説明

コークス乾式消火設備におけるコークスレベルの計測方法

【課題】1台のレベル計によってチャンバー内のコークスレベル及びコークス量を精度良く計測できる、コークス乾式消火設備におけるコークスレベルの計測方法を提供すること。
【解決手段】コークス乾式消火設備のチャンバー1上部に設置したレベル計3から、チャンバー内で一又は複数の山形状に堆積したコークスCに検出ビームを連続的に照射し、その反射ビームを検出することによりチャンバー内のコークスレベルを計測するコークス乾式消火設備におけるコークスレベルの計測方法において、レベル計3を揺動させて、レベル計からの検出ビームが一又は複数の山形状に堆積したコークスにおける各々の山形状の頂点C1a、C1bを通過するようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コークス乾式消火設備(以下「CDQ設備」という。)におけるコークスレベルの計測方法に関する。
【背景技術】
【0002】
図4にCDQ設備のチャンバー部分の一般的な構成を示す。CDQ設備においては、コークス炉より排出される赤熱コークスをチャンバー1の頂部からチャンバー1内に投入し、この赤熱コークスを、チャンバー1の下部から吹き込んだ冷却ガスと接触させつつ下降させ、チャンバー1下部の切り出し装置から冷却されたコークスを排出する。一方、冷却ガスは、チャンバー1上部のスローピングフリュー2からチャンバー1外に排出される。
【0003】
CDQ設備の操業においては、チャンバー1内のコークスレベルの管理が重要である。すなわち、コークスレベルが上限位置を超えて高温の赤熱コークスがチャンバー1の上部からオーバーフローした場合には、大きな設備損傷を招く。また、コークスレベルがスローピングフリュー2の部分以下の下限位置を下回った場合には、チャンバー1の下部から吹き込まれた冷却ガスがチャンバー1の上部(プレチャンバー部)へ吹き抜けることとなり、CDQ設備の操業が成立しなくなる。
【0004】
また、CDQ設備の操業条件の適正化や上工程のコークス炉との生産スケジュールの協調を取る上では、コークスレベルを管理するだけでなく、コークスレベルを正確に計測して把握し、チャンバー1内のコークス量を把握することが重要である。
【0005】
従来、CDQ設備におけるコークスレベルの計測方法としては、レベル計を使用した特許文献1の方法が知られている。この特許文献1の方法は、図4に示すように、チャンバー1内で山形状に堆積したコークスの頂点の略鉛直上方に設けられたレベル計3から、コークスCの頂点C1に向けて検出ビームを照射し、その反射ビームを検出することによりチャンバー内のコークスレベルを計測するものである。
【0006】
しかし、特許文献1による方法では、チャンバー1内のコークス量を高精度で把握することはできない。なぜなら、チャンバー1内に投入されるコークスの粒径や形状はコークス炉の操業条件等により変動するため、実際の操業においてチャンバー内に堆積するコークスの安息角(山形の形状)が変動するからである(図4の破線参照)。すなわち、特許文献1の方法では、チャンバー1内で山形状に堆積したコークスの頂点C1の略鉛直上方にレベル計3を固定しているため、コークスの頂点C1のレベルしか把握できず、変動するコークスの安息角(山形の形状)を把握することはできないので、コークス量を高精度で把握することはできない。
【0007】
また、特許文献1の実施例では、チャンバー内でコークスが単一の山形状(1山)で堆積することを前提として、レベル計3を1台設置しているが、チャンバー1の上部にベル4(図1参照)を配置しているCDQ設備においては、チャンバー1内でコークスは2つの山形状(2山)で堆積する。この場合、特許文献1の方法では、レベル計3を2台設置する必要が生じる。しかしながら、2つの山形状の頂点に向けてレベル計3を配置するにおいて、実際にはベル4が障壁となってレベル計3からの検出ビームとコークスの頂点C1を結ぶ照射軸が確保できず、レベル検出そのものが成立しない。また、照射軸が確保できた場合でも、開閉動作を行う装入蓋の上に2台のレベル計3を設置することは、装入蓋への重量負担が大きくなり過ぎ、現実的でないとともに設備費も大となる。さらに、レベル計3を2台設置したとしても、コークス量を高精度で把握することはできないという上述の問題は解消されない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2001−158882号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明が解決しようとする課題は、1台のレベル計によってチャンバー内のコークスレベル及びコークス量を精度良く計測できる、CDQ設備におけるコークスレベルの計測方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、CDQ設備のチャンバー上部に設置したレベル計から、チャンバー内で一又は複数の山形状に堆積したコークスに検出ビームを連続的に照射し、その反射ビームを検出することによりチャンバー内のコークスレベルを計測するCDQ設備におけるコークスレベルの計測方法において、レベル計を揺動させて、レベル計からの検出ビームが一又は複数の山形状に堆積したコークスにおける各々の山形状の頂点を通過するようにしたことを特徴とするものである。
【0011】
このように、レベル計を揺動させて、レベル計からの検出ビームが山形状に堆積したコークスの頂点を通過するようにしたことで、コークスの頂点のレベルだけでなく、コークスの安息角(山形の形状)も計測することができるので、チャンバー内のコークスレベル及びコークス量を精度良く計測できる。なお、チャンバー内のコークス量は、コークスの頂点のレベル、コークスの安息角(山形の形状)及びチャンバーの内径に基づいて計算で求めることができる。
【0012】
また、コークスが2つの山形状(2山)で堆積している場合にも、レベル計を揺動させることで、1台のレベル計によって各々の山形状の頂点のレベルとコークスの安息角(山形の形状)を計測できる。
【0013】
レベル計を揺動させる範囲(揺動角度)は、コークスレベルの上限位置及び下限位置のいずれにおいても、レベル計からの検出ビームが一又は複数の山形状に堆積したコークスにおける各々の山形状の頂点を通過するように設定することが好ましい。これによって、コークスレベルの上限位置から下限位置までのすべての位置において、チャンバー内のコークスレベル及びコークス量を精度良く計測できる。
【0014】
また、レベル計の1回の揺動は5〜10秒の間で行うようにすることが好ましい。このレベル計の1回の揺動時間(以下「1揺動時間」という。)は、チャンバー内を下降するコークスの下降速度を考慮して設定したものである。すなわち、チャンバー内のコークスの下降速度はチャンバー頂部からのコークス投入がなく下部からの排出のみが行われている状態が最も速く、このときの下降速度は概ね1〜2mm/sであり、一般的なレベル計(マイクロ波レベル計)の計測精度±10mmと考え合わせると、レベル計の1揺動時間は5〜10秒が適切である。1揺動時間が5秒よりも短いと、レベル計の応答時間(検出ビームをコークスに照射し、その反射ビームを検出するまでの時間)が不足し、逆に1揺動時間が10秒より長いと、計測中にコークスの頂点のレベル及びその山形の形状が変化するので、計測の精度が低下するおそれがある。
【0015】
本発明においては、レベル計で計測したコークスレベルのデータを処理回路で処理することによってチャンバー内でのコークスの堆積形状を求め、この堆積形状を操業監視用画面にリアルタイムで表示させるようにすることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、1台のレベル計によってチャンバー内のコークスレベル及びコークス量を精度良く計測でき、コークスレベルの管理を適正に行うことができるとともに、コークス量に応じたCDQ設備の操業条件の調整及び上工程のコークス炉との生産スケジュールの調整を適正に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1実施例を示す断面図である。
【図2】本発明の第1実施例による操業監視用画面の表示例を示す。
【図3】本発明の第2実施例を示す断面図である。
【図4】CDQ設備のチャンバー部分の一般的な構成、及び従来のコークスレベルの計測方法を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面に示す実施例に基づき本発明の実施の形態を説明する。
【実施例1】
【0019】
図1は、本発明の第1実施例を示す断面図である。この実施例は、チャンバー1内においてコークスが2つの山形状(2山)で堆積している場合を示す。
【0020】
CDQ設備のチャンバー1の上部にレベル計としてマイクロ波レベル計3が設置されている。このマイクロ波レベル計3から、チャンバー1内のコークスCにマイクロ波ビーム(検出ビーム)を連続的に照射し、その反射ビームを検出することによりチャンバー1内のコークスレベルを計測する。
【0021】
具体的には、マイクロ波レベル計3を揺動させて、マイクロ波レベル計3からのマイクロ波ビームが2つの山形状に堆積したコークスCにおける各々の山形状の頂点C1a、C1bを通過するようにする。
【0022】
マイクロ波レベル計3を揺動させる範囲(揺動角度)は、コークスレベルの上限位置L1及び下限位置L2のいずれにおいても、マイクロ波レベル計からのマイクロ波ビームが2つの山形状に堆積したコークスCにおける各々の山形状の頂点C1a、C1bを通過するように設定する。図1を参照して説明すると、マイクロ波レベル計3を揺動させる範囲(揺動角度)は、マイクロ波レベル計3からコークスレベルの上限位置L1におけるコークスの頂点C1bを結ぶ直線と、マイクロ波レベル計3からコークスレベルの下限位置L2におけるコークスの頂点C1aを結ぶ線とがなす角度δに、それぞれ外側に角度αを加えた範囲とする。角度αは例えば0〜10°とする。
【0023】
このような範囲にマイクロ波レベル計3を揺動させる範囲(揺動角度)を設定することで、コークスレベルの上限位置L1から下限位置L2までのすべての位置において、コークスの頂点C1a、C1bのレベル及びコークスの安息角(2山のそれぞれの山形の形状)を精度良く計測できる。そして、このコークスの頂点C1a、C1bのレベル、コークスの安息角(山形の形状)及びチャンバー1の内径に基づいて計算することで、チャンバー1内のコークス量を精度良く求めることができる。
【0024】
さらに、マイクロ波レベル計3で計測したコークスレベルのデータを処理回路(図示せず)で処理することによってチャンバー1内でのコークスの堆積形状を求め、この堆積形状を操業監視用画面にリアルタイムで表示させるようにすることができる。
【0025】
図2は、その表示例を示す。図2(a)はコースレベルが上限位置L1と下限位置L2の間にある正常状態を示し、図2(b)はコースレベルが上限位置L1を超えた異常上昇状態を示し、図2(c)はコースレベルが上限位置L1を下回った異常低下状態を示す。図2(a)〜(c)の各状態において、コークスの堆積形状を表示する色を変えれば、一目でコースレベルの状態を知ることができる。また、異常上昇状態(図2(b))及び異常低下状態(図2(c))において、それぞれ「HH−レベル」、「LL−レベル」の点滅表示や警報出力を行うようにすれば、オペレーターが異常状態を察知しやすくなる。なお、図2(a)〜(c)では、それぞれの状態に応じてコークス量が「正常範囲」、「上上限」、「下下限」であることを表示するようにしている。
【実施例2】
【0026】
図3は、本発明の第2実施例を示す断面図である。この実施例は、チャンバー1内においてコークスが1つの山形状(1山)で堆積している場合を示す。
【0027】
この場合にも、マイクロ波レベル計3を揺動させて、マイクロ波レベル計3からのマイクロ波ビームが1つの山形状に堆積したコークスCにおける山形状の頂点C1を通過するようにする。
【0028】
そして、マイクロ波レベル計3を揺動させる範囲(揺動角度)は、コークスレベルの上限位置L1及び下限位置L2のいずれにおいても、マイクロ波レベル計からのマイクロ波ビームが1つの山形状に堆積したコークスCにおける山形状の頂点C1を通過するように設定する。図3を参照して説明すると、マイクロ波レベル計3を揺動させる範囲(揺動角度)は、マイクロ波レベル計3からコークスレベルの上限位置L1におけるコークスの頂点C1を結ぶ直線と、マイクロ波レベル計3からコークスレベルの下限位置L2におけるコークスの頂点C1を結ぶ線とがなす角度δに、それぞれ外側に角度αを加えた範囲とする。
【0029】
この実施例においても、先の実施例と同様に、チャンバー1内のコークスレベル及びコークス量を精度良く計測できる。
【0030】
なお、以上の実施例では、レベル計としてマイクロ波レベル計を使用したが、これに限定はされず、検出ビームを照射してその反射ビームを検出可能なレベル計であれば、いかなるレベル計を使用しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明は、CDQ設備におけるチャンバー内のコークスレベルの計測に利用できるほか、高炉設備の装入ホッパーや高炉内の原料レベルの計測にも利用可能である。
【符号の説明】
【0032】
1 チャンバー
2 スローピングフリュー
3 レベル計(マイクロ波レベル計)
4 ベル
C コークス
C1、C1a、C1b コークスの頂点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コークス乾式消火設備のチャンバー上部に設置したレベル計から、チャンバー内で一又は複数の山形状に堆積したコークスに検出ビームを連続的に照射し、その反射ビームを検出することによりチャンバー内のコークスレベルを計測するコークス乾式消火設備におけるコークスレベルの計測方法において、
レベル計を揺動させて、レベル計からの検出ビームが一又は複数の山形状に堆積したコークスにおける各々の山形状の頂点を通過するようにしたことを特徴とするコークス乾式消火設備におけるコークスレベルの計測方法。
【請求項2】
コークスレベルの上限位置及び下限位置のいずれにおいても、レベル計からの検出ビームが一又は複数の山形状に堆積したコークスにおける各々の山形状の頂点を通過するように、レベル計を揺動させる範囲を設定する請求項1に記載のコークス乾式消火設備におけるコークスレベルの計測方法。
【請求項3】
レベル計の1回の揺動を5〜10秒の間で行う請求項1又は2に記載のコークス乾式消火設備におけるコークスレベルの計測方法。
【請求項4】
レベル計で計測したコークスレベルのデータを処理回路で処理することによってチャンバー内でのコークスの堆積形状を求め、この堆積形状を操業監視用画面にリアルタイムで表示させる請求項1〜3のいずれかに記載のコークス乾式消火設備におけるコークスレベルの計測方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−196027(P2010−196027A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−46129(P2009−46129)
【出願日】平成21年2月27日(2009.2.27)
【出願人】(306022513)新日鉄エンジニアリング株式会社 (897)
【出願人】(390022873)日鐵プラント設計株式会社 (275)
【Fターム(参考)】