説明

コンバイン

【課題】エアクリーナの頻繁なメンテナンスを要することなく、簡易な構成で清浄吸気を確保することができるコンバインを提供する。
【解決手段】コンバインは、横並び配置の脱穀装置5および穀粒貯留装置6と、この穀粒貯留装置6の前側のエンジン7および操縦装置8とを備えて構成され、上記エンジン7の上側にその吸気用のエアクリーナ11を配置し、これらエンジン7およびエアクリーナ11の機体外側部を覆ってエンジン7の冷却用外気の吸引を案内する風洞状のラジエタカバー12を設けるとともに、エアクリーナ11を囲むように、上記穀粒貯留装置6の前縁部6aをエアクリーナ11の上方に張出した膨出部6bと、エアクリーナ11の前方に背もたれ14aを起立する操縦席14と、エアクリーナ11の機体内側方を塞ぐ脱穀装置5の機壁5aとを設けたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジン吸気用のエアクリーナを備えるコンバインに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に示されるように、エンジン吸気用のエアクリーナを備えるコンバインが知られている。このコンバインは、エアクリーナの機体外側部を開放して構成したものであり、このような簡易な構成により、圃場の塵埃環境下における刈取走行に際して、エアクリーナのメンテナンス性を確保することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−89460号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記エアクリーナは、座席の後ろ側に露出配置され、外側方が開放されているので、圃場から機体外側に沿って舞い上がる塵埃や、ラジエタカバーの防塵網に吸い付けられるようにして移動してきた塵埃がエアクリーナに吸い込まれ易く、エレメントの交換を頻繁に行わなければならないことから、メンテナンスが容易な反面、頻繁なメンテナンスのために作業能率が低下するという問題があった。
【0005】
解決しようとする問題点は、エアクリーナの頻繁なメンテナンスを要することなく、簡易な構成で清浄吸気を確保することができるコンバインを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の発明は、走行装置(3)を備える機体の前部に位置する刈取装置(4)と、この刈取装置(4)の後方で横並び配置の脱穀装置(5)および穀粒貯留装置(6)と、この穀粒貯留装置(6)の前縁部(6a)に近接して一体に構成したエンジン(7)および操縦装置(8)とを備えるコンバインにおいて、上記エンジン(7)の上側にその吸気用のエアクリーナ(11)を配置し、これらエンジン(7)およびエアクリーナ(11)の機体外側部を覆ってエンジン(7)の冷却用外気を吸入案内する風洞状のラジエタカバー(12)を設けるとともに、エアクリーナ(11)を囲むように、上記穀粒貯留装置(6)の前縁部(6a)をエアクリーナ(11)の上方に張出した膨出部(6b)と、エアクリーナ(11)の前方に背もたれ(14a)を起立する操縦席(14)と、エアクリーナ(11)の機体内側方を覆う脱穀装置(5)の機壁(5a)とを設けたことを特徴とするコンバインとした。
【0007】
上記構成により、エアクリーナ(11)は、エンジン(7)の上部において、その前側が操縦席(14)、後側と上側が穀粒貯留装置(6)の前縁部(6a)および膨出部(6b)、機体内側が脱穀装置(5)の機壁(5a)、機体外側方がエンジン(7)からエアクリーナ(11)に及ぶラジエタカバー(12)によって囲まれることから、圃場から機体外側部に沿って舞い上がる塵埃や、ラジエタカバー(12)に吸引されるようにして移動してきた塵埃はラジエタカバー(12)によってその内部への進入が抑えられる。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1の構成において、前記ラジエタカバー(12)は、機体外側方に開放可能に支持したことを特徴とする。
上記ラジエタカバー(12)は、機体外側方に開放することにより、エンジン(7)およびエアクリーナ(11)が機体外側部に露出される。
【0009】
請求項3の発明は、請求項1または請求項2の構成において、前記エアクリーナ(11)は、ラジエタカバー(12)と別体で連通可能に嵌合する吸気口(33a)を備えることを特徴とする。
上記エアクリーナ(11)は、吸気口と連通可能なラジエタカバー(12)によって異物の吸引が抑えられ、また、エレメント交換の際は、ラジエタカバー(12)の嵌合部から別体構成の吸気口(33a)が分離される。
【発明の効果】
【0010】
請求項1のエアクリーナ(11)は、エンジン(7)の上部において、その前側が操縦席、後側と上側が穀粒貯留装置の前縁部および膨出部、機体内側が脱穀装置の機壁、機体外側方がエンジン(7)からエアクリーナ(11)に及ぶラジエタカバー(12)によって囲まれることから、圃場から機体外側部に沿って舞い上がる塵埃や、ラジエタカバー(12)に吸引されるようにして移動してきた塵埃はラジエタカバー(12)によってその内部への進入が抑えられる。したがって、塵埃はエアクリーナ(11)に吸い込まれにくくなり、その結果、上記コンバインは、エレメントの頻繁な交換が必要なくなることにより、簡易な構成で作業能率を向上することができる。
【0011】
請求項2のラジエタカバーは、機体外側方に開放することにより、エンジン(7)およびエアクリーナ(11)が機体外側部に露出されることから、上記コンバインは、請求項1の効果に加え、メンテナンス性を合わせて確保することができる。
【0012】
請求項3のエアクリーナは、ラジエタカバー(12)と別体で連通可能に嵌合する吸気口を形成したことから、請求項1または請求項2の効果に加え、吸気口と連通可能なラジエタカバーによって異物の吸引が抑えられ、また、上記コンバインは、エレメント交換の際に、ラジエタカバー(12)の嵌合部から別体構成の吸気口(33a)を分離することにより、吸気ホースを同時に点検することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】コンバインの機体側面図
【図2】エンジンまわりの要部拡大による内部透視側面図
【図3】操縦部まわりの拡大平面図
【図4】エンジン部の背面図
【図5】フローチャート例1
【図6】機体正面図
【図7】フローチャート例2
【図8】ブロー成形時の拡大横断面図
【図9】タンクの基本横断面図(a)と全体側面図(b)
【図10】運搬、保管の態様を併記したタンクの断面図
【図11】積み重ね態様の正面図(a)および側面図(b)
【発明を実施するための形態】
【0014】
上記技術思想に基づいて具体的に構成された実施の形態について以下に図面を参照しつつ本発明の実施の形態について説明する。
本発明に係るコンバイン1は、機体側面図を図1に示すように、機体フレーム2を走行可能に支持する左右のクローラ3,3と、機体の前部で圃場から穀稈を刈取る刈取装置4と、この刈取装置4から受けた刈取り穀稈を脱穀する後述の脱穀装置5と、この脱穀装置5の側方で脱穀穀粒を貯留する穀粒貯留装置6と、この穀粒貯留装置6の前側に一体的に構成したエンジン7および操縦装置8とを備えて構成される。
【0015】
エンジン周りについて詳細に説明すると、要部拡大による内部透視側面図を図2に示すように、エンジン7の上側にエンジン吸気用のエアクリーナ11を配置し、これらエンジン7およびエアクリーナ11の機体外側部を覆ってエンジンの冷却用外気の吸引を案内する風洞状のラジエタカバー12を設けるとともに、穀粒貯留装置6の前縁部6aをエアクリーナ11の上方に張出した膨出部6bを形成し、この膨出部6bの上半分に、オペレータWが籾収容量を視認しやすいように点検窓13を設ける。ラジエタカバー12は、その外側面に吸引外気中の大きな異物を分離する程度の網目開口を形成して後述のラジエタ32に外気を案内する風洞状に形成する。
【0016】
また、エンジンまわりの平面図を図3に示すように、エアクリーナ11の前方に背もたれ14aを起立する操縦席14と、エアクリーナ11の機体内側方を塞ぐ脱穀装置5の機壁5aとを配置する。操縦席14には、内側方に走行機器および作業機の操作レバー類を配置したサイドパネル21と作業者を支えるハンドル22、前側にステップ23を挟んでメータや刈取の操作機器を配置したフロントパネル24を配置する。
【0017】
上記構成により、エアクリーナ11は、エンジン7の上部において、本体が露出状態でその前側が操縦席14、後側と上側が穀粒貯留装置6の前縁部6aおよび膨出部6b、機体内側が脱穀装置5の機壁5a、機体外側方がエンジン7からエアクリーナ11に及ぶラジエタカバー12によって囲まれることから、機体外側部に沿って圃場から舞い上がる塵埃や、ラジエタカバー12に吸引されるようにして移動してきた塵埃はラジエタカバー12によってその内部への進入が抑えられる。したがって、エアクリーナ11をカバーで覆わなくても、塵埃はエアクリーナ11に吸い込まれにくくなり、その結果、上記コンバインは、エアクリーナの頻繁なメンテナンスを要することなく、清浄吸気を確保することができるので、簡易な構成で作業能率を向上することができる。
【0018】
また、上記構成のラジエタカバー12は、エンジン部の背面図を図4に示すように、下端を支軸31によって機体外側方に開放可能に支持することにより、エンジン7まわりのラジエタ32およびエアクリーナ11が機体外側部に露出される。したがって、上記コンバインは、メンテナンス性を合わせて確保することができる。
【0019】
この場合において、エアクリーナ11は、吸気ホース33の吸気口33aをラジエタカバー12と分離可能に嵌合する別体連通構成とすることにより、エレメント交換の際に、ラジエタカバー12を開けると吸気口33aが分離することにより、吸気ホース33を同時に点検することができる。
【0020】
(穀粒貯留装置の制御)
穀粒貯留装置6の穀粒満量時処理については、自動車体水平機構によってローリング自動制御下の作業中に穀粒貯留装置6の側の車高が最大になった時に、穀粒排出を促すように警報を出力する。この警報出力の具体的な条件は、図5のフローチャート例1に示すように、ステップ1(S1と略記し、以下同様)の脱穀オン、自動車体水平オン(S2)で作業中に右側の上げ量がMAXになったことをポジションセンサーが感知(S3)したことを条件に、穀粒排出の警告を作動させ(S4)る制御処理を構成する。
【0021】
一般に、収容した籾の重量により、穀粒貯留装置6の側のクローラ3が沈下しやすい傾向にあり、一方、機体正面図を図6に示すように、車体水平の自動制御によって機体が水平に保たれることから、オペレータには、籾の重量による沈下量が分かりにくく、穀粒貯留装置6に備えている満量センサーの検出までの間において、穀粒貯留装置6の側のクローラ3が最大限度まで沈下している場合に警告によって車体の安定を保ち、スタックを防止することができる。このような制御は、既に備えられているスイッチやセンサーを用いて、コスト負担を要することなく、実施することができる。
【0022】
上記制御処理については、籾排出の合図を行うタイミング(右側フレームの上げ量)を任意に設定できるダイヤルを設けることにより、圃場内の部分的な条件変化、例えば、籾排出を行うべき場所に水の出入口があると、排出場所付近が一番の湿田になるので、警告を作動させるタイミングを早めに調節することにより、反対側における警告によって排出のために戻ってきた時に、排出場所付近でスタックするという事態を回避することができる。
【0023】
また、上記制御処理の適用は、図7のフローチャート例2のステップ13に示すように、湿田における安定した旋回走行を確保するための湿田モードを選択している場合に限定することにより、不必要な警報の作動を防止することができる。
【0024】
(穀粒貯留装置の構成)
次に、穀粒貯留装置6の構成について説明すると、そのタンク41の製造は、図8の拡大横断面図に示すように、一体にブロー成形したものを中央線Cでカットして分割することにより裏側の左半部41aと表側の右半部41bを形成する。それぞれは、重ね代をオフセットするとともに、テーパTと段差Sを形成し、それぞれを重ねて運搬保管し、タンク41の基本横断面図(a)と全体側面図(b)を図9に示すように、穀粒貯留装置6の製造部門において左右を突き合わせて接着またはボルト締結によりタンク41を構成する。
【0025】
上記構成のタンク41は、開断面形状の左半部41aと右半部41bをインジェクションや樹脂プレス等の高コストの型を要することのないブロー成形によって製造することができる。また、スペースを要する中空形状の樹脂製タンクは、輸送、保管のコストが大きくなり非経済的で、特に海外調達で大きな問題となるが、上記構成のタンク41は、積重ねによって省スペースできるので、輸送および保管のコストを抑えることが可能なことから、穀粒貯留装置6の低コスト化が可能となる。
【0026】
上記タンク41の左半部41aと右半部41bのそれぞれは、運搬、保管の態様を併記した断面図を図10に示すように、段差Sにより相互間を支持することにより変形を抑制することができる。また、各部材の積み重ね態様の正面図(a)および側面図(b)を図11に示すように、相互に重ねて填め込むように積み重ねても、テーパTによって変形を防止することができる。
【符号の説明】
【0027】
1 コンバイン
3 クローラ
4 刈取装置
5 脱穀装置
5a 機壁
6 穀粒貯留装置
6a 前縁部
6b 膨出部
7 エンジン
8 操縦装置
11 エアクリーナ
12 ラジエタカバー
14 操縦席
14a 背もたれ
31 支軸
33 吸気ホース
33a 吸気口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行装置(3)を備える機体の前部に位置する刈取装置(4)と、この刈取装置(4)の後方で横並び配置の脱穀装置(5)および穀粒貯留装置(6)と、この穀粒貯留装置(6)の前縁部(6a)に近接して一体に構成したエンジン(7)および操縦装置(8)とを備えるコンバインにおいて、
上記エンジン(7)の上側にその吸気用のエアクリーナ(11)を配置し、これらエンジン(7)およびエアクリーナ(11)の機体外側部を覆ってエンジン(7)の冷却用外気を吸入案内する風洞状のラジエタカバー(12)を設けるとともに、エアクリーナ(11)を囲むように、上記穀粒貯留装置(6)の前縁部(6a)をエアクリーナ(11)の上方に張出した膨出部(6b)と、エアクリーナ(11)の前方に背もたれ(14a)を起立する操縦席(14)と、エアクリーナ(11)の機体内側方を覆う脱穀装置(5)の機壁(5a)とを設けたことを特徴とするコンバイン。
【請求項2】
前記ラジエタカバー(12)は、機体外側方に開放可能に支持したことを特徴とする請求項1記載のコンバイン。
【請求項3】
前記エアクリーナ(11)は、ラジエタカバー(12)と別体で連通可能に嵌合する吸気口(33a)を備えることを特徴とする請求項1または請求項2の何れかに記載のコンバイン。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−161996(P2010−161996A)
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−8484(P2009−8484)
【出願日】平成21年1月19日(2009.1.19)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】