説明

コンベックス研磨装置に用いるワークの取付治具

【課題】ワークへのコンベックス加工の途中であっても他の製造工程を行うことが可能なコンベックス研磨装置に用いるワークの取付治具を提供する。
【解決手段】取付治具4は、コンベックス研磨装置1に用いられ、ワークである水晶素板2を取り付ける。この取付治具4には、水晶素板2をその外周で保持する保持部43と、当該取付治具4を支持するコンベックス研磨装置1の支持部5を着脱自在に取り付ける取付部44と、が対向して設けられている。そして、この取付治具4では、水晶素板2を保持部43で保持した際、水晶素板2の両主面21,22の振動領域23が非接触状態となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンベックス研磨装置に用いるワークの取付治具に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、ワークの主面を研磨加工する技術としてコンベックス研磨技術があり、コンベックス研磨技術で用いられるコンベックス研磨装置として、機械加工によるコンベックス加工を行うコンベックス研磨装置がある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
具体的に、この特許文献1に記載の加工機(コンベックス研磨装置)では、研磨円盤上に保持部に圧電素板(ワーク)を格納した状態で研磨円盤を回転させ、同時に保持部も保持部支持を揺動することにより研磨円盤上を圧電素板が前後(左右)に揺動して、研磨円盤の円弧に沿った周率により圧電素板にコンベックス加工を行う。
【特許文献1】特開2003−168941号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、水晶振動片などの圧電振動デバイスを製造するためには、上記した特許文献1によりコンベックス加工された圧電素板に対して周波数測定を行い、所望の周波数となっているかどうかを測る工程がある。具体的に、上記した特許文献1に記載の加工機でコンベックス加工された圧電素板を保持部から外し、新たに周波数測定装置の保持部にコンベックス加工された圧電素板を取り付けて、保持器に取り付けた圧電素板を一対の電極で挟んで周波数測定を行う。
【0005】
上記したように、特許文献1に記載の加工機を用いる場合、加工機で圧電素板にコンベックス加工を施した後に、次工程である周波数測定工程を行う。特にそれぞれ装置の保持部への圧電素板の着脱を行う必要があり、手間がかかる。さらに、それぞれ装置の保持部への圧電素板の着脱を行う関係上、特許文献1に記載の加工機を用いる場合、コンベックス加工の途中で周波数測定を行うことはできず、製造工程の自由度が低い。
【0006】
そこで、上記課題を解決するために、本発明は、ワークへのコンベックス加工の途中であっても他の製造工程を行うことが可能なコンベックス研磨装置に用いるワークの取付治具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するため、本発明にかかるワークの取付治具は、コンベックス研磨装置に用いられ、圧電材料からなるワークを取り付けるワークの取付治具において、ワークをその外周で保持する保持部と、当該取付治具を支持するコンベックス研磨装置の支持部を着脱自在に取り付ける取付部と、が対向して設けられ、ワークを前記保持部で保持した際、ワークの両主面の振動領域が非接触状態となることを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、ワークへのコンベックス加工の途中であっても他の製造工程を行うことができる。具体的に、前記保持部と前記取付部とが対向して設けられ、ワークを前記保持部で保持した際にワークの両主面の振動領域が非接触状態となるので、前記取付部に他の外部機器を取り付けることが可能となり、当該取付治具の汎用性を高めることが可能となる。
【0009】
例えば、ワークの周波数測定を行うために前記取付部に一電極を取り付け、前記保持部で保持したワークを介して前記保持部の外方に他電極を配してワークを介した両電極を構成して周波数測定を行うことも可能となる。特に、本発明によれば、ワークを前記保持部で保持した際、ワークの両主面の振動領域が非接触状態(ワークの両主面の振動領域が他の部材などと接触していない状態)となるので、ワークを当該取付治具に取り付けることによるワークの振動阻害を抑えることが可能となり、当該取付治具を周波数測定装置に用いることが可能となる。
【0010】
上記したように、今までの従来技術のように、ワークへのコンベックス加工と、コンベックス加工したワークの周波数測定など他の検査とを夫々個別の取付治具を用いていたが、本発明によれば、同一の取付治具を用いることが可能となり、複数のワークの製造工程を1つの取付治具で用いることが可能となる。その結果、例えば、ワークへのコンベックス加工途中(研磨途中)に、ワークの周波数測定を行うことも容易に行うことが可能となり、本発明によればワークの製造工程の自由度が増し、歩留まりの向上を図ることが可能となる。
【0011】
また、本発明によれば、前記保持部では前記ワークをその外周で保持するので、コンベックス研磨装置の支持部に支持してワークの主面にコンベックス加工を施す際に、ワークの振動領域に前記支持部からの荷重が直接かかるのを防止することが可能となり、前記支持部からの荷重がワークの主面へのコンベックス加工に影響を与えるのを抑えることが可能となる。
【0012】
前記構成において、前記保持部と前記取付部とが空間ギャップを介して対向して設けられてもよい。
【0013】
この場合、ワークの振動領域に前記支持部からの荷重が直接かかるのを防止することが可能となるだけでなく、前記保持部と前記取付部との間に前記空間ギャップが設けられているので、前記取付部に電極を取り付けてワークの周波数測定を行う際に、前記取付部に電極を取り付けることによるワークの振動阻害を無くすことが可能となり、正確にワークの周波数を測定することが可能となる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ワークへのコンベックス加工の途中であっても他の製造工程を行うことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。なお、以下に示す各実施例では、ワークとして圧電材料である水晶素板に本発明を適用した場合を示す。
【実施例1】
【0016】
本実施例1にかかるコンベックス研磨装置1は、ワークである水晶素板2の一主面21にコンベックス加工を施すものであり、図1に示すように、ワークを研磨する研磨部3と、水晶素板2と取り付ける取付治具4と、取付治具4を着脱可能に(取り外し可能に)支持する支持部5と、研磨部3の研磨面31(下記参照)の曲面補修を行う補修治具6とが設けられている。また、本実施例1では、ワークとして、高次オーバートーンの低周波水晶振動子で用いる結晶性材料の水晶素板2を用いる。
【0017】
以下に、コンベックス研磨装置1の構成を、図面を用いて詳説する。
【0018】
研磨部3は、曲面成形された研磨面31を有する。図1では、研磨面31の一部のみを開示しており、この研磨部3の研磨面31は、一方を開口とする椀状に形成されている。そして、椀状の内底を所定の軸とし、この椀状の内底を垂直下から斜めに傾く状態で配され、この所定の軸(図1の斜め方向の軸方向の矢印参照)を中心として研磨面31は回動する。
【0019】
支持部5は、図1〜4に示すように、図示しない駆動源(モータ)と、駆動源によりその軸方向(図1に示す荷重方向)を中心として回動する支持軸51と、支持軸51に係合された支持円盤52とから構成される。この支持部5は、駆動源により支持軸51を軸にして回動し、かつ、研磨部3の研磨面31に沿って揺動する。
【0020】
支持軸51の支持円盤52と係合する一端511には、図4に示すように、放射角が等しいY字状(三叉状)のジョイント部512が延出して設けられている。
【0021】
支持円盤52には、図3に示すように、支持軸51と係合する係合孔522と、取付治具4を一点支持する一点支持部53を介して取付治具4を支持する3つの支持棒54(図1,9参照)と、嵌合部64に嵌る3つのストッパ55と、が設けられている。このため、支持円盤52と取付治具4のみの重み(荷重)により、水晶素板2が研磨面31に対して押圧される。
【0022】
係合孔522は、図3に示すように、平面視円盤中心位置に前記ジョイント部512を係合するためのジョイント部512の端面形状と同じ形状のY字状(三叉状)に形成されている。このようにジョイント部512をY字状に形成することで、回動を行う支持軸51と支持円盤52との係合力を高めることができる。
【0023】
3つの支持棒54は、図1,3に示すように、支持円盤52の補修治具と対向する主面521(図1では下面)に、その主面外周に沿って、かつ、それぞれ等間隔に突設して設けられている。なお、これら3つの支持棒54を線で結ぶとそれぞれの支持棒54を頂点とする平面視正三角形となる。
【0024】
3つのストッパ55は、図1,3に示すように、3つの支持棒54間の中間点に、3つの支持棒54と同様に主面外周に沿ってそれぞれ等間隔に突設し、下記する補修治具6の嵌合部64に嵌る。なお、これら3つのストッパ55を線で結ぶとそれぞれのストッパ55を頂点とする平面視正三角形となる。このため、補修治具6のみの重さ(荷重)により、補修治具6は研磨面31に対して押圧される。
【0025】
一点支持部53は、その一主面531に支持棒54を一点支持するV字状の凹部533が設けられ、その他主面532を取付治具4に面して取付治具4の取付部44(下記参照)に嵌める。
【0026】
補修治具6は、図1,2,5に示すように、取付治具4を挿脱可能な両主面61,62間を貫通する3つの孔部63を有する。また、補修治具6の一主面61(図1に示す上面であり、支持円盤52と対向する主面)には凹形状の嵌合部64が設けられ、支持部5のストッパ55が嵌る。また、補修治具6の他主面62(図5に示す主面であり、図1に示す下面)が研磨面31と同じ曲率を有する曲面に形成され、この他主面62には放射状パターンと環状パターンとの溝65が形成され、研磨面31に補修治具6が配された際、補修治具6の他主面62は研磨面31と対向する。なお、補修治具6は研磨面31よりも硬い材料からなり、本実施例1では、補修治具6として鉄材(S45C:JIS規格)を用い、研磨面31として鉄材(45C:JIS規格)を用いている。
【0027】
取付治具4には、図1,6〜10に示すように、円柱形状からなり、一主面41に水晶素板2(具体的には水晶素板2の外周)で保持する保持部43が設けられ、他主面42に当該取付治具4を支持する支持部5の一点支持部53を着脱自在に取り付ける(嵌める)取付部44が設けられている。これら保持部43と取付部44とは空間ギャップ45を介して対向して設けられている。また、保持部43は凹状に形成された円柱の窪みであり、支持部5は凹状に形成された矩形の窪みであり、空間ギャップ45は保持部43と取付部44を介して両主面41,42を貫通する円柱の中空部である。これら保持部43と取付部44と空間ギャップ45とについて、保持部43の体積のほうが空間ギャップ45の体積よりも大きく、支持部5の体積は保持部43よりも小さく空間ギャップ45よりも大きい。
【0028】
上記した構成からなる取付治具4は、水晶素板2を保持部43で保持した際、水晶素板2の両主面21,22の振動領域23が非接触状態となる。すなわち、図9に示すように、支持部5の一点支持部53を取付部44に嵌め、水晶素板2を保持部43で接着材を介して保持した際に、水晶素板2の一主面21は露出し、他主面22の振動領域23は中空状態の空間ギャップ45に面した状態になる。なお、保持部43への水晶素板2の接着材には松脂を用い、水晶素板2の他主面22外周を松脂で貼り付けする。
【0029】
上記した構成からなるコンベックス研磨装置1では、まず、取付治具4の保持部43に水晶素板2を取り付ける。そして、補修治具6がその他主面62を研磨面31と対向するようにして研磨面31に配され、かつ、補修治具6の3つの孔部63それぞれに取付治具4が挿通されて取付治具4に取り付けた水晶素板2が研磨面31に配される。この状態で、研磨部3の研磨面31が所定の軸を中心として回動し(図1の軸方向の矢印参照)、支持部5は研磨面31に対する荷重方向(図1の下方向の矢印参照)を中心として回動するとともに研磨面31に沿って揺動する。これら研磨面31の回動と支持部5の回動により、取付治具4に取り付けられた水晶素板2と補修治具6とが研磨面31に摺動して、水晶素板2の研磨と研磨面31の補修を同時に行う。なお、図1に示すように、支持部5の研磨面31に対する荷重方向(図1の下方向の矢印参照)と、研磨面31の回動の軸方向(図1の軸方向の矢印参照)とは異なる方向である。
【0030】
また、上記したコンベックス研磨装置1での水晶素板2へのコンベックス加工を行なった後、もしくは、水晶素板2へのコンベックス加工を行なっている途中段階で、周波数測定を行う工程について説明する。
【0031】
この場合、コンベックス研磨装置1の駆動を止めて、取付治具4から支持部5(一点支持部53)を外して取付治具4が付いた状態(貼り付いた状態)で水晶素板2を周波数測定装置に搬送する。そして、周波数測定装置に搬送した取付治具4が付いた状態の水晶素板2に対して、ネットアナライザが接続されている一対の電極71,72を挟む。
【0032】
具体的に、図10に示すように、水晶素板2の一主面21の外方に一電極71を配し、他電極72を取付治具4の取付部44を挿通して空間ギャップ45に配して水晶素板2の他主面22の上空に配し、水晶素板2の周波数測定を行う。なお、この時、約10μの間隙を挟んで水晶素板2の他主面22と他電極72とが配されている。
【0033】
上記したように、本実施例1にかかるコンベックス研磨装置1によれば、水晶素板2のコンベックス加工時間が長くなるのを抑えるとともに、一定形状のコンベックス加工を加工対象の水晶素板2全てに施すことが可能となる。具体的に、本実施例1によれば、水晶素板2の主面(本実施例1では一主面21)にコンベックス加工を施しながら、研磨面31の補修を行うことが可能となり、今までの従来技術のように、水晶素板2へのコンベックス加工と、研磨面31の補修を別工程で行わなくてもよく、水晶素板2の主面(本実施例1では一主面21)へのコンベックス加工工程の工程数を減らすことが可能となる。また、水晶素板2へのコンベックス加工と、研磨面31の補修を同時に行うので、研磨面31に凹凸が形成されるのを防止して、常に水晶素板2の主面(本実施例1では一主面21)に所望のセンターを有するコンベックス形状の加工を施すことが可能となり、コンベックス加工の加工精度も向上する。
【0034】
また、補修治具6の少なくとも研磨面31と接する部位が研磨面31よりも硬い材料からなるので、補修治具6の摺動により研磨面31の補修が行なわれる。
【0035】
また、補修治具6に嵌合部64が設けられ、支持部5にストッパ55が設けられているので、支持部5からの過剰な荷重(支持部5の荷重や支持部5にかかる荷重など)が取付治具4にかかるのを抑えることが可能となる。その結果、水晶素板2の主面(本実施例1では一主面21)へのコンベックス加工時に、支持部5からの過剰な荷重が取付治具4に取り付けた水晶素板2に影響を与える(荷重がかかりすぎる)のを抑えることが可能となり、水晶素板2が割れたり、コンベックス形状のセンターがずれたりするのを防止することが可能となる。
【0036】
また、支持部5の研磨面31に対する荷重方向と、研磨面31の回動の軸方向とは異なる方向であるので、研磨面31上における水晶素板2の研磨位置や補修治具6の補修位置を研磨面31の一箇所に集中させるのを避けることが可能となる。その結果、研磨面31の様々な箇所において水晶素板2の研磨や補修治具6の補修を行うことが可能となり、水晶素板2と補修治具6の摺動によって研磨面31に局所的な凹凸が形成されるのを防止することが可能となる。
【0037】
また、補修治具6は、3つの孔部63を有するので、複数個の水晶素板2に対して同時にコンベックス加工を施すことが可能となる。特に、本実施例に示すように補修治具6に3つの孔部63がそれぞれ等間隔に配されることが好適である。この場合、各孔部63に対して取付治具6が挿通されて取付治具6に取り付けられた水晶素板2が研磨面31上に配される。この等間隔に配された3つの孔部63の構成により、各孔部63に配された水晶素板2への支持部5からの荷重方向が均一になり、その結果、各孔部63に配された水晶素板2へ支持部5からの荷重が均一に加わるため、各孔部63に配された水晶素板2で研磨バラツキが生じるのを抑えることができる。
【0038】
また、補修治具6の一主面61には放射状パターンの溝65が形成されるので、水晶素板2の主面(本実施例1では一主面21)へのコンベックス加工時、溝65を研磨剤の導通路とすることが可能となり、研磨面31に補修治具6を摺動させている際に溝65上を研磨剤が導通することで、補修治具6の一主面61全体に均一に研磨剤を配することが可能となる。その結果、補修治具6によって均一な摺動力(研磨力)により研磨面31の補修を行うことが可能となる。
【0039】
また、本実施例1にかかるコンベックス研磨装置1で用いる水晶素板2の取付治具4によれば、水晶素板2へのコンベックス加工の途中であっても他の製造工程を行うことができる。具体的に、保持部43と取付部44とが対向して設けられ、水晶素板2を保持部43で保持した際に水晶素板2の両主面21,22の振動領域23が非接触状態となるので、取付部44に他の外部機器(本実施例1では周波数測定装置)を取り付けることが可能となり、当該取付治具4の汎用性を高めることが可能となる。
【0040】
例えば、水晶素板2の周波数測定を行うために取付部44に一電極を取り付け、保持部43で保持した水晶素板2を介して保持部43の外方に他電極を配して水晶素板2を介した両電極を構成して周波数測定を行うことも可能となる。特に、本実施例1によれば、水晶素板2を保持部43で保持した際、水晶素板2の両主面21,22の振動領域23が非接触状態(水晶素板2の両主面21,22の振動領域23が他の部材などと接触していない状態)となるので、水晶素板2を当該取付治具4に取り付けることによる水晶素板2の振動阻害を抑えることが可能となり、当該取付治具4を周波数測定装置に用いることが可能となる。
【0041】
上記したように、今までの従来技術のように、水晶素板2へのコンベックス加工と、コンベックス加工した水晶素板2の周波数測定など他の検査とを夫々個別の取付治具4を用いていたが、本実施例1によれば、同一の取付治具4を用いることが可能となり、複数の水晶素板2の製造工程を1つの取付治具4で用いることが可能となる。その結果、例えば、水晶素板2へのコンベックス加工途中(研磨途中)に、水晶素板2の周波数測定を行うことも容易に行うことが可能となり、本実施例1によれば水晶素板2の製造工程の自由度が増し、歩留まりの向上を図ることが可能となる。
【0042】
また、本実施例1によれば、保持部43では水晶素板2をその外周で保持するので、コンベックス研磨装置1の支持部5に支持して水晶素板2の主面(本実施例1では一主面21)にコンベックス加工を施す際に、水晶素板2の振動領域23に支持部5からの荷重が直接かかるのを防止することが可能となり、支持部5からの荷重が水晶素板2の主面(本実施例1では一主面21)へのコンベックス加工に影響を与えるのを抑えることが可能となる。
【0043】
また、本実施例1にかかる取付治具4によれば、水晶素板2の振動領域23に支持部5からの荷重が直接かかるのを防止することが可能となるだけでなく、保持部43と取付部44との間に空間ギャップ45が設けられているので、取付部44に電極を取り付けて水晶素板2の周波数測定を行う際に、取付部44に電極を取り付けることによる水晶素板2の振動阻害を無くすことが可能となり、正確に水晶素板2の周波数を測定することが可能となる。
【0044】
なお、本実施例1では、補修治具6自体を研磨面31よりも硬い材料から構成しているが、これに限定されるものではなく、補修治具6の少なくとも研磨面31と接する部位(図5に示す平面視主面であり、図1に示す下面)が研磨面31よりも硬い材料からなっていればよい。
【0045】
また、本実施例1では、ワークとして高次オーバートーンの低周波水晶振動子で用いる水晶素板2を用いるが、これに限定されるものではなく、他のものであってもよい。具体的に、結晶性を有する圧電材料からなるワーク(具体的に水晶振動素板)であることが好適である。
【0046】
また、本実施例1では、補修治具6は3つの孔部63を有しているが、これは最適な構成である。しかしながら、孔部63が偶数個有した場合と比較すると、3つに限定されずに5つなどの1つを除く奇数個の孔部63であれば効果は生じる。
【0047】
また、本実施例1では、支持円盤52と取付治具4のみの重み(荷重)により、水晶素板2が研磨面31に対して押圧されているが、これに限定されるものではなく、支持円盤52と取付治具4に対して押圧力を可変(増減)できるコントロール機構を当該コンベックス研磨装置1に備えてもよい。この場合、水晶素板2への研磨量を所望の量に設定でき、水晶基板2への研磨量の自由度を高めることができる。
【0048】
また、本実施例1では、補修治具6のみの重さ(荷重)により、補修治具6は研磨面31に対して押圧されているが、これに限定されるものではなく、補修治具6に対して押圧力を可変(増減)できるコントロール機構を当該コンベックス研磨装置1に備えてもよい。この場合、補修治具6による研磨面31への補修量を所望の量に設定でき、研磨面31への補修量の自由度を高めることができる。
【実施例2】
【0049】
次に、本実施例2にかかるコンベックス研磨装置1を図面を用いて説明する。なお、本実施例2にかかるコンベックス研磨装置1は、上記した実施例1に対して、研磨部3と補修治具6の構成と支持部5との構成が異なる。そこで、本実施例2では、上記した実施例1と異なる構成について説明し、同一の構成についての説明を省略する。そのため、同一構成による作用効果及び変形例は、上記した実施例1と同様の作用効果及び変形例を有する。
【0050】
本実施例2にかかるコンベックス研磨装置1の構成を、図面を用いて詳説する。
【0051】
研磨部3は、曲面成形された研磨面31を有する。図11では、研磨面31の一部のみを開示しており、この研磨部3の研磨面31は、一方を開口とする椀状に形成されている。そして、椀状の内底を所定の軸とし、この所定の軸(図11の軸方向の矢印参照)を中心として研磨面31は回動する。
【0052】
支持部5は、図11に示すように、図示しない駆動源(モータ)と、駆動源によりその軸方向(図11に示す荷重方向)を中心として回動する支持軸51と、支持軸51に係合された支持ギア56と、支持ギア56に噛み合う3つの遊星ギア57と、3つの遊星ギア57それぞれに係合された3つの支持円盤52とから構成される。なお、駆動源と支持円盤52と支持軸51とは上記した実施例1と同様の構成からなるので、ここでの説明は省略する。
【0053】
この支持部5は、駆動源により支持軸51を軸にして回動することで支持ギア56を回動させ、支持ギア56の回動に連動して遊星ギア57を回動させて遊星ギア57に係合された支持円盤52を回動させる。
【0054】
上記した構成からなるコンベックス研磨装置1では、まず、取付治具4の保持部43に水晶素板2を取り付ける。そして、実施例1と同様の構成からなる補修治具6が3つ用いられ、全ての補修治具6がその他主面62を研磨面31と対向するようにして研磨面31に配され、かつ、全ての補修治具6の3つの孔部63それぞれに取付治具4が挿通されて取付治具4に取り付けた水晶素板2が研磨面31に配される。なお、研磨面31に補修治具6が配され、かつ、補修治具6の孔部63に取付部44が挿通された際、支持部5からの荷重方向以外の位置に、補修治具6の孔部63が位置する。
【0055】
そして、この状態で、研磨部3の研磨面31が所定の軸を中心として回動し(図11の軸方向の矢印参照)、支持部5では支持ギア56と遊星ギア57の回動により3つの支持円盤52を回動させる(図12の矢印参照)。これら研磨面31の回動と支持部5の回動により、取付治具4に取り付けられた水晶素板2と補修治具6とが研磨面31に摺動して、水晶素板2の研磨と研磨面31の補修を同時に行う。
【0056】
また、上記したコンベックス研磨装置1での水晶素板2へのコンベックス加工を行なった後、もしくは、水晶素板2へのコンベックス加工を行なっている途中段階で、周波数測定を行う工程は、上記した実施利1と同様の工程からなる。そのため、実施例2での周波数測定工程についての説明は省略する。
【0057】
上記したように、本実施例2にかかるコンベックス研磨装置1によれば、水晶素板2のコンベックス加工時間が長くなるのを抑えるとともに、一定形状のコンベックス加工を加工対象の水晶素板2全てに施すことが可能となる。また、本実施例2にかかるコンベックス研磨装置1は、上記した実施例1と同様の構成を有するので、これら同様の構成により実施例1と同様の作用効果を有する。
【0058】
また、本実施例2にかかるコンベックス研磨装置1で用いる水晶素板2の取付治具4によれば、水晶素板2へのコンベックス加工の途中であっても他の製造工程を行うことができる。また、本実施例2にかかるコンベックス研磨装置1で用いる水晶素板2の取付治具4は、上記した実施例1と同様の構成を有するので、これら同様の構成により実施例1と同様の作用効果を有する。
【0059】
また、3つの補修治具6を用いて、研磨面31に全ての補修治具6が配され、かつ、全ての補修治具6の孔部63に取付治具4が挿通されて取付治具4に取り付けられた水晶素板2が研磨面31に配された状態で、全ての補修治具6および取付治具4に取り付けられた水晶素板2は研磨面31上を摺動する複数個の水晶素板2に対して同時にコンベックス加工を施すことが可能となる。
【0060】
また、研磨面31に補修治具6が配され、かつ、補修治具6の孔部63に取付部44が挿通された際、支持部5からの荷重方向以外の位置に、補修治具6の孔部63が位置するので、支持部5からの過剰な荷重が、孔部63に配された取付治具4に直接かかるのを防止することが可能となる。その結果、取付治具4に取り付けられた水晶素板2に支持部5からの過剰な荷重が直接かかるのを抑制することが可能となる。
【0061】
また、本実施例1では、補修治具6を3つ用いているが、これは最適な構成である。しかしながら、補修治具6が偶数個有した場合と比較すると、3つに限定されずに5つなどの1つを除く奇数個の補修治具6であれば効果は生じる。
【0062】
なお、本発明は、その精神や主旨または主要な特徴から逸脱することなく、他のいろいろな形で実施することができる。そのため、上述の実施例はあらゆる点で単なる例示にすぎず、限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示すものであって、明細書本文には、なんら拘束されない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明は、コンベックス研磨装置に適用でき、ワークとして結晶性を有する材料に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】図1は、本実施例1にかかるコンベックス研磨装置の概略構成図であり、図2に示すA−A線一部端面図である。
【図2】図2は、本実施例1にかかるコンベックス研磨装置の概略平面図である。
【図3】図3は、本実施例1にかかる支持円盤の、図1に示すコンベックス研磨装置に配した際の概略裏面図である。
【図4】図4は、本実施例1にかかる支持軸の、図1に示すコンベックス研磨装置に配した際の概略側面図である。
【図5】図5は、本実施例1にかかる補修治具の、図1に示すコンベックス研磨装置に配した際の概略裏面図である。
【図6】図6は、本実施例1にかかる取付治具の一主面側の概略平面図である。
【図7】図7は、図6のB−B線断面図である。
【図8】図8は、本実施例1にかかる取付治具の他主面側の概略平面図である。
【図9】図9は、本実施例1にかかるコンベックス研磨装置における、図6に示すB−B線端面図で表す取付治具に保持した水晶素板を示す概略構成である。
【図10】図10は、本実施例1にかかる周波数測定装置における、図6に示すB−B線端面図で表す取付治具に保持した水晶素板を示す概略構成である。
【図11】図11は、本実施例2にかかるコンベックス研磨装置の概略構成図であり、図12に示すC−C線端面図である。
【図12】図12は、本実施例2にかかるコンベックス研磨装置の概略平面図である。
【符号の説明】
【0065】
1 コンベックス研磨装置
2 水晶素板(ワーク)
21,22 水晶素板の両主面
23 水晶素板の振動領域
4 取付治具
43 保持部
44 取付部
5 支持部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンベックス研磨装置に用いられ、圧電材料からなるワークを取り付けるワークの取付治具において、
ワークをその外周で保持する保持部と、
当該取付治具を支持するコンベックス研磨装置の支持部を着脱自在に取り付ける取付部と、が対向して設けられ、
ワークを前記保持部で保持した際、ワークの両主面の振動領域が非接触状態となることを特徴とするワークの取付治具。
【請求項2】
請求項1に記載のワークの取付治具において、
前記保持部と前記取付部とが空間ギャップを介して対向して設けられたことを特徴とするワークの取付治具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2009−239730(P2009−239730A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−84636(P2008−84636)
【出願日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【出願人】(000149734)株式会社大真空 (312)
【Fターム(参考)】