コンバイン
【課題】脱穀後の処理物の選別精度を向上させるコンバインを提供する。
【解決手段】過去所定時間Ta内におけるチャフフィン16の平均角度θaveを算出して、この平均角度φaveに基づいて刈終り作業を行う設定時間Tchafを算出し、前記設定時間Tchafのカウント中はチャフフィン角度θを徐々に減少させて、前記設定時間Tchafのカウント終了後に予め設定された基準角度θ3となるようにチャフアクチュエータ130を駆動制御するものである。
【解決手段】過去所定時間Ta内におけるチャフフィン16の平均角度θaveを算出して、この平均角度φaveに基づいて刈終り作業を行う設定時間Tchafを算出し、前記設定時間Tchafのカウント中はチャフフィン角度θを徐々に減少させて、前記設定時間Tchafのカウント終了後に予め設定された基準角度θ3となるようにチャフアクチュエータ130を駆動制御するものである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンバインに関し、詳細には、刈終り作業時のチャフフィン及び唐箕ファンの制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、脱穀後の排藁量に応じて、チャフシーブの開度(チャフフィンの角度)を自動的に調節可能としたコンバインは公知となっている。
例えば、特許文献1においては、刈終り作業時には、チャフシーブの開度(チャフフィンの角度)をチャフ開度モータにより一定角度θ開側に刈終り時点から一定時間(設定時間T)の間保持するコンバインが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3607457号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に示すようなコンバインにおいては、刈終り時点から一定時間経過するまでの間は、チャフシーブの開度が一定値に保持されるので、処理物の3番ロスが低減できる。しかしながら、刈終り作業時は、揺動選別装置上の処理物量は時間経過とともに変化するという観点から、チャフシーブによる処理物の選別精度を改善する余地があった。
【0005】
本発明は、上記の如き課題を鑑みてなされたものであり、刈終り作業時に、処理物の選別精度を向上させるコンバインを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0007】
請求項1においては、脱穀処理された処理物を、チャフフィンを含む揺動選別装置及び唐箕ファンで選別する選別部を有するコンバインであって、前記チャフフィンの角度を調節可能なチャフアクチュエータと、前記チャフフィンの角度を検出するチャフ角度検出装置と、前記チャフアクチュエータを制御する制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記チャフ角度検出装置の検出値を記憶し、過去所定時間内における前記チャフフィンの平均角度を算出して、この平均角度に基づいて刈終り作業を行う設定時間を算出し、前記設定時間のカウント中は前記チャフフィンの角度を徐々に減少させて、カウント終了後に予め設定された基準角度となるように、前記チャフアクチュエータを駆動制御するものである。
【0008】
請求項2においては、脱穀処理された処理物を、チャフフィンを含む揺動選別装置及び唐箕ファンで選別する選別部を有するコンバインであって、前記唐箕ファンの風量を調節可能な唐箕アクチュエータと、前記唐箕ファンの風量を検出する唐箕風量検出装置と、前記唐箕アクチュエータを制御する制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記唐箕風量検出装置の検出値を記憶し、過去所定時間内における前記唐箕ファンの平均風量を算出して、この平均風量に基づいて刈終り作業を行う設定時間を算出し、前記設定時間のカウント中は前記唐箕ファンの風量を徐々に減少させて、カウント終了後に予め設定された基準風量となるように前記唐箕アクチュエータを駆動制御するものである。
【0009】
請求項3においては、前記揺動選別装置上の処理物量を検出する処理物量検出装置をさらに備え、前記制御装置は、前記設定時間のカウント中に前記処理物量検出装置の検出値が減少から増加に変わった時、前記設定時間のカウントを停止し、この状態で前記処理物量検出装置の検出値が増加から減少に変わった時、前記設定時間のカウントを再開するものである。
【0010】
請求項4においては、脱穀処理された処理物を、チャフフィンを含む揺動選別装置及び唐箕ファンで選別する選別部を有するコンバインであって、前記チャフフィンの角度を調節可能なチャフアクチュエータと、前記唐箕ファンの風量を調節可能な唐箕アクチュエータと、脱穀後の排藁量を電気的に検出する排藁量検出装置と、前記揺動選別装置上の処理物量を電気的に検出する処理物量検出装置と、前記チャフアクチュエータ及び前記唐箕アクチュエータを制御する制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記排藁量検出装置及び前記処理物量検出装置の検出値に基づいて、前記チャフアクチュエータと前記唐箕アクチュエータとを個別に駆動制御するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0012】
請求項1においては、刈終り作業時に、チャフフィンの角度を時間の経過とともに徐々に減少させるので、揺動選別装置上の処理物が適切に選別されて、選別精度が向上する。
【0013】
請求項2においては、刈終り作業時に、唐箕ファンの風量を時間の経過とともに徐々に減少させるので、揺動選別装置上の処理物が適切に選別されて、選別精度が向上する。
【0014】
請求項3においては、設定時間が経過するまでの間に、揺動選別装置上の処理物が一時的に増加した場合であっても、設定時間のカウントを停止するので、処理物が適切に選別されて、選別精度が向上する。
【0015】
請求項4においては、排藁量と揺動選別装置上の処理物量とを電気的に検出して、チャフフィンの角度と唐箕ファンの風量とを個別に駆動制御するので、精度の高い処理物の選別が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】コンバインの全体的な構成を示す側面図。
【図2】脱穀部及び選別部の構成を示す側面断面図。
【図3】風量調節装置及び角度調節装置の構成を示す側面図。
【図4】制御ブロック図。
【図5】コンバインの作業状態を移行する条件を示す図。
【図6】チャフアクチュエータ及び唐箕アクチュエータのセンサに係る制御マップ。
【図7】(a)チャフフィン角度θのタイムチャート。(b)平均角度θaveと、設定時間Tchafに係る制御マップ。(c)唐箕ファン回転数Nのタイムチャート。(d)平均回転数Naveと、設定時間Tfanに係る制御マップ。
【図8】(a)排藁センサ角度Bのタイムチャート。(b)シーブセンサ角度Cのタイムチャート。(c)刈取スイッチのタイムチャート。(d)チャフフィン角度θのタイムチャート。
【図9】(a)シーブセンサ角度Cのタイムチャート。(b)チャフフィン角度θのタイムチャート。(c)刈取スイッチのタイムチャート。(d)チャフフィン角度θのタイムチャート。
【図10】(a)排藁センサ角度Bのタイムチャート。(b)シーブセンサ角度Cのタイムチャート。(c)刈取スイッチのタイムチャート。(d)唐箕ファン回転数Nのタイムチャート。
【図11】(a)シーブセンサ角度Cのタイムチャート。(b)唐箕ファン回転数Nのタイムチャート。(c)刈取スイッチのタイムチャート。(d)唐箕ファン回転数Nのタイムチャート。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
【0018】
まず、本発明の一実施形態に係るコンバイン1の全体構成について説明する。
【0019】
図1に示すように、コンバイン1は、走行部2、刈取部3、脱穀部4、選別部5、穀粒貯溜部6、排藁処理部7及び操縦部8を備える。コンバイン1は、動力をエンジン9から走行部2、刈取部3、脱穀部4、選別部5、穀粒貯溜部6及び排藁処理部7にトランスミッションを含む動力伝達系を介して伝達し、これらの各部を駆動させる。
【0020】
走行部2は、機体の下部に設けられる。走行部2は、左右一対のクローラを有するクローラ式走行装置21を有する。走行部2は、機体をクローラ式走行装置21により走行させる。
【0021】
刈取部3は、機体の前部に昇降可能に設けられる。刈取部3は、分草具31、引起装置32、搬送装置33及び切断装置34を有する。刈取部3は、圃場の穀稈を分草具31により分草し、分草後の穀稈を引起装置32により引き起こし、引起後の穀稈を搬送装置33により後方へ搬送しつつ切断装置34により切断し、切断後の穀稈を搬送装置33により脱穀部4に向けてさらに後方へ搬送する。
【0022】
脱穀部4は、機体の左上側に配置される。脱穀部4は、フィードチェン41、扱胴42を有する(図2参照)。脱穀部4は、刈取部3から搬送されてきた刈取後の穀稈をフィードチェン41により受け継いで後方へ搬送し、その搬送中の穀稈を扱胴42により脱穀し、脱穀後の処理物を選別部5に向けて下方へ漏下させる。
【0023】
選別部5は、機体の左下側に配置される。選別部5は、揺動選別装置50、風選別装置及び穀粒搬送装置を有する(図2参照)。選別部5は、脱穀部4から落下してきた処理物を揺動選別装置50により揺動選別し、揺動選別後のものを風選別装置により風選別し、風選別後のもののうち、穀粒を穀粒搬送装置により穀粒貯溜部6に向けて右側方へ搬送し、藁屑や塵埃などを風選別装置により後方へ飛ばして機体の外部へ排出する。
【0024】
穀粒貯溜部6は、機体の右後側に配置される。穀粒貯溜部6は、グレンタンク61及び穀粒排出装置62を有する。穀粒貯溜部6は、選別部5から搬送されてきた穀粒をグレンタンク61により貯溜し、その貯溜している穀粒を穀粒排出装置62によりグレンタンク61から機体の外部へ排出する。
【0025】
排藁処理部7は、機体の後側に配置される。排藁処理部7は、排藁搬送装置71及び排藁切断装置72を有する。排藁処理部7は、脱穀部4から搬送されてきた脱穀済みの排稈を排藁として排藁搬送装置71により後方へ搬送して機体の外部へ排出し、又は排藁切断装置72へ搬送し、排藁を排藁切断装置72へ搬送した場合には排藁切断装置72により切断した後に機体の外部へ排出する。
【0026】
操縦部8は、機体の右前側に配置される。操縦部8は、操縦席81や、ステアリングハンドル82、キャビン83、操作パネルなどを有して、操縦席81やステアリングハンドル82、操作パネルなどをキャビン83により覆い、操縦席81に操縦者を着座させ、ステアリングハンドル82や操作パネルに配置された操作レバーや操作スイッチ類により操縦者が各部の装置を操作することができるように構成される。
【0027】
こうして、コンバイン1は、操縦部8における操作具類の操作に応じて、動力をエンジン9から操縦部8を除く前記各部に伝達し、機体を走行部2により走行させながら、圃場の穀稈を刈取部3により刈り取って、刈取後の穀稈を脱穀部4により脱穀し、脱穀後の処理物を選別部5により選別して、選別後の穀粒を穀粒貯溜部6に貯溜する一方、脱穀後の排藁を排藁処理部7により任意に処理して機体の外部へ排出することができるようになっている。
【0028】
次に、脱穀部4及び選別部5の構成について説明する。
【0029】
図2に示すように、脱穀部4は、フィードチェン41、扱胴42及び受網45を備えるとともに、処理胴43及び処理胴網を備える。
【0030】
扱胴42は、前端部を面取りした円筒状に形成される。扱胴42は、その軸心方向を前後方向として扱室44に配置されて、扱室44の前壁と後壁との間に回転自在に架設された回転支軸に取り付けられる。扱胴42は、エンジン9からの動力が当該回転支軸に伝達されることによって、この回転支軸と一体的にその前後方向の軸心回りに回転する。受網45は、扱胴42をその周面に沿って下方から覆うように、扱室44に配置される。
【0031】
処理胴43は、円筒状に形成される。処理胴43は、その軸心方向を前後方向として処理室46に配置されて、処理室46の前壁と後壁との間に回転自在に架設された回転支軸に支持される。処理胴43は、エンジン9からの動力が当該回転支軸に伝達されることによって、この回転支軸と一体的にその前後方向の軸心回りに回転する。処理胴網は、処理胴43をその周面に沿って下方から覆うように、処理室46に配置される。処理室46は、扱室44の右後方に位置し、扱室44と送塵口を介して連通する。
【0032】
フィードチェン41は、扱胴42の左側方で刈取部3と排藁処理部7との間にわたって配置されて、駆動スプロケット47と複数の従動スプロケット48・48とに巻き掛けられる。フィードチェン41は、エンジン9からの動力が駆動スプロケット47に伝達されることによって、前後方向に回転する。これらの駆動スプロケット47と複数の従動スプロケット48・48とは、扱胴42の左側方で前後方向に延設された支持フレームに支持される。
【0033】
図2に示すように、選別部5は、揺動選別装置50、風選別装置及び穀粒搬送装置を備える。
【0034】
揺動選別装置50は、揺動選別装置本体、前フィードパン51、後フィードパン52、チャフシーブ53、グレンシーブ54及びストローラック55を有する。
【0035】
揺動選別装置本体は、選別部5の平面視で矩形枠状に形成される。揺動選別装置本体は、その長手方向を前後方向として脱穀部4の扱胴42及び受網45並びに処理胴43及び処理胴網の下方に配置されて、下部機枠10に揺動かつ着脱可能に支持される。揺動選別装置本体は、揺動機構の揺動軸にエンジン9からの動力が伝達されることによって、下部機枠10に対して揺動する。
【0036】
フィードパンは、前フィードパン51及び後フィードパン52から構成される。前フィードパン51は、脱穀部4の扱胴42及び受網45の下方に配置されて、揺動選別装置本体の前部に支持される。後フィードパン52は、脱穀部4の扱胴42及び受網45の下方で前フィードパン51の後下方に配置されて、揺動選別装置本体の前部に支持される。
【0037】
チャフシーブ53は、脱穀部4の扱胴42及び受網45並びに処理胴43及び処理胴網の下方で前フィードパン51の後方に配置されて、揺動選別装置本体の前後中途部に支持される。グレンシーブ54は、チャフシーブ53の下方に配置されて、揺動選別装置本体の前後中途部に支持される。ストローラック55は、チャフシーブ53の後方でグレンシーブ54の後上方に配置されて、揺動選別装置本体の後部に支持される。
【0038】
風選別装置は、唐箕ファン17、プレファン57、セカンドファン58及び吸引ファン59を備える。
【0039】
唐箕ファン17は、前フィードパン51の後部及び後フィードパン52の下方に配置されて、下部機枠10の前部に左右方向に横設される。プレファン57は、前フィードパン51の前部の下方で唐箕ファン17の前上方に配置されて、下部機枠10の前端部付近に左右方向に横設される。セカンドファン58は、チャフシーブ53の後端部の下方で後述の穀粒搬送装置の一番搬送装置151と二番搬送装置152との間に配置されて、下部機枠10の前後中途部に左右方向に横設される。
【0040】
吸引ファン59は、ストローラック55の上方に配置されて、下部機枠10の後端部の上方で左右方向に横設される。そして、唐箕ファン17、プレファン57、セカンドファン58及び吸引ファン59は、エンジン9からの動力がそれぞれの回転軸に伝達されることによって、回転して選別風を発生させる。
【0041】
穀粒搬送装置は、一番搬送装置151、二番搬送装置152、一番揚穀装置155、及び二番還元装置156を備える。
【0042】
一番搬送装置151は、唐箕ファン17の後方であってチャフシーブ53及びグレンシーブ54の下方に配置され、下部機枠10の前後中途部に左右方向に横設される。二番搬送装置152は、一番搬送装置151及びセカンドファン58の後方でストローラック55の下方に配置されて、下部機枠10の後部に左右方向に横設される。
【0043】
一番揚穀装置155は、一番搬送装置151の右側方に配置されて、下部機枠10の右外側で上下方向に立設される。一番揚穀装置155は、その下端部で一番搬送装置151の右端部と接続されるとともに、その上端部で穀粒貯溜部6のグレンタンク61と接続される。
【0044】
二番還元装置156は、二番搬送装置152の右側方に配置されて、下部機枠10の右外側で前後方向に斜設される。二番還元装置156は、その後下端部で二番搬送装置152の右端部と接続されるとともに、その前上端部で脱穀部4の扱室44または揺動選別装置50の上方の空間と接続される。
【0045】
このような構成において、脱穀及び選別作業が行われる際、脱穀部4では、刈取部3から搬送されてきた刈取後の穀稈が、その株元でフィードチェン41により受け継がれ、排藁処理部7に向かって後方へ搬送される。この搬送中に、穀稈の穂先部が扱胴42により脱穀され、その穀粒や藁屑や塵埃を含む処理物が選別部5へ落下する過程で受網45により選別される。扱胴42により脱穀されなかった未処理物は、扱室44から送塵口を介して処理室46に搬送されたあと、処理胴43により処理され、その処理物が選別部5へ落下する過程で処理胴網により選別される。
【0046】
選別部5では、揺動選別装置本体が揺動機構により揺動されている状態で、脱穀部4の受網45から落下した処理物の層が前後フィードパン51・52により均平化されて、処理物が比重選別される。前フィードパン51による選別後のものが、チャフシーブ53により粗選別される。後フィードパン52による選別後のものが、グレンシーブ54により選別される。また、脱穀部4の受網45及び処理胴網から落下した処理物が、チャフシーブ53により粗選別される。チャフシーブ53による選別後のものが、グレンシーブ54と唐箕ファン17、プレファン57及びセカンドファン58からの選別風とにより精選別される。
【0047】
チャフシーブ53及びグレンシーブ54から落下する穀粒や藁屑などが、唐箕ファン17及びプレファン57からの選別風により精選別される。このとき、比重が大きく重い穀粒は、一番物として選別風に逆らって落下し、一番搬送装置151に収容される。これよりも比重が小さく軽いものは、唐箕ファン17及びプレファン57からの選別風により、さらにはセカンドファン58からの選別風により二番搬送装置152の上方へ向けて飛ばされる。
【0048】
この飛ばされたものの中でも比較的重いもの、例えば枝梗付穀粒は、二番物として落下し、二番搬送装置152に収容される。これを除いたものは、唐箕ファン17、プレファン57及びセカンドファン58からの選別風によりストローラック55へ向けてさらに飛ばされる。そのうちの藁屑は、ストローラック55によりほぐされる。この藁屑の中にある穀粒は、二番物として落下し、二番搬送装置152に収容される。他の塵埃などは、吸引ファン59により吸引されて、三番口から外部に排出される。
【0049】
一番物は、一番搬送装置151により一番揚穀装置155に搬送され、つづいて一番揚穀装置155により穀粒貯溜部6のグレンタンク61に搬送されて、グレンタンク61に貯溜される。二番物は、二番搬送装置152により二番還元装置156に搬送され、つづいて二番還元装置156により脱穀部4の扱室44又は揺動選別装置50の上方空間へ搬送されて、脱穀されて、又は脱穀されずに、揺動選別装置及び風選別装置により再選別される。
【0050】
次に、チャフシーブ53の構成について説明する。
【0051】
図2から図4に示すように、チャフシーブ53は、多数のチャフフィン16・16・・・と、左右一対の第一枢支片137・137と、左右一対の第二枢支片138・138で構成される。左右の第一枢支片137は、前後方向に延長され、それぞれ揺動選別装置本体の左右の側板に外側面に固定される。左右の第二枢支片138は、左右の第一枢支片137と平行に前後方向に延長され、それぞれ左右の第一枢支片137の真下に所定間隔を隔てて配置される。
【0052】
多数のチャフフィン16・16・・・は、前後方向に所定間隔ごとに配置され、前低後高状に傾斜した状態で、左右の第一枢支片137・137の間に横架されるとともに、左右の第二枢支片138・138の間に横架される。各チャフフィン16の左右両側の上端縁部は前記側板の孔を貫通して第一枢支片137に枢支され、左右両側の下端縁部は前記側板の長孔を貫通して第二枢支片138に枢支される。こうして、第二枢支片138が第一枢支片137に沿って前後方向へ移動することによって、各チャフフィン16が左右両側の上端縁部を支点として揺動され、各チャフフィン16の角度が変更されることとなる。
【0053】
図3に示すように、各チャフフィン16に対しては、その角度を調節するための角度調節装置13が設けられる。角度調節装置13は、チャフアクチュエータ130、第一ギヤアーム131、ワイヤ132、調節レバー134、付勢部材136等を備える。角度調節装置13は、多数のチャフフィン16・16・・・の角度を予め設定された角度に対して増大または減少するように調節する。
【0054】
チャフアクチュエータ130は、電動式モータで構成される。チャフアクチュエータ130の出力軸には、第一小径ギヤ139が固設される。第一ギヤアーム131は、第一小径ギヤ139と噛合可能な歯部と、半径方向外側に突出する突出部131aとを備えて構成される。そして、第一小径ギヤ139と第一ギヤアーム131の歯部とが噛合され、第一ギヤアーム131の突出部131aとワイヤ132の一端部とが連結される。
【0055】
調節レバー134は板状部材で構成される。調節レバー134は、側面視で五角形状に形成され、その長手方向を略上下方向として前低後高状に傾斜した状態で、左側第一枢支片137及び第二枢支片138の左側方に配置される。調節レバー134は、その上端部で左側第一枢支片137の前後中途部に支軸135を介して回動自在に支持されるとともに、その上下中途部で左側第二枢支片138の前後中途部に回動自在に枢結される。調節レバー134の下端部には、ワイヤ132の他端部が前方から連結される。つまり、調節レバー134の下端部が、第一ギヤアーム131の突出部131aとワイヤ132を介して連係される。
【0056】
また、調節レバー134の下端部には、ばね等からなる付勢部材136の一端部が後方から連結される。そして、調節レバー134が、ワイヤ132の引張方向(前方向)とは逆方向(後方向)に付勢部材136により付勢される。調節レバー134が付勢部材136の付勢力に従って支軸135を中心に後方向へ回動するとき、各第二枢支片138・138が各第一枢支片137・137に対して後方へ移動して、各チャフフィン16が左右両側の上端縁部を中心に回動し、各チャフフィン16の角度が増大方向へ変化する。
【0057】
このような構成により、角度調節装置13においては、チャフアクチュエータ130を駆動制御して、第一ギヤアーム131、ワイヤ132、調節レバー134、第二枢支片138を介して、各チャフフィン16の角度が調節可能とされる。
【0058】
次に、唐箕ファン17の構成について説明する。
【0059】
図2及び図3に示すように、唐箕ファン17は、回転軸171や複数の羽根体172・172・・・などで構成される。回転軸171は、軸心方向を左右方向として、その左右両端部が下部機枠10における左右の側板10a・10aの前下部に開口された吸入口176の上下中途部に前後方向に架設したプレート177に軸支される。複数の羽根体172・172・・・は、それぞれ回転軸171から支持部材174・174・・・を介して当該回転軸171の半径方向に放射状に突設される。そして、唐箕ファン17先端の前軌跡の前外側は、前被覆板173により覆われている。
【0060】
唐箕ファン17は、下部機枠10における左右の側板10a・10aとその間に横設された前被覆板173からなるケースに収容される。唐箕ファン17の左右両側方(回転軸171の軸方向両端部付近)には、吸入口176・176が設けられる。吸入口176・176は、それぞれ下部機枠10における左右の側板10a・10aに形成されて、左右方向を向いて開口される。唐箕ファン17の後方には、吐出口175が略前後方向を向いて開口される。これにより、唐箕ファン17の回転時に、空気が吸入口176・176から前被覆板173の内部に導入されて、唐箕ファン17による選別風が発生し、この選別風が吐出口175から選別部5の後部へ、即ち選別方向の下手側へ向けて送られることとなる。
【0061】
図3に示すように、唐箕ファン17の風量を調節するための風量調節装置14が設けられる。風量調節装置14は、唐箕アクチュエータ140、第二ギヤアーム141、変速ロッド142、カム機構143、割りプーリ144を備える。風量調節装置14は、唐箕ファン17の風量を予め設定された風量(回転数)に対して増大または減少するように調節する。
【0062】
唐箕アクチュエータ140は、電動式モータで構成される。唐箕アクチュエータ140の出力軸には、第二小径ギヤ145が固設される。第二ギヤアーム141は、第二小径ギヤと噛合可能な歯部と、半径方向外側に突出する突出部141aとを備えて構成される。そして、第二ギヤアーム141の歯部が第二小径ギヤ145と噛合され、第二ギヤアーム141の突出部141aが変速ロッド142の一端部と連結される。
【0063】
カム機構143は、回転軸171に外嵌されるとともにプレート177に固設される。カム機構143は、左右方向の軸心を有する円筒形状の固定変速カムと、この固定変速カムと略同一形状の可動変速カムとで構成される。固定変速カム及び可動変速カムには、それぞれ軸心方向にカム部が形成され、固定変速カムのカム部と可動変速カムのカム部とが当接される。可動変速カムには、鍔部が形成され、この鍔部には、変速ロッド142の他端部がボルト146により枢支される。つまり、可動変速カムの鍔部が、第二ギヤアーム141の突出部141aと、上下方向に延伸する変速ロッド142を介して連係される。この変速ロッド142の上下の動きに伴って可動変速カムが回動する。そして、可動変速カムの回動によって、可動変速カムのカム部と当接される固定変速カムのカム部の面積が変化し、その変化量に応じて可動変速カムが左右方向に回転軸171上を移動する。
【0064】
割りプーリ144は、回転軸171に相対回転不能に外嵌される。割りプーリ144は、円錐台形状の可動プーリと、この可動プーリと正対位置に配置された円錐台形状の固定プーリとで構成される。割りプーリ144は、カム機構143の左側方に配置されて、可動プーリと可動変速カムとが当接される。可動プーリは、可動変速カムが左右方向に移動する際、その移動に伴って当該可動変速カムと一体的に左右方向へ移動する。
【0065】
固定プーリと可動プーリとの間には、ベルト溝が形成される。ベルト溝幅は、可動プーリが固定プーリに対して左右方向に移動することにより、狭くまたは広く変更されることとなる。このベルト溝には、Vベルト等で構成されるベルト147が巻回される。ベルト147は、テンションプーリ148とともにカウンタケースの出力軸に固設された入力プーリに巻回されて、カウンタケースの出力軸に伝達されたエンジン9の動力が、割りプーリ144に伝達され、唐箕ファン17の回転軸171が回転する。
【0066】
このような構成により、風量調節装置14においては、唐箕アクチュエータ140を駆動制御して、第二ギヤアーム141、変速ロッド142、カム機構143を介し、割りプーリ144の幅を変更する。こうして、唐箕ファン17の風量(回転数)が調節可能とされる。
【0067】
次に、チャフアクチュエータ130及び唐箕アクチュエータ140の制御構成について説明する。
【0068】
コンバイン1においては、制御装置12が機体の任意位置に設けられる。制御装置12は、CPUや、ROM、RAM、インターフェイス、バスなどを備える。図4に示すように、制御装置12は、第一設定操作具84と、第二設定操作具85と、排藁量検出装置160と、処理物量検出装置163と、チャフ角度検出装置167と、唐箕風量検出装置170と接続される。
制御装置12は、また、刈取部3への動力の継断を行う刈取クラッチの「入」「切」を検知する刈取スイッチ121と、脱穀部4への動力の継断を行う脱穀クラッチの「入」「切」を検知する脱穀スイッチ122と、刈取部3の回転数をエンジン9の回転数に同調させる刈取クイックペダルの「ON」「OFF」を検知する流込スイッチ123と接続される。制御装置12は、また、チャフアクチュエータ130と、唐箕アクチュエータ140と、接続される。
【0069】
第一設定操作具84は、チャフフィン16の角度を人為的に補正するものである。本実施形態においては、第一設定操作具84は、ダイヤル84aと、センサ部84bとを有し、操縦部8の操作パネル近傍に配置される。第一設定操作具84では、ダイヤル84aが回動操作される場合、ダイヤル84aの角度(以下、「選別ダイヤル角度A」と記す)がセンサ部84bで検出される。センサ部84bは、選別ダイヤル角度Aを検出信号として制御装置12に送信する。
【0070】
第二設定操作具85は、唐箕ファン17の風量を人為的に補正するものである。本実施形態においては、第二設定操作具85は、ダイヤル85aと、センサ部85bとを有し、操縦部8の操作パネル近傍に配置される。第二設定操作具85では、ダイヤル85aが回動操作される場合、ダイヤル85aの角度(以下、「唐箕ダイヤル角度E」と記す)がセンサ部85bで検出される。センサ部85bは、唐箕ダイヤル角度Eを検出信号として制御装置12に送信する。
【0071】
排藁量検出装置160は、排藁処理部7において排藁搬送装置71により搬送される脱穀後の排藁量を検出する装置である。
【0072】
ここで、排藁搬送装置71は、排藁チェン74、挟扼杆75、支持杆76などから構成される。排藁搬送装置71では、挟扼杆75が、排藁チェン74の長手方向に沿って延長され、排藁チェン74の下方でその下部と対向配置される。そして、この挟扼杆75が、支持杆76により機体後部側に排藁チェン74の下部に対して近接離間方向、即ち上下方向へ移動可能に下方から支持されつつ、付勢部材77により当該支持杆76を介して排藁チェン74の下部に対して近接する方向へ移動するように常時付勢される。こうして、フィードチェン41から搬送されてきた脱穀後の排藁が、排藁チェン74の下部と、搬送中の排藁の量に応じて上下方向へ移動する挟扼杆75とに挟持され、排藁チェン74の回転駆動に従って後方へ搬送される。
【0073】
排藁量検出装置160は、アーム部161と、ポテンショメータ等からなるセンサ部162とを有し、排藁搬送装置71の下方に配置される。排藁量検出装置160では、アーム部161の一端部がセンサ部162の回転軸に上下方向へ回転自在に取り付けられ、アーム部161の他端部が排藁搬送装置71の支持杆76の下端に下方から上方へ向かって常時圧接される。そして、挟扼杆75が支持杆76とともに排藁チェン74と挟扼杆75とにより挟持されつつ搬送される排藁の量(層厚)に応じて上下方向へ移動される場合、アーム部161がその支持杆76の移動にあわせて同一方向へ回動される。そして、アーム部161の角度(以下、「排藁センサ角度B」と記す)が、センサ部162で検出される。センサ部162は、排藁センサ角度Bを検出信号として制御装置12に送信する。
【0074】
処理物量検出装置163は、選別部5において揺動選別装置50のチャフシーブ53上の処理物量を検出する装置である。本実施形態においては処理物量検出装置163は、検出板164と、復帰板165と、ポテンショメータ等からなるセンサ部166とを有し、チャフシーブ53の上方に配置される。処理物量検出装置163では、検出板164の一端部が、センサ部166の回転軸に前後方向へ回転自在に取り付けられ、検出板164の他端部が、検出板164が初期位置にあるとき、チャフフィン16から所定距離だけ上方に位置するように配置される。復帰板165が検出板164の後側に一体的に取り付けられる。そして、処理物が前方から流れてきて検出板164に接触する場合には、検出板164が処理物量の量(流圧)に応じて初期位置から後方へ回動される。一方、処理物が検出板164に接触しない場合には、検出板164が復帰板165の重みにより初期位置に保持される。そして、検出板164の角度(以下、「シーブセンサ角度C」と記す)がセンサ部166で検出される。センサ部166は、シーブセンサ角度Cを検出信号として制御装置12に送信する。
【0075】
チャフ角度検出装置167は、チャフフィン16の角度を検出するものである。本実施形態においては、チャフ角度検出装置167は、アーム部168と、ポテンショメータ等からなるセンサ部169とを有し、第一ギヤアーム131の前方に配置される。チャフ角度検出装置167では、アーム部168の一端部がセンサ部169の回転軸に上下方向へ回転自在に取り付けられ、アーム部168の他端部が第一ギヤアーム131の突出部131aから左側方へ突出する突起に下方から上方へ向かって常時圧接される。そして、第一ギヤアーム131の突出部131aがチャフアクチュエータ130の駆動量に応じて上下方向へ移動される場合、アーム部168がその突出部131aの移動にあわせて同一方向へ回動される。そして、アーム部168の角度(以下、「第一ギヤアーム角度D」と記す)がセンサ部169で検出される。センサ部169は、第一ギヤアーム角度Dを検出信号として制御装置12に送信する。
【0076】
唐箕風量検出装置170は、唐箕ファン17により前被覆板173から選別方向の下手側向けて送られる唐箕ファン17の風量を検出する装置である。本実施形態においては、図3に示すように、唐箕風量検出装置170は、磁気や光を用いた非接触式の回転センサからなり、唐箕ファン17の回転軸171の近傍に配置される。唐箕風量検出装置170では、唐箕ファン17が回転駆動される場合、回転軸171の回転速度に応じた波形Fが検出される。唐箕風量検出装置170は、検出された波形Fを、制御装置12に送信する。
【0077】
なお、第一設定操作具84、第二設定操作具85、排藁量検出装置160、処理物量検出装置163、チャフ角度検出装置167、唐箕風量検出装置170の具体的な構成は特に限定するものではなく、前述の構成はその一例である。
【0078】
次に、制御装置12におけるのチャフアクチュエータ130及び唐箕アクチュエータ140の具体的な制御態様について説明する。
【0079】
チャフアクチュエータ130におけるチャフフィン16の角度目標値であるチャフフィン角度目標値θ*は、数1に示すように、選別ダイヤル補正角度αと、排藁補正角度βと、シーブ補正角度γと、手扱ぎ補正角度δと、刈終り補正角度ηと、初期角度φとの合計値とされる。
【0080】
【数1】
【0081】
ただし、コンバイン1は、図5に示すように、刈取スイッチ121、脱穀スイッチ122、流込スイッチ123の「ON」「OFF」や排藁センサ角度Bの値に応じて、通常作業、手扱ぎ作業、刈終り作業に移行する。そして、各作業状態に応じて、これらの補正角度(選別ダイヤル補正角度α、排藁補正角度β、シーブ補正角度γ、手扱ぎ補正角度δ、刈終り補正角度η)がチャフフィン角度目標値θ*に反映されるかどうかが決定される(表1参照)。補正角度が反映される時は○で表され、補正角度が反映されず、無効とされる時は×で表される。
【0082】
【表1】
【0083】
ここで、選別ダイヤル補正角度αは、第二設定操作具85で設定された選別ダイヤル角度Aに基づいて制御装置12により算出される値である。制御装置12には、図6(a)に示す選別ダイヤル角度Aと選別ダイヤル補正角度αとの関係を示すマップが記憶される。制御装置12は、選別ダイヤル角度Aに基づいて、実線で示した当該マップから選別ダイヤル補正角度αを算出する。なお、図6(a)に示すマップは一例であり、選別ダイヤル角度Aと選別ダイヤル補正角度αとの関係はこれに限るものではなく、例えば、二点鎖線に示すように、選別ダイヤル角度Aが小さい範囲では、選別ダイヤル補正角度αの増加率を小さくしてもよい。選別ダイヤル補正角度αは、通常作業、手扱ぎ作業、刈終り作業時は反映される。
【0084】
排藁補正角度βは、排藁量検出装置160で検出された排藁センサ角度Bに基づいて制御装置12により算出される値である。制御装置12には、図6(b)に示す排藁センサ角度Bと排藁補正角度βとの関係を示すマップが記憶される。制御装置12は、排藁センサ角度Bに基づいて、実線で示した当該マップから排藁補正角度βを算出する。なお、図6(b)に示すマップは一例であり、排藁センサ角度Bと排藁補正角度βとの関係はこれに限るものではなく、例えば、二点鎖線に示すように、排藁センサ角度Bが小さい範囲では、排藁補正角度βを零として、不感帯を設けるマップとしてもよい。排藁補正角度βは、通常作業時は反映され、手扱ぎ作業時及び刈終り作業時は無効とされる。
【0085】
シーブ補正角度γは、処理物量検出装置163で検出されたシーブセンサ角度Cに基づいて制御装置12により算出される値である。制御装置12には、図6(c)に示すシーブセンサ角度Cとシーブ補正角度γとの関係を示すマップが記憶される。制御装置12は、シーブセンサ角度Cに基づいて、実線で示した当該マップからシーブ補正角度γを算出する。なお、図6(c)に示すマップは一例であり、シーブセンサ角度Cとシーブ補正角度γとの関係はこれに限るものでなく、例えば、二点鎖線に示すように、シーブセンサ角度Cが大きい範囲では、シーブ補正角度γを一定値として、不感帯を設けるマップとしてもよい。排藁補正角度βは、通常作業、手扱ぎ作業、刈終り作業時は反映される。ただし、処理物量検出装置163が正常に動作しない場合は、無効とされる。また、刈終り作業時は無効としてもよい。
【0086】
手扱ぎ補正角度δは、正の一定値であり、予め任意の値に決定される。手扱ぎ補正角度δは、手扱ぎ作業時は反映され、通常作業時及び刈終り作業時は無効とされる。
【0087】
刈終り補正角度ηは、刈終り時に算出される値である(詳細は後述)。刈終り補正角度ηは、刈終り作業時は反映され、通常作業時及び手扱ぎ作業時は無効とされる。
【0088】
初期角度φは、補正角度を加味しない場合のチャフフィン16の角度である。初期角度φは、予め任意の値に決定される。初期角度φは常に反映される。
【0089】
チャフフィン角度θは、水平方向に対するチャフフィン16の角度である(図4参照)。チャフフィン角度θは、チャフ角度検出装置167で検出された第一ギヤアーム角度Dに基づいて制御装置12により算出される値である。制御装置12には、図6(d)に示す第一ギヤアーム角度Dとチャフフィン角度θとの関係を示すマップが記憶される。制御装置12は、第一ギヤアーム角度Dに基づいて、当該マップからチャフフィン角度θを決定する。なお、図6(d)に示すマップは一例であり、第一ギヤアーム角度Dとチャフフィン角度θとの関係はこれに限るものではない。当該マップは、試験等により予め導き出されるものとされる。
【0090】
そして、制御装置12は、各作業状態に応じて、チャフフィン角度θが、数1で表されるチャフフィン角度目標値θ*と一致するように、チャフアクチュエータ130を駆動制御する。
【0091】
唐箕アクチュエータ140における唐箕ファン17の回転数目標値である唐箕ファン回転数目標値N*は、数2に示すように、唐箕ダイヤル補正回転数Pと、排藁補正回転数Qと、シーブ補正回転数R、手扱ぎ補正回転数Sと、刈終り補正回転数Uと、初期回転数Vと、との合計値とされる。
【0092】
【数2】
【0093】
ただし、コンバイン1は、図6に示すように、刈取スイッチ121、脱穀スイッチ122、流込スイッチ123の「ON」「OFF」や排藁センサ角度Bの値に応じて、通常作業、手扱ぎ作業、刈終り作業に移行する。そして、各作業状態に応じて、これらの補正回転数(唐箕ダイヤル補正回転数P、排藁補正回転数Q、シーブ補正回転数R、手扱ぎ補正回転数S、刈終り補正回転数U)が唐箕ファン回転数目標値N*に反映されるかどうかが決定される(表2参照)。補正回転数が反映される時は○で表され、補正角度が反映されず、無効とされる時は×で表される。
【0094】
【表2】
【0095】
ここで、唐箕ダイヤル補正回転数Pは、第二設定操作具85で設定された唐箕ダイヤル角度Eに基づいて制御装置12により算出される値である。制御装置12には、図6(e)に示す唐箕ダイヤル角度Eと唐箕ダイヤル補正回転数Pとの関係を示すマップが記憶される。制御装置12は、唐箕ダイヤル角度Eに基づいて、実線で示した当該マップから唐箕ダイヤル補正回転数Pを算出する。なお、図6(e)に示すマップは一例であり、唐箕ダイヤル角度Eと唐箕ダイヤル補正回転数Pとの関係はこれに限るものではなく、例えば、二点鎖線に示すように、唐箕ダイヤル角度Eが小さい範囲では、唐箕ダイヤル補正回転数Pの増加率を小さくしてもよい。唐箕ダイヤル補正回転数Pは、通常作業、手扱ぎ作業、刈終り作業時は反映される。
【0096】
排藁補正回転数Qは、排藁量検出装置160で検出された排藁センサ角度Bに基づいて制御装置12により算出される値である。制御装置12には、図6(f)に示す排藁センサ角度Bと排藁補正回転数Qとの関係を示すマップが記憶される。制御装置12は、排藁センサ角度Bに基づいて、実線で示した当該マップから排藁補正回転数Qを算出する。なお、図6(f)に示すマップは一例であり、排藁センサ角度Bと排藁補正回転数Qとの関係はこれに限るものでなく、例えば、二点鎖線に示すように、排藁センサ角度Bが小さい範囲では、排藁補正回転数Qを零として、不感帯を設けるマップとしてもよい。排藁補正回転数Qは、通常作業時は反映され、手扱ぎ作業時及び刈終り作業時は無効とされる。
【0097】
シーブ補正回転数Rは、処理物量検出装置163で検出されたシーブセンサ角度Cに基づいて制御装置12により算出される値である。制御装置12には、図6(g)に示すシーブセンサ角度Cとシーブ補正回転数Rとの関係を示すマップが記憶される。制御装置12は、シーブセンサ角度Cに基づいて、実線で示した当該マップからシーブ補正回転数Rを算出する。なお、図6(g)に示すマップは一例であり、シーブセンサ角度Cとシーブ補正回転数Rとの関係はこれに限るものでなく、例えば、二点鎖線に示すように、シーブセンサ角度Cが大きい範囲では、シーブ補正回転数Rを一定値として、不感帯を設けるマップとしてもよい。シーブ補正回転数Rは、通常作業、手扱ぎ作業、刈終り作業時は反映される。ただし、処理物量検出装置163が正常に動作しない場合は、無効とする。また、刈終り作業時は、無効としてもよい。
【0098】
手扱ぎ補正回転数Sは、負の一定値であり、予め任意の値に決定される。手扱ぎ補正回転数Sは、手扱ぎ作業時は反映され、通常作業時及び刈終り作業時は無効とされる。
【0099】
刈終り補正回転数Uは、刈終り時に算出される値である(詳細は後述)。刈終り補正回転数Uは、刈終り作業時は反映され、通常作業時及び手扱ぎ作業時は無効とされる。
【0100】
初期回転数Vは、補正回転数を加味しない場合の唐箕ファン17の回転数である。初期回転数Vは、予め任意の値に決定される。初期回転数Vは常に反映される。
【0101】
唐箕ファン回転数Nは、唐箕ファン17の回転数として唐箕風量検出装置170で検出した波形Fに基づいて求められる。制御装置12には、図6(h)に示すような波形Fが送信される。制御装置12は、波形Fの周期(周波数)に応じて、唐箕ファン回転数Nを求める。
【0102】
そして、制御装置12は、各作業状態に応じて、唐箕ファン回転数Nが、数2で表される唐箕ファン回転数目標値N*と一致するように、唐箕アクチュエータ140を駆動制御する。
【0103】
具体的には、通常作業時は、チャフフィン角度目標値θ*は、手扱ぎ補正角度δ及び刈終り補正角度ηを無効として、選別ダイヤル補正角度αと、排藁補正角度βと、シーブ補正角度γと、初期角度φとの合計値となり、唐箕ファン回転数目標値N*は、手扱ぎ補正回転数S及び刈終り補正回転数Uを無効として、唐箕ダイヤル補正回転数Pと、排藁補正回転数Qと、シーブ補正回転数Rと、初期回転数Vとの合計値となる(表1及び表2参照)。そして、制御装置12は、チャフフィン角度θが、このチャフフィン角度目標値θ*となるように、チャフアクチュエータ130を駆動制御しつつ、唐箕ファン回転数Nが、この唐箕ファン目標回転数N*となるように、唐箕アクチュエータ140を駆動制御する。
【0104】
この時、コンバイン1は、通常作業時において、排藁量及び処理物量を排藁センサ角度B及びシーブセンサ角度Cとして電気的に検出して、これらの値に基づいてチャフアクチュエータ130及び唐箕アクチュエータ140を個別に駆動制御する。詳細には、排藁センサ角度Bに排藁補正角度βとの関係を示すマップと、シーブセンサ角度Cとシーブ補正角度γとの関係を示すマップと、排藁センサ角度Bと排藁補正回転数Qとの関係を示すマップと、シーブセンサ角度Cとシーブ補正回転数Rとの関係を示すマップとの関係を示すマップと、を適宜調節して、チャフアクチュエータ130及び唐箕アクチュエータ140を個別に駆動制御する。これにより、チャフフィン16の角度及び唐箕ファン17の風量を広い範囲で個別に制御することが可能となり、精度の高い処理物の選別が可能となる。
【0105】
次に、本発明に係る刈終り作業の実施形態を説明する。
【0106】
コンバイン1は、図5に示すように、通常作業にある場合に、刈取スイッチ121を「ON」から「OFF」、または、脱穀スイッチ122を「ON」から「OFF」、または、排藁量検出装置160で検出された排藁センサ角度Bが所定の閾値以下、または、流込スイッチ123を「ON」(刈取部3の回転数が、エンジン9の回転数に同調)とした時、刈終り作業に移行する。コンバイン1は、手扱ぎ作業にある場合に、刈取スイッチ121を「ON」、かつ、流込スイッチ123を「ON」(刈取部3の回転数が、エンジン9の回転数に同調)とした時、刈終り作業に移行する。コンバイン1は、待機状態にある場合に、脱穀スイッチ122を「ON」、かつ、流込スイッチ123を「ON」(刈取部3の回転数が、エンジン9の回転数に同調)とした時、刈終り作業に移行する。
【0107】
刈終り作業におけるチャフフィン16の角度を調節するための制御の第一実施形態を説明する。
【0108】
第一実施形態においては、図8(a)に示すように、検出された排藁センサ角度Bが閾値であるB1以下となった時、コンバイン1は通常作業から刈終り作業に移行する。刈終り作業に移行した時を、刈終り時t1とする。
尚、閾値であるB1と比較する排藁センサ角度Bは、刈終り時t1から過去数秒間遡った排藁量の平均値Baveとしてもよい。これにより、刈終り作業への切り替えを、より適切なタイミングで移行することができる。
【0109】
刈終り時t1に、図7(a)及び図8(d)に示すように、制御装置12は、刈終り時t1から遡った、過去所定時間Ta内におけるチャフフィン16の平均角度θaveを算出する。具体的には、制御装置12には、予め任意の値に設定された過去所定時間Ta内のチャフフィン角度θが常時記憶される構成とされる。そして、刈終り時t1から、過去所定時間Taを減じた時間を積算開始時t2として、制御装置12は、積算開始時t2から刈終り時t1までの間で検出されたチャフフィン角度θを時間積分し(斜線部の面積に相当)、この演算値に過去所定時間Taを除算して、平均角度θaveを算出する。
【0110】
次に、制御装置12は、チャフフィン16の平均角度θaveに基づいて、設定時間Tchafを算出する。具体的には、制御装置12には、予め図7(b)に示すような平均角度θaveと設定時間Tchafとの関係を示すマップが記憶される。制御装置12は、平均角度θaveに基づいて、当該マップから設定時間Tchafを算出する。算出した設定時間Tchafは、刈終り作業を行う時間とされる。つまり、刈終り時t1から設定時間Tchafをカウントして、すなわち、刈終り時t1から時間の経過とともに設定時間Tchafを減少させて、設定時間Tchafが零となった時(作業終了時t3とする)に刈終り作業を終了する。
ただし、図7(b)に示すマップは一例であり、チャフフィン16の平均角度θaveと設定時間Tchafとの関係はこれに限るものではない。当該マップは、試験等により導き出されるものとされる。尚、刈終り時t1におけるチャフフィン16の角度(チャフフィン角度θ1)に基づいて、設定時間Tchafを算出してもよい。
【0111】
次に、制御装置12は、設定時間Tchafのカウント中はチャフフィン角度目標値θ*を徐々に減少させて、設定時間Tchafのカウント終了後(作業終了時t3)に角度目標値θ3*となるように決定する。すなわち、刈終り時t1のチャフフィン16の角度目標値θ1*を徐々に減じて、カウント終了後(作業終了時t3)に角度目標値θ3*となるようにチャフフィン角度目標値θ*を決定する。
【0112】
ここで、角度目標値θ1*は、数3に示すように、選別ダイヤル補正角度αと、通常作業時で算出された刈終り時t1における排藁補正角度β1及びシーブ補正角度γ1と、初期角度φとの合計値で表される。そして、この排藁補正角度β1及びシーブ補正角度γ1の合計値は刈終り補正角度ηとされる。
【0113】
【数3】
【0114】
角度目標値θ3*は、予め設定されたチャフフィン16の基準角度θ3の目標値である。角度目標値θ3*は、数4に示すように、選別ダイヤル補正角度αと、初期角度φとの合計値で表される。
【0115】
【数4】
【0116】
すなわち、設定時間Tchafのカウント中は、制御装置12は、刈終り補正角度ηを徐々に減少させて、設定時間Tのカウント終了後(作業終了時t3)に、この刈終り補正角度ηが零となるようにチャフフィン角度目標値θ*を決定する。
【0117】
言い換えれば、図8(d)に示すように、制御装置12は、設定時間Tchafのカウント中は、チャフフィン角度θを徐々に減少させて、カウント終了後(作業終了時t3)に予め設定された基準角度θ3となるように、チャフアクチュエータ130を駆動制御する。
【0118】
本実施形態においては、制御装置12は、設定時間Tchafのカウント中は、チャフフィン角度θが徐々に一定の変化率で減少するように、チャフアクチュエータ130を駆動制御する。ここで、一定の変化率とは、刈終り時t1におけるチャフフィン角度θ1(または、刈終り補正角度η)に設定時間Tchafを除算したものとされ、設定時間Tchafと、刈終り時t1におけるチャフフィン角度θ1(または、刈終り補正角度η)に応じて変化するものとされる。ただし、チャフフィン角度θの変化率は前述に限定するものでなく、任意に設定可能である。
【0119】
そして、設定時間Tchafのカウント終了後は、コンバイン1は、刈終り作業から待機状態に移行する。
【0120】
このように、刈終り作業におけるチャフフィン16の角度を調節するための制御の第一実施形態では、脱穀処理された処理物を、チャフフィン16を含む揺動選別装置50及び唐箕ファン17で選別する選別部3を有するコンバイン1であって、前記チャフフィン16の角度を調節可能なチャフアクチュエータ130と、前記チャフフィン16の角度を検出するチャフ角度検出装置167と、前記チャフアクチュエータ130を制御する制御装置12と、を備え、制御装置12は、過去所定時間Ta内におけるチャフフィン16の平均角度θaveを算出して、この平均角度φaveに基づいて刈終り作業を行う設定時間Tchafを算出し、前記設定時間Tchafのカウント中はチャフフィン角度θを徐々に減少させて、前記設定時間Tchafのカウント終了後に予め設定された基準角度θ3となるようにチャフアクチュエータ130を駆動制御するものである。
【0121】
これにより、刈終り作業時に、検出する排藁量が少なくなる(零となる)時であっても(図8(a)参照)、チャフフィン16の角度を適切に保ちつつ、時間の経過とともに徐々に減少させるので、揺動選別装置50上の処理物が適切に選別されて、選別精度が向上する。
【0122】
また、設定時間Tchafは、作業作業時の平均角度φaveに基づいて決定され、この平均角度φaveは、排藁量となる排藁センサ角度B及び処理物量となるシーブセンサ角度Cを基にして算出される。すなわち、設定時間Tchafは、揺動選別装置50で選別される処理物量に対応した値となる。この設定時間Tchafに基づいて、チャフフィン16が制御されるため、制御装置12は、刈終り作業時においても処理物量を適切に把握し、適切に選別を行うことができる。
【0123】
次に、刈終り作業におけるチャフフィン16の角度を調節するための制御の第二実施形態を説明する。ただし、第一実施形態と異なる部分を中心に説明する。
【0124】
図9(a)に示すように、仮に、前記設定時間Tchafのカウント中にシーブセンサ角度Cが減少から増加に変わり、その後、シーブセンサ角度Cが増加から減少に変わったとする。この時、このシーブセンサ角度Cが減少から増加に変わった時を減少停止時t4とし、増加から減少に変わった時を減少再開時t5とし、増加している時間を増加時間Tbとする。
【0125】
図9(b)に示すように、制御装置12は、増加時間Tbの間(減少停止時t4から、減少再開時t5までの間)は、前記設定時間Tchafのカウントを停止して、チャフフィン角度目標値θ*の減少を停止する。本実施形態においては、増加時間Tbの間は、チャフフィン角度目標値θ*を減少停止時t4における角度目標値θ4*に保持する。そして、増加時間Tbが経過後は、前記設定時間Tchafのカウントを再開して、チャフフィン角度目標値θ*の減少を再開する。すなわち、増加時間Tbが経過後は、チャフフィン角度目標値θ*を角度目標値θ4*から徐々に減少させて、作業終了時t6に、角度目標値θ3*となるように、チャフフィン角度目標値θ*を決定する。作業終了時t6は、作業終了時t3に増加時間Tbを加算した値である。
【0126】
言い換えれば、制御装置12は、増加時間Tbの間(減少停止時t4から減少再開時t5までの間)は、前記設定時間Tchafのカウントを停止して、チャフフィン角度θの減少を停止する。本実施形態においては、増加時間Tbの間は、チャフフィン角度θを減少停止時t4のチャフフィン角度θ4に保持する。そして、増加時間Tbが経過後は、前記設定時間Tchafのカウントを再開して、チャフフィン角度θの減少を再開する。すなわち、増加時間Tbが経過後は、チャフフィン角度θをチャフフィン角度θ4から徐々に減少させて、作業終了時t6に基準角度θ3となるように、チャフアクチュエータ130を駆動制御する。本実施形態においては、設定時間Tchaf経過中におけるチャフフィン角度θの変化率は、刈終り時t1に設定された変化率となるため、作業終了時t6に待機状態に移行する。
【0127】
このように、刈終り作業におけるチャフフィン16の角度を調節するための制御の第二実施形態では、コンバイン1は、前記揺動選別装置50上の処理物量を検出する処理物量検出装置163をさらに備え、前記制御装置12は、前記設定時間Tchafのカウント中に前記処理物量検出装置163の検出値が減少から増加に変わった時、前記設定時間Tchafのカウントを停止し、この状態で前記処理物量検出装置163の検出値が増加から減少に変わった時、前記設定時間Tchafのカウントを再開するものである。
【0128】
これにより、制御装置12は、設定時間Tchafのカウント中に、揺動選別装置50上の処理物が一時的に増加した場合であっても、設定時間Tchafのカウントを停止してチャフフィン角度θの減少を停止させ、減少停止時t4のチャフフィン角度θ4に保持するように駆動制御するので、処理物が適切に選別されて、選別精度が向上する。
【0129】
次に、刈終り作業におけるチャフフィン16の角度を調節するための制御の第三実施形態を説明する。ただし、チャフフィン16の第一実施形態と異なる部分を中心に説明する。
【0130】
第三実施形態においては、図9(c)に示すように、コンバイン1は、通常作業にある場合に、刈取スイッチ121を「ON」から「OFF」とした時、刈終り作業に移行する。
【0131】
刈終り作業に移行した時、図9(d)に示すように、まず初めに、制御装置12は、刈終り時t1から過去所定時間Ta内におけるチャフフィン16の平均角度θaveを算出する。次に、チャフフィン16の平均角度θaveに基づいて、設定時間Tchafを算出する。ここまでは第一実施形態と同じ構成である。
【0132】
次に、制御装置12は、設定時間Tのうち初期の一定時間Tcのカウント中は、チャフフィン角度目標値θ*を、角度目標値θ1*に保持する。そして、一定時間Tcのカウント終了後に、この角度目標値θ1*から徐々に減少させて、設定時間Tchafのカウント終了後(作業終了時t3)に、角度目標値θ3*となるように、チャフフィン角度目標値θ*を決定する。
【0133】
言い換えれば、図9(d)に示すように、制御装置12は、設定時間Tchafのうち初期の一定時間Tcのカウントが終了するまでは、チャフフィン角度θを、刈終り時t1のチャフフィン角度θ1に保持して、一定時間Tcのカウント終了後にチャフフィン角度θ1から徐々に減少させて、設定時間Tchafのカウント終了後(作業終了時t3)に基準角度θ3となるように、チャフアクチュエータ130を駆動制御する。
【0134】
このように、刈終り作業におけるチャフフィン16の角度を調節するための制御の第三実施形態では、制御装置12は、設定時間Tchafのうち初期の一定時間Tcは、チャフフィン角度θを刈終り時t1のチャフフィン角度θ1に保持するように、前記チャフアクチュエータ130を駆動制御する。
【0135】
これにより、刈終り作業時の初期に、2番還元物等によって処理物が減少しない場合であっても、チャフフィン16の角度を適切に保持するので、処理物が適切に選別されて、選別精度が向上する。
【0136】
刈終り作業における唐箕ファン17の風量を調節するための制御の第一実施形態を説明する。
【0137】
第一実施形態においては、図10(a)に示すように、検出された排藁センサ角度Bが閾値であるB1以下となった時、コンバイン1は通常作業から刈終り作業に移行する。刈終り作業に移行した時を、刈終り時t1とする。
尚、閾値であるB1と比較する排藁センサ角度Bは、刈終り時t1から過去数秒間遡った排藁量の平均値Baveとしてもよい。これにより、刈終り作業への切り替えを、より適切なタイミングで移行することができる。
【0138】
刈終り時t1に、図7(c)及び図10(d)に示すように、制御装置12は、刈終り時t1から遡った、過去所定時間Ta内における唐箕ファン17の平均回転数Naveを算出する。具体的には、制御装置12には、予め任意の値に設定された過去所定時間Ta内の唐箕ファン回転数Nが常時記憶される構成とされる。そして、刈終り時t1から、過去所定時間Taを減じた時間を積算開始時t2として、制御装置12は、積算開始時t2から刈終り時t1までの間で検出された唐箕ファン回転数Nを時間積分し(斜線部の面積に相当)、この演算値に過去所定時間Taを除算して、平均回転数Naveを算出する。
【0139】
次に、制御装置12は、唐箕ファン17の平均回転数Naveに基づいて、設定時間Tfanを算出する。具体的には、制御装置12には、予め図7(d)に示すような平均回転数Naveと設定時間Tfanとの関係を示すマップが記憶される。制御装置12は、平均回転数Naveに基づいて、当該マップから設定時間Tfanを算出する。算出した設定時間Tfanは、刈終り作業を行う時間とされる。つまり、刈終り時t1から設定時間Tfanをカウントして、すなわち、刈終り時t1から時間の経過とともに設定時間Tfanを減少させて、設定時間Tfanが零となった時(作業終了時t3とする)に刈終り作業を終了する。
ただし、図7(d)に示すマップは一例であり、唐箕ファン17の平均回転数Naveと設定時間Tfanとの関係はこれに限るものではない。当該マップは、試験等により導き出されるものとされる。尚、刈終り時t1における唐箕ファン17の回転数(唐箕ファン回転数N1)に基づいて、設定時間Tfanを算出してもよい。
【0140】
次に、制御装置12は、設定時間Tfanのカウント中は唐箕ファン回転数目標値N*を徐々に減少させて、設定時間Tfanのカウント終了後(作業終了時t3)に回転数目標値N3*となるように決定する。すなわち、刈終り時t1の唐箕ファン17の回転数目標値N1*を徐々に減じて、カウント終了後(作業終了時t3)に回転数目標値N3*となるように唐箕ファン回転数目標値N*を決定する。
【0141】
ここで、回転数目標値N1*は、数5に示すように、唐箕ダイヤル補正回転数Pと、通常作業時で算出された刈終り時t1における排藁補正回転数Q1及びシーブ補正回転数R1と、初期回転数Vとの合計値で表される。そして、この排藁補正回転数Q1及びシーブ補正回転数R1の合計値は刈終り補正回転数Uとされる。
【0142】
【数5】
【0143】
回転数目標値N3*は、予め設定された唐箕ファン17の基準回転数N3の目標値である。回転数目標値N3*は、数6に示すように、唐箕ダイヤル補正回転数Pと、初期回転数Vとの合計値で表される。
【0144】
【数6】
【0145】
すなわち、設定時間Tchafのカウント中は、制御装置12は、刈終り補正回転数Uを徐々に減少させて、設定時間Tのカウント終了後(作業終了時t3)に、この刈終り補正回転数Uが零となるように唐箕ファン回転数目標値N*を決定する。
【0146】
言い換えれば、図10(d)に示すように、制御装置12は、設定時間Tfanのカウント中は、唐箕ファン回転数Nを徐々に減少させて、カウント終了後(作業終了時t3)に予め設定された基準回転数N3となるように、チャフアクチュエータ130を駆動制御する。
【0147】
本実施形態においては、制御装置12は、設定時間Tchafのカウント中は、唐箕ファン回転数Nが徐々に一定の変化率で減少するように、チャフアクチュエータ130を駆動制御する。ここで、一定の変化率とは、刈終り時t1における唐箕ファン回転数N1(または、刈終り補正回転数U)に設定時間Tfanを除算したものとされ、設定時間Tfanと、刈終り時t1における唐箕ファン回転数N1(または、刈終り補正角度η)に応じて変化するものとされる。ただし、唐箕ファン回転数Nの変化率は前述に限定するものでなく、任意に設定可能である。
【0148】
そして、設定時間Tfanのカウント終了後は、コンバイン1は、刈終り作業から待機状態に移行する。
【0149】
このように、刈終り作業における唐箕ファン17の回転数を調節するための制御の第一実施形態では、脱穀処理された処理物を、唐箕ファン17を含む揺動選別装置50及び唐箕ファン17で選別する選別部3を有するコンバイン1であって、前記唐箕ファン17の回転数を調節可能な唐箕アクチュエータ140と、前記唐箕ファン17の回転数を検出する唐箕風量検出装置170と、前記唐箕アクチュエータ140を制御する制御装置12と、を備え、制御装置12は、刈終り時t1から過去所定時間Ta内における唐箕ファン17の平均風量となる平均回転数Naveを算出して、この平均回転数Naveに基づいて刈終り作業を行う設定時間Tfanを算出し、設定時間Tfanのカウント中は、唐箕ファン回転数Nを徐々に減少させて、前記設定時間Tfanのカウント終了後に予め設定された基準回転数N3となるように、唐箕アクチュエータ140を駆動制御するものである。
【0150】
これにより、刈終り作業時に、検出する排藁量が少なくなる(零となる)時であっても(図10(a)参照)、唐箕ファン17の回転数を適切に保ちつつ、時間の経過とともに徐々に減少させるので、揺動選別装置50上の処理物が適切に選別されて、選別精度が向上する。
【0151】
また、設定時間Tfanは、作業作業時の平均回転数Naveに基づいて決定され、この平均回転数Naveは、排藁量となる排藁センサ角度B及び処理物量となるシーブセンサ角度Cを基にして算出される。すなわち、設定時間Tfanは、揺動選別装置50で選別される処理物量に対応した値となる。この設定時間Tfanに基づいて、唐箕ファン17が制御されるため、制御装置12は、刈終り作業時においても処理物量を適切に把握し、適切に選別を行うことができる。
【0152】
次に、刈終り作業における唐箕ファン17の回転数を調節するための制御の第二実施形態を説明する。ただし、第一実施形態と異なる部分を中心に説明する。
【0153】
図11(a)に示すように、仮に、前記設定時間Tfanが経過するまでの間にシーブセンサ角度Cが減少から増加に変わり、その後、シーブセンサ角度Cが増加から減少に変わったとする。この時、このシーブセンサ角度Cが減少から増加に変わった時を減少停止時t4とし、増加から減少に変わった時を減少再開時t5とし、増加している時間を増加時間Tbとする。
【0154】
図11(b)に示すように、制御装置12は、増加時間Tbの間(減少停止時t4から、減少再開時t5までの間)は、前記設定時間Tfanのカウントを停止して、唐箕ファン回転数目標値N*の減少を停止する。本実施形態においては、増加時間Tbの間は、唐箕ファン回転数目標値N*を、減少停止時t4における回転数目標値N4*に保持する。そして、増加時間Tbが経過後は、前記設定時間Tfanのカウントを再開して、唐箕ファン回転数目標値N*の減少を再開する。すなわち、増加時間Tbが経過後は、唐箕ファン回転数目標値N*を回転数目標値N4*から徐々に減少させて、作業終了時t6に、回転数目標値N3*となるように、唐箕ファン回転数目標値N*を決定する。作業終了時t6は、作業終了時t3に増加時間Tbを加算した値である。
【0155】
言い換えれば、制御装置12は、増加時間Tbの間(減少停止時t4から減少再開時t5までの間)は、前記設定時間Tfanのカウントを停止して、唐箕ファン回転数Nの減少を停止する。本実施形態においては、増加時間Tbの間は、唐箕ファン回転数Nを減少停止時t4の唐箕ファン回転数N4に保持する。そして、増加時間Tbが経過後は、前記設定時間Tchafのカウントを再開して、唐箕ファン回転数Nの減少を再開する。すなわち、増加時間Tbが経過後は、唐箕ファン回転数N4から徐々に減少させて、作業終了時t6に基準回転数N3となるように、唐箕アクチュエータ140を駆動制御する。本実施形態においては、設定時間Tchaf経過中における唐箕ファン回転数Nの変化率は、刈終り時t1に設定された変化率となるため、作業終了時t6に待機状態に移行する。
【0156】
このように、刈終り作業における唐箕ファン17の回転数を調節するための制御の第二実施形態では、コンバイン1は、前記揺動選別装置50上の処理物量を検出する処理物量検出装置163をさらに備え、前記制御装置12は、前記設定時間Tfanが経過するまでの間に前記処理物量検出装置163の検出値が減少から増加に変わった時、前記設定時間Tfanのカウントを停止し、この状態で前記処理物量検出装置163の検出値が増加から減少に変わった時、前記設定時間Tfanのカウントを再開するものである。
【0157】
これにより、制御装置12は、設定時間Tfanのカウント中に、揺動選別装置50上の処理物が一時的に増加した場合であっても、設定時間Tfanのカウントを停止して唐箕ファン回転数Nの減少を停止させ、減少停止時t4の唐箕ファン回転数N4に保持するように駆動制御するので、処理物が適切に選別されて、選別精度が向上する。
【0158】
次に、刈終り作業における唐箕ファン17の角度を調節するための制御の第三実施形態を説明する。ただし、唐箕ファン17の第一実施形態と異なる部分を中心に説明する。
【0159】
第三実施形態においては、図11(c)に示すように、コンバイン1は、通常作業にある場合に、刈取スイッチ121を「ON」から「OFF」とした時、刈終り作業に移行する。
【0160】
刈終り作業に移行した時、図11(d)に示すように、まず初めに、制御装置12は、刈終り時t1から過去所定時間Ta内における唐箕ファン17の平均回転数Naveを算出する。次に、唐箕ファン17の平均回転数Naveに基づいて、設定時間Tfanを算出する。ここまでは第一実施形態と同じ構成である。
【0161】
次に、制御装置12は、設定時間Tのうち初期の一定時間Tcのカウント中は、唐箕ファン回転数目標値N*を、回転数目標値N1*に保持する。そして、一定時間Tcのカウント終了後に、この回転数目標値N1*から徐々に減少させて、設定時間Tfanのカウント終了後(作業終了時t3)に、回転数目標値N3*となるように、唐箕ファン回転数目標値N*を決定する。
【0162】
言い換えれば、図11(d)に示すように、制御装置12は、設定時間Tfanのうち初期の一定時間Tcのカウントが終了するまでは、唐箕ファン回転数Nを、刈終り時t1の唐箕ファン回転数N1に保持して、一定時間Tcのカウント終了後に唐箕ファン回転数N1から徐々に減少させて、設定時間Tfanのカウントが終了後(作業終了時t3)に基準回転数N3となるように、唐箕アクチュエータ140を駆動制御する。
【0163】
このように、刈終り作業における唐箕ファン17の角度を調節するための制御の第三実施形態では、制御装置12は、設定時間Tfanのうち初期の一定時間Tcは、唐箕ファン回転数Nを刈終り時t1の唐箕ファン回転数N1に保持するように、前記唐箕アクチュエータ140を駆動制御する。
【0164】
これにより、刈終り作業時の初期に、2番還元物等によって処理物が減少しない場合であっても、唐箕ファン17の角度を適切に保持するので、処理物が適切に選別されて、選別精度が向上する。
【符号の説明】
【0165】
1 コンバイン
3 刈取部
4 脱穀部
5 選別部
12 制御装置
16 チャフフィン
17 唐箕ファン
53 チャフシーブ
130 チャフアクチュエータ
140 唐箕アクチュエータ
160 排藁量検出装置
163 処理物量検出装置
167 チャフ角度検出装置
170 唐箕風量検出装置
θ チャフフィン角度
θ* チャフフィン角度目標値
θave 平均角度
θ1 刈終り時のチャフフィン角度
θ3 基準角度
N 唐箕ファン回転数
N* 唐箕ファン回転数目標値
Nave 平均回転数(平均風量)
N1 刈終り時の唐箕ファン回転数(刈終り時の唐箕ファン風量)
N3 基準回転数(基準風量)
Tchaf 設定時間
Tfan 設定時間
t1 刈終り時
t3 作業終了時
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンバインに関し、詳細には、刈終り作業時のチャフフィン及び唐箕ファンの制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、脱穀後の排藁量に応じて、チャフシーブの開度(チャフフィンの角度)を自動的に調節可能としたコンバインは公知となっている。
例えば、特許文献1においては、刈終り作業時には、チャフシーブの開度(チャフフィンの角度)をチャフ開度モータにより一定角度θ開側に刈終り時点から一定時間(設定時間T)の間保持するコンバインが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3607457号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に示すようなコンバインにおいては、刈終り時点から一定時間経過するまでの間は、チャフシーブの開度が一定値に保持されるので、処理物の3番ロスが低減できる。しかしながら、刈終り作業時は、揺動選別装置上の処理物量は時間経過とともに変化するという観点から、チャフシーブによる処理物の選別精度を改善する余地があった。
【0005】
本発明は、上記の如き課題を鑑みてなされたものであり、刈終り作業時に、処理物の選別精度を向上させるコンバインを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0007】
請求項1においては、脱穀処理された処理物を、チャフフィンを含む揺動選別装置及び唐箕ファンで選別する選別部を有するコンバインであって、前記チャフフィンの角度を調節可能なチャフアクチュエータと、前記チャフフィンの角度を検出するチャフ角度検出装置と、前記チャフアクチュエータを制御する制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記チャフ角度検出装置の検出値を記憶し、過去所定時間内における前記チャフフィンの平均角度を算出して、この平均角度に基づいて刈終り作業を行う設定時間を算出し、前記設定時間のカウント中は前記チャフフィンの角度を徐々に減少させて、カウント終了後に予め設定された基準角度となるように、前記チャフアクチュエータを駆動制御するものである。
【0008】
請求項2においては、脱穀処理された処理物を、チャフフィンを含む揺動選別装置及び唐箕ファンで選別する選別部を有するコンバインであって、前記唐箕ファンの風量を調節可能な唐箕アクチュエータと、前記唐箕ファンの風量を検出する唐箕風量検出装置と、前記唐箕アクチュエータを制御する制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記唐箕風量検出装置の検出値を記憶し、過去所定時間内における前記唐箕ファンの平均風量を算出して、この平均風量に基づいて刈終り作業を行う設定時間を算出し、前記設定時間のカウント中は前記唐箕ファンの風量を徐々に減少させて、カウント終了後に予め設定された基準風量となるように前記唐箕アクチュエータを駆動制御するものである。
【0009】
請求項3においては、前記揺動選別装置上の処理物量を検出する処理物量検出装置をさらに備え、前記制御装置は、前記設定時間のカウント中に前記処理物量検出装置の検出値が減少から増加に変わった時、前記設定時間のカウントを停止し、この状態で前記処理物量検出装置の検出値が増加から減少に変わった時、前記設定時間のカウントを再開するものである。
【0010】
請求項4においては、脱穀処理された処理物を、チャフフィンを含む揺動選別装置及び唐箕ファンで選別する選別部を有するコンバインであって、前記チャフフィンの角度を調節可能なチャフアクチュエータと、前記唐箕ファンの風量を調節可能な唐箕アクチュエータと、脱穀後の排藁量を電気的に検出する排藁量検出装置と、前記揺動選別装置上の処理物量を電気的に検出する処理物量検出装置と、前記チャフアクチュエータ及び前記唐箕アクチュエータを制御する制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記排藁量検出装置及び前記処理物量検出装置の検出値に基づいて、前記チャフアクチュエータと前記唐箕アクチュエータとを個別に駆動制御するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0012】
請求項1においては、刈終り作業時に、チャフフィンの角度を時間の経過とともに徐々に減少させるので、揺動選別装置上の処理物が適切に選別されて、選別精度が向上する。
【0013】
請求項2においては、刈終り作業時に、唐箕ファンの風量を時間の経過とともに徐々に減少させるので、揺動選別装置上の処理物が適切に選別されて、選別精度が向上する。
【0014】
請求項3においては、設定時間が経過するまでの間に、揺動選別装置上の処理物が一時的に増加した場合であっても、設定時間のカウントを停止するので、処理物が適切に選別されて、選別精度が向上する。
【0015】
請求項4においては、排藁量と揺動選別装置上の処理物量とを電気的に検出して、チャフフィンの角度と唐箕ファンの風量とを個別に駆動制御するので、精度の高い処理物の選別が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】コンバインの全体的な構成を示す側面図。
【図2】脱穀部及び選別部の構成を示す側面断面図。
【図3】風量調節装置及び角度調節装置の構成を示す側面図。
【図4】制御ブロック図。
【図5】コンバインの作業状態を移行する条件を示す図。
【図6】チャフアクチュエータ及び唐箕アクチュエータのセンサに係る制御マップ。
【図7】(a)チャフフィン角度θのタイムチャート。(b)平均角度θaveと、設定時間Tchafに係る制御マップ。(c)唐箕ファン回転数Nのタイムチャート。(d)平均回転数Naveと、設定時間Tfanに係る制御マップ。
【図8】(a)排藁センサ角度Bのタイムチャート。(b)シーブセンサ角度Cのタイムチャート。(c)刈取スイッチのタイムチャート。(d)チャフフィン角度θのタイムチャート。
【図9】(a)シーブセンサ角度Cのタイムチャート。(b)チャフフィン角度θのタイムチャート。(c)刈取スイッチのタイムチャート。(d)チャフフィン角度θのタイムチャート。
【図10】(a)排藁センサ角度Bのタイムチャート。(b)シーブセンサ角度Cのタイムチャート。(c)刈取スイッチのタイムチャート。(d)唐箕ファン回転数Nのタイムチャート。
【図11】(a)シーブセンサ角度Cのタイムチャート。(b)唐箕ファン回転数Nのタイムチャート。(c)刈取スイッチのタイムチャート。(d)唐箕ファン回転数Nのタイムチャート。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
【0018】
まず、本発明の一実施形態に係るコンバイン1の全体構成について説明する。
【0019】
図1に示すように、コンバイン1は、走行部2、刈取部3、脱穀部4、選別部5、穀粒貯溜部6、排藁処理部7及び操縦部8を備える。コンバイン1は、動力をエンジン9から走行部2、刈取部3、脱穀部4、選別部5、穀粒貯溜部6及び排藁処理部7にトランスミッションを含む動力伝達系を介して伝達し、これらの各部を駆動させる。
【0020】
走行部2は、機体の下部に設けられる。走行部2は、左右一対のクローラを有するクローラ式走行装置21を有する。走行部2は、機体をクローラ式走行装置21により走行させる。
【0021】
刈取部3は、機体の前部に昇降可能に設けられる。刈取部3は、分草具31、引起装置32、搬送装置33及び切断装置34を有する。刈取部3は、圃場の穀稈を分草具31により分草し、分草後の穀稈を引起装置32により引き起こし、引起後の穀稈を搬送装置33により後方へ搬送しつつ切断装置34により切断し、切断後の穀稈を搬送装置33により脱穀部4に向けてさらに後方へ搬送する。
【0022】
脱穀部4は、機体の左上側に配置される。脱穀部4は、フィードチェン41、扱胴42を有する(図2参照)。脱穀部4は、刈取部3から搬送されてきた刈取後の穀稈をフィードチェン41により受け継いで後方へ搬送し、その搬送中の穀稈を扱胴42により脱穀し、脱穀後の処理物を選別部5に向けて下方へ漏下させる。
【0023】
選別部5は、機体の左下側に配置される。選別部5は、揺動選別装置50、風選別装置及び穀粒搬送装置を有する(図2参照)。選別部5は、脱穀部4から落下してきた処理物を揺動選別装置50により揺動選別し、揺動選別後のものを風選別装置により風選別し、風選別後のもののうち、穀粒を穀粒搬送装置により穀粒貯溜部6に向けて右側方へ搬送し、藁屑や塵埃などを風選別装置により後方へ飛ばして機体の外部へ排出する。
【0024】
穀粒貯溜部6は、機体の右後側に配置される。穀粒貯溜部6は、グレンタンク61及び穀粒排出装置62を有する。穀粒貯溜部6は、選別部5から搬送されてきた穀粒をグレンタンク61により貯溜し、その貯溜している穀粒を穀粒排出装置62によりグレンタンク61から機体の外部へ排出する。
【0025】
排藁処理部7は、機体の後側に配置される。排藁処理部7は、排藁搬送装置71及び排藁切断装置72を有する。排藁処理部7は、脱穀部4から搬送されてきた脱穀済みの排稈を排藁として排藁搬送装置71により後方へ搬送して機体の外部へ排出し、又は排藁切断装置72へ搬送し、排藁を排藁切断装置72へ搬送した場合には排藁切断装置72により切断した後に機体の外部へ排出する。
【0026】
操縦部8は、機体の右前側に配置される。操縦部8は、操縦席81や、ステアリングハンドル82、キャビン83、操作パネルなどを有して、操縦席81やステアリングハンドル82、操作パネルなどをキャビン83により覆い、操縦席81に操縦者を着座させ、ステアリングハンドル82や操作パネルに配置された操作レバーや操作スイッチ類により操縦者が各部の装置を操作することができるように構成される。
【0027】
こうして、コンバイン1は、操縦部8における操作具類の操作に応じて、動力をエンジン9から操縦部8を除く前記各部に伝達し、機体を走行部2により走行させながら、圃場の穀稈を刈取部3により刈り取って、刈取後の穀稈を脱穀部4により脱穀し、脱穀後の処理物を選別部5により選別して、選別後の穀粒を穀粒貯溜部6に貯溜する一方、脱穀後の排藁を排藁処理部7により任意に処理して機体の外部へ排出することができるようになっている。
【0028】
次に、脱穀部4及び選別部5の構成について説明する。
【0029】
図2に示すように、脱穀部4は、フィードチェン41、扱胴42及び受網45を備えるとともに、処理胴43及び処理胴網を備える。
【0030】
扱胴42は、前端部を面取りした円筒状に形成される。扱胴42は、その軸心方向を前後方向として扱室44に配置されて、扱室44の前壁と後壁との間に回転自在に架設された回転支軸に取り付けられる。扱胴42は、エンジン9からの動力が当該回転支軸に伝達されることによって、この回転支軸と一体的にその前後方向の軸心回りに回転する。受網45は、扱胴42をその周面に沿って下方から覆うように、扱室44に配置される。
【0031】
処理胴43は、円筒状に形成される。処理胴43は、その軸心方向を前後方向として処理室46に配置されて、処理室46の前壁と後壁との間に回転自在に架設された回転支軸に支持される。処理胴43は、エンジン9からの動力が当該回転支軸に伝達されることによって、この回転支軸と一体的にその前後方向の軸心回りに回転する。処理胴網は、処理胴43をその周面に沿って下方から覆うように、処理室46に配置される。処理室46は、扱室44の右後方に位置し、扱室44と送塵口を介して連通する。
【0032】
フィードチェン41は、扱胴42の左側方で刈取部3と排藁処理部7との間にわたって配置されて、駆動スプロケット47と複数の従動スプロケット48・48とに巻き掛けられる。フィードチェン41は、エンジン9からの動力が駆動スプロケット47に伝達されることによって、前後方向に回転する。これらの駆動スプロケット47と複数の従動スプロケット48・48とは、扱胴42の左側方で前後方向に延設された支持フレームに支持される。
【0033】
図2に示すように、選別部5は、揺動選別装置50、風選別装置及び穀粒搬送装置を備える。
【0034】
揺動選別装置50は、揺動選別装置本体、前フィードパン51、後フィードパン52、チャフシーブ53、グレンシーブ54及びストローラック55を有する。
【0035】
揺動選別装置本体は、選別部5の平面視で矩形枠状に形成される。揺動選別装置本体は、その長手方向を前後方向として脱穀部4の扱胴42及び受網45並びに処理胴43及び処理胴網の下方に配置されて、下部機枠10に揺動かつ着脱可能に支持される。揺動選別装置本体は、揺動機構の揺動軸にエンジン9からの動力が伝達されることによって、下部機枠10に対して揺動する。
【0036】
フィードパンは、前フィードパン51及び後フィードパン52から構成される。前フィードパン51は、脱穀部4の扱胴42及び受網45の下方に配置されて、揺動選別装置本体の前部に支持される。後フィードパン52は、脱穀部4の扱胴42及び受網45の下方で前フィードパン51の後下方に配置されて、揺動選別装置本体の前部に支持される。
【0037】
チャフシーブ53は、脱穀部4の扱胴42及び受網45並びに処理胴43及び処理胴網の下方で前フィードパン51の後方に配置されて、揺動選別装置本体の前後中途部に支持される。グレンシーブ54は、チャフシーブ53の下方に配置されて、揺動選別装置本体の前後中途部に支持される。ストローラック55は、チャフシーブ53の後方でグレンシーブ54の後上方に配置されて、揺動選別装置本体の後部に支持される。
【0038】
風選別装置は、唐箕ファン17、プレファン57、セカンドファン58及び吸引ファン59を備える。
【0039】
唐箕ファン17は、前フィードパン51の後部及び後フィードパン52の下方に配置されて、下部機枠10の前部に左右方向に横設される。プレファン57は、前フィードパン51の前部の下方で唐箕ファン17の前上方に配置されて、下部機枠10の前端部付近に左右方向に横設される。セカンドファン58は、チャフシーブ53の後端部の下方で後述の穀粒搬送装置の一番搬送装置151と二番搬送装置152との間に配置されて、下部機枠10の前後中途部に左右方向に横設される。
【0040】
吸引ファン59は、ストローラック55の上方に配置されて、下部機枠10の後端部の上方で左右方向に横設される。そして、唐箕ファン17、プレファン57、セカンドファン58及び吸引ファン59は、エンジン9からの動力がそれぞれの回転軸に伝達されることによって、回転して選別風を発生させる。
【0041】
穀粒搬送装置は、一番搬送装置151、二番搬送装置152、一番揚穀装置155、及び二番還元装置156を備える。
【0042】
一番搬送装置151は、唐箕ファン17の後方であってチャフシーブ53及びグレンシーブ54の下方に配置され、下部機枠10の前後中途部に左右方向に横設される。二番搬送装置152は、一番搬送装置151及びセカンドファン58の後方でストローラック55の下方に配置されて、下部機枠10の後部に左右方向に横設される。
【0043】
一番揚穀装置155は、一番搬送装置151の右側方に配置されて、下部機枠10の右外側で上下方向に立設される。一番揚穀装置155は、その下端部で一番搬送装置151の右端部と接続されるとともに、その上端部で穀粒貯溜部6のグレンタンク61と接続される。
【0044】
二番還元装置156は、二番搬送装置152の右側方に配置されて、下部機枠10の右外側で前後方向に斜設される。二番還元装置156は、その後下端部で二番搬送装置152の右端部と接続されるとともに、その前上端部で脱穀部4の扱室44または揺動選別装置50の上方の空間と接続される。
【0045】
このような構成において、脱穀及び選別作業が行われる際、脱穀部4では、刈取部3から搬送されてきた刈取後の穀稈が、その株元でフィードチェン41により受け継がれ、排藁処理部7に向かって後方へ搬送される。この搬送中に、穀稈の穂先部が扱胴42により脱穀され、その穀粒や藁屑や塵埃を含む処理物が選別部5へ落下する過程で受網45により選別される。扱胴42により脱穀されなかった未処理物は、扱室44から送塵口を介して処理室46に搬送されたあと、処理胴43により処理され、その処理物が選別部5へ落下する過程で処理胴網により選別される。
【0046】
選別部5では、揺動選別装置本体が揺動機構により揺動されている状態で、脱穀部4の受網45から落下した処理物の層が前後フィードパン51・52により均平化されて、処理物が比重選別される。前フィードパン51による選別後のものが、チャフシーブ53により粗選別される。後フィードパン52による選別後のものが、グレンシーブ54により選別される。また、脱穀部4の受網45及び処理胴網から落下した処理物が、チャフシーブ53により粗選別される。チャフシーブ53による選別後のものが、グレンシーブ54と唐箕ファン17、プレファン57及びセカンドファン58からの選別風とにより精選別される。
【0047】
チャフシーブ53及びグレンシーブ54から落下する穀粒や藁屑などが、唐箕ファン17及びプレファン57からの選別風により精選別される。このとき、比重が大きく重い穀粒は、一番物として選別風に逆らって落下し、一番搬送装置151に収容される。これよりも比重が小さく軽いものは、唐箕ファン17及びプレファン57からの選別風により、さらにはセカンドファン58からの選別風により二番搬送装置152の上方へ向けて飛ばされる。
【0048】
この飛ばされたものの中でも比較的重いもの、例えば枝梗付穀粒は、二番物として落下し、二番搬送装置152に収容される。これを除いたものは、唐箕ファン17、プレファン57及びセカンドファン58からの選別風によりストローラック55へ向けてさらに飛ばされる。そのうちの藁屑は、ストローラック55によりほぐされる。この藁屑の中にある穀粒は、二番物として落下し、二番搬送装置152に収容される。他の塵埃などは、吸引ファン59により吸引されて、三番口から外部に排出される。
【0049】
一番物は、一番搬送装置151により一番揚穀装置155に搬送され、つづいて一番揚穀装置155により穀粒貯溜部6のグレンタンク61に搬送されて、グレンタンク61に貯溜される。二番物は、二番搬送装置152により二番還元装置156に搬送され、つづいて二番還元装置156により脱穀部4の扱室44又は揺動選別装置50の上方空間へ搬送されて、脱穀されて、又は脱穀されずに、揺動選別装置及び風選別装置により再選別される。
【0050】
次に、チャフシーブ53の構成について説明する。
【0051】
図2から図4に示すように、チャフシーブ53は、多数のチャフフィン16・16・・・と、左右一対の第一枢支片137・137と、左右一対の第二枢支片138・138で構成される。左右の第一枢支片137は、前後方向に延長され、それぞれ揺動選別装置本体の左右の側板に外側面に固定される。左右の第二枢支片138は、左右の第一枢支片137と平行に前後方向に延長され、それぞれ左右の第一枢支片137の真下に所定間隔を隔てて配置される。
【0052】
多数のチャフフィン16・16・・・は、前後方向に所定間隔ごとに配置され、前低後高状に傾斜した状態で、左右の第一枢支片137・137の間に横架されるとともに、左右の第二枢支片138・138の間に横架される。各チャフフィン16の左右両側の上端縁部は前記側板の孔を貫通して第一枢支片137に枢支され、左右両側の下端縁部は前記側板の長孔を貫通して第二枢支片138に枢支される。こうして、第二枢支片138が第一枢支片137に沿って前後方向へ移動することによって、各チャフフィン16が左右両側の上端縁部を支点として揺動され、各チャフフィン16の角度が変更されることとなる。
【0053】
図3に示すように、各チャフフィン16に対しては、その角度を調節するための角度調節装置13が設けられる。角度調節装置13は、チャフアクチュエータ130、第一ギヤアーム131、ワイヤ132、調節レバー134、付勢部材136等を備える。角度調節装置13は、多数のチャフフィン16・16・・・の角度を予め設定された角度に対して増大または減少するように調節する。
【0054】
チャフアクチュエータ130は、電動式モータで構成される。チャフアクチュエータ130の出力軸には、第一小径ギヤ139が固設される。第一ギヤアーム131は、第一小径ギヤ139と噛合可能な歯部と、半径方向外側に突出する突出部131aとを備えて構成される。そして、第一小径ギヤ139と第一ギヤアーム131の歯部とが噛合され、第一ギヤアーム131の突出部131aとワイヤ132の一端部とが連結される。
【0055】
調節レバー134は板状部材で構成される。調節レバー134は、側面視で五角形状に形成され、その長手方向を略上下方向として前低後高状に傾斜した状態で、左側第一枢支片137及び第二枢支片138の左側方に配置される。調節レバー134は、その上端部で左側第一枢支片137の前後中途部に支軸135を介して回動自在に支持されるとともに、その上下中途部で左側第二枢支片138の前後中途部に回動自在に枢結される。調節レバー134の下端部には、ワイヤ132の他端部が前方から連結される。つまり、調節レバー134の下端部が、第一ギヤアーム131の突出部131aとワイヤ132を介して連係される。
【0056】
また、調節レバー134の下端部には、ばね等からなる付勢部材136の一端部が後方から連結される。そして、調節レバー134が、ワイヤ132の引張方向(前方向)とは逆方向(後方向)に付勢部材136により付勢される。調節レバー134が付勢部材136の付勢力に従って支軸135を中心に後方向へ回動するとき、各第二枢支片138・138が各第一枢支片137・137に対して後方へ移動して、各チャフフィン16が左右両側の上端縁部を中心に回動し、各チャフフィン16の角度が増大方向へ変化する。
【0057】
このような構成により、角度調節装置13においては、チャフアクチュエータ130を駆動制御して、第一ギヤアーム131、ワイヤ132、調節レバー134、第二枢支片138を介して、各チャフフィン16の角度が調節可能とされる。
【0058】
次に、唐箕ファン17の構成について説明する。
【0059】
図2及び図3に示すように、唐箕ファン17は、回転軸171や複数の羽根体172・172・・・などで構成される。回転軸171は、軸心方向を左右方向として、その左右両端部が下部機枠10における左右の側板10a・10aの前下部に開口された吸入口176の上下中途部に前後方向に架設したプレート177に軸支される。複数の羽根体172・172・・・は、それぞれ回転軸171から支持部材174・174・・・を介して当該回転軸171の半径方向に放射状に突設される。そして、唐箕ファン17先端の前軌跡の前外側は、前被覆板173により覆われている。
【0060】
唐箕ファン17は、下部機枠10における左右の側板10a・10aとその間に横設された前被覆板173からなるケースに収容される。唐箕ファン17の左右両側方(回転軸171の軸方向両端部付近)には、吸入口176・176が設けられる。吸入口176・176は、それぞれ下部機枠10における左右の側板10a・10aに形成されて、左右方向を向いて開口される。唐箕ファン17の後方には、吐出口175が略前後方向を向いて開口される。これにより、唐箕ファン17の回転時に、空気が吸入口176・176から前被覆板173の内部に導入されて、唐箕ファン17による選別風が発生し、この選別風が吐出口175から選別部5の後部へ、即ち選別方向の下手側へ向けて送られることとなる。
【0061】
図3に示すように、唐箕ファン17の風量を調節するための風量調節装置14が設けられる。風量調節装置14は、唐箕アクチュエータ140、第二ギヤアーム141、変速ロッド142、カム機構143、割りプーリ144を備える。風量調節装置14は、唐箕ファン17の風量を予め設定された風量(回転数)に対して増大または減少するように調節する。
【0062】
唐箕アクチュエータ140は、電動式モータで構成される。唐箕アクチュエータ140の出力軸には、第二小径ギヤ145が固設される。第二ギヤアーム141は、第二小径ギヤと噛合可能な歯部と、半径方向外側に突出する突出部141aとを備えて構成される。そして、第二ギヤアーム141の歯部が第二小径ギヤ145と噛合され、第二ギヤアーム141の突出部141aが変速ロッド142の一端部と連結される。
【0063】
カム機構143は、回転軸171に外嵌されるとともにプレート177に固設される。カム機構143は、左右方向の軸心を有する円筒形状の固定変速カムと、この固定変速カムと略同一形状の可動変速カムとで構成される。固定変速カム及び可動変速カムには、それぞれ軸心方向にカム部が形成され、固定変速カムのカム部と可動変速カムのカム部とが当接される。可動変速カムには、鍔部が形成され、この鍔部には、変速ロッド142の他端部がボルト146により枢支される。つまり、可動変速カムの鍔部が、第二ギヤアーム141の突出部141aと、上下方向に延伸する変速ロッド142を介して連係される。この変速ロッド142の上下の動きに伴って可動変速カムが回動する。そして、可動変速カムの回動によって、可動変速カムのカム部と当接される固定変速カムのカム部の面積が変化し、その変化量に応じて可動変速カムが左右方向に回転軸171上を移動する。
【0064】
割りプーリ144は、回転軸171に相対回転不能に外嵌される。割りプーリ144は、円錐台形状の可動プーリと、この可動プーリと正対位置に配置された円錐台形状の固定プーリとで構成される。割りプーリ144は、カム機構143の左側方に配置されて、可動プーリと可動変速カムとが当接される。可動プーリは、可動変速カムが左右方向に移動する際、その移動に伴って当該可動変速カムと一体的に左右方向へ移動する。
【0065】
固定プーリと可動プーリとの間には、ベルト溝が形成される。ベルト溝幅は、可動プーリが固定プーリに対して左右方向に移動することにより、狭くまたは広く変更されることとなる。このベルト溝には、Vベルト等で構成されるベルト147が巻回される。ベルト147は、テンションプーリ148とともにカウンタケースの出力軸に固設された入力プーリに巻回されて、カウンタケースの出力軸に伝達されたエンジン9の動力が、割りプーリ144に伝達され、唐箕ファン17の回転軸171が回転する。
【0066】
このような構成により、風量調節装置14においては、唐箕アクチュエータ140を駆動制御して、第二ギヤアーム141、変速ロッド142、カム機構143を介し、割りプーリ144の幅を変更する。こうして、唐箕ファン17の風量(回転数)が調節可能とされる。
【0067】
次に、チャフアクチュエータ130及び唐箕アクチュエータ140の制御構成について説明する。
【0068】
コンバイン1においては、制御装置12が機体の任意位置に設けられる。制御装置12は、CPUや、ROM、RAM、インターフェイス、バスなどを備える。図4に示すように、制御装置12は、第一設定操作具84と、第二設定操作具85と、排藁量検出装置160と、処理物量検出装置163と、チャフ角度検出装置167と、唐箕風量検出装置170と接続される。
制御装置12は、また、刈取部3への動力の継断を行う刈取クラッチの「入」「切」を検知する刈取スイッチ121と、脱穀部4への動力の継断を行う脱穀クラッチの「入」「切」を検知する脱穀スイッチ122と、刈取部3の回転数をエンジン9の回転数に同調させる刈取クイックペダルの「ON」「OFF」を検知する流込スイッチ123と接続される。制御装置12は、また、チャフアクチュエータ130と、唐箕アクチュエータ140と、接続される。
【0069】
第一設定操作具84は、チャフフィン16の角度を人為的に補正するものである。本実施形態においては、第一設定操作具84は、ダイヤル84aと、センサ部84bとを有し、操縦部8の操作パネル近傍に配置される。第一設定操作具84では、ダイヤル84aが回動操作される場合、ダイヤル84aの角度(以下、「選別ダイヤル角度A」と記す)がセンサ部84bで検出される。センサ部84bは、選別ダイヤル角度Aを検出信号として制御装置12に送信する。
【0070】
第二設定操作具85は、唐箕ファン17の風量を人為的に補正するものである。本実施形態においては、第二設定操作具85は、ダイヤル85aと、センサ部85bとを有し、操縦部8の操作パネル近傍に配置される。第二設定操作具85では、ダイヤル85aが回動操作される場合、ダイヤル85aの角度(以下、「唐箕ダイヤル角度E」と記す)がセンサ部85bで検出される。センサ部85bは、唐箕ダイヤル角度Eを検出信号として制御装置12に送信する。
【0071】
排藁量検出装置160は、排藁処理部7において排藁搬送装置71により搬送される脱穀後の排藁量を検出する装置である。
【0072】
ここで、排藁搬送装置71は、排藁チェン74、挟扼杆75、支持杆76などから構成される。排藁搬送装置71では、挟扼杆75が、排藁チェン74の長手方向に沿って延長され、排藁チェン74の下方でその下部と対向配置される。そして、この挟扼杆75が、支持杆76により機体後部側に排藁チェン74の下部に対して近接離間方向、即ち上下方向へ移動可能に下方から支持されつつ、付勢部材77により当該支持杆76を介して排藁チェン74の下部に対して近接する方向へ移動するように常時付勢される。こうして、フィードチェン41から搬送されてきた脱穀後の排藁が、排藁チェン74の下部と、搬送中の排藁の量に応じて上下方向へ移動する挟扼杆75とに挟持され、排藁チェン74の回転駆動に従って後方へ搬送される。
【0073】
排藁量検出装置160は、アーム部161と、ポテンショメータ等からなるセンサ部162とを有し、排藁搬送装置71の下方に配置される。排藁量検出装置160では、アーム部161の一端部がセンサ部162の回転軸に上下方向へ回転自在に取り付けられ、アーム部161の他端部が排藁搬送装置71の支持杆76の下端に下方から上方へ向かって常時圧接される。そして、挟扼杆75が支持杆76とともに排藁チェン74と挟扼杆75とにより挟持されつつ搬送される排藁の量(層厚)に応じて上下方向へ移動される場合、アーム部161がその支持杆76の移動にあわせて同一方向へ回動される。そして、アーム部161の角度(以下、「排藁センサ角度B」と記す)が、センサ部162で検出される。センサ部162は、排藁センサ角度Bを検出信号として制御装置12に送信する。
【0074】
処理物量検出装置163は、選別部5において揺動選別装置50のチャフシーブ53上の処理物量を検出する装置である。本実施形態においては処理物量検出装置163は、検出板164と、復帰板165と、ポテンショメータ等からなるセンサ部166とを有し、チャフシーブ53の上方に配置される。処理物量検出装置163では、検出板164の一端部が、センサ部166の回転軸に前後方向へ回転自在に取り付けられ、検出板164の他端部が、検出板164が初期位置にあるとき、チャフフィン16から所定距離だけ上方に位置するように配置される。復帰板165が検出板164の後側に一体的に取り付けられる。そして、処理物が前方から流れてきて検出板164に接触する場合には、検出板164が処理物量の量(流圧)に応じて初期位置から後方へ回動される。一方、処理物が検出板164に接触しない場合には、検出板164が復帰板165の重みにより初期位置に保持される。そして、検出板164の角度(以下、「シーブセンサ角度C」と記す)がセンサ部166で検出される。センサ部166は、シーブセンサ角度Cを検出信号として制御装置12に送信する。
【0075】
チャフ角度検出装置167は、チャフフィン16の角度を検出するものである。本実施形態においては、チャフ角度検出装置167は、アーム部168と、ポテンショメータ等からなるセンサ部169とを有し、第一ギヤアーム131の前方に配置される。チャフ角度検出装置167では、アーム部168の一端部がセンサ部169の回転軸に上下方向へ回転自在に取り付けられ、アーム部168の他端部が第一ギヤアーム131の突出部131aから左側方へ突出する突起に下方から上方へ向かって常時圧接される。そして、第一ギヤアーム131の突出部131aがチャフアクチュエータ130の駆動量に応じて上下方向へ移動される場合、アーム部168がその突出部131aの移動にあわせて同一方向へ回動される。そして、アーム部168の角度(以下、「第一ギヤアーム角度D」と記す)がセンサ部169で検出される。センサ部169は、第一ギヤアーム角度Dを検出信号として制御装置12に送信する。
【0076】
唐箕風量検出装置170は、唐箕ファン17により前被覆板173から選別方向の下手側向けて送られる唐箕ファン17の風量を検出する装置である。本実施形態においては、図3に示すように、唐箕風量検出装置170は、磁気や光を用いた非接触式の回転センサからなり、唐箕ファン17の回転軸171の近傍に配置される。唐箕風量検出装置170では、唐箕ファン17が回転駆動される場合、回転軸171の回転速度に応じた波形Fが検出される。唐箕風量検出装置170は、検出された波形Fを、制御装置12に送信する。
【0077】
なお、第一設定操作具84、第二設定操作具85、排藁量検出装置160、処理物量検出装置163、チャフ角度検出装置167、唐箕風量検出装置170の具体的な構成は特に限定するものではなく、前述の構成はその一例である。
【0078】
次に、制御装置12におけるのチャフアクチュエータ130及び唐箕アクチュエータ140の具体的な制御態様について説明する。
【0079】
チャフアクチュエータ130におけるチャフフィン16の角度目標値であるチャフフィン角度目標値θ*は、数1に示すように、選別ダイヤル補正角度αと、排藁補正角度βと、シーブ補正角度γと、手扱ぎ補正角度δと、刈終り補正角度ηと、初期角度φとの合計値とされる。
【0080】
【数1】
【0081】
ただし、コンバイン1は、図5に示すように、刈取スイッチ121、脱穀スイッチ122、流込スイッチ123の「ON」「OFF」や排藁センサ角度Bの値に応じて、通常作業、手扱ぎ作業、刈終り作業に移行する。そして、各作業状態に応じて、これらの補正角度(選別ダイヤル補正角度α、排藁補正角度β、シーブ補正角度γ、手扱ぎ補正角度δ、刈終り補正角度η)がチャフフィン角度目標値θ*に反映されるかどうかが決定される(表1参照)。補正角度が反映される時は○で表され、補正角度が反映されず、無効とされる時は×で表される。
【0082】
【表1】
【0083】
ここで、選別ダイヤル補正角度αは、第二設定操作具85で設定された選別ダイヤル角度Aに基づいて制御装置12により算出される値である。制御装置12には、図6(a)に示す選別ダイヤル角度Aと選別ダイヤル補正角度αとの関係を示すマップが記憶される。制御装置12は、選別ダイヤル角度Aに基づいて、実線で示した当該マップから選別ダイヤル補正角度αを算出する。なお、図6(a)に示すマップは一例であり、選別ダイヤル角度Aと選別ダイヤル補正角度αとの関係はこれに限るものではなく、例えば、二点鎖線に示すように、選別ダイヤル角度Aが小さい範囲では、選別ダイヤル補正角度αの増加率を小さくしてもよい。選別ダイヤル補正角度αは、通常作業、手扱ぎ作業、刈終り作業時は反映される。
【0084】
排藁補正角度βは、排藁量検出装置160で検出された排藁センサ角度Bに基づいて制御装置12により算出される値である。制御装置12には、図6(b)に示す排藁センサ角度Bと排藁補正角度βとの関係を示すマップが記憶される。制御装置12は、排藁センサ角度Bに基づいて、実線で示した当該マップから排藁補正角度βを算出する。なお、図6(b)に示すマップは一例であり、排藁センサ角度Bと排藁補正角度βとの関係はこれに限るものではなく、例えば、二点鎖線に示すように、排藁センサ角度Bが小さい範囲では、排藁補正角度βを零として、不感帯を設けるマップとしてもよい。排藁補正角度βは、通常作業時は反映され、手扱ぎ作業時及び刈終り作業時は無効とされる。
【0085】
シーブ補正角度γは、処理物量検出装置163で検出されたシーブセンサ角度Cに基づいて制御装置12により算出される値である。制御装置12には、図6(c)に示すシーブセンサ角度Cとシーブ補正角度γとの関係を示すマップが記憶される。制御装置12は、シーブセンサ角度Cに基づいて、実線で示した当該マップからシーブ補正角度γを算出する。なお、図6(c)に示すマップは一例であり、シーブセンサ角度Cとシーブ補正角度γとの関係はこれに限るものでなく、例えば、二点鎖線に示すように、シーブセンサ角度Cが大きい範囲では、シーブ補正角度γを一定値として、不感帯を設けるマップとしてもよい。排藁補正角度βは、通常作業、手扱ぎ作業、刈終り作業時は反映される。ただし、処理物量検出装置163が正常に動作しない場合は、無効とされる。また、刈終り作業時は無効としてもよい。
【0086】
手扱ぎ補正角度δは、正の一定値であり、予め任意の値に決定される。手扱ぎ補正角度δは、手扱ぎ作業時は反映され、通常作業時及び刈終り作業時は無効とされる。
【0087】
刈終り補正角度ηは、刈終り時に算出される値である(詳細は後述)。刈終り補正角度ηは、刈終り作業時は反映され、通常作業時及び手扱ぎ作業時は無効とされる。
【0088】
初期角度φは、補正角度を加味しない場合のチャフフィン16の角度である。初期角度φは、予め任意の値に決定される。初期角度φは常に反映される。
【0089】
チャフフィン角度θは、水平方向に対するチャフフィン16の角度である(図4参照)。チャフフィン角度θは、チャフ角度検出装置167で検出された第一ギヤアーム角度Dに基づいて制御装置12により算出される値である。制御装置12には、図6(d)に示す第一ギヤアーム角度Dとチャフフィン角度θとの関係を示すマップが記憶される。制御装置12は、第一ギヤアーム角度Dに基づいて、当該マップからチャフフィン角度θを決定する。なお、図6(d)に示すマップは一例であり、第一ギヤアーム角度Dとチャフフィン角度θとの関係はこれに限るものではない。当該マップは、試験等により予め導き出されるものとされる。
【0090】
そして、制御装置12は、各作業状態に応じて、チャフフィン角度θが、数1で表されるチャフフィン角度目標値θ*と一致するように、チャフアクチュエータ130を駆動制御する。
【0091】
唐箕アクチュエータ140における唐箕ファン17の回転数目標値である唐箕ファン回転数目標値N*は、数2に示すように、唐箕ダイヤル補正回転数Pと、排藁補正回転数Qと、シーブ補正回転数R、手扱ぎ補正回転数Sと、刈終り補正回転数Uと、初期回転数Vと、との合計値とされる。
【0092】
【数2】
【0093】
ただし、コンバイン1は、図6に示すように、刈取スイッチ121、脱穀スイッチ122、流込スイッチ123の「ON」「OFF」や排藁センサ角度Bの値に応じて、通常作業、手扱ぎ作業、刈終り作業に移行する。そして、各作業状態に応じて、これらの補正回転数(唐箕ダイヤル補正回転数P、排藁補正回転数Q、シーブ補正回転数R、手扱ぎ補正回転数S、刈終り補正回転数U)が唐箕ファン回転数目標値N*に反映されるかどうかが決定される(表2参照)。補正回転数が反映される時は○で表され、補正角度が反映されず、無効とされる時は×で表される。
【0094】
【表2】
【0095】
ここで、唐箕ダイヤル補正回転数Pは、第二設定操作具85で設定された唐箕ダイヤル角度Eに基づいて制御装置12により算出される値である。制御装置12には、図6(e)に示す唐箕ダイヤル角度Eと唐箕ダイヤル補正回転数Pとの関係を示すマップが記憶される。制御装置12は、唐箕ダイヤル角度Eに基づいて、実線で示した当該マップから唐箕ダイヤル補正回転数Pを算出する。なお、図6(e)に示すマップは一例であり、唐箕ダイヤル角度Eと唐箕ダイヤル補正回転数Pとの関係はこれに限るものではなく、例えば、二点鎖線に示すように、唐箕ダイヤル角度Eが小さい範囲では、唐箕ダイヤル補正回転数Pの増加率を小さくしてもよい。唐箕ダイヤル補正回転数Pは、通常作業、手扱ぎ作業、刈終り作業時は反映される。
【0096】
排藁補正回転数Qは、排藁量検出装置160で検出された排藁センサ角度Bに基づいて制御装置12により算出される値である。制御装置12には、図6(f)に示す排藁センサ角度Bと排藁補正回転数Qとの関係を示すマップが記憶される。制御装置12は、排藁センサ角度Bに基づいて、実線で示した当該マップから排藁補正回転数Qを算出する。なお、図6(f)に示すマップは一例であり、排藁センサ角度Bと排藁補正回転数Qとの関係はこれに限るものでなく、例えば、二点鎖線に示すように、排藁センサ角度Bが小さい範囲では、排藁補正回転数Qを零として、不感帯を設けるマップとしてもよい。排藁補正回転数Qは、通常作業時は反映され、手扱ぎ作業時及び刈終り作業時は無効とされる。
【0097】
シーブ補正回転数Rは、処理物量検出装置163で検出されたシーブセンサ角度Cに基づいて制御装置12により算出される値である。制御装置12には、図6(g)に示すシーブセンサ角度Cとシーブ補正回転数Rとの関係を示すマップが記憶される。制御装置12は、シーブセンサ角度Cに基づいて、実線で示した当該マップからシーブ補正回転数Rを算出する。なお、図6(g)に示すマップは一例であり、シーブセンサ角度Cとシーブ補正回転数Rとの関係はこれに限るものでなく、例えば、二点鎖線に示すように、シーブセンサ角度Cが大きい範囲では、シーブ補正回転数Rを一定値として、不感帯を設けるマップとしてもよい。シーブ補正回転数Rは、通常作業、手扱ぎ作業、刈終り作業時は反映される。ただし、処理物量検出装置163が正常に動作しない場合は、無効とする。また、刈終り作業時は、無効としてもよい。
【0098】
手扱ぎ補正回転数Sは、負の一定値であり、予め任意の値に決定される。手扱ぎ補正回転数Sは、手扱ぎ作業時は反映され、通常作業時及び刈終り作業時は無効とされる。
【0099】
刈終り補正回転数Uは、刈終り時に算出される値である(詳細は後述)。刈終り補正回転数Uは、刈終り作業時は反映され、通常作業時及び手扱ぎ作業時は無効とされる。
【0100】
初期回転数Vは、補正回転数を加味しない場合の唐箕ファン17の回転数である。初期回転数Vは、予め任意の値に決定される。初期回転数Vは常に反映される。
【0101】
唐箕ファン回転数Nは、唐箕ファン17の回転数として唐箕風量検出装置170で検出した波形Fに基づいて求められる。制御装置12には、図6(h)に示すような波形Fが送信される。制御装置12は、波形Fの周期(周波数)に応じて、唐箕ファン回転数Nを求める。
【0102】
そして、制御装置12は、各作業状態に応じて、唐箕ファン回転数Nが、数2で表される唐箕ファン回転数目標値N*と一致するように、唐箕アクチュエータ140を駆動制御する。
【0103】
具体的には、通常作業時は、チャフフィン角度目標値θ*は、手扱ぎ補正角度δ及び刈終り補正角度ηを無効として、選別ダイヤル補正角度αと、排藁補正角度βと、シーブ補正角度γと、初期角度φとの合計値となり、唐箕ファン回転数目標値N*は、手扱ぎ補正回転数S及び刈終り補正回転数Uを無効として、唐箕ダイヤル補正回転数Pと、排藁補正回転数Qと、シーブ補正回転数Rと、初期回転数Vとの合計値となる(表1及び表2参照)。そして、制御装置12は、チャフフィン角度θが、このチャフフィン角度目標値θ*となるように、チャフアクチュエータ130を駆動制御しつつ、唐箕ファン回転数Nが、この唐箕ファン目標回転数N*となるように、唐箕アクチュエータ140を駆動制御する。
【0104】
この時、コンバイン1は、通常作業時において、排藁量及び処理物量を排藁センサ角度B及びシーブセンサ角度Cとして電気的に検出して、これらの値に基づいてチャフアクチュエータ130及び唐箕アクチュエータ140を個別に駆動制御する。詳細には、排藁センサ角度Bに排藁補正角度βとの関係を示すマップと、シーブセンサ角度Cとシーブ補正角度γとの関係を示すマップと、排藁センサ角度Bと排藁補正回転数Qとの関係を示すマップと、シーブセンサ角度Cとシーブ補正回転数Rとの関係を示すマップとの関係を示すマップと、を適宜調節して、チャフアクチュエータ130及び唐箕アクチュエータ140を個別に駆動制御する。これにより、チャフフィン16の角度及び唐箕ファン17の風量を広い範囲で個別に制御することが可能となり、精度の高い処理物の選別が可能となる。
【0105】
次に、本発明に係る刈終り作業の実施形態を説明する。
【0106】
コンバイン1は、図5に示すように、通常作業にある場合に、刈取スイッチ121を「ON」から「OFF」、または、脱穀スイッチ122を「ON」から「OFF」、または、排藁量検出装置160で検出された排藁センサ角度Bが所定の閾値以下、または、流込スイッチ123を「ON」(刈取部3の回転数が、エンジン9の回転数に同調)とした時、刈終り作業に移行する。コンバイン1は、手扱ぎ作業にある場合に、刈取スイッチ121を「ON」、かつ、流込スイッチ123を「ON」(刈取部3の回転数が、エンジン9の回転数に同調)とした時、刈終り作業に移行する。コンバイン1は、待機状態にある場合に、脱穀スイッチ122を「ON」、かつ、流込スイッチ123を「ON」(刈取部3の回転数が、エンジン9の回転数に同調)とした時、刈終り作業に移行する。
【0107】
刈終り作業におけるチャフフィン16の角度を調節するための制御の第一実施形態を説明する。
【0108】
第一実施形態においては、図8(a)に示すように、検出された排藁センサ角度Bが閾値であるB1以下となった時、コンバイン1は通常作業から刈終り作業に移行する。刈終り作業に移行した時を、刈終り時t1とする。
尚、閾値であるB1と比較する排藁センサ角度Bは、刈終り時t1から過去数秒間遡った排藁量の平均値Baveとしてもよい。これにより、刈終り作業への切り替えを、より適切なタイミングで移行することができる。
【0109】
刈終り時t1に、図7(a)及び図8(d)に示すように、制御装置12は、刈終り時t1から遡った、過去所定時間Ta内におけるチャフフィン16の平均角度θaveを算出する。具体的には、制御装置12には、予め任意の値に設定された過去所定時間Ta内のチャフフィン角度θが常時記憶される構成とされる。そして、刈終り時t1から、過去所定時間Taを減じた時間を積算開始時t2として、制御装置12は、積算開始時t2から刈終り時t1までの間で検出されたチャフフィン角度θを時間積分し(斜線部の面積に相当)、この演算値に過去所定時間Taを除算して、平均角度θaveを算出する。
【0110】
次に、制御装置12は、チャフフィン16の平均角度θaveに基づいて、設定時間Tchafを算出する。具体的には、制御装置12には、予め図7(b)に示すような平均角度θaveと設定時間Tchafとの関係を示すマップが記憶される。制御装置12は、平均角度θaveに基づいて、当該マップから設定時間Tchafを算出する。算出した設定時間Tchafは、刈終り作業を行う時間とされる。つまり、刈終り時t1から設定時間Tchafをカウントして、すなわち、刈終り時t1から時間の経過とともに設定時間Tchafを減少させて、設定時間Tchafが零となった時(作業終了時t3とする)に刈終り作業を終了する。
ただし、図7(b)に示すマップは一例であり、チャフフィン16の平均角度θaveと設定時間Tchafとの関係はこれに限るものではない。当該マップは、試験等により導き出されるものとされる。尚、刈終り時t1におけるチャフフィン16の角度(チャフフィン角度θ1)に基づいて、設定時間Tchafを算出してもよい。
【0111】
次に、制御装置12は、設定時間Tchafのカウント中はチャフフィン角度目標値θ*を徐々に減少させて、設定時間Tchafのカウント終了後(作業終了時t3)に角度目標値θ3*となるように決定する。すなわち、刈終り時t1のチャフフィン16の角度目標値θ1*を徐々に減じて、カウント終了後(作業終了時t3)に角度目標値θ3*となるようにチャフフィン角度目標値θ*を決定する。
【0112】
ここで、角度目標値θ1*は、数3に示すように、選別ダイヤル補正角度αと、通常作業時で算出された刈終り時t1における排藁補正角度β1及びシーブ補正角度γ1と、初期角度φとの合計値で表される。そして、この排藁補正角度β1及びシーブ補正角度γ1の合計値は刈終り補正角度ηとされる。
【0113】
【数3】
【0114】
角度目標値θ3*は、予め設定されたチャフフィン16の基準角度θ3の目標値である。角度目標値θ3*は、数4に示すように、選別ダイヤル補正角度αと、初期角度φとの合計値で表される。
【0115】
【数4】
【0116】
すなわち、設定時間Tchafのカウント中は、制御装置12は、刈終り補正角度ηを徐々に減少させて、設定時間Tのカウント終了後(作業終了時t3)に、この刈終り補正角度ηが零となるようにチャフフィン角度目標値θ*を決定する。
【0117】
言い換えれば、図8(d)に示すように、制御装置12は、設定時間Tchafのカウント中は、チャフフィン角度θを徐々に減少させて、カウント終了後(作業終了時t3)に予め設定された基準角度θ3となるように、チャフアクチュエータ130を駆動制御する。
【0118】
本実施形態においては、制御装置12は、設定時間Tchafのカウント中は、チャフフィン角度θが徐々に一定の変化率で減少するように、チャフアクチュエータ130を駆動制御する。ここで、一定の変化率とは、刈終り時t1におけるチャフフィン角度θ1(または、刈終り補正角度η)に設定時間Tchafを除算したものとされ、設定時間Tchafと、刈終り時t1におけるチャフフィン角度θ1(または、刈終り補正角度η)に応じて変化するものとされる。ただし、チャフフィン角度θの変化率は前述に限定するものでなく、任意に設定可能である。
【0119】
そして、設定時間Tchafのカウント終了後は、コンバイン1は、刈終り作業から待機状態に移行する。
【0120】
このように、刈終り作業におけるチャフフィン16の角度を調節するための制御の第一実施形態では、脱穀処理された処理物を、チャフフィン16を含む揺動選別装置50及び唐箕ファン17で選別する選別部3を有するコンバイン1であって、前記チャフフィン16の角度を調節可能なチャフアクチュエータ130と、前記チャフフィン16の角度を検出するチャフ角度検出装置167と、前記チャフアクチュエータ130を制御する制御装置12と、を備え、制御装置12は、過去所定時間Ta内におけるチャフフィン16の平均角度θaveを算出して、この平均角度φaveに基づいて刈終り作業を行う設定時間Tchafを算出し、前記設定時間Tchafのカウント中はチャフフィン角度θを徐々に減少させて、前記設定時間Tchafのカウント終了後に予め設定された基準角度θ3となるようにチャフアクチュエータ130を駆動制御するものである。
【0121】
これにより、刈終り作業時に、検出する排藁量が少なくなる(零となる)時であっても(図8(a)参照)、チャフフィン16の角度を適切に保ちつつ、時間の経過とともに徐々に減少させるので、揺動選別装置50上の処理物が適切に選別されて、選別精度が向上する。
【0122】
また、設定時間Tchafは、作業作業時の平均角度φaveに基づいて決定され、この平均角度φaveは、排藁量となる排藁センサ角度B及び処理物量となるシーブセンサ角度Cを基にして算出される。すなわち、設定時間Tchafは、揺動選別装置50で選別される処理物量に対応した値となる。この設定時間Tchafに基づいて、チャフフィン16が制御されるため、制御装置12は、刈終り作業時においても処理物量を適切に把握し、適切に選別を行うことができる。
【0123】
次に、刈終り作業におけるチャフフィン16の角度を調節するための制御の第二実施形態を説明する。ただし、第一実施形態と異なる部分を中心に説明する。
【0124】
図9(a)に示すように、仮に、前記設定時間Tchafのカウント中にシーブセンサ角度Cが減少から増加に変わり、その後、シーブセンサ角度Cが増加から減少に変わったとする。この時、このシーブセンサ角度Cが減少から増加に変わった時を減少停止時t4とし、増加から減少に変わった時を減少再開時t5とし、増加している時間を増加時間Tbとする。
【0125】
図9(b)に示すように、制御装置12は、増加時間Tbの間(減少停止時t4から、減少再開時t5までの間)は、前記設定時間Tchafのカウントを停止して、チャフフィン角度目標値θ*の減少を停止する。本実施形態においては、増加時間Tbの間は、チャフフィン角度目標値θ*を減少停止時t4における角度目標値θ4*に保持する。そして、増加時間Tbが経過後は、前記設定時間Tchafのカウントを再開して、チャフフィン角度目標値θ*の減少を再開する。すなわち、増加時間Tbが経過後は、チャフフィン角度目標値θ*を角度目標値θ4*から徐々に減少させて、作業終了時t6に、角度目標値θ3*となるように、チャフフィン角度目標値θ*を決定する。作業終了時t6は、作業終了時t3に増加時間Tbを加算した値である。
【0126】
言い換えれば、制御装置12は、増加時間Tbの間(減少停止時t4から減少再開時t5までの間)は、前記設定時間Tchafのカウントを停止して、チャフフィン角度θの減少を停止する。本実施形態においては、増加時間Tbの間は、チャフフィン角度θを減少停止時t4のチャフフィン角度θ4に保持する。そして、増加時間Tbが経過後は、前記設定時間Tchafのカウントを再開して、チャフフィン角度θの減少を再開する。すなわち、増加時間Tbが経過後は、チャフフィン角度θをチャフフィン角度θ4から徐々に減少させて、作業終了時t6に基準角度θ3となるように、チャフアクチュエータ130を駆動制御する。本実施形態においては、設定時間Tchaf経過中におけるチャフフィン角度θの変化率は、刈終り時t1に設定された変化率となるため、作業終了時t6に待機状態に移行する。
【0127】
このように、刈終り作業におけるチャフフィン16の角度を調節するための制御の第二実施形態では、コンバイン1は、前記揺動選別装置50上の処理物量を検出する処理物量検出装置163をさらに備え、前記制御装置12は、前記設定時間Tchafのカウント中に前記処理物量検出装置163の検出値が減少から増加に変わった時、前記設定時間Tchafのカウントを停止し、この状態で前記処理物量検出装置163の検出値が増加から減少に変わった時、前記設定時間Tchafのカウントを再開するものである。
【0128】
これにより、制御装置12は、設定時間Tchafのカウント中に、揺動選別装置50上の処理物が一時的に増加した場合であっても、設定時間Tchafのカウントを停止してチャフフィン角度θの減少を停止させ、減少停止時t4のチャフフィン角度θ4に保持するように駆動制御するので、処理物が適切に選別されて、選別精度が向上する。
【0129】
次に、刈終り作業におけるチャフフィン16の角度を調節するための制御の第三実施形態を説明する。ただし、チャフフィン16の第一実施形態と異なる部分を中心に説明する。
【0130】
第三実施形態においては、図9(c)に示すように、コンバイン1は、通常作業にある場合に、刈取スイッチ121を「ON」から「OFF」とした時、刈終り作業に移行する。
【0131】
刈終り作業に移行した時、図9(d)に示すように、まず初めに、制御装置12は、刈終り時t1から過去所定時間Ta内におけるチャフフィン16の平均角度θaveを算出する。次に、チャフフィン16の平均角度θaveに基づいて、設定時間Tchafを算出する。ここまでは第一実施形態と同じ構成である。
【0132】
次に、制御装置12は、設定時間Tのうち初期の一定時間Tcのカウント中は、チャフフィン角度目標値θ*を、角度目標値θ1*に保持する。そして、一定時間Tcのカウント終了後に、この角度目標値θ1*から徐々に減少させて、設定時間Tchafのカウント終了後(作業終了時t3)に、角度目標値θ3*となるように、チャフフィン角度目標値θ*を決定する。
【0133】
言い換えれば、図9(d)に示すように、制御装置12は、設定時間Tchafのうち初期の一定時間Tcのカウントが終了するまでは、チャフフィン角度θを、刈終り時t1のチャフフィン角度θ1に保持して、一定時間Tcのカウント終了後にチャフフィン角度θ1から徐々に減少させて、設定時間Tchafのカウント終了後(作業終了時t3)に基準角度θ3となるように、チャフアクチュエータ130を駆動制御する。
【0134】
このように、刈終り作業におけるチャフフィン16の角度を調節するための制御の第三実施形態では、制御装置12は、設定時間Tchafのうち初期の一定時間Tcは、チャフフィン角度θを刈終り時t1のチャフフィン角度θ1に保持するように、前記チャフアクチュエータ130を駆動制御する。
【0135】
これにより、刈終り作業時の初期に、2番還元物等によって処理物が減少しない場合であっても、チャフフィン16の角度を適切に保持するので、処理物が適切に選別されて、選別精度が向上する。
【0136】
刈終り作業における唐箕ファン17の風量を調節するための制御の第一実施形態を説明する。
【0137】
第一実施形態においては、図10(a)に示すように、検出された排藁センサ角度Bが閾値であるB1以下となった時、コンバイン1は通常作業から刈終り作業に移行する。刈終り作業に移行した時を、刈終り時t1とする。
尚、閾値であるB1と比較する排藁センサ角度Bは、刈終り時t1から過去数秒間遡った排藁量の平均値Baveとしてもよい。これにより、刈終り作業への切り替えを、より適切なタイミングで移行することができる。
【0138】
刈終り時t1に、図7(c)及び図10(d)に示すように、制御装置12は、刈終り時t1から遡った、過去所定時間Ta内における唐箕ファン17の平均回転数Naveを算出する。具体的には、制御装置12には、予め任意の値に設定された過去所定時間Ta内の唐箕ファン回転数Nが常時記憶される構成とされる。そして、刈終り時t1から、過去所定時間Taを減じた時間を積算開始時t2として、制御装置12は、積算開始時t2から刈終り時t1までの間で検出された唐箕ファン回転数Nを時間積分し(斜線部の面積に相当)、この演算値に過去所定時間Taを除算して、平均回転数Naveを算出する。
【0139】
次に、制御装置12は、唐箕ファン17の平均回転数Naveに基づいて、設定時間Tfanを算出する。具体的には、制御装置12には、予め図7(d)に示すような平均回転数Naveと設定時間Tfanとの関係を示すマップが記憶される。制御装置12は、平均回転数Naveに基づいて、当該マップから設定時間Tfanを算出する。算出した設定時間Tfanは、刈終り作業を行う時間とされる。つまり、刈終り時t1から設定時間Tfanをカウントして、すなわち、刈終り時t1から時間の経過とともに設定時間Tfanを減少させて、設定時間Tfanが零となった時(作業終了時t3とする)に刈終り作業を終了する。
ただし、図7(d)に示すマップは一例であり、唐箕ファン17の平均回転数Naveと設定時間Tfanとの関係はこれに限るものではない。当該マップは、試験等により導き出されるものとされる。尚、刈終り時t1における唐箕ファン17の回転数(唐箕ファン回転数N1)に基づいて、設定時間Tfanを算出してもよい。
【0140】
次に、制御装置12は、設定時間Tfanのカウント中は唐箕ファン回転数目標値N*を徐々に減少させて、設定時間Tfanのカウント終了後(作業終了時t3)に回転数目標値N3*となるように決定する。すなわち、刈終り時t1の唐箕ファン17の回転数目標値N1*を徐々に減じて、カウント終了後(作業終了時t3)に回転数目標値N3*となるように唐箕ファン回転数目標値N*を決定する。
【0141】
ここで、回転数目標値N1*は、数5に示すように、唐箕ダイヤル補正回転数Pと、通常作業時で算出された刈終り時t1における排藁補正回転数Q1及びシーブ補正回転数R1と、初期回転数Vとの合計値で表される。そして、この排藁補正回転数Q1及びシーブ補正回転数R1の合計値は刈終り補正回転数Uとされる。
【0142】
【数5】
【0143】
回転数目標値N3*は、予め設定された唐箕ファン17の基準回転数N3の目標値である。回転数目標値N3*は、数6に示すように、唐箕ダイヤル補正回転数Pと、初期回転数Vとの合計値で表される。
【0144】
【数6】
【0145】
すなわち、設定時間Tchafのカウント中は、制御装置12は、刈終り補正回転数Uを徐々に減少させて、設定時間Tのカウント終了後(作業終了時t3)に、この刈終り補正回転数Uが零となるように唐箕ファン回転数目標値N*を決定する。
【0146】
言い換えれば、図10(d)に示すように、制御装置12は、設定時間Tfanのカウント中は、唐箕ファン回転数Nを徐々に減少させて、カウント終了後(作業終了時t3)に予め設定された基準回転数N3となるように、チャフアクチュエータ130を駆動制御する。
【0147】
本実施形態においては、制御装置12は、設定時間Tchafのカウント中は、唐箕ファン回転数Nが徐々に一定の変化率で減少するように、チャフアクチュエータ130を駆動制御する。ここで、一定の変化率とは、刈終り時t1における唐箕ファン回転数N1(または、刈終り補正回転数U)に設定時間Tfanを除算したものとされ、設定時間Tfanと、刈終り時t1における唐箕ファン回転数N1(または、刈終り補正角度η)に応じて変化するものとされる。ただし、唐箕ファン回転数Nの変化率は前述に限定するものでなく、任意に設定可能である。
【0148】
そして、設定時間Tfanのカウント終了後は、コンバイン1は、刈終り作業から待機状態に移行する。
【0149】
このように、刈終り作業における唐箕ファン17の回転数を調節するための制御の第一実施形態では、脱穀処理された処理物を、唐箕ファン17を含む揺動選別装置50及び唐箕ファン17で選別する選別部3を有するコンバイン1であって、前記唐箕ファン17の回転数を調節可能な唐箕アクチュエータ140と、前記唐箕ファン17の回転数を検出する唐箕風量検出装置170と、前記唐箕アクチュエータ140を制御する制御装置12と、を備え、制御装置12は、刈終り時t1から過去所定時間Ta内における唐箕ファン17の平均風量となる平均回転数Naveを算出して、この平均回転数Naveに基づいて刈終り作業を行う設定時間Tfanを算出し、設定時間Tfanのカウント中は、唐箕ファン回転数Nを徐々に減少させて、前記設定時間Tfanのカウント終了後に予め設定された基準回転数N3となるように、唐箕アクチュエータ140を駆動制御するものである。
【0150】
これにより、刈終り作業時に、検出する排藁量が少なくなる(零となる)時であっても(図10(a)参照)、唐箕ファン17の回転数を適切に保ちつつ、時間の経過とともに徐々に減少させるので、揺動選別装置50上の処理物が適切に選別されて、選別精度が向上する。
【0151】
また、設定時間Tfanは、作業作業時の平均回転数Naveに基づいて決定され、この平均回転数Naveは、排藁量となる排藁センサ角度B及び処理物量となるシーブセンサ角度Cを基にして算出される。すなわち、設定時間Tfanは、揺動選別装置50で選別される処理物量に対応した値となる。この設定時間Tfanに基づいて、唐箕ファン17が制御されるため、制御装置12は、刈終り作業時においても処理物量を適切に把握し、適切に選別を行うことができる。
【0152】
次に、刈終り作業における唐箕ファン17の回転数を調節するための制御の第二実施形態を説明する。ただし、第一実施形態と異なる部分を中心に説明する。
【0153】
図11(a)に示すように、仮に、前記設定時間Tfanが経過するまでの間にシーブセンサ角度Cが減少から増加に変わり、その後、シーブセンサ角度Cが増加から減少に変わったとする。この時、このシーブセンサ角度Cが減少から増加に変わった時を減少停止時t4とし、増加から減少に変わった時を減少再開時t5とし、増加している時間を増加時間Tbとする。
【0154】
図11(b)に示すように、制御装置12は、増加時間Tbの間(減少停止時t4から、減少再開時t5までの間)は、前記設定時間Tfanのカウントを停止して、唐箕ファン回転数目標値N*の減少を停止する。本実施形態においては、増加時間Tbの間は、唐箕ファン回転数目標値N*を、減少停止時t4における回転数目標値N4*に保持する。そして、増加時間Tbが経過後は、前記設定時間Tfanのカウントを再開して、唐箕ファン回転数目標値N*の減少を再開する。すなわち、増加時間Tbが経過後は、唐箕ファン回転数目標値N*を回転数目標値N4*から徐々に減少させて、作業終了時t6に、回転数目標値N3*となるように、唐箕ファン回転数目標値N*を決定する。作業終了時t6は、作業終了時t3に増加時間Tbを加算した値である。
【0155】
言い換えれば、制御装置12は、増加時間Tbの間(減少停止時t4から減少再開時t5までの間)は、前記設定時間Tfanのカウントを停止して、唐箕ファン回転数Nの減少を停止する。本実施形態においては、増加時間Tbの間は、唐箕ファン回転数Nを減少停止時t4の唐箕ファン回転数N4に保持する。そして、増加時間Tbが経過後は、前記設定時間Tchafのカウントを再開して、唐箕ファン回転数Nの減少を再開する。すなわち、増加時間Tbが経過後は、唐箕ファン回転数N4から徐々に減少させて、作業終了時t6に基準回転数N3となるように、唐箕アクチュエータ140を駆動制御する。本実施形態においては、設定時間Tchaf経過中における唐箕ファン回転数Nの変化率は、刈終り時t1に設定された変化率となるため、作業終了時t6に待機状態に移行する。
【0156】
このように、刈終り作業における唐箕ファン17の回転数を調節するための制御の第二実施形態では、コンバイン1は、前記揺動選別装置50上の処理物量を検出する処理物量検出装置163をさらに備え、前記制御装置12は、前記設定時間Tfanが経過するまでの間に前記処理物量検出装置163の検出値が減少から増加に変わった時、前記設定時間Tfanのカウントを停止し、この状態で前記処理物量検出装置163の検出値が増加から減少に変わった時、前記設定時間Tfanのカウントを再開するものである。
【0157】
これにより、制御装置12は、設定時間Tfanのカウント中に、揺動選別装置50上の処理物が一時的に増加した場合であっても、設定時間Tfanのカウントを停止して唐箕ファン回転数Nの減少を停止させ、減少停止時t4の唐箕ファン回転数N4に保持するように駆動制御するので、処理物が適切に選別されて、選別精度が向上する。
【0158】
次に、刈終り作業における唐箕ファン17の角度を調節するための制御の第三実施形態を説明する。ただし、唐箕ファン17の第一実施形態と異なる部分を中心に説明する。
【0159】
第三実施形態においては、図11(c)に示すように、コンバイン1は、通常作業にある場合に、刈取スイッチ121を「ON」から「OFF」とした時、刈終り作業に移行する。
【0160】
刈終り作業に移行した時、図11(d)に示すように、まず初めに、制御装置12は、刈終り時t1から過去所定時間Ta内における唐箕ファン17の平均回転数Naveを算出する。次に、唐箕ファン17の平均回転数Naveに基づいて、設定時間Tfanを算出する。ここまでは第一実施形態と同じ構成である。
【0161】
次に、制御装置12は、設定時間Tのうち初期の一定時間Tcのカウント中は、唐箕ファン回転数目標値N*を、回転数目標値N1*に保持する。そして、一定時間Tcのカウント終了後に、この回転数目標値N1*から徐々に減少させて、設定時間Tfanのカウント終了後(作業終了時t3)に、回転数目標値N3*となるように、唐箕ファン回転数目標値N*を決定する。
【0162】
言い換えれば、図11(d)に示すように、制御装置12は、設定時間Tfanのうち初期の一定時間Tcのカウントが終了するまでは、唐箕ファン回転数Nを、刈終り時t1の唐箕ファン回転数N1に保持して、一定時間Tcのカウント終了後に唐箕ファン回転数N1から徐々に減少させて、設定時間Tfanのカウントが終了後(作業終了時t3)に基準回転数N3となるように、唐箕アクチュエータ140を駆動制御する。
【0163】
このように、刈終り作業における唐箕ファン17の角度を調節するための制御の第三実施形態では、制御装置12は、設定時間Tfanのうち初期の一定時間Tcは、唐箕ファン回転数Nを刈終り時t1の唐箕ファン回転数N1に保持するように、前記唐箕アクチュエータ140を駆動制御する。
【0164】
これにより、刈終り作業時の初期に、2番還元物等によって処理物が減少しない場合であっても、唐箕ファン17の角度を適切に保持するので、処理物が適切に選別されて、選別精度が向上する。
【符号の説明】
【0165】
1 コンバイン
3 刈取部
4 脱穀部
5 選別部
12 制御装置
16 チャフフィン
17 唐箕ファン
53 チャフシーブ
130 チャフアクチュエータ
140 唐箕アクチュエータ
160 排藁量検出装置
163 処理物量検出装置
167 チャフ角度検出装置
170 唐箕風量検出装置
θ チャフフィン角度
θ* チャフフィン角度目標値
θave 平均角度
θ1 刈終り時のチャフフィン角度
θ3 基準角度
N 唐箕ファン回転数
N* 唐箕ファン回転数目標値
Nave 平均回転数(平均風量)
N1 刈終り時の唐箕ファン回転数(刈終り時の唐箕ファン風量)
N3 基準回転数(基準風量)
Tchaf 設定時間
Tfan 設定時間
t1 刈終り時
t3 作業終了時
【特許請求の範囲】
【請求項1】
脱穀処理された処理物を、チャフフィンを含む揺動選別装置及び唐箕ファンで選別する選別部を有するコンバインであって、
前記チャフフィンの角度を調節可能なチャフアクチュエータと、
前記チャフフィンの角度を検出するチャフ角度検出装置と、
前記チャフアクチュエータを制御する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、前記チャフ角度検出装置の検出値を記憶し、過去所定時間内における前記チャフフィンの平均角度を算出して、この平均角度に基づいて刈終り作業を行う設定時間を算出し、前記設定時間のカウント中は前記チャフフィンの角度を徐々に減少させて、カウント終了後に予め設定された基準角度となるように前記チャフアクチュエータを駆動制御するコンバイン。
【請求項2】
脱穀処理された処理物を、チャフフィンを含む揺動選別装置及び唐箕ファンで選別する選別部を有するコンバインであって、
前記唐箕ファンの風量を調節可能な唐箕アクチュエータと、
前記唐箕ファンの風量を検出する唐箕風量検出装置と、
前記唐箕アクチュエータを制御する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、前記唐箕風量検出装置の検出値を記憶し、過去所定時間内における前記唐箕ファンの平均風量を算出して、この平均風量に基づいて刈終り作業を行う設定時間を算出し、前記設定時間のカウント中は前記唐箕ファンの風量を徐々に減少させて、カウント終了後に予め設定された基準風量となるように前記唐箕アクチュエータを駆動制御するコンバイン。
【請求項3】
前記揺動選別装置上の処理物量を検出する処理物量検出装置をさらに備え、
前記制御装置は、前記設定時間のカウント中に前記処理物量検出装置の検出値が減少から増加に変わった時、前記設定時間のカウントを停止し、この状態で前記処理物量検出装置の検出値が増加から減少に変わった時、前記設定時間のカウントを再開する請求項1または請求項2に記載のコンバイン。
【請求項4】
脱穀処理された処理物を、チャフフィンを含む揺動選別装置及び唐箕ファンで選別する選別部を有するコンバインであって、
前記チャフフィンの角度を調節可能なチャフアクチュエータと、
前記唐箕ファンの風量を調節可能な唐箕アクチュエータと、
脱穀後の排藁量を電気的に検出する排藁量検出装置と、
前記揺動選別装置上の処理物量を電気的に検出する処理物量検出装置と、
前記チャフアクチュエータ及び前記唐箕アクチュエータを制御する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、前記排藁量検出装置及び前記処理物量検出装置の検出値に基づいて、前記チャフアクチュエータと前記唐箕アクチュエータとを個別に駆動制御するコンバイン。
【請求項1】
脱穀処理された処理物を、チャフフィンを含む揺動選別装置及び唐箕ファンで選別する選別部を有するコンバインであって、
前記チャフフィンの角度を調節可能なチャフアクチュエータと、
前記チャフフィンの角度を検出するチャフ角度検出装置と、
前記チャフアクチュエータを制御する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、前記チャフ角度検出装置の検出値を記憶し、過去所定時間内における前記チャフフィンの平均角度を算出して、この平均角度に基づいて刈終り作業を行う設定時間を算出し、前記設定時間のカウント中は前記チャフフィンの角度を徐々に減少させて、カウント終了後に予め設定された基準角度となるように前記チャフアクチュエータを駆動制御するコンバイン。
【請求項2】
脱穀処理された処理物を、チャフフィンを含む揺動選別装置及び唐箕ファンで選別する選別部を有するコンバインであって、
前記唐箕ファンの風量を調節可能な唐箕アクチュエータと、
前記唐箕ファンの風量を検出する唐箕風量検出装置と、
前記唐箕アクチュエータを制御する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、前記唐箕風量検出装置の検出値を記憶し、過去所定時間内における前記唐箕ファンの平均風量を算出して、この平均風量に基づいて刈終り作業を行う設定時間を算出し、前記設定時間のカウント中は前記唐箕ファンの風量を徐々に減少させて、カウント終了後に予め設定された基準風量となるように前記唐箕アクチュエータを駆動制御するコンバイン。
【請求項3】
前記揺動選別装置上の処理物量を検出する処理物量検出装置をさらに備え、
前記制御装置は、前記設定時間のカウント中に前記処理物量検出装置の検出値が減少から増加に変わった時、前記設定時間のカウントを停止し、この状態で前記処理物量検出装置の検出値が増加から減少に変わった時、前記設定時間のカウントを再開する請求項1または請求項2に記載のコンバイン。
【請求項4】
脱穀処理された処理物を、チャフフィンを含む揺動選別装置及び唐箕ファンで選別する選別部を有するコンバインであって、
前記チャフフィンの角度を調節可能なチャフアクチュエータと、
前記唐箕ファンの風量を調節可能な唐箕アクチュエータと、
脱穀後の排藁量を電気的に検出する排藁量検出装置と、
前記揺動選別装置上の処理物量を電気的に検出する処理物量検出装置と、
前記チャフアクチュエータ及び前記唐箕アクチュエータを制御する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、前記排藁量検出装置及び前記処理物量検出装置の検出値に基づいて、前記チャフアクチュエータと前記唐箕アクチュエータとを個別に駆動制御するコンバイン。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2011−97885(P2011−97885A)
【公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−255528(P2009−255528)
【出願日】平成21年11月6日(2009.11.6)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年11月6日(2009.11.6)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】
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