説明

コンバータおよびコンバータ制御方法

PLLおよびパルス削除回路を含むコンバータの技法が全般的に説明される。パルス削除回路は、PLLのフィルタ処理済み出力が第1の基準レベルより下がり、PLLのロック解除状態が、第1および第2のパルス入力の一方の他方に対する位相遅れに応じて検出されたとき、PLLへの入力のうちの一方からパルスを削除するように構成される。パルス削除回路は、フィルタ処理済み出力が第2の基準レベルを超え、PLLのロック解除状態が、第1および第2のパルス入力の一方の他方に対する位相進みに応じて検出されたとき、第1および第2のパルス入力の他方の1つのパルスを削除するように構成することもできる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に、コンバータおよびコンバータ制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本明細書で特に指示がない限り、この節で説明される手法はこの出願の特許請求の範囲に先行する技術ではなく、この節に含まれることによって先行する技術であると認めるものではない。
【0003】
近年、インバータおよびコンバータを含む電力コンバータの大勢はいわゆる共振型電力変換装置に移ってきている。共振型電力変換装置は、一般に、電力損失、放射雑音、または伝導雑音を低減することによって変換効率を改善するためにZVS(ゼロ電圧スイッチング)またはZCS(ゼロ電流スイッチング)を使用する。
【0004】
場合によっては、共振型電力変換装置は、共振型電力変換装置またはそのコンバータ回路の特性を表す共振インピーダンス曲線の一部を利用するために負帰還制御のためのPFM(パルス周波数変調)を使用することができる。しかし、そのようなPFM共振型電力変換装置は、比較的広い範囲で生じる電力供給変動または負荷の変化に対して十分な制御を行うことができない。
【0005】
一方、PWM(パルス幅変調)を負帰還制御に使用する共振型電力変換装置は、PFM負帰還制御よりも容易な制御を行うことができる。しかし、わずかな不整合が共振型電力変換装置の共振周波数とスイッチング周波数との間に生じると、そのようなPWM共振型電力変換装置の出力が急激に減少することがあり、または共振型電力変換装置の変換効率が低下することがある。
【0006】
PLL(位相同期ループ)をPWM、PFM、またはPDM(パルス密度変調)と組み合わせて利用することによって共振型電力変換装置のスイッチング周波数と共振周波数とを正確に整合させる様々な技法が提案されている。
【0007】
しかし、PLLは、規則的で連続的な入力パルスがPFD(パルス周波数検出器)に入力されるという前提条件で動作することができる。そのようなPLLでは、静電結合もしくは電磁結合によって引き起こされた誘導雑音、または電力供給変動もしくは負荷の変化によって引き起こされた入力パルスの不規則な不連続に応じて誤動作が生じることがある。誘導雑音は、リンギングまたはオーバーシュートによって引き起こされるサージパルスの混合を含むことがある。誤動作を中止させるのに比較的長い回復時間が必要とされる場合、共振型電力変換装置の出力は急激に減少することがある。
【0008】
共振型電力変換装置が比較的大きい出力を生成するように構成され、PLL部分および電力スイッチング部分が互いに比較的近くに配置されるか、または共振型電力変換装置のサイズを低減するために複数の電力スイッチング部分が単一の基板またはボードに配置される場合、共振型電力変換装置の誤動作が生じる可能性がある。
【0009】
共振型電力変換装置のPFDへの入力パルスにおける約数百μsecから約数msecの程度の比較的短い不連続によって引き起こされる共振型電力変換装置の出力の減少は、PFDの出力端部に結合されたLPF(低域フィルタ)のサンプル−ホールド機能によって回復することができる。しかし、LPFを利用する回復は、PFDの入力パルスにおける不連続がより長い、すなわち約数十msec以上の程度である場合、可能でないことがある。比較的高価なデジタル信号処理回路が後者の事例での回復では必要とされることがある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
したがって、この開示は、電力供給変動、負荷の変化、または雑音にかかわらず比較的安定した出力を生成することができる新規で有用なコンバータおよびコンバータ制御方法を提供する例示の実施形態を全般的に説明する。
【0011】
いくつかの例示の実施形態によれば、コンバータは、検出器回路、ロック検出回路、フィルタ回路、および発振器回路を含むPLL(位相同期ループ)回路であり、検出器回路が第1のパルス入力と第2のパルス入力との間の位相誤差を検出し、検出された位相誤差を示す誤差信号を生成するように構成され、フィルタ回路が誤差信号をフィルタ処理し、フィルタ処理済み誤差信号を供給するように構成され、ロック検出回路が誤差信号に応じてPLL回路のロック状態またはロック解除状態を検出するように構成され、発振器回路がフィルタ処理済み誤差信号に応じて発振器出力信号を生成するように構成される、PLL回路と、発振器出力信号および帰還信号を受け取り、それに応じて駆動信号を生成するように構成されたパルス制御回路と、フィルタ処理済み誤差信号を受け取り評価して、いつフィルタ処理済み誤差信号が第1の基準レベルより下がるか、または第1の基準レベルよりも高い第2の基準レベルを超えるか判定するように構成されたコンパレータ回路と、駆動信号を受け取り、それに応じて第1のパルス入力を供給するように構成され、さらに、変成器回路の一次側からの共振電流測定値を受け取り、それに応じて第2のパルス入力を供給するように構成されたパルス削除回路とを含むことができ、フィルタ処理済み誤差信号が第1の基準レベルより下がるのをコンパレータ回路が検出し、ロック検出回路が、第1および第2のパルス入力の一方の、第1および第2のパルス入力の他方に対する位相遅れが検出器回路で検出されたことに応答してロック解除状態を検出したとき、第1および第2のパルス入力の一方の1つのパルスを削除するようにパルス削除回路が構成され、フィルタ処理済み誤差信号が第2の基準レベルを超えるのをコンパレータ回路が検出し、ロック検出回路が、第1および第2のパルス入力の一方の、第1および第2のパルス入力の他方に対する位相進みが検出器回路で検出されたことに応答してロック解除状態を検出したとき、第1および第2のパルス入力の他方の1つのパルスを削除するようにパルス削除回路が構成される。
【0012】
いくつかの例示の実施形態によれば、コンバータを制御する方法は、パルス削除回路によってパルス制御回路からの駆動信号を受け取り、それに応じて第1のパルス入力を供給するステップと、パルス削除回路によって変成器回路の一次側からの共振電流を受け取り、それに応じて第2のパルス入力を供給するステップと、PLL(位相同期ループ)回路のフィルタ処理済み誤差信号が第1の基準レベルより下がるときをコンパレータ回路によって検出し、それに応じて第1の制御信号をアサートするステップと、PLL回路のフィルタ処理済み誤差信号が第1の基準レベルよりも高い第2の基準レベルを超えるときをコンパレータ回路によって検出し、それに応じて第2の制御信号をアサートするステップと、第1および第2のパルス入力の一方の、第1および第2のパルス入力の他方に対する位相遅れまたは位相進みに応じてPLL回路のロック解除状態をPLL回路のロック検出回路によって検出し、それに応じてロック解除検出信号をアサートするステップと、第1の制御信号およびロック解除検出信号が共にアサートされるとき、制御信号とPLL回路からのロック解除検出信号とに基づいて第1および第2のパルス入力の一方の1つのパルスをパルス削除回路によって削除するステップと、第2の制御信号およびロック解除検出信号が共にアサートされるとき、制御信号とPLL回路からのロック解除検出信号とに基づいて第1および第2のパルス入力の他方の1つのパルスをパルス削除回路によって削除するステップとを含む。
【0013】
いくつかの例示の実施形態によれば、PLL(位相同期ループ)を含むコンバータを制御する方法は、PLLの位相検出により得られたフィルタ処理済み出力が第1の基準レベルより下がり、PLLのロック解除状態が、第1および第2のパルス入力の一方の他方に対する位相遅れに応じて検出されたとき、PLLへの第1および第2のパルス入力の一方の1つのパルスを削除するステップと、フィルタ処理済み出力が第2の基準レベルを超え、PLLのロック解除状態が、第1および第2のパルス入力の一方の他方に対する位相進みに応じて検出されたとき、第1および第2のパルス入力の他方の1つのパルスを削除するステップとを含むことができる。
【0014】
前述の発明の概要は例示であり、決して限定するものではない。上述の例示的な態様、実施形態、および特徴に加えて、さらなる態様、実施形態、およびさらなる特徴が、添付図面と関連して読まれるとき以下の詳細な説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】電力コンバータの一例を示すブロック図である。
【図2】共振電流と駆動電圧との関係を示す図である。
【図3】PLL回路の信号波形を示す図である。
【図4】パルス入力Vin1とVin2との間の位相誤差を説明するための図である。
【図5】コンバータのインピーダンス特性および位相特性を示す図である。
【図6】共振周波数が±20%だけ変化する場合のPLL回路の動作を説明するための図である。
【図7】パルス挿入または削除回路の例を説明するための回路図である。
【図8】コンバータの出力電力が500Wである一例について回復の効果を説明するための図である。
【図9】コンバータの比較例を説明するための図である。
【図10】パルス入力のパルスがコンバータでドロップアウトするときの回復を説明するための図である。
【図11】コンバータの比較例を説明するための図である。
【図12】雑音がコンバータでパルス入力に混合するときの回復を説明するための図である。
【図13】コンバータの比較例を説明するための図である。
【図14】軽負荷状態および25Wの出力電力でのコンバータの動作を説明するための図である。
【図15】軽負荷状態および5Wの出力電力でのコンバータの動作を説明するための図である。
【図16】図14と同等の条件下であるが、回復機能が抑制された場合の軽負荷状態でのコンバータの比較例の動作を説明するための図である。
【図17】図15と同等の条件下であるが、回復機能が抑制された場合の軽負荷状態でのコンバータの比較例の動作を説明するための図である。
【図18】重負荷状態、500Wの出力電力、および100VのAC電圧でのコンバータの共振動作を説明するための図である。
【図19】重負荷状態、500Wの出力電力、および220VのAC電圧でのコンバータの共振動作を説明するための図である。
【図20】図18と同様の条件下における重負荷状態でのコンバータの非共振動作を説明するための図である。
【図21】図19と同様の条件下における重負荷状態でのコンバータの非共振動作を説明するための図である。
【図22】パルス挿入または削除回路の他の例を説明するための回路図である。
【図23】図18と同じ動作条件下であるが、図22に示されたパルス挿入または削除回路を使用する、重負荷状態でのコンバータの動作を説明するための図である。
【図24】電力コンバータの一例を示すブロック図である。
【図25】パルス入力のパルスがインバータでドロップアウトするときの回復を説明するための図である。
【図26】インバータの比較例を説明するための図である。
【図27】パルスの削除および挿入を説明するための図である。
【図28】図8と同等な一例について回復の効果を説明するための図である。
【図29】図10と同等の一例について回復を説明するための図である。すべての図は、本開示の少なくともいくつかの実施形態に基づいて配置される。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下の詳細な説明において、その一部を形成する添付図面が参照される。図面において、文脈上特に指示されない限り、同様の記号は一般に同様の構成要素を特定する。詳細な説明、図面、および特許請求の範囲で説明される例示的な例または実施形態は限定することが目的ではない。他の例または実施形態を利用することができ、ここで示される内容の趣旨または範囲から逸脱することなく他の変更を行うことができる。全体的に本明細書で説明され、図で示されるようなこの開示の態様は、すべてが明確に意図されたものであり、この開示の一部となる多種多様な異なる構成に配置、置き換え、組み合わせ、および設計することができることを容易に理解することができる。
【0017】
この開示は、特に、コンバータおよびコンバータ制御方法、すなわちコンバータを制御する方法に関連する方法、デバイス、および/またはシステムに関する。
【0018】
簡潔に言うと、PLLおよびパルス削除回路を含むコンバータの技法が本明細書で全般的に説明される。パルス削除回路は、PLLのフィルタ処理済み出力が第1の基準レベルより下がり、PLLのロック解除状態が、第1および第2のパルス入力の一方の他方に対する位相遅れに応じて検出されたとき、PLLへの入力のうちの一方からパルスを削除するように構成される。パルス削除回路は、フィルタ処理済み出力が第2の基準レベルを超え、PLLのロック解除状態が、第1および第2のパルス入力の一方の他方に対する位相進みに応じて検出されたとき、第1および第2のパルス入力の他方の1つのパルスを削除するように構成することもできる。
【0019】
図1は、本開示の少なくともいくつかの実施形態による、コンバータ制御方法の一例を使用する電力コンバータの一例を示すブロック図である。この例では、電力コンバータはハーフブリッジ共振AC/DCコンバータ1−1で形成することができる。
【0020】
図1に示されたコンバータ1−1は、一次整流器回路11、ハーフブリッジ駆動回路12、スイッチング素子Q1およびQ2、共振コイル(または漏れインダクタンス)Lr、共振キャパシタCr、絶縁変成器回路(絶縁トランス回路)13、二次整流器回路14、二次平滑キャパシタC1およびC2、帰還回路15、電流検出器16、PWM(パルス幅変調)制御回路17、PLL(位相同期ループ)回路20、コンパレータ回路21、パルス挿入または削除回路22および23、ならびにレベルコンパレータ24および25を含む、スイッチング素子Q1およびQ2はスイッチング回路を形成することができる。レベルコンパレータ24および25はコンパレータ回路を形成することができる。PWM制御回路17はパルス制御回路を形成することができる。コンバータ1−1の共振周波数f0は1/2π[(Lr・Cr)]1/2とすることができ、ここで、Lrは共振コイルLrのインダクタンスを表し、Crは共振キャパシタCrのキャパシタンスを表す。絶縁変成器回路13の巻数比は、例えば1:1とすることができる。
【0021】
図1において、コンパレータ回路21ならびにコンパレータ24および25の各々の反転入力端子は記号「−」で示され、コンパレータ回路21ならびにコンパレータ24および25の各々の非反転入力端子は記号「+」で示される。
【0022】
AC電源(図示せず)からAC電圧ACINを受け取るように構成される一次整流器11に任意の既知の好適な回路構造を使用することができる。一次整流器11は図1に示された回路構造に限定されない。AC電源(図示せず)は、例えば100V/50HzのAC電圧ACINを供給することができる。スイッチング素子Q1およびQ2は、電界効果トランジスタ(FET)またはバイポーラ接合トランジスタ(BJT)などのトランジスタで形成することができる。例示のFETは、MOSFET(金属酸化物半導体電界効果トランジスタ)、CMOSFET(相補型MOSFET)、JFET(接合型FET)、MESFET(金属半導体FET)などを含む。例示のBJTはIGBT(絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)、HBT(ヘテロ接合バイポーラトランジスタ)などを含む。
【0023】
電流検出回路16はコンパレータ回路21の入力部に供給することができる検出電圧Vdetを出力するように構成され、コンパレータ回路21の他の入力部は地電位GNDに接地することができる。電流検出回路16は絶縁変成器回路13の一次側から共振電流測定を行う。いくつかの例では、電流検出回路16は、電流変成器、抵抗器回路などで形成することができる。
【0024】
共振コイルLrおよび共振キャパシタCrは、絶縁変成器回路13の二次側に配置された共振回路として構成することができる。いくつかの例では、共振コイルLrは、絶縁変成器回路13の漏れインダクタンスで形成することができる。
【0025】
コンバータ1−1は、ある特定のインピーダンスを有する負荷31にDC電圧±Voを結合するように構成することができる。
【0026】
PLL回路20は、VCO(電圧制御発振器)回路201、ループフィルタ回路(またはLPF(低域フィルタ))回路202、PFD(位相周波数検出器)回路203、およびロック検出回路204を含む。以下で説明されるように、PFD回路203は、その入力端子IN−1およびIN−2に入力されるパルス入力Vin1とVin2との間の位相誤差を検出するように構成され、ロック検出回路204は、PFD回路203で検出された位相誤差に応じてPLL回路20のロック状態またはロック解除状態を検出するように構成される。
【0027】
コンパレータ24は基準電圧V1を受け取るように構成され、コンパレータ25は基準電圧V2(V2>V1)を受け取るように構成される。オープンコレクタコンパレータがコンパレータ24および25に使用される場合には、パルス挿入または削除回路22および23は抵抗器回路で形成することができる。
【0028】
PWM制御回路17はIC(集積回路)チップ内に設けることができる。この場合、ICチップの内部発振器をPLL回路20のVCO回路201に使用することができる。
【0029】
コンバータ1−1はハーフブリッジ構造を使用し、ハーフブリッジ駆動回路12を備える。しかし、コンバータ1−1はフルブリッジ構造を使用し、ハーフブリッジ駆動回路12の代わりにフルブリッジ駆動回路を備えることができる。
【0030】
整流済みDC電圧Vdcはハーフブリッジ駆動回路12およびスイッチング素子Q1に供給することができ、スイッチング周波数fswでスイッチング素子Q1およびQ2のオン/オフ状態を交互に切り替えることによって高周波電力を絶縁変成器回路13の二次側に伝達することができる。したがって、二次整流器回路14ならびに二次平滑キャパシタC1およびC2は、負荷31に変換済み電圧、すなわちDC電圧±Voを印加するように構成される。帰還回路15は二次平滑キャパシタC1およびC2の出力に応じて帰還信号による負帰還をPWM制御回路17に与えるように構成され、さらに、負荷31のサイズにかかわらずDC電圧±Voをほぼ一定値に維持するためにパルス幅を調整するように構成することができる。
【0031】
コンバータ1−1の電力伝達効率は、スイッチング周波数fswが共振周波数f0に等しいとき最大値に達することができる。一方、スイッチング周波数fswと共振周波数f0との間の数%の程度のわずかな差(または誤差)は、電力伝達効率を例えば2分の1に悪化させることがある。したがって、PLL回路20は、共振コイルLrのインダクタンスおよび共振キャパシタCrのキャパシタンスに不整合がある場合でもスイッチング周波数fswを調整してこのわずかな差をゼロ(0)に収束させるように構成される。そのような不整合、すなわち設計値からの偏差は共振コイルLrおよび共振キャパシタCrの製造段階中に生成されることがある。
【0032】
ロック状態が達成された後、PFD回路203への2つのパルス入力Vin1およびVin2が規則的で連続的であれば、PLL回路20は、スイッチング周波数fswが共振周波数f0と実質的に等しくなるようにモニタし調整するように構成される。2つのパルス入力Vin1およびVin2のうちの一方が不連続になるか、または異常なもしくは過剰な雑音パルスが2つのパルス入力Vin1およびVin2の少なくとも一方に混合して交互入力の順序を切り替える場合、ループフィルタ回路202のDC出力V1fが変化する(すなわち、振幅が増大または減少する)方向がそのような擾乱によって反転させられることがあり、それによって、PLL回路20がロック状態からロック解除され、コンバータ1−1の出力が急激に減少する。ループフィルタ回路202のDC出力(フィルタ処理済み誤差信号、またはフィルタ処理済み出力とも呼ばれる)V1fは、パルス入力Vin1とVin2との間の位相誤差を検出し、位相誤差を示す出力VPFDを供給するように構成されるPFD回路203の出力(または誤差信号)VPFDの平均に対応する。急激に減少した後のコンバータ1−1の出力は、回復プロセスが擾乱に対して実行されるか、またはさらなる擾乱が前の擾乱を実質的に相殺しない限り、元のレベルを取り戻す可能性はない。
【0033】
したがって、この例では、スイッチング素子Q1およびQ2の出力と実質的に同じ位相を有する立ち上がりエッジトリガパルス信号を、ノードN1からパルス挿入または削除回路22に入力することができる。一方、一次側共振電流Iorのゼロ交差時間の近くで生じる立ち上がりエッジを有する立ち上がりエッジトリガパルス信号を、コンパレータ回路21からパルス挿入または削除回路23に入力することができる。パルス入力Vin2の位相がパルス入力Vin1に対して進んでいる場合、ループフィルタ回路202のDC出力V1fの振幅は増加し、その結果、スイッチング周波数fswの増加をもたらすことができる。パルス入力Vin2の位相がパルス入力Vin1に対して遅れている場合、ループフィルタ回路202のDC出力V1fの振幅は減少し、その結果、スイッチング周波数fswの減少をもたらすことができる。
【0034】
位相誤差を調整してパルス入力Vin1とVin2との間で実質的にゼロ(0)になるように制御を実行することができるので、共振周波数f0が負荷31に応じて変化する場合でも、共振周波数f0およびスイッチング周波数fswは実質的に一致するように調整することができる。その結果、正方向への共振電流Iorのゼロ交差が実質的に生じる時点は、図2に示されるように、ZCS(ゼロ電流スイッチング)動作を達成するように電圧上昇がノードN1で生じる時点に一致する。図2は、共振電流Iorと、ハーフブリッジ駆動回路12に入力されるノードN1における駆動電圧Vdrvとの関係を示す図である。図2において、縦軸はA.U.(任意単位)での電圧または電流振幅を示し、横軸はA.U.での時間を示す。スイッチング周波数fswは、共振周波数f0に例えば約20%から約30%を加えた変化範囲で変化することができる。
【0035】
いくつかの例では、雑音パルスは、パルス入力Vin1の2つの連続するパルスの間でパルス入力Vin1に混合することがある。この場合、PFD回路203は瞬間的に誤ってパルス入力Vin2の位相遅れを決定することがあり、ループフィルタ回路202のDC出力V1fの変化する方向が逆転し、それによりPLL回路20がロック状態からロック解除されることがある。このロック解除状態では、ループフィルタ回路202のDC出力V1fは振幅が減少し、PFD回路203の低電力供給限界(例えば0V)に近づき、その結果、スイッチング周波数fswがその下限に近づくことがある。この限界は、主に、PFD回路203の動作の限定された範囲に起因するものであり、それによりループフィルタ回路202のDC出力V1fは電力供給範囲(例えば、約0Vから約5Vの範囲)内に制限される。したがって、基準電圧V1が0.5Vから1Vとなり得る基準電圧V1以下の値にDC出力V1fが近づく場合、パルス挿入または削除回路22は、PFD回路203に供給されるパルス入力Vin1から1つのパルスを削除する(または、それにゼロパルスまたは低レベルパルスを挿入する)ことができる。コンパレータ24は、ループフィルタ回路202のDC出力(またはフィルタ処理済み誤差信号)V1fを受け取り評価して、いつDC出力V1fが第1の基準電圧V1以下になるか判定するように構成される。パルス挿入または削除回路22は、PLL回路20のロック解除状態を検出するロック検出回路204の出力(またはロック解除検出信号)Vlockによって作動することができるコンパレータ24の出力に応じて1つのパルスを削除することができる。実質的に同時に、パルス挿入または削除回路23はこの時間の間非作動(または抑制)とすることができる。パルス挿入または削除回路23は、PLL回路20のロック解除状態を検出するロック検出回路204の出力Vlockによって抑制することができるコンパレータ25の出力に応じて非作動とすることができる。上述のように1つのパルスを削除する結果として、PFD回路203は迅速に回復することができ、ループフィルタ回路202のDC出力V1fは振幅減少の前の振幅に戻り、それによってPLL回路20はロック状態に戻ることができる。ループフィルタ回路202の応答が迅速であるほど、PLL回路20の回復時間は短い。
【0036】
いくつかの例では、パルス入力Vin1の1つのパルスが、電力供給変動、雑音、または他の外部的に生成された擾乱によりドロップアウトすることがある。この場合、PFD回路203は瞬間的に誤ってパルス入力Vin2の位相の進みを決定することがあり、ループフィルタ回路202のDC出力V1fの変化する方向が逆転してPLL回路20をロック状態からロック解除することがある。このロック解除状態では、ループフィルタ回路202のDC出力V1fは振幅が増加し、PFD回路203の電力供給電圧(例えば5V)に近づき、その結果、スイッチング周波数fswがその上限に近づくことがある。やはり、それは、主に、PFD回路203の動作の限定された範囲に起因するものであり、それによりループフィルタ回路202のDC出力V1fは電力供給範囲(例えば、約0Vから約5Vの範囲)内に制限される。したがって、DC出力V1fが基準電圧V2以上の値(例えば、基準電圧V2は約3.5Vから約4Vの範囲とすることができる)に近づくと、パルス挿入または削除回路23は、PFD回路203に供給されるパルス入力Vin2から1つのパルスを削除する(または、それにゼロパルスまたは低レベルパルスを挿入する)ことができる。コンパレータ25は、ループフィルタ回路202のDC出力(またはフィルタ処理済み誤差信号)V1fを受け取り評価して、いつフィルタ処理済み誤差信号が第2の基準電圧V2以上になるか判定するように構成される。パルス挿入または削除回路23は、PLL回路20のロック解除状態を検出するロック検出回路204の出力Vlockによって作動することができるコンパレータ25の出力に応じて1つのパルスを削除することができる。実質的に同時に、ロック検出回路204の出力VlockはPLL回路20のロック解除状態を検出し、次に、コンパレータ24の出力を抑制し、その結果、パルス挿入または削除回路22は非作動となり得る(または抑制され得る)。上述のように1つのパルスを削除する結果として、PFD回路203は迅速に回復することができ、ループフィルタ回路202のDC出力V1fは振幅増加の前の振幅に戻り、それによってPLL回路20はロック状態に戻ることができる。やはり、ループフィルタ回路202の応答が迅速であるほど、PLL回路20の回復時間は短い。
【0037】
当然、雑音パルスがパルス入力Vin2の2つの連続するパルス間でパルス入力Vin2に混合するか、またはパルス入力Vin2の1つのパルスがドロップアウトする場合、上述の動作と同様の動作を実行することができる。
【0038】
いくつかの例では、便宜上、VCO回路201の振動周波数foscはスイッチング周波数fswと実質的に等しいと仮定される。しかし、VCO回路201の振動周波数foscはスイッチング周波数fswの倍数(例えば、スイッチング周波数fswのn倍)とすることができる。この場合、VCO回路201の発振器出力信号をPWM制御回路17に供給する前に1/n周波数分割を実行することができる。
【0039】
図3は、PLL回路20の信号波形を示す図である。図3において、縦軸はA.U.での電圧を示し、横軸はA.U.での時間を示す。Zはハイインピーダンスオフ状態を示す。図3は、PFD回路203へのパルス入力Vin2およびVin1、ループフィルタ回路202に供給されるPFD回路203の出力VPFD、ループフィルタ回路202のDC出力V1f、ならびにロック検出回路204に供給されるPFD回路203の出力VLDを示す。図3のX1で示されるように、パルス入力Vin2(または共振電流Ior)の位相がパルス入力Vin1に対して進む場合、ループフィルタ回路202のDC出力V1fは振幅が増大することができ、ロック検出回路204はそれに応答することができる。一方、図3のX2で示されるように、パルス入力Vin1(または駆動電圧Vdrv)の位相がパルス入力Vin2に対して進む場合、ループフィルタ回路202のDC出力V1fは振幅が減少し、ロック検出回路204はそれに応答することができる。
【0040】
図4は、パルス入力Vin1とVin2との間の位相誤差を説明するための図である。図4において、縦軸はA.U.でのDC出力V1fを示し、横軸はパルス入力Vin1とVin2との間の位相誤差φVin2−φVin1を示す。図4は、DC出力V1fが1/2電力供給電圧Vccである場合、位相誤差φVin2−φVin1はゼロ(0)であり、DC出力V1fが基準電圧V1から基準電圧V2まで変化するとき、スイッチング周波数fswは、最大で30%を引いた最小値から最大で30%を加えた最大値まで増加することができることを示す。
【0041】
言い換えれば、図4は、パルス入力Vin2(または共振電流Ior)の位相がパルス入力Vin1(または駆動電圧Vdrv)に対して進む場合に、DC出力V1fは振幅が増大し、スイッチング周波数fswは増大することができることを示す。この場合は、スイッチング周波数fswが共振コイルLrおよび共振キャパシタCrの共振周波数f0よりも瞬間的に低くなる状態に対応する。一方、図4は、パルス入力Vin2(または共振電流Ior)の位相がパルス入力Vin1(または駆動電圧Vdrv)に対して遅れる場合に、DC出力V1fは振幅が減少し、スイッチング周波数fswは減少することができることも示す。後者の場合は、スイッチング周波数fswが共振コイルLrおよび共振キャパシタCrの共振周波数f0よりも瞬間的に高くなる状態に対応する。
【0042】
したがって、帰還ループはパルス入力Vin1およびVin2の立ち上がりエッジを一致させるように機能し、それらの間の位相誤差φVin2−φVin1をゼロ(0)にし、PLL回路20をロック状態に制御することができる。このロック状態では、正方向の共振電流Iorのゼロ交差と、ノードN1の駆動電圧Vdrvの立ち上がりエッジとは実質的に一致することができる。
【0043】
図5は、コンバータ1−1のインピーダンス(Lr、Cr)特性impおよび位相特性φを示す図である。図5において、左の縦軸はインピーダンス(dBΩ)を示し、右の縦軸は位相(度)を示し、横軸は周波数(Hz)を示す。図5は、スイッチング周波数fswが共振周波数f0と一致し、パルス入力Vin1とVin2との間の位相誤差φVin2−φVin1がゼロ(0)であり、インピーダンス特性impが実質的に最小であるとき、電力伝達効率が実質的に最大になることを示す。共振電流Iorの位相遅れはfsw>f0のとき生じることがあり、共振電流Iorの位相の進み(または前進)はfsw<f0のとき生じることがある。したがって、別の方法で考察すると、PLL回路20は、パルス入力Vin1とVin2との間の位相誤差φVin2−φVin1をゼロ(0)にするようにロック状態に制御することができると見なすことができる。
【0044】
図6は、共振周波数f0が±20%だけ変化する場合のPLL回路20の動作を説明するための図である。図6において、縦軸は電圧または電流振幅を示し、横軸は時間を示す。図6は、パルス入力Vin1およびVin2、ループフィルタ回路202のDC出力V1f、ならびにノードN2から共振コイルLrの方に流れる共振電流Iorを示し、五角形形状の先端は各々の対応する信号波形のゼロレベル(または基準レベル)を示す。信号波形のゼロレベル(または基準レベル)のそのような表示を図面で使用することができる。電圧Vin1、Vin2、およびV1fの縦軸は1目盛当たり5V(5V/div)を示し、共振電流Iorの縦軸は1目盛当たり20A(20A/div)を示す。図6の横軸は1目盛当たり50μsec(50μs/div)を示す。図6に示された例では、共振周波数f0は、共振コイルLrのインダクタンスを47μH→68μH→30μHに変化させることによって81kHz→65kHz→97kHzに変化することができる。PFD回路203に供給されるパルス入力Vin1およびVin2が連続性を維持される限り、共振周波数f0が急激に変化する場合でさえPLL回路20は追従することができることを図6から確認することができる。
【0045】
図7は、パルス挿入または削除回路22および23の例を説明するための回路図である。便宜上、図7に示されたコンパレータ回路21ならびにコンパレータ24および25はオープンコレクタコンパレータで形成されることが仮定されているが、コンパレータ回路21ならびにコンパレータ24および25はオープンドレインコンパレータで形成することができる。この例では、パルス挿入または削除回路22は抵抗器Rs1で形成することができ、パルス挿入または削除回路23は抵抗器Rpuで形成することができる。
【0046】
さらに、この例では、抵抗器Rs2およびキャパシタCs2を含む雑音フィルタが図7に示されるようにコンパレータ回路21に結合され、コンパレータ回路21にヒステリシス特性を与えることができる。例えば、抵抗器Rs2の抵抗は1kΩとすることができ、キャパシタCs2のキャパシタンスは1000pFとすることができる。雑音フィルタを利用して、共振電流Iorのゼロ交差時間の近くで生じる雑音または歪みにコンパレータ回路21が応答しないようにすることができる。コンパレータ回路21のヒステリシス特性は、負荷31が比較的小さい場合、PLL動作の限界を決定することができる。PLL回路20がこの限界の下で動作し、負荷31が比較的小さい場合、パルス入力Vin1を低レベルに、パルス入力Vin2を高レベルに、DC出力V1fを低レベルに自動的に設定することによってスイッチング周波数fswを最小値の方に制御することができる。
【0047】
さらに、この例では、電流検出回路16から出力され、コンパレータ回路21に入力される検出電圧Vdet出力のダイナミックレンジが数mVから数Vで、比較的大きい場合にコンパレータ回路21が飽和しないように、リミッタDs1をコンパレータ回路21に結合することができる。
【0048】
さらに、この例では、抵抗器Rs1およびキャパシタCs1を含む雑音フィルタはノードN1に結合することができる。駆動電圧Vdrvの位相および共振電流Iorのゼロ交差の位相は、抵抗器Rs2およびキャパシタCs2を設けたため図2とはわずかに異なることがある。しかし、駆動電圧Vdrvの位相と共振電流Iorのゼロ交差とのそのようなわずかな差は、それぞれ抵抗器Rs1およびキャパシタCs1の抵抗およびキャパシタンスを調整することによって相殺することができる。
【0049】
図7は、挿入される回復パルスがゼロパルス(または低レベルパルス)である一例を示す。パルス挿入または削除回路22および23の結合は、回復パルスとして高レベルパルスを挿入するために逆転することができる。DC出力V1fが図4の約0Vから約V1または約V2から約Vccまでの範囲にあるとき、回復パルス挿入動作を実行することができ、他の場合、PLL回路20がロック状態で動作するV1を超えおよびV2未満の範囲では回復パルス挿入動作を抑制することができる。駆動電圧VdrvはノードN2の電圧Vorに比例することができ、検出電圧Vdetは共振電流Iorに比例することができる。
【0050】
図8は、コンバータ1−1の出力電力を500W(±Vo=80Vおよび負荷31=12.8Ω)とすることができ、共振コイルLrのインダクタンスを47μHとすることができ、共振キャパシタCrのキャパシタンスを0.082μFとすることができる一例での回復の効果を説明するための図である。図8において、縦軸は電圧または電流振幅を示し、横軸は時間を示す。図8は、パルス入力Vin1およびVin2、ループフィルタ回路202のDC出力V1f、ノードN2から共振コイルLrの方に流れる共振電流Ior、コンバータ1−1の出力DC電圧±Vo、ならびにロック検出回路204の出力Vlockを示す。電圧Vin1、Vin2、V1f、およびVlockの縦軸は1目盛当たり5V(5V/div)を示し、出力DC電圧±Voの縦軸は1目盛当たり50V(50V/div)を示し、共振電流Iorの縦軸は1目盛当たり20A(20A/div)を示す。図8の横軸は1目盛当たり20μsec(20μs/div)を示す。
【0051】
図8において、P1は、パルス入力Vin1の位相がパルス入力Vin2の位相に対して大幅に進んでいると決定されるか、またはパルス入力Vin2の位相がパルス入力Vin1の位相に対して大幅に遅れていると決定され、かつDC出力V1fが急激に減少する時間を示す。Di1は、パルス入力Vin1に対して挿入されたゼロパルスを示す。P2は、パルス入力Vin2の立ち上がりエッジに応じてDC出力V1fが元のレベルに回復し始める時間を示す。
【0052】
スイッチング周波数が80kHzである場合、二次平滑キャパシタC1およびC2のキャパシタンスが100μFであるとき、PFD回路203の回復時間Tは30μsec以下とすることができ、出力DC電圧±Voの減少は約6%以下とすることができる。同等の従来のコンバータでは、出力の減少は、同等の従来のコンバータの二次平滑キャパシタC1およびC2のキャパシタンスを1000μF以上とすることができるので6%よりかなり小さくすることができる。
【0053】
図9は、コンバータ1−1の比較例を説明するための図である。便宜上、コンバータ1−1の比較例は、図8と同等の動作条件下で動作するが、回復を実行しない(すなわち、回復機能は抑制される)ことが仮定される。図9は、回復が実行されない場合のパルス入力Vin1およびVin2、ループフィルタ回路202のDC出力V1f、ノードL2から共振コイルLrの方に流れる共振電流Ior、およびコンバータ1−1の比較例の出力DC電圧±Voを示す。回復が実行されないので、DC出力V1fは減少したレベルに留まることがあり、コンバータ1−1の比較例の出力DC電圧±Voに相当な減少が生じることがあることが図9から分かる。
【0054】
図10は、パルス入力Vin1のパルスがコンバータ1−1でドロップアウトするときの回復を説明するための図である。図10において、図8と同じ記号および同等の動作条件が使用される。
【0055】
図10において、Dpはドロップアウトしたパルス入力Vin1のパルスを示し、Di2はパルス入力Vin2に対して挿入されるパルスを示す。さらに、P3は、パルス入力Vin2の位相がパルス入力Vin1の位相に対して大幅に進んでいると決定されるか、またはパルス入力Vin1の位相がパルス入力Vin2の位相に対して大幅に遅れていると決定され、かつDC出力V1fが急激に増加する時間を示す。P4は、パルス入力Vin1の立ち上がりエッジに応じてDC出力V1fが元のレベルに回復し始める時間を示す。
【0056】
図11は、コンバータ1−1の比較例を説明するための図である。便宜上、コンバータ1−1の比較例は、図10と同等の動作条件下で動作するが、回復を実行しないことが仮定される。図11において、図9と同じ記号が使用される。回復が実行されないので、DC出力V1fは増加したレベルに留まることがあり、コンバータ1−1の比較例の出力DC電圧±Voに相当な減少が生じることがあることが図11から分かる。
【0057】
図12は、雑音がコンバータ1−1のパルス入力Vin1に混合するときの回復を説明するための図である。図12において、縦軸は電圧または電流振幅を示し、横軸は時間を示す。図12は、パルス入力Vin1およびVin2、ノードN2から共振コイルLrの方に流れる共振電流Ior、ならびにノードN2の電圧Vorを示す。電圧Vin1およびVin2の縦軸は1目盛当たり5V(5V/div)を示し、共振電流Iorの縦軸は1目盛当たり20A(20A/div)を示し、電圧Vorの縦軸は1目盛当たり100V(100V/div)を示す。図12の横軸は1目盛当たり20μsec(20μs/div)を示す。
【0058】
図12の動作条件は図8および10のものと実質的に同じである。しかし、図12では、図1のノードN2とパルス挿入または削除回路22の出力部との間に結合キャパシタCf(図示せず)を瞬間的に接続することによって雑音の混合をシミュレートすることができる。例えば、結合キャパシタCfのキャパシタンスは10pFとすることができる。結合キャパシタCfは、反復不能な(または再現不能な)雑音または歪みをシミュレートするために瞬間的に接続し、恒久的には接続しないようにできる。
【0059】
図12において、P5は、結合キャパシタCfの瞬間的接続によりパルス入力Vin1に加えられたスパイク雑音を示し、Di1は、パルス入力Vin1に対して挿入されたゼロパルスを示す。共振電流Iorは、Di1で示されるようなゼロパルスの挿入の後、迅速に回復することができることが図12から分かる。
【0060】
図13は、コンバータ1−1の比較例を説明するための図である。便宜上、コンバータ1−1の比較例は、図12と同等の動作条件下で動作するが、回復を実行しないことが仮定される。図13において、図12と同じ記号が使用される。結合キャパシタCfの瞬間的接続によりスパイク雑音がパルス入力Vin1に加えられた後、共振電流Iorは元のレベルに回復しないことがあることが図13から分かる。
【0061】
図14は、軽負荷状態でのコンバータ1−1の動作を説明するための図であり、コンバータ1−1の出力電力を25Wとすることができ、共振コイルLrのインダクタンスを20μHとすることができ、共振キャパシタCrのキャパシタンスを10μFとすることができる場合にPLL回路20はスイッチング周波数fswの最小値の近くでロック状態にある。図14において、縦軸は電圧または電流振幅を示し、横軸は時間を示す。図14は、パルス入力Vin1およびVin2、ループフィルタ回路202のDC出力V1f、ノードN2から共振コイルLrの方に流れる共振電流Ior、ならびにコンバータ1−1の出力DC電圧±Voを示す。電圧Vin1、Vin2、およびV1fの縦軸は1目盛当たり5V(5V/div)を示し、共振電流Iorの縦軸は1目盛当たり5A(5A/div)を示し、出力DC電圧±Voの縦軸は1目盛当たり50V(50V/div)を示す。図14の横軸は1目盛当たり20μsec(20μs/div)を示す。
【0062】
図15は、軽負荷状態でのコンバータ1−1の動作を説明するための図であり、コンバータ1−1の出力電力を5Wとすることができ、共振コイルLrのインダクタンスを25μHとすることができ、共振キャパシタCrのキャパシタンスを10μFとすることができる場合にPLL回路20はスイッチング周波数fswの最小値の近くでロック状態にある。図15において、縦軸は電圧または電流振幅を示し、横軸は時間を示す。図15は、パルス入力Vin1およびVin2、ループフィルタ回路202のDC出力V1f、ノードN2から共振コイルLrの方に流れる共振電流Ior、駆動電圧Vdrv、ならびにロック検出回路204の出力Vlockを示す。電圧Vin1、Vin2、V1f、およびVlockの縦軸は1目盛当たり5V(5V/div)を示し、共振電流Iorの縦軸は1目盛当たり5A(5A/div)を示し、駆動電圧Vdrvの縦軸は1目盛当たり200V(200V/div)を示す。図15の横軸は1目盛当たり20μsec(20μs/div)を示す。駆動電圧Vdrvが示されているが、それは、パルス入力Vin1がこの例では低レベルを維持しており、駆動電圧Vdrvが、低レベルで維持される前のパルス入力Vin1の波形と類似の波形および同様の位相を有するからである。便宜上、スイッチング素子Q1のゲート電圧は駆動電圧Vdrvと見なすことができる。
【0063】
図16は、図14と同等の条件下であるが、回復機能が抑制された場合の軽負荷状態でのコンバータ1−1の比較例の動作を説明するための図である。図16において、図14と同じ記号が使用される。便宜上、図16は共振電流Iorおよび駆動電圧Vdrvを示す。駆動電圧Vdrvの縦軸は1目盛当たり200V(50V/div)を示す。
【0064】
図17は、図15と同等の条件下であるが、回復機能が抑制された場合の軽負荷状態でのコンバータ1−1の比較例の動作を説明するための図である。図17において、図15と同じ記号が使用される。便宜上、図17は共振電流Iorおよび駆動電圧Vdrvを示す。駆動電圧Vdrvの縦軸は1目盛当たり200V(50V/div)を示す。
【0065】
図14と16との比較および図15と17との比較から分かるように、回復機能を使用しない図15および17と比較して回復機能を使用する図14および15では、共振電流Iorのピーク値をより低くすることができ、雑音をより低くすることができる。
【0066】
さらに、コンバータ1−1の出力電力が約5W以下になり、コンパレータ回路21がそのヒステリシス特性のために動作を停止することがある例では、図15に示されるように、パルス入力Vin2は高レベルに調整することができ、出力Vlockは低レベルに調整することができ、DC出力V1fは基準電圧V1以下に下がることがある。その結果、パルス挿入または削除回路23は、コンパレータ24の出力に応じてパルス入力Vin1を低レベルに調整することができる。言い換えれば、PLL動作を強制的に停止させることができ、スイッチング周波数fswはスイッチング損失を低減するために最小値に調整することができる。したがって、コンバータ1−1の出力は、出力が最大出力の1/100となることがある軽負荷状態下でさえ十分に制御される。
【0067】
図18は、重負荷状態でのコンバータ1−1の共振動作を説明するための図であり、コンバータ1−1の出力電力を500Wとすることができ、共振コイルLrのインダクタンスを47μHとすることができ、共振キャパシタCrのキャパシタンスを0.082μFとすることができる場合に、PLL回路20はロック状態にある。例えば、AC電源は100V/50HzのAC電圧ACINを供給することができ、電圧Vdcは140Vとすることができる。図18において、縦軸は電圧または電流振幅を示し、横軸は時間を示す。図18は、スイッチング素子Q1のゲート電圧Vg1、スイッチング素子Q1のドレイン電流Id1、スイッチング素子Q2のゲート電圧Vg2、およびスイッチング素子Q2のドレイン電流Id2を示す。ゲート電圧Vg1の縦軸は1目盛当たり100V(100V/div)を示し、ドレイン電流Id1およびId2の縦軸は1目盛当たり20A(20A/div)を示し、ゲート電圧Vg2の縦軸は1目盛当たり10V(10V/div)を示す。図18の横軸は1目盛当たり20μsec(20μs/div)を示す。
【0068】
ゲート電圧Vg1およびVg2がスイッチング素子Q1およびQ2のドレイン−ソース電圧の代わりに図18に示されるが、それは、ドレイン−ソース電圧は雑音を含むより複雑な波形を有し、ゲート電圧Vg1およびVg2はスイッチング素子Q1およびQ2のドレイン−ソース電圧の波形と類似の波形を有するからである。共振電流IorはId1−Id2で表すことができる。
【0069】
図19は、重負荷状態でのコンバータ1−1の共振動作を説明するための図であり、コンバータ1−1の出力電力を500Wとすることができ、共振コイルLrのインダクタンスを47μHとすることができ、共振キャパシタCrのキャパシタンスを0.082μFとすることができる場合に、PLL回路20はロック状態にある。例えば、AC電源は220V/50HzのAC電圧ACINを供給することができ、電圧Vdcは310Vとすることができる。図19において、図18と同じ記号が使用される。
【0070】
図20は、図18と同様の条件下であるが、共振コイルLrのインダクタンスを5μHとすることができ、共振キャパシタCrのキャパシタンスを100μFとすることができる場合の重負荷状態でのコンバータ1−1の非共振動作を説明するための図である。
【0071】
図21は、図19と同様の条件下であるが、共振コイルLrのインダクタンスを5μHとすることができ、共振キャパシタCrのキャパシタンスを100μFとすることができる場合の重負荷状態でのコンバータ1−1の非共振動作を説明するための図である。
【0072】
図18と20との比較および図19と21との比較から分かるように、非共振動作の図20および21と比較して共振動作の図18および19では、ドレイン電流Id1およびId2のピーク値をより低くすることができ、雑音をより低くすることができる。デューティ比が小さいほどおよびピーク値が高いほど、ドレイン電流Id1およびId2の各々の実効値は大きくなり、電力損失を増加させる。図18および19の電力損失は図20および21の電力損失と比較して低くなり得ることが分かる。さらに、図18および19のスイッチング損失は図20および21のものと比較して小さくなり得る。
【0073】
図19のスイッチング損失は図18のものよりもわずかに高いことがあるが、ドレイン電流Id1およびId2のピーク値はほぼ一定に維持される。したがって、図18の場合と同様に、図19のスイッチング損失および雑音は急激に増加しないであろう。一方、図21のスイッチング損失は、ドレイン電流Id1およびId2のピークが50Aに達することがあるのでかなり高いことがある。図21のかなり高いスイッチング損失により、好適なスイッチング素子Q1およびQ2ならびに変成器回路13を適切に選択することが困難になることがある。
【0074】
ゲート電圧波形(Vg1およびVg2)およびドレイン電流波形(Id1およびId2)間の不要なオーバラップを低減するために、共振周波数f0は、例えば80kHzから95kHzに上昇させることができる。しかし、変化することがある負荷31に応じてコンバータ1−1の動作条件を最適化するのは困難なことがある。
【0075】
図22は、パルス挿入または削除回路22および23の他の例を説明するための回路図である。図22において、図7の対応する部分と同じである部分は同じ参照番号で示され、その説明は省略される。
【0076】
図22において、コンパレータ24と、抵抗器Rs1およびキャパシタCs1を結合するノードとの間にインバータ回路250を設けることができる。さらに、コンパレータ回路21の反転入力端子および非反転入力端子の結合は図7のものと逆にすることができる。言い換えれば、図22において、抵抗器Rs2、キャパシタCs2、およびリミッタDs1を結合するノードは、コンパレータ回路21の反転入力端子に結合することができる。一方、図22に示されたコンパレータ回路21の非反転入力端子は接地することができる。
【0077】
図22によれば、駆動電圧Vdrvの立ち下がりエッジおよび共振電流Iorの負方向のゼロ交差に応じて、PLL動作を実行して、PLL回路20をロックすることができる。
【0078】
図23は、図22に示されたパルス挿入または削除回路22および23が図7に示されたパルス挿入または削除回路22および23の代わりに使用されることを除いて図18と実質的に同じ動作条件下における重負荷状態でのコンバータ1−1の動作を説明するための図である。図23において、図18と同じ記号が使用される。図18に示された場合と同様に低い電力損失および低いスイッチング損失を達成することができることが図23から分かる。
【0079】
図24は、本開示の少なくともいくつかの実施形態により構成される電力コンバータの別の例を示すブロック図である。この例では、電力コンバータはハーフブリッジ共振型高周波誘導加熱インバータ1−2で形成される。図24において、図1の対応する部分と同じである部分は同じ参照番号で示され、その説明は省略される。
【0080】
図24では、高周波AC出力を二次側で生成することができ、負荷32は共振コイルLrおよび共振抵抗器Rrを含むことができる。さらに、帰還回路151は、負荷32のサイズにかかわらず高周波AC出力を一定に維持するために、電流検出回路16から出力された検出電圧Vdetに応じて帰還信号による負帰還をPWM制御回路17に与え、それによって、パルス幅を調整するように構成することができる。帰還回路151は、外部レベル制御信号(または電圧)Vcontに応じてPWM制御回路17への負帰還を変化させるように構成される出力可変機能を含むことができる。さらに、AC電源の力率を改善するために、一次整流器回路11内の一次平滑キャパシタCpのキャパシタンスは、図1に示されたコンバータ1−1のものと比べて比較的小さく設定することができる。PWM制御回路17への可変負帰還を調整するために整流済みDC電圧Vdcの一部を帰還回路151に供給することができ、その結果、共振電流Iorの包絡線は整流済みDC電圧Vdcのものと同様になり得る。負荷32を流れる出力電流Io1は共振電流Iorと等しくなり得る。
【0081】
インバータ1−2はハーフブリッジ構造を使用し、ハーフブリッジ駆動回路12を備える。しかし、インバータ1−2はフルブリッジ構造を使用し、ハーフブリッジ駆動回路12の代わりにフルブリッジ駆動回路を備えることができる。
【0082】
図25は、パルス入力Vin2のパルスがインバータ1−2でドロップアウトするときの回復を説明するための図である。例えば、AC電源は100V/50HzのAC電圧ACINを供給することができ、スイッチング周波数fswは約80kHzとすることができ、一次平滑キャパシタCpのキャパシタンスは1μFとすることができ、共振抵抗器Rrの抵抗は1Ωとすることができる。図25において、縦軸は電圧または電流振幅を示し、横軸は時間を示す。図25は、整流済みDC電圧Vdc、一次整流器回路11を流れる電流Iac、パルス入力Vin2、ループフィルタ回路202のDC出力V1f、およびノードN2から共振コイルLrの方に流れる共振電流Iorを示す。電圧Vdc、Vin2、およびV1fの縦軸は1目盛当たり5V(5V/div)を示し、電流Iacの縦軸は1目盛当たり10A(10A/div)を示し、共振電流Iorの縦軸は1目盛当たり20A(20A/div)を示す。図25の横軸は1目盛当たり2msec(2ms/div)を示す。
【0083】
DC出力V1fおよび共振電流Iorは、パルス入力Vin2のパルスのドロップアウトに応じて減少することがあるが、回復プロセスはDC出力V1fおよび共振電流Iorを元のレベルに迅速に戻すことができることが図25から分かる。回復時間は1msec以下とすることができる。力率は約1とすることができ、インバータ1−2の電流Iacは小さい高調波を含むことがある。
【0084】
図26は、インバータ1−2の比較例を説明するための図である。便宜上、インバータ1−2の比較例は、図25と同等の動作条件下で動作するが、回復を実行しないことが仮定される。図26において、図25と同じ記号が使用される。回復プロセスが実行されないので、パルス入力Vin2のパルスのドロップアウトが生じた後、DC出力V1fおよび共振電流Iorは減少したレベルのままとなることがあることが図26から分かる。その結果、図26と図25との比較から分かるように、出力電流Io1が共振電流Iorと等しくなることがあるので、インバータ1−2のこの比較例の出力は相当な減少が生じることがある。
【0085】
いくつかの例示の実施形態では、PLLの位相検出により得られたフィルタ処理済み出力が第1の基準レベルより下がり、PLLのロック解除状態が、第1および第2のパルス入力の一方の他方に対する位相遅れに応じて検出されたとき、PLLへの第1および第2のパルス入力の一方の1つのパルスを削除することができる。一方、フィルタ処理済み出力が第2の基準レベルを超え、PLLのロック解除状態が、第1および第2のパルス入力の一方の他方に対する位相進みに応じて検出されたとき、第1および第2のパルス入力の他方の1つのパルスを削除することができる。しかし、PLLの位相検出により得られたフィルタ処理済み出力が第1の基準レベルより下がり、PLLのロック解除状態が、第1および第2のパルス入力の一方の他方に対する位相遅れに応じて検出されたとき、PLLへの第1および第2のパルス入力の一方の2つ以上のパルスを削除することができる。この場合、フィルタ処理済み出力が第2の基準レベルを超え、PLLのロック解除状態が、第1および第2のパルス入力の一方の他方に対する位相進みに応じて検出されたとき、第1および第2のパルス入力の他方の2つ以上のパルスを削除することができる。
【0086】
さらに、いくつかの例示の実施形態では、PLLの位相検出により得られたフィルタ処理済み出力が第1の基準レベルより下がり、PLLのロック解除状態が、第1および第2のパルス入力の一方の他方に対する位相遅れに応じて検出されたとき、PLLへの第1および第2のパルス入力の一方に1つまたは複数のパルスを挿入することができる。一方、フィルタ処理済み出力が第2の基準レベルを超え、PLLのロック解除状態が、第1および第2のパルス入力の一方の他方に対する位相進みに応じて検出されたとき、第1および第2のパルス入力の他方に1つまたは複数のパルスを挿入することができる。
【0087】
言い換えれば、パルス挿入または削除回路22および23は、PFD203の入力端子IN−1およびIN−2に入力されるパルス入力Vin1およびVin2に対して1つまたは複数のパルスを削除または挿入することができる。したがって、パルス入力Vin1またはVin2に対する1つまたは複数のパルスの挿入は、1つまたは複数の非ゼロパルスまたは高レベルのパルスを挿入することを含むことができ、パルス入力Vin1またはVin2から1つまたは複数のパルスを実質的に相殺または削除するためにパルス入力Vin1またはVin2に1つまたは複数のゼロパルスまたは低レベルのパルスを挿入することに限定されない。
【0088】
図27は、パルス挿入または削除回路22および23によるパルスの削除および挿入を説明するための図である。図27において、便宜上、1つのパルスがパルス入力に対して削除または挿入されることが仮定される。図27に示されるように、ループフィルタ回路202のDC出力V1fが基準電圧V1よりも低い場合、PFD203の入力端子IN−1へのパルス入力の1つのパルスを削除することができ、その結果、PFD回路203は、PFD203の入力端子IN−2への次のパルス入力の立ち上がりエッジにおいてPLL回路20をロック状態に回復し戻すことができる。ループフィルタ回路202のDC出力V1fが基準電圧V2よりも大きい場合、PFD203の入力端子IN−2へのパルス入力の1つのパルスを削除することができ、その結果、PFD回路203は、PFD203の入力端子IN−1への次のパルス入力の立ち上がりエッジにおいてPLL回路20をロック状態に回復し戻すことができる。
【0089】
一方、ループフィルタ回路202のDC出力V1fが基準電圧V1よりも低い場合、PFD203の入力端子IN−2へのパルス入力の2つの連続するパルス間で連続するパルスのデューティ比が変化する場所に1つのパルスを挿入(または付加)することができ、その結果、PFD回路203は、挿入されたパルスの直後のパルスの立ち上がりエッジにおいてPLL回路20をロック状態に回復し戻すことができる。ループフィルタ回路202のDC出力V1fが基準電圧V2よりも大きい場合、PFD203の入力端子IN−1へのパルス入力の2つの連続するパルス間で連続するパルスのデューティ比が変化する場所に1つのパルスを挿入(または付加)することができ、その結果、PFD回路203は、挿入されたパルスの直後のパルスの立ち上がりエッジにおいてPLL回路20をロック状態に回復し戻すことができる。
【0090】
図28は、図8と同等の一例での回復の効果を説明するための図である。図28において、図8と同じ記号が使用される。連続するパルスのデューティ比が変化する、点線で示された場所Ap1に非ゼロパルスを挿入すると、比較的短い回復時間でPLL回路20をロック状態に戻すことができることが図28から分かる。
【0091】
図29は、図10と同等の一例での回復を説明するための図である。図29において、図10と同じ記号が使用される。連続するパルスのデューティ比が変化する、点線で示された場所Ap2に非ゼロパルスを挿入すると、比較的短い回復時間でPLL回路20をロック状態に戻すことができることが図29から分かる。
【0092】
「に応じた」または「に応じて」という用語への本開示における言及は特定のフィーチャおよび/または構造への反応に限定されない。あるフィーチャは別のフィーチャおよび/または構造に応じることもでき、そのフィーチャおよび/または構造内にあることもできる。さらに、「結合された」または「応じた」または「に応じて」または「連通して」などの用語または句が本明細書または後続の特許請求の範囲で使用されるとき、これらの用語は広義に解釈されるべきである。例えば、「に結合された」という句は、その句が使用される文脈に応じて、伝達的に、電気的に、および/または動作可能に結合されることを意味することができる。
【0093】
本明細書で述べられた様式でデバイスおよび/またはプロセスを説明し、その後、エンジニアリング方式を使用してそのような説明されたデバイス(例えば、送信機、受信機、無線デバイス、コンピューティングプラットフォーム、コンピューティングデバイスなど)および/または方法をデータ処理システムに統合することは当技術分野において一般的であることが当業者なら認識するであろう。すなわち、本明細書で説明されたデバイスおよび/または方法の少なくとも一部は、妥当な量の実験を介してデータ処理システムに統合することができる。典型的なデータ処理システムは、一般に、システムユニットハウジングと、ビデオディスプレイデバイスと、揮発性および不揮発性メモリなどのメモリと、マイクロプロセッサおよびデジタル信号プロセッサなどのプロセッサと、オペレーティングシステム、ドライバ、グラフィカルユーザーインターフェース、およびアプリケーションプログラムなどの計算エンティティと、タッチパッドまたはスクリーンなどの1つまたは複数の対話デバイスと、および/または帰還ループおよび制御モータ(例えば、位置および/または速さを感知するための帰還、構成要素および/または量を移動および/または調整するための制御モータ)を含む制御システムとのうちの1つまたは複数を含むことを当業者なら認識するであろう。典型的なデータ処理システムは、データコンピューティング/通信および/またはネットワークコンピューティング/通信システムで一般に見いだされるものなどの任意の好適な市販の構成要素を利用して実施することができる。
【0094】
本明細書で説明した内容は、時には、様々な他の構成要素または要素に含まれる、またはそれらに接続される様々な構成要素または要素を示している。そのような示された構成は単に例であり、事実上、同じ機能を達成する他の多くの構成を実施することができることが理解されるべきである。概念的な意味で、同じ機能を達成するための構成要素の任意の構成は所望の機能が達成されるように効果的に「関連づけ」られる。したがって、特定の機能を達成するために組み合わされた本明細書の任意の2つの構成要素は、構成または中間構成要素には関係なく所望の機能が達成されるように互いに「関連づけられる」と見なすことができる。同様に、そのように関連づけられた任意の2つの構成要素は、所望の機能を達成するように互いに「動作可能に接続されている」または「動作可能に結合されている」と見なすこともでき、そのように関連づけることができる任意の2つの構成要素は、所望の機能を達成するように互いに「動作可能に結合可能である」と見なすこともできる。動作可能に結合可能である特定の例は、限定はしないが、物理的に嵌合可能なおよび/または物理的に相互作用する構成要素、および/または無線で相互作用可能なおよび/または無線で相互作用する構成要素、および/または論理的に相互作用するおよび/または論理的に相互作用可能な構成要素を含む。
【0095】
本明細書における実質的に任意の複数形および/または単数形の用語の使用に関して、当業者は、文脈および/または用途に応じて、複数形から単数形および/または単数形から複数形に変換することができる。様々な単数形/複数形入替を、明暸にするために本明細書では明確に述べることがある。
【0096】
一般に、本明細書で、特に添付の特許請求の範囲(例えば、添付の特許請求の範囲の本体)で使用される用語は全体的に「オープン」な用語として意図されている(例えば、「含んでいる(including)」という用語は「限定はしないが、含んでいる(including but not limited to)」と解釈されるべきであり、「有する」という用語は「少なくとも有する」と解釈されるべきであり、「含む(includes)」という用語は「限定はしないが、含む(includes but not limited to)」と解釈されるべきであるなど)ことが当業者なら理解されるであろう。導入された請求項詳述に関して特定の数が意図される場合、そのような意図は請求項に明確に詳述されることになり、そのような詳述がない状態ではそのような意図は存在しないことが当業者ならさらに理解されるであろう。例えば、理解への助けとして、以下の添付の特許請求の範囲は、請求項詳述を導入するために「少なくとも1つの」および「1つまたは複数の」という導入句の使用を含むことができる。そのような句の使用は、同じ請求項が「1つまたは複数の」または「少なくとも1つの」という導入句、および「a」または「an」などの不定詞を含む(例えば、「a」および/または「an」は一般に「少なくとも1つの」または「1つまたは複数の」と解釈されるべきである)ときでさえ「a」または「an」という不定冠詞による請求項詳述の導入は、そのような導入された請求項詳述を含む任意の特定の請求項を1つだけそのような詳述を含む発明に制限することを意味するように解釈されるべきでなく、同じことは、請求項詳述を導入するのに使用される定冠詞の使用に当てはまる。さらに、導入された請求項詳述に関して特定の数が詳述される場合、そのような詳述は少なくとも詳述された数を意味する(例えば、他の修飾語句なしの「2つの詳述」というむき出しの詳述は一般に少なくとも2つの詳述、または2つ以上の詳述を意味する)ように一般に解釈されるべきであることを当業者なら認識するであろう。さらに、「A、B、およびCのうちの少なくとも1つなど」に類似する慣例が使用される例では、一般に、そのような解釈は当業者がその慣例を理解する意味で与えられる(例えば、「A、B、およびCのうちの少なくとも1つを有するシステム」は、限定はしないが、Aだけ、Bだけ、Cだけ、AおよびBともに、AおよびCともに、BおよびCともに、および/またはA、B、およびCともに、などを含むことになる)。「A、B、またはCのうちの少なくとも1つ、など」に類似する慣例が使用される例では、一般に、そのような解釈は当業者がその慣例を理解する意味で与えられる(例えば、「A、B、またはCのうちの少なくとも1つを有するシステム」は、限定はしないが、Aだけ、Bだけ、Cだけ、AおよびBともに、AおよびCともに、BおよびCともに、および/またはA、B、およびCともに、などを含むことになる)。実質的には、説明、請求項、または図面であるかにかかわらず2つ以上の代替用語を表す任意の離接的な単語および/または句は、用語のうちの1つ、用語のいずれか、または両方の用語を含む可能性を意図すると理解されるべきであることが当業者ならさらに理解されるであろう。例えば、「AまたはB」という句は、「A」または「B」または「AおよびB」の可能性を含むと理解されることになる。
【0097】
様々な態様および実施形態が本明細書で開示されたが、他の態様および実施形態が当業者に明らかであろう。本明細書で開示された様々な態様および実施形態は説明の目的のためであり、限定するものではなく、真の範囲および趣旨は以下の特許請求の範囲によって示される。
【符号の説明】
【0098】
1−1 ハーフブリッジ共振AC/DCコンバータ
1−2 ハーフブリッジ共振型高周波誘導加熱インバータ
11 一次整流器回路
12 ハーフブリッジ駆動回路
13 絶縁変成器回路
14 二次整流器回路
15 帰還回路
16 電流検出回路
17 PWM(パルス幅変調)制御回路
20 PLL(位相同期ループ)回路
21 コンパレータ回路
22、23 パルス挿入または削除回路
24、25 レベルコンパレータ
31、32 負荷
151 帰還回路
201 VCO(電圧制御発振器)回路
202 ループフィルタ回路
203 PFD(位相周波数検出器)回路
204 ロック検出回路
250 インバータ回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検出器回路、ロック検出回路、フィルタ回路、および発振器回路を含むPLL(位相同期ループ)回路であり、前記検出器が第1のパルス入力と第2のパルス入力との間の位相誤差を検出し、前記検出された位相誤差を示す誤差信号を生成するように構成され、前記フィルタ回路が前記誤差信号をフィルタ処理し、フィルタ処理済み誤差信号を供給するように構成され、前記ロック検出回路が前記誤差信号に応じて前記PLL回路のロック状態またはロック解除状態を検出するように構成され、前記発振器回路が前記フィルタ処理済み誤差信号に応じて発振器出力信号を生成するように構成される、PLL回路と、
前記発振器出力信号および帰還信号を受け取り、それに応じて駆動信号を生成するように構成されたパルス制御回路と、
前記フィルタ処理済み誤差信号を受け取り評価して、いつ前記フィルタ処理済み誤差信号が第1の基準レベルより下がるか、または前記第1の基準レベルよりも高い第2の基準レベルを超えるか判定するように構成されたコンパレータ回路と、
前記駆動信号を受け取り、それに応じて前記第1のパルス入力を供給するように構成され、さらに、変成器回路の一次側からの共振電流測定値を受け取り、それに応じて前記第2のパルス入力を供給するように構成されたパルス削除回路と
を含むコンバータであって、
前記フィルタ処理済み誤差信号が前記第1の基準レベルより下がるのを前記コンパレータ回路が検出し、前記ロック検出回路が、前記第1および第2のパルス入力の一方の、前記第1および第2のパルス入力の他方に対する位相遅れが前記検出器で検出されたことに応答して前記ロック解除状態を検出したとき、前記第1および第2のパルス入力の一方の1つのパルスを削除するように前記パルス削除回路が構成され、
前記フィルタ処理済み誤差信号が前記第2の基準レベルを超えるのを前記コンパレータ回路が検出し、前記ロック検出回路が、前記第1および第2のパルス入力の一方の、前記第1および第2のパルス入力の他方に対する位相進みが前記検出器で検出されたことに応答して前記ロック解除状態を検出したとき、前記第1および第2のパルス入力の他方の1つのパルスを削除するように前記パルス削除回路が構成される、コンバータ。
【請求項2】
前記共振電流測定値の共振電流のゼロ交差時間の近くで生じるエッジを有するエッジトリガパルス信号を前記パルス削除回路に供給するように構成された第2のコンパレータ回路をさらに含む、請求項1に記載のコンバータ。
【請求項3】
前記変成器回路の二次側からの出力に応じて前記帰還信号を前記パルス制御回路に供給するように構成された帰還回路をさらに含む、請求項1に記載のコンバータ。
【請求項4】
前記共振電流測定値に応じて前記帰還信号を前記パルス制御回路に供給するように構成された帰還回路をさらに含む、請求項1に記載のコンバータ。
【請求項5】
前記帰還回路が、外部信号に応じて前記帰還信号を変化させる出力可変機能を含む、請求項4に記載のコンバータ。
【請求項6】
前記変成器回路の前記二次側が、負荷に印加されるDC出力に対応する、請求項1に記載のコンバータ。
【請求項7】
前記変成器回路の前記二次側が、負荷に印加されるAC出力に対応する、請求項1に記載のコンバータ。
【請求項8】
前記駆動信号のスイッチング周波数で交互に切り替えることによって前記変成器回路の前記一次側を駆動して、前記二次側に電力を伝達するように構成されるスイッチング回路をさらに含み、
前記PLL回路が、前記PLL動作を適応して前記スイッチング周波数を前記コンバータの共振周波数に実質的に一致させるように構成される、請求項1に記載のコンバータ。
【請求項9】
前記共振電流測定値の共振電流のゼロ交差時間の近くで生じるエッジを有する第1のエッジトリガパルス信号を前記パルス削除回路に供給するように構成された第2のコンパレータ回路をさらに含み、
前記パルス制御回路が、前記第1のエッジトリガパルス信号の位相と実質的に一致する位相を有する第2のエッジトリガパルス信号を前記駆動信号として生成する、請求項8に記載のコンバータ。
【請求項10】
コンバータを制御する方法であって、
パルス削除回路によってパルス制御回路からの駆動信号を受け取り、それに応じて第1のパルス入力を供給するステップと、
前記パルス削除回路によって変成器回路の一次側からの共振電流を受け取り、それに応じて第2のパルス入力を供給するステップと、
PLL(位相同期ループ)回路のフィルタ処理済み誤差信号が第1の基準レベルより下がるときをコンパレータ回路によって検出し、それに応じて第1の制御信号をアサートするステップと、
前記PLL回路の前記フィルタ処理済み誤差信号が前記第1の基準レベルよりも高い第2の基準レベルを超えるときを前記コンパレータ回路によって検出し、それに応じて第2の制御信号をアサートするステップと、
前記第1および第2のパルス入力の一方の、前記第1および第2のパルス入力の他方に対する位相遅れまたは位相進みに応じて前記PLL回路のロック解除状態を前記PLL回路のロック検出回路によって検出し、それに応じてロック解除検出信号をアサートするステップと、
前記第1の制御信号および前記ロック解除検出信号が共にアサートされるとき、前記制御信号と前記PLL回路からの前記ロック解除検出信号とに基づいて前記第1および第2のパルス入力の一方の1つのパルスを前記パルス削除回路によって削除するステップと、
前記第2の制御信号および前記ロック解除検出信号が共にアサートされるとき、前記制御信号と前記PLL回路からの前記ロック解除検出信号とに基づいて前記第1および第2のパルス入力の他方の1つのパルスを前記パルス削除回路によって削除するステップと
を含む、方法。
【請求項11】
前記共振電流のゼロ交差時間の近くで生じるエッジを有するエッジトリガパルス信号を、第2のコンパレータ回路から前記パルス削除回路に供給するステップをさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記変成器回路の二次側からの出力に応じて帰還信号を帰還回路から前記パルス制御回路に供給するステップをさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記共振電流に応じて帰還信号を帰還回路から前記パルス制御回路に供給するステップをさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
前記帰還信号を供給する前記ステップが、外部信号に応じて前記帰還回路の出力可変機能によって前記帰還信号を変化させるステップを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記変成器回路の二次側に対応するDC出力を負荷に印加するステップをさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項16】
前記変成器回路の二次側に対応するAC出力を負荷に印加するステップをさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項17】
前記パルス制御回路からの駆動信号に応じてスイッチング回路を選択的に動作させることによって前記変成器回路の二次側に電力を伝達するステップと、
前記スイッチング回路のスイッチング周波数を前記コンバータの共振周波数に実質的に一致させるように前記PLL回路によってPLL動作を適応させるステップとをさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項18】
前記共振電流のゼロ交差時間の近くで生じるエッジを有する第1のエッジトリガパルス信号を、第2のコンパレータ回路から前記パルス削除回路に供給するステップと、
前記第1のエッジトリガパルス信号の位相と実質的に一致する位相を有する第2のエッジトリガパルス信号を前記パルス制御回路からの前記駆動信号として生成するステップとをさらに含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
PLL(位相同期ループ)を含むコンバータを制御する方法であって、
前記PLLの位相検出により得られたフィルタ処理済み出力が第1の基準レベルより下がり、前記PLLのロック解除状態が、第1および第2のパルス入力の一方の他方に対する位相遅れに応じて検出されたとき、前記PLLへの前記第1および第2のパルス入力の一方の1つのパルスを削除するステップと、
前記フィルタ処理済み出力が第2の基準レベルを超え、前記PLLの前記ロック解除状態が、前記第1および第2のパルス入力の一方の他方に対する位相進みに応じて検出されたとき、前記第1および第2のパルス入力の他方の1つのパルスを削除するステップとを含む、方法。
【請求項20】
前記第1および第2のパルス入力の一方の1つのパルスを削除する前記ステップ、および前記第1および第2のパルス入力の他方の1つのパルスを削除する前記ステップのうちの少なくとも1つが、前記第1および第2のパルス入力の一方または他方にゼロパルスまたは低レベルパルスを挿入することによって1つのパルスを削除する、請求項19に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【公表番号】特表2012−523208(P2012−523208A)
【公表日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−549955(P2010−549955)
【出願日】平成22年8月16日(2010.8.16)
【国際出願番号】PCT/JP2010/005072
【国際公開番号】WO2012/023154
【国際公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【出願人】(509348786)エンパイア テクノロジー ディベロップメント エルエルシー (117)
【Fターム(参考)】