027】
揺動選別盤61の下方側には、揺動選別盤61にて選別された穀粒(一番物)を取出す一番コンベヤ64と、枝梗付き穀粒等の二番物を取出す二番コンベヤ65とが設けられている。本実施形態の両コンベヤ64,65は、走行機体1の進行方向前側から一番コンベヤ64、二番コンベヤ65の順で、側面視において走行クローラ2の後部上方の走行機体1の上面側に横設されている。
【0028】
揺動選別盤61は、扱胴60の下方に張設された受網(図示省略)から漏下した脱穀物が、図示しないフィードパン及びチャフシーブによって搖動選別(比重選別)されるように構成している。揺動選別盤61から落下した穀粒は、その穀粒中の粉塵が唐箕ファン62からの選別風によって除去され、一番コンベヤ64に落下することになる。一番コンベヤ64のうち脱穀装置5における穀粒タンク7寄りの一側壁(実施形態では右側壁)から外向きに突出した終端部には、上下方向に延びる揚穀コンベヤ66が連通接続されている。一番コンベヤ64から取出された穀粒は、揚穀コンベヤ66を介して穀粒タンク7に搬入され、穀粒タンク7に収集されるように構成している。
【0029】
また、揺動選別盤61は、そのチャフシーブから搖動選別(比重選別)によって枝梗付き穀粒等の二番物を二番コンベヤ65に落下させるように構成している。前記チャフシーブから落下した二番物は、二番コンベヤ65に落下することになる。二番コンベヤ65のうち脱穀装置5における穀粒タンク7寄りの一側壁から外向きに突出した終端部は、揚穀コンベヤ66と交差して前後方向に延びる還元コンベヤ67とこの先端の再処理部68とを介して、揺動選別盤61の前部(フィードパン)の上面側に連通接続され、そのフィードパンの上面側に二番物を戻して再選別するように構成している。
【0030】
一方、フィードチェン6の後端側(送り終端側)には、排藁チェン69が配置されている。フィードチェン6の後端側から排藁チェン69に受け継がれた排藁(穀粒が脱粒された稈)は、長い状態で走行機体1の後方に排出されるか、又は脱穀装置5の後方側に設けた排藁カッタ70にて適宜長さに短く切断されたのち、走行機体1の後方下方に排出されるように構成している。
【0031】
次に、図3を参照しながら、ミッションケース26の駆動構造と、脱穀装置5、フィードチェン6、排藁チェン69、排藁カッタ70等の駆動構造について説明する。図3に示されるように、エンジン20の出力軸75に、走行伝動ベルト76及びベルトテンションクラッチ77を介してミッションケース26の入力軸78を連結している。エンジン20の回転駆動力が、出力軸75からミッションケース26に伝達されて変速された後、左右の車軸27を介して左右の走行クローラ2に伝達され、左右の走行クローラ2がエンジン20の回転力によって駆動されるように構成している。また、出力軸75に排出オーガ駆動軸79を連結し、エンジン21からの回転駆動力によって排出オーガ駆動軸79を介して排出オーガ8が駆動され、穀粒タンク7内の穀粒がコンテナ等に排出されるように構成している。
【0032】
また、扱胴60及び処理胴63にエンジン20からの回転駆動力を伝える脱穀駆動軸80を備える。エンジン20の出力軸75に、脱穀駆動ベルト81及び脱穀用ベルトテンションクラッチ82を介して、脱穀駆動軸80を連結している。脱穀駆動軸80には、扱胴60を軸支した扱胴軸83と、処理胴63を軸支した処理胴軸84とが連結されている。エンジン20の略一定回転数の回転力によって、扱胴60及び処理胴63が略一定回転数で回転するように構成している。また、脱穀駆動軸80に選別入力ベルト85が連結されている。エンジン20の略一定回転数の回転力によって、選別入力ベルト85を介して、フィードチェン6、揺動選別盤61、唐箕ファン62、一番コンベヤ64、二番コンベヤ65、排塵ファン71、排藁カッタ70が略一定回転数で回転するように構成している。
【0033】
次に、図3及び図4を参照しながら、ミッションケース26等の駆動構造について説明する。図3及び図4に示す如く、ミッションケース26には、1対の直進用油圧ポンプ88及び直進用油圧モータ89を有する直進用の油圧式無段変速機構90と、1対の旋回用油圧ポンプ91及び旋回用油圧モータ92を有する旋回用の油圧式無段変速機構93とを設けている。ミッションケース26の入力軸78に、直進用油圧ポンプ88と旋回用油圧ポンプ91とを連結させて、各ポンプ88,91をそれぞれ駆動するように構成している。また、ミッションケース26の内部には、刈取駆動PTO軸94が水平横向きに配置されている。刈取駆動PTO軸94は、直進用油圧モータ89によって駆動される。ミッションケース26からこの左外側に刈取駆動PTO軸94の一端側を突設している。刈取り入力軸45に刈取駆動ベルト95を介して刈取駆動PTO軸94を連結している。
【0034】
図4に示す如く、ミッションケース26の内部には、入力軸78と平行に、直進用油圧ポンプ軸96と、直進用油圧モータ軸97と、刈取駆動PTO軸94と、カウンタ軸98と、直進用変速出力軸99とが配置されている。入力軸78に入力ギヤ100を介して直進用油圧ポンプ軸96を連結している。直進用油圧ポンプ軸96によって直進用油圧ポンプ88が駆動され、直進用油圧モータ89によって直進用油圧モータ軸97が駆動され、直進用油圧ポンプ軸96の回転出力が直進用油圧ポンプ88によって無段階に変速され、直進用油圧モータ軸97によって二段階(高速、低速)に変速されて、直進用油圧モータ軸97に伝達されるように構成している。
【0035】
図4に示す如く、直進用油圧モータ軸97にカウンタギヤ101を介してカウンタ軸98を連結している。カウンタ軸98に直進用変速出力軸99を連結する副変速ギヤ機構102を備える。副変速ギヤ機構102は、副変速低速ギヤ103と、副変速高速ギヤ104と、副変速シフタ105とを有する。副変速レバー15の操作によって、中立位置(出力が零の位置)、又は副変速低速ギヤ103に係止する低速出力位置、又は副変速高速ギヤ104に係止する高速出力位置に、副変速シフタ105が移動して、出力が零の中立又は低速出力又は高速出力のいずれかの変速モードに副変速ギヤ機構102が切換えられるように構成している。換言すると、副変速シフタ105が中立位置のときに直進用変速出力軸99が停止し、副変速シフタ105が低速出力位置のときに直進用変速出力軸99が低速(作業速度)で作動し、副変速シフタ105が高速出力位置のときに直進用変速出力軸99が高速(路上走行速度)で作動するように構成している。
【0036】
また、直進用変速出力軸99の回転出力が直進用変速出力ギヤ106を介して左右の走行クローラ2に伝達され、直進用変速出力軸99の回転出力によって左右の走行クローラ2が駆動されて、走行機体1が前進方向又は後進方向に移動するように構成している。なお、直進用変速出力軸99上には、左右の走行クローラ2を制動するパーキングブレーキ107と、左右の走行クローラ2の駆動速度(走行機体1の移動速度、車速)を検出する車速センサ108とが配置されている。
【0037】
即ち、図4に示す如く、エンジンの出力を変速する第1変速手段としての直進用油圧ポンプ88と、直進用油圧ポンプ88の出力を変速する第2変速手段としての直進用油圧モータ89と、直進用油圧モータ89の出力を変速する第3変速手段としての副変速ギヤ機構102とが、ミッションケース26に配置されている。また、ミッションケース26の内部に、直進用油圧モータ89の出力側の直進用油圧モータ軸97に刈取駆動PTO軸94を連結するPTO変速機構110と、直進用油圧ポンプ88の入力側の直進用油圧ポンプ軸96に刈取駆動PTO軸94を連結するPTO一定回転機構111とが設けられている。
【0038】
即ち、直進用油圧モータ89の出力側から、PTO変速機構110と刈取駆動PTO軸94とを介して、刈取装置3(農作業部)にエンジン20の出力を伝達して、PTO変速機構110の車速同調速度の出力によって刈取り入力軸45を回転駆動するように構成している。また、直進用油圧ポンプ88の入力側から、PTO一定回転機構111と刈取駆動PTO軸94とを介して、刈取装置3にエンジン20の出力を伝達して、PTO一定回転機構111の一定回転速度の出力によって刈取り入力軸45を回転駆動するように構成している。
【0039】
図4に示す如く、PTO変速機構110は、PTO低速ギヤ112と、PTO高速ギヤ113と、PTO変速シフタ114とを有する。PTO変速油圧シリンダ115の切換制御によって、中立位置(出力が零の位置)、又はPTO低速ギヤ112に係止する低速出力位置、又はPTO高速ギヤ113に係止する高速出力位置に、PTO変速シフタ114が移動するように構成している。換言すると、PTO変速機構110は、直進用油圧モータ89の出力を変速して変速出力するPTO作動状態と、直進用油圧モータ89の出力を切断するPTO停止(PTOクラッチ切り)状態とに切換可能に構成している。
【0040】
即ち、PTO変速油圧シリンダ115の切換制御によって、出力が零の中立、又は低速出力、又は高速出力のいずれかの変速モードに、PTO変速機構110が切換えられるように構成している。換言すると、直進用油圧モータ89から出力されている場合、PTO変速シフタ114が中立位置のときに刈取駆動PTO軸94が停止し、PTO変速シフタ114が低速出力位置のときに刈取駆動PTO軸94が低速で作動し、PTO変速シフタ114が高速出力位置のときに刈取駆動PTO軸94が高速で作動するように構成している。
【0041】
また、PTO変速シフタ114は、PTO変速用の一方向回転クラッチ116を介して刈取駆動PTO軸94に軸支されている。即ち、直進用油圧モータ軸97における回転のうち、走行機体1を前進移動する方向の回転は、一方向回転クラッチ116を介して刈取駆動PTO軸94に伝達するが、直進用油圧モータ軸97における回転のうち、走行機体1を後進移動する方向の回転は、刈取駆動PTO軸94に伝達しないという構成である。加えて、刈取駆動PTO軸94から直進用油圧モータ軸97への方向には、PTO変速機構110を介して、回転を伝達しないという構成である。
【0042】
一方、PTO一定回転機構111は、低速側一定回転ギヤ117と、高速側一定回転ギヤ118と、一定回転シフタ119とを有する。PTO一定回転油圧シリンダ120の切換制御によって、中立位置(出力が零の位置)、又は低速側一定回転ギヤ117に係止する低速側一定回転位置、又は高速側一定回転ギヤ118に係止する高速側一定回転位置に、一定回転シフタ119が移動するように構成している。換言すると、PTO一定回転機構111は、刈取装置3の駆動に必要な最低回転数を保持する低速側一定回転作動状態と、刈取装置3の駆動に必要な最高回転数を保持する高速側一定回転作動状態と、直進用油圧モータ軸97の出力を切断するPTO停止(PTOクラッチ切り)状態とに切換可能に構成している。
【0043】
即ち、PTO一定回転油圧シリンダ120の切換制御によって、出力が零の中立、又は低速側一定回転出力(低速カットモード)、又は高速側一定回転出力(高速カットモード)のいずれかの一定回転出力モードに、PTO一定回転機構111が切換えられるように構成している。換言すると、直進用油圧ポンプ軸96が駆動されている場合、一定回転シフタ119が中立位置のときに刈取駆動PTO軸94が停止し、一定回転シフタ119が低速側一定回転出力位置のときに刈取駆動PTO軸94が低速側一定回転速度(流し込み速度)で作動し、一定回転シフタ119が高速側一定回転出力位置のときに刈取駆動PTO軸94が高速側一定回転速度(高速カット速度)で作動するように構成している。
【0044】
したがって、刈取作業の維持に必要な一定回転数の回転出力が低速側一定回転ギヤ117を介して刈取駆動PTO軸94に伝達されることになる。走行機体1の移動速度に関係なく、低速側一定回転ギヤ117からの一定回転数で刈取り入力軸45を作動させて刈取作業を維持でき、圃場の枕地での方向転換作業性等を向上できる。また、PTO変速機構110からの車速同調出力の最高速よりも早い一定回転数の回転出力が高速側一定回転ギヤ118を介して刈取駆動PTO軸94に伝達されることになる。したがって、車速同調出力の最高速よりも早い高速側一定回転ギヤ118からの一定回転数で刈取り入力軸45を作動でき、倒伏穀稈の刈取り作業性等を向上できる。
【0045】
また、一定回転シフタ119は、一定回転用の一方向回転クラッチ121を介して刈取駆動PTO軸94に軸支されている。直進用油圧ポンプ軸96の回転は、一方向回転クラッチ121を介して刈取駆動PTO軸94に伝達されるように構成している。即ち、直進用油圧ポンプ軸96から刈取駆動PTO軸94への方向には、PTO一定回転機構111を介して、回転を伝達するが、刈取駆動PTO軸94から直進用油圧ポンプ軸96への方向には、PTO一定回転機構111を介して、回転を伝達しないという構成である。
【0046】
その結果、PTO変速シフタ114及びPTO変速用の一方向回転クラッチ116を介して伝達されるPTO変速機構110の回転出力、又は一定回転シフタ119及び一定回転用の一方向回転クラッチ121を介して伝達されるPTO一定回転機構111の回転出力のうち、高速側の回転出力によって、刈取駆動PTO軸94を介して刈取り入力軸45が駆動されて、刈取装置3が作動する。即ち、PTO一定回転機構111の低速側一定回転出力、又はPTO変速機構110の車速同調速度の回転出力、又はPTO一定回転機構111の高速側一定回転出力のいずれか一方によって、刈取駆動PTO軸94を介して刈取り入力軸45が駆動される。したがって、PTO変速機構110の車速同調速度の回転出力と、PTO一定回転機構111の一定回転出力とが、同時に、刈取駆動PTO軸94に伝達されない。また、走行機体1の後進移動の回転出力が刈取駆動PTO軸94に伝達されない。
【0047】
次に、図5を参照して、直進用油圧無段変速機構90と、旋回用油圧無段変速機構93の構造を説明する。図5に示すように、旋回用油圧ポンプ91のポンプ軸にチャージポンプ125を連結している。直進用油圧ポンプ88及び直進用油圧モータ89は、閉油圧回路にて油圧接続され、チャージポンプ125のチャージ油圧がその閉油圧回路に供給されるように構成している。同様に、旋回用油圧ポンプ91及び旋回用油圧モータ92は、閉油圧回路にて油圧接続され、チャージポンプ125のチャージ油圧がその閉油圧回路に供給されるように構成している。ミッションケース26の入力軸78に伝達されたエンジン20の回転駆動力が、直進用油圧無段変速機構90又は旋回用油圧無段変速機構93によって変速された後、左右の車軸27に伝達され、左右の車軸27を介して左右の走行クローラ2がそれぞれ駆動されるように構成している。
【0048】
図5に示す如く、直進用油圧ポンプ88の斜板88aの傾斜角度を変更して出力調整する主変速シリンダ126と、主変速レバー14及び操向ハンドル11に連結させて切換える主変速バルブ127と、直進用油圧ポンプ88の出力を一定量減速する減速バルブ128とを設け、チャージポンプ125を主変速バルブ127又は減速バルブ128を介して主変速シリンダ126に油圧接続させている。その結果、主変速レバー14によって主変速バルブ127を切換え、主変速シリンダ126を作動させて、直進用油圧ポンプ88の斜板88aの角度を変更させ、直進用油圧モータ89のモータ軸97の回転数を、前進方向又は後進方向に無段階に変化させるように構成している。
【0049】
また、直進用油圧モータ89の斜板89aの角度を変更して出力調整する副変速シリンダ129と、油圧副変速高速ソレノイド130a及び油圧副変速低速ソレノイド130bを有する電磁副変速バルブ130とを設けている。前記チャージポンプ125に電磁副変速バルブ130を介して副変速シリンダ129を油圧接続させている。副変速バルブ130が中立の切換位置のときには、油タンクであるミッションケース26に副変速シリンダ129が短絡され、直進用油圧モータ89の斜板89aが、直進用油圧ポンプ88の油圧(閉回路油圧)によって最大傾斜位置に維持されるように構成している。
【0050】
一方、副変速バルブ130が中立位置以外の切換位置に切換られたときには、チャージポンプ125の油圧が副変速バルブ130を介して副変速シリンダ129に印加され、直進用油圧ポンプ88の油圧(閉回路油圧)に関係なく、直進用油圧モータ89の斜板89aの角度が副変速シリンダ129によって強制的に変更され、直進用油圧モータ軸97の回転数を高速側又は低速側に変化させることになる。即ち、直進用油圧モータ89の斜板89aの角度を変更する操作、換言すると、副変速バルブ130を切換える副変速操作によって、直進用油圧モータ89の出力回転数を高速側又は低速側に切換えるように構成している。
【0051】
さらに、旋回用油圧ポンプ91の斜板91aの角度を変更して出力調整する旋回シリンダ131を設け、操向ハンドル11又は主変速レバー14によって切換える旋回バルブ132、又は電磁式自動操向バルブ133を介して旋回シリンダ131にチャージポンプ125を油圧接続させている。操向ハンドル11によって旋回バルブ132を切換えることによって、旋回シリンダ131が作動して、旋回用油圧ポンプ91の斜板91aの角度が無段階に変更されることになる。その結果、操向ハンドル11の操作によって旋回用油圧モータ91の出力回転数が無段階に変化したり、旋回用油圧モータ91の出力回転が逆転するように構成している。即ち、操向ハンドル11の左右方向の回転操作量(操舵角)に比例して斜板91aの角度が変化し、旋回用油圧モータ91の出力回転数が変化したり逆転して、走行機体1の進路(左右旋回角度)が左方向又は右方向に変更されるように構成している。
【0052】
なお、主変速レバー14が中立以外の変速位置に操作された状態で、操向ハンドル11が直進以外の操舵角位置に操作された場合、主変速レバー14の操作方向(前進、後進)と操作量(増減速)に比例して、直進用油圧ポンプ88の斜板88aの角度(出力油圧)が増減したり反転して、油圧モータ89を、増速又は減速させたり、正転又は逆転させ、前進速度又は後進速度(直進移動速度と進行方向)が変更されることになる。また、主変速レバー14の操作量に比例して旋回用油圧ポンプ91の出力油圧が変化(増減)するように構成したものであり、主変速レバー14の高速側走行変速によって旋回半径が自動的に小さくなり、且つ主変速レバー14の低速側走行変速によって旋回半径が自動的に大きくなるように構成している。したがって、操向ハンドル11が直進以外の一定操舵角位置に保持されているときに、主変速レバー14が中立以外の変速位置に操作された場合、主変速レバー14の変速操作位置(直進移動速度)に関係なく、左右走行クローラ2の旋回半径が略一定に維持されて、走行機体1の移動速度(作業車速)を変更できたり、未刈り穀稈列等に機体を沿わせるように、走行機体1の進路を修正できる。
【0053】
一方、操向ハンドル11の操作量(操舵角)に比例させて、主変速バルブ27の制御によって直進用油圧ポンプ88の出力を変化させ、且つ旋回バルブ132の制御によって旋回用油圧ポンプ91の出力を変化させるように構成している。即ち、操向ハンドル11の操舵角を大きくして、走行機体1の旋回半径を小さくしたときに、その旋回半径(操舵角)に比例させて走行機体1の移動速度(車速)を減速させ乍ら、左右の走行クローラ2の速度差を大きくし、走行機体1を左右に旋回させることができる。連続的に穀稈を刈取って脱穀する収穫作業において、左右走行クローラ2の駆動速度を変更して、条合せ等の進路修正や、圃場枕地でのスピンターン等の方向転換を実行できる。なお、主変速レバー14が中立のときには、操向ハンドル11の操作に関係なく、旋回バルブ132が中立維持され、旋回用油圧ポンプ91の油圧出力が略零に保たれ、旋回用油圧モータ92を停止維持するように構成している。
【0054】
図5に示す如く、刈取変速高速ソレノイド134a及び刈取変速低速ソレノイド134bを有する電磁刈取変速バルブ134と、高速側定速ソレノイド135a及び低速側定速ソレノイド135bを有する電磁一定回転バルブ135とを設けている。上述したチャージポンプ125に電磁刈取変速バルブ134を介してPTO変速油圧シリンダ115を油圧接続している。電磁刈取変速バルブ134を切換えてPTO変速油圧シリンダ115を作動するように構成している。また、上述したチャージポンプ125に電磁一定回転バルブ135を介してPTO一定回転油圧シリンダ120を油圧接続している。電磁一定回転バルブ135を切換えてPTO一定回転油圧シリンダ120を作動するように構成している。
【0055】
なお、PTO変速油圧シリンダ115と、PTO一定回転油圧シリンダ120とは、3ポジションシリンダによって形成している。3位置4ポート型の前記バルブ134,135を切換えたときに、チャージポンプ125からの油圧によって、前記シリンダ115,120のピストンが進出位置又は退入位置に保持される。また、前記バルブ134,135が中立に維持されているときに、前記シリンダ115,120のピストンは、進出位置と退入位置との中間の位置に保持される。
【0056】
次に、図3、図6乃至図9を参照して、本実施形態の刈取装置3の支持構造について説明する。図6及び図8に示すように、走行機体1の筒状軸受体154に、上下方向に延長した縦軸150の下端側を挿通させて、走行機体1の上面のうち左側の前部に縦軸150を略垂直に且つ回動可能に立設している。縦軸150の上端側及び下端側には、上側筒状軸体151及び下側筒状軸体152をそれぞれ回動可能に被嵌する。縦軸150の中間部に固定側筒状軸体153を回動可能に被嵌する。走行機体1には、連結フレーム155及び補助連結フレーム155aを介して、固定側筒状軸体153を連結させている。
【0057】
上側筒状軸体151には、左昇降支点体156を介して、左右方向に延長した刈取回動支点軸4a(横軸)の左側端側を、着脱可能に且つ回動可能に連結する。下側筒状軸体152には、シリンダ支持フレーム157の左側端側を固着する。シリンダ支持フレーム157の右側端側にシリンダブラケット158を介して昇降用油圧シリンダ4を連結している。走行機体1に昇降荷重受け体159を固着し、刈取装置3を刈取作業位置に収納支持したときに、昇降荷重受け体159にシリンダ支持フレーム157の右側端側を当接させ、昇降用油圧シリンダ4の後退方向の荷重(刈取装置3の支持荷重)を昇降荷重受け体159にて受けるように構成している。
【0058】
シリンダ支持フレーム157の右側端側に昇降支持フレーム160を立設し、昇降支持フレーム160の上端側に、右昇降支点体161を介して、刈取回動支点軸4aの右側端側を、着脱可能に且つ回動可能に連結している。なお、昇降支持フレーム160の下端側のシリンダ支持フレーム157と左昇降支点体156とを筋交いフレーム162によって連結している。昇降支持フレーム160及び筋交いフレーム162の連結によって、刈取回動支点軸4aと上側筒状軸体151との連結剛性、及びシリンダ支持フレーム157と下側筒状軸体152との連結剛性をそれぞれ向上させている。
【0059】
上記の構成により、刈取回動支点軸4a及び昇降用油圧シリンダ4が縦軸150回りに一体的に水平方向に回動する。その結果、刈取作業を実行する収納位置(図1、図2に実線で示す刈取作業位置)から、走行機体1の左外側方のサイドオープン位置(図2に仮想線で示す刈取メンテナンス作業位置)に、刈取装置3が横移動したり、サイドオープン位置から収納位置に刈取装置3が横移動するように構成している。
【0060】
図3、図6乃至図9に示すように、固定側筒状軸体153にモータ支持台163を配置し、電動アクチュエータとしての横移動用電動モータ164をモータ支持台163に載置する。上側筒状軸体151(縦軸150)に、ウオームギヤ165及びウオームホイール166を介して、横移動用電動モータ164のモータ出力軸167を連結する。エンジン20を始動させるバッテリ170が走行機体1に搭載されている(図1、図2参照)。バッテリ170を作動電源として横移動用電動モータ164が作動するように構成している。走行機体1の運転部10から横移動用電動モータ164を遠隔操作する操作具としてのオープンスイッチ168及び収納スイッチ169が運転部10に設けられている(図2参照)。
【0061】
即ち、オープンスイッチ168又は収納スイッチ169のいずれか一方のオン操作によって、バッテリ170の電力が横移動用電動モータ164に印加されることになる。運転部10のオペレータがオープンスイッチ168を操作し、横移動用電動モータ164を正転させて、収納位置の刈取装置3をサイドオープン位置(刈取メンテナンス作業位置)に移動させるように構成している。また、運転部10のオペレータが収納スイッチ169を操作し、横移動用電動モータ164を逆転させて、サイドオープン位置の刈取装置3を収納位置(刈取作業位置)に移動させるように構成している。
【0062】
次に、図3、図7乃至図9を参照して、本実施形態の刈取装置3への駆動力伝達構造について説明する。図3、図7乃至図9に示すように、筒状の刈取回動支点軸4aに刈取り入力軸45が内挿されて、ベアリング175によって軸支されている。刈取り入力軸45の右側端側に移動側平ギヤ176が軸支されている。また、上述した刈取駆動ベルト95が刈取り入力プーリ177に懸架されている。走行機体1の左右方向に延長する機体側入力軸178の右側端側に刈取り入力プーリ177を軸支する。機体側入力軸178の左側端側に機体側平ギヤ179が軸支されている。即ち、刈取り入力軸45に機体側入力軸178を連結するギヤ機構185は、移動側平ギヤ176と機体側平ギヤ179とによって形成されている。刈取装置3が縦軸150回りに横移動することによってギヤ機構185が係脱する。換言すると、刈取装置3が縦軸150回りに横移動することによって、機体側平ギヤ179に対して移動側平ギヤ176が係脱するように構成されている。
【0063】
図8に示すように、走行機体1に支柱フレーム180を立設し、支柱フレーム180の上端側に刈取り伝達ケース181をボルトにて締結している。刈取り伝達ケース181に機体側入力軸178の左側端側が内挿されて、ベアリング182によって軸支されている。刈取り伝達ケース181の前面側には、合体用ガイド体183が鋳造加工によって一体的に形成されている。合体用ガイド体183に対して摩擦係数が小さい合成樹脂製の滑り体184が、刈取回動支点軸4aの右側端側に被嵌されている。
【0064】
図2及び図8及び図9に示すように、刈取装置3を収納位置に支持するロック機構186を備える。ロック機構186は、刈取回動支点軸4aに係脱可能に係止するロックアーム187と、運転部10に設けるロックレバー188と、ロックアーム187にロックレバー188を連結するロック操作ロッド189とを有する。刈取り伝達ケース181にロックアーム187を回動可能に軸支して、刈取回動支点軸4aにロックアーム187を係止したときに、刈取装置3が収納位置(刈取作業位置)に支持されるように構成している。また、刈取回動支点軸4aにロックアーム187が係止し、刈取装置3が収納位置に支持されているときに、昇降操作レバー190等の刈取昇降操作によって昇降用油圧シリンダ4が作動して、刈取装置3が昇降動するように構成している。なお、刈取回動支点軸4aにロックアーム187が係止されていないときには、昇降用油圧シリンダ4の作動が禁止されるように、昇降用油圧シリンダ4を作動させる昇降用油圧バルブ切換機構(図示省略)にロックレバー188が連結されている。
【0065】
即ち、刈取回動支点軸4aにロックアーム187が係止されて、刈取装置3が収納位置(刈取作業位置)に支持されているときに、刈取回動支点軸4aの右側端側が滑り体184を介して合体用ガイド体183に当接して支持されて、刈取回動支点軸4aの右側端側の後面が、刈取り伝達ケース181の前面に離反可能に接合する。その結果、刈取り伝達ケース181の前面側に突出した機体側平ギヤ179が、刈取回動支点軸4aの右側端側の内部に突入して、刈取回動支点軸4aの右側端側の内部の移動側平ギヤ176が機体側平ギヤ179に噛合する。したがって、ギヤ機構185を形成する移動側平ギヤ176及び機体側平ギヤ179を介して、機体側入力軸178に刈取り入力軸45が連結されるように構成している。
【0066】
上記の構成により、刈取駆動ベルト95から刈取り入力プーリ177に伝達される刈取装置3の回転力、換言すると、直進用油圧モータ軸97における前進移動方向の回転力(PTO低速ギヤ112又はPTO高速ギヤ113からの車速同調回転力)、又は低速側一定回転ギヤ117又は高速側一定回転ギヤ118からの一定回転力が、機体側入力軸178から刈取り入力軸45に伝達される。即ち、直進用油圧モータ軸97における前進移動方向の回転力(PTO低速ギヤ112又はPTO高速ギヤ113からの車速同調回転力)、又は低速側一定回転ギヤ117又は高速側一定回転ギヤ118からの一定回転力のいずれかが、前記ギヤ機構185を介して、刈取装置3に伝達される。直進用油圧モータ軸97における前進移動方向の回転力(PTO低速ギヤ112又はPTO高速ギヤ113からの車速同調回転力)、又は低速側一定回転ギヤ117又は高速側一定回転ギヤ118からの一定回転力によって刈取装置3が作動して、圃場に植立した穀稈を刈取ることができる。
【0067】
上記の構成により、図1、図3、図4に示すように、ミッションケース26の内部に、車速同調速度で刈取装置3を駆動するPTO変速機構110と、一定回転速度で刈取装置3を駆動するPTO一定回転機構111とを設け、直進用油圧モータ89の出力側と刈取駆動PTO軸94との間に前記PTO変速機構110を配置し、直進用油圧ポンプ88の入力側と刈取駆動PTO軸94との間にPTO一定回転機構111を配置している。したがって、PTO変速機構110と前記PTO一定回転機構111とを、テンションクラッチを有するベルト伝動機構を利用して構成する従来の駆動構造に比べて、エンジン20とミッションケース26、及びエンジン20と刈取装置3との間にそれぞれ配置するベルト伝動機構を簡単に構成できる。そのベルト伝動機構のメンテナンス作業性等を向上できる。また、直進用油圧ポンプ88と直進用油圧モータ89と副変速ギヤ機構102とを有するミッションケース26を利用して、PTO変速機構110と、PTO一定回転機構111とを、コンパクトに且つ低コストに配置できる。ミッションケース26に、PTO変速機構110とPTO一定回転機構111とを内蔵したことにより、従来のように走行機体1の前部にカウンタケースを設けることを省略できるか、或いは、仮に前記カウンタケースを設けるにしても、このカウンタケースを小型化できる。
【0068】
また、図1、図3、図9に示す如く、刈取装置3を横軸としての刈取回動支点軸4a回りに回動させて昇降動可能に構成する一方、刈取装置3を縦軸150回りに回動させて横移動可能に構成してなるコンバインにおいて、エンジン20からの刈取駆動力を伝達する機体側入力軸としての機体側入力軸178と、刈取回動支点軸4a(刈取回動支点軸4aの軸芯線上)に配置する移動側入力軸としての刈取り入力軸45とを備え、刈取装置3を縦軸150回りに回動させて横移動させる操作によって係脱可能なギヤ機構185を介して、機体側入力軸178と刈取り入力軸45とを連結している。したがって、刈取駆動ベルト95等のベルト伝動機構の掛け外し又は分解等の面倒な作業が不要になり、走行機体1の外側方に刈取装置3を移動させる作業を簡単に実行でき、刈取装置3の内部や脱穀装置5の前部等のメンテナンス作業性を向上できる。また、エンジン20又はミッションケース26と、これらに近接した刈取装置3の一側方との間に、ベルト伝動機構等によって構成された刈取装置3の駆動機構をコンパクトに配置でき、刈取装置3の駆動機構を簡単に構成できる。したがって、走行機体1を小型化したり、その重量を軽減したり、その製造コストを低減することができる。
【0069】
さらに、図4、図5に示すように、PTO変速機構110は、直進用油圧モータ89の出力を変速して変速出力するPTO作動状態と、直進用油圧モータ89の出力を切断するPTO停止状態とに切換可能に構成したものであるから、刈取装置3を駆動又は停止制御するための従来のベルトテンションクラッチが不要になる。且つ前記カウンタケース等に、刈取装置3を駆動又は停止制御するためのクラッチを設ける必要もない。刈取装置3を駆動又は停止制御するためのクラッチを低コストに且つコンパクトに構成できる。
【0070】
図4、図10に示すように、PTO一定回転機構111は、刈取装置3の駆動に必要な最低回転数を保持する低速側一定回転作動状態と、刈取装置3の駆動に必要な最高回転数を保持する高速側一定回転作動状態と、直進用油圧モータ89の出力を切断するPTO停止状態とに切換可能に構成したものであるから、PTO一定回転機構111からの低速側一定回転出力、又は高速側一定回転出力、又はPTO変速機構110の車速同調用の変速出力によって、刈取装置3を作動できる。刈取装置3の機械振動又は損傷等を低減でき、刈取装置3の刈取作業性能を適正に維持できる。
【0071】
次に、図10を参照して、本実施形態の刈取装置3を縦軸150回りに回動させる横移動用電動モータ164の電気回路200について説明する。図10は、横移動用電動モータ164を制御する電気回路図である。図10に示す如く、ロックレバー188のロック操作によって操作アーム191を介してオフに切換えられ、且つロックレバー188の解除操作によってオンに自動復帰する常閉スイッチ型の横移動許可スイッチ211を備える。ロックアーム187が刈取回動支点軸4aに係合することによってオフに切換えられ、且つロックアーム187が刈取回動支点軸4aから離脱する解除操作によってオンに自動復帰する常閉スイッチ型のエンジン停止スイッチ212を備える。刈取装置3(刈取回動支点軸4a)が走行機体1の左外側方のサイドオープン位置(刈取メンテナンス作業位置)に横移動したことを検出する常閉スイッチ型のセットセンサ213を備える。刈取装置3(刈取回動支点軸4a)が刈取作業を実行する収納位置(刈取作業位置)に横移動したことを検出する常閉スイッチ型のリターンセンサ214を備える。刈取装置3(刈取回動支点軸4a)が走行機体1の左外側方のサイドオープン位置(刈取メンテナンス作業位置)に横移動する方向に横移動用電動モータ164を回転させるセットリレー215を備える。刈取装置3(刈取回動支点軸4a)が刈取作業を実行する収納位置(刈取作業位置)に横移動する方向に横移動用電動モータ164を回転させるリターンリレー216を備える。
【0072】
図10に示す如く、セットリレー215は、刈取装置3(刈取回動支点軸4a)が走行機体1の左外側方のサイドオープン位置(刈取メンテナンス作業位置)に横移動する正回転方向に横移動用電動モータ164を正回転させる常開形の正回転リレースイッチ215a,215bを有する。リターンリレー216は、刈取装置3(刈取回動支点軸4a)が刈取作業を実行する収納位置(刈取作業位置)に横移動する逆回転方向に横移動用電動モータ164を逆回転させる常開形の逆回転リレースイッチ216a,216bを有する。
【0073】
図10に示す如く、バッテリ170にキースイッチ217を接続する。キースイッチ217は、エンジン20を始動するスタータ接点217aと、電気制御各部に電源を供給するオン接点217bと、その電源の供給を停止するオフ接点217cとを有している。オペレータがキースイッチ217を操作して、スタータ接点217a又はオン接点217b又はオフ接点217cにバッテリ170の接続を切換えるように構成している。スタータ接点217aには、エンジン20を始動するスタータ(図示省略)が接続される。オン接点217bには、エンジン20の自動停止動作を報知する警報作動部としての警報ブザー171と、エンジン20への燃料供給を停止(禁止)するエンジン停止操作部としてのエンジン停止ソレノイド172とが、エンジ停止スイッチ212を介して接続されている。
【0074】
この場合、バッテリ170に対して、オン接点217b及びエンジ停止スイッチ212を介して、警報ブザー171とエンジン停止ソレノイド172とが並列に接続される。エンジ停止スイッチ212のオン操作によって警報ブザー171及びエンジン停止ソレノイド172がそれぞれ作動可能になる。図示しない燃料タンクからエンジン20への燃料供給は、エンジン停止ソレノイド117の励磁作動によって中止されて、エンジン20が停止維持されるように構成している。
【0075】
さらに、図10に示す如く、オフ接点217cには、横移動許可スイッチ211を介して、直列に配列されたオープンスイッチ168及びセットセンサ213及びセットリレー215が接続されている。セットリレー215の正回転リレースイッチ215a,215bを介して横移動許可スイッチ211に横移動用電動モータ164が正転可能に接続されている。また、オフ接点217cには、横移動許可スイッチ211を介して、直列に配列された収納スイッチ169及びリターンセンサ214及びリターンリレー216が接続されている。リターンリレー216の逆回転リレースイッチ216a,216bを介して横移動許可スイッチ211に横移動用電動モータ164が逆転可能に接続されている。
【0076】
したがって、ロックレバー188のロック操作によって操作アーム191を介して横移動許可スイッチ211がオフに切換えられたときに、オープンスイッチ168又は収納スイッチ169がオン操作されても、横移動用電動モータ164が停止維持されるように構成している。一方、ロックレバー188の解除操作によって横移動許可スイッチ211がオンに自動復帰した状態で、オープンスイッチ168がオン操作されることによって、正回転リレースイッチ215a,215bを介して横移動用電動モータ164に通電されて、横移動用電動モータ164が正転作動するように構成している。
【0077】
上記の構成により、オープンスイッチ168がオン操作されることによって、オープンスイッチ168又はセットセンサ213がオフになるまで横移動用電動モータ164が正転作動する。即ち、縦軸150回りに刈取回動支点軸4aが略水平方向に正転回動し、走行機体1の左外側方のサイドオープン位置(刈取メンテナンス作業位置)に向けて、収納位置(刈取作業位置)の刈取装置3が横移動する。刈取装置3の内部及び後部と、脱穀装置5の前面側とが開放される。したがって、刈取装置3と脱穀装置5の間にメンテナンス作業スペースが形成される。そのメンテナンス作業スペース内に作業者が入り込んで、刈取装置3又は脱穀装置5のメンテナンス作業等を実行できる。刈取装置3に詰まった藁の除去等の掃除や、刈取装置3の内部又は脱穀装置5の前部の保守点検作業や、部品の交換等の修理作業が行える。
【0078】
一方、ロックレバー188の解除操作にて横移動許可スイッチ211がオンに自動復帰した状態で、収納スイッチ169がオン操作されることによって、逆回転リレースイッチ216a,216bを介して横移動用電動モータ164に通電されて、横移動用電動モータ164が逆転作動するように構成している。即ち、収納スイッチ169のオン操作によって、収納スイッチ169又はリターンセンサ214がオフになるまで、横移動用電動モータ164が逆転作動する。横移動用電動モータ164の逆転作動によって、縦軸150回りに刈取回動支点軸4aが略水平方向に逆転回動し、サイドオープン位置(刈取メンテナンス作業位置)から収納位置(刈取作業位置)に向けて、刈取装置3が移動するように構成している。
【0079】
したがって、収納スイッチ169のオン操作によって、サイドオープン位置(刈取メンテナンス作業位置)から収納位置(刈取作業位置)に刈取装置3を復動できる。刈取装置3が収納位置(刈取作業位置)に復動したときに、リターンセンサ214がオフになって横移動用電動モータ164を停止させる。また、ロックレバー188のロック操作によって、刈取回動支点軸4aにロックアーム187を係合できる。刈取回動支点軸4aにロックアーム187を係合することによって、走行機体1の収納位置(刈取作業位置)に刈取回動支点軸4aが支持される。また、ロックレバー188のロック操作によって、操作アーム191を介して横移動許可スイッチ211がオフに切換えられ、横移動用電動モータ164が停止維持される。
【0080】
図10に示す如く、刈取装置3を縦軸150回りに回動させて横移動させる電動アクチュエータとしての横移動用電動モータ164を備え、走行機体1に搭載したバッテリ170を電源として横移動用電動モータ164を作動可能に構成している。したがって、エンジン20を停止させた状態で、横移動用電動モータ164を作動でき、刈取装置3の内部や脱穀装置5の前部等のメンテナンス作業性を向上できる。なお、オペレータが手動操作によって刈取装置3を縦軸150回りに回動させるためのオペレータの握り操作部等を刈取装置3に設ける必要がない。したがって、刈取装置3の側方に、その握り操作部等の刈取作業外の部品を突出させることがなく、刈取装置3の外形状をシンプルに構成できる。
【0081】
図2、図10に示す如く、走行機体1の運転部10(運転座席12の左側方)のレバーコラム18に、オープンスイッチ168と、収納スイッチ169と、ロックレバー188を設ける。刈取装置3の縦軸150回りの回動を規制するロック機構186の係脱操作(ロックレバー188の操作)、又は横移動用電動モータ164を作動するオンオフ機構(オープンスイッチ168、収納スイッチ169)の操作等を、走行機体1の運転部10からオペレータが実行可能に構成している。したがって、走行機体1の左外側方のサイドオープン位置(刈取メンテナンス作業位置)に刈取装置3を移動させるサイドオープン作業において、エンジン20を停止させた後、ロック機構186を離脱させ、次いで横移動用電動モータ164を作動できる。したがって、運転部10におけるオペレータの一連の操作によって、サイドオープン位置(刈取メンテナンス作業位置)に刈取装置3を簡単に移動できる。また、運転部10におけるオペレータの一連の操作によって、走行機体1の収納位置に刈取装置3を復動でき、ロック機構186を係合させ、次いでエンジン20を作動できる。その結果、刈取装置3のサイドオープン作業性や、エンジン20を作動させる運転の再開操作性等を向上できる。
【0082】
上記の記載及び図1、図4、図9から明かなように、エンジン20を搭載した走行機体1と、エンジン20の回転力がミッションケース26を介して伝達される走行部としての走行クローラ2と、走行クローラ2の駆動速度と同調した車速同調速度で作動させる刈取装置3とを備え、刈取装置3を横軸としての刈取回動支点軸4a回りに回動させて昇降動可能に構成する一方、刈取装置3を縦軸150回りに回動させることによって刈取装置3が横移動するように構成してなるコンバインにおいて、ミッションケース26からの刈取駆動力を伝達する機体側入力軸178が走行機体1に配置され、刈取装置3に刈取駆動力を伝達する移動側入力軸としての刈取り入力軸45が刈取装置3に配置され、刈取装置3が縦軸150回りに横移動することによって係脱するギヤ機構185を介して、機体側入力軸178に刈取り入力軸45が連結される構造であって、ミッションケース26内に、刈取装置3の駆動速度を切換えるPTO変速機構110と、所定の一定回転速度で刈取装置3を作動させるPTO一定回転機構111とを配置したものであるから、エンジン20又はミッションケース26と刈取装置3との間に配置する刈取装置3の駆動機構(刈取入力ベルト機構)を簡単に構成できる。走行機体1の外側方に刈取装置3を移動させて行うメンテナンス作業が簡単に実行できる。刈取装置3の内部や脱穀装置5の前部等のメンテナンス作業性を向上できる。また、前記ミッションケース内に、PTO変速機構110と、PTO一定回転機構111とを配置することによって、PTO変速機構110又はPTO一定回転機構111を設けるギヤケース等が不要である。PTO変速機構110及びPTO一定回転機構111の両方に、刈取装置3の駆動機構(刈取入力ベルト機構)を兼用できる。したがって、走行機体1を小型化したり、その重量を軽減したり、その製造コストを低減することができる。
【0083】
上記の記載及び図2、図9、図10から明かなように、縦軸150回りの回動によって刈取装置3を横移動させる電動アクチュエータとしての横移動用電動モータ164と、刈取装置3の縦軸150回りの回動を規制するロック機構186とを備え、走行機体1の運転部10から横移動用電動モータ164又はロック機構186をオペレータが操作可能に構成したものであるから、刈取装置3の内部や脱穀装置5の前部等のメンテナンス作業に必要な操作、例えばエンジン20を停止させたり、ロック機構186を解除させたり、横移動用電動モータ164を作動させる等の一連の操作を、運転部10のオペレータによって簡単に実行できる。また、手動操作で刈取装置3を縦軸150回りに回動させる必要がないから、刈取装置3の回動操作部等を設ける必要がない。したがって、刈取装置3の外側方に、刈取作業外の部品(刈取装置3の回動操作部等)を突出させることがない。刈取装置3の外形状をシンプルに構成できる。
【0084】
上記の記載及び図10から明かなように、ロック機構186が解除操作されて、刈取装置3が縦軸150回りに回動可能に支持された状態で、走行機体1に搭載されたバッテリ170に、横移動用電動モータ164が作動可能に接続されるように構成する一方、ロック機構186がロック操作されて刈取装置3を刈取作業状態に支持した状態で、エンジン20を作動可能に構成したものであるから、走行機体1の外側方に刈取装置3を移動させるメンテナンス作業において、エンジン20を停止させた後、ロック機構186を離脱させ、次いで横移動用電動モータ164を作動できる。また、走行機体1の収納位置(刈取作業状態に支持される位置)に刈取装置3を復動させ、ロック機構186を係合させ、次いでエンジン20を作動できる。刈取装置3のメンテナンス作業性や、エンジン20を作動させる運転の再開操作性等を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】本発明の第1実施形態の4条刈り用コンバインの側面図である。
【図2】同平面図である。
【図3】コンバインの駆動系統図である。
【図4】ミッションケースの駆動系統図である。
【図5】油圧回路図である。
【図6】刈取装置の左側面説明図である。
【図7】刈取装置の平面説明図である。
【図8】刈取装置の正面説明図である。
【図9】刈取装置の一部分の平面断面図である。
【図10】刈取装置を縦軸回りに回動させる電気回路図である。
【符号の説明】
【0086】
1 走行機体
2 走行クローラ(走行部)
3 刈取装置
4a 刈取回動支点軸(横軸)
10 運転部
20 エンジン
26 ミッションケース
45 刈取り入力軸(移動側入力軸)
110 PTO変速機構
111 PTO一定回転機構
150 縦軸
164 横移動用電動モータ(電動アクチュエータ)
170 バッテリ
178 機体側入力軸
185 ギヤ機構
186 ロック機構


【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンを搭載した走行機体と、前記エンジンの回転力がミッションケースを介して伝達される走行部と、前記走行部の駆動速度と同調した車速同調速度で作動させる刈取装置とを備え、前記刈取装置を横軸回りに回動させて昇降動可能に構成する一方、前記刈取装置を縦軸回りに回動させることによって前記刈取装置が横移動するように構成してなるコンバインにおいて、
前記ミッションケースからの刈取駆動力を伝達する機体側入力軸が前記走行機体に配置され、前記刈取装置に刈取駆動力を伝達する移動側入力軸が前記刈取装置に配置され、前記刈取装置が縦軸回りに横移動することによって係脱するギヤ機構を介して、前記機体側入力軸に移動側入力軸が連結される構造であって、
前記ミッションケース内に、前記刈取装置の駆動速度を切換えるPTO変速機構と、所定の一定回転速度で前記刈取装置を作動させるPTO一定回転機構とを配置したことを特徴とするコンバイン。
【請求項2】
前記縦軸回りの回動によって前記刈取装置を横移動させる電動アクチュエータと、前記刈取装置の縦軸回りの回動を規制するロック機構とを備え、前記走行機体の運転部から前記電動アクチュエータ又は前記ロック機構をオペレータが操作可能に構成したことを特徴とする請求項1に記載のコンバイン。
【請求項3】
前記ロック機構が解除操作されて、前記刈取装置が前記縦軸回りに回動可能に支持された状態で、前記走行機体に搭載されたバッテリに、前記電動アクチュエータが作動可能に接続されるように構成する一方、前記ロック機構がロック操作されて前記刈取装置を刈取作業状態に支持した状態で、前記エンジンを作動可能に構成したことを特徴とする請求項2に記載のコンバイン。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2009−247218(P2009−247218A)
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−95025(P2008−95025)
【出願日】平成20年4月1日(2008.4.1)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】