説明

コンプリメント5a受容体阻害剤を使用する出血ショックの処置

本発明は、出血ショックの処置、および特にこの状態の、C5a 受容体のアンタゴニストとして作用する能力をもつ環状ペプチドおよびペプチド様化合物による処置の方法に関する。ひとつの実施態様において、これらの化合物は、多形核白血球およびマクロファージ上の C5a 受容体に対して活性である。本発明における使用に特に好ましい化合物を開示する。


【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本出願は、2003年5月15日付けのオーストラリア仮出願 No.2003902354 による優先権を享受する。
【0002】
発明の分野
本発明は、G タンパク質結合受容体の活性を調節する能力を有する新規の環状ペプチドおよびペプチド様化合物による出血ショックの処置に関する。この化合物は、C5a 受容体のアンタゴニストとして好ましくは作用し、多形核白血球およびマクロファージの C5a 受容体に対し活性である。
【0003】
発明の背景
本明細書に引用されるすべての特許または特許出願を含むすべての文献は、出典明示により本明細書の一部とする。これらの文献が先行技術であることを認めるものでない。文献についての説明はそれらの著者が主張することを述べ、本出願人は引用文献の正否および正確さに反論する権利を留保する。多くの先行の発表が本明細書で引用されても、それらの文献がオーストラリアまたは他の国において、技術における通常の一般的知識の部分を形成することを認めるものでないことは、明白に理解されるであろう。
【0004】
G タンパク質結合受容体は人体に広く存在しており、約 60% の既知細胞性受容体タイプを含み、非常に広範囲の内因性リガンドについて細胞膜を通るシグナル伝導を仲介する。これは様々な生理的および病理的プロセスに関与する。このプロセスには、限定でないが、新血管系、中枢および末梢神経系、生殖、代謝、免疫、炎症、および成長の障害、ならびに他の細胞調節性および増殖性の障害がある。G タンパク質結合受容体の機能を選択的に調節する物質は、重要な医療上の適用を有する。これらの受容体は、シグナル伝導における重要な役割からして、重要な薬物標的であるとの認識が増加している (G protein-coupled Receptors, IBC Biomedical Library Series, 1996)。
【0005】
最もよく研究された G タンパク質結合受容体のひとつは、C5a についての受容体である。C5a は最も強力な既知の走化性物質であり、好中球およびマクロファージを損傷の箇所に運び、その形態を変え; 顆粒球減少を誘発し; カルシウム動員、血管透過性 (浮腫) および好中球接着を増加し; 平滑筋を収縮し;ヒスタミン、TNF-α、IL-1、IL-6、IL-8、プロスタグランジンおよびロイコトリエンを含む炎症メディエターならびにリソソーム酵素の放出を刺激し; 酸素ラジカルの形成を促進し; および抗体産生を高める (Gerard and Gerard, 1994)。
【0006】
C5a のプロ炎症性の作用を限定する物質は、急性および慢性の両方の炎症、ならびに付随する痛みおよび組織の障害を阻止する可能性を有する。かかる化合物は、上記の種々の炎症メディエターから上流に作用し、その多くの形成を阻害するので、炎症徴候を緩解または防止するのに強力な作用を有し得る。
【0007】
本出願人の前の出願 No.PCT/AU98/00490 において、ヒト C5a C末端のいくつかのアナログの3次元構造を記載し、この情報を、C5a のアゴニストまたはアンタゴニストのいずれかとして挙動するヒト C5a 受容体 (C5aR) に結合する新規の化合物の設計に使用した。かって、推定アンタゴニストが受容体結合およびアンタゴニスト活性についてC末端アルギニンおよびC末端カルボキシレートの両方を必要とすると思われていた (Konteatis et al, 1994)。これに反し、われわれは、末端カルボキシレート基が C5aR との高い親和性結合またはアンタゴニスト活性のために一般的に必要でないことを示した。われわれが見出したのは、今まで認識されていなかった構造的特徴、ターン配座が好中球上のヒト C5a 受容体に対する高い親和性結合のために要の認識特徴であることである。国際出願 PCT/AU0101427 に記載のように、C5a 受容体との相互作用のために疎水性アレイ中に疎水性基を集合せしめる緊縮構造テンプレートを設計するために、これらの情報を使用した。その明細書の全開示を出典明示により本明細書の一部とする。
【0008】
ショックは、多くの原因から生じる血液動態および代謝の変化であって、血液でもって生体臓器の適切な灌流を維持する循環系の不全を特徴とする。これは、不適切な血液量、不適切な心機能または不適切な血管運動緊張力から生じ得る。不適切な血液量により起きる出血ショックは、低量ショックまたは量不足ショックとしても知られ、広範な下記の原因を有する大量の出血から起きる。例えば、外傷、出産に関連または鼻出血の結果で制御できない出血、血友病などの血液凝固障害、手術関連、動脈瘤などの先天性欠陥または穿孔性潰瘍などの消化器状態である。
【0009】
多くの場合、大量の出血は処置するのが難しく、輸血、血液量の回復および他の通常の補完的手段に加えて、種々の処置が採用されてきた。それには、動脈塞栓形成、緊急手術ならびにスルプロストン、ソマトスチオンおよびバソプレッシンなどの薬理学的物質の使用がある。第1の処置は、出血の停止および消失血液量の補充を目的とし、例えば、輸血および等張または高張塩類液あるいは血液代用液の注入であり、第2の処置は、ショック連続の軽減または減少に関する。出血ショックの処置は、出血の制御まで血圧および組織灌流の保持を含む。種々の蘇生術を用いて、出血の制御まで外傷患者における血圧が保持されている。しかし、血圧の保持がショックを防ぎ得ても、出血を悪化することがある。従って、これらについての考慮における細心のバランスを保持しなければならない。もしショックが長引くと、心循環系が障害を受け、心臓の排出がポジティブのフィードバックの結果として低下し、ショックが非可逆的となることがある。
【0010】
この処置は、限定的な効果で、重篤な副作用を有することがある。例えば、手術の成功および強いケア保持にもかかわらず、破裂した腹部大動脈瘤 (RAAA) の修復は死亡率が 50-75% である(Adam et al, 1999)。免疫調節ホルモン (Hollis-Eden Pharmaceuticals, Inc) および種々の血液代用物質、例えばジアスピリン橋かけ結合ヘモグロビンおよび他のヘモグロビン型が臨床試験の種々の段階にあり、成功しているのもある。
【0011】
出血ショックの複合的損傷および下部胴虚血-再灌流損傷が全身的炎症応答症候群を開始し、これは微血管透過性の増加および好中球分離を特徴とし、多重臓器不全症候群 (MODS) となる。MODS はかかる死亡の 70% の一義的原因であり、残りの主な寄与原因である (Harris et al, 1991)。ラットモデルの腹部大動脈瘤破裂を用いて、上腸間膜大動脈クランピングと対になった出血ショックが局所的腸および遠位肺の損傷をもたらすこと、およびこれを、CD18 インテグリンに対するモノクローナル抗体を用いて好中球接着を減じて緩解できることが示されている (Boyd et al, 1999)。
【0012】
虚血性下部胴に続く長い虚血の再灌流が、プロ炎症性サイトカインを特徴とする全身的炎症応答症候群を開始し (Groeneveld et al, 1997)、循環の多形核白血球 (PMN) 活性化を増加する (Barry et al, 1997)。活性化好中球の肺分離の後に、急性肺微血管損傷 (Welbourne et al, 1991)、急性呼吸切迫症候群 (Paterson et al, 1989) および高い率の死亡となる。腫瘍壊死因子 (TNF)-α、インターロイキン-6 およびインターロイキン-8 などの白血球活性化の因であるプロ炎症性サイトカインならびにエンドトキシンの高循環レベル (Baigrie et al, 1993) が RAAA の修復後に認められている(Roumen et al, 1993)。我々および他の研究者が前に、下肢虚血再灌流損傷が腸透過性の増加、エンドトキシン血症および急性肺損傷に伴う全身性炎症応答に関連することを明らかにした (Roumen et al, 1993; Harkin, D'Sa et al, 2001; Harkin, Barros et al, 2001; Yassin et al, 1997)。
【0013】
重い出血および外傷が、虚血−再灌流損傷の症候群とともに、コンプリメント・カスケードを活性化し、コンプリメント・システムの活性化の程度が、損傷の重篤度、多重臓器不全の進行およびその後の死に相関する。
【0014】
コンプリメント・システムは腹部大動脈瘤の破裂における炎症応答の主要な寄与物であり(Lindsay et al, 1999)、実験的下肢および腸の虚血-再灌流損傷において損傷を仲介すると報告されている (Rubin et al, 1990; Williams et al, 1999)。
【0015】
C5a および C3a などの通常のコンプリメント経路の活性化産物が無数の作用をもつ強力な炎症メディエターであり、その作用には、血管透過性および緊張力の変化、白血球の走化性、多重炎症性細胞タイプの活性化がある。いくつかの炎症性組織損傷状態におけるコンプリメントの役割が、抗-C5 抗体 (Piccolo et al., 1999) および C5a 受容体 (C5aR) アンタゴニスト (Arumugam et al, 2003) を用いる損傷の緩解により支持されている。しかし、これに反し、虚血による肺損傷がロイコトリエンにより仲介されるが、コンプリメントには仲介されないことが報告されている (Klausner et al, 1989)。さらに、腹部大動脈瘤破裂後の炎症組織損傷におけるコンプリメントの役割はなお多く未知である。
【0016】
長く重い出血性高血圧の血液動態および代謝的回復を調べるためラットモデルを使用する試験において、出血および蘇生術がコンプリメント消費をもたらすこと、および循環のコンプリメントレベルの先立つ枯渇がショックから動物を保護することが、平均動脈血圧および代謝性アシドーシスの測定で、見出された。これに反し、外因性コンプリメントアクチベーターの投与またはコンプリメント低下の阻害が損傷を悪化させる。著者は、C5a が主要な役割を演じるようであると結論しているが、親分子 C5 の活性に影響を与えることなく、C5a を特異的に中和する物質が利用可能になるまで、これは確認し得ないと考えた。特に、C3a が関係する可能性があった (Younger et al, 2001)。
【0017】
他の研究者によると、腸および肺の損傷に続く出血ショックおよび再灌流は、CD18 インテグリンに対するモノクローナル抗体との好中球接着の減少により少なくされ得る (Boyd et al, 1999)。虚血-再灌流症候群において同定されている炎症性物質の過剰は、処置についての最も効果的な標的を同定するのが非常に難しいことを意味する。この難しさは、広範な候補標的および物質が外傷、炎症、ショック、感染症についての2004年3月の第6回国際会議で論議されたことで反映された (http://www.外傷trauma-ショック-sepsis-congress-munich-2004.org/lis.html)。
【0018】
従って、できれば注入による投与の必要がなく、妥当な費用で生産し得る効果的な非毒性の物質について大きい需要がある。
【0019】
溶性コンプリメント受容体タイプ 1 (CR1) の糖型は、コンプリメント仲介の障害およびショックの処置における使用のために提案される。溶性 CR1 フラグメントは、機能的に活性の結合 C3b および/または C4b であり、その含有する領域に応じて因子 I 補因子活性を示した。かかる構築体は、コンプリメント活性化の影響、例えば、好中球酸化バースト、コンプリメント仲介の血液分解ならびに C3a および C5a 産生を阻害する (米国特許 No 5456909、No 5807844 および No 5858969)。しかし、われわれの知る限りでは、ショックの処置についてこれらの承認または実験の物質、特に小分子物質は C5a 受容体を標的にしていない。
【0020】

本発明の要約
出血ショックに関与するコンプリメントの本質についての現時点での不確実性のゆえに、具体的なコンプリメントの可能性ある阻害作用について、出血ショックを起こす条件である大動脈瘤破裂の動物モデルで試験した。今回初めて、C5a 受容体の具体的な阻害剤が出血ショックの動物モデルにおける損傷徴候を緩解できることを示す。これは、出血ショックのモデルにおける病因を調整するのに用いられるコンプリメント・システムの小分子阻害剤についての最初の報告である。
【0021】
第1態様において、本発明は、有効量の C5a 受容体の阻害剤を処置の必要な対象に投与する工程を含む出血ショックを処置する方法を提供する。
【0022】
好ましくは、この阻害剤は、
(a) C5a 受容体のアンタゴニストであり、
(b) アゴニスト活性を実質的に有さない、および
(c) 下記式Iの環状ペプチドまたはペプチド様化合物である:
式I
【化1】

【0023】
式中、A は、H、アルキル、アリール、NH2、NH-アルキル、N(アルキル)2、NH-アリール、NH-アシル、NH-ベンゾイル、NHSO3、NHSO2-アルキル、NHSO2-アリール、OH、O-アルキルまたは O-アリールであり;
【0024】
B は、アルキル、アリール、フェニル、ベンジル、ナフチルまたはインドール基、または L-フェニルアラニンもしくは L-フェニルグリシンなどの D- または L-アミノ酸の側鎖であり、しかし、グリシン、D-フェニルアラニン、L-ホモフェニルアラニン、L-トリプトファン、L-ホモトリプトファン、L-チロシンまたは L-ホモチロシンの側鎖でなく;
【0025】
C は、グリシン、アラニン、ロイシン、バリン、プロリン、ヒドロキシプロリンまたはチオプロリンなどの D-、L- またはホモ-アミノ酸の側鎖などの小さい置換基であり、しかし、好ましくは、イソロイシン、フェニルアラニンまたはシクロヘキシルアラニンの側鎖などの大きい置換基でなく;
【0026】
D は、D-ロイシン、D-ホモロイシン、D-シクロヘキシルアラニン、D-ホモシクロヘキシルアラニン、D-バリン、D-ノルロイシン、D-ホモ-ノルロイシン、D-フェニルアラニン、D-テトラヒドロイソキノリン、D-グルタミン、D-グルタメートまたは D-チロシンなどの中性の D-アミノ酸の側鎖であり、しかし、好ましくは、グリシンもしくは D-アラニンの側鎖などの小さい置換基、D-トリプトファンなどの大きい平面的側鎖または D-アルギニンもしくは D-リシンなどの大きい電荷側鎖でなく;
【0027】
E は、L-フェニルアラニン、L-トリプトファンまたは L-ホモトリプトファンよりなる群から選ばれるアミノ酸、または L-1-ナフチルもしくは L-3-ベンゾチエニルアラニンの側鎖などの大きい置換基であり、しかし、D-トリプトファン、L-N-メチルトリプトファン、L ホモフェニルアラニン、L-2-ナフチル L-テトラヒドロイソキノリン、L-シクロヘキシルアラニン、D-ロイシン、L-フルオレニルアラニンまたは L ヒスチジンの側鎖でなく;
【0028】
F は L-アルギニン、L-ホモアルギニン、L-シトルリンまたは L-カナバニンの側鎖、またはそのバイオ等価体であり、すなわち、末端グアニジンまたはウレア基が保持されるが、炭素骨格が異なる構造で置換されている側鎖であり、側鎖が全体として親の基と同じ方法で標的タンパク質と反応するものであり; および
【0029】
X は-(CH2)nNH- または (CH2)n-S-(うち、n は 1 〜 4、好ましくは 2 または 3 の整数); -(CH2)2O-; -(CH2)3O-; -(CH2)3-;-(CH2)4-; -CH2COCHRNH-; または CH2CHCOCHRNH-(うち、R は通常または非通常のアミノ酸の側鎖)である。
【0030】
C について、シスおよびトランス型の両方のヒドロキシプロリンおよびチオプロリンを使用できる。
好ましくは、A は、アセトアミド基、アミノメチル基または置換もしくは非置換スルホンアミド基である。
好ましくは、A が置換スルホンアミドであるとき、置換基は 1 〜 6、好ましくは 1 〜 4 炭素原子のアルキル鎖またはフェニルもしくはトルイル基である。
【0031】
特に好ましい実施態様において、化合物は、C5aR に対するアンタゴニスト活性を有し、C5a アゴニスト活性を有さない。
化合物は、好ましくは、ヒト多形核白血球およびヒトマクロファージを含むヒトおよび哺乳動物の細胞での C5a 受容体のアンタゴニストである。化合物は、好ましくは C5a 受容体に強力にかつ選択的に結合し、さらに好ましくは強力なアンタゴニスト活性をサブミクロモル濃度で有する。さらにより好ましくは、化合物は受容体親和性 IC50< 25μM およびアンタゴニスト強度 IC50< 1μM を有する。
【0032】
最も好ましくは、化合物は国際特許出願No. PCT/AU02/01427 に記載の化合物 1 (PMX53)、化合物 33 (AcF[OP-DPhe-WR])、化合物 60 (AcF[OP-DCha-FR]) または 45 (AcF[OP-DCha-WCit])、あるいは HC-[OPdChaWR](PMX205)、AcF-[OPdPheWR](PMX273)、AcF-[OPdChaWシトルリン]( PMX201)または HC-[OPdPheWR]( PMX218)である。
【0033】
阻害剤は、出血ショックの処置のための1以上の他の物質とともに使用し得る。それには、限定でないが、血液代用物、バソプレッシン、ソマトスタチン、テルリプレシンおよび抗酸化窒素剤がある。
【0034】
本発明の組成物は、経口、非経口、吸入、鼻中、経直腸または経皮の使用のために製剤できる。しかし、非経口用、特に静脈用製剤が好ましい。すべてでなくても大部分の本発明の化合物が代謝酵素、例えば消化管、血液、肺または細胞内の酵素に対し安定であると想定できる。かかる安定性は、当業者に既知の通常の方法で容易に試験できる。
【0035】
いかなる所望の経路による投与用に適する製剤は、標準的方法で調製し得る。例えば、周知のテキストブック、Remington: The Science and Practice of Pharmacy, Vol. II, 2000 (20th edition), A.R. Gennaro (ed), Williams & Wilkins, Pennsylvania などを参照のこと。
【0036】
本発明は、いかなる源の多量の出血から起きるショックの処置に適用可能である。それには、限定でないが、外傷、動脈瘤破裂、制御できない鼻出血、デング熱、ラッサ、マールブルグ、エボラ・ウイルスなどの出血性熱、出産後の子宮出血、手術中および後の出血、消化器潰瘍または十二指腸静脈瘤に由来する出血、憩室出血などの下部消化器管の出血、癌侵傷の二次的出血、血友病や突発性血小板減少紫斑症などの出血性素質に由来する出血、ならびにワルファリン、アスピリン、プラスミノーゲン・アクチベーター、ストレプトキナーゼまたはウロキナーゼなどの薬物による血栓融解の治療に関連する出血がある。
【0037】
本発明はいかなる意味においても特定の動物または種の処置に限定されるものでなく、ヒトの医学的処置に有用であり、また獣医学的処置、特にネコやイヌなどの愛玩動物、ウシやウマ、ヒツジなどの家畜、および非ヒトの霊長類、大きいウシ科、ネコ科、有蹄類およびイヌ科の動物を含む動物園の動物の処置に有用である。
【0038】
化合物は、いかなる適当な用量および適当な経路でもっても投与し得る。投与経路は、好ましくは非経口であり、例えば、静脈であり、薬物の有効血中濃度ができるだけ速く達成される。状態の重篤性および胃などの非バイタル臓器から血液を逸らすことが腸からの吸収を減じるからである。一般的に、静脈投与が好ましい。
【0039】
有効用量は、処置しようとする状態の性質、ならびに個々の処置対象の年齢、体重および健康状態により異なる。このことは、担任の医師または獣医師の裁量である。適切な用量レベルは、当技術分野で周知の方法を用いて、試行錯誤的試験で決定できる。
【0040】
図面の簡単な説明
図1は、各群の動物についての平均動脈圧および蘇生液の必要量についての要約を示す。A.平均動脈圧。B.蘇生液の必要量。
図2は、各群のラットにおける肺透過性インデックス (LPI) を比較する。
図3は、クランプ解除後の時間経過における腸透過性の変化を示す。
【0041】
図4は、サンプルの肺および腸におけるミエロペルオキシダーゼ活性を示す。A.肺。B.腸。
図5は、各群の動物からのサンプルの消化管組織中のサイトカインのレベルを示す。A.TNF-α。B.IL-6。
図6は、各群の動物からのサンプルの肺組織中のサイトカインのレベルを示す。A.TNF-α。B.IL-6。
【0042】
発明の詳細な説明
本発明を、下記の一般的方法および試験例のみに言及して説明する。
本発明の特許請求の範囲および明細書において、文言または必要な表示のために、内容が別の必要性を持たない限り、語「含む」またはその変形「含んでいる」などは、包括的な意味、すなわち記述の特性の存在を具体化するために使用されており、本発明の種々の実施態様におけるさらなる特性の存在または追加を除外するものではない。
【0043】
本明細書での使用において、単数形「a」、「an」および「the」は、内容が別のものを明らかに述べていない限り、複数も含む。すなわち、例えば、表現「an 酵素」はその複数を含み、「an アミノ酸」は1以上のアミノ酸を含む。別に定義しない限り、本明細書で使用されるすべての技術的および科学的用語は、本発明が属する技術分野における当業者が通常理解するのと同じ意味を有する。本明細書に記載のものと類似または等価のすべての材料および方法を、本発明を実施し、試験するのに使用できるが、ここでは好ましい材料および方法を記述する。
【0044】
本明細書において使用する略号は下記のとおりである:
AAA 腹部大動脈瘤
Cit シトルリン
dCha D-シクロヘキシルアミン
DPhe D-フェニルアラニン
IL-6 インターロイキン-6
ip 腹腔内
iv 静脈内
LPS リポポリサッカライド
MAP 平均動脈圧
MPO ミエロペルオキシダーゼ
PMN 多形核顆粒球
PMSF フェニルメチルスルホニルフルオリド
sc 皮下
TNF-α 腫瘍壊死因子-α
【0045】
明細書を通じて、通常の1文字コードおよび3文字コードを、アミノ酸を表示するのに使用する。
【0046】
本明細書の目的にとって、用語「アルキル」は、1 〜 6、好ましくは 1 〜 4 炭素原子の直鎖、分枝または環状の置換または非置換のアルキル鎖を意味する。最も好ましくは、アルキル基はメチル基である。用語「アシル」は、1 〜 6、好ましくは 1 〜 4 炭素原子の置換または非置換アシルを意味する。最も好ましくは、アシル基はアセチルである。用語「アリール」は、置換または非置換のホモ環状またはヘテロ環状のアリール基を意味し、そこでは環が 5 または 6 員を有しているのが好ましい。
【0047】
「通常」アミノ酸は、グリシン、ロイシン、イソロイシン、バリン、アラニン、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、アスパルテート、アスパラギン、グルタメート、グルタミン、システイン、メチオニン、アルギニン、リシン、プロリン、セリン、トレオニンおよびヒスチジンよりなる群から選ばれる L-アミノ酸である。
【0048】
「非通常」アミノ酸は、限定でないが、D-アミノ酸、ホモアミノ酸、N-アルキルアミノ酸、デヒドロアミノ酸、フェニルアラニン、チロシンおよびトリプトファン以外の芳香族アミノ酸、オルト-、メタ- もしくはパラ-アミノ安息香酸、オルニチン、シトルリン、カナバニン、ノルロイシン、γ-グルタミン酸、アミノ酪酸、L-フルオレニルアラニン、L-3-ベンゾチエニルアラニンおよびα,α-ジ置換アミノ酸を含む。
【0049】
一般的に、用語「処置する」または「処置」等は、所望の薬理学的および/または生理的作用を得るために、対象、組織または細胞に影響を与えることを意味して、本明細書において使用する。作用は、疾患またはその徴候もしくは症候群を完全または部分的に防ぐという意味で予防的であり、および/または疾患を完全または部分的に治癒するという意味で治療的であり得る。
【0050】
本明細書で使用する「処置する」は、脊椎動物、哺乳動物、特にヒトにおける疾患の治療または予防を包含する。疾患になり得るが、まだ疾患の診断がなされていない対象における疾患の発生を防ぐこと、疾患を阻止することすなわち疾患の進行を抑えること、あるいは疾患の作用を軽減または緩解すること、すなわち疾患の作用を減成することを含む。
【0051】
本発明は、疾患を緩解するのに有用な種々の医薬組成物の使用を含む。本発明の実施態様による医薬組成物は、式Iの化合物、そのアナログ、誘導体もしくは塩および1以上の薬理学的に活性の物質、あるいは式Iと1以上の薬理学的に活性の物質の組合せ物を、担体、賦形剤および添加物または補助剤を用いて対象への投与に適した形態にすることにより調製する。
【0052】
よく使用される担体または補助剤には、炭酸マグネシウム、二酸化チタニウム、ラクトース、マンニトールなどの糖、タルク、乳タンパク質、ゼラチン、デンプン、ビタミン、セルロースおよびその誘導体、動物および植物油、ポリエチレングリコール、ならびに無菌水、グリセロールおよびポリ水和アルコールなどの溶媒がある。静脈ビヒクルは、液体および栄養の補充物を含む。保存剤には、抗菌剤、抗酸化剤、キレート剤および不活性ガスがある。他の薬学的に許容される担体には、水性溶液、塩を含む非毒性賦形剤、保存剤、緩衝液などがあり、例えば、下記に記載されている: Remington's Pharmaceutical Sciences, 20th ed. Williams & Wilkins (2000) および The British National Formulary 43rd ed. (British Medical Association and Royal Pharmaceutical Society of Great Britain, 2002; http://bnf.rhn.net) (これらの内容を、出典明示により本明細書の一部とする)。医薬組成物の種々の成分についての pH および正確な濃度は、当技術分野の日常的事項に従って調整できる。参照、Goodman and Gilman's The Pharmacological Basis for Therapeutics (7th ed., 1985)。
【0053】
医薬組成物を用量単位で調製し投与するのが好ましい。固体の用量単位は、錠剤、カプセルおよび座剤を含む。対象処置のために、化合物の活性、投与方法、障害の性質および重篤度、対象の年齢および体重に従って、異なる1日量を使用し得る。しかし、ある状況において、より高いまたはより低い1日量が適している。用量を、個々の用量単位またはいくつかの用量単位における単一投与により、投与できる。あるいは、特別の間隔でサブ分割用量を複数回で投与できる。
【0054】
本発明の医薬組成物を医療上有効な量で局所的または全身的に投与できる。この使用における有効な量は、もちろん、疾患の重篤度ならびに対象の体重および一般的状態に依存する。一般的に、インビトロで使用される用量が医薬組成物のインシトゥ投与に有用な量について有用な指針を提供し、そして動物モデルを利用して細胞毒性副作用の処置のために有効用量を決定し得る。種々の考慮が記述されている、例えば、Langer, Science, 249: 1527, (1990)。経口使用の製剤は、硬ゼラチンカプセルの形態であり得る。そこでは、活性成分を、不活性の固体希釈剤、例えば、炭酸カルシウム、リン酸カルシウムまたはカオリンと混合する。製剤は、軟ゼラチンカプセルの形態でもあり得る。活性成分を、水またはピーナッツ油、液体パラフィンまたはオリーブ油などの油性媒体と混合する。
【0055】
水性懸濁液は、通常、活性物質が水性緩衝液の製造に適した賦形剤と混合されて含有する。これらの賦形剤は、懸濁剤になり得、例えば、カルボキシメチル・ナトリウム、セルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、タラガントガムおよびアラビアガム;拡散剤または湿潤剤であり得る。拡散剤または湿潤剤は下記であり得る。
【0056】
(a) レシチンなどの自然界に存在するホスファチド;
(b) アルキレンオキシドと脂肪酸との縮合産物、例えば、ステアリン酸ポリオキシエチレン;
(c) エチレンオキシドと長鎖脂肪族アルコールの縮合産物、例えば、ヘプタデカエチレンオキシセタノール;
(d) エチレンオキシドと脂肪酸およびヘキシトールから誘導される部分的エステルの縮合産物、例えば、モノオレイン酸ポリオキシエチレン・ソルビトール、または
(e) エチレンオキシドと脂肪酸およびヘキシトール無水物から誘導される部分的エステルの縮合産物、例えば、モノオレイン酸ポリオキシエチレン・ソルビタン。
【0057】
医薬組成物は、無菌の注射用水性または油性の懸濁液の形態であり得る。この懸濁液は、既知の方法に従い、上記のような拡散もしくは湿潤剤および懸濁剤を用いて製剤できる。無菌の注射用製剤は、非毒性の非経口に適用し得る希釈液または溶媒での無菌の注射用溶液、例えば、1,3-ブタンジオールの溶液であり得る。適用し得る許容のビヒクルおよび溶媒は、水、リンゲル液および等張の塩化ナトリウム液である。さらに、無菌の固定油を溶媒または懸濁媒体として通常使用する。この目的のために、いかなるブランドの固定油を、合成のモノまたはジグリセリドを含み、適用できる。さらに、オレイン酸などの脂肪酸を注射用製剤に適用できる。
【0058】
式 I の化合物は、小さい単層小胞、大きい単層小胞および多層小胞などのリポソーム運搬系の形態でも投与できる。リポソームは種々のホスホリピド、例えば、コレステロール、ステアリルアミンまたはホスファチジルコリンから形成され得る。
【0059】
本発明の式Iの化合物の用量レベルは、体重kgあたり約 0.5mg 〜 20mg であり、好ましい用量範囲は体重kgあたり1日、約 0.5mg 〜 10mg (患者1日、約 0.5g 〜約 3g) である。単一用量をつくるために担体材料と組合せられる活性成分の量は、処置される宿主および投与経路の特定の様式に応じて変わり得る。例えば、ヒトへの経口投与を意図する製剤は、約 5mg から 1g の活性化合物を、全組成物の約 5 〜 95 %の範囲にある適当で好都合な担体材料の量とともに含有する。用量単位形態は、一般的に、約 5mg 〜 500mg の活性成分を含有する。
【0060】
しかし、特定の患者についての具体的な用量レベルは、種々の因子に依存することを理解すべきである。それには、用いる具体的な化合物の活性、年齢、体重、一般的健康状態、性別、食事、投与時間、投与経路、排泄速度、薬物組合せ、治療を受けようとする特定の疾患の重篤度などがある。
【0061】
さらに、本発明のいくつかの化合物は、水または通常の有機溶媒とともに溶媒化合物を形成することがある。かかる溶媒化合物は本発明の範囲内である。
本発明の化合物は、他の治療化合物との組合せで操作的組合せ物を提供する。これは、組合せが本発明の式Iの活性をなくさない限り、薬学的に活性の物質のいかなる化学的に和合性の組合せを含むことを意図する。
【0062】
一般的方法
ペプチド合成
式Iの環状ペプチド化合物を、われわれの以前の出願 No. PCT/AU98/00490 および No. PCT/AU02/01427(出典明示により本明細書の一部とする)に詳細に記載された方法に従って調製する。本発明を、化合物 AcF-[OPdChaWR] (PMX53) について具体的に明示する。この対応の線状ペプチドは Ac-Phe-Orn-Pro-dCha-Trp-Arg である。明らかに理解されるように、本発明はこの化合物に限定されない。
【0063】
国際出願 No.PCT/AU98/00490 に開示された化合物 1-6、17、20、28、30、31、36 および 44 ならびに国際出願 PCT/AU02/01427 に初めて開示された化合物 10-12、14、15、25、33、35、40、45、48、52、58、60、66 および 68-70 は、ヒト好中球上の C5a 受容体に対する評価可能なアンタゴニスト強度 (IC50 < 1 μM) を有する。PMX53 ならびに PCT/AU02/01427 の化合物 33、45 および 60 が最も好ましい。
【0064】
現在までに試験した式Iのすべての化合物が広い薬理学的活性を有することを見出した。なお、個々の化合物の物理化学的性質、力価およびバイオアベイラビリティは、具体的な置換基によってある程度異なる。
下記の一般的試験を G タンパク質結合受容体、特に C5a 受容体の候補阻害剤についての最初のスクリーニングに使用し得る。
【0065】
薬物の調製および製剤
ヒト C5a 受容体アンタゴニスト AcF-[OPdChaWR] (AcPhe[Orn-Pro-D-シクロヘキシルアラニン-Trp-Arg]) を上記のように合成し、逆相 HPLC で精製し、質量分光測定およびプロトン NMR 分光法で特徴を完全に調べた。C5a アンタゴニストを、経口投与についてオリーブ油溶液 (10 mg/mL) に、SC 投与について 30% ポリエチレングリコール溶液 (0.6 mg/mL) に調製した。IP 注射について 50% プロピレングリコール溶液 (30 mg/kg) に調製した。
【0066】
受容体結合アッセイ
以前に記述されているように (Sanderson et al, 1995) 単離された新鮮なヒト PMN についてのアッセイを、50 mM HEPES、1 mM CaCl2、5 mM MgCl2、0.5% ウシ血清アルブミン、0.1% バシトラシンおよび 100μM フェニルメチルスルホニルフルオリド (PMSF) の緩衝液を用いて行った、4℃で行ったアッセイにおいて、緩衝液、非標識ヒト組換え C5a (Sigma) またはペプチド、Hunter/Bolton 標識 125I-C5a (〜20 pM) (New England Nuclear, MA) および PMN (0.2 x 106) を順次 Millipore Multiscreen アッセイプレート (HV 0.45) に加え、最終量を 200μL/ウエルとした。60 分間 4℃でのインキュベーションの後、サンプルをろ過し、プレートを1回緩衝液で洗った。フィルターを乾燥し、パンチし、LKB ガンマ計量器で計測した。非特異的結合を 1mM ペプチドまたは 100 nM C5a の挿入で調べ、典型的に 10-15% 全結合となった。
データを非直線回帰および Dunnett ポスト検定の統計処理で解析した。
【0067】
アンタゴニスト活性についてのミエロペルオキシダーゼ放出アッセイ
細胞を以前に記述されているように (Sanderson et al, 1995) 単離し、サイトカラシン B (5μg/mL、15 分間、37℃) とともにインキュベートした。0.15% ゼラチンおよび ペプチドを含有する Hank's Balanced Salt 溶液を 96 ウエルプレート上に加え (全量 100μL/ウエル)、ついで 25 μL 細胞 (4x106/mL) を加えた。各ペプチドの C5a をアンタゴニストする能力を調べるために、細胞を 5 分間 37℃で各ペプチドとともにインキュベートし、ついで C5a (100 nM) を加え、さらに 5 分間インキュベートした。ついで、50μL のリン酸ナトリウム (0.1M、pH 6.8) を各ウエルに加え、プレートを室温まで冷やし、等量のジメトキシベンチジン (5.7 mg/mL) と H2O2 (0.51%) の新鮮な混合物 25μL を各ウエルに加えた。反応を 10 分で 2% アジドナトリウムの添加で停止した。吸光度を 450 nm で Bioscan 450 プレートリーダーにより測定し、コントロール値 (ペプチドなし) について補正し、非直線回帰で分析した。
【0068】
統計学的分析
値は平均値 ± 標準誤差平均 (SEM) であり、群間の相違は P<0.05 で有意とした。データを1方向 ANOVA で解析し、個々の群の比較を Student's t 検定で行った。
【0069】
実施例1:大動脈瘤破裂の動物モデル
雄 Sprague-Dawley ラット (350-500g) を実験において使用した。すべてのラットをペントバルビタール・ナトリウム (50 mg/kg ip) で麻酔した。各ラットについて、尾静脈および右頸動脈に 22-ゲージ血管カテーテルを挿入し、その場で縫合した。尾静脈をもちいて、補充量の麻酔薬、125I-標識アルブミン、C5aR アンタゴニストおよびリンゲルラクテート溶液を投与し、流出の血液を再注入した。頸動脈カテーテルを出血動物に使用した平均動脈圧 (MAP) の継続的モニターに用いた。
【0070】
動物を無作為に下記の2群とした:
a) 擬似(sham) (n=6); および
b) ショック + クランプ (n=19)。
【0071】
ショック + クランプ群の動物をさらに、無作為で C5aR アンタゴニスト処置群 (n=9) とコントロール処置群 (n=10) に分けた。処置群において、小分子 C5aR アンタゴニスト、AcF-(OPdChaWR) (Promics Pty Ltd, Queensland, Australia) を出血ショック終了の2分間に 1 mg/kg の用量で、エンドトキシンのない塩類溶液で静脈投与し、一方、コントロール群に塩類溶液を注入した。すべての場合、操作者はなされた処置について知らされていない。
【0072】
腹部大動脈を中心線開腹により暴露し、上部腸間膜動脈および腸骨分岐の最近位で単離した。空腸の 5-cm セグメント、Trietz 靱帯から約 10 cm を単離し、インプット・カニューレを近位端にアウトプット・カニューレ遠位端に挿入した。カニューレを右腹壁につくられた2切開部を介して外に出し、腹部を縫い合わせた。カニューレ腸セグメントをリンゲル・ラクテートで、アウトプットに固体粒子がなくなるまで洗った。腸セグメントをリンゲル・ラクテートで、37℃、速度 0.3 ml/分で注入ポンプ (model AVI 480, 3M, St. Paul, MN) により、試験期間中灌流した。
【0073】
腸および肺の透過性を測定するために、動物に 125I-アルブミン (〜1μCi) を、尾静脈カテーテルを介して与え、30 分間静置し、処置後の均衡を保持した。安定および試験期間中、腸灌流物を 10 分ごとに採取した。試験期間中、血液サンプル (0.3 ml) を1時間間隔で採取した。血液サンプルを、下記のように、全アルブミン濃度および腸アルブミン損失の計算に使用される 125I-アルブミンの特異的活性の測定に用いた。
【0074】
適当な群において、ショックを血液のプラスチック・ヘパリン化シリンジ(500 U) への引き出しにより誘発し、MAP を 50 mmHg に低下し、1 時間保持した。流出血液を室温に管揺り器上でショック期間中保持した。60 分間のショックまたは等価のコントロール期間後、クランプを上部腸間膜大動脈の直近の腹部大動脈に腸骨分岐部で用いた。この時点で半分の流出血液を尾静脈に再注入した。クランプをその場所に 45 分間保持した。クランプ解除の直前に残りの流出血液を再注入した。必要に応じ、追加のリンゲル・ラクテートを投与し、動物を再覚醒し、MAP を 100 mmHg に保持した。再灌流を 120 分間続けてから、動物を過剰のナトリウム・ペントバルビタールで殺した。
【0075】
灌流された腸セグメントを採取し、重さを量り、凍結乾燥して、腸乾燥重量を測定した。肝・肺および灌流セグメントの直近の腸部分を取り出し、氷冷塩類液で洗い、直ぐに液体窒素で 70℃に凍らし、ミエロペルオキシダーゼ (MPO) およびサイトカインの各レベルを測定するまで保存した。
【0076】
MAP および蘇生液の必要量を各群について図1に要約する。
平均動脈血圧 (MAP) は全試験期間中 擬似動物で安定であり、図1Bに示すように、リンゲル・ラクテート液の最小の静脈蘇生液を必要とした。ショックおよびクランプの動物において、プロトコールに定義するように、MAP が出血ショック中 50 mmHg に1時間低下した。上部腸間膜大動脈クランプの適用において、MAP がショック前レベルに比して有意に増加した (158±9.0 対 117±3.0 mmHg、p<0.001)。大動脈クランプの解除後のショックおよびクランプ動物において、MAP が徐々に再灌流中、リンゲル・ラクテート注入による強い蘇生液にもかかわらず、再灌流の 120 分後に最低に低下した (68±6.0 対ショック前 117±3.0、p<0.001)。
【0077】
C5a 受容体アンタゴニストで処置された動物は、再灌流中、非処置のショックおよびクランプ動物に比して有意に優れる MAP を保持し (95±5.3 対 68±6.0 mmHg、p<0.01)、静脈蘇生液の必要が少なかった (60.0±7.0 ml 対 69.3±8.5 ml、p<0.1, NS)。
【0078】
試験期間を通じて、擬似動物は、蘇生液の最小必要量で安定な血圧を保持した。ショックおよびクランプ動物は、MAP を保持するために、再灌流期間の開始から大動脈のクランプの解除後まで有意の蘇生液を必要とした。再灌流の最初の1時間における蘇生液に対する最初の応答後、蘇生液に応答しにくいショックが再灌流の次の1時間でおこり、血圧を保持するのに大量の静脈液を必要とした。C5aR アンタゴニストでの処置は、非処置群でみられる重い低血圧を有意に防止し、アンタゴニスト処置動物は蘇生液の必要が少なかった。
【0079】
実施例2−肺透過性の測定
心臓および肺の全体を切除し、左肺を3回 3.5 ml リンゲル・ラクテート液で洗い、気管支肺胞洗液 (BAL) を採取した。血液および BAL 液の重量を量り、125I 活性を調べ、肺透過性インデックス (LPI) を下記式で計算した:

LPI=BAL-125I(cpm/g)/血液-125I(cpm/g)

結果を図2に要約する。
【0080】
125I-標識アルブミンについての肺透過性インデックスは、ショックおよびクランプ群で 擬似群に比して有意に増加した (4.43±0.96 対 1.30±0.17、p<0.01)。この作用は、C5a 受容体アンタゴニストの処置で有意にブロックされた (1.74±0.50, p<0.03)。
【0081】
実施例3:腸透過性の測定
腸透過性を、腸損傷インデックスを用い、前に報告されているように (Boyd et al, 1999)、測定した。
管腔内腸アルブミン損失を計算するために、腸灌流からの全 10 分間流出採取の重さを量り、各 1 ml サンプルをガンマ測定器で 125I-アルブミン活性を測定した。試験処理中の各血液サンプルを 100,000 rpm で遠心分離し、100 μl の血漿をアルブミン量および 125I-アルブミン活性化の測定のために用いた。血液サンプルにおける 125I レベルを時間に対して回帰し、曲線の傾きを用いて、全血液におけるこの同位体の活性を決定した。これを用い、全アルブミンのμgあたりの 125I の特異的活性を決定して、灌流された腸セグメントの乾燥重量gあたりのmgの腸アルブミン損失を計算した。この結果を図3に示す。
【0082】
管腔内腸アルブミン損失の割合、腸透過性インデックス (IPI) は、全試験期間中、擬似動物において安定であった。ショックおよびクランプ動物において、IPI は、安定化、出血およびクランプの期間で一定であった。しかし、再灌流で、IPI は統計的に有意に増加した。再灌流 30 分後、IPI は、ショックおよびクランプ動物において、ショック前レベルに比して (8.05x10-2±3.59x10-2 対 0.72x10-2±0.51x10-2、p<0.0001)、およびコントロールレベルに比して (8.05x10-2±3.59x10-2 対 1.75x10-2±0.33x10-2、p<0.0001) 有意に増加し、120 分間の再灌流期間中類似のレベルに留まった。
【0083】
C5a 受容体アンタゴニストでの処置は IPI の増加を初期再灌流において有意に低下し、再灌流 30 分後で、IPI は、C5aR アンタゴニスト処置の動物において非処置のショックおよびクランプ動物に比して有意に低下した (2.82x10-2±0.91x10-2 対 8.05x10-2±3.59x10-2、p<0.01)。しかし、再灌流が進むにつれて、IPI が C5a アンタゴニスト処置群でも増加し、非処置のショックおよびクランプ動物でのレベルを反映した。
【0084】
実施例4:好中球分離の測定
肺および腸の組織サンプルを、ミエロペルオキシダーゼ (MPO) 活性、好中球分離インデックスについて、前に報告されているように (Boyd et al, 1999) アッセイした。簡単にいうと、MPO 活性のアッセイを 37℃で、吸収度の変化を 655 nm で 3 分間 Cobas FARA II 遠心分離解析器 (Roche Diagnostic Systems, Montclair, NJ) により行った。反応混合物は、16 mmol/l 3,3',5,5'-テトラメチルベンチジンの N,N-ジメチルホルムアミド溶液を、0.11 mol/l NaCl を pH 5.4 で含有する 0.22 mol/l リン酸緩衝液中に含有する。反応を 3 mmol/l 過酸化水素の添加で始めた。1単位の活性を37℃での1分間につき1単位の吸収度変化として定義した。肺および腸サンプルのタンパク質含量をビシンコニノン酸タンパク質アッセイ系 (Pierce, Rockford, IL) で測定した。MPO 活性をミリグラムのタンパク質についての単位として表した。結果を図4に示す。
【0085】
図 4a に示すように、肺組織 MPO 活性が、ショックおよびクランプ群において、擬似群に比較して有意に増加し (2.41±0.34 対 1.03±0.29 U/mg、p<0.009)、この増加は C5a 受容体アンタゴニストでの処置によりブロックされた (1.11±0.09 U/mg、p<0.006)。
【0086】
図 4b に示すように、腸組織 MPO 活性は、ショックおよびクランプ群において、擬似群に比較して有意に増加しない (3.93±0.66 対 3.34±0.53 U/mg、p=NS)。興味深いことに、腸 MPO 活性は、C5a 受容体アンタゴニスト処置動物において非処置ショックおよびクランプ動物に比して (1.86±0.26 対 3.93±0.66 U/mg、p<0.01) ならびに 擬似でのレベル (3.34±0.53 U/mg, p<0.017)に比して、有意に低下した。
【0087】
実施例5:腸および肺におけるサイトカインの測定
100 mg の各組織を、プロテアーゼ阻害剤 (0.1 mmol/L フェニルメチルスルホニルフルオリド、0.1 mmol/L 塩化ベンゼトニウム、10 mmol/L エチレンジアミンテトラ酢酸および 20 KI アプロチニン A) および 0.05% Tween 20 を含有する 1 mL の PBS (0.4 mol/L NaCl および 10 mmol/L Na2HP04) 中で均質化した。ついで、サンプルを 10 分間 3000 g で遠心分離し、直ちに上澄み液を酵素結合イムノソルベントアッセイに 1:2 希釈でアッセイ希釈緩衝液中で用いた。サンプル中の TNF-αおよびインターロイキン-6 の濃度を、市販の抗体を用いて、製造業者の提供する方法に従い (R&D Systems, Minneapolis, MN) 測定した。腸および肺のサンプルのタンパク質含量をビシンコニノン酸タンパク質アッセイ系 (Pierce, Rockford, IL) により測定した。 サイトカイン濃度をタンパク質のミリグラムに対するピコグラムとして表した。結果を表6に示す。
【0088】
図 5a に示すように、腸 TNF-αレベルは、ショックおよびクランプ動物において 擬似動物に比して有意に増加したが (73.02±10.12 対 45.42±6.23 pg/mg タンパク質、p<0.038)、C5a 受容体アンタゴニストでの処置により影響を受けなかった (72.00±13.95 pg/mg タンパク質、p=NS)。
【0089】
図 5b に示すように、腸 IL-6 レベルは、ショックおよびクランプ動物において擬似動物に比して有意に増加した(280.91±35.95 対 168.38±35.23 pg/mg タンパク質、p<0.04)。興味深いことに、腸 IL-6 レベルの増加は C5a 受容体アンタゴニスト処置動物において非処置のショックおよびクランプ動物におけるよりも有意に小さかった (196.30±23.68 pg/タンパク質、p<0.05)。
【0090】
図 6a に示すように、腸 TNF-αレベルは、ショックおよびクランプ動物において擬似動物に比して有意に増加したが (89.70±13.83 対 47.57±11.22 pg/mg タンパク質、p<0.03)、この増加は C5a 受容体アンタゴニストでの処置により防止されなかった (78.71±15.78 pg/mg タンパク質、p=NS)。
【0091】
図 6b に示すように、肺 IL-6 レベルは、ショックおよびクランプ動物において擬似動物に比して有意に増加した(227.98±51.74 対 144.81±26.31 U/mg タンパク質、p=NS)。しかし、この上昇は統計的有意に達しなかった。興味深いことに、肺 IL-6 レベルは C5a 受容体アンタゴニスト処置群において 擬似群より有意に増加した (320.72±37.67 対 144.81±26.31 U/mg タンパク質、p<0.002)。
【0092】
実施例6:さらなる前臨床試験
本発明物などの医療薬剤の出血ショックに対する作用を上記に加えて種々の実験モデルで試験し得る。使用される最も普通の実験種はブタおよびラットであり、ついでヒツジおよびマウスである。その大きさおよびその心循環系とパラメーターのヒトとの大きい類似性からして、ブタが最も使用される。血液の喪失は種々の方法で誘導でき、特殊な方法が結果に影響を与えないようである。
【0093】
本発明の C5a アンタゴニスト化合物は、これらのモデルのいずれでも使用し得る。ただ、受容体親和性がマウス、ヒツジおよびブタにおいて、ラットで観察される親和性よりも低ければ、これはアンタゴニストの強さおよび効力を低下するかもしれない。
【0094】
試験化合物を出血ショック後に投与する。投与経路は、好ましくは非経口、例えば静脈であり、薬物の有効血中濃度ができるだけ早く達成できる。症状の重篤性からして、また胃などの非バイタル臓器からの血液の回避が腸経路からの吸収を減じるかもしれないからである。一般的に、静脈投与をこれらの実験で使用される。
【0095】
試験化合物の投与を種々の用量および出血ショック後の種々の時間で、最良の療法を確認するために行った。コントロールの動物を 擬似注入で処置するか、未処置のままにするか、比較の物質で処置する。この物質には、インフリキシマブなどの他の抗炎症剤または出血ショックの処置に通常使用されている他の物質がある。
【0096】
各処置の効果を下記などのパラメーター測定でモニターする:
心臓排出 (拍動量 x 心拍数)
平均動脈圧
蘇生液必要量
組織における好中球分離
TNFαならびに IL-1、IL-2、IL-6 および IL-8 などの循環または組織サイトカイ
ンのレベル
細胞内 ATP の減少
血中ヘモグロビンレベル
代謝性アシドーシス
腸透過性および肺透過性などの他の変化。
【0097】
平均動脈圧、蘇生液必要量、組織における好中球分離、腸透過性、肺透過性ならびに TNFαおよび IL-6 のレベルを、上記の実施例に記載のように、または当技術分野で知られている別の方法で測定できる。生理的および生化学的パラメーターを標準的方法で測定し得る。例えば、ヘマトクリット法による血中ヘモグロビンおよび動脈血の pH 測定または PCO2 測定による代謝性アシドーシスである。TNF-α、IL-6 および他のサイトカインを市販のアッセイ、例えばイムノアッセイにより測定できる。
試験のために選ばれるパラメーターは、できるだけ、米国食品医薬局、欧州医薬評価局およびオーストラリア医療品局などの監督当局により受け容れられているものである。
【0098】
考察
特異的モノクローナル抗コンプリメント抗体の開発は、臨床的な病態における医療上の標的としてコンプリメントに新しい関心を有する (Matis et al, 1995)。本発明で使用される RAAA モデルにおいて、1 時間、MAP 50 mmHg の出血ショックに、45 分間の上部腸間膜大動脈クランプおよび 120 分間の重大な腸と肺損傷での再灌流ならびに強力な蘇生液にもかかわらない呼吸ショックが続く。この試験において、初めて、RAAA に関連する局所的および全身的損傷を、具体的な小分子 C5a 受容体、環状ペプチド AcF-(OPdChaWR) によりラットモデルで緩解できることを明らかにした。
【0099】
このモデルにおける腸損傷は、上部腸間膜大動脈クランプの解除直後の 125I-アルブミンについての腸毛細管透過性に関する有意の増加、120 分間の再灌流期間を通じて継続する増加に関連した。C5aR アンタゴニストでの処置は、初期再灌流における腸透過性の増加を有意に防止した。しかし、後期再灌流においては、腸透過性は非処置のショックおよびクランプ動物におけるのと類似のレベルに増加した。腸透過性の増加は、RAAA 後ならびにヒトにおける選択的な腹部および胸腹部動脈瘤修復後に報告されており、罹患率および死亡率の増加に関連する (Van Damme et al, 2000; Lau et al, 2000; Harward et al, 1996)。
【0100】
腸に対する損傷は二重であり、出血ショック時の最初の全般的低酸素症が上部腸間膜大動脈クランプの間およびその解除後の直接的虚血−再灌流損傷により悪化される。腸の虚血-再灌流損傷は、好中球分離および微血管透過性の増加に関連し、好中球の枯渇により、または好中球接着分子に対する抗体により調整され得る (Hernandez et al, 1987)。ラットにおける最近の研究で、本試験で使用したのと同じ C5a 受容体アンタゴニストが、腸の虚血-再灌流損傷および虚血-再灌流損傷に対する好中球の応答を減少さすのに効果的であることが報告されている (Arumugam et al, 2002)。
【0101】
コンプリメント活性化は炎症の初期段階に生じ、アナフィラトキシン C3a、C4a、C5a および C5b-C9 膜攻撃複合体を放出する。これらの活性コンプリメント構成成分は血管の緊張力および透過性を変え、腸再灌流損傷に必要不可欠であるとされ (Williams et al, 1999)、膜攻撃複合体は細胞に対し直接的に分解的にはたらく。アナフィラトキシン、特に C5a は、炎症細胞を走化性的に動員し活性化して、サイトカイン TNF-αおよび IL-6 の放出をもたらす。腸血管内皮および循環免疫細胞上での活性化コンプリメント成分とその標的細胞との初期相互作用を阻害することにより、このモデルにおいて最初の消化管損傷の重篤性を減少せしめた。
【0102】
直接的または間接的腸虚血-再灌流損傷は、阻害を受けた腸毛細管障壁を越える細菌フラグメントの移動に関連する消化管における機能的および形態的変化を、過剰の炎症応答を生む結果のエンドトキシン血症をもって、誘発する。このことは、消化管が様々な重要な疾患に対する炎症応答を駆動することを示唆する (Baue et al, 1997)。コンプリメントがエンドトキシンに対する応答において好中球活性化で重要であることが示されており (van Deventer et al, 1991)、この試験で使用される C5a アンタゴニストは E. coli への暴露後の PMN における酸化バーストを鈍くする(Mollnes et al., 2002)。
【0103】
C5a 受容体のブロックが初期再灌流におけるエンドトキシンのプロ炎症性作用を減少し得ると仮定した。しかし、再灌流が腸損傷増加を続けるので、おそらくは、虚血-再灌流損傷の細胞作用ならびにサイトカインおよびプロ炎症性メディエターのカスケードの並行的活性化によるのであろう。われわれの発見は、直接的な腸の虚血-再灌流損傷がコンプリメント・カスケードの種々の時点でのブロックにより緩解され得るとの以前の報告に一致する (Hill et al, 1992; Arumugam et al, 2002)。
【0104】
非処置のショックおよびクランプ動物に比して C5a アンタゴニストにより腸のミエロペルオキシダーゼ濃度が減少することは、局所的コンプリメント誘導の好中球の走化性および活性化すなわち標的細胞オプソニン化 opsonisation がこのモデルにおいて好中球分離および腸損傷に不可欠であることを示唆する。コンプリメントがインビトロで好中球の内皮標的細胞への急速な接着を促進することが示されており (Marks et al, 1989)、この作用は C5a の作用に仲介される。本試験において、ショックおよびクランプ動物はプロ炎症性サイトカイン TNF-αの腸レベルを、擬似動物に比して有意に増加した。このことは C5aR アンタゴニストでの処置により変わらない。活性化コンプリメントが、免疫細胞を含む種々のタイプの細胞からの TNF-αの放出を、受容体仲介の作用によって起こすこと (Barton et al, 1993) および静脈投与された C5a が循環 TNF-α レベルをラットにおいて増加すること (Strachan et al, 2000) が知られているが、虚血-再灌流損傷後に放出される種々の他のメディエター、例えばアラキドン酸代謝体もサイトカイン放出を促進する。
【0105】
IL-6 は重要な多面発現性サイトカインであり、種々のプロ炎症性および抗炎症性作用を有する。IL-6 の高い血清レベルが腹部大動脈瘤の修復後の罹病率および死亡率に関連する (Groeneveld et al, 1997)。本試験において、このモデルで、腸損傷が IL-6 の腸組織レベルの増加に関連すること、および C5aR アンタゴニストによる処置がこの増加を防止することを発見した。これは、IL-6 が TNF-αのプロ炎症作用をコンプリメント活性化に対する応答において上方調整することが示されているので (Platel et al, 1996) 重要である。 IL-6 が好中球のアポトーシスを阻害し、組織損傷についてのその機能的寿命および強度を長くすることが示されている (Biffl et al, 1996)。従って、この放出の阻害は、さらなる好中球仲介の腸損傷を減少し得る。これらのデータは、C5a と免疫細胞受容体との相互作用がこのモデルにおいて IL-6 の放出に不可欠であること、あるいは、これが C5aR アンタゴニスムによる好中球の組織分離の減少も反映し得ることを示唆する。
【0106】
腹部大動脈瘤破裂は、重大な予後をもたらす急性呼吸切迫症候群 (ARDS) といわれる非心臓性の急性間質肺浮腫および関連の低酸素血症に関係する。RAAA についてのわれわれのモデルにおいて、ショックおよびクランプ群では 125I-アルブミンについての肺透過性および肺ミエロペルオキシダーゼのレベルが有意に増加した。この症候群における肺損傷が主に好中球接着、分離症および続く呼吸性バースト誘導の酸化損傷によるとの示唆は、肺損傷が抗-CD18 モノクローナル抗体により緩解され得るとの観察 (Boyd et al, 1999)で支持される。
【0107】
本試験で用いられたモデルにおいて、標的細胞に対する C5a 受容体のアンタゴニスムが好中球分離および続く微血管の高透過性を減少し、より低い胸部虚血−再灌流と合わされた全身的出血ショック損傷の組合せが重篤な急性肺損傷を生じる。肺循環における C5a-誘導の好中球走化性および活性化をなくすること (Solokin et al, 1985) がこの試験での損傷の緩解を部分的に説明し得る。
【0108】
C5a 受容体アンタゴニストは、膜攻撃複合体の形成を阻害しない (Arumugam et al, 2003)。C5a 受容体のブロックが C5b-9 膜攻撃複合体の形成に影響を与えるようでないが、それにもかかわらず、この大きい複合体が邪魔されないで肺循環へ動き、その分解的作用を起こし得たようでない。この急性モデルにおいて、初期のコンプリメント依存性損傷の調節が致命的急性肺不全を回復性急性肺異常に転換するのに十分であり得る。
【0109】
腸に関連して、肺中の TNF-α レベルがショックおよびクランプ後に有意に増加し、これは C5aR アンタゴニストでの処置により影響を受けない。TNF-αは、種々のストレスの
後に生じ、直接的な肺損傷を誘導することが示されている (Welbourn et al, 1991)。肺での IL-6 レベルもショックおよびクランプ後に 擬似動物に比して増加することを、今回発見した。ただしこの増加は有意のレベルに達しなかった。興味深いことに、C5aR アンタゴニストで処置されたショックおよびクランプ動物は、擬似動物に比して肺組織 IL-6 が高有意に増加する。このことは、コンプリメント誘導の遠位損傷からの保護が IL-6 に非依存性であることを示唆する。あるいは、このモデルにおいて、IL-6 放出が肺で好都合の抗炎症性作用を、おそらく炎症メディエター放出のパラクリン阻害を介して、有するのであろうことを示唆する。
【0110】
出血ショック自体がプロ炎症メディエター誘導のカスケードを開始し (Abraham, 1991)、酸化損傷が心臓病患者におけるコンプリメント活性化の程度に関連する (Cavarocchi et al, 1986)。大動脈クランプ解放が種々の血管活性作用に関連する。これには、末梢血管拡張および血管透過性の増加による低血液量、血管活性メディエターおよび代謝体での虚血組織の再灌流ならびに心筋機能抑制因子がある (Barry et al, 1997)。C5a 受容体 アンタゴニストの、微血管透過性の減少およびコンプリメント受容体特異的経路を介する免疫細胞の活性化に対する作用が、本モデルにおいて低血圧の程度および時間を減少する。これはおそらく、 コンプリメント活性化および微血管透過性のコンプリメント依存性増加の防止による第3のスペース液損失の減少を反映しているのであろう。コンプリメント活性化が血管緊張力およびヒスタミン放出に対する作用を有することも知られており (Ellis et al, 1991)、その防止も血管抵抗性の維持を助け得る。臓器損傷の減少、およびおそらく心筋デプレッションの減少も、標的の血圧を維持するために必要な液体量を動物がうまく処理するのを可能にし得る。
【0111】
結論として、今回初めて、小分子 C5a 受容体アンタゴニストが腹部大動脈瘤破裂のモデルにおいて局所および遠位肺損傷を減少し得ることを明らかにした。この処置は、活性化コンプリメント-免疫細胞相互作用を減少することによりその作用を仲介し、換言すると、組織好中球分離に対する炎症性刺激を減少するようである。従って、ヒト C5a 受容体のアンタゴニスムは、出血ショックのある患者において実際の医療上の標的を表し、主な臨床上の必要を強力に提供する。
【0112】
当業者にとって明らかなように、本発明を明確性および理解しやすさのためにある程度詳細に記述したが、本明細書に記載の実施態様および方法について種々の修飾および変更を、本明細書に開示の発明概念の範囲を逸脱することなしに、行い得る。
参考文献を以下の頁に表示する。これらは出典明示により本明細書の一部とする。
【0113】
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【図面の簡単な説明】
【0119】
【図1】図1は、各群の動物についての平均動脈圧および蘇生液の必要量についての要約を示す。A.平均動脈圧。B.蘇生液の必要量。
【図2】図2は、各群のラットにおける肺透過性インデックス (LPI) を比較する。
【図3】図3は、クランプ解除後の時間経過における腸透過性の変化を示す。
【図4】図4は、サンプルの肺および腸におけるミエロペルオキシダーゼ活性を示す。A.肺。B.腸。
【図5】図5は、各群の動物からのサンプルの消化管組織中のサイトカインのレベルを示す。A.TNF-α。B.IL-6。
【図6】図6は、各群の動物からのサンプルの肺組織中のサイトカインのレベルを示す。A.TNF-α。B.IL-6。
【図1A】

【図1B】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
有効量の C5a 受容体の阻害剤を処置の必要な対象に投与する工程を含む出血ショックを処置する方法。
【請求項2】
阻害剤が、
(d) C5a 受容体のアンタゴニストであり、
(e) アゴニスト活性を実質的に有さない、および
(f) 下記式Iの環状ペプチドまたはペプチド様化合物である
式I
【化1】


[式中、A は H、アルキル、アリール、NH2、NH-アルキル、N(アルキル)2、NH-アリール、NH-アシル、NH-ベンゾイル、NHSO3、NHSO2-アルキル、NHSO2-アリール、OH、O-アルキルまたは O-アリールであり;
B はアルキル、アリール、フェニル、ベンジル、ナフチルまたはインドール基、または D- または L-アミノ酸の側鎖であり、しかし、グリシン、D-フェニルアラニン、L-ホモフェニルアラニン、L-トリプトファン、L-ホモトリプトファン、L-チロシンまたは L-ホモチロシンの側鎖でなく;
C は D-、L- またはホモ-アミノ酸の側鎖であり、しかし、イソロイシン、フェニルアラニンまたはシクロヘキシルアラニンの側鎖でなく;
D は中性 D-アミノ酸の側鎖であり、しかし、グリシンもしくは D-アラニンの側鎖、大きい平面的側鎖または大きい電荷側鎖でなく;
E は大きい置換基であり、しかし、D-トリプトファン、L-N-メチルトリプトファン、L ホモフェニルアラニン、L-2-ナフチル L-テトラヒドロイソキノリン、L-シクロヘキシルアラニン、D-ロイシン、L-フルオレニルアラニンまたは L ヒスチジンの側鎖でなく;
F は L-アルギニン、L-ホモアルギニン、L-シトルリンまたは L-カナバニンの側鎖、またはそのバイオ等価体であり; および
X は-(CH2)nNH- または (CH2)n-S-(うち、n は 1 〜 4 の整数); -(CH2)2O-; -(CH2)3O-; -(CH2)3-;-(CH2)4-; -CH2COCHRNH-; または CH2 CHCOCHRNH-(うち、R は通常または非通常のアミノ酸の側鎖)である]
である、請求項1の方法。
【請求項3】
n が 2 または 3 である、請求項2の方法。
【請求項4】
A がアセトアミド基、アミノメチル基、または置換もしくは非置換スルホンアミドである、請求項2または3の方法。
【請求項5】
A が置換スルホンアミドであり、置換基が 1 〜 6 炭素原子のアルキル鎖、またはフェニルもしくはトルイル基である、請求項3の方法。
【請求項6】
置換基が 1 〜 4 炭素原子のアルキル鎖である、請求項5の方法。
【請求項7】
B が L-フェニルアラニンまたは L-フェニルグリシンの側鎖である、請求項2−6のいずれかの方法。
【請求項8】
C がグリシン、アラニン、ロイシン、バリン、プロリン、ヒドロキシプロリンまたはチオプロリンの側鎖である、請求項2−6のいずれかの方法。
【請求項9】
D が D-ロイシン、D-ホモロイシン、D-シクロヘキシルアラニン、D-ホモシクロヘキシルアラニン、D-バリン、D-ノルロイシン、D-ホモノルロイシン、D-フェニルアラニン、D-テトラヒドロイソキノリン、D-グルタミン、D-グルタメートまたは D-チロシンの側鎖である、請求項2−8のいずれかの方法。
【請求項10】
E が、L-フェニルアラニン、L-トリプトファンおよび L-ホモトリプトファンよりなる群から選ばれるアミノ酸あるいは L-1-ナフチルまたは L-3-ベンゾチエニルアラニンの側鎖である、請求項2−9のいずれかの方法。
【請求項11】
阻害剤が、C5aR に対しアンタゴニスト活性を有し、C5a アゴニスト活性を有さない化合物である、請求項1−10のいずれかの方法。
【請求項12】
阻害剤が強力アンタゴニスト活性をサブミクロモル濃度で有する、請求項1−11のいずれかの方法。
【請求項13】
化合物が、受容体親和性 IC50< 25μM およびアンタゴニスト強度 IC50< 1μM を有する、請求項1−12のいずれかの方法。
【請求項14】
化合物が、PCT/AU02/01427 に記載の化合物 1 − 6、10 − 15、17、19、20、22、25、26、28、30、31、33 − 37、39 − 45、47 − 50、52 − 58 および 60 − 70 よりなる群から選ばれる化合物である、請求項1−13のいずれかの方法。
【請求項15】
化合物が、AcF[OP-DCha-WR]、AcF[OP-DPhe-WR]、AcF[OP-DCha-FR]、AcF[OP-DCha-WCit])、HC-[OPdChaWR]、AcF-[OPdPheWR]、AcF-[OpdChaWシトルリン] または HC-[OPdPheWR] である、請求項14の方法。
【請求項16】
阻害剤が、出血ショックの処置のために1以上の他の物質と合わせて使用される、請求項1−15のいずれかの方法。
【請求項17】
ショックが、外傷、動脈瘤破裂、制御できない鼻出血、出血性熱、出産後の子宮出血、手術中および後の出血、消化器潰瘍または十二指腸静脈瘤に由来する出血、下部消化器管の出血、癌侵傷の二次的出血、出血性素質に由来する出血、血栓融解の治療に関連する出血よりなる群から選ばれる状態に起因する主要な出血によるものである、請求項1−16のいずれかの方法。
【請求項18】
対象がヒトである、請求項1−17のいずれかの方法。
【請求項19】
阻害剤が非経口、経口、経皮または鼻中で投与される、請求項1−18のいずれかの方法。
【請求項20】
阻害剤が静脈に投与される、請求項19の方法。
【請求項21】
出血ショックの処置のための医薬の製造における C5a 受容体の阻害剤の使用。
【請求項22】
阻害剤が請求項1−15のいずれかで定義された化合物である、請求項21の使用。
【請求項23】
医薬が静脈投与に適している、請求項21または22の使用。

【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6A】
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【図6B】
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【公表番号】特表2006−528208(P2006−528208A)
【公表日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−529441(P2006−529441)
【出願日】平成16年5月14日(2004.5.14)
【国際出願番号】PCT/AU2004/000642
【国際公開番号】WO2004/100975
【国際公開日】平成16年11月25日(2004.11.25)
【出願人】(500020760)ザ・ユニバーシティ・オブ・クイーンズランド (20)
【Fターム(参考)】