説明

コンバイン

【課題】変速または操向操作検出手段と、これらの操作に基づいて油圧式無段変速装置を制御する制御装置と、に関わる何らかの異常が生じた場合は、走行を即座に停止することができるコンバインを提供することを目的とする。
【解決手段】第一変速操作検出手段141aと第一操向操作検出手段151aの検出情報に基づく入力情報に応じて制御情報を生成して、走行用の油圧式無段変速装置40と操向用の油圧式無段変速装置50とを制御可能とする第一制御装置200と、第二変速操作検出手段141bと第二操向操作検出手段151bの検出情報に基づく入力情報に応じて制御情報を生成する第二制御装置300とを備え、それぞれの入力情報と制御情報とを互いに比較するとともに、それぞれの作動状態を判定し、一致しない場合は、前記走行用の油圧式無段変速装置40ならびに前記操向用の油圧式無段変速装置50を制御して走行を停止するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンバインの走行ならびに操向制御技術に関する。
【背景技術】
【0002】
農業機械であるコンバインにおいて、変速操作具ならびに操向操作具の操作状態を検出する操作検出手段に誤差や故障等が生じた場合は、油圧式無段変速装置を制御可能とする他の制御手段を用いることで走行機体を確実に停止させるものがあった(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
また、操向操作具の操作状態を検出する操作検出手段を複数個設けることで、それぞれの操作検出手段の検出情報を互いに比較し、故障であると判断した場合には他の操作検出手段に切り替えるものもあった(例えば、特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−308531号公報
【特許文献2】特開2005−75297号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1ならびに特許文献2においては、操作検出手段からの入力情報に基づいて油圧式無段変速装置等の制御情報を生成する制御装置に異常が生じた場合については考慮されていなかった。そのため、操作検出手段のみならず制御装置の故障等による異常が生じた場合でも、走行機体を停止できる技術が望まれていた。
【0006】
そこで本発明は、走行または操向操作検出手段と、これらの操作に基づいて油圧式無段変速装置を制御する制御装置と、に関わる何らかの異常が生じた場合に、即座に停止することができるコンバインを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0008】
即ち、請求項1においては、変速操作具の変速操作に応じて走行機体の走行速度を変速させる走行用の油圧式無段変速装置と、操向操作具の操向操作に応じて前記走行機体を旋回させる操向用の油圧式無段変速装置とを備えるコンバインにおいて、前記変速操作具の操作状態をそれぞれに検出する第一変速操作検出手段および第二変速操作検出手段と、前記操向操作具の操作状態をそれぞれに検出する第一操向操作検出手段および第二操向操作検出手段と、前記第一変速操作検出手段の検出情報に基づく入力情報に応じて前記走行用の油圧式無段変速装置の制御情報を生成し、前記第一操向操作検出手段の検出情報に基づく入力情報に応じて前記操向用の油圧式無段変速装置の制御情報を生成して、これらの制御情報により前記走行用の油圧式無段変速装置と前記操向用の油圧式無段変速装置とを制御可能とする第一制御装置と、前記第二変速操作検出手段の検出情報に基づく入力情報に応じて前記走行用の油圧式無段変速装置の制御情報を生成し、前記第二操向操作検出手段の検出情報に基づく入力情報に応じて前記操向用の油圧式無段変速装置の制御情報を生成するとともに、エンジンを制御可能とする第二制御装置とを備え、前記第一制御装置と前記第二制御装置とは、それぞれの入力情報と制御情報とを互いに比較するとともに、それぞれの作動状態を互いに判定し、この入力情報と制御情報との少なくとも一方が一致しない場合は、前記第一制御装置は、前記走行機体の走行が停止するように、前記走行用の油圧式無段変速装置ならびに前記操向用の油圧式無段変速装置を制御するものである。
【0009】
請求項2においては、前記エンジンを制御可能とするエンジン制御装置と、エンジン停止の信号により前記エンジン制御装置に対して、前記エンジンを停止する制御を行うように指示するエンジン緊急停止手段と、前記走行機体の走行状態を検出する走行状態検出手段とを備え、前記第一制御装置と前記第二制御装置とは、それぞれの入力情報と制御情報とを互いに比較するとともに、それぞれの作動状態を互いに判定し、この入力情報と制御情報との少なくとも一方が一致しない場合であって、前記走行用の油圧式無段変速装置ならびに前記操向用の油圧式無段変速装置への制御で走行機体の走行が停止しないとき、前記第二制御装置は、エンジン停止の信号を前記エンジン緊急停止手段に送信し、前記エンジンを停止するように制御するものである。
【0010】
請求項3においては、前記第一制御装置と前記第二制御装置とは、それぞれの入力情報と制御情報とを互いに比較するとともに、それぞれの作動状態を互いに判定し、この入力情報と制御情報との少なくとも一方が一致しない場合であって、前記走行用の油圧式無段変速装置ならびに前記操向用の油圧式無段変速装置への制御で走行機体の走行が停止せず、前記エンジン緊急停止手段へのエンジン停止の信号でエンジンが停止しないとき、前記第二制御装置は、前記エンジン制御装置を介して前記エンジンを停止するように制御するものである。
【0011】
請求項4においては、前記第一変速操作検出手段と前記第二変速操作検出手段とは、互いに異なる検出方法によって前記変速操作具の操作状態を検出し、前記第一操向操作検出手段と前記第二操向操作検出手段とは、互いに異なる検出方法によって前記操向操作具の操作状態を検出するように構成するものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0013】
請求項1に記載の発明によれば、第一および第二制御装置への入力情報と第一および第二制御装置にて生成された制御情報との少なくとも一方が一致しない場合に、油圧式無段変速装置を制御することで走行機体を停止することが可能となる。したがって、変速または操向操作検出手段と、これらの操作に基づいて油圧式無段変速装置を制御する制御装置と、に関わる何らかの異常が生じた場合、走行を即座に停止することができる。
【0014】
請求項2に記載の発明によれば、第一および第二制御装置への入力情報と第一および第二制御装置からの制御情報との少なくとも一方が一致しない場合であって、油圧式無段変速装置への制御で走行機体の走行が停止しないときでも、エンジン緊急停止手段によりエンジンを止めて走行機体の走行を停止することが可能となる。したがって、変速または操向操作検出手段と、これらの操作に基づいて油圧式無段変速装置を制御する制御装置と、に関わる何らかの異常が生じた場合、走行を即座に停止することができる。
【0015】
請求項3に記載の発明によれば、油圧式無段変速装置への制御で走行機体の走行が停止せず、エンジン緊急停止手段でエンジンが停止しない場合であっても、エンジン制御装置を介してエンジンを止めて走行機体の走行を停止することが可能となる。したがって、変速または操向操作検出手段と、これらの操作に基づいて油圧式無段変速装置を制御する制御装置と、に関わる何らかの異常が生じた場合、走行を即座に停止することができる。
【0016】
請求項4に記載の発明によれば、第一変速操作検出手段と第二変速操作検出手段とを互いに異なる検出方法によって操作状態を検出し、第一操向操作検出手段と第二操向操作検出手段とを互いに異なる検出方法によって操作状態を検出するため、異常の発生を精度よく判別し、制御装置への入力情報の信頼性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施形態に係るコンバインの全体構成を示す左側面図。
【図2】本発明の一実施形態に係るコンバインの動力伝達の構成を示す油圧回路図。
【図3】本発明の一実施形態に係るコンバインの制御システムの構成を示すブロック図。
【図4】本発明の一実施形態に係るコンバインの制御フロー図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に、発明の実施形態を説明する。
【0019】
まず、本発明の一実施形態に係るコンバイン1の全体構成について説明する。
【0020】
図1に示すように、コンバイン1には、走行部3と、刈取部4と、脱穀部5と、選別部6と、穀粒貯溜部7と、排藁処理部8と、エンジン部9と、ミッション部10と、操縦部11とが備えられる。
【0021】
走行部3は機体フレーム2の下部に設けられる。走行部3は左右一対のクローラを有するクローラ式走行装置12・12などを有し、左右のクローラ式走行装置12・12により機体を前進または後進方向に走行させることができるように構成される。
【0022】
刈取部4は機体フレーム2の前端部に機体に対して昇降可能に設けられる。刈取部4は分草具13や、引起装置14や、切断装置15や、搬送装置16などを有し、分草具13により圃場の穀稈を分草し、引起装置14により分草後の穀稈を引き起こし、切断装置15により引き起こし後の穀稈を切断し、搬送装置16により切断後の穀稈を脱穀部5側へ搬送することができるように構成される。
【0023】
脱穀部5は機体フレーム2の左側前部に設けられ、刈取部4の後方に配置される。脱穀部5はフィードチェーン17や、扱胴や受網などを有し、フィードチェーン17により刈取部4の搬送装置16からの穀稈を受け継いで排藁処理部8側へ搬送し、前記扱胴および受網により搬送中の穀稈を脱穀し、その脱穀物を漏下させることができるように構成される。
【0024】
選別部6は機体フレーム2の左側部に設けられ、脱穀部5の下方に配置される。選別部6は揺動選別装置や、風選別装置や、穀粒搬送装置や、藁屑排出装置などを有し、揺動選別装置により脱穀部5から落下する脱穀物を穀粒と藁屑や塵埃などとに揺動選別し、風選別装置により揺動選別後のものを更に穀粒と藁屑や塵埃などとに風選別し、穀粒搬送装置により選別後の穀粒を穀粒貯溜部7側へ搬送する一方、藁屑排出装置により藁屑や塵埃などを外部へ排出することができるように構成される。
【0025】
穀粒貯溜部7は機体フレーム2の右側後部に設けられ、脱穀部5および選別部6の右側方に配置される。穀粒貯溜部7はグレンタンク21や、穀粒排出装置22などを有し、グレンタンク21により選別部6から搬送されてくる穀粒を一時的に貯溜し、穀粒排出装置22により貯溜中の穀粒をグレンタンク21から排出し、更に任意の方向に搬送してから外部へ排出することができるように構成される。
【0026】
排藁処理部8は機体フレーム2の左側後部に設けられ、脱穀部5の後方に配置される。排藁処理部8は排藁搬送装置や、排藁切断装置などを有し、排藁搬送装置により脱穀部5のフィードチェーン17からの脱穀済みの穀稈を受け継いでこれを排藁として外部へ排出する、または排藁切断装置へ搬送し、排藁切断装置により切断してから外部へ排出することができるように構成される。
【0027】
エンジン部9は機体フレーム2の右側前部に設けられ、穀粒貯溜部7の前方に配置される。エンジン部9はエンジン31などを有し、動力をエンジン31からこれを駆動源とする各部の装置に適宜の伝動機構を介して供給し、エンジン31により各部の装置を駆動させることができるように構成される。
【0028】
ミッション部10は機体フレーム2の右側前部に設けられ、エンジン部9の前方に配置される。ミッション部10はエンジン部9のエンジン31の動力が走行部3や、刈取部4などへ供給される前に、当該動力を変速することができるように構成される。
【0029】
操縦部11は機体フレーム2の右側前部に設けられ、エンジン部9およびミッション部10の上方に配置される。操縦部11は操縦席24や操向操作具としてのステアリングハンドル25、変速操作具としての変速レバー26を含む操作具類や、ステップなどを有し、操縦席24にステップ上の操縦者を着座させ、操作具類により操縦者が各部の装置を操作することができるように構成される。
【0030】
このようにして、コンバイン1は、操縦部11での操作具類の操作によって、エンジン部9からエンジン31の動力を各部の装置に供給して、走行部3にて機体を走行させながら、刈取部4で圃場の穀稈を刈り取り、脱穀部5で刈取部4からの穀稈を脱穀し、選別部6で脱穀部5からの脱穀物を選別して、穀粒貯溜部7で選別部6からの穀粒を貯溜するととともに、排藁処理部8で脱穀部5からの排藁を外部へ排出することができるように構成される。
【0031】
次に、ミッション部10の構成について説明する。
【0032】
ミッション部10においては、図2に示すように、走行用の油圧式無段変速装置(以下、走行用HSTという。)40、操向用の油圧式無段変速装置(以下、操向用HSTという。)50、伝動機構70、ミッションケースが備えられる。そして、ミッションケースに走行用HST40、操向用HST50、伝動機構70が収容され、これらによりコンバイン1の走行系の伝動機構が構成される。
【0033】
走行用HST40には、可変容積型の走行ポンプ40P、可変容積型の走行モータ40Mが備えられる。走行ポンプ40Pと走行モータ40Mとは互いに流体接続される。
【0034】
走行ポンプ40Pには、走行ポンプ軸41、走行ポンプ本体42、走行ポンプ容積調整手段43が備えられる。走行ポンプ軸41はエンジン31の出力軸と連動連結され、走行ポンプ本体42は走行ポンプ軸41に相対回転不能に支持される。走行ポンプ容積調整手段43は可動斜板と制御軸とを有し、制御軸にて可動斜板を傾転させることにより走行ポンプ40Pの容積量を変更することができるように構成される。
【0035】
走行モータ40Mには、走行モータ本体44、走行モータ軸45、走行モータ容積調整手段46が備えられる。走行モータ本体44は走行ポンプ本体42と流体接続され、走行モータ軸45に相対回転不能に支持される。走行モータ容積調整手段46は、可動斜板と制御軸とを有し、制御軸にて可動斜板を傾転させることにより走行モータ本体44の容積量を変更することができるように構成される。
【0036】
走行用HST40は変速操作装置によって操作可能とされる。変速操作装置には、変速レバー26などの人為操作可能な変速操作部材、走行ポンプ40P用の作動装置、走行モータ40M用の作動装置とが備えられる。これらの作動装置は、コンバイン1に備えられる第一制御装置200により作動制御される。
【0037】
図3に示すように、走行ポンプ40P用の作動装置には、走行ポンプ用電磁弁122、油圧シリンダ等の変速アクチュエータが備えられ、走行ポンプ用電磁弁122は、その位置を変速操作を検出する第一変速操作検出手段141aからの検出結果に基づいて変更するように、第一制御装置200により制御される。変速アクチュエータは、第一制御装置200による走行ポンプ用電磁弁122の位置変更に応じて作動油の給排が切り替えられることによって、作動するものとされる。
【0038】
走行モータ40M用の作動装置には、走行モータ用電磁弁123、油圧シリンダ等の変速アクチュエータが備えられ、走行モータ用電磁弁123は、その位置を副変速操作を検出する副変速操作検出手段(図示せず)からの検出結果に基づいて変更するように、第一制御装置200により制御される。変速アクチュエータは、第一制御装置200による走行モータ用電磁弁123の位置変更に応じて作動油の給排が切り替えられることによって、作動するものとされる。
【0039】
そして、走行ポンプ40P用の作動装置が、変速アクチュエータの作動により走行ポンプ容積調整手段43の可動斜板を制御軸を介して傾転させ、この可動斜板の傾転角度を変更することによって、走行ポンプ40Pの容積量を変更することができるように構成される。また、走行モータ40M用の作動装置が、変速アクチュエータの作動により走行モータ容積調整手段46の可動斜板を制御軸を介して傾転させ、この可動斜板の傾転角度を変更することによって、走行モータ40Mの容積量を変更することができるように構成される。
【0040】
こうして、走行用HST40では、走行ポンプ40Pの駆動時に、可動斜板の傾転に応じて走行ポンプ40Pの容積量が変更されることによって、走行ポンプ40Pから走行モータ40Mへ吐出される作動油の吐出量および吐出方向が変更され、走行モータ軸45の回転方向が正または逆方向に変更されるとともに、回転数が無段階に変更される。さらに、可動斜板の傾転に応じて走行モータ40Mの容積量が変更されることによって、走行モータ40Mにおける走行モータ軸45の回転数が変更される。
【0041】
操向用HST50には、可変容積型の操向ポンプ50Pと、固定容積型の操向モータ50Mとが備えられる。操向ポンプ50Pと操向モータ50Mとはそれぞれ油圧ポンプと油圧モータとで構成され、互いに流体接続される。
【0042】
操向ポンプ50Pには、操向ポンプ軸51、操向ポンプ本体52、操向ポンプ容積調整手段53が備えられる。操向ポンプ軸51はエンジン31と連動連結され、操向ポンプ本体52は操向ポンプ軸51に相対回転不能に支持される。操向ポンプ容積調整手段53は可動斜板と制御軸とを有し、制御軸にて可動斜板を傾転させることによって、操向ポンプ50Pの容積量を変更することができるように構成される。
【0043】
操向モータ50Mには、操向モータ本体54、操向モータ軸55、固定斜板とが備えられる。操向モータ本体54は操向ポンプ本体52と流体接続され、操向モータ軸55に相対回転不能に支持される。固定斜板は、操向モータ50Mの容積量を固定することができるように、操向モータ本体54に設けられる。
【0044】
操向用HST50は操向操作装置によって操作可能とされる。操向操作装置には、ステアリングハンドル25などの人為操作可能な操向操作部材、操向ポンプ50P用の作動装置が備えられる。操向ポンプ50P用の作動装置は、第一制御装置200により作動制御される。
【0045】
操向ポンプ50P用の作動装置には、操向ポンプ用電磁弁132、油圧シリンダ等の変速アクチュエータが備えられ、操向ポンプ用電磁弁132は、その位置を操向操作を検出する第一操向操作検出手段151aからの検出結果に基づいて変更するように、第一制御装置200により制御される。変速アクチュエータは、第一制御装置200による操向ポンプ用電磁弁132の位置変更に応じて作動油の給排が切り替えられることによって、作動するものとされる。
【0046】
そして、操向ポンプ50P用の作動装置が、変速アクチュエータの作動により操向ポンプ容積調整手段53の可動斜板を制御軸を介して傾転させ、この可動斜板の傾転角度を変更することによって、操向ポンプ50Pの容積量を変更することができるように構成される。
【0047】
こうして、操向用HST50では、操向ポンプ50Pの駆動時に、可動斜板の傾転に応じて操向ポンプ50Pの容積量が変更されることによって、操向ポンプ50Pから操向モータ50Mへ吐出される作動油の吐出量および吐出方向が変更され、操向モータ軸55の回転方向が正または逆方向に変更されるとともに、回転数が無段階に変更される。
【0048】
また、伝動機構70には、一対の遊星ギヤ機構、即ち第一遊星ギヤ機構80aおよび第二遊星ギヤ機構80b、走行用出力伝動機構100、旋回用出力伝動機構110が備えられる。
【0049】
第一遊星ギヤ機構80aには、サンギヤ81、インターナルギヤ84、複数の遊星ギヤ82・82・・・、キャリア83が備えられる。サンギヤ81は回転軸85に固定され、インターナルギヤ84はサンギヤ81を同心状に囲繞するように配置される。各遊星ギヤ82はインターナルギヤ84の内歯とサンギヤ81の外歯とに噛合するように両ギヤ間に介装され、キャリア83に回転自在に軸支される。そして、キャリア83が第一出力軸60aと固定される。
【0050】
同様に、第二遊星ギヤ機構80bには、サンギヤ81、インターナルギヤ84、複数の遊星ギヤ82・82・・・、キャリア83が備えられる。サンギヤ81は回転軸85に固定され、インターナルギヤ84はサンギヤ81を同心状に囲繞するように配置される。各遊星ギヤ82はインターナルギヤ84の内歯とサンギヤ81の外歯とに噛合するように両ギヤ間に介装され、キャリア83に回転自在に軸支される。そして、キャリア83が第二出力軸60bと固定される。
【0051】
走行用出力伝動機構100には、出力軸101、分岐軸105、第一走行用出力ギヤ列106a、第二走行用出力ギヤ列106b、副変速機構107、駐車用ブレーキ装置102が備えられる。出力軸101は走行用HST40における走行モータ40Mの走行モータ軸45と連動連結され、分岐軸105は出力軸101に副変速機構107を介して連動連結される。
【0052】
副変速機構107は走行モータ軸45の回転動力を出力軸101と分岐軸105との間で多段変速させることができるように構成される。なお、走行モータ40Mの走行モータ軸45にはPTOプーリ90が固定され、このPTOプーリ90から走行モータ40Mの回転動力が刈取部4の伝動機構に伝達可能とされる。
【0053】
第一走行用出力ギヤ列106aは分岐軸105の回転動力を第一遊星ギヤ機構80aのインターナルギヤ84に伝達し、第二走行用出力ギヤ列106bは分岐軸105の回転動力を第二遊星ギヤ機構80bのインターナルギヤ84に伝達するものとされる。第一走行用出力ギヤ列106aと第二走行用出力ギヤ列106bの各伝動方向および伝動比は、互いに同一に設定される。
【0054】
駐車用ブレーキ装置102は、ブレーキ軸103、ブレーキユ二ット104を有し、ブレーキ軸103により出力軸101から回転動力を受けて分岐軸105へ出力し、ブレーキユ二ット104によりブレーキ軸103に対して選択的に制動力を付加することができるように構成される。つまり、駐車用ブレーキ装置102は走行モータ軸45に作動的に制動力を付加し得るものとされる。
【0055】
旋回用出力伝動機構110には、出力軸111、共通軸112、第一旋回用出力ギヤ列113a、第二旋回用出力ギヤ列113b、クラッチ装置115、旋回用ブレーキ装置114が備えられる。
【0056】
出力軸111は操向用HST50における操向モータ50Mの操向モータ軸55と連動連結され、共通軸112は出力軸111にクラッチ装置115を介して連動連結される。クラッチ装置115は出力軸111から共通軸112への回転動力を伝動または遮断することができるように構成される。
【0057】
第一旋回用出力ギヤ列113aは共通軸112の回転動力を回転軸85などを介して第一遊星ギヤ機構80aのサンギヤ81に伝達し、第二旋回用出力ギヤ列113bは共通軸112の回転動力を回転軸85などを介して第二遊星ギヤ機構80bのサンギヤ81に伝達するものとされる。第一旋回用出力ギヤ列113aと第二旋回用出力ギヤ列113bの伝動比は同一に設定され、伝動方向は互いに反対方向に設定される。
【0058】
旋回用ブレーキ装置114は出力軸111に対して選択的に制動力を付加することができるように構成される。つまり、旋回用ブレーキ装置114は操向モータ50Mの操向モータ軸55に作動的に制動力を付加し得るものとされる。
【0059】
このような構成において、操向用HST50の操向モータ50Mが停止し、走行用HST40の走行モータ40Mが駆動する場合、走行モータ40Mの回転動力が、走行モータ軸45から、走行用出力伝動機構100の走行出力軸101、分岐軸105、第一および第二走行用出力ギヤ列106a・106b、第一および第二遊星ギヤ機構80a・80bのインターナルギヤ84、遊星ギヤ82、キャリア83の順に各部材に伝達され、ついで第一および第二出力軸60a・60bに伝達される。
【0060】
この回転動力の伝達によって、第一出力軸60aと第二出力軸60bとが同一回転数で回転され、ひいては左右の各クローラ式走行装置12に備えられた駆動輪が同一回転方向に同一回転数で回転される。その結果、左右のクローラ式走行装置12が駆動され、機体の前後方向における直進走行が行われる。
【0061】
走行用HST40の走行モータ40Mが停止し、操向用HST50の操向モータ50Mが駆動する場合、操向モータ50Mの回転動力が、操向モータ軸55から、旋回用出力伝動機構110の出力軸111、共通軸112、第一および第二旋回用出力ギヤ列113a・113b、第一および第二遊星ギヤ機構80a・80bのサンギヤ81、遊星ギヤ82、キャリア83の順に各部材に伝達され、ついで第一および第二出力軸60a・60bに伝達される。
【0062】
この回転動力の伝達によって、第一出力軸60aと第二出力軸60bとが互いに反対方向に回転され、ひいては左右一方のクローラ式走行装置12の駆動輪が正または逆方向へ回転され、左右他方のクローラ式走行装置12の駆動輪が逆または正方向へ回転される。その結果、左右のクローラ式走行装置12が駆動され、その場で機体のスピンターン旋回が行われる。これにより、たとえば圃場や枕地での方向転換が可能とされる。
【0063】
走行用HST40における走行モータ40Mが駆動するとともに、操向用HST50の操向モータ50Mが駆動する場合、走行モータ40Mから走行用出力伝動機構100を介して伝達される回転動力と、操向モータ50Mから旋回用出力伝動機構110を介して伝達される回転動力とが、第一および第二遊星ギヤ機構80a・80bでそれぞれ合成され後、第一および第二出力軸60a・60bに伝達される。
【0064】
この回転動力の伝達によって、第一および第二出力軸60a・60bが互いに異なる回転数で回転され、ひいては左右の各クローラ式走行装置12の駆動輪が互いに異なる回転数で回転される。その結果、左右のクローラ式走行装置12が速度差をもって駆動され、機体の走行と左または右方向への旋回とが同時に行われる。なお、旋回方向および旋回半径は左右のクローラ式走行装置12の速度差に応じて決定される。
【0065】
次に、図3、図4を用いて本発明に係るコンバイン1の制御システムの構成ならびに制御フローについて説明する。
【0066】
コンバイン1の制御システムは、主に操縦者の変速操作を検出する第一変速操作検出手段141aおよび第二変速操作検出手段141bと、操縦者の操向操作を検出する第一操向操作検出手段151aおよび第二操向操作検出手段151bと、第一変速操作検出手段141aと第一操向操作検出手段151aからの入力情報に基づいて制御情報を生成して前記走行ポンプ用電磁弁122、前記走行モータ用電磁弁123、前記操向ポンプ用電磁弁132を制御可能とする第一制御装置200と、第二変速操作検出手段141bと第二操向操作検出手段151bからの入力情報に基づいて制御情報を生成する第二制御装置300と、エンジン回転数検出手段175や温度センサ(図示せず)や油圧センサ(図示せず)等からの入力情報に基づいてエンジン31の運転状態を制御するエンジン制御装置400と、から構成される。
【0067】
第一制御装置200には、走行用HST40に備えられる走行ポンプ容積調整手段43と走行モータ容積調整手段46の各々の可動斜板を傾転させる作動装置の走行ポンプ用電磁弁122と走行モータ用電磁弁123、操向用HST50に備えられる操向ポンプ容積調整手段53の可動斜板を傾転させる作動装置の操向ポンプ用電磁弁132が電磁弁ドライバ163を介して電気的に接続される。また、第一制御装置200には、走行状態検出手段173が接続されるとともに、第一変速操作検出手段141aならびに第一操向操作検出手段151aが第一I/Oドライバ161を介して電気的に接続される。
【0068】
第二制御装置300には、走行状態検出手段173が接続されるとともに、第二変速操作検出手段141bならびに第二操向操作検出手段151bが第二I/Oドライバ162を介して電気的に接続される。また、第二制御装置300には、エンジン制御装置400やエンジン31への燃料供給を遮断するエンジン緊急停止手段としてのエンジン緊急停止スイッチ171などが電気的に接続される。
【0069】
第一I/Oドライバ161ならびに第二I/Oドライバ162は、第一および第二制御装置200・300とエンジン制御装置400とにCAN(Controller Area Network)により電気的に接続される。そして、各制御装置200・・・は各操作検出手段141a・・・やその他の検出手段からの検出情報を共有するように構成される。
【0070】
第一変速操作検出手段141aならびに第二変速操作検出手段141bは、ポテンショメータ等で構成されて、操縦者による変速レバー26の変速操作状態、即ち変速レバー26の変速操作位置を検出するものである。第一操向操作検出手段151aならびに第二操向操作検出手段151bは、ポテンショメータ等で構成されて、操縦者によるステアリングハンドル25の操向操作状態、即ちステアリングハンドル25の操向操作位置を検出するものである。
【0071】
本実施形態においては、第一変速操作検出手段141aならびに第二変速操作検出手段141bは、互いに異なる検出方法によって変速レバー26の変速操作位置を検出する構成とされる。同様に、第一操向操作検出手段151aと第二操向操作検出手段151bも互いに異なる検出方法によってステアリングハンドル25の操向操作位置を検出する構成とされる。
【0072】
具体的には、第一変速操作検出手段141aは、変速レバー26の傾倒操作による傾倒角が大きくなるに従って電気信号を増幅させていき、変速レバー26の変速操作位置を検出する構成とされる。第二変速操作検出手段141bは、変速レバー26の傾倒操作による傾倒角が大きくなるに従って電気信号を減少させていき、変速レバー26の変速操作位置を検出する構成とされる。
【0073】
また、第一操向操作検出手段151aは、ステアリングハンドル25の右旋回時の切れ角が大きくなるに従って電気信号を増幅(左旋回時の切れ角が大きくなるに従って電気信号を減少)させていき、ステアリングハンドル25の操向操作位置を検出する構成とされる。第二操向操作検出手段151bは、ステアリングハンドル25の右旋回時の切れ角が大きくなるに従って減少(左旋回時の切れ角が大きくなるに従って電気信号を増幅)させていき、ステアリングハンドル25の操向操作位置を検出する構成される。
【0074】
こうして、第一制御装置200と第二制御装置300は、変速レバー26やステアリングハンドル25の操作に対して異なる検出方法によって得られた複数の検出情報をそれぞれ入力情報として得て、第一制御装置200への入力情報と第二制御装置300への入力情報とを各制御装置200・300でそれぞれ比較することにより、入力情報が適切なものであるか否かを判別することができるようになっている。これにより、各操作検出手段141a・・・の異常の発生が精度よく判別可能とされ、入力情報の信頼性の向上が図られる。
【0075】
第一制御装置200は、操縦者の変速操作や操向操作に応じてコンバイン1の走行状態を制御するメインコントローラである。第一制御装置200では、第一変速操作検出手段141aと第一操向操作検出手段151aからの入力情報に基づいて、走行用HST40ならびに操向用HST50を制御するための制御情報が生成され、この制御情報により走行用HST40ならびに操向用HST50の制御が行われる。
【0076】
第二制御装置300は、メインコントローラである第一制御装置200に対するサブコントローラである。第二制御装置300では、第一制御装置200との間で随時通信が行われて、第一制御装置200の作動状態、即ち作動しているか否かが監視される。同時に、第一制御装置200では、第二制御装置300の作動状態が監視される。つまり、第一制御装置200と第二制御装置300とが相互に作動状態を監視するように構成される。なお、第一および第二制御装置200・300の電源ラインは別々とされる。
【0077】
また、第一および第二制御装置200・300では、互いに変速レバー26またはステアリングハンドル25の操作に応じて第一変速操作検出手段141aまたは第一操向操作検出手段151aから第一制御装置200へ入力される入力情報と、同一の操作に応じて第二変速操作検出手段141bまたは第二操向操作検出手段151bから第二制御装置300へ入力される入力情報とが比較される。
【0078】
そのうえ、第一および第二制御装置200・300では、前記入力情報から生成される制御情報と、第二制御装置300において、前記入力情報から生成される制御情報とが比較される。これらの比較の結果、各操作検出手段141a・・・の作動状態、即ち正常に作動しているか否かが判定される。
【0079】
走行状態検出手段173は、直進回転センサや旋回回転センサから構成されて、コンバイン1の走行状態、即ちコンバイン1が走行中か否か、コンバイン1が旋回中か否かを検出するものである。ここで、直進回転センサと旋回回転センサは、それぞれ前述の走行系伝動機構の走行用出力伝動機構100と旋回用出力伝動機構110とに設けられ、各伝動機構における適宜の軸またはギヤの回転を検出するものとされる。
【0080】
なお、第一制御装置200は、直進回転センサや旋回回転センサからの検出情報に基づいて、目標の走行状態となるようにフィードバック制御を行うとともに、エンジン制御装置400からエンジン31の運転状態の情報を取得して常に操縦者の要求に応じた走行状態を実現するように制御情報を生成し、走行用HST40ならびに操向用HST50の制御を行うものとされる。
【0081】
このような構成において、コンバイン1が走行または旋回しているときに、次のようなステップで走行または旋回の停止に関わる制御が行われる。
【0082】
ステップS500において、変速レバー26により変速操作が行われた場合、第一変速操作検出手段141aならびに第二変速操作検出手段141bが、それぞれ変速レバー傾倒角を検出する。また、ステップS500において、ステアリングハンドル25により操向操作が行われた場合、第一操向操作検出手段151aならびに第二操向操作検出手段151bが、それぞれステアリングハンドル切れ角を検出する。
【0083】
ステップS510において、第一制御装置200は、その他の制御装置300・400とで共有される検出情報のうち、第一変速操作検出手段141aならびに第一操向操作検出手段151aからの検出情報を選択して、入力情報として取り入れる。また、第二制御装置300は、第二変速操作検出手段141bならびに第二操向操作検出手段151bからの検出情報を選択して、入力情報として取り入れる。
【0084】
そして、ステップS520において、第一および第二制御装置200・300は、互いの入力情報に差異がないか比較を行う。この比較は、本実施形態においては、第一および第二変速操作検出手段141a・141bは、互いに異なる検出方法によって変速操作位置を検出する構成とされ、第一および第二操向操作検出手段151a・151bも互いに異なる検出方法によっての操向操作位置を検出する構成とされているため、これらからの入力情報に適宜に演算処理を行って互いに比較可能とした後に行われる。
【0085】
その結果、第一制御装置200においては、互いの入力情報に差異がない場合、あるいは差異があったとしても許容される範囲内であればステップS530に移行される。また、互いの入力情報に差異があると判断された場合は、各操作検出手段141a・・・のいずれかに異常があるものとしてステップS560へ移行させることになる。
【0086】
ステップS530において、第一制御装置200は、入力情報に基づいて走行用HST40ならびに操向用HST50を制御するための制御情報を生成する。具体的には、走行用HST40に備えられる可動斜板を傾転させる走行ポンプ用電磁弁122ならびに操向用HST50に備えられる可動斜板を傾転させる操向ポンプ用電磁弁132を制御するための制御情報が生成される。また、第二制御装置300においても、第一制御装置200と同様に入力情報に基づいて制御情報が生成される。
【0087】
ステップS540において、第一および第二制御装置200・300は、互いの制御情報に差異がないかが比較される。第一制御装置200においては、制御情報に差異がない場合、あるいは差異があったとしても許容される範囲内であれば走行ポンプ用電磁弁122ならびに操向ポンプ用電磁弁132へ制御情報が送信される(ステップS550)。また、互いの制御情報に差異があると判断された場合は、第一および第二制御装置200・300のいずれかに異常があるものとしてステップS560へ移行される。
【0088】
互いの入力情報又は制御情報が異なると判断された場合に移行されるステップS560では、第一制御装置200からコンバイン1の走行を停止するように走行ポンプ用電磁弁122ならびに操向ポンプ用電磁弁132へ制御情報が送信される。つまり、走行用HST40ならびに操向用HST50の各可動斜板を傾転角度が0度となる中立位置に戻すように制御情報が送信される。
【0089】
これにより、第一制御装置200に入力される入力情報と第二制御装置300に入力される入力情報とを互い比較することができて、各操作検出手段141a・・・の少なくとも一つに発生した異常を検知することが可能となる。また、第一制御装置200から出力される制御情報と第二制御手段300から出力される制御情報とを互いに比較することができて、第一および第二制御装置200・300の少なくとも一つに異常が生じた場合にも検知することが可能となる。
【0090】
そして、第一および第二制御装置200・300の作動状態に異常がある場合や第一および第二制御装置200・300への入力情報と第一および第二制御装置200・300からの制御情報が一致しない場合は、走行用HST40の走行ポンプ用電磁弁122ならびに操向用HST50の操向ポンプ用電磁弁132に走行停止の制御情報が送信されてコンバイン1の走行を停止させることが可能となる。
【0091】
その後、ステップS570において、第一および第二制御装置200・300によって走行状態検出手段173による検出結果に基づいてコンバイン1の走行が停止したか否かが判断される。例えば、第一制御装置200の故障により走行停止の制御情報が送信されなかった場合や送信されたにもかかわらず通信経路の断線等により依然としてコンバイン1が走行中または旋回中であると判断された場合は、ステップS580へ移行される。
【0092】
ステップS580において、エンジン31の運転を停止するように第二制御装置300からエンジン緊急停止スイッチ171へ、エンジン停止の信号が送信される。エンジン緊急停止スイッチ171はエンジン制御装置400に対してエンジン31への燃料供給を遮断する制御を行うように指示するものであり、その結果、エンジン31は運転が停止される。
【0093】
これにより、第一制御装置200の走行停止の制御情報によってもコンバイン1の走行が停止しない場合であっても、エンジン31を止めることでコンバイン1の走行または旋回を停止させることが可能となる。
【0094】
その後、ステップS590において、エンジン制御装置400は、エンジン回転数検出手段175による検出結果に基づいてエンジン31の運転が停止したか否かを判断する。例えば、第二制御装置300の一部が故障しておりエンジン停止の信号が送信されなかった場合や送信されたにもかかわらず通信経路の断線等により依然としてエンジン31が運転している状態であると判断された場合は、ステップS600へ移行される。
【0095】
ステップS600において、第一および第二制御装置200・300の少なくとも一方によって、エンジン制御装置400を介してエンジン31の運転が停止するように制御が行われる。つまり、エンジン31への燃料供給を止めるように制御を行う。
【0096】
これにより、第一制御装置200の走行停止の制御情報によってもコンバイン1の走行が停止せず、第二制御装置300のエンジン停止の信号によってもエンジン31を止めることができない場合であっても、エンジン31の運転を止めてコンバイン1の走行を停止させることが可能となる。
【0097】
また、前述のような制御が行われると同時に、第一制御装置200と第二制御装置300との間では随時通信が行われ、互いの作動状態が監視される。この監視により、一方の制御装置で他方の制御装置の作動が停止していると判定された場合、走行または旋回の停止に関わる制御が行われる。
【0098】
具体的には、第一制御装置200で第二制御装置300の作動が停止していると判定した場合は、前記ステップS520ならびにステップS540と同様にステップS560に移行されて、コンバイン1の走行を停止するように走行ポンプ用電磁弁122ならびに操向ポンプ用電磁弁132へ制御情報が送信される。
【0099】
第二制御装置300で第一制御装置200の作動が停止していると判定した場合は、前記ステップS580に移行されて、エンジン停止の信号が送信される。
【0100】
このように、走行または旋回の停止に関わる制御においては、第一制御装置200と第二制御装置300で入力情報に基づく判定と、制御情報に基づく判定とが行われるとともに、第一制御装置200または第二制御装置300で互いの作動状態に基づく判定とが行われる。つまり、三つの要素に基づいて異常が発生しているか否かの判定を行うことによって、判定の精度の向上が図られる。
【0101】
以上のようにして、本発明の一実施形態に係るコンバイン1は、各変速または操向操作検出手段141a・141b・151a・151bと、これらの操作に基づいて走行用HST40および操向用HST50を制御する第一制御装置200とに加えて、第二制御装置300に関わる何らかの異常が生じた場合、走行を即座に停止して、安全性の向上を図ることができるものとなっている。
【符号の説明】
【0102】
1 コンバイン
31 エンジン
40 走行用油圧式無段変速装置
50 操向用油圧式無段変速装置
122 走行ポンプ用電磁弁
123 走行モータ用電磁弁
132 操向ポンプ用電磁弁
141a 第一変速操作検出手段
141b 第二変速操作検出手段
151a 第一操向操作検出手段
151b 第二操向操作検出手段
200 第一制御装置
300 第二制御装置
400 エンジン制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
変速操作具の変速操作に応じて走行機体の走行速度を変速させる走行用の油圧式無段変速装置と、
操向操作具の操向操作に応じて前記走行機体を旋回させる操向用の油圧式無段変速装置とを備えるコンバインにおいて、
前記変速操作具の操作状態をそれぞれに検出する第一変速操作検出手段および第二変速操作検出手段と、
前記操向操作具の操作状態をそれぞれに検出する第一操向操作検出手段および第二操向操作検出手段と、
前記第一変速操作検出手段の検出情報に基づく入力情報に応じて前記走行用の油圧式無段変速装置の制御情報を生成し、前記第一操向操作検出手段の検出情報に基づく入力情報に応じて前記操向用の油圧式無段変速装置の制御情報を生成して、これらの制御情報により前記走行用の油圧式無段変速装置と前記操向用の油圧式無段変速装置とを制御可能とする第一制御装置と、
前記第二変速操作検出手段の検出情報に基づく入力情報に応じて前記走行用の油圧式無段変速装置の制御情報を生成し、前記第二操向操作検出手段の検出情報に基づく入力情報に応じて前記操向用の油圧式無段変速装置の制御情報を生成するとともに、エンジンを制御可能とする第二制御装置とを備え、
前記第一制御装置と前記第二制御装置とは、それぞれの入力情報と制御情報とを互いに比較するとともに、それぞれの作動状態を互いに判定し、
この入力情報と制御情報との少なくとも一方が一致しない場合は、
前記第一制御装置は、前記走行機体の走行が停止するように、前記走行用の油圧式無段変速装置ならびに前記操向用の油圧式無段変速装置を制御することを特徴とするコンバイン。
【請求項2】
前記エンジンを制御可能とするエンジン制御装置と、
エンジン停止の信号により前記エンジン制御装置に対して、前記エンジンを停止する制御を行うように指示するエンジン緊急停止手段と、
前記走行機体の走行状態を検出する走行状態検出手段とを備え、
前記第一制御装置と前記第二制御装置とは、それぞれの入力情報と制御情報とを互いに比較するとともに、それぞれの作動状態を互いに判定し、
この入力情報と制御情報との少なくとも一方が一致しない場合であって、
前記走行用の油圧式無段変速装置ならびに前記操向用の油圧式無段変速装置への制御で走行機体の走行が停止しないとき、
前記第二制御装置は、エンジン停止の信号を前記エンジン緊急停止手段に送信し、前記エンジンを停止するように制御することを特徴とする請求項1に記載のコンバイン。
【請求項3】
前記第一制御装置と前記第二制御装置とは、それぞれの入力情報と制御情報とを互いに比較するとともに、それぞれの作動状態を互いに判定し、
この入力情報と制御情報との少なくとも一方が一致しない場合であって、
前記走行用の油圧式無段変速装置ならびに前記操向用の油圧式無段変速装置への制御で走行機体の走行が停止せず、
前記エンジン緊急停止手段へのエンジン停止の信号でエンジンが停止しないとき、
前記第二制御装置は、前記エンジン制御装置を介して前記エンジンを停止するように制御することを特徴とする請求項2に記載のコンバイン。
【請求項4】
前記第一変速操作検出手段と前記第二変速操作検出手段とは、互いに異なる検出方法によって前記変速操作具の操作状態を検出し、
前記第一操向操作検出手段と前記第二操向操作検出手段とは、互いに異なる検出方法によって前記操向操作具の操作状態を検出するように構成することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のコンバイン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−183855(P2010−183855A)
【公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−28824(P2009−28824)
【出願日】平成21年2月10日(2009.2.10)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】