説明

コンポスト製造装置及び方法

【課題】発酵熱サイクルを維持しながら、コンポスト原料の含水率を低下させると共に、好気雰囲気を形成することができるコンポスト製造装置及び方法を提供すること。
【解決手段】上部にコンポスト原料の投入口と排気口を備え、下方には下部空気供給部を備える発酵槽を用いて、前記コンポスト原料を発酵してコンポストを製造するコンポスト製造方法において、発酵槽の上部に設けた上部空気供給部から送風を行うことを特徴とするコンポスト製造方法、及び、一次発酵槽と二次発酵槽とを備え、上部にコンポスト原料の投入口と排気口を備え、該一次発酵槽と二次発酵槽の下方には下部空気供給部を備えたコンポスト製造装置において、一次発酵槽の上部に上部空気供給部を備え、二次発酵槽の上部に前記排気口を備えることを特徴とするコンポスト製造装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンポスト製造装置及び方法に関し、詳しくは、発酵熱サイクルを維持しながら、コンポスト原料の含水率を低下させると共に、好気雰囲気を形成することができるコンポスト製造装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、下水処理場や農村集落排水処理場などから発生した汚泥は、脱水処理した後、焼却されていたが、近年の資源リサイクル化の背景下で、コンポストとして農作物肥料や公園植物肥料などに再利用されている。
【0003】
特許文献1には、完熟した高品質のコンポストを簡単で且つ耐用性の高い設備でしかも低コストで製造できる有機性廃棄物のコンポスト化装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−47941号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者は、この特許文献1に記載の技術を実用化に向けて研究を重ねる過程で、コンポストの製造において、以下の要求を満たすことが重要であることを見出した。
【0006】
まず、発酵槽において発酵を継続的に進行するためには、(1)発酵により発酵熱を生成し、(2)発酵熱により次の発酵を行う、という「発酵熱サイクル」を維持する必要がある。
【0007】
更に、これと同時に、堆肥の品質向上、及び、NO発生の抑制のためには、コンポスト原料の含水率を低下させると共に、好気雰囲気を形成する必要がある。
【0008】
特許文献1では、発酵槽の下部に、圧力空気を吹き込む手段及び好気性発酵用の空気(または加熱空気)を吹き込む手段を備え、発酵槽の下部から空気供給を行って発酵を行う技術が開示されているが、これは以下に詳述するように、上記の要求を満たすものではなかった。
【0009】
まず、発酵槽において、コンポスト原料の温度は50〜75℃程度にまで達するが、このような高温下では、コンポスト原料中の水は大量に蒸発し、コンポスト原料層中に飽和水蒸気が充満した状態を形成する。
【0010】
発酵槽の下部からコンポスト原料の温度以下の空気を送風した場合、この飽和水蒸気が冷やされ、液化が生じる。液化した水は、コンポスト原料に再吸収されると共に、気化熱を奪って再び気化する。このとき、発酵熱サイクルの維持に必要な熱エネルギーが気化熱として奪われると、発酵は停止する。外部から熱エネルギーを供給することにより、発酵熱サイクルを再始動させ、発酵を再開することも可能であるが、このような断続的な発酵は効率が非常に悪く、更にエネルギーコストが増大する。送風を発酵熱サイクルの維持が可能な範囲に止める場合は、コンポスト原料の含水率低下、及び、好気雰囲気の形成が不十分となる問題を生じる。
【0011】
一方、発酵槽の下部からコンポスト原料の温度以上の空気を送風して、飽和水蒸気の液化を防止することも考えられるが、コンポスト菌の発酵至適温度を超える温度過剰温状態が形成されやすい問題が生じる。また、上述したように、コンポスト原料の温度は50〜75℃程度にまで達するのであるから、この温度以上の空気を供給することは、エネルギーコストを著しく増大させることになる。
【0012】
従って、特許文献1の技術は、発酵熱サイクルを維持しながら、コンポスト原料の含水率を低下させると共に、好気雰囲気を形成するものではなかった。
【0013】
そこで、本発明の課題は、発酵熱サイクルを維持しながら、コンポスト原料の含水率を低下させると共に、好気雰囲気を形成することができるコンポスト製造装置及び方法を提供することにある。
【0014】
また本発明の他の課題は、以下の記載によって明らかとなる。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題は、以下の各発明によって解決される。
【0016】
(請求項1)
上部にコンポスト原料の投入口と排気口を備え、下方には下部空気供給部を備える発酵槽を用いて、前記コンポスト原料を発酵してコンポストを製造するコンポスト製造方法において、
発酵槽の上部に設けた上部空気供給部から送風を行うことを特徴とするコンポスト製造方法。
【0017】
(請求項2)
前記上部空気供給部から送風を行うことにより、発酵槽上部空間の高湿度空気を、送風された空気に置換して、コンポスト原料上層の水を気化すると共に、温度勾配による自然対流により、コンポスト原料中層乃至下層からコンポスト原料上層に熱エネルギーを供給して、コンポスト原料全体の発酵を継続することを特徴とする請求項1記載のコンポスト製造方法。
【0018】
(請求項3)
前記上部空気供給部から、湿度60%以下の低湿度空気を送風することを特徴とする請求項1又は2記載のコンポスト製造方法。
【0019】
(請求項4)
前記発酵槽は、一次発酵槽と二次発酵槽とを備え、前記一次発酵槽の上部に前記上部空気供給部を有し、前記二次発酵槽の上部に前記排気口を備えてなることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載のコンポスト製造方法。
【0020】
(請求項5)
一次発酵槽と二次発酵槽とを備え、上部にコンポスト原料の投入口と排気口を備え、該一次発酵槽と二次発酵槽の下方には下部空気供給部を備えたコンポスト製造装置において、
一次発酵槽の上部に上部空気供給部を備え、
二次発酵槽の上部に前記排気口を備えることを特徴とするコンポスト製造装置。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、発酵熱サイクルを維持しながら、コンポスト原料の含水率を低下させると共に、好気雰囲気を形成することができ、さらに、装置内における結露発生を防止して、良質なコンポストを製造できるコンポスト製造装置及び方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明のコンポスト製造装置の一例を示す概略断面図
【図2】本発明のコンポスト製造装置の一例を示す概略平面図
【図3】下部空気供給部の一例を示す概略断面図
【図4】実施例の結果を示す図
【図5】実施例の結果を示す図
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態について図面に基づいて説明する。
【0024】
図1は、本発明のコンポスト製造装置の一例を示す概略断面図であり、図2は概略平面図である。
【0025】
図1において、100はコンポスト製造装置本体である。コンポスト製造装置100の形態は特に限定されず、方形状又は円筒状のいずれでもよい。
【0026】
コンポスト製造装置100は、1又は2以上の槽を備えることができ、本態様では6つの槽1〜6を備えている(図2参照)。
【0027】
本発明において、1又は2以上の槽は、完熟堆肥が完成するまでに必要な槽であり、発酵と成熟を別々の槽で行ってもよく、一つの槽で発酵と成熟を行ってもよい。また、発酵のみを複数の槽に分けて行ってもよい。
【0028】
コンポスト製造装置において、発酵と成熟は、予備発酵、易分解性である低分子の有機物(糖類やアミノ酸)が分解される一次発酵、一次発酵で分解されなかった難分解性である高分子の有機物(リグニン、セルロース)が分解される二次発酵等のように、コンポスト原料が完熟堆肥に向かい製品化されるように進行する。
【0029】
本態様では、槽1〜4を一次発酵槽、槽5〜6が二次発酵槽を構成している。
【0030】
コンポスト製造装置100は、槽1の上部にコンポスト原料の投入口11を備えている。
【0031】
本発明において、コンポスト原料の投入口11に投入されるコンポスト原料としては、下水処理場、し尿処理場や農村集落排水処理場などから発生した汚泥を脱水した脱水汚泥、コンポスト化過程で得られる半熟堆肥、その他コンポスト原料となる物質(例えば炊事場から出る野菜・魚介などのくずのような家庭厨芥や産業厨芥、農産物芥、動物糞芥などの生物有機性廃棄物など)などが挙げられる。
【0032】
コンポスト製造装置100は、槽1の上部に上部空気供給部12を備え、また、槽6の上部に、排気口13を備えている。上部空気供給部12は、空気供給の為の送風機31に接続されている。上部空気供給部12は、槽にコンポスト原料が充填された状態で、少なくとも充填層よりも上方に設けられている。
【0033】
本発明では、上部空気供給部12から空気を連続的又は間欠的に送風することが重要である。
【0034】
前記空気としては、通常の外気を用いることができるが、好ましくは、湿度が60%以下、より好ましくは湿度40%以下(相対湿度として)の低湿度空気を用いることである。低湿度空気を用いることで、以下に説明する上部空気供給部からの送風の効果がより顕著となる。低湿度空気は、上部空気供給部12に空気を供給する配管上に除湿機(図示しない)を設けることで、生成することができる。
【0035】
また、槽1〜6は、各々の槽内の下方に、1又は2以上の下部空気供給部21〜26を備えている。下部空気供給部21〜26は、空気供給の為の送風機31に接続されている。図の例では、上部空気供給部12と下部空気供給部21〜26とが、同一の送風機31に接続される態様を示しているが、これに限定されず、上部空気供給部12用と下部空気供給部21〜26用で2つの送風機を設けてもよい。
【0036】
更にまた、槽6は、完熟堆肥を排出する排出口(図示しない)を備えている。
【0037】
排気口13からの排出空気は排気脱臭装置(図示しない)に導入され、該排気脱臭装置からの脱臭空気は、再度、上部空気供給部12又は下部空気供給部21〜26からコンポスト製造装置100に供給されるようにしてもよい。
【0038】
コンポスト原料の投入口11から投入されたコンポスト原料は、各々の槽1〜6中において堆肥化発酵に供される。
【0039】
下部空気供給部21〜26から送風された空気は、槽内でコンポスト原料層を通過することにより、コンポスト原料からの水分を含んだ状態で、コンポスト原料層の表面側、つまり、コンポスト製造装置100の上部空間に抜ける。
【0040】
一方、上部空気供給部12から供給された空気は、コンポスト製造装置100の上部空間に存在する上述したコンポスト原料からの水分を含んだ高湿度空気を置換し、排気口13から排気する。
【0041】
コンポスト製造装置100の上部空間の高湿度空気が、上部空気供給部からの空気に置換されることにより、コンポスト原料上層の飽和水蒸気が上部空間の空気中に速やかに拡散する。更に、コンポスト原料上層の水が新たに気化されて、上部空間の空気中に蒸発することができるようになる。
【0042】
本発明では、このような水の気化が、コンポスト原料上層において発現する点に、重要な意味がある。即ち、水が気化する際に、発酵熱を気化熱として消費すると、コンポスト原料上層中に介在する空気の温度が低下する。すると、空気の温度勾配による自然対流により、コンポスト原料中層乃至下層の高温空気が上方に流動し、コンポスト原料上層の低温空気と入れ替わる。また、空気は湿度が低いほど密度が高いため、上部空気供給部から比較的低湿度な空気を供給した場合は、コンポスト原料層中に拡散しやすく、このことも上記自然対流の形成に寄与すると考えられる。
【0043】
この自然対流により、コンポスト原料上層に、発酵熱サイクルに必要な熱エネルギーが供給され、一方、コンポスト原料中層乃至下層には、上層からの比較的高濃度の酸素を含有する空気が供給され、コンポスト原料の好気雰囲気の形成に寄与する。
【0044】
以上に説明した作用により、上部空気供給部からの送風は、発酵熱サイクルの維持、コンポスト原料の含水率低下、及び、好気雰囲気の形成に大きく寄与する。また、コンポスト原料上層には、自然対流により熱エネルギーが随時供給されて発酵熱サイクルが維持されるので、上部空気供給部からの送風量は、下部空気供給部からの送風量と比較して、大きく設定することが可能となる。通常、発酵熱サイクルにおいては、発酵により消費される熱量よりも、発酵により生成する熱量の方が大きい。本発明では、この差分の熱量が、コンポスト原料中層乃至下層からコンポスト原料上層に、自然対流によって流動するため、コンポスト原料全体として発酵熱サイクルを維持できるのである。
【0045】
従来のように、下部空気供給部からのみ送風を行った場合は、コンポスト原料下層において生じた温度低下は、低温空気が下部に留まる性質により、上述した自然対流による熱エネルギー供給を受けることができなかった。そのため、コンポスト原料下層において発酵熱サイクルの維持が困難であった。また、送風を発酵熱サイクルの維持が可能な範囲に止めた場合、コンポスト原料の含水率低下、及び、好気雰囲気の形成が不十分となる問題を生じた。
【0046】
本発明では、下部空気供給部からの送風と、上述した上部空気供給部からの送風とが協働することにより、下部空気供給部からの送風を発酵熱サイクルの維持が可能な範囲に止めても、上部空気供給部からの送風により、コンポスト原料の含水率低下、及び、好気雰囲気の形成が補完され、問題は解決される。また、このように発酵熱サイクルが好適に維持されることにより、加温手段の使用量を低減し、好ましくは、加温手段を用いず、エネルギーコストを抑えることが可能となる。
【0047】
更に、下部空気供給部から、通常の送風の他に、圧力空気による空気攪拌を行うことで、上述した上部空気供給部を用いた場合の自然対流を好適に発現させて、コンポスト原料の含水率低下、及び、好気雰囲気の形成を促進することができる。空気攪拌により、コンポスト原料が圧密状態から開放されて、コンポスト原料の粒子間に、自然対流のための流路を形成することができるためである。
【0048】
さらに、本発明では、上部空気供給部からの空気の供給により高湿度空気が置換されるため、装置内部の結露防止効果が得られる。結露は、コンポスト原料に滴下して、含水率を上昇させる問題や、上述したように、発酵の副生成物であるアンモニアが溶け込み、アンモニアは生物反応により酸化して硝酸になり、装置の腐食を起こす問題を生じるため、これを防止することでコンポスト製造装置の耐久性の向上に寄与する。
【0049】
本態様では、コンポスト製造装置100が1つの上部空気供給部12を備える態様を示しているが、2以上の上部空気供給部を設けることもでき、その場合は、槽1と槽2の上部に設けることが好ましい。このように、一次発酵槽の上部に上部空気供給部を設けると、コンポスト原料からの蒸発量が多い発酵の初期段階における高湿度空気を優先的に置換することができる。
【0050】
また、排気口を二次発酵槽の上部に設けることで、二次発酵槽からの放出量が多いアンモニアガスを、装置内に拡散することなく、速やかに排出できる。
【0051】
上部空気供給部は、送風方向が一次発酵槽側から二次発酵槽側に向かうように配向して設けてもよいし、送風方向がコンポスト原料に対して下降流となるように配向して設けてもよい。前者の場合、コンポスト製造装置上部の高湿度空気の排出を効率的に行うことができ、後者の場合、特に槽に充填されたコンポスト原料の上面付近の高湿度空気を効率的に排出できる効果が得られる。より好ましくは、2以上の上部空気供給部を設けて、上記した2つの配向を各々有する上部空気供給部を併設することである。
【0052】
上部空気供給部の形状は方形状、円形状等、特に限定されるものではないが、好ましくは、噴射管の円周方向に形成した複数のスリットからなることが好ましい。具体的には、例えば、噴射管を槽1の上部から槽2の上部にかけて設置し、二次発酵槽側に向けて複数のスリットを設けることで、コンポスト製造装置の上部全体に、一次発酵槽側から二次発酵槽側に向かう空気の並行流を形成することができ、空気の置換効率が向上する。
【0053】
本発明において、上部空気供給部及び下部空気供給部からの空気供給は、常時行う必要はなく、間欠的に行ってもよい。例えば、タイマーによって制御してもよいし、装置内の湿度又はNO等の特定のガス濃度が一定値以上になった場合に空気供給を行うように制御してもよい。
【0054】
本発明において、上部空気供給部及び下部空気供給部は、加温空気供給の為のヒーターに接続されていてもよい。特に、上部空気供給部から加温空気を供給することにより、より多くの水分を空気内に取り込めるため、高湿度空気の置換効率が向上する。
【0055】
発酵槽において発酵により生成する発酵熱の量は、発酵基質濃度に大きく依存する。発酵基質濃度が高い発酵初期段階では、発酵熱の生成量が大きく、コンポスト原料の温度は高温域を推移する。コンポスト原料からの水の蒸発量が最も多いのも、この段階である。一方、発酵収束段階では、既に大部分の発酵基質が消費されているため、発酵基質濃度が低く、発酵熱の生成量は少ない。そのため、コンポスト原料の温度は低温域を推移する。また、前段において含水率が低下しているため、コンポスト原料からの水の蒸発量も少ない。この段階では、上記した発酵初期段階と比べて、下部空気供給部からの送風の必要性は低く、送風を止める又は弱めることにより、コンポスト原料に発酵熱を維持させることが好ましい。
【0056】
従って、本発明においては、発酵の各段階で送風量の調節が可能であることが好ましく、そのためには、各々の槽における下部空気供給部は、バルブ等の調節手段を有することが好ましい。また、必ずしも全ての槽が下部空気供給部を備える必要はなく、例えば、一次発酵の収束段階を担う槽3〜4では、下部空気供給部を設けないようにしてもよい。これに対して、二次発酵の収束段階では、発酵熱サイクルの維持よりも、コンポスト製品としての含水率調整が重要となる場合もあり、下部空気供給部を設けて送風を行うことが好ましい。
【0057】
図3は、下部空気供給部の一例を示す概略断面図である。
【0058】
図3において、下部空気供給部201は、噴射管202の側面に設けられた複数の開口として形成されている。
【0059】
下部空気供給部201の形状は方形状、円形状等、特に限定されるものではないが、図示するように、噴射管202の円周方向に形成したスリット状であることが好ましい。
【0060】
また、下部空気供給部201は、槽の底面に向けて開口するように形成されていることが好ましい。これにより、空気供給時に、槽の底面の隅々まで供給空気が行き渡り、乾燥や切り返しの効率が向上し、良質なコンポストの製造が可能になる。更に、噴射管の内部に、硝酸を含む結露や粉塵等の腐食因子が侵入することが防止されるため、装置の耐久性が向上する。
【0061】
特に、駆動装置(図示せず)や加熱装置203をすべて槽の外部に設置することにより、上述した腐食因子や高湿度ガスから隔離することができるため、耐久性の更なる向上を図ることが可能である。
【0062】
また、少量の加温空気を供給するだけでも、噴射管自体が加熱され放熱することができるため、噴射管自体を熱源として作用させることができる効果も生じる。この効果を好適に得るため、及び、耐食性の面から、噴射管はステンレス鋼によって形成することが好ましい。
【0063】
本態様において、コンポスト原料は、まず槽1に供給された後、槽1→槽2→槽3→槽4→槽5→槽6の順番で、発酵と成熟が順次進行するように移送される。
【0064】
槽間の移送方法は、限定されるものではないが、好ましくは、コンプレッサー(図示せず)に接続された下部空気供給部から圧力空気を供給して空気攪拌することによって成される。
【0065】
また、その際、これら槽1〜6のうち順位が隣り合う槽間の仕切壁は、コンポスト原料が空気攪拌によって互いの槽間を移動可能な高さを有しており、該複数の槽のうち順位が2以上離れる槽間の仕切壁は、コンポスト原料が空気攪拌によって短絡して移動出来ない高さを有していることが好ましい。
【0066】
この場合、例えば槽1と槽2の間の仕切壁は低いので、空気攪拌によって槽1の原料の一部は槽2に移送され、その逆に槽2の原料の一部は槽1に移送され、互いに混合する現象が起きるため槽毎の熟成の差は生じない。
【0067】
槽2の原料は、順次槽3、槽4〜槽6に向かって送られ、半熟堆肥が完熟堆肥になるように発酵と熟成が進む。
【0068】
なお、槽1から槽2に送られた分は槽1で減量しているので、その分を導入口41から原料補給する。順次発酵が進むに従って各槽には原料、堆肥が満たされていく。
【0069】
下部空気供給部による空気攪拌は、通常の送風と交互に、適宜行うことができる。
【0070】
上述した空気攪拌の好ましい方法として、以下に説明する方法を好ましく用いることができる。この方法を用いることで、堆肥化におけるNOの更なる削減を可能にすると同時に、腐熟の進行による良質なコンポストの製造が可能になる。
【0071】
まず、下部空気供給部から圧力空気が供給されると、槽内のコンポスト原料は層状に浮遊する。さらに、浮遊層が装置の天井に達しない範囲で空気圧を一時的に強めることによって、層破壊が起こる。
【0072】
層浮遊と層破壊の効果的な組み合わせによって、コンポスト原料の塊ができにくく、また層浮遊後に層破壊を行っているので、空気が十分に行き渡り、嫌気化する恐れがない。
【実施例】
【0073】
以下に、本発明の実施例を説明するが、本発明はかかる実施例によって限定されない。
【0074】
(実施例1)
図1及び図2に示したものと同様の構成を有するコンポスト製造装置に、し尿処理場から発生した汚泥を脱水した脱水汚泥(コンポスト原料)を、1週間に2日、1日あたり5時間の投入頻度で供給した。1日あたりの合計投入量は、90.0kg−wet/週とした。
【0075】
コンポスト原料の空気攪拌を、1週間に2日、1日に2回の頻度で行った。コンポスト製造装置におけるコンポスト原料の滞留日数は約30日とした。
【0076】
コンポスト原料の加温は行わず、常温の空気を常時送風した。送風は、下部空気供給部(槽1、2、5、6のみ)及び槽1の上部に設けた上部空気供給部において行った。送風量は、下部空気供給部(槽1、2、5、6の合計として)を0.5m/min、上部空気供給部を1.0m/minとした。
【0077】
<コンポスト製造装置>
外形寸法:1400W×2200L×3100H
各槽寸法:600W×600L×1500H(有効1400H)×6室(一次発酵槽4槽、二次発酵槽2槽)
有効容量:3024m
【0078】
<測定>
・強熱減量
発酵槽に投入したコンポスト原料、及び、得られた堆肥について、強熱減量(%)を測定した。結果を表1に示す。
【0079】
・発酵槽の温度の経時変化
一次発酵及び二次発酵における発酵槽の温度の経時変化を観察した。結果を図4に示す。
【0080】
・消費電力量及びCO排出量
コンポスト製造装置での1週間あたりの消費電力量を測定し、更に、消費電力量に相当するCO排出量を算出した。結果を表2に示す。
【0081】
・結露発生
発酵装置内における結露発生の有無を表3に示す。
【0082】
(実施例2)
実施例1と同様のコンポスト製造装置に、し尿処理場から発生した汚泥を脱水した脱水汚泥(コンポスト原料)を、1週間に2日、1日あたり5時間の投入頻度で供給した。1日あたりの合計投入量は、90.6kg−wet/週とした。
【0083】
コンポスト原料の空気攪拌を、1週間に7日、1日に2回の頻度で行った。コンポスト製造装置におけるコンポスト原料の滞留日数が約30日とした。
【0084】
下部空気供給部(槽1、2、5、6のみ)及び槽1の上部に設けた上部空気供給部から、それぞれ1日に8回、1回につき1時間の送風を行った。その際、送風時間の前半30分のみ30℃の温風を送風するように、供給空気を加温した。
【0085】
<評価方法>
実施例1と同様の評価を行った。
【0086】
強熱減量測定の結果を表1に示す。
【0087】
発酵槽の温度の経時変化を図5に示す。
【0088】
消費電力量及びCO排出量の結果を表2に示す。
【0089】
発酵装置内における結露発生の有無を表3に示す。
【0090】
さらに、一次発酵槽(層1〜4)及び二次発酵槽(層5〜6)における、NO発生量を測定した。結果を表4に示す。
【0091】
(比較例1)
実施例1と同様のコンポスト製造装置に、し尿処理場から発生した汚泥を脱水した脱水汚泥(コポスト原料)を供給し、上部空気供給部からの送風を行わずにコンポスト化発酵を行った。
【0092】
<評価方法>
実施例1と同様の評価を行った。
【0093】
強熱減量測定の結果を表1に示す。
【0094】
発酵槽の温度の経時変化を図5に示す。
【0095】
消費電力量及びCO排出量の結果を表2に示す。
【0096】
発酵装置内における結露発生の有無を表3に示す。
【0097】
さらに、実施例2と同様に、NO発生量を測定した。結果を表4に示す。
【0098】
【表1】

【0099】
【表2】

【0100】
【表3】

【0101】
【表4】

【0102】
<評価>
実施例1と実施例2の有機物分解率を比較すると、実施例2の方が、僅かに高い有機物分解率を示すことがわかる。
【0103】
一方、実施例1と実施例2の消費電力量を比較すると、加熱を行わない実施例2では、消費電力量を低減できることがわかる。
【0104】
上部空気供給部からの送風を行わなかった比較例1では、消費電力量の大きさに対して、投入コンポスト原料と堆肥とで強熱減量の変化が見られないことから、有機物分解は起こっていないことがわかる。
【0105】
また、実施例2と比較例1のNO発生量を比較すると、比較例1では、NOの発生量が著しいことがわかる。このことから、比較例1では、嫌気発酵が多く進行したものと評価できる。
【符号の説明】
【0106】
100:コンポスト製造装置本体
1〜6:槽
11:投入口
12:上部空気供給部
13:排気口
21〜26、201:下部空気供給部
202:噴射管
203:加熱装置
31:送風機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部にコンポスト原料の投入口と排気口を備え、下方には下部空気供給部を備える発酵槽を用いて、前記コンポスト原料を発酵してコンポストを製造するコンポスト製造方法において、
発酵槽の上部に設けた上部空気供給部から送風を行うことを特徴とするコンポスト製造方法。
【請求項2】
前記上部空気供給部から送風を行うことにより、発酵槽上部空間の高湿度空気を、送風された空気に置換して、コンポスト原料上層の水を気化すると共に、温度勾配による自然対流により、コンポスト原料中層乃至下層からコンポスト原料上層に熱エネルギーを供給して、コンポスト原料全体の発酵を継続することを特徴とする請求項1記載のコンポスト製造方法。
【請求項3】
前記上部空気供給部から、湿度60%以下の低湿度空気を送風することを特徴とする請求項1又は2記載のコンポスト製造方法。
【請求項4】
前記発酵槽は、一次発酵槽と二次発酵槽とを備え、前記一次発酵槽の上部に前記上部空気供給部を有し、前記二次発酵槽の上部に前記排気口を備えてなることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載のコンポスト製造方法。
【請求項5】
一次発酵槽と二次発酵槽とを備え、上部にコンポスト原料の投入口と排気口を備え、該一次発酵槽と二次発酵槽の下方には下部空気供給部を備えたコンポスト製造装置において、
一次発酵槽の上部に上部空気供給部を備え、
二次発酵槽の上部に前記排気口を備えることを特徴とするコンポスト製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−157238(P2011−157238A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−21654(P2010−21654)
【出願日】平成22年2月2日(2010.2.2)
【出願人】(592141927)三井造船環境エンジニアリング株式会社 (15)
【Fターム(参考)】