説明

コンバイン

【課題】車速が高速になるほど刈取部の駆動速度を高速にする一方で、走行停止が検出された場合には刈取部の駆動を停止する車速連動制御を行うコンバインにおいて、穀稈の押倒しを効率的に防止可能なコンバインを提供することを課題とする。
【解決手段】本発明は、走行機体3に連結された刈取部4と、刈取部4への動力を変速する変速装置46と、変速装置46を介して車速検出手段により検出された車速に刈取部4の駆動速度を連動させて、車速が高速になるほど刈取部4の駆動速度を高速にする一方で、走行停止が検出された場合には刈取部4の駆動を停止する車速連動制御を行う制御部58とを備え、傾斜角検知手段61により走行機体3の所定角以上の前傾斜が検出された場合には、車速検出手段により走行停止が検出された際にも、刈取部4が駆動するように制御部58を構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車速に刈取部の駆動速度を連動させる車速連動制御を行うことが可能なコンバインに関する。
【背景技術】
【0002】
走行機体に連結されて穀稈の刈取作業を行う刈取部と、該刈取部への動力を変速する変速装置と、車速を検出する車速検出手段と、前記変速装置を介して車速検出手段により検出された車速に刈取部の駆動速度を連動させて、車速が高速になるほど刈取部の駆動速度を高速にする一方で、走行停止が検出された場合には刈取部の駆動を停止する車速連動制御を行う制御部とを備えたコンバインが従来公知である。
【0003】
該構成のコンバインは、車速連動制御によって刈取部が車速に対応した最適な速度で駆動されるので、圃場の穀稈の刈取作業を効率的に行うことが可能になる一方で、畦を越えて圃場に進入する際等の走行開始時における低速走行を車速検出手段が正確に検出できずに、刈取部が駆動されないまま圃場内を走行し、圃場の穀稈を押倒す場合があるという問題があった。ちなみに、車速検出手段としてエンコーダ等からなる回転センサを用いた場合、回転センサは構造上の問題から低速時における検出精度が低く、上記問題がさらに顕在化する。
【0004】
また、前後揺動によって変速装置を介した走行変速操作を行う走行レバーを設け、該走行レバーの揺動角を検出するレバーポテンショによって車速検出手段を構成し、車体を走行停止させるニュートラル位置から、車体を所定速度で走行させる走行位置の範囲内に走行レバーが位置している間は、車体を走行駆動させずに、刈取部のみを駆動させる走行制御手段を制御部に設け、車体の走行開始時における穀稈の押倒しを防止する特許文献1に示すコンバインが公知になっているが、該構成のコンバインにおいても、圃場への進入時、畦により車体が前進方向に向かって下方傾斜して走行レバーの操作位置に関係無く車体が前進することがあるため、刈取部が駆動停止された状態で車体が前進する場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−6574号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、車速に刈取部の駆動速度を連動させて、車速が高速になるほど刈取部の駆動速度を高速にする一方で、走行停止が検出された場合には刈取部の駆動を停止する車速連動制御を行うコンバインにおいて、車体の圃場進入時の低速走行を高精度で検出することが困難なことに起因した穀稈の押倒しを効率的に防止可能なコンバインを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため本発明のコンバインは、第1に、走行機体3に連結されて穀稈の刈取作業を行う刈取部4と、該刈取部4への動力を変速する変速装置46と、車速を検出する車速検出手段と、前記変速装置46を介して車速検出手段により検出された車速に刈取部4の駆動速度を連動させて、車速が高速になるほど刈取部4の駆動速度を高速にする一方で、走行停止が検出された場合には刈取部4の駆動を停止する車速連動制御を行う制御部58とを備えたコンバインにおいて、走行機体3の前傾斜角を検出する傾斜角検出手段61を設け、傾斜角検知手段61により走行機体3の所定角以上の前傾斜が検出された場合には、車速検出手段により走行停止が検出された際にも、刈取部4が駆動するように制御部58を構成してなることを特徴としている。
【0008】
第2に、傾斜角検知手段61により走行機体3の上記所定角以上の前傾斜が検出された場合には、車速連動制御を行うにあたり、車速に対する刈取部4の相対的な駆動速度が上昇するように制御部58を構成してなることを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
以上のように構成される本発明のコンバインによれば、車速検出手段を介して走行停止が検出された場合には、刈取部の駆動が停止されるため、走行停止時に刈取部が駆動されることによる弊害が防止されるとともに、傾斜角検知手段により走行機体の所定角以上の前傾斜が検出された場合には、コンバインの圃場進入状態と判断して、車速検出手段により走行停止が検出された際にも、刈取部が駆動するため、圃場進入時に低速で走行した場合に車速検出手段が低速走行を検出できないために刈取部の駆動が略停止状態になって穀稈を押倒す事態が防止されるという効果がある。
【0010】
また、傾斜角検知手段により走行機体の上記所定角以上の前傾斜が検出された場合には、車速連動制御を行うにあたり、車速に対する刈取部の相対的な駆動速度が上昇するように制御部を構成することにより、圃場進入時における刈取部の駆動速度がより適切にものになり、穀稈の押倒しをさらに効率的に防止できるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明を適用したコンバインの側面要部断面図である。
【図2】コンバインの前側の構成を示す要部平面図である。
【図3】本コンバインの動力伝動系統図である。
【図4】本コンバインに搭載されたマイコンのブロック図である。
【図5】(A),(B)は、主変速レバーの要部背面図及び側面図である。
【図6】前処理部及びフィードチェーンの駆動速度と、車速との関係を示した特性グラフである。
【図7】マイコンが行う前処理部及びフィードチェーンの駆動制御の処理フローである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1は、本発明を適用したコンバインの側面要部断面図であり、図2は、コンバインの前側の構成を示す要部平面図である。図示するコンバイン(車体)は、左右一対のクローラ式走行装置である走行部1に支持された機体フレーム2が枠体をなす走行機体3と、走行機体3の前方に配置されて走行機体3に昇降駆動可能に連結された前処理部(刈取部)4とを備えており、走行部1を駆動させて車体を走行駆動させながら、前処理部4によって穀稈の刈取作業を行う。
【0013】
前処理部4には、圃場の穀稈を引起す引起装置5と、引起されて刈取られた穀稈を走行機体3側に搬送する搬送装置6とが設けられている。
【0014】
走行機体3は、機体フレーム2上の進行方向左(左)側に配設された脱穀装置7と、機体フレーム2上における脱穀装置7の右側方に配置されたグレンタンク8と、機体フレーム2上における脱穀装置7の右側方且つグレンタンク8の前方に設置された操縦部9と、を備えている。
【0015】
前処理部4から走行機体3側に搬送されてくる穀稈は、フィードチェーン11に渡され、該フィードチェーン11によって脱穀装置7に沿って後方搬送される。この後方搬送過程で、穀稈は、脱穀装置7の扱胴12等からなる脱穀部13によって脱穀処理され、排藁になる。排藁は、排藁搬送体14によって後方搬送され、そのまま又は切断処理されて走行機体3の後端部から機外に排出される。一方、脱穀部13で脱穀処理された処理物は、脱穀部13から落下して、揺動選別体16や唐箕ファン17等よりなる脱穀部13下方の選別部18に導入される。選別部18では、処理物が、藁屑等と、籾等の穀粒とに選別される。藁屑等は、走行機体3後端部から機外に排出され、穀粒等は上記グレンタンク8内に搬送収容される。
【0016】
上記操縦部9は、オペレータが着座する座席19と、座席19の側方に配置された主変速レバー(走行レバー)21と、座席19の側方且つ主変速レバー21の後方に配置された作業クラッチレバー22及び刈取クラッチレバー23とを備えている。
【0017】
主変速レバー21は、ニュートラル位置での左右揺動によって車体の前後進切換操作を行うとともに、前後揺動によって走行変速操作を行う。具体的には、ニュートラル位置から左右の一方側(図示する例では右側)に傾斜させた状態での前方揺動によって前進方向(進行方向)側への増速操作を行い、左右の他方側に傾斜した状態での後方揺動によって後進方向側への増速操作を行う。
【0018】
作業クラッチレバー22の前後揺動によって後述の作業クラッチ24(図3参照)の断続操作を行い、刈取クラッチレバー23の前後揺動によって後述の刈取クラッチ26(図3参照)の断続操作を行う。
【0019】
次に、図2及び3に基づき本コンバインの動力伝動構造について説明する。
図3は、本コンバインの動力伝動系統図である。走行機体3側に設置されたエンジン27の出力軸28には、出力軸28と一体回転する走行プーリ29及び作業プーリ31が取付固定されている。
【0020】
走行プーリ29の動力は、走行伝動ベルト32を介して、走行変速装置33に入力される。走行変速装置33に入力された動力は、油圧式無段階変速機である走行HST34で無段階で変速伝動され、走行伝動機構36に入力され、走行伝動機構36に入力された動力は左右の走行部1,1の各ドライブシャフト37,37に変速伝動されて走行部1を駆動させる。
【0021】
なお、走行HST34の変速操作軸となるトラニオン軸(図示しない)と、上記主変速レバー21とが連動しているため、上記主変速レバー21の前後進切換操作によって走行HST34を正逆転切換作動させ、主変速レバー21の変速操作によって走行HST34を無段階変速作動させる。そして、主変速レバー21のニュートラル位置からの前後揺動角を検知可能なポテンショメータである後述の主変速レバーポテンショ38(図4参照)が、車体の前後進状態と、車体の走行速度である車速とを間接的に検出する車速検出手段になる。
【0022】
ちなみに、上記主変速レバーポテンショ38に代えて、走行伝動機構36に設けられて走行HST34からの動力を走行部1に向かって伝動する伝動軸35の回転数を検出するエンコーダ等からなる回転センサ40を設け、この回転センサ40によって、車速を直接的に検出する車速検出手段を構成してもよい。
【0023】
作業プーリ31の動力は、作業伝動軸39にベルト伝動され、この作業伝動軸39の動力によって、前処理部4、フィードチェーン11、脱穀部13、選別部18、及び排藁搬送体14が駆動される。具体的には、作業プーリ31と、作業伝動軸39と一体回転する作業伝動プーリ41とに掛け回された作業伝動ベルト42によって、エンジン動力が作業伝動軸39に伝動される。この作業伝動ベルト42には、作業伝動ベルト42のテンションを調整するテンションプーリから構成されて作業伝動軸39へのエンジン動力の伝動を断続させる上述の作業クラッチ24が設けられている。この作業クラッチ24は、上記作業クラッチレバー22に連係機構等を介して機械的に連結されている。
【0024】
作業伝動軸39の一方側は、平面視操縦部9の左斜め後方に設置された刈取ミッションケース43内に動力伝動可能に挿入され、他方側には、この作業伝動軸39と一体回転する脱穀側伝動プーリ44が取付固定されている。この脱穀側伝動プーリ44の動力によって、脱穀部13、選別部18及び排藁搬送体14が駆動される。
【0025】
刈取ミッションケース43には、油圧式無段階変速機である刈取HST(変速装置)46が取付固定される他、フィードチェーン11側を駆動する左右方向のフィードチェーン駆動軸47と、前処理部4に動力を伝動する左右方向の刈取伝動軸48とが回転自在に支持されている。刈取HST46の入力軸46a及び出力軸46bは刈取ミッションケース43内に挿入され、刈取HST46の変速操作軸となるトラニオン軸46cは、刈取ミッションケース43から上方に向かって軸回りに回動可能に突出している。
【0026】
作業伝動軸39の動力が上記入力軸46aにギヤ伝動され、この入力軸46aの動力が、刈取HST46を介して、上記出力軸46bに無段階で変速伝動される。そして、この出力軸46bの動力は、フィードチェーン駆動軸47と刈取伝動軸48とに各別にギヤ伝動される。すなわち、刈取HST46が、前処理部4及びフィードチェーン11への動力を変速するように構成されている。
【0027】
刈取伝動軸48の動力は、刈取駆動軸49にベルト伝動され、前処理部4を駆動させ、穀稈の刈取作業及び搬送作業を行う。具体的には、刈取伝動軸48と一体回転する刈取伝動プーリ51と、刈取駆動軸49と一体回転する刈取駆動プーリ52とに掛け回される刈取伝動ベルト53によって、刈取駆動軸49にエンジン動力が伝動される。この刈取伝動ベルト53には、刈取伝動ベルト53のテンションを調整するテンションプーリから構成されて前処理部4へのエンジン動力の伝動を断続させる上述の刈取クラッチ26が設けられている。この刈取クラッチ26は、刈取クラッチレバー23に連係機構等を介して機械的に連結されている。
【0028】
上記動力伝動構成により、作業クラッチ24によって前処理部4、フィードチェーン11、脱穀部13及び選別部18等へのエンジン動力の伝動を断続させ、刈取クラッチ26によって前処理部4へのエンジン動力の伝動を断続させる。
【0029】
また、刈取HST46のトラニオン軸46cは変速モータ54の動力によって回動駆動され、このトラニオン軸46cの回動によって前処理部4の駆動速度及びフィードチェーン11の駆動速度が変更される他、トラニオン軸46cをニュートラル位置に回動することにより、前処理部4及びフィードチェーン11の駆動が停止される。ちなみに、トラニオン軸46cの回動角はポテンショメータである位置センサ56によって検知可能であり、このラニオン軸46cの回動角検知を介して前処理部4の駆動速度及びフィードチェーン11の駆動速度が検出可能である。
【0030】
すなわち、変速モータ54は、穀稈の刈取・搬送を行う際の前処理部4及びフィードチェーン11の駆動速度を変更するとともに、駆動停止を行うように構成されている。
【0031】
なお、刈取伝動軸48には、この刈取伝動軸48の回転数を検出する回転センサ57が設置されており、この回転センサ57によって前処理部4及びフィードチェーン11の駆動速度を直接的に検出する駆動速度検出手段を構成している。ちなみに、上記位置センサ56によって前処理部4及びフィードチェーン11の駆動速度を間接的に検出する駆動速度検出手段を構成してもよい。
【0032】
次に、図4乃至7に基づき、変速モータ54を介した前処理部4及びフィードチェーン11の駆動速度制御について説明する。
図4は、本コンバインに搭載されたマイコンのブロック図であり、図5(A),(B)は、主変速レバーの要部背面図及び側面図である。上記変速モータ54を介した前処理部4及びフィードチェーン11の駆動速度は、マイコン(制御部)58によって、制御される。
【0033】
マイコン58の出力側には、変速モータ54が接続される一方で、入力側には、上述の主変速レバーポテンショ38、回転センサ57及び位置センサ56の他、刈取クラッチ26の断続状態を入切により検出する刈取クラッチ検出スイッチ59と、走行機体3の水平方向に対する前後傾斜角を検出するジャイロ等からなる傾斜センサ(傾斜角検出手段)61と、主変速レバー21に設置される強制掻込スイッチ(強制掻込制御切換操作具)62及び倒伏スイッチ(倒伏制御切換操作具)63と、が接続されている。
【0034】
強制掻込スイッチ62は主変速レバー21のグリップ21aの側部に設けられた押ボタン式のモーメンタリスイッチであり、倒伏スイッチ63は主変速レバー21のオペレータとの対向面側である背面側に配置された押ボタン式のオルタネイトスイッチである。
【0035】
図6は、前処理部及びフィードチェーンの駆動速度と、車速との関係を示した特性グラフである。マイコン58は、車速に前処理部4の駆動速度を連動させる車速連動制御と、車速に関わらず前処理部4を中速程度の一定速度で駆動させる定速駆動制御と、前処理部4の駆動を停止させる駆動停止制御と、を行うように構成されている。ちにみに、これらの制御は、上述の車速検出手段により車速を検出するとともに、変速モータ54を介して刈取HST46のトラニオン軸46cが回動させて前処理部4の駆動・駆動停止及び駆動速度の変更調整を行うことにより、実行される。
【0036】
上記車速連動制御では、車速が高速になるほど前処理部4の駆動速度が高速になるように、前処理部4の駆動速度を車速の増加に対して比例的に増加させる。この車速連動制御には、車速検出手段により車体の走行が停止された場合には前処理部4の駆動も停止させる標準モード及び倒伏モードと、車速検出手段により車体の走行が停止された場合にも前処理部4を駆動停止させずに所定速度で駆動させる傾斜地モードの1つである第1傾斜地モードとが用意されている。
【0037】
倒伏モード時には、標準モード時に比べて、車速の増加に対する前処理部4の駆動速度の増加率(車速の単位増加量あたり前処理部4の駆動速度の増加量)が上昇するようにマイコン58が構成されている。
【0038】
第1傾斜地モードでは、車速が所定の低速度である低走行速度Aよりも低速の場合には、所定の低速度である低駆動速度Bで前処理部4が駆動されるとともに、車速が低走行速度A以上の場合には、車速に対する前処理部4の相対的な駆動速度が標準モード時と同一になるように前処理部4が駆動される。ちなみに、上記低駆動速Bは、低走行速度Aで走行している場合における標準モード時の前処理部4の駆動速度と同一に設定されているので、第1傾斜地モード時、車速が低走行速度Aよりも低速で走行している状態から高速で走行する状態に切換わる際における前処理部4の駆動速度の変化が最小限に抑制される。
【0039】
図7は、マイコンが行う前処理部及びフィードチェーンの駆動制御の処理フローである。マイコン58は、処理が開始されると、ステップS1に進む。ステップS1では、上述の車速検出手段によって車速を読込み、ステップS2に進む。ステップS2では、上述の駆動速度検出手段によって前処理部4の駆動速度を読込み、ステップS3に進む。
【0040】
ステップS3では、刈取クラッチ検出スイッチ59によって、刈取クラッチ26の断続状態を検出し、刈取クラッチ検出スイッチ59がOFFで、刈取クラッチ26の切断されて前処理部4に動力が伝動されていない状態であれば、ステップS4に進む。ステップS4では、駆動停止制御をセットして、ステップS5に進む。ステップS5では、直前の処理でセットされた制御、すなわち今回のステップS4→ステップS5の処理では駆動停止制御、が実行され、ステップS1に処理を戻す。
【0041】
ステップS3において、刈取クラッチ検出スイッチ59がONで、刈取クラッチ26の接続されて前処理部4に動力が伝動されている状態であれば、ステップS6に進む。ステップS6では、強制掻込スイッチ62の入切検出を行い、入操作されている状態であればステップS7に進み、切操作されている状態であればステップS8に進む。
【0042】
ステップS7では、車体がその場で車体を停止させて刈取穀稈を脱穀装置7側に搬送して脱穀・選別する強制掻込等を行うべく、オペレータが、強制掻込スイッチ62の入操作を行ったと考えられるため、定速駆動制御をセットし、ステップS5に進み、定速駆動制御を実行し、ステップS1に処理を戻す。
【0043】
ステップS8では、傾斜センサ61によって、走行機体3の水平方向に対する前後傾斜角を検出し、走行機体3が所定角以上に前傾斜した状態が検出された場合には、ステップS9に進む。ステップS9では、車体が進行方向に向かって上記所定角以上、下方傾斜した状態であり、車体が畦を越えて圃場内に侵入してる最中であると考えられるため、傾斜地モードでの車速連動制御にセットし、ステップS5に進み、傾斜地モードでの車速連動制御を実行し、ステップS1に処理を戻す。
【0044】
ステップS8において、走行機体3の所定角以上の前傾斜が検出されなかった場合には、車体が畦を越えて圃場内に侵入している最中ではないと判断して、ステップS10に進む。ステップS10では、倒伏スイッチ63の入切検出を行い、倒伏スイッチが入操作されてON状態である場合にはステップS11に進み、倒伏スイッチが切操作されてOFF状態である場合にはステップS12に進む。
【0045】
ステップS11では、圃場内で穀稈が倒伏等して前処理部4を通常時によりも高速で駆動させる必要がある状態であるために、オペレータが倒伏スイッチ63を入操作したと考えられるため、倒伏モードでの車速連動制御にセットし、ステップS5に進み、倒伏モードでの車速連動制御を実行し、ステップS1に処理を戻す。一方、ステップS12では、通常の刈取作業中であることが想定されるため、標準モードでの車速連動制御にセットし、ステップS5に進み、標準モードでの車速連動制御を実行し、ステップS1に処理を戻す。
【0046】
なお、ステップS5における上述の各制御の実行は、変速モータ54を介して、上述の内容に沿う駆動速度で前処理部4を駆動させる位置に、トラニオン軸46cを回動させることにより、行われる。
【0047】
以上のように構成される本コンバインによれば、傾斜角検知手段により走行機体3の所定角以上の前傾斜が検出された場合には、コンバインが畦を超えて圃場へ進入する状態と判断することが可能である。この判断に基づいて、車速連動制御時に車速検出手段により走行停止が検出された際にも、刈取部4を駆動させる傾斜地モードを実行するため、圃場進入時の低速走行時に車速検出手段が該低速走行を検出できないことに起因して、前処理部4が駆動されずに、穀稈を押倒す事態が防止される。
【0048】
また、圃場内での通常の刈取作業時には、車体が走行停止されると、刈取部の駆動が停止されるため、走行停止時における刈取部の駆動によって穀稈の引起装置に未刈状態の穀稈が引込まれて押倒される等の弊害を防止できる。
【0049】
次に、図6に基づき、傾斜地モードの別実施形態について説明する。
傾斜地モードとしては、第1傾斜モードとは別に第2傾斜モードも用意されており、この第2傾斜モードについて、説明すると、走行停止状態では、所定の低速である第2低駆動速Cで前処理部4を駆動させ、その後、車速の上昇に伴って、標準モード時における車速の増加に対する前処理部4の駆動速度の増加率と同一の増加率で、前処理部4の駆動速度を上昇させる。すなわち、この第2傾斜地モード時の前処理部4の駆動速度は、標準モード時の前処理部4の駆動速度に比べて、常時、第2低駆動速度C分、増速された状態になる。このように、車速に対する前処理部4の相対的な駆動速度を上昇させることにより、より適した速度で前処理部4を駆動可能であるため、車体の圃場進入時における穀稈の押倒しをより効率的に防止できる。
【符号の説明】
【0050】
3 走行機体
4 前処理部(刈取部)
46 刈取HST(変速装置)
38 主変速レバーポテンショ(車速検出手段)
40 回転センサ(車速検出手段)
58 マイコン(制御部)
61 傾斜センサ(傾斜角検出手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行機体(3)に連結されて穀稈の刈取作業を行う刈取部(4)と、該刈取部(4)への動力を変速する変速装置(46)と、車速を検出する車速検出手段と、前記変速装置(46)を介して車速検出手段により検出された車速に刈取部(4)の駆動速度を連動させて、車速が高速になるほど刈取部(4)の駆動速度を高速にする一方で、走行停止が検出された場合には刈取部(4)の駆動を停止する車速連動制御を行う制御部(58)とを備えたコンバインにおいて、走行機体(3)の前傾斜角を検出する傾斜角検出手段(61)を設け、傾斜角検知手段(61)により走行機体(3)の所定角以上の前傾斜が検出された場合には、車速検出手段により走行停止が検出された際にも、刈取部(4)が駆動するように制御部(58)を構成してなるコンバイン。
【請求項2】
傾斜角検知手段(61)により走行機体(3)の上記所定角以上の前傾斜が検出された場合には、車速連動制御を行うにあたり、車速に対する刈取部(4)の相対的な駆動速度が上昇するように制御部(58)を構成してなる請求項1のコンバイン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−30480(P2011−30480A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−178719(P2009−178719)
【出願日】平成21年7月31日(2009.7.31)
【出願人】(000001878)三菱農機株式会社 (1,502)
【Fターム(参考)】