説明

コンポジット接合材及び接合体

【課題】接合可能な部材の形状や材質に制約がなく、また濡れ性を向上させるための表面処理の必要がなく、さらには再利用が可能な、高強度、且つ、抵抗発熱しないコンポジット接合材を提供する。
【解決手段】In,In合金,及びSn合金のうちのいずれかの金属材料からなるメタル相2内にITO(In2O3-SnO2)粉末3を均一に分散させることにより接合材1を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも2種類の異種部材同士を接合するためのコンポジット接合材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ヒーターや静電チャック等の半導体製造装置用サセプタの端子接合部分等、使用温度が最大で100〜200℃程度、且つ、導電性が必要な接合部分の接合材として、インジウム,インジウム合金,スズ合金等の接合材や、アルミニウムや銀等の金属ロウとアルミナ等のセラミックス粉末の混合体からなる接合材が用いられている。
【特許文献1】特開2002−293655号公報
【特許文献2】特開平11−228245号公報
【特許文献3】特開平11−314974号公報
【特許文献4】特開2001−10873号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、インジウム,インジウム合金,スズ合金等の接合材は軟質金属により形成されているために、この接合材により部材を接合した場合には、接合部分の強度が不足する。一方、上記混合体からなる接合材では、セラミックス粉末が導電性を有さないために、導電性が必要な接合部分に適用した場合には、接合部分が抵抗発熱する可能性がある。なお、このような抵抗発熱を回避するために接合面積を大きくする方法が考えられるが、接合面積を大きくした場合には、接合部分の残留応力が増大し、破壊の可能性が高くなる。
【0004】
また上記混合体からなる接合材を用いて部材を接合する場合には、図3(a)に示すようにセラミックス粉末11と金属ロウ13を接合領域に積層配置しなければならないので、金属ロウ13を収納する収納孔12を接合部材(図3(a)の例では端子7)に形成しなければならない等、接合可能な部材の形状や材質に制約が生じる。またこの場合、金属ロウ13とセラミックス粉末11の濡れ性を向上するためにメッキやスパッタ等の表面処理を施す必要がある。さらにこの場合、接合後は金属ロウ13とセラミックス粉末11が反応することにより図3(b)に示すように高融点の化合物14が形成されるために、一度複合化した金属ロウ13を再溶融して再利用することはできない。
【0005】
本発明は、上述の課題を解決するためになされたものであり、その目的は、接合可能な部材の形状や材質に制約がなく、また濡れ性を向上させるための表面処理の必要がなく、さらには再利用が可能な、高強度、且つ、抵抗発熱しないコンポジット接合材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るコンポジット接合材は、少なくとも2種類の異種部材同士を接合するための接合材であって、インジウム,インジウム合金,及びスズ合金のうちのいずれかの金属材料からなる金属ロウと、当該金属ロウ内に均一に分散されたITO(Indium Tin Oxide:インジウム・スズ酸化物)粉末とを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係るコンポジット接合材によれば、金属ロウ内にITO粉末が均一に分散されているので、接合材の強度を向上させることができる。
【0008】
本発明に係るコンポジット接合材によれば、ITO粉末が導電性を有し、且つ、インジウムとスズの濡れ性が良好であるために、抵抗発熱を抑えることができる。
【0009】
本発明に係るコンポジット接合材によれば、接合時に金属ロウとITO粉末を積層配置する必要がないので、接合可能な部材の形状や材質に制約がない。
【0010】
本発明に係るコンポジット接合材によれば、金属ロウとITO粉末の濡れ性が良好であるので、濡れ性を向上させるための表面処理を施す必要がない。
【0011】
本発明に係るコンポジット接合材によれば、接合後に高融点の化合物が形成されないので、再溶融して金属ロウを再利用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本願発明の発明者は、鋭意研究を重ねてきた結果、図1に示すように、In,In合金,及びSn合金のうちのいずれかの金属材料からなるメタル相(金属ロウ)2内にITO(In2O3-SnO2)粉末3を均一に分散させることにより、高強度、且つ、抵抗発熱しない接合材1を形成できることを知見した。なお、In合金としては、In−Sn,In−Au,In−Cu等を例示することができる。また、Sn合金としては、Sn−PnやSn−Zn等を例示することができる。
【0013】
この接合材1を調製する場合は、始めに、メタル相2を構成する金属材料を溶融し、溶融した金属材料内に所定量(金属材料に対し10〜90vol%、好ましくは30〜70vol%)、且つ、所定粒径(平均粒径0.1〜100μm,好ましくは平均粒径0.1〜20μm)のITO粉末3を添加,攪拌する。そして攪拌完了後、金属材料を冷却し、所定形状に加工する。そしてこの接合材1を用いて、例えば内部に埋設されたメッシュ電極4の一部が露出するように窒化アルミニウム(AlN)焼結体5表面に形成された接合穴6において、AlN焼結体5(メッシュ電極3)とメッシュ電極3に電圧を印加するための端子7とを接合する場合には、始めに、接合穴6の底部に接合材1を配置した後、接合材1上に端子7と重りをセットする。そしてメタル相2の融点まで接合部分を加熱し、メタル相2の溶融を確認してから所定時間保持した後、冷却する。
【0014】
このように、接合材1を用いて異種部材を接合する場合、接合時に構成材料を積層配置する必要がないので、接合可能な部材の形状や材質に制約がない。またメタル相2とITO粉末3の濡れ性は良好であるので、濡れ性を向上させるための表面処理を施す必要がない。さらには接合後に高融点の化合物が形成されることがないので、再溶融してメタル相2を構成する金属材料を再利用することができる。
【0015】
〔実施例〕
以下、実施例に基づき本発明をさらに詳しく説明する。
【0016】
上述の調製方法により以下の表1に示す組成を有する実施例1〜43及び比較例1〜9の接合材を調製し、調製された各接合材を用いて上述の接合方法によりAlN焼結体5に端子7を接合した。そして各接合体についてAlN焼結体5を固定した状態で端子7を0.5mm/minの速度で引っ張ることにより接合部分の強度を測定した。またAlN焼結体5の側壁部分において露出しているメッシュ電極4にAgペーストを塗布し、端子7とAgペースト間の抵抗を測定した。測定結果は表1に合わせて示す。
【表1】

【0017】
表1から明らかなように、実施例1〜43の接合材を用いた接合領域の電気抵抗はいずれも、金属ロウにセラミックス粉末を混入させた比較例9の接合材を用いた接合領域の電気抵抗よりも大幅に小さい。このことから、In,In合金,及びSn合金のうちのいずれかの金属材料からなるメタル相2内にITO粉末3を均一に分散させることにより、接合領域の電気抵抗を小さくし、抵抗発熱を抑制できることが知見された。
【0018】
また、実施例3,8,13,18,23の接合材を用いた接合領域の接合強度はいずれも比較例1,2の接合材を用いた接合領域の接合強度よりも大きい。さらに実施例33,36の接合材を用いた接合領域の接合強度はいずれも比較例5,6の接合材を用いた接合領域の接合強度よりも大きい。このことから、ITO粉末の含有量が同じである場合には、ITO粉末の平均粒径は0.1〜100μmの範囲内にあることが望ましいことが知見された。
【0019】
また、実施例11〜15の接合材を用いた接合領域の接合強度はいずれも比較例3,4の接合材を用いた接合領域の接合強度よりも大きい。さらに実施例32〜34の接合材を用いた接合領域の接合強度はいずれも比較例7,8の接合材を用いた接合領域の接合強度よりも大きい。このことから、ITO粉末の平均粒径が同じである場合には、ITO粉末の含有量は10〜90vol%の範囲内にあることが望ましいことが知見された。
【0020】
以上、本発明者によってなされた発明を適用した実施の形態について説明したが、この実施の形態による本発明の開示の一部をなす論述及び図面により本発明は限定されることはない。すなわち、上記実施の形態に基づいて当業者等によりなされる他の実施の形態、実施例及び運用技術等は全て本発明の範疇に含まれることは勿論であることを付け加えておく。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の接合材の構成を示す模式図である。
【図2】図1に示す接合材を用いた部材の接合方法を説明するための模式図である。
【図3】従来の接合材を用いた部材の接合方法を説明するための模式図である。
【符号の説明】
【0022】
1:接合材
2:メタル相
3:ITO粉末
4:メッシュ電極
5:窒化アルミニウム(AlN)焼結体
6:接合穴
7:端子
11:セラミックス粉末
12:収納孔
13:金属ロウ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2種類の異種部材同士を接合するための接合材であって、インジウム,インジウム合金,及びスズ合金のうちのいずれかの金属材料からなる金属ロウと、当該金属ロウ内に均一に分散されたITO粉末とを含むことを特徴とするコンポジット接合材。
【請求項2】
請求項1に記載のコンポジット接合材において、前記ITO粉末は前記金属ロウに対し10vol%以上90vol%以下の割合で混入されていることを特徴とするコンポジット接合材。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のコンポジット接合材において、前記ITO粉末の平均粒径が0.1μm以上100μm以下の範囲内にあることを特徴とするコンポジット接合材。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のうち、いずれか1項に記載のコンポジット接合材により少なくとも2種類の異種部材同士を接合することにより形成されていることを特徴とする接合体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−239381(P2008−239381A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−80284(P2007−80284)
【出願日】平成19年3月26日(2007.3.26)
【出願人】(000004064)日本碍子株式会社 (2,325)
【Fターム(参考)】