説明

コンベヤベルトの縦裂き検出用ループコイルおよびその製造方法

【課題】コンベヤベルトに埋設されて実用に供された際の耐久性を向上させることができるコンベヤベルトの縦裂き検出用ループコイルおよびその製造方法を提供する。
【解決手段】少なくとも1本の金属線材3aを含む複数本の線材3a、3bを編組して構成された筒状体2を備え、この筒状体2の長手方向一端が、他端側から内部に挿入されて筒状体2が二重にオーバーラップした部分Lを有し、二重にオーバーラップした部分Lどうしが係合してループ状に形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンベヤベルトの縦裂き検出用ループコイルおよびその製造方法に関し、さらに詳しくは、コンベヤベルトに埋設されて実用に供された際の耐久性を向上させることができるコンベヤベルトの縦裂き検出用ループコイルおよびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
コンベヤベルトの走行時に、その縦裂きを検出するために、ベルト本体に埋設するループコイルと、このループコイルの状態を検知するセンサとを備えた検出装置が知られている(例えば、特許文献1、2参照)。このような検出装置では、ベルトに埋設されたループコイルが、ベルトの走行によってセンサの設置位置に到達した際、ループコイルが断線していなければ、センサの発信器からの高周波によってループコイルに誘導電流が流れる。この誘導電流をセンサの受信器で受信することにより、縦裂きの有無を検出するようにしている。
【0003】
ところで、従来のループコイルは、金属線材の両端部どうしをはんだ溶接等で繋いでループ状にしていた。そのため、ループコイルの繋ぎ目の耐久性は良好ではなく、コンベヤベルトの走行によってループコイルが繰り返し屈曲変形を受けると、繋ぎ目が早期に破損する。これに伴って、検出装置が誤作動してベルトの縦裂きを精度よく検出できないという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−48549号公報
【特許文献2】特開2005−162430号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、コンベヤベルトに埋設されて実用に供された際の耐久性を向上させることができるコンベヤベルトの縦裂き検出用ループコイルおよびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため本発明のコンベヤベルトの縦裂き検出用ループコイルは、少なくとも1本の金属線材を含む複数本の線材を編組して構成された筒状体を備え、この筒状体の長手方向一端が、他端側から内部に挿入されて筒状体が二重にオーバーラップした部分を有し、この二重にオーバーラップした部分どうしが係合してループ状に形成されていることを特徴とする。
【0007】
また、本発明のコンベヤベルトの縦裂き検出用ループコイルの製造方法は、少なくとも1本の金属線材を含む複数本の線材を編組して筒状体を形成する際に、形成された筒状体の長手方向一端側を、順次、複数本の線材が編組される口金部に送り込み、この送り込まれた筒状体の外周面に複数本の線材を編組することにより、筒状体が二重にオーバーラップした部分を形成し、この二重にオーバーラップした部分どうしを係合させてループ状にすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、少なくとも1本の金属線材を含む複数本の線材を編組して構成された筒状体の長手方向一端が、他端側から内部に挿入されて筒状体が二重にオーバーラップした部分を有し、この二重にオーバーラップした部分どうしが係合することにより、繋ぎ目となって紐状の筒状体がループ状に形成される。これにより、筒状体の繋ぎ目の屈曲耐久性や耐抜け性が良好になる。そのため、このループコイルがコンベヤベルトに埋設されて実用に供された際の耐久性を向上させることができる。
【0009】
本発明のループコイルでは、前記二重にオーバーラップした部分の長さが、150mm以上の仕様にするとよい。これにより、二重にオーバーラップした部分の耐抜け性が向上し、耐久性を向上させるには有利になる。
【0010】
前記二重にオーバーラップした部分の長さが、ループ状に形成されているコイルの周長と同じである仕様にすることもできる。これにより、ループコイルの全長に渡って筒状体の二重構造になるので、剛性が全長に渡って均等になり、優れた耐久性を確保するには一段と有利になる。
【0011】
また、前記複数本の線材がすべて金属線材である仕様にすることもできる。この仕様の場合、金属線材が多くなるので、コンベヤベルトの縦裂き検出性能を向上させるには有利になる。
【0012】
前記複数本の線材が金属線材および繊維線材の2種類である仕様にすることもできる。この仕様の場合、金属線材どうしが接触して擦れることが生じ難くなるため、縦裂き検出能力を安定して確保するには有利になる。
【0013】
前記複数本の線材の外径は、ループコイルの生産性や耐久性等のバランスを考慮すると、例えば、0.05mm以上1.00mm以下の仕様にする。
【0014】
また、本発明のループコイルの製造方法では、ループ状にしたコイルの全長に渡って、前記二重にオーバーラップした部分を形成することもできる。この場合、ループコイルの全長に渡って筒状体の二重構造になるので、剛性が全長に渡って均等になるため、優れた耐久性を確保するには一段と有利になる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】ループコイルの実施形態を例示する平面概要図である。
【図2】図1のループコイルの二重にオーバーラップした部分近傍を例示する斜視図である。
【図3】ループコイルが埋設されているコンベヤベルトの一部を例示する平面図である。
【図4】ループコイルの別の実施形態を例示する平面概要図である。
【図5】ループコイルを製造する工程を正面で例示する説明図である。
【図6】ループコイルを製造する工程を平面で例示する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明のコンベヤベルトの縦裂き検出用ループコイルおよびその製造方法を図に示した実施形態を参照しながら説明する。
【0017】
図1、図2に例示するように、本発明のコンベヤベルトの縦裂き検出用ループコイル1(以下、ループコイル1という)は、少なくとも1本の金属線材3aを含む複数本の線材3a(3b)を編組して構成された筒状体2を備えている。尚、図1および図4では、ループコイル1の全体概要を理解し易くするため、ループコイル1の全長の一部分のみで、編組された線材3a(3b)を図示している。
【0018】
筒状体2を構成する線材は、すべてが金属線材3aであってもよく、金属線材3aおよび繊維線材3bの2種類であってもよい。線材の本数は、例えば4本〜16本程度にする。筒状体2の外径は例えば、0.1mm〜2.5mmが好ましい。
【0019】
金属線材3aは、単線でも複数の素線を撚ったストランドでもよく、例えば、ピアノ線、亜鉛メッキ鋼線、ブラスメッキ鋼線等が使用でき、また、銅線、アルミニウム線等も使用可能である。繊維線材3bは、単線でも複数の素線を撚ったストランドでもよく、種々の化学繊維線材、例えば、ナイロン繊維線材、ポリエステル繊維線材等が使用でき、綿やレーヨン等の天然繊維や再生繊維を線材としても良い。
【0020】
筒状体2の長手方向一端は、他端側から内部に挿入されて筒状体2が二重にオーバーラップした部分Lを有している。二重にオーバーラップした部分Lは互いが係合することにより繋ぎ目となって、紐状の筒状体2がループ状に形成されている。二重にオーバーラップした部分Lの長さは、例えば、150mm以上、好ましくは300mm以上、更に、ループコイル1の全長がオーバーラップしている状態(L=ループコイル1の周長の100%)が最も好ましい。
【0021】
ループコイル1は、図3に例示するように、コンベヤベルト11の内部に埋設される。コンベヤベルト11が、矢印Fの方向に走行して、縦裂き検出装置のセンサの設置位置に到達した際に、金属線材3aが断線していなければ、センサの発信器からの高周波によってループコイル1(金属線材3a)に誘導電流が流れ、この誘導電流をセンサの受信器で受信することにより、縦裂きの有無が検出される。
【0022】
繋ぎ目となる二重にオーバーラップした部分Lは、筒状体2の二重構造であり、内周側と外周側の筒状体2が当接している。そのため、内周側の筒状体2と外周側の筒状体2との接触面積が大きく、コンベヤベルト11の走行によって、ループコイル1(筒状体2)が繰り返し屈曲を受けても、局部的な応力集中が生じ難くなっていて、屈曲耐久性を向上させるには有利になっている。
【0023】
また、ループコイル1(筒状体2)に対して長手方向(筒軸方向)の引張力が作用した場合は、継ぎ目となる二重にオーバーラップした部分Lが、例えば、少なくとも150mm以上、好ましくは300mmm以上当接して、外周側の筒状体2が縮径するように変形して、内周側の筒状体2により強く係合するので、耐抜け性も向上する。そのため、このループコイル1がコンベヤベルト11に埋設されて実用に供された際の耐久性を向上させることができる。
【0024】
即ち、コンベヤベルト11の走行によってループコイル1が繰り返し屈曲変形を受けても筒状体2の繋ぎ目が早期に破損するような不具合を回避できる。これに伴って、縦裂き検出装置が誤作動することが少なくなり、コンベヤベルト11の縦裂きを精度よく検出することが可能になる。
【0025】
ループコイル1のオーバーラップした部分Lの始点および終点は、ベルト幅方向に延設されている部分であり、かつ、ベルト幅1/3の中央部の範囲内であることが好ましい。図3では、オーバーラップした部分Lの始点および終点が、ループ上側のベルト幅方向に延設されている部分になっているが、始点および終点が、ループ下側のベルト幅方向に延設されている部分でもよい。或いは、始点および終点のいずれか一方をループ上側のベルト幅方向に延設されている部分にして、いずれか他方をループ下側のベルト幅方向に延設されている部分にすることもできる。
【0026】
図4に例示するように、二重にオーバーラップした部分Lの長さを、ループコイル1の周長と同じにすることもできる。この仕様の場合、ループコイル1の全長に渡って筒状体1の二重構造になるので、剛性が全長に渡って均等になり、優れた耐久性を確保するには一段と有利になる。
【0027】
また、筒状体2を構成するすべての線材を金属線材3aにした場合は、金属線材3aが多くなるので、コンベヤベルト11の縦裂き検出性能を向上させるには有利になる。
【0028】
筒状体2を構成する線材を、金属線材3aおよび繊維線材3bの2種類にした場合は、金属線材3aどうしが接触して擦れることが生じ難くなるため、金属線材3aの断線を防止し易くなり、縦裂き検出能力を安定して確保するには有利になる。
【0029】
それぞれの線材3a(3b)の外径は、ループコイル1の生産性や耐久性等のバランスを考慮すると、例えば、0.05mm以上1.00mm以下にするのが好ましい。さらに好ましくは、0.1mm以上0.8mm以下にする。
【0030】
次いで、ループコイル1の製造方法の一例を説明する。
【0031】
図5および図6に例示するように、編組機4を用いて、少なくとも1本の金属線材3aを含む複数本の線材3a(3b)を編組して筒状体2を形成する。この編組機4は、屈曲した循環経路のガイド溝6を上面に有するテーブル5を備えている。ガイド溝6には、ボビンキャリア7が移動可能に嵌め込まれている。ボビンキャリア7には、線材3a(3b)が巻回されたボビン8が装着される。テーブル5には、上下に貫通するように挿通筒部10が立設されていて、挿通筒部10の上端部には口金部9が設けられている。テーブル5には、筒状体2を構成するために必要な本数のボビンキャリア7が設置される。
【0032】
それぞれのボビンキャリア7は、ガイド溝6に沿って移動しつつ、装着されたボビン8からは線材3a(3b)が繰り出されて口金部9に集束される。口金部9では、これら線材3a(3b)を互いに交錯させて編み上げることにより筒状体2を形成する。形成された筒状体2は、順次、挿通筒部10の上端開口から送り出される。
【0033】
この際に、形成された筒状体2の長手方向一端側を、順次、挿通筒部10の下端開口に挿入して口金部9に送り込み、送り込んだ筒状体2の外周面に、同様に複数本の線材3a(3b)を編組する。このようにして、筒状体2が二重にオーバーラップした部分Lを形成して、二重にオーバーラップした部分Lどうしを係合させてループ状にする。
【0034】
図4に例示したループコイル1を製造する場合は、製造するループコイル1の全長に渡って、二重にオーバーラップした部分Lを形成する。
【0035】
尚、口金部9および挿通筒部10は縦方向に延びる分割線を有していて、テーブル5には中央部から1つの辺まで延びる割溝が設けられている。完成したループコイル1は、口金具9および挿通筒部10を縦割し、テーブル5に設けられた割溝を通じて編組機4から取出される。
【0036】
複数本の線材3a(3b)を編組する方法や編組機4は、図5、6に例示したものに限定されず、例えば、種々の組紐方法、組紐機を用いることができる。
【符号の説明】
【0037】
1 ループコイル
2 筒状体
3a 金属線材
3b 繊維線材
4 編組機
5 テーブル
6 ガイド溝
7 ボビンキャリア
8 ボビン
9 口金部
10 挿通筒部
11 コンベヤベルト
L 二重にオーバーラップした部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1本の金属線材を含む複数本の線材を編組して構成された筒状体を備え、この筒状体の長手方向一端が、他端側から内部に挿入されて筒状体が二重にオーバーラップした部分を有し、この二重にオーバーラップした部分どうしが係合してループ状に形成されていることを特徴とするコンベヤベルトの縦裂き検出用ループコイル。
【請求項2】
前記二重にオーバーラップした部分の長さが、150mm以上である請求項1に記載のコンベヤベルトの縦裂き検出用ループコイル。
【請求項3】
前記二重にオーバーラップした部分の長さが、ループ状に形成されているコイルの周長と同じである請求項1または2に記載のコンベヤベルトの縦裂き検出用ループコイル。
【請求項4】
前記複数本の線材がすべて金属線材である請求項1〜3のいずれかに記載のコンベヤベルトの縦裂き検出用ループコイル。
【請求項5】
前記複数本の線材が金属線材および繊維線材の2種類である請求項1〜3のいずれかに記載のコンベヤベルトの縦裂き検出用ループコイル。
【請求項6】
前記複数本の線材の外径が0.05mm以上1.00mm以下である請求項1〜5のいずれかに記載のコンベヤベルトの縦裂き検出用ループコイル。
【請求項7】
少なくとも1本の金属線材を含む複数本の線材を編組して筒状体を形成する際に、形成された筒状体の長手方向一端側を、順次、複数本の線材が編組される口金部に送り込み、この送り込まれた筒状体の外周面に複数本の線材を編組することにより、筒状体が二重にオーバーラップした部分を形成し、この二重にオーバーラップした部分どうしを係合させてループ状にすることを特徴とするコンベヤベルトの縦裂き検出用ループコイルの製造方法。
【請求項8】
ループ状にしたコイルの全長に渡って、前記二重にオーバーラップした部分を形成する請求項7に記載のコンベヤベルトの縦裂き検出用ループコイルの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−236677(P2012−236677A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−106379(P2011−106379)
【出願日】平成23年5月11日(2011.5.11)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成23年3月18日 一般社団法人日本機械学会 関西支部発行の「関西学生会 学生員卒業研究発表講演会講演前刷集」に発表
【出願人】(000006714)横浜ゴム株式会社 (4,905)
【出願人】(503027931)学校法人同志社 (346)
【Fターム(参考)】