説明

コンバイン

【課題】揺動選別棚から排出される排塵物と排塵処理室から排出される排塵物とを左右方向に拡散し、これを鋤き込んだ場合の土質の違いによる作物の生育条件のばらつきを少なくして、安定した収穫量を得る。
【解決手段】排塵処理室(45)の後端部に側方へ向けて開口する側部排塵口(62)と後方へ向けて開口する後部排塵口(63)を設け、側部排塵口(62)を選別室(26)に内装した揺動選別棚(53)の上側に配置し、揺動選別棚(53)の後端部に後下がり傾斜姿勢の排出案内板(73)を設け、後部排塵口(63)のうちの揺動選別棚(53)から左右方向に偏倚した穀粒貯留装置(7)側の部位に、後下がり傾斜姿勢の底部排塵案内面(70)を有する排塵案内体(71)を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、コンバインに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、下記特許文献1,2に例示されるように、走行装置の前側に刈取装置を設け、走行装置の上側に脱穀装置を設け、脱穀装置の横側に穀粒貯留装置を設け、脱穀装置の上部に扱室を設け、脱穀装置の下部に選別室を設け、扱室に扱胴を内装し、扱室の後部側方に排塵処理室を設け、排塵処理室に排塵処理胴を内装し、扱室の後部と排塵処理室の前部とを連通口を介して連通させ、排塵処理室の後端部に側方へ向けて開口する側部排塵口と後方へ向けて開口する後部排塵口を設け、側部排塵口と後部排塵口を選別室に内装した揺動選別棚の上側に配置し、揺動選別棚の後端部に後下がり傾斜姿勢の排出案内板を設け、後部排塵口に、後下がり傾斜姿勢の底部排塵案内面を有する排塵案内体を設けたコンバインが知られている。
【特許文献1】特開2003−23842号公報
【特許文献2】特開2002−17147号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上述のような従来のコンバインでは、排塵処理室の後部排塵口が揺動選別棚の上側に配置されており、この後部排塵口から排塵案内板によって案内されながら排出される排塵物は、揺動選別棚から排出案内板によって案内されながら排出される排塵物と合流する。
【0004】
このために、脱穀装置から排出される排塵物は、左右方向に拡散されにくく、圃場面上に堆積して厚い層となり、刈取作業跡の美観を損ねるばかりか、次工程の耕うん作業によって藁屑を鋤き込んだ場合、土質を均一化できず、苗植付後の作物の生育条件がばらついてしまう。
【0005】
この結果、一定の収穫量を確保できにくくなる問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、上述の如き課題を解決するために、次のような技術的手段を講じる。
即ち、請求項1に記載の発明は、走行装置(1)の前側に刈取装置(4)を設け、走行装置(1)の上側に脱穀装置(6)を設け、脱穀装置(6)の横側に穀粒貯留装置(7)を設け、脱穀装置(6)の上部に扱室(25)を設け、脱穀装置(6)の下部に選別室(26)を設け、扱室(25)に扱胴(43)を内装し、扱室(25)の後部側方に排塵処理室(45)を設け、排塵処理室(45)に排塵処理胴(44)を内装し、扱室(25)の後部と排塵処理室(45)の前部とを連通口(46)を介して連通させ、排塵処理室(45)の後端部に側方へ向けて開口する側部排塵口(62)と後方へ向けて開口する後部排塵口(63)を設け、側部排塵口(62)を選別室(26)に内装した揺動選別棚(53)の上側に配置し、揺動選別棚(53)の後端部に後下がり傾斜姿勢の排出案内板(73)を設け、後部排塵口(63)のうちの揺動選別棚(53)から左右方向に偏倚した穀粒貯留装置(7)側の部位に、後下がり傾斜姿勢の底部排塵案内面(70)を有する排塵案内体(71)を設けたことを特徴とするコンバインとしたものである。
【0007】
これにより、排塵処理室45の側部排塵口62から排出される排塵物は、揺動選別棚53上に落下して該揺動選別棚53上の排塵物と合流し、排出案内板73を介して機外へ排出される。また、排塵処理室45の後部排塵口63から排出される排塵物は、揺動選別棚53上へは落下せず、排塵案内体71の底部排塵案内面70を介して、揺動選別棚53よりも穀粒貯留装置7側に偏倚した位置に排出される。
【0008】
また、請求項2に記載の発明は、排出案内板(73)の上面側に設けた寄せ板(74)と排塵案内体(71)の側部に形成した側部排塵案内面(72)とを、後側ほど穀粒貯留装置(7)側に向かう姿勢に設定したことを特徴とする請求項1に記載のコンバインとしたものである。
【0009】
これにより、揺動選別棚53の後端から排出される排塵物と、排塵処理室45の後部排塵口63から排出される排塵物とが、共に穀粒貯留装置7側に向けて拡散されながら排出される。
【0010】
また、請求項3に記載の発明は、脱穀装置(6)の後側に排藁切断装置(42)を設け、後部排塵口(63)と排藁切断装置(42)の切断刃(75)との間に仕切板(76)を設けたことを特徴とする請求項1に記載のコンバインとしたものである。
【0011】
これにより、排塵処理室45の後部排塵口63から排出される排塵物と、排藁切断装置42によって切断された排藁とが分離した状態で夫々排出される。
【発明の効果】
【0012】
請求項1記載の発明によると、排塵処理室45の後部排塵口63から排出される排塵物が、排塵案内体71の底部排塵案内面70を介して、揺動選別棚53よりも穀粒貯留装置7側に偏倚した位置に排出されることによって、揺動選別棚53の後端から排出される排塵物と排塵処理室45の後端から排出される排塵物とを左右方向に拡散し、圃場面上の堆積層をむらの少ない薄いものにでき、これを鋤き込んだ場合の土質の違いによる作物の生育条件のばらつきを少なくして、安定した収穫量を得ることができる。
【0013】
また、請求項2記載の発明によると、揺動選別棚53の後端から排出される排塵物と、排塵処理室45の後部排塵口63から排出される排塵物とが、共に穀粒貯留装置7側に向けて拡散されながら排出されることによって、揺動選別棚53の後端から排出される排塵物と排塵処理室45の後端から排出される排塵物とを左右方向により均一に拡散し、圃場面上の堆積層をむらの少ない薄いものにでき、これを鋤き込んだ場合の土質の違いによる作物の生育条件のばらつきを少なくして、安定した収穫量を得ることができる。
【0014】
また、請求項3記載の発明によると、排塵処理室45の後部排塵口63から排出される排塵物を、排藁切断装置42で切断されて落下する排藁の流れによって邪魔されずに排出でき、揺動選別棚53の後端から排出される排塵物と排塵処理室45の後端から排出される排塵物とを左右方向により均一に拡散し、圃場面上の堆積層をむらの少ない薄いものにでき、これを鋤き込んだ場合の土質の違いによる作物の生育条件のばらつきを少なくして、安定した収穫量を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
この発明におけるコンバインの実施の形態を、4条刈の自脱型コンバインを例示して説明する。
図1、図2、図3に示すように、走行装置1の上側に車台2を設け、該車台2の前部上側に刈取懸架台3を設け、該刈取懸架台3の上部に刈取装置4の後フレーム5を上下回動自在に軸支し、該車台2上における刈取装置4の後側に脱穀装置6を搭載し、該車台2上における脱穀装置6の横側に穀粒貯留装置7を搭載し、該車台2上における穀粒貯留装置7の前側に操縦部8を設けてコンバインを構成する。
【0016】
前記走行装置1は、ミッションケース9から駆動される駆動スプロケット10と、転輪フレーム11に軸支した転輪12及び緊張輪13とにわたってゴム製のクローラ14を巻き掛けて構成する。
【0017】
前記刈取装置4は、後フレーム5の前端部に連結した下部ギヤケース15と、該下部ギヤケース15から前方へ延出した分草フレーム16と、該分草フレーム16の下側に取り付けた刈刃17と、該分草フレーム16の前端部に取り付けた分草体18と、該分草体18の後側に斜設した引起装置19と、穂先搬送装置および株元搬送装置(いずれも図示省略)からなる搬送装置と、左右両側部を覆う刈取サイドカバー20と、開閉自在のナローガイド21とから構成する。尚、22は作業灯、23は扱深制御用の扱深さセンサ、24はバックミラーである。
【0018】
前記脱穀装置6は、上部の扱室25と、下部の選別室26とから構成し、前記扱室25の外側部には、フィードチェン27と挟扼杆28とからなる穀稈挟持搬送装置を設ける。これら扱室25および選別室26の詳細構成については後述する。
【0019】
前記穀粒貯留装置7は、前記選別室26の一番移送螺旋に連通した一番揚穀筒29から収穫穀粒の供給を受けて一時貯留し、この穀粒を適宜袋詰めすることのできるホッパ30を備えている。図2に示すように、この穀粒貯留装置7は、3連のホッパ30,30,30から成り、該ホッパ30の下側に袋積載台31を設け、該袋積載台31の外側に開閉自在の補助キャリア31aを設ける。32は、補助キャリア31上に搭乗した補助作業者用の背もたれである。
【0020】
前記操縦部8は、操縦席32の下側にエンジン33を搭載し、該操縦席32前方の前部操作パネル上に操向レバー34とハンドル35を設け、操縦席32側方の側部操作パネル上にスロットルレバー36と主変速レバー37と副変速レバー38と刈取クラッチレバー39と脱穀クラッチレバー40を設ける。41は、エンジン33への吸気経路の始端部に設けたプレクリーナである。
【0021】
前記脱穀装置6の後側には、フィードチェン27によって挟持搬送されながら脱穀された後の排藁を細断処理する排藁切断装置42を設ける。
しかして、図4、図5、図6に示すよう、前記脱穀装置6の上部の扱室25には、扱胴43を回転自在に内装し、該扱胴43の下側には扱網(図示省略)を設ける。また、扱室25の後部側方には、排塵処理胴44を回転自在に内装した排塵処理室45を設ける。そして、扱室25の後部と排塵処理室45の前部とを、連通口46を介して連通させる。前記排塵処理胴44の外周には連続した螺旋体47を巻き掛けて設け、該螺旋体47の外周縁に沿って格子状の濾過部材48を設ける。また、該排塵処理胴44の前側には、同軸上に二番処理胴49を設ける。該二番処理胴49は、排塵処理胴44よりも直径の小さい円筒に連続した螺旋体50を、前記排塵処理同44の螺旋体47と反対向きに巻き掛けたものである。該二番処理胴49の下側には濾過部材51を設ける。前記選別部26に設ける二番移送螺旋から、二番揚穀筒52を介して二番処理胴49の後部(移送始端部)に被処理物を還元供給する構成とする。
【0022】
また、図4に示すように、選別室26には、揺動選別棚53の下側に、前方から、唐箕54と一番移送螺旋55と二番移送螺旋56を設ける。前記揺動選別棚53には、前部から、ラック状の移送棚57と、開閉調節自在のシーブ58と、ストローラック59を設け、前記シーブ58の下方に選別網60を設ける。前記排塵処理室45の濾過部材48、二番処理胴49下側の濾過部材51、該濾過部材51前方の開口部61から漏下した被処理物が、揺動選別棚53へ落下する構成である。
【0023】
そして、図6、図7に示すように、排塵処理室45の後端部に、側方の揺動選別棚53上へ向けて開口する側部排塵口62と、後方の機外へ向けて開口する後部排塵口63とを設ける。即ち、排塵処理胴44の下側に設けた濾過部材48の後端は、排塵処理室45の後端よりも所定距離だけ前方に配置し、該濾過部材48の後端と排塵処理室45の後端との間に、側部排塵口62を形成する。また、排塵処理胴44の回転軸64の後端部は、扱室後壁に締結された軸受ステー66を介して、該軸受ステー66に支持されたベアリング67に軸受けする。該軸受ステー66は、排塵処理胴44の直径よりも幅狭の横向きの板体で、該軸受ステー66の下側に後部排塵口63を形成する。尚、前記側部排塵口62と後部排塵口63とは連続して設けられる。
【0024】
前記側部排塵口62は、ストローラック59の上方に設けた排塵ファン68のケーシング69と対向する位置に配置する。
また、前記後部排塵口63のうちの揺動選別棚53から左右方向に偏倚した穀粒貯留装置7側の位置に、後下がり傾斜姿勢の底部排塵案内面70を有する排塵案内体71を設ける。また、該排塵案内体71における穀粒貯留装置7設置側の側部には、後側ほど穀粒貯留装置7設置側に向かう姿勢とした側部排塵案内面72を、前記底部排塵案内面70と連続して設ける。即ち、前記排塵案内体71は、底部排塵案内面72と側部排塵案内面72とを有するように折り曲げた鋼板である。
【0025】
尚、前記排塵処理胴44の回転軸64は、背面視において扱室25の側壁と略一致する位置に配置され、排塵処理室45の側壁は、この扱室25の側壁よりも穀粒貯留装置7設置側へ膨出している。
【0026】
また、前記揺動選別棚53の後端部に、後下がり傾斜姿勢の排出案内板73の前端部を取り付ける。該排出案内板73の上面側には、後側ほど穀粒貯留装置7設置側へ向かう姿勢とした縦向きの寄せ板74を取り付ける。
【0027】
また、図8に示すように、前記後部排塵口63と脱穀装置6の後側に設けた排藁切断装置42の切断刃75との間に仕切板76を設け、該後部排塵口63と仕切板76との間に、圃場面へ向けて開口した排塵通路77を形成する。
【0028】
以上の構成により、排塵処理室45の側部排塵口62から排出される排塵物は、揺動選別棚53上に落下して該揺動選別棚53上の排塵物と合流し、排出案内板73を介して機外へ排出される。また、排塵処理室45の後部排塵口63から排出される排塵物は、揺動選別棚53上へは落下せず、排塵案内体71の底部排塵案内面70を介して、揺動選別棚53よりも穀粒貯留装置7側に偏倚した位置に排出される。これにより、揺動選別棚53の後端から排出される排塵物と排塵処理室45の後端から排出される排塵物とを左右方向に拡散し、圃場面上の堆積層をむらの少ない薄いものにでき、これを鋤き込んだ場合の土質の違いによる作物の生育条件のばらつきを少なくして、安定した収穫量を得ることができる。
【0029】
また、揺動選別棚53の後端から排出される排塵物と、排塵処理室45の後部排塵口63から排出される排塵物とが、共に穀粒貯留装置7側に向けて拡散されながら排出される。これにより、揺動選別棚53の後端から排出される排塵物と排塵処理室45の後端から排出される排塵物とを左右方向により均一に拡散し、圃場面上の堆積層をむらの少ない薄いものにでき、これを鋤き込んだ場合の土質の違いによる作物の生育条件のばらつきを少なくして、安定した収穫量を得ることができる。
【0030】
また、排塵処理室45の後部排塵口63から排出される排塵物と、排藁切断装置42によって切断された排藁とが分離した状態で夫々排出される。これにより、排塵処理室45の後部排塵口63から排塵通路77を経て排出される排塵物を、排藁切断装置42で切断されて落下する排藁の流れによって邪魔されずに排出でき、揺動選別棚53の後端から排出される排塵物と排塵処理室45の後端から排出される排塵物とを左右方向により均一に拡散し、圃場面上の堆積層をむらの少ない薄いものにでき、これを鋤き込んだ場合の土質の違いによる作物の生育条件のばらつきを少なくして、安定した収穫量を得ることができる。
【0031】
尚、図7に示すように、排塵処理室45における回転軸64よりも機体内側の部分には、排塵処理胴44の上側に沿って漏下部のない壁体83を設けるが、特に側部排塵口62の上側の部位では、該壁体83の下縁部を回転軸64の位置よりも低い位置まで延設し、該側部排塵口62から排出されようとする排塵物に抵抗を与えて、後部排塵口63からの排出を促進する構成としている。
【0032】
また、図9に示すように、扱室25の上側を覆う扱胴カバー78の内面に設ける4枚の排塵案内板79は、扱胴カバー78に対して支点軸80回りに回動自在に軸着され、これら4枚の排塵案内板79の一端側を丸棒状の連動杆81で連結し、扱胴カバー78の上面側に設けた排塵調節レバー82の回動操作によって角度調節できる構成としている。即ち、従来は、この4枚の排塵案内板79の一端側を連動する部材が帯板状の板体Aであり、この板体Aと各排塵案内板79との連結部に藁屑や泥が入り込んで付着し、排塵案内板79の角度調節が不能となる問題があった。しかしながら、上述のように、この板体Aを丸棒状の連動杆81に変更することにより、該連動杆81と排塵案内板79との連結部に藁屑や泥が入り込んでも、これらが付着しにくく、排塵案内板79の角度調節を円滑に維持することができる。
【0033】
図10に示すように、前記主変速レバー37の操作によって変速出力する静油圧式無段変速装置84の出力軸85と、ミッションケース9の入力軸86とを、ギヤ連動機構87を介して連動する。該入力軸86の外端部には刈取出力プーリ88を設け、該入力軸86の内側部分に摺動自在に設けた副変速ギヤ89と、これより下位の中間軸90に設けた入力ギヤ91との間に副変速機構を形成する。前記副変速ギヤ89は、副変速レバー38の操作によって摺動する構成とする。そして、前記中間軸90に設けた出力ギヤ92と、これより下位のサイドクラッチ軸93に設けたセンターギヤ94とを噛み合わせる。該サイドクラッチ軸93上におけるセンターギヤ94の左右両側には、左右のサイドクラッチギヤ95,95を摺動自在およびセンターギヤ94に対して係合離脱自在に設ける。また、該左右のサイドクラッチギヤ95,95の両外側には、左右のサイドブレーキ96,96を設ける。更に、これより下位の減速軸97には、前記左右のサイドクラッチギヤ95,95に夫々噛み合う左右の減速ギヤ98,98を回転自在に設ける。また、これより下位の左右の車軸99,99の内端部には、前記左右の減速ギヤ98,98に噛み合う左右の車軸ギヤ100,100を設け、該左右の車軸99,99の外端部には、前記駆動スプロケット10,10を取り付ける。
【0034】
しかして、図11に示すように、前記中間軸90に設けた入力ギヤ91と、該中間軸90上における出力ギヤ92の外側に設けた皿状ギヤ101とには、中間軸90の軸芯から放射方向の位置に、円周方向に所定の角度をおいて複数の孔102を穿設する。この孔102は、中間軸90の左右両端を支持するベアリング103の外径部と略等しい位置に配置され、中間軸90の回転によって入力ギヤ91と皿状ギヤ101とが回転すると、ミッションケース9内の潤滑油がこの孔102によってベアリング103側へ流され、該ベアリング103に十分な潤滑油が供給されて、該ベアリング103の耐久性が向上する。これによって、軸長を短くてすみ、ベアリング103の長寿命化が達せられて、コンバインの耐久性を向上させることができる。また、ミッションケース9自体の小型化が図れる。
【0035】
また、図12に示すように、前記中間軸90の一端側から該中間軸90の内部に油路104を穿設し、該油路104の内端部から放射方向に中間軸90の外面に向けて開口する潤滑油取込油路105を穿設する。これにより、中間軸90の回転によって、ミッションケース9内の潤滑油が潤滑油取込油路105及び油路104を経てベアリング103側へ供給され、該ベアリング103に十分な潤滑油が供給されて、該ベアリング103の耐久性が向上する。これによって、軸長を短くてすみ、ベアリング103の長寿命化が達せられて、コンバインの耐久性を向上させることができる。また、ミッションケース9自体の小型化が図れる。
【0036】
また、図13に示すように、前記サイドクラッチギヤ95,95を摺動させるシフタ106は、回転中心となるボス部107から外周方向に突出したアーム108,108の先端部の孔に、シフタ爪109を有したピン110を内側から圧入し、該ピン110の突出端部にC型止め輪111を嵌めて固定する。このように、シフタ爪109を有したピン110をアーム108に圧入することで、該ピン110のがたつきが少なくなり、サイドクラッチギヤ95,95の摺動を円滑に行うことができる。また、アーム108とピン110とを溶接しなくてすむため、製造コストを低減することができる。また、前記ピン110は、シフタ爪109の取り付け部分の直径よりも、アーム108に圧入する部分の直径の方を大径に形成する。即ち、アーム108部分は鋳物であるため強度が高く、嵌めこむピン110の直径を大きくでき、ピン110自体の強度も高められる。尚、前記アーム108部分の肉厚を、ピン110の圧入代よりも大きく形成し、アーム108とピン110との間に発生するガタを小さくして耐久性を高めることが出来る。
【0037】
また、図14に示すように、ミッションケース9と一体の車軸ケース112の端面と駆動スプロケット10との間に、防塵カラー113を設ける。そして、該防塵カラー113と駆動スプロケット10との間であって、該駆動スプロケット10のボス部の内周部に、シール部材114を設ける。また、車軸ケース112の端面部には、ベアリング115と共にシール部材116を設ける。これにより、車軸99先端のスプライン部と駆動スプロケット10のボス部内周のスプライン部との係合部に泥水等が浸入するのを防止して、耐久性を向上させることができる。
【0038】
また、図15に示すように、前記サイドブレーキ96のケース部117の保持壁部118と、中間軸90に設けた入力ギヤ91とを、中間軸90の軸芯方向において重合させて設ける。これにより、ケース部117の保持強度を高めることができる。
【0039】
また、図16に示すように、排塵ファン68のケーシング69のうち、上側のケーシング119の前端部を排塵ファン68の回転軸よりも前側に配置し、該上側のケーシング119の後端部を排藁切断装置42の切断刃75を支持する軸のうち、掻込輪120を有したローター軸121の軸芯位置よりも下方に配置する。これにより、排塵ファン68による吹き出し風量が増加し、揺動選別棚53後端からの排塵物の拡散効果が増す。
【0040】
また、排塵ファン68のケーシング69のうち、下側のケーシング122の始端部を排塵ファン68の回転軸よりも前側に配置し、該下側のケーシング122の終端部を、排塵ファン68の吹き出し部に設けた分離板123の上端の分離部に重ねて設ける。これにより、排藁切断装置42側からの切り藁が、排塵ファン68側に飛び込みにくくなり、切り藁の詰まりによる排塵ファン68の損傷を少なくすることができる。
【0041】
また、上述の構成に加えて、分離板123の始端部に、前下がり傾斜姿勢の弾性板124を設けてもよい。これにより、揺動選別棚53上の藁屑が弾性板124に案内されて排塵ファン68に吸われ、揺動選別棚53上の穀粒は二番移送螺旋56側に落下し、3番飛散を減少させることができる。
【0042】
また、上記の構成に加えて、弾性板124の下端部を、揺動選別棚53の後端部の高さよりも低い位置に設置するとよい。これにより、揺動選別棚53上の藁屑が弾性板124に案内されて排塵ファン68に吸われ、揺動選別棚53上の穀粒は二番移送螺旋56側に落下し、3番飛散を減少させることができる。
【0043】
また、上記の構成に加えて、揺動選別棚53におけるシーブ58の前部上側(扱室25の排稈口に臨む位置)に、ラック体125を設け、該ラック体125の後端部の高さよりも低い位置に、前記弾性板124の下端部を設置するとよい。これにより、ラック体125からシーブ58上に落下する藁屑が弾性板124に案内されて排塵ファン68に吸われ、揺動選別棚53上の穀粒は二番移送螺旋56側に落下し、3番飛散を減少させることができる。
【0044】
また、上記の構成に加えて、前記ストローラック59前端の取付板126の仮想延長線よりも、前記弾性板124のほうを前方に配置するとよい。これにより、ストローラック59上にまで至らない小さな藁屑を、弾性板124によって排塵ファン68へ案内し、大きな藁屑が排塵ファン68に吸われて、この排塵ファン68が損傷するような不具合を少なくすることができる。
【0045】
また、上記の構成に加えて、シーブ58を、角度変更自在の前側の可動シーブ58aと、角度変更不能の後側の固定シーブ58bとに分割形成し、固定シーブ58bの傾斜角度を可動シーブ58aの傾斜角度よりも急傾斜角度に設定してもよい。これにより、唐箕54からの選別風を、急傾斜姿勢の固定シーブ58bによって上方へ案内し、弾性板124へと引き継いで排塵ファン68に吸わせることができる。これにより、固定シーブ58b上からの藁屑の吸出し効果が高まり、揺動選別棚53上の穀粒は二番移送螺旋56側に落下し、3番飛散を減少させることができる。
【0046】
また、上記の構成に加えて、弾性板124の下端部の位置を、前後方向において、一番棚先127の位置と、ストローラック59の取付板126との間に設定するとよい。これにより、唐箕54からの選別風を、一番棚先127によって上方へ案内し、弾性板124へと引き継いで排塵ファン68に吸わせることができる。これにより、一番棚先127上からの藁屑の吸出し効果が高まり、揺動選別棚53上の穀粒は二番移送螺旋56側に落下し、3番飛散を減少させることができる。
【0047】
また、図17に示すように、前記弾性板124における排塵処理室45設置側の端部位置を、排塵ファン68のケーシング69における排塵処理室45設置側の端部位置よりも、排塵処理室45設置側へ延長して設けてもよい。また、前記弾性板124における排塵処理室45設置側の端部を、排塵処理室45の下側に臨ませて配置してもよい。また、前記弾性板124を、上部の可塑性の鋼板と下部の弾性板とから構成し、上部の可塑性の鋼板の端部よりも、下部の弾性板の端部を、排塵処理室45設置側へ大きく延長して設けてもよい。これにより、弾性板124による藁屑の案内効果が揺動選別棚53の略全幅にわたり、穀粒の3番飛散を少なくすることができる。
【0048】
また、図18、図19に示すように、刈取装置4の刈取サイドカバー20を、前部サイドカバー128と後部サイドカバー129とに、前後に2分割して構成し、後部サイドカバー129の前部に、通気口130を設ける。これにより、刈取装置4の内部で発生した塵埃を、通気口130から流入する風によって後方に排出でき、作業環境を衛生的に改善することができる。
【0049】
また、図20に示すように、刈取装置4の供給搬送チェン131部と脱穀装置6の扱室25の入口漏斗132との間に、2枚に分割された引継弾性板133,133を設ける。該引継弾性板133,133のうち外側に配置される引継弾性板133の前端部は、前記供給搬送チェン131の後端部下方に潜り込ませるように配置する。これにより、引継弾性板133の端面に穀稈が引っ掛かるのを防止できる。
【0050】
また、図21、図22に示すように、4基の引起装置19を連動して駆動する上部横伝動軸を内装した上部横伝動筒134と、後フレーム5の上部とを、前後方向の支持フレーム135によって連結し、該支持フレーム135の上側に沿ってカバー136を取り付ける。該カバー136によって、刈取装置4と操縦部8との間の隙間から立ち上る塵埃が、操縦部8側へ流れるのを少なくすることができる。
【0051】
また、図23に示すように、引起装置19の背面側から穂先搬送装置137の上側にわたる範囲に穂先案内カバー138を設ける。該穂先案内カバー138は、その前端部を引起装19の背面側に設けたステー139に差し込んで固定し、その後部下縁部を穂先搬送装置137の上面側設けたステー140にボルト締結して取り付ける。これにより、引起装置19の振動が直接穂先案内カバー138に伝わらず、該穂先案内カバー138の損傷を少なくすることができる。また、該穂先案内カバー138を容易に着脱することができる。
【0052】
また、図24、図25に示すように、前記エンジン33を覆うエンジンカバー141のラジエータ冷却風取り入れ用の防塵網部142の外側面に、前後方向に所定長を有したブラシ143を配置し、該ブラシ143を前後方向に摺動案内する上下のレール144を設ける。また、ブラシ143側には把持部145を一体的に設ける。これにより、把持部145を把持してブラシ143を前後方向に摺動させると、このブラシ143の毛先によって防塵網部142の目合いに詰まっていた塵埃が除去でき、ラジーエータ冷却効果を適正に維持できる。また、前記レール144の端部には緩衝部材を設けるとよい。尚、前記ブラシ143を電動モータによって前後方向に往復摺動するよう構成してもよく、この電動モータの駆動をラジエータ水温に基づいて制御してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】コンバインの右側面図である。
【図2】コンバインの左側面図である。
【図3】コンバインの平面図である。
【図4】脱穀装置を破断して示す説明用右側面図である。
【図5】脱穀装置の一部を破断して示す説明用側面図である。
【図6】脱穀装置を破断して示す説明用平面図である。
【図7】脱穀装置の要部の説明用背面図である。
【図8】脱穀装置を破断して示す説明用右側面図である。
【図9】脱穀装置の一部の説明用斜視図である。
【図10】ミッションケースを断面して示す説明図である。
【図11】図10における要部の拡大図である。
【図12】図10における要部の拡大図である。
【図13】図10におけるシフタの説明図である。
【図14】図10における要部の説明図である。
【図15】図10における要部の説明図である。
【図16】脱穀装置を破断して示す説明用右側面図である。
【図17】コンバインの要部を示す背面図である。
【図18】コンバインの正面図である。
【図19】コンバインの前部の右側面図である。
【図20】コンバインの要部の平面図である。
【図21】コンバインの平面図である。
【図22】コンバインの要部の右側面図である。
【図23】刈取装置の一部の説明用右側面図である。
【図24】コンバインの一部の説明用左側面図である。
【図25】一部の説明図である。
【符号の説明】
【0054】
1 走行装置
4 刈取装置
6 脱穀装置
7 穀粒貯留装置
25 扱室
26 選別室
42 排藁切断装置
43 扱胴
44 排塵処理胴
45 排塵処理室
46 連通口
53 揺動選別棚
62 側部排塵口
63 後部排塵口
70 底部排塵案内面
71 排塵案内体
72 側部排塵案内面
73 排出案内板
74 寄せ板
75 切断刃
76 仕切板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行装置(1)の前側に刈取装置(4)を設け、走行装置(1)の上側に脱穀装置(6)を設け、脱穀装置(6)の横側に穀粒貯留装置(7)を設け、脱穀装置(6)の上部に扱室(25)を設け、脱穀装置(6)の下部に選別室(26)を設け、扱室(25)に扱胴(43)を内装し、扱室(25)の後部側方に排塵処理室(45)を設け、排塵処理室(45)に排塵処理胴(44)を内装し、扱室(25)の後部と排塵処理室(45)の前部とを連通口(46)を介して連通させ、排塵処理室(45)の後端部に側方へ向けて開口する側部排塵口(62)と後方へ向けて開口する後部排塵口(63)を設け、側部排塵口(62)を選別室(26)に内装した揺動選別棚(53)の上側に配置し、揺動選別棚(53)の後端部に後下がり傾斜姿勢の排出案内板(73)を設け、後部排塵口(63)のうちの揺動選別棚(53)から左右方向に偏倚した穀粒貯留装置(7)側の部位に、後下がり傾斜姿勢の底部排塵案内面(70)を有する排塵案内体(71)を設けたことを特徴とするコンバイン。
【請求項2】
排出案内板(73)の上面側に設けた寄せ板(74)と排塵案内体(71)の側部に形成した側部排塵案内面(72)とを、後側ほど穀粒貯留装置(7)側に向かう姿勢に設定したことを特徴とする請求項1に記載のコンバイン。
【請求項3】
脱穀装置(6)の後側に排藁切断装置(42)を設け、後部排塵口(63)と排藁切断装置(42)の切断刃(75)との間に仕切板(76)を設けたことを特徴とする請求項1に記載のコンバイン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【公開番号】特開2009−34020(P2009−34020A)
【公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−200091(P2007−200091)
【出願日】平成19年7月31日(2007.7.31)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】