説明

コンバイン

【課題】揺動選別装置の処理物量が少なくなっても穀粒が塵埃と共に機体外に排出される選別不良を回避しやすいコンバインを得る。
【解決手段】扱胴23を駆動状態にしながら揺動選別装置30を停止させる選別クラッチ70を備えてある。選別クラッチ70を入り状態と切り状態とに切り換え操作する選別制御手段86を備えてある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンバインに関する。
【背景技術】
【0002】
コンバインでは、刈り取り穀稈を扱胴によって脱穀処理し、脱穀部からの処理物を駆動揺動自在な揺動選別装置によって穀粒と塵埃とに選別処理して穀粒を回収し、塵埃を機体外に排出するよう構成される。
この種のコンバインとして、従来、たとえば特許文献1に記載されたコンバインがあった。特許文献1に記載されたコンバインでは、刈取部からの刈取り穀稈を扱胴によって脱穀処理する脱穀部と、脱穀部からの処理物を揺動駆動されるシーブケース(揺動選別装置に相当)によって選別処理する選別部とを備えている。
特許文献1に記載されたコンバインでは、選別風を供給する唐箕と、唐箕による選別風量を調節するよう唐箕の排気口に設けた風量調節板と、この風量調節板に連係された電動モータを制御して風量調節板を開閉操作する制御装置とを備えている。
【0003】
【特許文献1】特開2001−238525号公報(段落〔0012〕、〔0013〕、〔0028〕、〔0029〕、図2,7)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この種のコンバインでは、揺動選別装置における処理物量が変化すると、穀粒に塵埃が混入する選別不良、あるいは穀粒が塵埃と共に機体外に排出される選別不良が発生しやすくなる。上記した従来の選別風調節を採用しても、選別不良を回避しにくい場合があった。
つまり、揺動選別装置の処理物量が少なくなった場合、選別風量の減少調節が行なわれても、処理物の揺動選別が行なわれていると、塵埃や穀粒が揺動選別装置から浮き上がって選別風を受けやすいことにより、穀粒が塵埃と共に機体外に排出されやすくなる。
【0005】
本発明の目的は、上記した選別不良をより回避しやすいコンバインを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本第1発明によるコンバインは、扱胴を駆動状態にしながら揺動選別装置を停止させる選別クラッチと、前記選別クラッチを入り状態と切り状態とに切り換え操作する選別制御手段とを備えてある。
【0007】
本第1発明の構成によると、選別制御手段を人為的あるいは自動的に操作されて選別クラッチが入り状態に切り換え操作されると、揺動選別装置が駆動されて処理物に揺動選別を受けさせることができ、選別クラッチが切り状態に切り換え操作されると、揺動選別装置が停止されて処理物に揺動選別を受けさせないで済ませることができる。
【0008】
したがって、処理物に揺動選別を受けさせて穀粒に塵埃が混入しにくい選別処理を行わせることも、処理物に揺動選別を受けさせないで穀粒が塵埃と共に排出されにくい選別処理を行わせることもできる。
【0009】
本第2発明では、刈取り部の穀稈存否を検出する穀稈存否検出手段を備え、
前記刈取り部が穀稈不在状態になると、前記選別制御手段が前記穀稈存否検出手段による検出情報を基に前記選別クラッチを切り状態に自動的に切り換え操作するよう構成してある。
【0010】
作業走行から移動走行や旋回走行に切り換えられると、刈取り部に穀稈が導入されなくなって揺動選別装置に供給される処理物量が少なくなる。この場合、本第2発明の構成によると、穀稈存否検出手段が穀稈不在の検出状態になり、穀稈存否検出手段による検出情報を基に選別制御手段が選別クラッチを切り状態に切り換え操作し、処理物が揺動選別を受けなくなる。
【0011】
したがって、作業走行から移動走行や旋回走行に切り換えられた場合、処理物に揺動選別を受けさせない選別処理が自ずと現出され、揺動選別装置の処理物量減少にもかかわらず、穀粒損失を回避した選別処理を行わせながら走行することができる。
【0012】
本第3発明は、前記揺動選別装置を変速駆動する選別変速装置と、前記揺動選別装置の処理物量を検出する処理物量検出手段とを備え、
前記揺動選別装置の処理物量が増加すると揺動選別装置が高速駆動され、前記揺動選別装置の処理物量が減少すると揺動選別装置が低速駆動されるよう、前記処理物量検出手段による検出情報を基に前記選別変速装置を変速操作する変速制御手段を備えてある。
【0013】
本第3発明の構成によると、揺動選別装置の処理物量が増加した場合、処理物量検出手段による検出情報に基づく変速制御手段による選別変速装置の変速操作によって揺動選別装置が高速駆動され、処理物が高速な揺動選別を受けて穀粒と塵埃との選別が迅速に行われる。これに対し、揺動選別装置の処理物量が減少した場合、処理物量検出手段による検出情報に基づく変速制御手段による選別変速装置の変速操作によって揺動選別装置が低速駆動され、処理物が低速な揺動選別を受けて穀粒が飛散しにくくなる。
【0014】
したがって、揺動選別装置の処理物量が変化しても、処理物量に適応した高速の揺動選別あるいは低速の揺動選別が自ずと現出され、穀粒に塵埃が混入しにくい選別処理や、穀粒が塵埃と共に排出されにくい選別処理を行わせることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の実施例に係るコンバインの全体側面図である。図2は、本発明の実施例に係るコンバインの全体平面図。これらの図に示すように、本発明の実施例に係るコンバインは、左右一対のクローラ走行装置1,1によって自走するよう構成され、かつエンジン2を有した原動部と、エンジン2の上方に設けた運転座席3を有した運転部とが装備された自走機体を備え、この自走機体の機体フレーム4の前部に連結された刈取り部10を備え、前記機体フレーム4の後部側に機体横方向に並べて設けた脱穀装置20と穀粒タンク5とを備えている。
【0016】
このコンバインは、稲、麦などの収穫作業を行う。
すなわち、刈取り部10は、刈取り部フレーム11が機体フレーム4に対して上下に揺動操作されることにより、刈取り部10の前部に自走機体横方向に並んで位置する分草具12が地面近くに位置した下降作業状態と、前記分草具12が地面から高く上昇した上昇非作業状態とに昇降操作される。
【0017】
刈取り部10を下降作業状態にして自走機体を走行させると、刈取り部10は、植立穀稈を各分草具12によって対応する引起し装置13に導入して引起し処理し、各引起し装置13によって引起し処理される植立穀稈を一つのバリカン形の刈取り装置14によって刈取り処理し、刈取り穀稈を供給装置15によって脱穀装置20に供給する。脱穀装置20は、刈取り穀稈を脱穀処理し、穀粒タンク5は、脱穀装置20からの脱穀粒を回収して貯留する。
【0018】
図3は、前記脱穀装置20の縦断側面図である。この図に示すように、前記脱穀装置20は、脱穀機体21の機体内上部に設けた扱室22と、この扱室22に駆動回転自在に設けた扱胴23とを有した脱穀部Aを備え、前記扱室22の下方に設けた揺動選別装置30を有した選別部Bを備えている。
【0019】
図3に示すように、前記脱穀部Aは、前記扱室22と前記扱胴23とを備える他、扱室22の下部に扱胴23に沿わせて設けた受網24と、脱穀機体21の外部に駆動自在に設けた脱穀フィードチェーン25とを備え、前記供給装置15からの刈取り穀稈の株元側を前記脱穀フィードチェーン25によって挟持して脱穀機体後方側に搬送して穂先側を扱室22に供給し、扱室22に供給された穂先側を扱胴23と受網24とによる扱き作用によって脱穀処理し、脱穀粒などの脱穀処理物を受網24から落下させ、脱穀排ワラを脱穀フィードチェーン25によって扱室22の後部に位置する送塵口26から排出する。扱室22から排出された脱穀排ワラは、排ワラ搬送装置27によって脱穀機体内の後部に搬送されて排出口28から脱穀機体外に排出される。
【0020】
送塵口26の後方に駆動回転自在に位置する処理回転体29は、送塵口26からの脱穀処理物を再処理して穀粒の取り出しを行う。
【0021】
図3に示すように、前記選別部Bは、前記揺動選別装置30を備える他、揺動選別装置30の前端側の下方に設けた唐箕31と、揺動選別装置30の終端側の上方に設けた排塵ファン32とを備え、前記受網24から落下した脱穀処理物を揺動選別装置30によって受け止め、この揺動選別装置30が備えるグレンパン33とチャフシーブ34とストローラック35とグレンシーブ36とによる揺動選別と、前記唐箕31によって脱穀機体後方向きに供給された選別風とによって穀粒と塵埃とに選別し、穀粒を揺動選別装置30から落下させ、塵埃を排塵ファン32によって選別風と共に吸引して排塵ファン32の出口332aから脱穀機体外に排出するか、あるいは選別風と共に脱穀機体後部の排塵口37から脱穀機体外に排出する。
【0022】
揺動選別装置30から落下した穀粒のうちの一番処理物は、一番スクリューコンベヤ38によって受け止められて脱穀機体外に搬出され、脱穀機体外に位置する揚穀装置(図示せず)によって穀粒タンク5に供給される。揺動選別装置30から落下した穀粒のうちの二番処理物は、二番スクリューコンベヤ39によって受け止められて脱穀機体外に搬出され、脱穀機体外に位置する還元装置(図示せず)によって脱穀機体21の横側壁に位置する還元口(図示せず)に揚送されてこの還元口から脱穀機体内に投入されて揺動選別装置30の始端側に還元される。
【0023】
選別部Bは、前記唐箕31の前方に位置する回転ファン31aと、一番スクリューコンベヤ38と二番スクリューコンベヤ39との間に位置する回転ファン31bとによって補助選別風を供給する。
【0024】
図4は、前記エンジン2の駆動力をクローラ走行装置1と刈取り部10と脱穀装置20とに伝達する伝動装置の線図である。この図に示すように、前記伝動装置は、前記エンジン2の出力軸2aの駆動力をベルト伝動機構40を介して走行ミッション41の入力軸41aに伝達し、この入力軸41aの駆動力を前記走行ミッション41によって左右一対のクローラ走行装置1,1に分配して伝達する。前記走行ミッション41は、前記入力軸41aをポンプ軸として有した静油圧式無段変速装置42を備え、エンジン2からの駆動力を前記静油圧式無段変速装置42によって前進駆動力と後進駆動力とに変換して左右一対のクローラ走行装置1,1に伝達する。
【0025】
前記伝動装置は、前記エンジン2の出力軸2aの駆動力を伝動ベルト43によって刈取り変速装置44の入力軸44aに伝達し、この刈取り変速装置44の出力軸44bの駆動力を、ギヤ伝動機構45を介して刈取り部10の入力軸16に伝達する。前記刈取り変速装置44は、静油圧式無段変速装置によって構成してある。
【0026】
前記伝動装置は、前記エンジン2の出力軸2aの駆動力をベルトテンションクラッチで成る脱穀クラッチ46を介して伝動ケース47の入力軸47aに伝達し、この伝動ケース47の脱穀出力軸47bの駆動力を伝動ベルト48によって前記扱胴23の回転支軸23aに伝達する。
【0027】
前記伝動装置は、前記伝動ケース47の選別出力軸47cの駆動力を伝動ベルト49によって前記唐箕31に伝達し、前記選別出力軸47cの駆動力を伝動ベルト50によって前記一番スクリューコンベヤ38に伝達する。
【0028】
前記伝動装置は、前記一番スクリューコンベヤ38の駆動力を伝動ベルト51とギヤ伝動機構52とを介して前記二番スクリューコンベヤ39に伝達し、前記一番スクリューコンベヤ38の駆動力を前記伝動ベルト51とギヤ伝動機構53とを介して前記排塵ファン32に伝達し、前記排塵ファン32の駆動力をギヤ伝動機構54を介して前記脱穀フィードチェーン25に伝達する。
【0029】
前記伝動装置は、前記一番スクリューコンベヤ38の駆動力を前記伝動ベルト51と選別変速装置60と選別クラッチ70とを介して前記揺動選別装置30の駆動軸80に伝達する。
【0030】
図5に示すように、前記駆動軸80の脱穀機体内に位置する本体部分80aが揺動選別装置30の後端部から延出した支持アーム81に回転自在に連結され、前記駆動軸80の脱穀機体21の横側壁21aから脱穀機体外に突出した軸端部分80bが軸支部材82を介して前記横側壁21aに回転自在に支持されている。前記駆動軸80の本体部分80aの前記支持アーム81に対する回転軸芯が、前記軸端部分80bの脱穀機体21に対する回転軸芯P1に対して偏芯している。前記駆動軸80は、前記伝動ベルト51から伝達される駆動力によって前記軸端部分80bの回転軸芯P1まわりに回転駆動されて前記本体部分80aを前記回転軸芯P1まわりに回転駆動することにより、揺動選別装置30を揺動駆動する。
【0031】
図5は、前記選別変速装置60の縦断面構造を示している。図6は、前記選別変速装置60の側面図である。これらの図に示すように、前記選別変速装置60は、前記伝動ベルト51が一端側に巻回された伝動軸61の他端側に一体回転自在に設けた入力側プーリ62と、前記駆動軸80の前記軸端部分80bに相対回転自在に支持された出力側プーリ63と、この出力側プーリ63と前記入力側プーリ62とに巻回された伝動ベルト64とを備え、前記出力側プーリ63を割り型プーリに構成することによって構成してある。
【0032】
前記選別変速装置60は、前記出力側プーリ63の可動側の半割りプーリ63aに相対回転自在に支持された変速アーム65と、この変速アーム65の基部と前記軸支部材82との間に設けたカム機構66と、前記変速アーム65に操作片67aが係合したネジ式操作機構67と、このネジ式操作機構67の送りネジ軸67bに連動された電動モータ68とを備えている。
【0033】
つまり、前記選別変速装置60は、伝動ベルト51によって駆動される伝動軸61の駆動力を入力側プーリ62に入力し、入力側プーリ62の駆動力を伝動ベルト64によって出力側プーリ63に伝達してこの出力側プーリ63から選別クラッチ70に出力し、この選別クラッチ70を介して前記駆動軸80に伝動することによって揺動選別装置30を駆動する。この選別変速装置60は、電動モータ68が駆動操作されることによって揺動選別装置30の駆動速度を変更する。
【0034】
すなわち、電動モータ68が駆動操作されると、ネジ式操作機構67は、前記送りネジ軸67bが電動モータ68によって回転操作されることによって前記操作片67aを送りネジ軸67bに沿わせて移動操作し、操作片67aによって前記変速アーム65を前記回転軸芯P1まわりに揺動操作する。変速アーム65が揺動操作されると、前記カム機構66の可動カム66aが変速アーム65と共に回転して前記カム機構66の前記軸支部材82に固定された固定カム66bに対して相対回転する。これにより、変速アーム65が移動操作されて可動側の半割りプーリ63aを固定側の半割りプーリ63bに対して接近、離間操作し、出力側プーリ63のベルト巻回径が変化して出力側プーリ63の駆動回転数が変化する。
【0035】
図5は、前記選別クラッチ70の縦断構造を示している。この図に示すように、前記選別クラッチ70は、前記駆動軸80の軸端部分80bにスプライン構造によって一体回転および摺動自在に係合させたクラッチ体71を備え、このクラッチ体71と前記選別変速装置60の前記固定側の半割りプーリ63bとの間に設けた噛み合い形式のクラッチ本体72を備えて構成してある。
【0036】
前記選別クラッチ70は、前記クラッチ体71に相対回転自在に係合した操作体73と、この操作体73のメネジ部73aに螺合した送りネジ軸74と、この送りネジ軸74に連動された電動モータ75(図4参照)とを備えており、この電動モータ75が駆動操作されることにより、入り状態と切り状態とに切り換わる。
【0037】
すなわち、電動モータ75が入り側に駆動操作されると、送りネジ軸74が電動モータ75によって回転操作されて操作体73を入り側に移動操作する。すると、クラッチ体71が前記半割りプーリ63bに向けて移動操作されてクラッチ本体72を入り状態に切り換え操作する。これにより、選別クラッチ70は、選別変速装置60の出力側プーリ63の駆動力をクラッチ本体72とクラッチ体71とを介して駆動軸80に伝達するよう入り状態になり、揺動選別装置30を駆動する。
【0038】
電動モータ75が切り側に駆動操作されると、送りネジ軸74が電動モータ75によって回転操作されて操作体73を切り側に移動操作する。すると、クラッチ体71が前記半割りプーリ63bから離れる方向に移動操作されてクラッチ本体72を切り状態に切り換え操作する。これにより、選別クラッチ70は、選別変速装置60の出力側プーリ63から駆動軸80への伝動を絶つよう切り状態になり、揺動選別装置30を停止させる。
【0039】
選別クラッチ70は、前記伝動軸61より伝動下手側に位置しており、扱胴23と唐箕31と脱穀フィードチェーン25とを駆動状態にしながら揺動選別装置30を停止させる。
【0040】
図4に示すように、前記選別クラッチ70の前記電動モータ75と、前記選別変速装置60の前記電動モータ68とは、制御装置85に連係されている。前記制御装置85は、マイクロコンピュータを利用して構成してあり、選別制御手段86と変速制御手段87とを構成している。
【0041】
前記選別制御手段86は、前記選別クラッチ70の前記電動モータ75と、前記刈取り部10の穀稈存否を検出する穀稈存否検出手段88とに連係されており、穀稈存否検出手段88による検出情報と、前記制御装置85の記憶部で成る遅延時間設定手段89による設定情報とを基に前記電動モータ75を操作し、作業走行の際、揺動選別装置30の処理物量が多くても穀粒に塵埃が混入しにくい状態で処理部物の選別処理を行わせ、移動走行や旋回走行の際、揺動選別装置30の処理物量が少なくても穀粒が塵埃と共に機体外に排出されることを防止する。
【0042】
すなわち、前記穀稈存否検出手段88は、前記刈取り部10の前記供給装置15に設けた接触式の株元センサーによって構成してあり、前記供給装置15によって搬送される刈取り穀稈の株元に対する接触状態になると、刈取り部10が穀稈存在状態にあると検出し、穀稈に対する非接触状態になると、刈取り部10が穀稈不在状態にあると検出する
【0043】
つまり、作業走行の際、刈取り部10には穀稈が導入されて刈取り部10が穀稈存在状態になり、移動走行や旋回走行の際、刈取り部10には穀稈が導入されなくて刈取り部10が穀稈不在状態になる。これにより、刈取り部10の穀稈存在状態を検出することによって作業走行状態にあると判断でき、刈取り部10が穀稈不在状態にあると検出することによって移動走行状態や旋回走行状態にあると判断できる。
【0044】
前記選別制御手段86は、前記穀稈存否検出手段88による検出情報を基に刈取り部10が穀稈不在状態と穀稈存在状態とのいずれに切り換わったかを判断する。前記選別制御手段86は、刈取り部10が穀稈不在状態に切り換わったと判断した場合、この判断結果と前記遅延時間設定手段89による設定遅延時間tとを基に前記電動モータ75をクラッチ切り側に操作させ、刈取り部10が穀稈不在状態に切り換わってから前記設定遅延時間tが経過した後に揺動選別装置30を停止させる。
【0045】
前記選別制御手段86は、刈取り部10が穀稈存在状態に切り換わったと判断した場合、この判断結果を基に前記電動モータ75を直ちにクラッチ入り側に操作させて揺動選別装置30を駆動させる。
【0046】
前記遅延時間設定手段89は、刈取り穀稈を刈取り部10の前記穀稈存否検出手段88が位置する部位から扱室22まで搬送するのに必要な搬送時間を前記設定遅延時間tとして設定している。
【0047】
前記変速制御手段87は、前記選別変速装置60の前記電動モータ68と、揺動選別装置30の処理物量を検出する処理物量検出手段90とに連係されており、処理物量検出手段90(図3参照)による検出情報と、前記制御装置85の記憶部で成る基準処理物量設定手段91による設定情報とを基に前記電動モータ68を操作し、揺動選別装置30の処理物量が変化しても、穀粒に塵埃が混入しにくく、かつ穀粒が塵埃と共に機体外に排出されにくい選別処理を行わせる。
【0048】
すなわち、前記処理物量検出手段90は、図3に示す如く前記揺動選別装置30のチャフシーブ34の始端部に設けた接触式の嵩センサーによって構成してあり、チャフシーブ34に供給された処理物との接触によってチャフシーブ34の処理物の堆積高さを揺動選別装置30における処理物量として検出する。
【0049】
前記変速制御手段87は、前記処理物量検出手段90による検出情報と、前記基準処理物量設定手段91による設定基準処理物量wとを基に揺動選別装置30の処理物量が設定基準処理物量wよりも増加したか、減少したかを判断する。変速制御手段87は、揺動選別装置30の処理物量が設定基準処理物量wよりも増大したと判断した場合、前記電動モータ68を高速側に操作させて選別変速装置30を高速側に変速操作し、揺動選別装置30を高速で駆動させる。変速制御手段87は、揺動選別装置30の処理物量が設定基準処理物量wよりも多くなるほど、揺動選別装置30の駆動速度をより高速にする。
【0050】
前記変速制御手段87は、揺動選別装置30の処理物量が設定基準処理物量wよりも減少したと判断した場合、前記電動モータ68を低速側に操作させて選別変速装置60を低速側に変速操作し、揺動選別装置30を低速で駆動させる。変速制御手段87は、揺動選別装置30の処理物量が設定基準処理物量wよりも少ないほど、揺動選別装置30の駆動速度をより低速にする。
【0051】
図1,2に示すように、前記自走機体は、機体フレーム4の後部に設けた揺動選別装置用の支持装置95を備えている。
図9に示すように、前記支持装置95は、機体フレーム4に立設された支柱96と、この支柱96の支持部96aに連結軸97を介して揺動自在に支持された支持アーム98と、この支持アーム98の基端側アーム98aと前記支柱96とに連結されたガスダンパ99とを備えている。
【0052】
前記支持アーム98は、前記基端側アーム98aと、この基端側アーム98aにスライド伸縮自在に支持された先端側アーム98bと、先端側アーム98bの先端部に設けたフック98cとを備えている。
【0053】
図7は、揺動選別装置30の取り出し要領を示す後面図である。図8は、揺動選別装置30の取り出し要領を示す平面図である。これらの図に示すように、前記支持アーム98のフック98cを、揺動選別装置30の前記駆動軸80に係止させ、この係止状態を維持しながら揺動選別装置30を脱穀機体21から後方に引き出し操作する。
すると、支持装置95は、揺動選別装置30が脱穀機体から引き出されていくに伴い、支持アーム98を伸長させながら、連結軸97の機体上下向き軸芯まわりに脱穀機体後方側に揺動させていく。
つまり、支持装置95は、脱穀機体21から引き出し操作される揺動選別装置30の後端側を支持アーム98によって吊り下げ支持し、揺動選別装置30の機体左右方向での重量バランスを取りやすくし、かつ揺動選別装置30の引き出し操作を軽くする。
【0054】
〔別実施例〕
上記した実施例に替え、選別クラッチ70を人為的に入り状態と切り状態とに切り換え操作する構成を採用してもよく、この場合も本発明の目的を達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】コンバインの全体側面図
【図2】コンバインの全体平面図
【図3】脱穀装置の縦断側面図
【図4】伝動装置の線図
【図5】選別変速装置と選別クラッチの縦断面図
【図6】選別変速装置の側面図
【図7】揺動選別装置の取り出し要領を示す後面図
【図8】揺動選別装置の取り出し要領を示す平面図
【符号の説明】
【0056】
10 刈取り部
23 扱胴
30 揺動選別装置
60 選別変速装置
70 選別クラッチ
86 選別制御手段
87 変速制御手段
88 穀稈存否検出手段
90 処理物量検出手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
扱胴を駆動状態にしながら揺動選別装置を停止させる選別クラッチと、前記選別クラッチを入り状態と切り状態とに切り換え操作する選別制御手段とを備えてあるコンバイン。
【請求項2】
刈取り部の穀稈存否を検出する穀稈存否検出手段を備え、
前記刈取り部が穀稈不在状態になると、前記選別制御手段が前記穀稈存否検出手段による検出情報を基に前記選別クラッチを切り状態に自動的に切り換え操作するよう構成してある請求項1記載のコンバイン。
【請求項3】
前記揺動選別装置を変速駆動する選別変速装置と、前記揺動選別装置の処理物量を検出する処理物量検出手段とを備え、
前記揺動選別装置の処理物量が増加すると揺動選別装置が高速駆動され、前記揺動選別装置の処理物量が減少すると揺動選別装置が低速駆動されるよう、前記処理物量検出手段による検出情報を基に前記選別変速装置を変速操作する変速制御手段を備えてある請求項1又は2記載のコンバイン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−268417(P2009−268417A)
【公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−122548(P2008−122548)
【出願日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】