説明

コンピュータ・トモグラフィを使用することによる自動物質識別

荷物検査等の従来の物質識別では、荷物の減衰係数は、荷物内の物質を確認するよう使用される。しかしながら結果が不明瞭なのは、危険物質と非危険物質が同一の減衰係数を有することが頻繁にあるためである。本発明によれば、方法及び装置が与えられ、荷物内に危険物質があるか否かをよりよく判断するよう、CT及び干渉性散乱コンピュータ・トモグラフィ(CSCT)から得られた情報を組み合わせる。故に、本発明によれば、荷物の減衰係数及び回析パターンは、荷物が不審であるか否かを判断するよう使用される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物質識別の分野に係る。特には、本発明は、荷物等の対象における重要な特定の物質を検出する検査システム、荷物等の対象を検査する方法、及び、コンピュータ可読媒体に格納されたコンピュータ・プログラムに係る。
【背景技術】
【0002】
過去数年間に亘り、X線による荷物検査は、操作者による相互作用に完全に依存した単純なX線映像システムから、特定の種類の禁制品及び全ての危険物質をを自動的に認識することができるより高機能の自動システムへと発達してきている。より新しい検査システムは、検査済みのパッケージを介して透過された、又は検査済みのパッケージから散乱された単一エネルギ又は二重エネルギのX線照射を用いている。システムの中には、単一の観測源検出器配置を使用しているものもあり、また、二重又は多重観測配置を利用するものもある。単一又は二重観測システムは、通常は、固定された構造において走査ビーム又はX線の走査ペンシルビームを使用して、コンベヤ上を動く荷物を走査する。多重観測である、コンピュータ・トモグラフィ(CT)型のシステムは、通常は、走査角度の固定された構造において静止した荷物を走査し、荷物の選択されたスライス範囲を再構築するよう、X線の吸収に対応してデータを処理する。既知のCTスキャナは、また、ヘリカル走査モードを適用し、従って対象の減衰係数の3D画像を作る。
【0003】
空港では、荷物検査手順は、通常は、少なくとも2つのレベルの検査に分けられている。第1レベルのシステムは、1時間あたり最高1500個の荷物という速度で急速に荷物を処理する。かかる第1レベルのシステムは、第1の検査場所に設置され、全ての荷物を検査する。システムは荷物を急速に走査し、検出及び方法の特定のモードに基づいて自動的に決断を下す。通常は、CTスキャナ又は二重エネルギ透過X線は、第1レベルのシステムとして使用され、荷物又は荷物の一範囲の減衰係数を判断する。続いて、減衰係数は、危険物質の減衰係数と比較される。走査された荷物の減衰係数が、既知の危険物質の減衰係数と合致する場合、警報が出されるか、又は、該荷物が更なる検査のために荷物の主要な流れから引き離される。
【0004】
荷物の減衰係数と合致する減衰係数を有して、非危険物質及び危険物質を有する物質の一群がある場合、荷物は第2レベルに進められる。第2レベルでは通常は、操作者は、拒絶された荷物のX線映像を目で検査し、荷物の中の不審な対象がその明らかな形に基づいて明確にされうるか否かを決定しようとする。操作者は、武器、時限及び爆発装置、ワイヤ、又は禁制品に関連する他の特徴等の、特徴的な対象の映像を探す。操作者が荷物を明確に出来なかった場合は、蒸気又は痕跡検出器、又は更なるCTスキャナが、荷物の更なる検査に使用され得る。
【0005】
参考文献である欧州特許第127546A2号明細書(特許文献1)は、調査結果を判断するよう、回析照射と同様に一次放射線を使用するコンピュータ・トモグラフフを開示する。
【0006】
参照文献である米国特許第5,642,393号明細書(特許文献2)は、操作システムを開示する。該操作システムは、調査された物品の中の不審な領域を明確にするよう、調査している物品を介して透過された、又は、調査している物品から散乱されたX線照射を用いるよう構成された多重観測X線検査プローブを有する。多重観測X線検査プローブは、透過又は散乱されたX線照射の複数の調査角度を使用して、不審な領域を判断するよう構成される。更に、多重観測X線検査プローブは、続く調査のための構造を判断するよう、不審な領域の空間的情報を得るよう構成される。更に、指向性で物質に反応し易いプローブが与えられ、かかる構造を用いることによって、不審な領域に関する物質の空間的情報を得るよう構成される。物質の特定情報に基づき、特定の領域における特定の材料の存在が判断される。
【特許文献1】欧州特許第127546A2号明細書
【特許文献2】米国特許第5,642,393号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、明白な自動物質認識を与えることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の模範的な一実施例によれば、上述の目的は、荷物における重要な特定の物質を検出する検査システムによって達成され得る。かかる検査システムは、荷物の減衰係数を判断する第1のスキャナ・システムと、荷物の回析パターンを判断する第2のスキャナ・システムと、減衰係数及び回析パターンに基づいて荷物の重要な特定の物質の存在を明確にするよう第1及び第2のスキャナ・システムに接続された演算ユニットとを有する。有利に本発明のかかる模範的な実施例によれば、重要な特定の物質に関する非常に信頼性の高い検証が与えられ得る。
また、荷物の減衰係数は市場に早く判断され得るため、本発明のかかる模範的な実施例に従った検査システムは、第1レベルのシステムとして第1のスキャナ・システムを使用することによって、二段階工程を実行し得る。荷物の流れを審査して「不審な荷物」を探し、「不審な」荷物は荷物の回析パターンを使用することによって更に検査される。有利には、回析パターンにより、重要な物質に関して非常に信頼性の高い判断が可能となるため、本発明のかかる模範的な実施例に従った検査システムの誤認の割合は、非常に低減される。
【0009】
請求項2に記載の本発明の模範的な実施例によれば、第1及び第2のスキャナ・システムは、互いに対してある距離を置いて配置される。これによって、例えばコンベヤ・ベルト・スイッチが第1及び第2のスキャナ・システムの間に与えられ、「不審な」荷物は容易に分けられ得るようにされ、第2のスキャナ・システムを通過する必要がない。例えば、複数の第1のスキャナ・システムは、コンベヤ・ベルトによって接続され得、夫々のコンベヤ・ベルトは、第2のシステムに切り替わり、第2のスキャナ・システムの高い利用率を保証する。
【0010】
請求項3に記載の本発明の他の模範的な実施例によれば、第1のスキャナ・システムはCTスキャナ・システムであり、第2のスキャナ・システムは干渉性散乱CTシステムである。有利には、これによって、本発明に従った検査システムにおける既知の第1レベルのCTスキャナの使用が、干渉性散乱CTシステム(CSCT)との組合せで可能になる。
【0011】
請求項4に記載の本発明の他の模範的な実施例によれば、第1及び第2のスキャナ・システムは、1つの照射源と1つの検出システムを有する1つのスキャナ・システムとして実現される。荷物の減衰係数を判断するCTスキャナを実行するよう、第1の開口システムが、照射源と走査されるべき物品との間に与えられる。荷物の回析パターンを判断するようCSCTスキャナを実行するには、スロット開口又はダイヤフラム等の第2の開口システムが与えられ、扇ビームへの1つの照射源の照射を形成するようにされる。有利には、本発明のかかる模範的な一実施例は、寸法が小型であり、空間的余裕が非常に頻繁に問題となる空港の警備システムに容易に設置され得る。更に、1つの照射源及び1つの検出システムのみが必要であるため、かかるシステムの製造コストは、消耗される可動部品の量が低減され得るのと同様に低減される。
【0012】
本発明の他の模範的な実施例によれば、荷物の検査方法が請求項5に記載されている。該方法は、荷物の減衰係数を判断するよう第1のスキャナ・ステージで荷物を走査する段階と、減衰係数に基づいて荷物に不審な領域があるか否かを判断する段階と、不審な領域を含む荷物の範囲を、該範囲の回析パターンを判断するよう第2のスキャナ・ステージで走査する段階と、回析パターンに基づいて荷物に危険物質があるか否かを判断する段階とを有する。有利には、本発明のかかる模範的な実施例は、二段階検査工程を許容し、検査工程を非常に効率的且つ信頼できるものとする。危険物質があるか否かを判断する回析パターンの使用は、該方法の誤認の割合を非常に低くする。
【0013】
本発明による更なる模範的な実施例は、請求項6乃至9に記載されており、荷物の早く効率的な検査を与える一方で、これらの方法がコンピュータ化された検査システムに適用されるとき、必要な演算の動きを最低限にする。特には、荷物に危険物質が確認された場合、又は、荷物に確認できない物質がある場合に関して複数の警報を発することで、検査システムの操作者は、問題の荷物を容易に確認し、警報の原因を確認することができる。
【0014】
請求項10は、検査システム上で実行される際に本発明に従った方法の段階を実行するコンピュータ可読媒体上に格納されたコンピュータプログラムに係る。有利には、かかるコンピュータプログラムは、検査システムにおける演算にかかる力の低減を許容する。
【0015】
従来のCTシステムは、調査で物質を確認するよう第1ステージで減衰係数を判断するよう使用されることが、本発明の模範的な一実施例の主旨であると見受けられ得る。しかしながら、結果が不明瞭である場合、CTシステム及びCSCTから得た情報は、よりよく物質を識別するよう組み合わされる。医療用の用途では、かかる手順は、健常組織と非健常組織との間を区別するよう使用され得る。荷物検査の用途では、類似した減衰を備えた物質が区別され得、より低いシステムの誤認警報の割合とより高い自動化の度合いをもたらす。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明のこれらの及び他の面は、以下に説明される実施例を参照して明らかに且つ説明されるであろう。
【0017】
本発明の模範的な実施例は、図面を参照して説明されるであろう。
【0018】
図1は、本発明に従ったコンピュータ・トモグラフの模範的な一実施例の概略的な説明を図示する。図1中のコンピュータ・トモグラフは、回転軸2の周りで回転可能なガントリー1を有する。ガントリー1は、モータ3によって駆動される。参照符号4は、X線源等の照射源を示す。
【0019】
参照符号5は、照射源4から放射された放射ビームを、荷物7を通過する円錐形の照射ビーム6に形成する、第1の開口システムを示す。荷物7を通過した後、円錐形ビーム6は、検出アレイ8上に衝突する。開口システム5は、円錐形ビーム6が検出器8全体を覆うように配置される。
【0020】
更に、ダイヤフラムを有する他の開口システム9が与えられる。ダイヤフラムはスリット10を有し、照射源4から放射された照射が扇ビーム11に形成されるようにされる。
【0021】
扇ビーム11及び円錐形ビーム6は、ガントリー1の中心に配置された荷物7を通過し、検出器8上に衝突する。図1に図示する通り、検出器は、照射源4に対向してガントリー1に取り付けられる。検出器8は、マトリクス形式に配置された複数の構成要素を有し、二次元の検出アレイを有する。個々の検出器構成要素は、横列及び縦列に配置される。縦列は、回転軸2に対して平行であり、横列は、回転軸に対して垂直な面に配置される。
【0022】
開口システム5及び9の開口は、検出器8の寸法に適合される。そのため、荷物7の走査された範囲は、円錐形ビーム6又は扇ビーム11内にあり、また、検出器8は、走査範囲全体を覆う。図1から判り得る通り、望ましくは、開口システム9のスリット10は、扇ビーム11が検出器8の中央線15上にマッピングされるように配置される。
【0023】
荷物7の走査中、照射源4、開口システム5及び9、及び検出器8は、矢印16で示される方向でガントリー1に沿って回転される。照射源4、開口システム5及び9、及び検出器8を備えたガントリー1の回転に対し、モータ3は、演算ユニット18に接続されるモータ制御ユニットに接続される。
【0024】
図1中、荷物7は、コンベヤ・ベルト19上に置かれる。荷物7の走査中、ガントリー1は荷物7の周囲を回転し、コンベヤ・ベルト19は、ガントリーの回転軸2に対して平行な方向に沿って、荷物7を移動させる。これによって、荷物7は螺旋に沿って走査される。コンベヤ・ベルトは、走査中に停止され、単一のスライス面を測定することも可能である。
【0025】
検出器8は、演算ユニット18に接続される。演算ユニット18は、検出器8から検出結果を受け、検出器8からの検出結果に基づき走査結果を判断する。それに加えて、演算ユニット18は、モータ制御ユニット17と通信し、ガントリー1の動きをモータ3及び20、又はコンベヤ・ベルト19と協調させるようにする。更に、演算ユニット18に接続されたラウドスピーカ21が与えられる。これは、演算ユニットが、荷物7内に危険物質、又は判断され得ない物質があると判断した場合に警報を発するためである。データポート22は、アラーム信号を次の検出レベルへ伝達できる。
【0026】
図1から判り得る通り、開口システム5及び9のうちどちらが使用されるかに依存して、図1のコンピュータ・トモグラフは、従来のスキャナ又はCSCTスキャナのいずれかになり得る。開口システム5が使用される場合は、コンピュータ・トモグラフはCTスキャナであり、開口システム9が使用される場合は、コンピュータ・トモグラフはCSCTスキャナである。
【0027】
図2a及び図2bは、図1中のコンピュータ・トモグラフを走査する方法の模範的な一実施例のフローチャートである。S1で開始した後、方法は段階S2に続き、S2では荷物7はコンベヤ・ベルト19を用いて第1のスキャナ・ステージに運ばれる。続いて、方法は段階S3に続き、S3では、荷物7は、荷物の減衰係数を判断するよう第1のスキャナ・ステージで走査される。詳細には、第1のスキャナ・ステージでの荷物7の走査中、ガントリー1上の照射源4及び検出器8は、荷物7の周囲を回転される。この間、コンベヤ・ベルト19は、開口システム5を使って照射源4から放射された円錐形ビーム6によって覆われた走査域を通って荷物7を動かし、荷物7はその全長で走査される。コンベヤ・ベルト19上の荷物7の動き及びガントリーの回転によって、荷物7は走査螺旋に沿って走査される。検出器8の検出結果は、演算ユニットに伝達される。続いて、方法は段階S4に続く。S4では、演算ユニット18は、検出器8の検出結果から判断された荷物7の減衰係数が、既知の危険物質の減衰係数に一致するか否かを判断する。これに関して、荷物7の判断された減衰係数は、既知の危険物質の減衰係数の表と比較される。段階S4で荷物7の減衰係数が既知の危険物質の減衰係数と一致すると判断される場合、方法は段階S7へと続く。S7では、演算ユニット18は、ラウドスピーカ12を用いて第1の警報を発し、荷物7が危険物質を含有していることを知らせる。続いて、方法は段階S7から段階S8へと続く。S8は図2aの下部及び図2b上部に丸で囲ったAで示される。
【0028】
段階S8では、荷物7は、手動の検査又は続く別の危険な存在の検出方法が実行される位置へと運ばれる。方法は、段階S8から終了の段階S22へと続く。
【0029】
段階S4で荷物の減衰係数が危険物質の減衰係数と一致しないと判断される場合は、方法は段階S9へと続く。S9では、演算ユニット18は、荷物7の減衰係数が危険及び非危険物質を有する物質の一群の減衰係数に一致するか否かを判断する。つまり、段階S9では、荷物7に危険物質を有し得る不審な領域があるか否かを判断する。段階S9で不審な領域がないと判断さる場合、即ち、荷物7の減衰係数が危険及び非危険物質を有する物質の一群の減衰係数と一致しない場合、方法は段階S10へと続く。S10では、荷物はコンベヤ・ベルト19を用いてその行き先へ運ばれる。続いて段階S10の後、方法は段階S22で終了する。
【0030】
段階S9で荷物7に不審な領域があると判断される場合は、方法は段階S11へと続く。S11では、荷物7は第2のスキャナ・ステージに運ばれる。図1中のコンピュータ・トモグラフで、運搬段階11が実行され、コンベヤ・ベルトは、荷物7が第2のスキャナ・ステージでの走査中に逆方向にコンピュータ・トモグラフの走査域を通って動くか、又は、荷物7が第1のスキャナ・ステージでの走査の前に最初の位置に戻されるかのいずれかに、その方向を変え、続いて第2のスキャナ・ステージでの走査に対して、荷物7は、第2のスキャナ・ステージでの走査中にガントリー1の回転軸に対して平行な方向に沿って再度動かされる。
【0031】
方法は、段階S11から段階S12へと続く。S12では、第2のスキャナ・ステージで走査されるべき範囲が判断される。該範囲は、段階S9で判断された不審な領域を有する。荷物がコンベヤ・ベルト19上で動かされたか、又は、第1のスキャナ・ステージ以降変形されたか否かに依存して、第2のスキャナ・ステージで走査されるべき範囲は拡大され得るか、又は、段階S9で判断された不審な領域に限定され得る。段階12は、演算ユニット18を用いて実行される。続いて、図2aの下部及び図2bの上部の丸で囲まれたBを用いて示される通り、方法は、段階S13へと続く。S13では、S12で判断された荷物の範囲が第2のスキャナ・ステージで走査され、荷物の該範囲の回析パターンを判断するようにされる。これに対して、既に上述された通り、荷物7は、ガントリー1の回転軸2に対して平行な方向に沿って運ばれる。不審な領域が扇ビームによって貫通されるとき、ベルトは停止し、照射源4、開口システム9及び検出システム8はガントリー1を用いて荷物7の周囲を回転される。荷物7の該範囲の回析パターンを判断することに関し、散乱照射のみが演算ユニット18によって使用される。続いて、段階13での回析パターンの判断の後、方法は段階S14へと続く。S14では、回析パターンが既知の物質の既知の回析パターンと合致する。回析パターンの既知の物質の既知の回析パターンとの合致に関し、荷物7の範囲の回析パターンは、既知の物質の既知の回析パターンを有する表と比較される。
【0032】
方法は、段階S14の後、段階S15へと続く。S15では、荷物の該範囲の回析パターンが既知の危険物質の既知の回析パターンと合致するか否かのクエリーがなされる。荷物の該範囲の回析パターンが危険物質に関連付けられ得る場合、方法は段階S16へと続く。S16では、段階S14及びS15を実行した演算ユニットが第2の警報を発する。方法は、段階S16から段階S8へと続く。
【0033】
段階S15で荷物7の範囲の回析パターンが既知の危険物質と合致しないと判断される場合、方法は段階S17へと続く。
【0034】
段階S17では、演算ユニットが、回析パターンが危険及び非危険物質を有する物質の一群の既知の回析パターンに一致するか否かのクエリーを行なう。段階S17で、荷物7の回析パターンが危険及び非危険物質を有する物質の一群に関連付けられ得ると判断される場合、方法は段階S18へと続く。S18では、演算ユニットがラウドスピーカ21を用いて警報を発する。方法は段階S18から段階S8へと続く。
【0035】
段階S17で、回析パターンが、危険及び非危険物質を有する物質の一群の回析パターンと一致すると判断される場合、方法は段階S19へと続く。S19では、回析パターンは、既知の非危険物質の既知の回析パターンと合致され得るか否かのクエリーがなされる。段階S19で荷物の範囲の回析パターンが非危険物質に関連付けられ得ないと判断される場合、方法は段階S20へと続く。S20では、演算ユニット18がラウドスピーを21を用いて第4の警報を発する。方法は段階S20から段階S8へと続く。
【0036】
段階S19で、演算ユニット18が、荷物7の回析パターンは既知の非危険物質に関連付けられ得ると判断する場合、方法は段階S21へと続く。S21では、荷物7はコンベヤ・ベルト19を用いてその行き先へと運ばれる。続いて方法は、段階S21から終了する段階S22へと続く。
【0037】
図2a及び図2b中に示された方法の変形では、回析パターンに加えて、演算ユニット18は、段階S15,17,及び19で荷物7が有する物質が危険物質を有するか否かを判断するよう減衰係数を使用してもよい。
【0038】
図3は、本発明に従ったコンピュータ・トモグラフの他の模範的な実施例を図示する。参照符号30は、CTスキャナを有する第1のスキャナ・ステージを示す。参照符号31は、CSCTスキャナを有する第2のスキャナ・ステージを指定する。各CTスキャナ及びCSCTスキャナは、図1を参照して説明された通り、照射源と検出システムを有する。第1のスキャナ・ステージ30及び第2のスキャナ・ステージ31は、コンベヤ・ベルト32を用いて互いに対して接続され、荷物33を第1のスキャナ・ステージ30から第2のスキャナ・ステージ31へと運ぶ。
【0039】
第1のスキャナ・ステージ30及び第2のスキャナ・ステージ31は、ラウドスピーカ35に接続された演算ユニット34に接続される。検査されるべき荷物33は、まず、第1のスキャナ・ステージ30で走査される。第1のスキャナ・ステージ30では、荷物の減衰係数が判断され、演算ユニット34に伝達される。演算ユニット34では、第1のスキャナ・ステージ30で判断された減衰係数は、既知の物質の既知の減衰係数の表と比較される。荷物の減衰係数が危険物質の既知の減衰係数と合致され得る場合、演算ユニットは、ラウドスピーカ35を用いて第1の警報を発する。
【0040】
荷物33の減衰係数が、非危険物質の減衰係数に合致され得る場合は、演算ユニットは、コンベヤ・ベルト32の走査を制御し、荷物33がその行き先へ運ばれるようにする。荷物33がその行き先への経路上で第2のスキャナ・ステージ31を通過する場合、演算ユニット34は、第2のスキャナ・ステージ31を制御し、荷物33内には非危険物質しかないと判断された場合は第2のスキャナ・ステージ31で走査が行なわれないようにする。
【0041】
演算ユニット34が荷物33の減衰係数を危険及び非危険物質を有する物質の一群の既知の減衰係数に合致させる場合、演算ユニット34はコンベヤ・ベルト32を制御し、荷物33が第2のスキャナ・ステージ31に運ばれ、荷物33はCSCTスキャナを用いて走査される。走査結果に基づき、回析パターンは第2のスキャナ・ステージ31で判断され、演算ユニット34に伝達される。続いて、演算ユニット34は、荷物33の回析パターンを既知の物質の既知の回析パターンと比較する。荷物の回析パターンが危険物質と関連付けられ得る場合、演算ユニット34はラウドスピーカ35を用いて更なる警報を発する。演算ユニット34が、荷物33の回析パターンを非危険物質と関連付ける場合、演算ユニット34は、コンベヤ・ベルト32を制御し、荷物33をその行き先へ運ぶ。
【0042】
荷物33の回析パターンが危険及び非危険物質を有する物質の一群に関連付けられる場合、演算ユニット34はラウドスピーカ35を用いて更なる警報を発し、コンベヤ・ベルト32を制御し、荷物33は、荷物33を人間が検査する更なる検査地点まで運ばれる。
【0043】
上述の方法及び装置は荷物検査に関して説明されてはいるが、上述の方法及び装置は、例えば、健常組織と非健常組織とを区別するよう使用され得る医療用の用途でも使用されてよい。
【0044】
上述の方法及び装置が荷物検査の分野に適用される場合、誤認警報の割合は非常に低減され得、このことによってより高い度合いの自動化が達成される。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】荷物検査に使用され得る本発明に従ったコンピュータ・トモグラフの模範的な一実施例の概略的な説明を図示する。
【図2a】図1又は図3中のコンピュータ・トモグラフを操作する方法に関する模範的な一実施例のフローチャートを図示する。
【図2b】図1又は図3中のコンピュータ・トモグラフを操作する方法に関する模範的な一実施例のフローチャートを図示する。
【図3】本発明に従ったコンピュータ・トモグラフの他の模範的な実施例の概略的な説明を図示する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷物内の特定の材料を検出する検査システムであって、
前記荷物の減衰係数を判断する第1のスキャナ・システムと、
前記荷物の回析パターンを判断する第2のスキャナ・システムと、
前記第1及び第2のスキャナ・システムに接続され、前記減衰係数及び前記回析パターンに基づき前記荷物内の前記特定の物質の存在を確認する演算ユニットと、
を有する検査システム。
【請求項2】
前記第1及び第2のスキャナ・システムは、互いに対してある距離を置かれて配置される、請求項1記載の検査システム。
【請求項3】
前記第1のスキャナ・システムは、扇型又は円錐形の照射ビームを前記荷物に適用するコンピュータ・トモグラフ(CT)であり、
前記第2のスキャナ・システムは、扇型の照射ビームを前記荷物に適用する干渉性散乱コンピュータ・トモグラフ(CSCT)である、
請求項1記載の検査システム。
【請求項4】
前記第1のスキャナ・システム及び前記第2のスキャナ・システムは、1つのスキャナ・システムとして実現され、
前記1つのスキャナ・システムは、1つの照射源と1つの検出システムを有し、
前記1つのスキャナ・システムは、前記荷物と前記照射源との間に位置付けられ得る第1の開口システムを有し、円錐形の照射ビームが前記荷物に適用されるようにし、
前記1つの検出システムは、前記円錐形の照射ビームが前記荷物に適用される際、前記荷物の前記減衰係数を検出するよう適用され、
前記1つのスキャナ・システムは、前記荷物と前記照射源との間に位置付けられ得る第2の開口システムを有し、扇型の照射ビームが前記荷物に適用されるようにし、
前記1つの検出システムは、前記扇型の照射ビームが前記荷物に適用される際、前記荷物の前記回析パターンを検出するよう適用される、
請求項1記載の検査システム。
【請求項5】
荷物を検査する方法であって、前記方法は、
前記荷物を、前記荷物の減衰係数を判断するよう第1の照射ビームを備えた第1スキャナ・ステージで走査する段階と、
前記減衰係数に基づき前記荷物に不審な領域があるか否かを判断する段階と、
前記不審な領域を有する荷物の範囲を、前記範囲の回析パターンを判断するよう第2の照射ビームを使用して前記走査を行なう第2のスキャナ・ステージで走査する段階と、
前記回析パターンに基づき前記荷物に危険物質があるか否かを判断する段階と、
を有する方法。
【請求項6】
前記不審な領域は、前記減衰係数が危険物質及び非危険物質を有する物質の一群に一致する際に判断される、請求項5記載の方法。
【請求項7】
前記減衰係数が危険物質と一致するときに第1の警報を発する段階と、
前記減衰係数に基づき不審な領域又は危険物質はないと判断される場合、前記荷物をその行き先へ運ぶ段階と、
前記回析パターンに基づき危険物質が確認される場合、第2の警報を発する段階と、
前記回析パターンが既知の物質に合致され得ない場合、第3の警報を派する段階と、
を更に有する請求項5記載の方法。
【請求項8】
前記不審な領域は、前記回析パターンが非危険物質と一致する場合は安全であると判断する段階と、
前記荷物をその行き先へ運ぶ段階と、
を更に有する、請求項5記載の方法。
【請求項9】
前記減衰係数は、前記第1の照射ビームが円錐形であるコンピュータ・トモグラフ(CT)を使って判断され、前記回析パターンは、前記第2の照射ビームが扇型である干渉性散乱コンピュータ・トモグラフ(CSCT)を使って判断される、
請求項5記載の方法。
【請求項10】
コンピュータ可読媒体に格納されたコンピュータプログラムであって、
前記コンピュータプログラムが荷物の検査に関する検査システムで実行される際、前記検査システムは、
前記荷物を、前記荷物の減衰係数を判断するよう第1の照射ビームを備えた第1スキャナ・ステージで走査する段階と、
前記減衰係数に基づき前記荷物に不審な領域があるか否かを判断する段階と、
前記不審な領域を有する荷物の範囲を、前記範囲の回析パターンを判断するよう第2の照射ビームを使用して前記走査を行なう第2のスキャナ・ステージで走査する段階と、
前記回析パターンに基づき前記荷物に危険物質があるか否かを判断する段階と、
を実行するコンピュータプログラム。

【図1】
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【図2a】
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【図2b】
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【図3】
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【公表番号】特表2006−518849(P2006−518849A)
【公表日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−502451(P2006−502451)
【出願日】平成16年2月10日(2004.2.10)
【国際出願番号】PCT/IB2004/000427
【国際公開番号】WO2004/074871
【国際公開日】平成16年9月2日(2004.9.2)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【氏名又は名称原語表記】Koninklijke Philips Electronics N.V.
【住所又は居所原語表記】Groenewoudseweg 1,5621 BA Eindhoven, The Netherlands
【Fターム(参考)】