説明

コンバイン

【課題】グレンタンク7内に適量の穀粒を効率よく収集でき、収穫作業時間ロスを低減でき、収穫作業能率を向上できるようにしたコンバインを提供するものである。
【解決手段】刈取装置3と、脱穀装置5と、グレンタンク7を備え、グレンタンク7内に収集された穀粒を籾センサ106,107,108,109によって検出するように構成したコンバインにおいて、収穫作業開始初期又は中期にグレンタンク7内の収集穀粒を検出する籾センサ106,107,108,109の出力に基づき、グレンタンク7内の穀粒収集量が運搬手段の容量分に到達するまでの穀粒収集時間を演算し、穀粒の収穫作業が可能な残り時間をオペレータに報知可能に構成したものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、刈取装置及び脱穀装置等を備えたコンバインに係り、より詳しくは、グレンタンク内の穀粒量を段階的に検出する複数の籾センサを設けたコンバインに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、グレンタンクに複数の籾センサを設置し、グレンタンク内の穀粒量を段階的に検出して、グレンタンク内の穀粒量を段階的に表示しながら、グレンタンクが満杯時にオペレータに警報し、トラックの荷台又はコンテナ等にグレンタンク内の穀粒を排出させる技術がある(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−289712号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記従来技術では、複数の籾センサによってグレンタンク内の穀粒量を段階的に表示されても、近年の大区画圃場の収穫作業では、残り1行程の刈取作業が可能か否かを判断しにくいから、グレンタンクの穀粒排出位置から離れた収穫地点で、グレンタンク内の穀粒が所定量(満杯)になる場合があり、その場合、収穫作業をすることなく、前記収穫地点から離れた穀粒排出位置に移動する必要がある等の問題がある。また、トラックの荷台又はコンテナ又はグレンバック等の運搬手段の容量差によって、圃場から搬送可能なグレンタンク内の穀粒量が異なり、グレンタンクから運搬手段に排出する穀粒が過不足するから、グレンタンク内に穀粒を残した状態で、次行程の収穫作業を開始する必要がある等の問題がある。
【0005】
本発明の目的は、グレンタンク内に適量の穀粒を効率よく収集でき、収穫作業時間ロスを低減でき、収穫作業能率を向上できるようにしたコンバインを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するため、請求項1に係る発明のコンバインは、刈取装置と、脱穀装置と、グレンタンクを備え、前記グレンタンク内に収集された穀粒を籾センサによって検出するように構成したコンバインにおいて、収穫作業開始初期又は中期に前記グレンタンク内の収集穀粒を検出する前記籾センサの出力に基づき、前記グレンタンク内の穀粒収集量が運搬手段の容量分に到達するまでの穀粒収集時間を演算し、穀粒の収穫作業が可能な残り時間をオペレータに報知可能に構成したものである。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のコンバインにおいて、穀粒の収穫作業が可能な残り時間の演算に必要な運搬手段の容量を初期設定する運搬容量設定器を設けたものである。
【0008】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載のコンバインにおいて、前記グレンタンク内の穀粒収穫量と、穀粒の収穫作業が可能な残り時間を、表示器に経時的に表示するように構成したものである。
【0009】
請求項4に記載の発明は、請求項1に記載のコンバインにおいて、前記グレンタンクに、前記グレンタンク内の穀粒が増減する方向に位置調節可能な満杯位置選択籾センサを設けたものである。
【0010】
請求項5に記載の発明は、請求項1に記載のコンバインにおいて、前記グレンタンク内の穀粒を排出する穀粒排出コンベヤを備えた構造であって、前記穀粒排出コンベヤの作動を検出して、前記グレンタンク内の穀粒の排出総量と、前記グレンタンク内の穀粒の排出残量を算出して、前記排出総量又は前記排出残量を記録可能に構成したものである。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に記載の発明によれば、刈取装置と、脱穀装置と、グレンタンクを備え、前記グレンタンク内に収集された穀粒を籾センサによって検出するように構成したコンバインにおいて、収穫作業開始初期又は中期に前記グレンタンク内の収集穀粒を検出する前記籾センサの出力に基づき、前記グレンタンク内の穀粒収集量が運搬手段の容量分に到達するまでの穀粒収集時間を演算し、穀粒の収穫作業が可能な残り時間をオペレータに報知可能に構成したものであるから、残り1行程の刈取作業が可能か否かを判断しにくい近年の大区画圃場の収穫作業であっても、前記グレンタンクの穀粒排出位置から離れた収穫地点で、前記グレンタンク内の穀粒が所定量(満杯)になることがない。即ち、収穫作業をすることなく、収穫地点から離れた穀粒排出位置に移動する必要がない。穀粒排出位置に近い収穫地点で、前記グレンタンク内の穀粒を所定量(満杯)にできる。前記グレンタンク内に適量の穀粒を効率よく収集でき、収穫作業時間ロスを低減でき、収穫作業能率を向上できる。
【0012】
また、低コストの前記複数の籾センサによって段階的に穀粒量を簡単に検出できるものでありながら、前記グレンタンクから運搬手段に排出する穀粒が過不足することを防止できる。例えば高価なカメラ等の穀粒量センサが不要であり、穀粒の質量検出が不要であり、収穫穀粒の水分変化に殆ど影響されないから、前記グレンタンク内に穀粒を残すことなく、次行程の収穫作業を再開でき、前記グレンタンク内に穀粒を満杯にした状態で穀粒排出位置に移動する距離を短縮できる。排出詰まりを気にせずに小容量のグレンバック(運搬手段)等に穀粒を充填でき、収集穀粒の搬送作業性を向上できる。
【0013】
請求項2に記載の発明によれば、穀粒の収穫作業が可能な残り時間の演算に必要な運搬手段の容量を初期設定する運搬容量設定器を設けたものであるから、運搬手段として、オペレータが希望するコンテナ又はグレンバック又はトラック荷台等を簡単に利用できる。収穫地点から穀粒排出位置に移動する距離を短縮できる。収集穀粒の搬送作業性を向上できる。
【0014】
請求項3に記載の発明によれば、前記グレンタンク内の穀粒収穫量と、穀粒の収穫作業が可能な残り時間を、表示器に経時的に表示するように構成したものであるから、前記グレンタンク内の収穫穀粒の体積変化をリアルタイムでオペレータに報知できる。運搬手段の容量分の穀粒の体積に基づき、前記グレンタンク内の穀粒排出時期をオペレータが簡単に予測できる。例えば、多数のLEDによって前記表示器を形成することによって、オペレータが確認しやすい形態で、前記グレンタンク内の穀粒収穫量や前記グレンタンク内の穀粒排出時期を簡単に表示できる。
【0015】
請求項4に記載の発明によれば、前記グレンタンクに、前記グレンタンク内の穀粒が増減する方向に位置調節可能な満杯位置選択籾センサを設けたものであるから、オペレータが前記グレンタンク内の穀粒満杯量を選定して、グレンタンク内の穀粒を排出できる。特別な運搬手段を利用できる。湿田等において、過載を阻止して機体の傾斜又は沈下等を低減できる。
【0016】
請求項5に記載の発明によれば、前記グレンタンク内の穀粒を排出する穀粒排出コンベヤを備えた構造であって、前記穀粒排出コンベヤの作動を検出して、前記グレンタンク内の穀粒の排出総量と、前記グレンタンク内の穀粒の排出残量を算出して、前記排出総量又は前記排出残量を記録可能に構成したものであるから、グレンタンクから運搬手段に排出する穀粒が余り、グレンタンク内に穀粒を残した状態で、次行程の収穫作業を開始した場合でも、前記グレンタンク内の穀粒の排出残量を考慮して、前記グレンタンク内の穀粒収集量が運搬手段の容量分に到達するまでの穀粒収集時間を演算できる。穀粒排出位置に近い収穫地点で、グレンタンク内の穀粒を所定量(満杯)にできる。グレンタンク内に適量の穀粒を効率よく収集でき、収穫作業能率を向上できる。収集穀粒の搬送作業性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】コンバインの左側面図である。
【図2】コンバインの平面図である。
【図3】グレンタンクの断面正面説明図である。
【図4】穀粒収集制御回路図である。
【図5】穀粒収集制御のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本発明を具体化した実施形態を図面に基づいて説明する。図1は作業機械としてのコンバインの左側面図、図2はコンバインの平面図である。図1及び図2を参照しながら、コンバインの全体構造について説明する。なお、以下の説明では、走行機体1の進行方向に向かって左側を単に左側と称し、同じく進行方向に向かって右側を単に右側と称する。
【0019】
本実施形態のコンバインは、左右一対の走行クローラ2にて支持された走行機体1を備えている。走行機体1の前部には、穀稈を刈り取りながら取り込む6条刈り用の刈取装置3が、単動式の昇降用油圧シリンダ4によって刈取回動支点軸4a回りに昇降調節可能に装着されている。走行機体1には、フィードチェン6を有する脱穀装置5と、脱穀後の穀粒を貯留する穀粒タンク7とが横並び状に搭載されている。本実施形態では、脱穀装置5が走行機体1の進行方向左側に、穀粒タンク7が走行機体1の進行方向右側に配置されている。走行機体1の後部に旋回可能な穀粒排出コンベヤ8が設けられている。穀粒タンク7の内部の穀粒が、穀粒排出オーガ8の籾投げ口9からトラックの荷台またはコンテナ等に排出されるように構成されている。刈取装置3の右側方で、穀粒タンク7の前側方には、運転キャビン10が設けられている。
【0020】
運転キャビン10内には、操縦ハンドル11及び運転座席12を配置している。運転座席12の下方の走行機体1には、動力源としてのディーゼルエンジン70が配置されている。なお、運転キャビン10には、オペレータが搭乗するステップと、操縦ハンドル11を設けるハンドルコラムと、運転座席12の左側方のレバーコラムを備える。レバーコラムには、走行主変速レバー、及び走行副変速レバー、刈取クラッチ及び脱穀クラッチ等の作業クラッチを入り切り操作する作業クラッチレバーとが、配置されている。
【0021】
図1及び図2に示されるように、走行機体1の下面側に左右のトラックフレーム21を配置している。トラックフレーム21には、走行クローラ2にエンジン70の動力を伝える駆動スプロケット22と、走行クローラ2のテンションを維持するテンションローラ23と、走行クローラ2の接地側を接地状態に保持する複数のトラックローラ24と、走行クローラ2の非接地側を保持する中間ローラ25とを設けている。駆動スプロケット22によって走行クローラ2の前側を支持し、テンションローラ23によって走行クローラ2の後側を支持し、トラックローラ24によって走行クローラ2の接地側を支持し、中間ローラ25によって走行クローラ2の非接地側を支持する。ディーゼルエンジン70の出力ミッションケース(図示省略)によって変速されて、走行クローラ2が駆動される。
【0022】
図1及び図2に示されるように、刈取装置3の刈取回動支点軸4aに連結した刈取フレーム221の下方には、圃場の未刈り穀稈の株元を切断するバリカン式の刈刃装置222が設けられている。刈取フレーム221の前方には、圃場の未刈り穀稈を引起す6条分の穀稈引起装置223が配置されている。穀稈引起装置223とフィードチェン6の前端部(送り始端側)との間には、刈刃装置222によって刈取られた刈取り穀稈を搬送する穀稈搬送装置224が配置されている。なお、穀稈引起装置223の下部前方には、圃場の未刈り穀稈を分草する6条分の分草体225が突設されている。ディーゼルエンジン70にて走行クローラ2を駆動して圃場内を移動しながら、刈取装置3を駆動して圃場の未刈り穀稈を連続的に刈取る。
【0023】
図1及び図2に示されるように、脱穀装置5には、穀稈脱穀用の扱胴226と、扱胴226の下方に落下する脱粒物を選別する揺動選別盤227及び唐箕ファン228と、扱胴226の後部から取出される脱穀排出物を再処理する処理胴229と、揺動選別盤227の後部の排塵を排出する排塵ファン230とを備えている。なお、扱胴226の回転軸はフィードチェン6による穀稈の搬送方向(換言すると走行機体1の進行方向)に沿って延びている。刈取装置3から穀稈搬送装置224によって搬送された穀稈の株元側はフィードチェン6に受け継がれて挟持搬送される。そして、この穀稈の穂先側が脱穀装置5の扱室内に搬入されて扱胴226にて脱穀される。
【0024】
図1及び図2に示されるように、揺動選別盤227の下方側には、揺動選別盤227にて選別された穀粒(一番物)を取出す一番コンベヤ231と、枝梗付き穀粒等の二番物を取出す二番コンベヤ232とが設けられている。本実施形態の両コンベヤ231,232は、走行機体1の進行方向前側から一番コンベヤ231、二番コンベヤ232の順で、側面視において走行クローラ2の後部上方の走行機体1の上面側に横設されている。なお、揺動駆動軸240によって、略一定速度で前後及び上下方向に揺動選別盤227を往復揺動させる。その結果、扱胴226の下方に張設された受網237から漏下した脱穀物が、揺動選別盤227のフィードパン238及びチャフシーブ239によって揺動選別(比重選別)される。
【0025】
前記揺動選別盤227によって脱穀物が揺動選別されることによって、脱穀物中の穀粒が、揺動選別盤227のグレンシーブ240から下方に落下する。グレンシーブ240から落下した穀粒は、その穀粒中の粉塵が唐箕ファン228からの選別風によって除去され、一番コンベヤ231に落下する。一番コンベヤ231のうち脱穀装置5における穀粒タンク7寄りの一側壁(実施形態では右側壁)から外向きに突出した終端部には、上下方向に延びる揚穀筒233が連通接続されている。一番コンベヤ231から取出された穀粒は、揚穀筒233を介して穀粒タンク7に搬入され、穀粒タンク7に収集される。なお、穀粒タンク7の後面の傾斜に沿わせて、揚穀筒233の上端側が後方に傾斜する後傾姿勢で、穀粒タンク7の後方に揚穀筒233が立設されている。
【0026】
また、図1及び図2に示されるように、揺動選別盤227は、揺動選別(比重選別)によってチャフシーブ239から枝梗付き穀粒等の二番物を二番コンベヤ232に落下させるように構成している。チャフシーブ239の下方に落下する二番物を風選する唐箕ファン228を備える。チャフシーブ239から落下した二番物は、その穀粒中の粉塵及び藁屑が選別ファン241からの選別風によって除去され、二番コンベヤ232に落下することになる。二番コンベヤ232のうち脱穀装置5における穀粒タンク7寄りの一側壁から外向きに突出した終端部は、揚穀筒233と交差して前後方向に延びる還元筒236を介して、フィードパン238の上面側に連通接続され、二番物をフィードパン238の上面側に戻して再選別するように構成している。
【0027】
一方、フィードチェン6の後端側(送り終端側)には、排藁チェン234が配置されている。フィードチェン6の後端側から排藁チェン234に受け継がれた排藁(穀粒が脱粒された稈)は、長い状態で走行機体1の後方に排出されるか、又は脱穀装置5の後方側に設けた排藁カッタ235にて適宜長さに短く切断されたのち、走行機体1の後方下方に排出される。
【0028】
次に、図3を参照しながら、グレンタンク7構造と穀粒排出構造について説明する。穀粒排出コンベヤ8は、グレンタンク7内の底部に配置する横送りオーガ51と、グレンタンク7の後部の外側に立設する縦送りオーガ52及び縦送りオーガ筒53と、縦送りオーガ52の上端側に連結する排出オーガ54及び排出オーガ筒55とを有する。なお、縦送りオーガ52の略垂直なオーガ軸心線(縦軸)回りに排出オーガ筒55の先端側を旋回させるオーガ旋回用電動モータ56と、排出オーガ筒55の基端側を支点に排出オーガ筒55の先端側を昇降させるオーガ昇降用油圧シリンダ57とを備え、オーガ旋回用電動モータ56又はオーガ昇降用油圧シリンダ57を作動させて、排出オーガ筒55の先端側を任意位置に旋回又は昇降させる。なお、横送りオーガ51から縦送りオーガ52を介して排出オーガ54にエンジン70の回転力が伝達される。
【0029】
図3に示す如く、グレンタンク7内の前後方向に横送りオーガ51を延長し、グレンタンク7の前部から後部に横送りオーガ51によってグレンタンク7内の穀粒を移動させる。走行機体1の上面側に縦送りオーガ52を直立させ、グレンタンク7の後部の横送りオーガ51の送り終端側から縦送りオーガ52の下端側の送り始端に、グレンタンク7内の穀粒を移動させる。刈取装置3及び脱穀装置5の上面側で前後方向に排出オーガ54を横架させ、縦送りオーガ52の上端側の送り終端側から排出オーガ54の後端側の送り始端に穀粒を移動させる。
【0030】
図1に示す如く、脱穀装置5の上面側にオーガスタンド58を設けている。コンバイン機体の右側後部から左側前部に向けて排出オーガ筒55が延長された収穫姿勢で、オーガスタンド58を介して収納位置(非排出位置)に排出オーガ筒55が支持され、収穫作業が実行される。一方、収穫作業によってグレンタンク7内に所定量の穀粒が収集されたときは、収穫作業を中断して、圃場の側方の農道に駐車したトラックの荷台、又はトラックに搭載したコンテナ、又はトラックに搭載したグレンバック等の運搬手段に近接した圃場の畦際の穀粒排出位置に走行機体1を移動させる。
【0031】
次いで、圃場の畦際の穀粒排出位置で、オーガ旋回用電動モータ56又はオーガ昇降用油圧シリンダ57を作動させて、排出オーガ筒55を旋回又は昇降させ、排出オーガ筒55の先端側の籾投げ口9を、トラックの荷台、又はトラックに搭載したコンテナ、又はトラックに搭載したグレンバック等の運搬手段の上面開口に向けて上方側から下向きに開口させる。エンジン70によって、横送りオーガ51、縦送りオーガ52、排出オーガ54を駆動して、穀粒排出コンベヤ8によって前記運搬手段の内部にグレンタンク7内の穀粒を排出させる。
【0032】
次に、図4及び図5を参照しながら、グレンタンク7内に穀粒を収集する穀粒収集制御について説明する。図4及び図5に示す如く、制御プログラムを記憶したROMと各種データを記憶したRAMとを備えたマイクロコンピュータ等の穀粒収集コントローラ100を備える。穀粒収集コントローラ100の入力側には、刈取装置3及び脱穀装置の作動(収穫作業)を検出する作業クラッチセンサ101と、走行クローラ2の回転数を検出する車速センサ102と、刈取装置3の穀稈搬送装置224のうち穀稈掻込み機構237が搬送する刈取り穀稈の有無を検出する穀稈センサ103と、排藁チェン234が搬送する排藁の有無を検出する排藁センサ104と、トラックの荷台又はコンテナ又はグレンバック等の運搬手段の運搬容量を初期設定する運搬容量設定器105が接続されている。
【0033】
また、穀粒収集コントローラ100の入力側には、グレンタンク7の底部近傍に配置するリミットスイッチ型の下位籾センサ106と、グレンタンク7内の上下中間部に配置するリミットスイッチ型の中位籾センサ107と、グレンタンク7内の上部近傍に配置するリミットスイッチ型の上位籾センサ108と、グレンタンク7内の穀粒が増減する方向(上下方向)に位置調節可能に設ける満杯位置選択籾センサ109と、穀粒排出コンベヤ8の穀粒排出動作を検出する籾排出センサ110が接続されている。位置調節操作具111によってグレンタンク7に満杯位置選択籾センサ109を取付けている(図3参照)。
【0034】
また、図3及び図4に示す如く、穀粒収集コントローラ100の出力側には、グレンタンク7内の穀粒量を無段階に表示する複数の発光ダイオード型インジケータにて形成された収量表示器112と、グレンタンク7内の穀粒が所定量(満杯)になるまでの収穫作業が可能な残り時間を表示する収穫可能時間表示器113と、グレンタンク7内に所定量の穀粒が充填されたことをオペレータに警報するブザー等の満杯警報器114が接続されている。収穫可能時間表示器113は、収穫が可能な残り時間を無段階に表示する複数の発光ダイオード型インジケータと、セブンセグメント型液晶表示板にて形成されている。
【0035】
例えば、グレンタンク7内の穀粒量が収量表示器112のインジケータにリアルタイムで表示される。また、収穫作業が可能な残り時間と、収穫作業開始から経過した時間が、収穫可能時間表示器113のインジケータにリアルタイムで表示される。残り15分等の収穫作業が可能な残り時間と、5分経過等の収穫作業開始から経過した時間が、収穫可能時間表示器113の液晶表示板に表示される。一方、グレンタンク7内に所定量の穀粒が充填されたとき、又はグレンタンク7内に所定量の穀粒が充填される収穫時間が経過したときに、満杯警報器114のブザーが鳴動して、オペレータに警報する。
【0036】
次に、図5のフローチャートを参照して、穀粒収集制御態様を説明する。図5に示す如く、収穫作業が開始された場合、穀稈センサ107の刈取穀稈の有無検出値と、排藁センサ106の排藁の有無検出値と、作業クラッチセンサ103の脱穀駆動停止検出値を読み込む(S1)。そして、刈取穀稈又は排藁があるときには(S2;yes)、運搬容量設定器105値と、下位籾センサ106値と、中位籾センサ107値と、満杯位置選択籾センサ109値と、前回の排出残り籾量値(記憶データ)を読み込み(S3)、グレンタンク7内の穀粒が所定量(満杯)になるまでの収穫作業が可能な残り時間が計算される(S4)。
【0037】
即ち、収穫作業開始から下位籾センサ106の穀粒検出に至るまでの時間に基づき、下位籾センサ106の穀粒検出からグレンタンク7内の穀粒量が所定量に至るまでの時間が、グレンタンク7内の穀粒が所定量(満杯)になるまでの収穫作業が可能な残り時間として演算される。前記収穫作業が可能な残り時間が零ではないときに(S5;no)、グレンタンク7内の穀粒量が収量表示器112のインジケータにリアルタイムで表示される(S6)。下位籾センサ106の穀粒検出と、中位籾センサ107の穀粒検出とが、満杯警報と異なる動作によって満杯警報器114のブザーが鳴動して、オペレータに報知される(S6)。
【0038】
また、グレンタンク7内の穀粒が所定量(満杯)になるまでの収穫作業が可能な残り時間と、収穫作業開始から経過した時間が、収穫可能時間表示器113のインジケータにリアルタイムで表示される(S7)一方、残り15分等の収穫作業が可能な残り時間数と、5分経過等の収穫作業開始から経過した時間数が、収穫可能時間表示器113の液晶表示板に数字で表示される(S7)。収穫可能時間表示器113のオペレータが残り時間数の表示を確認し、グレンタンク7内の穀粒を排出する位置から離れた場所で、グレンタンク7内の穀粒が所定量(満杯)になるのを避けて、次行程の収穫作業に臨むことができる。
【0039】
グレンタンク7内の穀粒が所定量(満杯)になるまでの収穫作業が可能な残り時間が零になったときに(S5;yes)、満杯警報器114のブザーが鳴動して、グレンタンク7内の穀粒が所定量(満杯)になったことがオペレータに警報される(S8)。また、満杯警報器114のブザーの鳴動と連動して、エンジン70から走行クローラ2に伝達される出力回転数の減速制御が実行される。その結果、グレンタンク7内の穀粒が所定量(満杯)になったときに、エンジン70から走行クローラ2に伝達される走行駆動力が減速される。即ち、走行機体1の移動速度(車速)が低速側に切換えられることによって、グレンタンク7内に搬入される穀粒量を減少でき、グレンタンク7内に穀粒が余分に収集されるのを防止できる。
【0040】
さらに、エンジン70が作動していても、刈取穀稈又は排藁がないとき(S2;no)、即ち、刈取作業や脱穀作業が中断されて、穀粒が収集されていないときに、圃場の側方の農道に駐車したトラックの荷台、又はトラックに搭載したコンテナ、又はトラックに搭載したグレンバック等の運搬手段に近接した圃場の畦際の穀粒排出位置に走行機体1を移動させ、穀粒排出コンベヤ8(横送りオーガ51、縦送りオーガ52、排出オーガ54)を作動させて(S10;yes)、穀粒排出コンベヤ8によって前記運搬手段の内部にグレンタンク7内の穀粒を排出させる場合、籾排出センサ110が検出する籾排出クラッチ入り時間(穀粒排出コンベヤ8の作動時間)に基づき、グレンタンク7内の排出残り穀粒量を計算し(S11)、穀粒収集コントローラ100に排出残り穀粒量を、ステップ3の排出残り籾量値として記憶させる(S12)。
【0041】
ステップ4において、収穫作業開始から下位籾センサ106が穀粒を検出するまでの穀粒収集時間が、ステップ11の前回の排出残り穀粒量を除いて、演算されるから、グレンタンク7内の穀粒が所定量(満杯)になるまでの収穫作業が可能な残り時間が、実際の収穫作業に適応して正確に計算される。グレンタンク7内の穀粒が所定量(満杯)になるまでの収穫作業が可能な残り時間が、収穫可能時間表示器113の表示によって、オペレータに正確に報知される。
【0042】
図4及び図5に示す如く、刈取装置3と、脱穀装置5と、グレンタンク7を備え、グレンタンク7内に収集された穀粒を籾センサ106,107,108,109によって検出するように構成したコンバインにおいて、収穫作業開始初期又は中期にグレンタンク7内の収集穀粒を検出する籾センサ106,107,108,109の出力に基づき、グレンタンク7内の穀粒収集量が運搬手段の容量分に到達するまでの穀粒収集時間を演算し、穀粒の収穫作業が可能な残り時間をオペレータに報知可能に構成している。
【0043】
したがって、残り1行程の刈取作業が可能か否かを判断しにくい近年の大区画圃場の収穫作業であっても、グレンタンク7の穀粒排出位置から離れた収穫地点で、グレンタンク7内の穀粒が所定量(満杯)になることがない。即ち、収穫作業をすることなく、収穫地点から離れた穀粒排出位置に移動する必要がない。穀粒排出位置に近い収穫地点で、グレンタンク7内の穀粒を所定量(満杯)にできる。グレンタンク7内に適量の穀粒を効率よく収集でき、収穫作業時間ロスを低減でき、収穫作業能率を向上できる。
【0044】
また、低コストの前記複数の籾センサ106,107,108,109によって段階的に穀粒量を簡単に検出できるものでありながら、グレンタンク7から運搬手段に排出する穀粒が過不足することを防止できる。例えば高価なカメラ等の穀粒量センサが不要であり、穀粒の質量検出が不要であり、収穫穀粒の水分変化に殆ど影響されないから、グレンタンク7内に穀粒を残すことなく、次行程の収穫作業を再開でき、グレンタンク7内に穀粒を満杯にした状態で穀粒排出位置に移動する距離を短縮できる。排出詰まりを気にせずに小容量のグレンバック(運搬手段)等に穀粒を簡単に充填でき、収集穀粒の搬送作業性を向上できる。
【0045】
図4及び図5に示す如く、穀粒の収穫作業が可能な残り時間の演算に必要な運搬手段の容量を初期設定する運搬容量設定器105を設けている。したがって、運搬手段として、オペレータが希望するコンテナ又はグレンバック又はトラック荷台等を簡単に利用できる。収穫地点から穀粒排出位置に移動する距離を短縮できる。収集穀粒の搬送作業性を向上できる。
【0046】
図4及び図5に示す如く、グレンタンク7内の穀粒収穫量と、穀粒の収穫作業が可能な残り時間を、収穫可能時間表示器113に経時的に表示するように構成している。したがって、グレンタンク7内の収穫穀粒の体積変化をリアルタイムでオペレータに報知できる。運搬手段の容量分の穀粒の体積に基づき、グレンタンク7内の穀粒排出時期をオペレータが簡単に予測できる。例えば、多数のLEDによって収穫可能時間表示器113を形成することによって、オペレータが確認しやすい形態で、グレンタンク7内の穀粒収穫量やグレンタンク7内の穀粒排出時期を簡単に表示できる。
【0047】
図4及び図5に示す如く、グレンタンク7に、グレンタンク7内の穀粒が増減する方向に位置調節可能な満杯位置選択籾センサ109を設けたものであるから、オペレータがグレンタンク7内の穀粒満杯量を選定して、グレンタンク7内の穀粒を排出できる。特別な運搬手段を利用できる。湿田等において、過載を阻止して機体の傾斜又は沈下等を低減できる。
【0048】
図4及び図5に示す如く、グレンタンク7内の穀粒を排出する穀粒排出コンベヤ8を備えた構造であって、穀粒排出コンベヤ8の作動を検出して、グレンタンク7内の穀粒の排出総量と、グレンタンク7内の穀粒の排出残量を算出して、前記排出総量又は前記排出残量を記録可能に構成している。したがって、グレンタンク7から運搬手段に排出する穀粒が余り、グレンタンク7内に穀粒を残した状態で、次行程の収穫作業を開始した場合でも、グレンタンク7内の穀粒の排出残量を考慮して、グレンタンク7内の穀粒収集量が運搬手段の容量分に到達するまでの穀粒収集時間を演算できる。穀粒排出位置に近い収穫地点で、グレンタンク7内の穀粒を所定量(満杯)にできる。グレンタンク7内に適量の穀粒を効率よく収集でき、収穫作業能率を向上できる。収集穀粒の搬送作業性を向上できる。
【符号の説明】
【0049】
3 刈取装置
5 脱穀装置
8 穀粒排出オーガ
7 グレンタンク
8 穀粒排出コンベヤ
105運搬容量設定器
106下位籾センサ
107中位籾センサ
108上位籾センサ
109満杯位置選択籾センサ
113収穫可能時間表示器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
刈取装置と、脱穀装置と、グレンタンクを備え、前記グレンタンク内に収集された穀粒を籾センサによって検出するように構成したコンバインにおいて、
収穫作業開始初期又は中期に前記グレンタンク内の収集穀粒を検出する前記籾センサの出力に基づき、前記グレンタンク内の穀粒収集量が運搬手段の容量分に到達するまでの穀粒収集時間を演算し、穀粒の収穫作業が可能な残り時間をオペレータに報知可能に構成したことを特徴とするコンバイン。
【請求項2】
穀粒の収穫作業が可能な残り時間の演算に必要な運搬手段の容量を初期設定する運搬容量設定器を設けたことを特徴とする請求項1に記載のコンバイン。
【請求項3】
前記グレンタンク内の穀粒収穫量と、穀粒の収穫作業が可能な残り時間を、表示器に経時的に表示するように構成したことを特徴とする請求項1に記載のコンバイン。
【請求項4】
前記グレンタンクに、前記グレンタンク内の穀粒が増減する方向に位置調節可能な満杯位置選択籾センサを設けたことを特徴とする請求項1に記載のコンバイン。
【請求項5】
前記グレンタンク内の穀粒を排出する穀粒排出コンベヤを備えた構造であって、前記穀粒排出コンベヤの作動を検出して、前記グレンタンク内の穀粒の排出総量と、前記グレンタンク内の穀粒の排出残量を算出して、前記排出総量又は前記排出残量を記録可能に構成したことを特徴とする請求項1に記載のコンバイン。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−227078(P2010−227078A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−81496(P2009−81496)
【出願日】平成21年3月30日(2009.3.30)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】