説明

コンバイン

【課題】貯留装置が満充填されるまでの刈取走行において、機体の左右方向の重心移動を小さく抑えて直進性能を向上することにより、安定して効率良く刈取走行することができるコンバインを提供する。
【解決手段】コンバインは、機体前部の刈取装置(3)と、機体後部で左右配置の脱穀装置(4)および貯留装置(5)とを備え、この貯留装置(5)の下部から穀粒取出部(7)を延出して構成され、上記貯留装置(5)は、機体の左右方向について重心側に位置する内側収容部(5a)と遠心側に位置する外側収容部(5b)とに画成して構成し、上記脱穀装置(4)から穀粒を受けるための揚穀装置(7)を内側収容部(5a)に設け、この内側収容部(5a)の穀粒レベルの上昇に応じて穀粒の収容先を外側収容部(5b)に切替える収容先切替手段を備えたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脱穀装置と貯留装置とを左右に並置構成したコンバインに関する。
【背景技術】
【0002】
脱穀装置と貯留装置とを左右に並置構成したコンバインは、特許文献1に示すように、機体前部の刈取装置から刈取穀稈を脱穀装置に後送して脱穀し、その側方の貯留装置に脱穀穀粒を収容する簡潔な構成により、穀物収穫の際の一連の複雑な工程を効率よく連続的に処理しつつ、刈取走行することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−261279号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、貯留装置が機体の側方にずれて位置することから、刈取走行の過程においては、貯留装置内の穀粒の増加に伴って機体の左右バランスが変動するので、それに伴って左右のクローラの走行負荷配分が変化することから、直進性が低下し、機体の進行方向を微調整する煩わしい作業を強いられたり、地盤が軟弱な圃場においては貯留装置側の走行装置が土壌面に沈下し、走行負荷が増大したり、走行不能な状況に陥る虞があった。
【0005】
本発明の目的は、貯留装置が満充填されるまでの刈取走行において、機体の左右方向の重心移動を小さく抑えて直進性能を向上することにより、安定して効率良く刈取走行することができるコンバインを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に係る発明は、機体上の左右一側に脱穀装置(4)を備え、他側には貯留装置(5,21,31)を備え、脱穀装置(4)から穀粒を移送する揚穀装置(7,35)の移送終端部を貯留装置(5,21,31)に接続し、貯留装置(5,,21,31)の下部に備えた穀粒取出部(8a,33)を排出装置(8)に連通させたコンバインにおいて、前記貯留装置(5,21,31)は、平面視において機体の重心位置の存在する側に偏倚した第一収容部(5a,21a,31a)と、平面視において該第一収容部(5a,21a,31a)に対して機体の重心位置から離間する側に偏倚した第二収容部(5b,21b,31b)とを備え、この第一収容部(5a,21a,31a)内の穀粒の貯留量が所定以上になった場合に、前記揚穀装置(7,35)から移送される穀粒が第一収容部(5a,21a,31a)に貯留される状態から第二収容部(5b,21b,31b)に貯留される状態に切替わる構成としたことを特徴とする。
【0007】
脱穀装置で脱粒した穀粒は貯留装置(5)の穀粒収容部に貯留される。このとき、2つの収容部の一方の機体重心側である第一収容部(5a,21a,31a)に脱穀装置から揚穀装置(7,35)によって穀粒を貯留し、その穀粒の貯留量が所定以上になると第一収容部(5a,21a,31a)よりも平面視において機体の重心から離れた側の第二収容部(5b,21b,31b)に収容先を切替えて穀物を貯留する。
【0008】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の発明において、前記揚穀装置(7)の移送終端部を第一収容部(5a)に接続し、該第一収容部(5a,21a)と第二収容部(5b,21b)との間を連通する連通部(11,22)を備え、第一収容部(5a,21a)内の穀粒の貯留量が所定以上になった場合に、該第一収容部(5a)から第二収容部(5b,21b)へ穀粒が溢出する構成としたことを特徴とする。
上記第一収容部(5a)の穀粒レベルが連通部(11)の下端部の高さを越えると揚穀装置(7)から放出される穀粒が第二収容部(5b)に流入する。
【0009】
請求項3に係る発明は、請求項1または請求項2に記載の発明において、前記第一収容部(21a)は金属製とし、前記第二収容部(21b)は樹脂製とし、該第二収容部(21b)を機体外側に臨ませたことを特徴とする。
上記第一収容部(21a)は金属製で機体重心側に位置することから、金属の剛性に基づく第一収容部(21a)の大容量化が可能となる上に、第二収容部(21b)は樹脂製で機体外側に臨むことから、第二収容部(21b)が外方に膨らみつつ穀粒が充填される。
【0010】
請求項4に係る発明は、請求項1に記載の発明において、前記第一収容部(31a)及び第二収容部(31b)を一体的に縦軸(Z)中心に回動させる回動駆動機構(32)を備え、該第一収容部(31a)及び第二収容部(31b)の上部における前記縦軸(Z)近傍の部位にそれぞれ収容口(34a,34b)を形成し、第一収容部(31a)内の穀粒の貯留量が所定未満である場合は、前記揚穀装置(35)と第一収容部(31a)の収容口(34a)とが連通し、第一収容部(31a)内の穀粒の貯留量が所定以上となった場合には、揚穀装置(35)と第二収容部(31b)の収容口(34b)とが連通するように前記回動駆動機構(32)を自動的に作動させる制御装置(50)を設けたことを特徴とする。
上記回動駆動機構(32)により、内側収容部(31a)の穀粒が所定レベルに達すると、両収容部(31a,31b)が一体的に回動して、揚穀装置(7)からの穀粒収容先が第二収容部(31b)に切替わることによって機体の左右バランスの変動が小さく抑えられる。
【0011】
請求項5に係る発明は、請求項4記載の発明において、前記機体の傾斜角度を検出する傾斜センサ(51)および前記第一収容部(31a)及び第二収容部(31b)内の穀粒の貯留量を夫々検出する穀粒レベルセンサ(53,54)を備え、該第一収容部(31a)及び第二収容部(31b)内の穀粒量から算出される貯留装置(31)の重心位置と、上記傾斜センサによって検出される機体傾斜とから、貯留装置(31)の重心位置が前記縦軸(Z)に対して機体の高い側に偏倚するように第一収容部(31a)と第二収容部(31b)を自動的に回動させる構成としたことを特徴とする。
上記両収容部(31a,31b)の回動角度位置を機体傾斜に対抗して制御することにより、機体の傾斜による重心バランスが補正される。
【発明の効果】
【0012】
請求項1記載の発明により、脱穀装置で脱粒した穀粒は貯留装置(5)の穀粒収容部に貯留される。このとき、2つの収容部の一方の機体重心側である第一収容部(5a,21a,31a)に脱穀装置から揚穀装置(7,35)によって穀粒を貯留し、その穀粒の貯留量が所定以上になると第一収容部(5a,21a,31a))に対して機体の重心位置から離間する側に偏倚した第二収容部(5b,21b,31b)に収容先を切替えて穀物を貯留することから、収穫作業における機体の重心移動が小さく抑えられる。したがって、走行時の直進性能が向上するとともに、貯留装置(5)側の走行装置の沈下を抑制することで走行負荷を低減して効率的に収穫作業を行うことができる。
【0013】
請求項2記載の発明により、請求項1記載の発明による効果に加え、上記第一収容部(5a)の穀粒レベルが連通部(11)の下端部の高さを越えると以後の穀粒の収容先が第二収容部(5b)に切替えられる。
【0014】
請求項3記載の発明により、請求項1または請求項2に記載の発明による効果に加え、上記第一収容部(21a)は金属製で機体重心近傍に位置することから、金属の剛性に基づく第一収容部(21a)の大容量化が可能となる上に、第二収容部(21b)は樹脂製で機体外側に臨むことから、第二収容部(21b)が穀粒の充填により内圧が高まるとこの第二収容部(21b)が膨らんで多くの穀粒を貯留することができる上に、穀粒が充填されていない場合には、第二収容部(21b)の外側方への張出し量が小さくなるため、路上走行時や納屋等へのコンバインの格納時の支障とならない。更に、第二収容部(21b)が第一収容部(21a)に比して軽量に構成することができるため、平面視において貯留装置(5)全体の重心位置が機体の重心位置に近くなり、機体の左右バランスを適正化することができる。
【0015】
請求項4記載の発明により、請求項1に記載の発明による効果に加え、第一収容部(31a)の穀粒が所定レベルに達すると、回動駆動機構(32)により両収容部(31a,31b)が一体的に回動して揚穀装置(35)からの穀粒収容先が第二収容部(31b)に切替わることによって機体のバランスの変動を小さく抑えることができる。
【0016】
請求項5記載の発明により、請求項4に記載の発明による効果に加え、上記両収容部(31a,31b)の回動角度位置を機体傾斜に対抗して制御することにより、機体の傾斜による重心バランスが補正されるので、安定した走行が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】コンバインの平面図(a)及び側面図(b)
【図2】貯留装置の分解斜視図
【図3】機体正面図
【図4】貯留装置の別の構成例の分解斜視図
【図5】可動構造による貯留装置の分解斜視図
【図6】収容部の要部平面図(a)および側面図(b)
【図7】収容部の複合構成例の分解斜視図(a)および一体構成斜視図(b)
【図8】差込式(a)およびフランジ式(b)の接続部の拡大断面図
【図9】別の接続構成例の分解斜視図(a)および接続部拡大断面図(b)
【図10】さらに別の接続構成例の分解斜視図(a)および接続状態の斜視図(b)
【図11】部材共用構成例の分解斜視図(a)および接続状態の斜視図(b)
【図12】回動駆動機構の制御装置の制御ブロック図
【発明を実施するための形態】
【0018】
上記技術思想に基づいて具体的に構成された実施の形態について以下に図面を参照しつつ説明する。
本発明の適用対象となるコンバインは、機体の左右バランスの変動を可能な限り小さく抑えて刈取走行の安定化を図りつつ、刈取から脱穀穀粒の貯留までの一連の複雑な工程を効率よく連続処理するするために、以下のように構成する。
【0019】
すなわち、コンバイン1は、図1の平面図(a)及び側面図(b)に示すように、圃場走行可能に機体を支持するクローラ等の走行装置2と、機体の前部に昇降可能に支持された刈取装置3と、その後方で刈取装置3から受けた刈取穀稈を脱穀する脱穀装置4と、その側方で脱穀装置4により脱穀された穀粒を受ける貯留装置5と、この貯留装置5の前側で走行装置を初めとする各種機器を操作するための操作具等を配置した操縦部6を備え、この操縦部6の下部に原動部6aを一体に構成しており、機体の重心Gは左右方向の略中央に位置する。
【0020】
貯留装置5は、揚穀螺旋機構による揚穀装置7を脱穀装置4側の開口7aに連通して脱穀装置4から脱穀穀粒を受け、また、貯留装置5の収容部の下部開口に移送螺旋機構による穀粒取出部8aを備え、この穀粒取出部8aから排出穀粒を上位投出する排出オーガ(排出装置)8と連通する。
【0021】
詳細には、図2の分解斜視図および図3の動作説明正面図に示すように、貯留装置5は、穀粒取出部8a側に開口部を形成した合成樹脂成形による2つの貯留タンクを機体の左右方向に並べて一体に接合することより、脱穀装置4に隣接して機体の重心点に近い位置の貯留タンクによる内側収容部(第一収容部)5aと機体外側に面して機体の重心点から離れた位置の貯留タンクによる外側収容部(第二収容部)5bとによって構成する。
【0022】
両収容部5a,5bの接合部の一部に連通部11を形成し、この連通部11は、内側収容部5aの穀粒が満量レベルに達したときの溢出口として高位置に形成し、その溢出穀粒を外側収容部5b内に効率よく収容するために、その中央位置方向に延びる案内部11aを設ける。この一体構成の両収容部5a,5bを共通の穀粒取出部8aの上部に取付け、また、内側収容部5aに脱穀装置4からの揚穀装置7を接続する。
【0023】
上述のように貯留装置5を構成することにより、揚穀装置7によって脱穀装置4から受けた穀粒が内側収容部5aに収容され、その穀粒レベルが連通部11に達すると、それ以後に内側収容部5aに受ける穀粒が連通部11から溢出して外側収容部5bに収容される。
【0024】
このように、機体の左右方向について重心側に位置する内側収容部5aと遠心側に位置する外側収容部5bとに画成して貯留装置5を構成し、脱穀装置4から穀粒を受けるための揚穀装置7を内側収容部5aに設け、その穀粒レベルの上昇に応じて穀粒の収容先を外側収容部5bに切替える収容先切替手段としての連通部11を設けることにより、2つの収容部の一方の機体重心側である内側収容部5aに脱穀装置4から揚穀装置7によって穀粒を貯留し、その穀粒レベルの上昇に応じて収容先切替手段が遠心側の外側収容部5bに収容先を切替えて穀物を貯留することから、機体の左右方向の重心移動が全体として小さく抑えられる。その結果、貯留装置5が穀粒収容の限度レベルに達するまでの刈取走行において、重心移動の低減に伴う左右バランスの改善により走行時の直進性能が向上され、全体として安定して効率良く刈取走行することができる。
【0025】
次に、貯留装置の別の構成例について説明する。
この貯留装置21は、図4の分解斜視図に示すように、金属製箱体による内側収容部(第一収容部)21aと合成樹脂製の貯留タンクによる外側収容部(第二収容部)21bとから構成する。内側収容部21aの金属製箱体は外側面の全面を開口し、外側収容部21bの内側面に窓を形成して連通部22を構成し、それぞれ下部開口を形成して機体の左右方向に並べて一体に接合する。その外側収容部21bの外側面を機体外側に面して露出状態で配置する。
【0026】
このように、内側収容部21aを金属製とし、外側収容部21bを樹脂製として機体外側に臨んで構成した貯留装置21は、その内側収容部21aが金属製で機体重心近傍に位置することから、金属の剛性に基づく収容部の大容量化が可能となる上に、収容部の重量増加によっても機体の左右バランスの変動が小さく抑えられ、また、外側収容部21bが樹脂製で機体外側に露出状態で臨むことから、その内部に収容された穀粒によって外側面部が外方に膨らんでも支障を招くことなく充填を継続することができる上に、収容部の軽量化によって機体の左右バランスの変動を小さく抑えることができ、そのほか、機体の軽量化、コスト低減、部品点数削減、部品精度の向上、干渉による損傷や錆の防止、籾の貼りつき防止を図ることができる。
【0027】
(回動式)
次に、貯留装置を回動式に構成した例について説明する。
この貯留装置31は、図5の分解斜視図に示すように、穀粒収容部を縦型の円筒状に形成し、直径線位置で半分に仕切って内側収容部(第一収容部)31aと外側収容部(第二収容部)31bとを形成し、縦軸Z回りに回動可能に軸支して外周部に回動駆動機構32を設け、この両収容部31a,31bの下端開口を半球面状に案内面を形成した共通の穀粒取出部33に臨んで配置する。
【0028】
両収容部31a,31bには、図6の要部平面図(a)および側面図(b)に示すように、それぞれの上端の同一回動半径位置に収容口34a,34bを互いに隣接して開口し、これら両収容口34a,34b間の境界線の近傍位置に穀粒を受けるように、内側収容部31aの収容口34aに臨む横螺旋部を付設した揚穀装置35に円形蓋35aを一体に固定して両収容口34a,34bをカバーする。また、両収容部31a,31bそれぞれの穀粒レベルセンサを設け、内側収容部31aの穀粒が所定のレベルに達したときに揚穀装置35が外側収容部31bの収容口34bに臨む位置まで両収容部31a,31bを一体回動するように、回動駆動機構32を条件制御可能に構成する。
【0029】
図12に示すのは、この回動式の貯留装置の制御装置である。制御装置50には、機体の傾斜を検出する傾斜センサ51、排出レバーによる排出操作を検出する排出レバーセンサ52、内側貯留部31a及び外側貯留部31bの貯留量を夫々検出する穀粒レベルセンサ53,54の信号を入力している。出力側には、機体水平機構の機体水平シリンダ55と前記両収容部31a,31bを回動させるための回動駆動機構32を接続している。なお、穀粒レベルセンサ53,54は貯留された穀粒に接触することで穀粒の存在を検出する感圧センサであり、両収容部31a,31bに夫々高さ方向に複数設けている。
【0030】
上記構成の貯留装置31は、駆動機構32の条件制御によって穀粒の収容先を切替える収容先切替手段を構成し、この収容先切替手段により、内側収容部31aの穀粒が所定レベルに達すると、両収容部31a,31bが一体回動されて揚穀装置35からの穀粒収容先が外側収容部31bに切替わることから、機体の左右バランスの変動が小さく抑えられる。より具体的には、内側収容部31aの貯留量が少ない段階では、前記境界線が機体の前後方向に沿う位置に貯留装置31の回動位置を設定し、前記収容口34aにおける境界線の近傍位置に揚穀装置35の移送終端部を臨ませる。すなわち、図6に示されるように、内側収容部31aを脱穀装置側に位置させる。そして、穀粒の収容先を外側収容部31b側に切り替える際には揚穀装置35の移送終端部が境界線を跨ぐように両収容部31a,31bを回動させて、内側収容部31aが機体前方のやや脱穀装置寄りの位置に移動させる。このように制御することで、機体の重心変動を小さくすることができる。
【0031】
(排出制御)
また、貯留装置31から穀粒を排出する場合に、排出レバーの操作によって穀粒取出部33および排出オーガ33aを駆動するとともに、両収容部31a,31bを一体回動動作させることにより、穀粒取出部33に集合するように下降移動する穀粒による滞留塊が崩壊分散されて円滑に排出することができる。
【0032】
(周辺構成)
また、円筒形状の貯留装置31の周辺位置には、脱穀装置4に沿う前後のスペースに回動駆動機構32と揚穀装置35を配置し、機体後部の外側端スペースには排出オーガ33aの縦オーガ部を配置することにより、スペース効率を向上することができる。
【0033】
(傾斜対応)
また、機体傾斜を検出する傾斜センサ51およびその傾斜に応じてローリング、ピッチングの機体傾斜調整をする機体水平機構を設け、両収容部31a,31bそれぞれの穀粒レベルセンサによって把握される両収容部31a,31bの穀粒量から算出される貯留装置31の重心位置に基づき、上記傾斜センサおよび機体水平機構のいずれかによって得られる機体傾斜に対抗して両収容部31a,31bの回動角度位置を制御可能に構成することにより、貯留装置31を効果的に活用して機体の傾斜による重心バランスを補正し、走行性を向上することができる。
なお、貯留装置31は2等分構成の収容部31a,31bに限らず、4等分構成としてもよい。
【0034】
また、上記構成の貯留装置31は、原動部6aの外側面を覆うラジエタカバー6bの上端位置を越える部分について大径に構成する。貯留装置31の上部側面には穀粒レベルを目視確認可能な点検窓36を設け、貯留装置31を回動して点検窓36の位置を機体外側位置に配置することにより、コンバインのオペレータのみならず、周辺の補助者等にも穀粒レベルを確認させることができる。
【0035】
(複合構成)
次に、複合構成式の貯留装置の構成例について説明する。
貯留装置の収容部は、図7の分解斜視図(a)および一体構成斜視図(b)に示すように、上下に二分して別体構成した上部41aと下部41bの合成樹脂成形体を上下に填込んで接続する。接続部は図8の拡大断面図に示すように、差込式(a)およびボルト締結用フランジ式(b)の填込式の複合構造とすることにより、成形寸法上の制約なしに、大容量で軽量の穀粒貯留用樹脂タンク41の低コスト化、部品点数削減、部品精度向上が可能となる。
【0036】
また、別の接続構成例として、図9の分解斜視図(a)および接続部拡大断面図(b)に示すように、別体構成による上部42aと下部42bの合成樹脂成形体をH型断面の接続金具42cを介してボルト締結によって接続することにより、前記同様に、大容量で軽量の穀粒貯留用樹脂タンクを構成することができる。
【0037】
また、図10の分解斜視図(a)および接続状態の斜視図(b)に示すように、別体構成による前後対称形状または、左右対称形状の半割部43a,43bを接続することにより、前記同様に、大容量で軽量の穀粒貯留用樹脂タンクを構成することができる。
【0038】
また、図11の分解斜視図(a)および接続状態の斜視図(b)に示すように、複合構成の穀粒貯留用樹脂タンクの上部44uの合成樹脂成形体を共通として、下部44aの合成樹脂成形体について、高さ寸法hが異なる合成樹脂成形体44bを組み合わせて使用することにより、別の貯留容量Hの貯留装置を構成することができるので、他機種との部材共用化が可能となる。
【符号の説明】
【0039】
1 コンバイン
2 走行装置
5 貯留装置
5a 内側収容部(第一収容部)
5b 外側収容部(第二収容部)
6 操縦部
6a 原動部
7 揚穀装置
7a 開口
8a 穀粒取出部
11 連通部(収容先切替手段)
11a 案内部
21 貯留装置
21a 内側収容部
21b 外側収容部
22 連通部(収容先切替手段)
31 貯留装置
31a 内側収容部
31b 外側収容部
32 回動駆動機構(収容先切替手段)
33 穀粒取出部
50 制御装置
51 傾斜センサ
53 穀粒レベルセンサ
54 穀粒レベルセンサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機体上の左右一側に脱穀装置(4)を備え、他側には貯留装置(5,21,31)を備え、脱穀装置(4)から穀粒を移送する揚穀装置(7,35)の移送終端部を貯留装置(5,21,31)に接続し、貯留装置(5,21,31)の下部に備えた穀粒取出部(8a,33)を排出装置(8)に連通させたコンバインにおいて、
前記貯留装置(5,21,31)は、平面視において機体の重心位置の存在する側に偏倚した第一収容部(5a,21a,31a)と、平面視において該第一収容部(5a,21a,31a)に対して機体の重心位置から離間する側に偏倚した第二収容部(5b,21b,31b)とを備え、この第一収容部(5a,21a,31a)内の穀粒の貯留量が所定以上になった場合に、前記揚穀装置(7,35)から移送される穀粒が第一収容部(5a,21a,31a)に貯留される状態から第二収容部(5b,21b,31b)に貯留される状態に切替わる構成としたことを特徴とするコンバイン。
【請求項2】
前記揚穀装置(7)の移送終端部を第一収容部(5a)に接続し、該第一収容部(5a,21a)と第二収容部(5b,21b)との間を連通する連通部(11,22)を備え、第一収容部(5a,21a)内の穀粒の貯留量が所定以上になった場合に、該第一収容部(5a)から第二収容部(5b,21b)へ穀粒が溢出する構成としたことを特徴とする請求項1に記載のコンバイン。
【請求項3】
前記第一収容部(21a)は金属製とし、前記第二収容部(21b)は樹脂製とし、該第二収容部(21b)を機体外側に臨ませたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のコンバイン。
【請求項4】
前記第一収容部(31a)及び第二収容部(31b)を一体的に縦軸(Z)中心に回動させる回動駆動機構(32)を備え、該第一収容部(31a)及び第二収容部(31b)の上部における前記縦軸(Z)近傍の部位にそれぞれ収容口(34a,34b)を形成し、第一収容部(31a)内の穀粒の貯留量が所定未満である場合は、前記揚穀装置(35)と第一収容部(31a)の収容口(34a)とが連通し、第一収容部(31a)内の穀粒の貯留量が所定以上となった場合には、揚穀装置(35)と第二収容部(31b)の収容口(34b)とが連通するように前記回動駆動機構(32)を自動的に作動させる制御装置(50)を設けたことを特徴とする請求項1に記載のコンバイン。
【請求項5】
前記機体の傾斜角度を検出する傾斜センサ(51)および前記第一収容部(31a)及び第二収容部(31b)内の穀粒の貯留量を夫々検出する穀粒レベルセンサ(53,54)を備え、該第一収容部(31a)及び第二収容部(31b)内の穀粒量から算出される貯留装置(31)の重心位置と、上記傾斜センサによって検出される機体傾斜とから、貯留装置(31)の重心位置が前記縦軸(Z)に対して機体の高い側に偏倚するように第一収容部(31a)と第二収容部(31b)を自動的に回動させる構成としたことを特徴とする請求項4に記載のコンバイン。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate


【公開番号】特開2013−27329(P2013−27329A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−164082(P2011−164082)
【出願日】平成23年7月27日(2011.7.27)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】