説明

コンポスト原料の製造方法およびその装置

【課題】短期間でコンポスト化できる、コンポスト用原料の製造手段を提供する。
【解決手段】1.コンポスト化対象物に加水し攪拌する第1工程。2.加水攪拌後の物質に木質繊維を加えて攪拌する第2工程。3.木質繊維添加攪拌後の物質に高分子凝集剤を加えて攪拌する第3工程。4.高分子凝集剤添加攪拌後の物質を圧搾・脱水する第4工程。以上の各工程からなるコンポスト原料の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、家畜糞尿や下水汚泥そして食品残さ物などを、木質繊維と高分子凝集剤を用いてコンポスト用原料を製造する方法とその装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、コンポスト用原料を製造するための種々の方法・装置が利用されているが、本発明にて示すように、木質繊維と高分子凝集剤の双方を用いる手段は現在のところ見当たらない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
以前より、コンポスト(堆肥、とくに都市ゴミや汚泥などから作った堆肥)が多用されている。家畜糞尿や各種汚泥等の中には発酵により飼料化や肥料化が可能な成分が多量に含まれているため、コンポスト原料として利用する試みはこれまでにも多くなされている。
しかし、コンポスト化に際しては原料の含水率が重要なファクターである。
含水率80%以上では通気度が低く、嫌気発酵および腐敗による著しい腐敗臭・悪臭が生じ、堆肥等を生成するために必要な発酵が行われない。そのため、この含水率を65%以下にする必要があるが、各種汚泥等の含水率は90%以上であり、そのままではコンポスト化原料としては使用不能である。それゆえに各種汚泥等をコンポスト化するために、わら、籾殻、おがくず等を汚泥に加えて含水率を低下する手段も用いられているが、汚泥量に対し2〜3倍程度加えることとなるため、処理体積の増大による発酵タンク容積の大型化が必要となる。また、発酵速度の速い汚泥と遅いわら、籾殻、おがくずの間でアンバランスが生じ、これからコンポスト化すると未完熟の肥料が生成されることとなる。
他方、各種汚泥等を高熱炉で乾燥して含水率を下げることも行われているが、コスト高となり、75%以下の含水率は得難いものである。
さらに、古紙の吸水性を利用して、これを汚泥に加えて加圧脱水する手段もあるが、この手段では含水率を70%以下にするためには古紙を40%以上加えなければならず、また前記のような完熟度のアンバランスが生じてやはり未完熟の肥料となるものである。
この未完熟の肥料が土中に入ると、土壌中での酸素欠乏や脱リン現象が発生し、農作物栽培にとって障害を引き起こす原因となるものであった。
本発明は、以上のような従来からのコンポスト化原料の製造に関わる課題を解決するために発明されたもので、汚泥等に木質繊維と高分子凝集剤を添加して攪拌し、加圧脱水することによって好適なるコンポスト用原料を得るための手段を提供することを目的として開発されたものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
課題を解決する手段として本発明は、以下の製造方法と製造装置に構成した。すなわち、
1.コンポスト化対象物に加水し攪拌する第1工程。
2.加水攪拌後の物質に木質繊維を加えて攪拌する第2工程。
3.木質繊維添加攪拌後の物質に高分子凝集剤を加えて攪拌する第3工程。
4.高分子凝集剤添加攪拌後の物質を圧搾・脱水する第4工程。
本発明の一つは、以上の各工程からなることを特徴とするコンポスト原料の製造方法である。また、本発明の他の一つは、適宜形状・サイズの中空体による貯留槽、混合槽、凝集槽、添加剤タンク、薬剤タンクを各々設け、貯留槽上方に、投入口を有する粉砕機、貯留槽内下部にカッター付き水中汚物ポンプ、混合槽内下部に水中汚物ポンプを各々設置し、貯留槽と混合槽および凝集槽に、羽根を有し槽の上方から下方に向かう回転軸を回転させるモーターを有する攪拌機を各々設け、薬剤タンクに薬注ポンプ、添加剤タンクにブロワーを各々設け、前記カッター付き水中汚物ポンプの吐出口と混合槽の上部、水中汚物ポンプの吐出口と凝集槽上部を各々配管接続するとともに、ブロワー吐出口と混合槽上部、薬注ポンプ吐出口と凝集槽上部を各々配管接続し、一方、スクリュープレス機を設けるとともに該スクリュープレス機の入り口と凝集槽下部を配管接続し、前記粉砕機内部に散水のためのノズルを水供給源に配管接続するとともに、各電動機器への通電制御システムを設けることにより、投入口から投入されたコンポスト原料製造のための素材を加水攪拌し、木質繊維を加えて攪拌し、さらに高分子凝集剤を加えて攪拌後、圧搾・脱水してコンポスト原料を製造できるよう構成したことを特徴とするコンポスト原料の製造装置である。
【発明の効果】
【0005】
本発明によれば、吸水性が高くかつ投入物と同等の発酵時間を有する木質繊維と、安全性の高いカチオン性天然高分子凝集剤を用いて攪拌・脱水処理を行うので、適度な含水率の脱水ケーキが得られ、これを用いて短期間でのコンポスト化を可能とする新規かつ有用なるコンポスト用原料を得るための手段を得ることができる。また、脱水により得られる脱離液も液肥として有効利用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下、本発明の実施形態について説明する。
図1は本発明装置の説明図である。図において、1は貯留槽で、金属製の有底中空円筒体で、その内底にカッター付き水中汚物ポンプ2が設置される。3はモーター駆動による攪拌機で、貯留槽上部に適宜支持部材(図示略)にて設けられる箱体内に位置し、その下方に回転軸4が延びてこの回転軸適所に羽根5が取り付けられている。6は粉砕機で、攪拌機を収容している箱体上方に位置し、その上部には投入口7が位置している。
この粉砕機は、モーター駆動にてカッター羽根が回転し、投入物を粉砕するものである。
なお、粉砕機下部と貯留槽上部は管体にて接続される。8は散水電磁弁で、粉砕機内部空間にノズルが位置する水供給のための管体適所に設けられる。9は液面制御電極棒で、貯留槽上部にその本体部分が位置し、貯留槽内下方に向けて電極部分が延びている。
この液面制御電極棒は、長さの異なる3本のステンレス棒を有し、それぞれの棒下端の液面接触にて液面位置を感知し、信号を発するものである。
10は貯留槽と同様構成による混合槽で、その内底部には水中汚物ポンプ11が設置され、攪拌機12と液面制御電極棒13が同様に設けられる。
14は流量調整槽で、中空直方体であり、その内面には長方形板体を上下交互に固着してなる邪魔板15が位置している。16は混合槽と同様構成による凝集槽で、同様に攪拌機17および液面制御電極棒18が設けられる。
19は薬剤タンクで中空直方体形状であり、その上部には薬注ポンプ20が位置している。21は添加剤タンクで、中空円筒体の下部に逆円錐形部分を一体に形成した形状であり、その下部にはブロワー22が位置する。23はフロック槽で、中空直方体である。
24はスクリュープレス機である。このスクリュープレス機は円筒ストレーナ内で特殊スクリューを回転させて内容物を圧搾・移送しながら連続脱水するものであり、脱水後は脱水ケーキが排出口25より脱離液が排出口26より排出される。
【0007】
以上の各装置は以下のように配管接続される。
カッター付き水中汚泥ポンプ2の吐出口と混合槽10の上部は攪拌物移送管30にて配管接続され、その中間に流量調整弁31が位置する。また、貯留槽内と混合槽内はオーバーフロー管32にて連通される。ブロワーの吐出口と混合槽内上部は添加剤移送管33にて接続される。混合槽内の水中汚物ポンプ11の吐出口と流量調整槽14は、流量調整弁34を介して一次混合移送管35にて接続され、また、混合槽上部と流量調整槽はオーバーフロー管36にて連通される。
薬剤タンク上部の薬注ポンプの吐出口と凝集槽上部は薬注管37にて接続される。
凝集槽下部とフロック槽側部は二次混合移送管38にて接続される。
なお、各槽の上部は接続個所を除いて密閉もしくは蓋が設けられ、各モーターその他の電力使用機器には配線(図示略)にて電力供給がなされ、各機器を制御するための制御盤(図示略)が設けられる。また、図示の都合上、貯留槽位置は正規の位置に比べて上方に表現している。
【0008】
次ぎに本発明装置の使用について説明する。
まず、準備として添加剤タンクに添加剤としての微粉木質繊維を適量貯留する。
この木質繊維は間伐材や建築廃材を破砕機にて粗破砕し、さらに微粉破砕機にてパウダー状に砕いて得られる繊維質であり、黄色または黄褐色の物質である。
また、薬注タンク内に高分子凝集剤としてのカチオン性天然高分子凝集剤を貯留する。
次ぎに、投入口より食品残さ、下水汚泥、家畜糞尿等を投入し、同時に散水電磁弁を開いて散水を始め、粉砕機を作動させる。これにより投入物は加水されて粉砕され、管体を経て貯留槽へと移動し、攪拌機による羽根回転にて4分〜6分程度の時間攪拌される。
この加水量は投入物に対し20%〜30%程度である。
また、投入量制御のための液面制御電極棒が貯留槽に設けられており、この電極棒からの信号にて投入量を把握制御することができる。
所定時間の攪拌後、カッター付き水中汚泥ポンプの下部から吸引された攪拌物は攪拌物移送管30を介して混合槽上部から槽内へ投入され、また、添加剤タンク内の木質繊維はブロワー22にて添加剤移送管33にて混合槽へ投入される。この木質繊維は攪拌物に対し、0.1〜10%(重量比)程度加えられる。この双方の材料は攪拌機12にて1〜2分間攪拌され、水中汚物ポンプ11にて吸引されて一次混合物移送管および流量調整槽を通過し、凝集槽へと送られる。なお、混合槽と貯留槽はオーバーフロー管32にて連通しており、余分な攪拌物は貯留槽へと戻される。流量調整槽には邪魔板が内設され、凝集槽への急激な移行を緩和している。
【0009】
木質繊維の添加攪拌後の物質は上記のように凝集槽に投入されるが、薬剤タンク内のカチオン性天然高分子凝集剤は薬注ポンプ20にて吸い上げられ、薬注管37を経て凝集槽へと送り出され、これら双方は攪拌機17にて4〜5分程度攪拌される。この攪拌にて次第にフロックが形成されてくる。このカチオン性天然高分子凝集剤は木質繊維添加攪拌物質に対し、0.01〜10%(重量比)程度の量が使用される。この凝集剤の添加攪拌後は、二次混合移送管38を経てフロック槽に一時貯留され、スクリュープレス機へと送られ、圧搾・脱水され、排出口25および26より排出される。この圧搾・脱水に要する時間は4〜7分間程度である。
なお、混合槽および凝集槽は貯留槽同様に液面制御電極棒が備えられ、各槽の貯留量の管理が行われる。また、流量調整槽と混合槽間にはやはりオーバーフロー管36が連通しており、流量調整槽内の物質量が規制される。
このようにして得られた脱水ケーキは含水率65%以下となり、発酵ヤードにおいてコンポスト化され、堆肥や飼料の原料化を行うことができる。すなわち、通気性がよくなり、好気性菌による発酵が起こるので臭気も激減し、短期間によるコンポスト化が可能となる。
コンポスト化処理には水分の調整が重要であり、水分が70%以上になると好気性菌の作用により、有機物の分解のプロセスで二酸化炭素が発生して植物の根の機能を低下させて、硫化水素、アンモニア、メルカプタン等の有害ガスが発生し、農作物や環境に悪影響を及ぼすこととなる。従って、水分は65%以下を保つことが必要である。
通常、発酵ヤードにはコンポスト化促進のためにエアレーション装置を設け、外部空気を供給して発酵促進と脱臭を行うことにより、堆肥化の時間を短くすることができる。
このようにして通常のコンポスト化には3〜6ヶ月の期間を必要とするが、本発明によれば1〜3週間でコンポスト化を終了させることができ、得られたコンポスト肥料は農作物に対し有効に使用することができる。
【0010】
既述の手段により、脱水液と処理物とに分離したものが得られるが、この脱離液は投入物に比べてBOD(生物的酸素要求量)および浮遊汚泥が著しく低下しており、窒素含有量および燐含有量の低下も認められる。また、脱水物は、長さの異なったセルロースが立体的に縦横に絡み合った構造を有しており、吸湿・吸水性が高く、かつ放湿性が高いという特徴を有している。
本発明手段においては、木質繊維と高分子凝集剤の添加順序が重要であり、まず投入材料に木質繊維を添加し、攪拌してスラリーを形成させた後、高分子凝集剤を添加して攪拌することが必要で、この順序を逆にするとフロック(水と汚泥等の混合物)形成がなされず、期待する脱水効果は得られない。
なお、本発明に用いる木質繊維は、含水率15%程度となるように天日乾燥などを行ったものを用い、投入物の繊維含有量が多い場合には添加量を減らし、少ない場合には増やすなど状況に応じて加減して用い、木質繊維用として他に割り箸、古材チップ、わらなどの繊維材料を用いてもよい。また、投入物としての家畜糞尿、下水汚泥等もその組成変動があるので、適宜に高分子凝集剤の添加量を加減して用いる。
最終段階で用いるスクリュープレス機は、加圧が高いのが望ましく、通常は30kpa〜50kpaの範囲の加圧が行われる。このプレス機にて脱水ケーキと脱離液が分離排出するが、この脱離液は窒素分10〜20%、燐酸成分3〜10%、カリウム成分5〜15%を含んでおり、農作物などの液肥として用いることができる。
【0011】
以上、本発明について説明したが、本発明は吸水性の高い木質繊維と安全性の高い無機質高分子凝集剤の双方を用いるところにその特徴を有し、短期間でのコンポスト化を可能とするコンポスト原料を製造する手段を提供するものである。
従来は多種多様な有機または無機の高分子凝集剤あるいはこれらを組み合わせて用いているが、凝集剤の中には重金属と同様の成分を有するものや、アクリルアミド系物質が含まれたものがあり、このような凝集剤を用いた場合にはコンポスト化して使用するときに土壌や作物の安全性が確保されない問題があったが、本発明によってより安全性の高いコンポスト化が可能となったのである。
なお、実施形態においては、流量調整槽およびフロック槽を設けたので、凝集槽およびスクリュープレス機への処理物の急激な流入を防止して円滑なる処理が得られる。
また、貯留槽内にカッター付き水中汚物ポンプを用いたので、混合槽へ移送する前に投入物の固形成分を完全に破砕して移送することができる。
本発明に用いる木質繊維およびカチオン性天然高分子凝集剤は、情報収集と研究を重ねた結果見出されたもので、吸湿性が高く発酵速度の速い木質繊維と、食品応用が可能な高分子凝集剤を発見したものであり、これらを順序よく用いることにより、投入物粘度を次第に高めるとともにフロック形成がなされ、従来手段に比べ約30%程度に減容された脱水ケーキが得られ、所望の処理物が得られるのである。
以上のごとく、本発明によってコンポスト用原料の製造方法とその装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】 本発明装置の構造説明図
【符号の説明】
【0013】
1 貯留槽
2 カッター付き水中汚物ポンプ
3 攪拌機
4 回転軸
5 羽根
6 粉砕機
7 投入口
8 散水電磁弁
9 液面制御電極棒
10 混合槽
11 水中汚物ポンプ
12 攪拌機
13 液面制御電極棒
14 流量調整槽
15 邪魔板
16 凝集槽
17 攪拌機
18 液面制御電極棒
19 薬剤タンク
20 薬注ポンプ
21 添加剤タンク
22 ブロワー
23 フロック槽
24 スクリュープレス機
25 脱水ケーキ排出口
26 脱離液排出口
27 ドレンバルブ
28 ドレンバルブ
29 ドレンバルブ
30 攪拌物移送管
31 流量調整弁
32 オーバーフロー管
33 添加剤移送管
34 流量調整弁
35 一次混合移送管
36 オーバーフロー管
37 薬注管
38 二次混合移送管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1.コンポスト化対象物に加水し攪拌する第1工程。
2.加水攪拌後の物質に木質繊維を加えて攪拌する第2工程。
3.木質繊維添加攪拌後の物質に高分子凝集剤を加えて攪拌する第3工程。
4.高分子凝集剤添加攪拌後の物質を圧搾・脱水する第4工程。
以上の各工程からなることを特徴とするコンポスト原料の製造方法。
【請求項2】
適宜形状・サイズの中空体による貯留槽、混合槽、凝集槽、添加剤タンク、薬剤タンクを各々設け、貯留槽上方に、投入口を有する粉砕機、貯留槽内下部にカッター付き水中汚物ポンプ、混合槽内下部に水中汚物ポンプを各々設置し、貯留槽と混合槽および凝集槽に、羽根を有し槽の上方から下方に向かう回転軸を回転させるモーターを有する攪拌機を各々設け、薬剤タンクに薬注ポンプ、添加剤タンクにブロワーを各々設け、前記カッター付き水中汚物ポンプの吐出口と混合槽の上部、水中汚物ポンプの吐出口と凝集槽上部を各々配管接続するとともに、ブロワー吐出口と混合槽上部、薬注ポンプ吐出口と凝集槽上部を各々配管接続し、一方、スクリュープレス機を設けるとともに該スクリュープレス機の入り口と凝集槽下部を配管接続し、前記粉砕機内部に散水のためのノズルを水供給源に配管接続するとともに、各電動機器への通電制御システムを設けることにより、投入口から投入されたコンポスト原料製造のための素材を加水攪拌し、木質繊維を加えて攪拌し、さらに高分子凝集剤を加えて攪拌後、圧搾・脱水してコンポスト原料を製造できるよう構成したことを特徴とするコンポスト原料の製造装置。

【図1】
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【公開番号】特開2007−22897(P2007−22897A)
【公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−236122(P2005−236122)
【出願日】平成17年7月20日(2005.7.20)
【出願人】(505292502)三和温調工業株式会社 (3)
【Fターム(参考)】