コンバイン
【課題】機体右外側方へ開いた状態の補助支持台(8a)上の補助作業者が、支持台(8)上の籾袋を補助支持台(8a)の後端まで引き出す際に、背もたれ(8b)に背中を支持されることによってこの作業を安全に行うことができるものとする。
【解決手段】ホッパー(7)の下方に穀粒排出口(7a)から穀粒が充填される籾袋を支持する支持台(8)を設け、支持台(8)の外側部に機体右外側方へ開いた作業状態と機体内側方へ閉じた非作業状態とに切換可能な補助支持台(8a)を設け、補助支持台(8a)上に機体右外側方へ開いた作用状態と機体内側方へ閉じた非作用状態とに切換可能な補助作業者用の背もたれ(8b)を設け、補助支持台(8a)の作業状態側への切換に連動して背もたれ(8b)を作用状態側へ切り換える連動機構(A)を設ける。
【解決手段】ホッパー(7)の下方に穀粒排出口(7a)から穀粒が充填される籾袋を支持する支持台(8)を設け、支持台(8)の外側部に機体右外側方へ開いた作業状態と機体内側方へ閉じた非作業状態とに切換可能な補助支持台(8a)を設け、補助支持台(8a)上に機体右外側方へ開いた作用状態と機体内側方へ閉じた非作用状態とに切換可能な補助作業者用の背もたれ(8b)を設け、補助支持台(8a)の作業状態側への切換に連動して背もたれ(8b)を作用状態側へ切り換える連動機構(A)を設ける。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脱穀した穀粒を袋詰めするためのホッパーを備えたコンバインに関するものである。
【背景技術】
【0002】
脱穀した穀粒を袋詰めするための穀粒排出口を備えたホッパーを機体後部の片側に配置したコンバインは、特許文献1に示されるように、ホッパーの後方位置に燃料タンクを配置することにより、機体の前後および左右の重量配分のアンバランスを改善して安定した走行を可能とするものである。
【特許文献1】特開2005−341853号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、コンバインによる刈取走行においては、ホッパーで袋詰めした籾袋を支持台上で機体後部に移動させて圃場に降ろす作業を要する。その際に、機体後部に位置する燃料タンクが邪魔になることから、燃料タンクを小さく構成せざるを得ない。
【0004】
本発明の解決しようとする問題点は、支持台上における籾袋の移動作業に支障を招くことなく、必要な燃料タンク容量を確保することができるホッパー型のコンバインを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上述の課題を解決するために、次の技術的手段を講じる。
即ち、左右のクローラ(2,2)を備えた機体の前部に穀稈を刈り取る刈取部(4)を設け、刈取部(4)の後側に刈り取った穀稈を脱穀する脱穀部(5)を設け、脱穀部(5)の側方に脱穀した穀粒を籾袋に袋詰めする穀粒排出口(7a)を備えたホッパー(7)を設け、ホッパー(7)の下方に穀粒排出口(7a)から穀粒が充填される籾袋を支持する支持台(8)を設け、支持台(8)の外側部に機体右外側方へ開いた作業状態と機体内側方へ閉じた非作業状態とに切換可能な補助支持台(8a)を設け、補助支持台(8a)上に機体右外側方へ開いた作用状態と機体内側方へ閉じた非作用状態とに切換可能な補助作業者用の背もたれ(8b)を設け、補助支持台(8a)の作業状態側への切換に連動して背もたれ(8b)を作用状態側へ切り換える連動機構(A)を設け、支持台(8)の後端部に原動機用の燃料を貯留する燃料タンク(9)を設け、燃料タンク(9)の前側で穀粒排出口(7a)の後側となる位置に燃料タンク(9)の下部前面を覆う前面カバー(11)を設け、前面カバー(11)の右外側部を左内側部よりも機体後方に配置し、前面カバー(11)の前側面に形成される籾袋引き出し用の案内面を機体右外側方へ開いた状態の補助支持台(8a)の後端部へ向く方向に設けたことを特徴とするコンバインとする。
【0006】
上記支持台(8)上でホッパー(7)から穀粒が充填された籾袋は、作業者によってホッパー(7)の穀粒排出口(7a)の直下位置から引き出される際に、前面カバー(11)の案内面によって案内されて機体右外側方へ開いた状態の補助支持台(8a)の後端まで支障なく移動する。この作業は、補助支持台(8a)上に搭乗した補助作業者が、背もたれ(8b)に背中を支持された状態で行う。
【発明の効果】
【0007】
本発明によると、機体右外側方へ開いた状態の補助支持台(8a)上の補助作業者が、支持台(8)上の籾袋を補助支持台(8a)の後端まで引き出す際に、背もたれ(8b)に背中を支持されることによってこの作業を安全に行うことができる。また、前面カバー(11)の案内面によって燃料タンク(9)の下部前面に当たることなく案内され、支障なく引き出すことができる。また、支持台(8)の後端部で燃料タンク(9)が右外側方に張り出していても、籾袋の引き出し作業への支障を招くことなく大容量の燃料タンクを搭載でき、長時間の連続作業を行うことができ、作業能率を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
上記技術思想に基づいて具体的に構成された実施の形態について以下に図面を参照しつつ説明する。
本発明に係るコンバインは、機体側面図および平面図をそれぞれ図1、図2に示すように、左右のクローラ2,2によって走行可能に支持した機体に操縦部3および原動機3aを備える。そして、機体の前部に配置されて圃場から穀稈を刈取る刈取部4と、この刈取部4から受けた刈取り穀稈を脱穀する脱穀部5と、その排藁を切断して後方の機外へ排出するカッター6と、脱穀部5の側方で脱穀した穀粒を袋詰めする穀粒排出口7a,7a,7aを備えたホッパー7と、その下方で袋詰めされた籾袋Bを受ける支持台8等を備えて構成される。前記穀粒排出口7a,7a,7aには、これらを開閉操作するシャッターが設けられる。
【0009】
支持台8の外側部には、ホッパー7による袋詰めの作業スペースとしての補助支持台8aおよびその上方で作業者を保護する背もたれ8bを機体右外側方へ開いた状態と機体内側方へ閉じた状態とに切換可能に備え、また、支持台8の後端部に原動機燃料を貯留する燃料タンク9を備える。即ち、前記補助支持台8aは、支持台8の外側部に配置し、機体フレーム60の機体外側端部の前後二箇所に設けたステー8c,8cと補助支持台8aの機体内側端部の前後二箇所に設けたステーとを、機体前後方向の軸芯Qまわりに上下回動自在に連結する。
【0010】
機体後部の要部拡大側面図およびその平面図をそれぞれ図3、図4、図5に示す。機体フレーム60全体は、平面視で矩形に枠組みされた構成である。図5に示すように、ホッパー7設置側の機体後部には、機体フレーム60を構成する外側部の第一前後フレーム60aと、この第一前後フレーム60aと平行に機体内側へ間隔をおいて設けた第二前後フレーム60bと、この第二前後フレーム60bと平行に機体内側へ間隔をおいて設けた脱穀部5搭載用の第三前後フレーム60cとを設ける。第一前後フレーム60aの後端部と第二前後フレーム60bの後端部と第三前後フレーム60cの後端部とを最後部の第一左右フレーム60dで連結する。この第一左右フレーム60dの前側で、第一前後フレーム60aの後部と第二前後フレーム60bの後部とを第二左右フレーム60eで連結する。この第二左右フレーム60eの前側で、第一前後フレーム60aの中間部と第二前後フレーム60bの中間部と第三前後フレーム60cの中間部とを第三左右フレーム60fで連結する。この第三左右フレーム60fの前方で、第一前後フレーム60aの前部と第二前後フレーム60bの前部とを第四左右フレーム60gで連結する。
【0011】
そして、鉄板製の支持台8を機体フレーム60上に載せ、この支持台8の前端部を、前記第四左右フレーム60gの上に載せてボルト61aで締結して固定する。また、この支持台8の機体内側端部を前記第二前後フレーム60bの上に載せて、後述する前面カバー11の前側下縁部と、仕切板11aの下縁部とを上側から重ね、ボルト61bで共締めして固定する。
【0012】
支持台8の後端部には、カッター6の前部下側に入り込ませて機体フレーム60の後部に設けた燃料タンク9を配置し、この燃料タンク9を第二前後フレーム60b上と、前記第一左右フレーム60dと第二左右フレーム60eとの間を連結する前後方向のフレーム60h上とにわたって載せ、左右のゴムバンド62の弾性力で締め付けて固定する。燃料タンク9の注入口9aは、カッター6を支持するカッター支持フレーム6aよりも機体内側の位置から機体外側の位置へ向けて延出する。
【0013】
この燃料タンク9の前面の下半部の前側で、且つ最後部の穀粒排出口7aの後側となる位置には、少なくとも上記ホッパー7の穀粒排出口7aの機体奥側端部の直下の支持台8上の位置からその外側方の位置に及ぶ範囲Wに設置して燃料タンク9を保護する前面カバー11を設ける。この前面カバー11は、薄い鉄板を平面視でクランク形状に屈折させて形成し、下縁部を直角に屈折させて取付面11cを形成する。この前面カバー11の前部の取付面11cを支持台8の機体内側縁部に沿わせて載せ、上述のように、ボルト61bで第二前後フレーム60b側のステーに共締めして固定する。また、前記前面カバー11の中間部を、フレーム60hの前部上と第二左右フレーム60eの機体内側端部とに載せ、この前面カバー11の中間部の取付面11cをボルト61cで支持台8と共締めして固定する。また、前面カバー11の後部をフレーム60h上に載せ、この前面カバー11の後部の取付面11cをボルト61dで支持台8と共締めして固定する。
【0014】
上記の構成によって、この前面カバー11の中間部には外側部が内側部よりも機体後方へ後退した案内面を形成する。その案内面の延長線Sの方向は、袋詰めした籾袋Bの引き出し作業に適合するように、例えば、開放状態の補助支持台8aの後端部、すなわち、補助支持台8aの後部外側のコーナー部より後ろ側の範囲Rに向けて設定する。
【0015】
また、支持台8の機体奥側には、脱穀部5と接近した位置に上記の仕切板11aが取付けられ、燃料タンク9の外側部には、前記前面カバー11の後部を形成する側面カバー12が配置される。この側面カバー12の後端部は、燃料タンク9の注入時にこぼれた燃料を流下案内する案内部13を、注入口9aの下方位置で機体外側に向けて開くように屈曲させて形成する。これら前面カバー11と側面カバー12は、一体の板部材とすることによって簡易に構成することができる。
【0016】
また、仕切板11aによって、脱穀部5の唐箕吸引口5aの下部と、脱穀部5からホッパー7へ穀粒を搬送する一番揚穀筒5bの掃除口5cよりも下側の部分と、枝梗粒を脱穀部5の処理室に還元する二番揚穀筒5dの下部とが覆われる。
【0017】
上述のように機体後部を構成したコンバインでは、支持台8上でホッパー7から穀粒を袋に充填した籾袋Bを、作業者によりホッパー7の穀粒排出口7aの直下位置から機体後部に引き出される際に、前面カバ11ーの前側面に形成された案内面によって燃料タンク9の外側端まで案内され、機体後端まで支障なく移動することができる。したがって、燃料タンク9が支持台8の後端部に張り出していても、籾袋Bの後送作業への支障を招くことなく、燃料タンク9の大容量化と、それに伴う機体の重量バランスの改善が可能となる。
【0018】
次に、操縦部3の座席支持構造について説明する。
操縦部3の座席支持部は、原動機3aを覆うエンジンカバー部の正面図および側面図をそれぞれ図6、図7に示すように、機体外側部の縦軸21aによって機体外側に回動可能にエンジンカバー21を軸支し、このエンジンカバー21に操縦シート22を取付ける。エンジンカバー21にはシート取付部から機体内側へ向かってアーム23を延出し、操縦部3の内側のフレーム24に受けピン24pを設ける。この受けピン24pは、エンジンカバーを閉じた際に、アーム23が乗り上げる関係位置に配置する。
【0019】
上記構成のエンジンカバー21は、操縦シート22に着座する操縦者の体重が受けピン24pを介してフレーム24に分担支持されることから、エンジンカバー21の変形を防止することができる。
【0020】
また、エンジンカバー21の上面は、操縦シート22を起立固定する取付部25aと、その後端に立ち上げた段差部25bから後方を後段部25cとして段差状に形成し、これを折り曲げ構成とすることにより、大きな支持剛性が得られることから、操縦者の体重を支えることができる。
【0021】
この場合、取付部25aから段差部25bに沿ってL字状の補強板26を取付けることにより、さらに大きな支持剛性を確保することができる。また、操縦シート22の支持脚ボス部22aと補強板26の立上げ部26aとの間を板材27で補強することにより、簡単な構成の補強によって支持脚ボス部22aの倒れを防止することができる。
【0022】
しかして、図8に示すように、補助支持台8aの基部と背もたれ8bの基部とにピン70,71を夫々固着し、連動部材72の下端部に形成した孔に前記ピン70を嵌め込む。一方、連動部材72の上端部には長手方向に沿う長孔73を形成し、この長孔73に前記ピン71を嵌め込む。これを連動機構Aと称する。尚、補助支持台8aは、機体フレーム60の側部に前後の回動支点軸74によって上下回動自在に軸着し、一方、背もたれ8bは、カッタ支持フレーム6aに対して回動支点軸75によって上下回動自在に軸着する。これにより、補助支持台8aは、機体右外側方へ開いた作業状態と機体内側方へ閉じた非作業状態とに切換可能となる。また、背もたれ8bは、機体右外側方へ開いた作用状態と機体内側方へ閉じた非作用状態とに切換可能となる。
【0023】
この構成によって、補助支持台8aを下方回動させて機体右外側方へ開いた作業状態とすると、連動部材72によって引かれて背もたれ8bが下方回動し、機体右外側方へ開いた作用状態となる。これによって、補助支持台8a上の補助作業者は、背もたれ8bによって背中を支持された状態で作業することとなり、背もたれ8bの出し忘れがなく、補助支持台8aから落ちるような危険が少なくなり、安全性が向上する。
【0024】
また、図9、図10に示すように、背もたれ8bの自由端側にホルダ76を取り付け、ホッパー7の前壁面に一端を取り付けたゴムベルト77の他端をホルダ76に接続および離脱自在に構成する。このように、ゴムベルト77とホルダ76とを接続すると、補助支持台8a上の補助作業者がより脱落しにくくなり、安全性が更に向上する。尚、図9において78は背もたれ8bのラバー部、図10において79は袋ホルダ、80はホッパー支持フレーム、81はエンジンルームの支持フレームである。
【0025】
また、図11、図12に示すように、背もたれ8bを、回動支点軸75を中心に上下回動するL型のアーム部82と、該アーム部82の自由端側に取り付けたラバー部78とで構成し、アーム部82に対してラバー部78を長手方向に摺動調節自在に構成してもよい。この場合、パイプ状のアーム部82の自由端側外周をプレス成形によって長手方向に凹ませ、ラバー部78側の取付パイプ78aも長手方向に凹ませて、このアーム部82の外周部に取付パイプ78aを嵌合させて取り付ける。そして、取付パイプ78a側のノブボルト83を締め込むことによって、アーム部82上におけるラバー部78の摺動位置を固定するように構成する。
【0026】
また、図11、図13に示すように、前記アーム部82の基部に、該アーム部82の上下回動位置を段階的に固定する係止機構84を設けてもよい。即ち、アーム部82を回動支点軸75によって軸支する機体側のステー85に、長孔86を形成し、この長孔86にピン87を配置する。このピン87を長孔86内において移動させ、アーム部82の基部に形成した複数の凹部88に係合させることによって、アーム部82の上下回動位置を段階的に固定できる構成とする。これによって、背もたれ8bの高さを任意に調節でき、補助作業者の体格に合った位置を選択することができる。
【0027】
また、図13、図14に示すように、アーム部82の外周部に設ける凹部を所定長の幅を有した溝部に形成し、取付パイプ78a側に形成した凹部の内周面(凸部)を、この溝部に入り込ませる。補助作業者の背中が当たることによって、この溝部の幅だけ、アーム部82に対してラバー部78が自由に回動でき、補助作業者の背中へのフィット感が増す。これによって、補助作業者の体格の違いに対応でき、快適性を更に高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】コンバインの側面図である。
【図2】コンバインの平面図である。
【図3】機体後部の要部拡大側面図である。
【図4】図3の機体後部の平面図である。
【図5】ホッパーやカッターを省略して示す機体後部の平面図である。
【図6】エンジンカバー部の正面図である。
【図7】エンジンカバー部の側面図である。
【図8】コンバインの背面図である。
【図9】背もたれの斜視図である。
【図10】ホッパー部のフレーム構成を示す説明用斜視図である。
【図11】背もたれの平面図である。
【図12】背もたれの一部の断面図である。
【図13】背もたれの背面図である。
【図14】背もたれの一部の断面図である。
【符号の説明】
【0029】
2 クローラ
4 刈取部
5 脱穀部
7 ホッパー
7a 穀粒排出口
8 支持台
8a 補助支持台
8b 背もたれ
9 燃料タンク
11 前面カバー
A 連動機構
【技術分野】
【0001】
本発明は、脱穀した穀粒を袋詰めするためのホッパーを備えたコンバインに関するものである。
【背景技術】
【0002】
脱穀した穀粒を袋詰めするための穀粒排出口を備えたホッパーを機体後部の片側に配置したコンバインは、特許文献1に示されるように、ホッパーの後方位置に燃料タンクを配置することにより、機体の前後および左右の重量配分のアンバランスを改善して安定した走行を可能とするものである。
【特許文献1】特開2005−341853号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、コンバインによる刈取走行においては、ホッパーで袋詰めした籾袋を支持台上で機体後部に移動させて圃場に降ろす作業を要する。その際に、機体後部に位置する燃料タンクが邪魔になることから、燃料タンクを小さく構成せざるを得ない。
【0004】
本発明の解決しようとする問題点は、支持台上における籾袋の移動作業に支障を招くことなく、必要な燃料タンク容量を確保することができるホッパー型のコンバインを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上述の課題を解決するために、次の技術的手段を講じる。
即ち、左右のクローラ(2,2)を備えた機体の前部に穀稈を刈り取る刈取部(4)を設け、刈取部(4)の後側に刈り取った穀稈を脱穀する脱穀部(5)を設け、脱穀部(5)の側方に脱穀した穀粒を籾袋に袋詰めする穀粒排出口(7a)を備えたホッパー(7)を設け、ホッパー(7)の下方に穀粒排出口(7a)から穀粒が充填される籾袋を支持する支持台(8)を設け、支持台(8)の外側部に機体右外側方へ開いた作業状態と機体内側方へ閉じた非作業状態とに切換可能な補助支持台(8a)を設け、補助支持台(8a)上に機体右外側方へ開いた作用状態と機体内側方へ閉じた非作用状態とに切換可能な補助作業者用の背もたれ(8b)を設け、補助支持台(8a)の作業状態側への切換に連動して背もたれ(8b)を作用状態側へ切り換える連動機構(A)を設け、支持台(8)の後端部に原動機用の燃料を貯留する燃料タンク(9)を設け、燃料タンク(9)の前側で穀粒排出口(7a)の後側となる位置に燃料タンク(9)の下部前面を覆う前面カバー(11)を設け、前面カバー(11)の右外側部を左内側部よりも機体後方に配置し、前面カバー(11)の前側面に形成される籾袋引き出し用の案内面を機体右外側方へ開いた状態の補助支持台(8a)の後端部へ向く方向に設けたことを特徴とするコンバインとする。
【0006】
上記支持台(8)上でホッパー(7)から穀粒が充填された籾袋は、作業者によってホッパー(7)の穀粒排出口(7a)の直下位置から引き出される際に、前面カバー(11)の案内面によって案内されて機体右外側方へ開いた状態の補助支持台(8a)の後端まで支障なく移動する。この作業は、補助支持台(8a)上に搭乗した補助作業者が、背もたれ(8b)に背中を支持された状態で行う。
【発明の効果】
【0007】
本発明によると、機体右外側方へ開いた状態の補助支持台(8a)上の補助作業者が、支持台(8)上の籾袋を補助支持台(8a)の後端まで引き出す際に、背もたれ(8b)に背中を支持されることによってこの作業を安全に行うことができる。また、前面カバー(11)の案内面によって燃料タンク(9)の下部前面に当たることなく案内され、支障なく引き出すことができる。また、支持台(8)の後端部で燃料タンク(9)が右外側方に張り出していても、籾袋の引き出し作業への支障を招くことなく大容量の燃料タンクを搭載でき、長時間の連続作業を行うことができ、作業能率を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
上記技術思想に基づいて具体的に構成された実施の形態について以下に図面を参照しつつ説明する。
本発明に係るコンバインは、機体側面図および平面図をそれぞれ図1、図2に示すように、左右のクローラ2,2によって走行可能に支持した機体に操縦部3および原動機3aを備える。そして、機体の前部に配置されて圃場から穀稈を刈取る刈取部4と、この刈取部4から受けた刈取り穀稈を脱穀する脱穀部5と、その排藁を切断して後方の機外へ排出するカッター6と、脱穀部5の側方で脱穀した穀粒を袋詰めする穀粒排出口7a,7a,7aを備えたホッパー7と、その下方で袋詰めされた籾袋Bを受ける支持台8等を備えて構成される。前記穀粒排出口7a,7a,7aには、これらを開閉操作するシャッターが設けられる。
【0009】
支持台8の外側部には、ホッパー7による袋詰めの作業スペースとしての補助支持台8aおよびその上方で作業者を保護する背もたれ8bを機体右外側方へ開いた状態と機体内側方へ閉じた状態とに切換可能に備え、また、支持台8の後端部に原動機燃料を貯留する燃料タンク9を備える。即ち、前記補助支持台8aは、支持台8の外側部に配置し、機体フレーム60の機体外側端部の前後二箇所に設けたステー8c,8cと補助支持台8aの機体内側端部の前後二箇所に設けたステーとを、機体前後方向の軸芯Qまわりに上下回動自在に連結する。
【0010】
機体後部の要部拡大側面図およびその平面図をそれぞれ図3、図4、図5に示す。機体フレーム60全体は、平面視で矩形に枠組みされた構成である。図5に示すように、ホッパー7設置側の機体後部には、機体フレーム60を構成する外側部の第一前後フレーム60aと、この第一前後フレーム60aと平行に機体内側へ間隔をおいて設けた第二前後フレーム60bと、この第二前後フレーム60bと平行に機体内側へ間隔をおいて設けた脱穀部5搭載用の第三前後フレーム60cとを設ける。第一前後フレーム60aの後端部と第二前後フレーム60bの後端部と第三前後フレーム60cの後端部とを最後部の第一左右フレーム60dで連結する。この第一左右フレーム60dの前側で、第一前後フレーム60aの後部と第二前後フレーム60bの後部とを第二左右フレーム60eで連結する。この第二左右フレーム60eの前側で、第一前後フレーム60aの中間部と第二前後フレーム60bの中間部と第三前後フレーム60cの中間部とを第三左右フレーム60fで連結する。この第三左右フレーム60fの前方で、第一前後フレーム60aの前部と第二前後フレーム60bの前部とを第四左右フレーム60gで連結する。
【0011】
そして、鉄板製の支持台8を機体フレーム60上に載せ、この支持台8の前端部を、前記第四左右フレーム60gの上に載せてボルト61aで締結して固定する。また、この支持台8の機体内側端部を前記第二前後フレーム60bの上に載せて、後述する前面カバー11の前側下縁部と、仕切板11aの下縁部とを上側から重ね、ボルト61bで共締めして固定する。
【0012】
支持台8の後端部には、カッター6の前部下側に入り込ませて機体フレーム60の後部に設けた燃料タンク9を配置し、この燃料タンク9を第二前後フレーム60b上と、前記第一左右フレーム60dと第二左右フレーム60eとの間を連結する前後方向のフレーム60h上とにわたって載せ、左右のゴムバンド62の弾性力で締め付けて固定する。燃料タンク9の注入口9aは、カッター6を支持するカッター支持フレーム6aよりも機体内側の位置から機体外側の位置へ向けて延出する。
【0013】
この燃料タンク9の前面の下半部の前側で、且つ最後部の穀粒排出口7aの後側となる位置には、少なくとも上記ホッパー7の穀粒排出口7aの機体奥側端部の直下の支持台8上の位置からその外側方の位置に及ぶ範囲Wに設置して燃料タンク9を保護する前面カバー11を設ける。この前面カバー11は、薄い鉄板を平面視でクランク形状に屈折させて形成し、下縁部を直角に屈折させて取付面11cを形成する。この前面カバー11の前部の取付面11cを支持台8の機体内側縁部に沿わせて載せ、上述のように、ボルト61bで第二前後フレーム60b側のステーに共締めして固定する。また、前記前面カバー11の中間部を、フレーム60hの前部上と第二左右フレーム60eの機体内側端部とに載せ、この前面カバー11の中間部の取付面11cをボルト61cで支持台8と共締めして固定する。また、前面カバー11の後部をフレーム60h上に載せ、この前面カバー11の後部の取付面11cをボルト61dで支持台8と共締めして固定する。
【0014】
上記の構成によって、この前面カバー11の中間部には外側部が内側部よりも機体後方へ後退した案内面を形成する。その案内面の延長線Sの方向は、袋詰めした籾袋Bの引き出し作業に適合するように、例えば、開放状態の補助支持台8aの後端部、すなわち、補助支持台8aの後部外側のコーナー部より後ろ側の範囲Rに向けて設定する。
【0015】
また、支持台8の機体奥側には、脱穀部5と接近した位置に上記の仕切板11aが取付けられ、燃料タンク9の外側部には、前記前面カバー11の後部を形成する側面カバー12が配置される。この側面カバー12の後端部は、燃料タンク9の注入時にこぼれた燃料を流下案内する案内部13を、注入口9aの下方位置で機体外側に向けて開くように屈曲させて形成する。これら前面カバー11と側面カバー12は、一体の板部材とすることによって簡易に構成することができる。
【0016】
また、仕切板11aによって、脱穀部5の唐箕吸引口5aの下部と、脱穀部5からホッパー7へ穀粒を搬送する一番揚穀筒5bの掃除口5cよりも下側の部分と、枝梗粒を脱穀部5の処理室に還元する二番揚穀筒5dの下部とが覆われる。
【0017】
上述のように機体後部を構成したコンバインでは、支持台8上でホッパー7から穀粒を袋に充填した籾袋Bを、作業者によりホッパー7の穀粒排出口7aの直下位置から機体後部に引き出される際に、前面カバ11ーの前側面に形成された案内面によって燃料タンク9の外側端まで案内され、機体後端まで支障なく移動することができる。したがって、燃料タンク9が支持台8の後端部に張り出していても、籾袋Bの後送作業への支障を招くことなく、燃料タンク9の大容量化と、それに伴う機体の重量バランスの改善が可能となる。
【0018】
次に、操縦部3の座席支持構造について説明する。
操縦部3の座席支持部は、原動機3aを覆うエンジンカバー部の正面図および側面図をそれぞれ図6、図7に示すように、機体外側部の縦軸21aによって機体外側に回動可能にエンジンカバー21を軸支し、このエンジンカバー21に操縦シート22を取付ける。エンジンカバー21にはシート取付部から機体内側へ向かってアーム23を延出し、操縦部3の内側のフレーム24に受けピン24pを設ける。この受けピン24pは、エンジンカバーを閉じた際に、アーム23が乗り上げる関係位置に配置する。
【0019】
上記構成のエンジンカバー21は、操縦シート22に着座する操縦者の体重が受けピン24pを介してフレーム24に分担支持されることから、エンジンカバー21の変形を防止することができる。
【0020】
また、エンジンカバー21の上面は、操縦シート22を起立固定する取付部25aと、その後端に立ち上げた段差部25bから後方を後段部25cとして段差状に形成し、これを折り曲げ構成とすることにより、大きな支持剛性が得られることから、操縦者の体重を支えることができる。
【0021】
この場合、取付部25aから段差部25bに沿ってL字状の補強板26を取付けることにより、さらに大きな支持剛性を確保することができる。また、操縦シート22の支持脚ボス部22aと補強板26の立上げ部26aとの間を板材27で補強することにより、簡単な構成の補強によって支持脚ボス部22aの倒れを防止することができる。
【0022】
しかして、図8に示すように、補助支持台8aの基部と背もたれ8bの基部とにピン70,71を夫々固着し、連動部材72の下端部に形成した孔に前記ピン70を嵌め込む。一方、連動部材72の上端部には長手方向に沿う長孔73を形成し、この長孔73に前記ピン71を嵌め込む。これを連動機構Aと称する。尚、補助支持台8aは、機体フレーム60の側部に前後の回動支点軸74によって上下回動自在に軸着し、一方、背もたれ8bは、カッタ支持フレーム6aに対して回動支点軸75によって上下回動自在に軸着する。これにより、補助支持台8aは、機体右外側方へ開いた作業状態と機体内側方へ閉じた非作業状態とに切換可能となる。また、背もたれ8bは、機体右外側方へ開いた作用状態と機体内側方へ閉じた非作用状態とに切換可能となる。
【0023】
この構成によって、補助支持台8aを下方回動させて機体右外側方へ開いた作業状態とすると、連動部材72によって引かれて背もたれ8bが下方回動し、機体右外側方へ開いた作用状態となる。これによって、補助支持台8a上の補助作業者は、背もたれ8bによって背中を支持された状態で作業することとなり、背もたれ8bの出し忘れがなく、補助支持台8aから落ちるような危険が少なくなり、安全性が向上する。
【0024】
また、図9、図10に示すように、背もたれ8bの自由端側にホルダ76を取り付け、ホッパー7の前壁面に一端を取り付けたゴムベルト77の他端をホルダ76に接続および離脱自在に構成する。このように、ゴムベルト77とホルダ76とを接続すると、補助支持台8a上の補助作業者がより脱落しにくくなり、安全性が更に向上する。尚、図9において78は背もたれ8bのラバー部、図10において79は袋ホルダ、80はホッパー支持フレーム、81はエンジンルームの支持フレームである。
【0025】
また、図11、図12に示すように、背もたれ8bを、回動支点軸75を中心に上下回動するL型のアーム部82と、該アーム部82の自由端側に取り付けたラバー部78とで構成し、アーム部82に対してラバー部78を長手方向に摺動調節自在に構成してもよい。この場合、パイプ状のアーム部82の自由端側外周をプレス成形によって長手方向に凹ませ、ラバー部78側の取付パイプ78aも長手方向に凹ませて、このアーム部82の外周部に取付パイプ78aを嵌合させて取り付ける。そして、取付パイプ78a側のノブボルト83を締め込むことによって、アーム部82上におけるラバー部78の摺動位置を固定するように構成する。
【0026】
また、図11、図13に示すように、前記アーム部82の基部に、該アーム部82の上下回動位置を段階的に固定する係止機構84を設けてもよい。即ち、アーム部82を回動支点軸75によって軸支する機体側のステー85に、長孔86を形成し、この長孔86にピン87を配置する。このピン87を長孔86内において移動させ、アーム部82の基部に形成した複数の凹部88に係合させることによって、アーム部82の上下回動位置を段階的に固定できる構成とする。これによって、背もたれ8bの高さを任意に調節でき、補助作業者の体格に合った位置を選択することができる。
【0027】
また、図13、図14に示すように、アーム部82の外周部に設ける凹部を所定長の幅を有した溝部に形成し、取付パイプ78a側に形成した凹部の内周面(凸部)を、この溝部に入り込ませる。補助作業者の背中が当たることによって、この溝部の幅だけ、アーム部82に対してラバー部78が自由に回動でき、補助作業者の背中へのフィット感が増す。これによって、補助作業者の体格の違いに対応でき、快適性を更に高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】コンバインの側面図である。
【図2】コンバインの平面図である。
【図3】機体後部の要部拡大側面図である。
【図4】図3の機体後部の平面図である。
【図5】ホッパーやカッターを省略して示す機体後部の平面図である。
【図6】エンジンカバー部の正面図である。
【図7】エンジンカバー部の側面図である。
【図8】コンバインの背面図である。
【図9】背もたれの斜視図である。
【図10】ホッパー部のフレーム構成を示す説明用斜視図である。
【図11】背もたれの平面図である。
【図12】背もたれの一部の断面図である。
【図13】背もたれの背面図である。
【図14】背もたれの一部の断面図である。
【符号の説明】
【0029】
2 クローラ
4 刈取部
5 脱穀部
7 ホッパー
7a 穀粒排出口
8 支持台
8a 補助支持台
8b 背もたれ
9 燃料タンク
11 前面カバー
A 連動機構
【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右のクローラ(2,2)を備えた機体の前部に穀稈を刈り取る刈取部(4)を設け、刈取部(4)の後側に刈り取った穀稈を脱穀する脱穀部(5)を設け、脱穀部(5)の側方に脱穀した穀粒を籾袋に袋詰めする穀粒排出口(7a)を備えたホッパー(7)を設け、ホッパー(7)の下方に穀粒排出口(7a)から穀粒が充填される籾袋を支持する支持台(8)を設け、支持台(8)の外側部に機体右外側方へ開いた作業状態と機体内側方へ閉じた非作業状態とに切換可能な補助支持台(8a)を設け、補助支持台(8a)上に機体右外側方へ開いた作用状態と機体内側方へ閉じた非作用状態とに切換可能な補助作業者用の背もたれ(8b)を設け、補助支持台(8a)の作業状態側への切換に連動して背もたれ(8b)を作用状態側へ切り換える連動機構(A)を設け、支持台(8)の後端部に原動機用の燃料を貯留する燃料タンク(9)を設け、燃料タンク(9)の前側で穀粒排出口(7a)の後側となる位置に燃料タンク(9)の下部前面を覆う前面カバー(11)を設け、前面カバー(11)の右外側部を左内側部よりも機体後方に配置し、前面カバー(11)の前側面に形成される籾袋引き出し用の案内面を機体右外側方へ開いた状態の補助支持台(8a)の後端部へ向く方向に設けたことを特徴とするコンバイン。
【請求項1】
左右のクローラ(2,2)を備えた機体の前部に穀稈を刈り取る刈取部(4)を設け、刈取部(4)の後側に刈り取った穀稈を脱穀する脱穀部(5)を設け、脱穀部(5)の側方に脱穀した穀粒を籾袋に袋詰めする穀粒排出口(7a)を備えたホッパー(7)を設け、ホッパー(7)の下方に穀粒排出口(7a)から穀粒が充填される籾袋を支持する支持台(8)を設け、支持台(8)の外側部に機体右外側方へ開いた作業状態と機体内側方へ閉じた非作業状態とに切換可能な補助支持台(8a)を設け、補助支持台(8a)上に機体右外側方へ開いた作用状態と機体内側方へ閉じた非作用状態とに切換可能な補助作業者用の背もたれ(8b)を設け、補助支持台(8a)の作業状態側への切換に連動して背もたれ(8b)を作用状態側へ切り換える連動機構(A)を設け、支持台(8)の後端部に原動機用の燃料を貯留する燃料タンク(9)を設け、燃料タンク(9)の前側で穀粒排出口(7a)の後側となる位置に燃料タンク(9)の下部前面を覆う前面カバー(11)を設け、前面カバー(11)の右外側部を左内側部よりも機体後方に配置し、前面カバー(11)の前側面に形成される籾袋引き出し用の案内面を機体右外側方へ開いた状態の補助支持台(8a)の後端部へ向く方向に設けたことを特徴とするコンバイン。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2010−11744(P2010−11744A)
【公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−171863(P2008−171863)
【出願日】平成20年6月30日(2008.6.30)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年6月30日(2008.6.30)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】
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